目次
フリートEV経済性シミュレーション機能設計(途中急速充電対応)-エネがえるフリートEV構想-
現在、開発中のエネがえるEVフリートの改善バージョン構想アイデアです。あくまでも構想ですがご関心ある方はお問い合わせください。
1. 機能要件・非機能要件の定義
機能要件 (途中急速充電を含むロジック)
-
ルート走行と電力消費シミュレーション: 車両ごとの走行ルートや距離、積載や速度プロファイルに基づきEVの電力消費を算出する。特に日中の配送ルート中にバッテリー残量が不足する場合は、途中の急速充電(機会充電)をスケジューリングし、既存の休憩時間内で必要エネルギーを補充できるようにする。例えば「午前の配達後に昼休憩中30分急速充電して午後の配送に備える」といった充電計画を組み込む。充電ステーションの位置・出力や所要時間も考慮し、ルート全体をシミュレーションします。
-
経済性評価ロジック: EV導入による総費用を算出し、現状の内燃機関車両(ICE)運用との比較を行います。具体的には、車両のTCO(総所有コスト)を一定期間(例:10年間)について現行シナリオ(ICE車両)とEV導入シナリオで算出し、初期導入費・エネルギーコスト・メンテナンス費用の差分や投資回収期間を示します。また日中の急速充電利用による電力コスト(例:公共充電ネットワークの料金や需要家契約のデマンド料金への影響)を正確に反映します。例えば公共充電網での充電費用は割高で不安定になり得るため、その利用頻度がコスト競争力に及ぼす影響も評価します。
-
充電計画とスケジューリング: 夜間の拠点(デポ)充電と日中ルート上の急速充電を組み合わせ、各車両が業務に必要なバッテリー残量を確保できるよう充電スケジュールを最適化します。制約条件として、拠点の契約電力内で充電負荷を抑えること、車両の出発時刻までに必要SoCを満たすこと、各急速充電器の出力上限を守ること等を考慮します。これらの制約下で電力コストを最小化するような充電割当を行い、必要に応じて混合整数計画法(MILP)等により充電スケジュール最適化エンジンが稼働します。例えば複数EVがある場合は充電開始時間をずらしてピーク電力のスパイクを回避し、デマンド料金の増加を防ぐ制御も含みます。
-
コスト比較とレポート: シミュレーション結果として、EV導入による燃料費削減効果、電気代やメンテナンス費の増減、CO₂排出削減量などを算出し、経済効果レポートを生成します。現行ディーゼル車両運用とのルート別・車両別のコスト比較や、急速充電を導入した場合としない場合のシナリオ比較も可能にします。また国や自治体の補助金適用による初期費用低減や、V2H/V2G活用時の収益効果など、関連する経済要素もオプションで考慮します。最終的に「どの程度コスト削減・効率向上できるか」を定量的に示すことが本機能の要件です。
非機能要件 (品質・運用上の要件)
-
精度と信頼性: シミュレーションは実走行データや物理モデルに基づく高い精度が求められます。例えばエネルギー消費は車種ごとの電費や走行パターン(都市内の頻繁な停止・発進か、高速道路主体かなど)を考慮し、必要に応じ勾配やエアコン負荷も推計します。結果の妥当性検証のため、実際の運用データとの比較や、業界標準のモデル(例えば物理モデルと実測データによる回帰モデル)の採用が必要です。また計算結果に対して理由や内訳をユーザーに説明できるようにし、信頼性と透明性を確保します。
-
パフォーマンスとスケーラビリティ: 法人フリート向けで多数車両・長期間シナリオを扱うため、シミュレーション処理の高速化が求められます。複数車両・複数ルートを同時に計算する際も短時間(数十秒程度)で結果を返せる性能とし、大規模な計算はバックグラウンドで行いつつUI上では段階的に結果を表示するなどユーザビリティに配慮します。最適化にはNP困難な組合せ問題も含まれますが、現実的な計算時間で解が得られるようヒューリスティクスや近似アルゴリズムの採用も検討します。クラウド環境で水平スケーリングし、同時に多数ユーザー(ディーラーやメーカー担当者)が利用しても安定稼働する拡張性を確保します。
-
ユーザビリティとインタラクティビティ: ターゲットユーザーである自動車メーカー法人部門やディーラー担当者、電力事業者が専門知識なしでも直感的に操作できるUIを提供します。入力は必要最小限で済むよう既定値を充実させ(後述)つつ、詳細な調整も可能な二層構造のインターフェースとします。また「可用性重視」「コスト最小化」など異なる充電戦略をユーザーが選択・比較できる機能も用意し、現実の運用制約に即したシナリオ検討を支援します。結果の可視化は後述の通りシンプルかつ洞察が得られやすいデザインとし、専門用語の説明やツールチップで補足情報を提供することで、専門性と分かりやすさを両立させます。
-
データ更新性・拡張性: 車種スペックや電力料金プラン、充電インフラ情報などは随時更新されるため、シミュレーションに用いるデータベースは定期メンテナンスや自動更新機能を備えます。例えば電力料金プランは月次で見直し最新プランを反映、EVの新型車種も発売と同時にスペックを追加する、といった運用を可能にします。また将来的に走行データの自動連携(車両テレマティクスやFMSとのAPI連携)や、新しいユースケース(例えば車両の双方向充電によるグリッド支援)に対応できるよう、モジュール構造で拡張可能なアーキテクチャとします。さらにセキュリティとプライバシーも非機能要件として考慮し、企業の運行データや契約情報を扱うためアクセス制御や暗号化、認証機能を備えます。
2. 入出力インターフェース設計
ユーザー入力項目と形式
本シミュレーションの入力インターフェースでは、ユーザーが段階的に必要情報を入力できるフォームおよびデータ取込機能を提供します。主な入力項目と推奨フォーマットは以下の通りです。
-
車両情報: 導入を検討するEV車種や台数を指定します。例えば「小型バンEVモデルAを5台」など台数と車種を入力します。車種はプルダウンから選択でき、選択に応じてその車種のバッテリー容量(kWh)・電費(km/kWh)・バッテリー種類(LFP/NMC)等のスペックを自動読込します。これによりユーザーは詳細スペックを調べて入力する手間を省けます(カスタム車種の場合は手動入力も可能)。複数車種・複数台を登録でき、各車両に名前やグループを付け管理します。
-
運行スケジュール・ルートデータ: 各車両の日次・週次運行スケジュールを入力します。例えば「車両A:毎平日 9時出発~12時帰庫(午前ルート50km)、13時出発~17時帰庫(午後ルート50km)」のように、走行開始・終了時刻と距離(または経路)を与えます。インポート方法として、CSVテンプレートを用意し車両ごとの日別走行距離・時刻を行別に記入してアップロードできるようにします。簡易的には1日の総走行距離や運行時間帯を入力するだけでもシミュレーション可能とし、詳細な時系列データがある場合はそれを用いて精緻に充電スケジュールを計算します。ルート地図情報を使った入力もサポートし、地図上で拠点と配送先をプロットすると標準経路距離を自動取得する機能や、Google Maps等のAPIと連携し住所入力で距離・所要時間を自動計算する機能も検討します。加えて、「この時間帯に拠点(または任意地点)で急速充電可能」など運行制約(例:昼休憩1時間は充電可、など)も入力できるようにします。運用上の個別要件(例:「月曜朝7時までにSoC80%以上必要」)も必要なら設定できます。
-
充電インフラ情報: 充電器の設置状況や利用可能な外部充電を入力します。まず自社拠点における充電器の台数・種別(普通充電器 or 急速充電器)、各充電器の出力(kW)、およびV2H/V2G対応可否を登録します。例えば「50kW急速充電器が2基、6kW普通充電器が5基」などです。これらは充電スケジュール最適化の際の制約となります。次に、走行ルート上で利用する外部の急速充電インフラも考慮します。日本全国の主要な急速充電ステーション(高速道路SA/PA、道の駅、コンビニ等)のデータベースをバックエンドに持ち、ユーザーがルート上にある充電候補を選択できるようにします。例えば地図上の充電スポットをクリックして「ここで充電停車を予定(30分間で○kWh補充)」など指定可能にします。もしくはシステムが自動で最適な充電ポイントを提案することも考えられます(距離的にちょうど良い場所で、高出力器があり待ち時間が少ない候補など)。とはいえ初期リリースではユーザーに「〇時頃に△△SAで急速充電する想定」等のシナリオ入力をしてもらい、それを元にシミュレーションする形でも十分です。充電インフラ入力には、公共充電ネットワークの利用料金体系(例:1分あたりいくら、または1kWhあたりいくら+月額基本料)も指定できるようにし、コスト計算に反映させます。
-
電力契約・料金情報: EVを充電する電力に関する契約情報を入力します。自社拠点で充電する場合、契約電力(kW)や電力会社・プラン、電力量単価や時間帯別料金(TOU)体系を設定します。例えば「東京電力 高圧 基本プラン 契約電力500kW、ピーク時間単価◯円、夜間単価◯円…」のように選択・入力します。主要電力会社の代表的な高圧契約メニューはプルダウン選択できるようにし、選ぶだけで基本料金単価や時間帯別単価を自動セットします(個別契約の場合は手動編集可能)。またデマンド料金制の場合は過去の最大需要電力の実績値や目標ピーク値も入力できます。公共の充電スポット利用分については上記のように別途料金設定を入力します。電力料金データは常に最新プランを参照できるよう、バックエンドで100社3000プラン以上のデータベースを用意しユーザー入力をサポートします。
-
費用・経済条件: TCO算出のための財務パラメータも入力します。例えば車両購入価格(EV本体価格および比較対象のガソリン車価格)、燃料費単価(ガソリンや軽油の価格)、年間整備費・メンテナンスコスト(EVは低め、ICEは高めの値)などです。さらに国や自治体の補助金情報も入力可能で、例えば「CEV補助金◯円/台」「自治体補助上限◯円」等を反映し初期投資低減効果を計算します。電力契約面では、太陽光や定置蓄電池を導入している場合に自家消費電力を増やせるため、その容量や発電量プロファイル、蓄電池容量(kWh)・出力(kW)も入力できます。これにより、太陽光余剰電力で日中充電した場合の電力コスト低減効果などもシミュレーション可能です。
入力インターフェースの形式: 上記入力はWeb GUI上ではタブ分けされたフォーム(例:「基本情報」「運行データ」「充電インフラ」「電力契約」「費用条件」など)で順次入力できるようにします。各項目には説明文や入力例を添え、初めてのユーザーでも迷わず入力できるUIとします。CSV/Excelインポート機能も要所で提供し、特に車両の運行スケジュールや既存の電力使用実績データ(30分毎の需要など)はアップロード対応します。また、自動車メーカーやディーラーが自社システムから直接データ連携したいケースのためにAPIも用意します(後述)。APIではJSON形式で上記情報をPOSTしシミュレーション結果をJSONで受け取れるようRESTfulなエンドポイントを提供します。例えば車両と年間走行距離・運転時間帯・電気料金を入力するとEVの年次電力使用量を返す /evpowercalc/
エンドポイント等、既にエネがえるAPIで提供されているものを活用できます。
出力インターフェースと形式
シミュレーション結果の出力は、画面上のダッシュボード表示に加え、レポートファイル出力やAPIレスポンスとして提供します。
-
GUI上の結果表示: ユーザーがシミュレーション実行後に最初に目にするのはダッシュボード画面です。ここには主要な経済性指標(導入後◯年間の総コスト削減額、投資回収期間、ROI(投資利益率)、年間CO₂削減量など)が一目で分かる大型の数字で表示されます。例えば「10年間総コスト削減額:▲5000万円」「単純回収期間:5.2年」「ROI:18%」「年間CO₂削減:▲40トン」のように示します。加えて、ICE運用とEV運用の累積コストを比較するグラフ(縦軸:累積コスト、横軸:年度)を表示し、時間経過とともにEV導入がコスト優位になる時期を視覚化します。下図はICE車両群 vs. EV車両群の10年間累積TCO比較のイメージ例です(初期投資はEVの方が大きいが、運用コストが低いため約5年目で累積コストが逆転している):
このグラフにより、何年目にEV導入の元が取れるか直感的に把握できます。またコスト内訳のグラフも表示し、コスト削減効果が「燃料費削減」「メンテ費削減」「電力料金増加」「補助金」等どの要因から生じているかを円グラフで示します。例えば「10年総費用:EV 8億円 vs ディーゼル 9.3億円、差額1.3億円の内訳:燃料費1.8億減、メンテ6百万円減、電気代増加▲1億、補助金0.5億」といった具合です。このようにビジュアルを駆使し、数字の羅列ではなく洞察が得られる形で結果を提示します。さらに詳細なタブでは、年次ごとの現金フロー表(年間エネルギー費、メンテ費、残存価値など)、車両ごとの個別分析(例えば「車両Aは◯年目にバッテリー交換が必要となりコスト発生」など)も閲覧できます。UI上は段階的開示 (Progressive Disclosure) の考え方で、まずエグゼクティブサマリーを見せ、必要に応じクリックで詳細グラフや表を表示できるように設計します。
-
レポート出力: 提案書や社内資料に転用しやすいよう、レポートの自動生成機能を提供します。ワンクリックで現在のシミュレーション結果をPDFレポートに出力しダウンロード可能にします。PDFには先述のダッシュボード画面と同様の主要指標サマリー、グラフ類、前提条件の一覧、シナリオ設定の詳細(入力値の一覧)が含まれます。自社ロゴや提案先クライアント名などを差し込むカスタマイズも可能です。例えばディーラー担当者が顧客企業向け提案書として使えるよう、「◯◯社 提案:EV導入経済効果シミュレーション結果」といった表紙を付けることもできます。さらに詳細分析用にはCSVエクスポートも用意し、シミュレーションで計算された時系列データ(例えば30分刻みの充電出力計画や年次コスト推移、各車両の年間走行・消費電力量など)をCSVで出力可能にします。これによりユーザーは独自にExcelで分析したり社内の別システムに取り込んだりできます。
-
APIレスポンス: B2B利用の観点から、シミュレーションはGUIだけでなくAPI経由でも利用できます。入力インターフェースで述べたJSON形式をPOSTすればサーバー上で計算を行い、結果をJSONで返すREST APIを提供します。例えばエネがえるの既存APIでは、年間走行距離や運転パターンを与えてEVの電力使用量や最適電気料金プラン結果を返すエンドポイント等があります。同様に本機能でも、ルート情報や車両情報を渡すと総コスト結果や充電計画を返すエンドポイントを設けます。Panasonic社が自社のEV家庭向けサービスにエネがえるAPIを組み込んだ事例があるように、自動車メーカーやエネルギー事業者も当APIを呼び出すことで自社システム内にシミュレーション結果を組み込み表示できます。API利用時の出力は、JSON内に主要結果(例えば
total_cost_ev
,total_cost_ice
,roi
,payback_years
などの値)やグラフ用データ系列、必要ならPDFレポートのバイナリを含めることも検討します。
3. データ整備のプラン
本シミュレーション機能の精度と有用性は、裏付けとなるデータ基盤の充実にかかっています。必要となるデータ種別と整備計画は以下の通りです。
-
車両スペックデータ: フリート向け主要EV車種の仕様データベースを構築します。具体的には各車種のバッテリー容量(kWh)、航続距離(カタログ値)、電耗率(Wh/kmまたはkm/kWh)、最大充電出力(kW)、車両価格、維持費(目安)などを蓄積します。例えばトヨタ、日産、三菱、ホンダ、スズキ等の商用EV(小型商用バン、トラック、バス等)のデータをメーカー公表値やカタログから収集します。既にエネがえるではEVや蓄電池の製品データが利用可能であるため、それを拡充する形で「フリートEVデータセット」を準備します。また必要に応じて実証実験やテレマティクスデータから得られた実走行時の電費補正係数(例:冬場は電費×0.8等)も組み込み、条件に応じた消費電力推計を高度化します。
-
ルート・運行データ: シミュレーションではユーザーから提供された運行スケジュールデータを用いますが、一般的なユースケース別標準運行モデルも内部で用意します。例えば「ラストワンマイル配送モデル」として「1日あたり80km走行、午前と午後の2シフト、昼に拠点帰社」のようなパターンや、「中距離輸送モデル」として「朝出発200km移動→先方荷降ろし中に急速充電→夕方200km戻る」等の典型パターンを定義します。ユーザーが自社データを持っていない場合でも、これら代表ケースを選ぶだけで試算可能とします。また地理的なルートデータとして、地図ベンダー(Google MapsやPTVなど)や国交省オープンデータを活用し、都市間距離や高速経路、勾配情報を取得します。これによりルート距離だけでなく高低差による消費増減も反映できます(必要に応じ高度な計算ではありますが、将来的な拡張要素として検討)。
-
電力料金データ: 日本全国の電力料金プラン情報をデータベース化します。エネがえる既存サービスでは約100社・3000プランの電気料金データベースが既に存在します。これをフリート向けに転用し、高圧契約プランや大口需要向けメニューを重点的にカバーします。具体的には東京電力・関西電力など大手電力会社の高圧基本料金単価、時間帯別単価、燃料調整費や市場連動プランの仕組み、さらに新電力各社の特徴的なプランも随時追加します。料金データは月次で更新される燃料調整額や再エネ賦課金なども踏まえ、自動更新スクリプトで定期取得するか、人手でメンテナンスします。公共急速充電の料金体系についても情報を整備します。例えば日本充電サービス(NCS)の会員プラン(月額○円で1分○円)や、テスラのスーパーチャージャー料金、自治体運営の無料充電スポット情報など、多様なケースを網羅します。これらを適切にモデル化(時間当たり or 電力量当たり課金)し、ユーザーが選択できる形でデータ保持します。
-
充電インフラ情報: 国内の充電ステーション設置場所と性能データを収集します。経済産業省や次世代自動車振興センター(NeV)の公開情報、あるいは民間提供API(例:e-Mobility Powerのデータ)から、急速充電器の所在地(緯度経度)、出力(例:50kW, 90kW, 150kWなど)、コネクタ規格(CHAdeMO, CCS等)、利用可能時間、料金を取得しデータベース化します。高速道路SA・PA、主要都市部の充電拠点、ディーラーやコンビニ設置の充電器など、フリート運用で活用しそうなポイントを重点収録します。将来的にはリアルタイムの空き状況や故障情報も扱いたいところですが、シミュレーション用途ではひとまず静的データで十分です。なお、自社拠点に新規に急速充電器を設置することを検討するユーザーもいるため、充電器の機種ごとの価格情報や工事費目安もデータ化します。例えば「50kW急速充電器:本体価格◯百万円、工事費◯万円」等のデータを持ち、シミュレーション内で設備導入コスト試算に用います。
-
その他のデータ: メンテナンスコスト(車両整備費)は社内統計や公表資料から、一般的なICE車・EV車の年間整備費用を推計してデフォルト設定します(例えばEVはICEの約半分以下のメンテ費と言われます)。バッテリー劣化に関しては、充放電サイクル数や充電Cレートに応じた劣化モデルを参考文献から取得し、必要ならバッテリー交換費用の試算に組み込みます(ただし細かすぎるとユーザー入力負担が増すため基本は無視かオプション扱い)。CO₂排出係数(g-CO₂/kWhや燃料種別のg-CO₂/L)は政府公表値を採用します。加えて、国や自治体の補助金情報はCEV補助金公式サイトや各自治体公募要項からデータベース化し、常に最新の公募額や条件を反映します。以上の各種データを整備・更新することで、ユーザーが最新の情報に基づいたシミュレーションを行える体制を築きます。
4. ユースケース別の構成要素
フリートEV導入と言っても、その運用形態によって課題や重点検討事項が異なります。ここでは代表的なユースケースである「ラストワンマイル配送」と「中距離輸送」について、シミュレーション構成の着眼点を整理します。
4.1 ラストワンマイル配送の場合
ユースケース概要: 都市内または地域内で、拠点から各配達先への短距離配送を繰り返す運用です。郵便・宅配や小売店への納品などが該当し、1日の総走行距離は比較的短く(数十~100km程度)、走行経路は市街地でストップ&ゴーが多いのが特徴です。車両は小型のバンや軽トラックが主体で、荷量は比較的軽く各所で頻繁な停車・積み降ろしがあります。
シミュレーション上の考慮ポイント:
-
航続距離と充電戦略: 多くの場合、ラストワンマイル配送の距離であれば夜間満充電で1日業務を賄えるケースが多いです。シミュレーションでもまず「overnight充電のみで全行程カバー可能か」をチェックし、可能であれば日中充電なしシナリオで稼働します。むしろEVのバッテリー容量をフル活用し、可能な限り途中充電なしで走行ルートを完了させるよう計画することが推奨されます。ただし夏場にエアコンを多用すると航続が減る場合や、予備の安全マージンをとりたい場合は昼休憩時の機会充電も検討します。拠点に戻る運用であれば、拠点に普通充電器や予備バッテリーを用意して昼食中に補充するのも一法です。この際、充電による時間ロスが業務に与える影響も小さい(もともと休憩時間である等)ため、シミュレーションでも業務に支障なく充電できる前提で計算します。
-
消費エネルギー計算: 都市内配送は停車・発進が多いため、再生ブレーキ効果で電費が向上する側面もあります。一方でエアコン連続使用や低速走行が多いと1kmあたりの消費エネルギーは増える傾向にあります。シミュレーションでは市街地走行向けのエネルギーモデルを適用し、例えば平均速度○km/h以下かつ停車/発進頻度が高い場合はカタログ電費より効率良い(回生あり)とみなす、といった補正を考えます。ただ高度なモデルは必須ではなく、基本は車種ごとの実績ベース電費を用いて概算します。
-
充電インフラ: ラストワンマイルでは日中に公衆急速充電器を利用するケースは少ないです。もし中長距離の支店間移動が混在する場合は別ですが、典型的には自社拠点で夜間充電が主体となります。したがってインフラ計画上は拠点内の充電器数と出力がボトルネックになります。シミュレーションでは同時に帰庫する車両数に応じて必要充電器数を見積もり、夜間の限られた時間で全車両を充電完了するためには例えば6kW普通充電器が何台必要か、を算出します。日中の急速充電を導入する場合でも、昼に一部車両が戻って充電する運用であれば自社拠点内に急速充電器を置く想定とし、これをシミュレーションに組み込みます。その際、複数台が同時に急速充電するとデマンドピークになる懸念があるため、充電開始時刻をずらす・充電出力を制御する等のデマンドコントロール戦略も重要になります。シミュレーションでは「同時に2台までしか急速充電しない」という制約や、充電器ごとのスケジューリングも考慮します。
-
コストとメリット: ラストワンマイル配送は走行距離が短めな分、燃料費削減額は中長距離運用より一台当たりは小さいですが、それでも市街地低速走行による燃費悪化が無いEVの恩恵は大きいです。またゼロエミッション車であることから都市部規制(例えば配送車の排ガス規制区域)にも対応でき、環境価値も訴求点です。シミュレーションではこうしたメリットをCO₂削減量や環境規制コンプライアンス面でも示し、経済価値と合わせて提示します。車両サイズが小さいため初期費用も比較的低めで、補助金次第では早期にROIがプラスになるケースも期待できます。シミュレーション結果でその点を強調し、例えば「EV化で燃料費が年間○万円節約、◯年で元が取れる」など明示します。
4.2 中距離輸送の場合
ユースケース概要: 都市間や広域エリアでの中距離の貨物輸送や営業移動が該当します。例えばある拠点から100~200km離れた別拠点への配送往復、地域の巡回サービス、シャトルバス運行などです。1日の走行距離は200~400kmにもなり、車両は中型〜大型のトラック・バスが中心になります。高速道路走行が多く、走行中は長時間ノンストップで走るシーンもあります。
シミュレーション上の考慮ポイント:
-
航続距離と途中充電: 中距離運用では1回の満充電で賄えないケースが多々あります。例えば航続250kmのEVトラックで300km移動するには途中充電が必須です。シミュレーションでは、入力されたルート距離や運行スケジュールから何回の急速充電停止が必要かを判断し、適切にルートへ挿入します。典型的には**「片道走行→荷降ろし休憩中に充電→復路走行」というパターンをモデル化します。運転手の休憩義務時間(例えば4時間ごとに30分休憩など)にも合わせ、休憩=充電時間として充電量を計算します。充電ポイント選定も重要で、シミュレーション上は例えば走行距離が半分を超えた地点で最寄りの高出力急速充電器を探し充電する、といったルールで近似します。将来的には経路上の充電最適地点をアルゴリズムで選ぶことも検討します。また充電待ち時間**のリスクも中距離では考慮すべきです。人気の高速SA充電器では待機が発生する可能性があるため、シミュレーションでは「充電待ち◯分の可能性」など感度分析できるようにします。ただ初期段階ではシンプルに待ち時間ゼロ前提、もしくは少しバッファを見込む程度に留めます。
-
エネルギー消費特性: 高速巡航が多い中距離輸送では、空力抵抗の影響で電費が悪化します。一般に高速走行では市街地走行よりエネルギー消費が増えるため、シミュレーションでも速度に応じた消費係数を適用します(例:80km/h以上で走行時はカタログ電費の×0.7倍の効率にする等)。また車両総重量も影響し、大型トラックで満載時は消費増となります。このあたりは詳細な物理モデルを組むことも可能ですが、ユーザー入力の簡便さとのトレードオフがあります。現時点では車種毎の想定積載時電費をデータベース化し適用する方針です。「中型トラック:空車時〇km/kWh、満載時△km/kWh」といった形で、ざっくりと負荷による違いを織り込みます。勾配についても、中距離では峠越え等がなければ無視できますが、一部山間ルートでは上り坂で消費増・下りで回生というケースもあります。必要に応じ、標高データから平均勾配を算出して消費量に±補正することも検討課題です。
-
充電インフラ: 中距離輸送では公衆の急速充電インフラへの依存度が上がります。高速道路網や主要道沿いの充電器設置状況がボトルネックになり得ます。シミュレーションでは、ルート上に利用可能な急速充電器が存在する前提で計画しますが、もし空白地帯がある場合は「この区間は現状EVではカバー困難」といった警告を出す仕様も考えられます。また現実には充電器の出力も問題で、大型車の中距離運行では50kWでは時間がかかりすぎます。最近は150kW級の高出力充電も出始めていますが、それでも満充電には1時間以上要します。そのため必要充電量をミニマムにする戦略が必要です。シミュレーションでは例えば「残り必要分だけ30分急速充電し、80%程度まで充電して次に進む」ように計画します。さらに、運行拠点や目的地で目的地充電できるかも要チェックポイントです。配送先で荷卸し中に相手先の設備で充電できれば理想的であり、そうしたケース(提携先での充電)がある場合は入力で指定して反映します。全体として、中距離ではインフラ前提をどう置くかが結果に大きく影響するため、シミュレーション結果と併せて「必要となる充電設備投資」も出力し、例えば「高速道路◯◯SAに150kW充電器新設が望まれる」といった提言要素も含めることを検討します。
-
デマンド管理: 中距離の車両でも拠点で夜間充電は行います。その際、大容量バッテリーを持つトラックを短時間で複数台充電するとデマンド値が急上昇する恐れがあります。シミュレーションではフリート全体の充電による電力負荷プロファイルを算出し、ピーク電力が契約を超えないよう制御戦略を適用した場合としない場合の差を示せます。例えば「無制御ならデマンド値◯kWに達し基本料金△万円増になるが、充電制御(順番充電やV2G活用)すれば最大◯kWに抑制可能」といったシナリオを比較します。中距離トラックはバッテリー容量も大きいため、充電制御は必須の要件であり、シミュレーションでもデフォルトで制御有りシナリオを採用します。
-
コスト評価: 中距離輸送は走行距離が長い分、燃料費削減効果が絶大です。一方で急速充電利用による電力単価上昇(従量課金が高い、基本料金上昇など)の影響も出やすいです。シミュレーションでは、電気代の内訳として「深夜充電◯円、日中急速充電◯円、デマンド基本料金◯円」と細分化し、それと従来の燃料代を比較する形で経済性を示します。特に高速道路での充電は1kWhあたりの費用がガソリンより高くなる場合もあるため、その点も明記します。それでもトータルではメンテナンス費や燃料費削減でプラスになるシナリオが多いですが、もし赤字になる場合は必要な条件(例:補助金額や走行距離閾値)も出力します。また運用効率も考慮が必要です。充電に時間を要することで1日の運行回数が減るような場合、追加車両が必要になるかもしれません。シミュレーションでは、「充電時間ロスにより車両稼働率が下がる=同じ業務に必要な車両台数が増える」場合は経済性にマイナス影響として計上します(例:1台当たりではなくフリート全体での台数増をコスト換算)。これにより電池容量増や高出力充電設備投資の必要性を示す根拠にもなります。
以上、ラストワンマイルと中距離でシナリオ構成要素が異なるものの、シミュレーションエンジン自体は共通のため、入力テンプレートや内部ロジックで条件分岐させ対応します。例えばユーザーが「ユースケース選択」で「都市内配送」か「長距離配送」かを選べば、自動で上記相当のパラメータセット(電費モデルや充電戦略)を適用するなど、ユースケースプリセットの用意も有効です。
5. 利用者向けUI設計・データ出力仕様
ターゲット利用者である自動車メーカー法人部門、ディーラー担当者、電力事業者にとって使いやすいUIと分かりやすい出力を設計します。**「専門的な分析ツール」でありながら「経営層への説得材料」**にもなるという二面性を備えたUI/UXが求められます。以下、そのポイントを整理します。
-
直感的で洗練されたダッシュボード: シミュレーション結果の要約は一画面に集約し、重要指標を強調表示します。UIデザインのベストプラクティスに従い、十分なホワイトスペースを確保しつつ重要な数字は大きく太字で配置します。人間の視線の流れ(F字型、Z字型)を考慮し、一番見せたい「総コスト削減額」などは画面左上に配置します。色使いも統一感のあるテーマで、EVメリット部分はポジティブな緑や青、コスト増要素は注意色のオレンジなど視覚的に直観しやすい配色にします。またグラフやアイコンを効果的に用い、数字に不慣れな経営層でも「棒グラフの高さの差」や「円グラフの割合」で一目でメリットを理解できるようにします。ダッシュボードには各項目に情報アイコンを設け、クリック/ホーバーで定義や算出根拠を表示させ、専門用語の説明不足による誤解を防ぎます。
-
段階的詳細表示とシナリオ比較: 前述のProgressive Disclosure原則に沿い、初期画面では概要のみ示し、ユーザーが必要に応じドリルダウンできるUIとします。例えば「詳細を表示」ボタンで各年次の詳細コスト表や各車両別グラフが展開されるイメージです。またシナリオ比較機能もUIに組み込みます。ユーザーが異なる前提で複数回シミュレーションを実行した場合、その結果を横並びで比較できるようにします。例えば「急速充電導入あり vs なし」「車両台数5台導入 vs 10台導入」「プランA (夜間電力安価) vs プランB (定額昼充電パスポート利用)」など、シナリオ名を付けて保存・比較できるUIです。グラフ上で2線を重ねて表示したり、差分だけを示す画面を用意するなどして、ユーザーが最適案を検討しやすくします。特にディーラーなどは顧客にいくつか提案選択肢を示したい場合があり、その際この比較機能が役立ちます。
-
マルチデバイス対応と操作性: 基本はWebブラウザでPC画面向けに設計しますが、タブレット等でも見やすいレスポンシブ対応をします。営業担当者がタブレットで顧客に直接見せながら説明するといった使い方も想定されます。ボタン配置やフォントサイズはタッチ操作でも問題ないよう配慮します。操作フローとしては、入力 -> 計算実行 -> 結果確認 -> シナリオ保存/出力 という一連の流れをウィザード形式で案内し、入力漏れチェックやエラー表示も的確に行います。専門的な入力が多いですが、一度設定したシナリオは保存して再利用可能にし、ユーザーが繰り返し分析する際の負担を軽減します。またツールチップやヘルプを充実させ、例えば「デマンド値とは?」にマウスオーバーすると定義が出る等の工夫で、ユーザー教育コストを下げます。
-
出力データ仕様: 前述のPDFレポートやCSV出力について、形式仕様を明確に定義します。PDFはA4縦 or 横で見やすいレイアウトとし、会社ロゴや作成日時、バージョンなどをフッターに記載します。CSVは各種単位や項目名をドキュメント化し、例えば
year, total_cost_ev, total_cost_ice, fuel_cost_saved, maintenance_cost_saved, electricity_cost, subsidy, ...
のようなカラム構成にします。APIについてもSwagger等でインターフェースを定義公開し、パラメータやレスポンスJSONの項目説明を提供します。エラー時のコードやメッセージも整備し、例えば「E001: 必須入力Xが欠落」などとします。利用者がデータを活用しやすいようこれら出力仕様は公開ドキュメントとして提供し、ディーラーのIT部門やエネルギー事業者のシステム担当が参照できるようにします。 -
ユーザー誘導とカスタマーサポート: UI上には必要に応じFAQや問い合わせ誘導を配置します。例えば「電費の算出根拠について詳しくはこちら【FAQ】」や「更に詳細な分析が必要な場合はお問い合わせください」といったリンクです。これによりユーザーは疑問点を自己解決しやすくなり、当社側もフィードバックを得られます。また初めて使うユーザー向けにはチュートリアルモードを用意し、順に入力方法をガイド表示することで習熟を助けるUXとします。
総じて、UI/UX設計では「明快さ」「制御性(ユーザーが操作・調整できる余地)」「信頼感」をキーワードに据えます。単なる計算結果の提示ではなく、ユーザーがその結果を用いて自信を持って社内外に提案・説明できるよう、見せ方と出力に徹底的に配慮します。
6. 最小入力でも回る“既定値設計”の工夫
ユーザーが入力すべき項目が多岐にわたる一方、すべてを正確に把握していないケースもあります。そこでデフォルト値(既定値)の巧妙な設定によって、最小限の入力でもそれなりに妥当なシミュレーション結果が得られる仕組みを構築します。その工夫を以下にまとめます。
-
車種選択による自動設定: 前述のように車種プリセットを用意し、車種選択だけで主要スペック(バッテリー容量、航続距離、電費、バッテリー化学品種類等)が自動セットされます。例えばユーザーが「トヨタ e-プロボックス」を選べば、容量50kWh・電費6km/kWh・LFPバッテリー等が裏で入力されるイメージです。これにより車両スペックを一から入力する必要がありません。プリセットリストには国内で入手可能または計画中の主な商用EVを網羅し、「車種がまだ未定」の場合は「代表的な小型バン」などカテゴリ選択も可能にします。その際はカテゴリ平均のスペック(または保守的にやや悪めの電費)をデフォルト設定します。
-
運行データの既定: ユーザーが詳細な運行スケジュールを持っていない場合でも試算できるよう、標準運行パターンを選べるようにします。例えば「典型的な宅配ルート(1日80km、市街地)」「中距離往復(300km、高速利用)」など、ユースケースプリセットを用意し、それを選ぶと距離や充電条件の初期値が自動入力されます。さらに、日次の運行データがない場合は年間走行距離から自動配分します。エネがえるEV既存APIでは年間走行距離と平日/休日割合から日々の走行を割り当てていますが、同様に例えば「年間2万kmなら平日100km/日・休日少なめ」等と配分し、運行スケジュールを仮定します。時間帯についても、宅配なら朝出発~夕方帰社、長距離なら早朝出発~夜帰社など、一般的なパターンを当てはめます。これらは後からユーザーが調整可能です。
-
電力料金プラン既定値: ユーザーが電力契約を把握していない場合のために、平均的な料金プランを既定値とします。例えば高圧電力契約であれば「東京電力ベーシックプラン(デフォルト)」「関西電力 標準プラン(デフォルト)」などエリアから自動選択するか、全国平均的な単価(基本料金◯円/kW、従量料金◯円/kWh)を設定します。時間帯区分も標準的な平日昼・夜間で単価差を持たせるなど保守的に設定しておきます。このようにしておけば、ユーザーが料金表を調べなくてもシミュレーションは走ります。但し実際のコストとずれないよう、平均値は各種統計から慎重に設定します。また公共充電費用も、「急速充電1回当たりだいたい◯円(◯kWh充電想定)」といった平均値を持たせます(例えば30分充電で500円程度など)。
-
充電インフラ条件の既定: 例えば拠点に充電器が未設置の場合、「6kW普通充電器をとりあえず台数分設置する」や「50kW急速を1台導入する」といったモデルケースをデフォルト提案します。公共充電も、ルート距離が長い場合は「中間地点で1回充電」と自動想定します。具体の地点は選ばずとも、走行半分時点での充電時間30分を内部で入れて計算する、といったロジックです。これによりユーザーが充電場所を選ばなくても、シミュレーション上は途中充電を織り込んだ結果が得られます。もちろん実在の充電場所ではないので結果精度は荒くなりますが、概算シナリオとしては意味あるものになります。ユーザーが後から実際の充電スポットを入力すれば精度向上する流れです。
-
財務パラメータの既定: 車両価格や燃料費も標準値をセットします。例えば「小型商用EV:本体価格500万円、同クラスディーゼル車300万円」「軽油価格130円/L、レギュラー160円/L」等、最新の市場価格を反映した値を持ちます。補助金も「国補助最大◯円、適用されるものとする」とデフォルト適用しておくか、逆に確実でない場合は0円にしておくか、シナリオに応じて判断します。メンテ費は「EVは従来比△%減」として自動計算するようにします(例えばEVはエンジンオイル交換不要などよりメンテナンスコストが低減することを反映し、デフォルトでICE車対比50%に設定)。
-
デフォルト値の根拠提示: 各デフォルト値には、その根拠や出典をユーザーが参照できるようにします。例えば電費の値にマウスオーバーすると「〇〇試験モード基準。満載時は▲▲km/kWhまで低下する可能性【参考文献】」と注記したり、燃料価格には「◯年◯月時点の全国平均」等と表示します。これによりユーザーはデフォルトの妥当性を判断しやすくなり、必要なら自分で修正入力できます。修正しなくても「おそらくこのくらいだろう」という当て推量でシミュレーションが回せるのが理想です。
-
パラメータ自動調整: 入力が不足している場合に推定補完するロジックも検討します。例えば車両台数と総走行距離から1台当たり走行距離を割り振る、拠点契約電力が未入力なら車両台数×充電出力×適当係数で見積もる、などです。「最低限この2,3項目入れれば残りは全部お任せ」という使い方ができるよう、内部で賢く補完します。ただし不自然な結果にならないよう注意が必要なので、補完した項目はユーザーにわかるようハイライト表示し「仮に○○の値で計算しました」と断りを入れます。
以上のように既定値を充実させることで、ユーザーはシンプルな入力(例えば「車種Aを5台、年間走行距離2万km」程度)でもまずは試算できるようになります。そして結果を見ながら徐々に詳細パラメータを詰める、という試行的なシナリオ作成が可能となります。このアプローチは、導入検討初期段階のユーザーが大まかなイメージを掴むのに有効であり、ひいては当シミュレーションツールの利用ハードルを下げる効果があります。初期仮設定で大枠を示し、必要に応じ深掘りできる柔軟性こそ、フリートEV経済性シミュレーションの普及に不可欠な工夫と言えるでしょう。
コメント