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- 1 太陽光発電の過積載とは?メリット・デメリットや注意点・シミュレーション方法を解説
太陽光発電の過積載とは?メリット・デメリットや注意点・シミュレーション方法を解説
効率よく太陽光発電を運用する方法の1つに「過積載」があります。過積載とは、パワーコンディショナーの容量を超えるソーラーパネルを設置することを意味します。この記事では、太陽光発電の過積載とは何か、過積載のメリット・デメリット、注意点、シミュレーション方法などをわかりやすく解説します。過積載の導入を検討する際に、ぜひ役立ててください。
太陽光発電の「過積載」とは
太陽光発電の過積載とは、ソーラーパネルの容量が、パワーコンディショナーの容量を上回っている状態を指します。例えば、容量60kWのソーラーパネルと容量50kWのパワーコンディショナーを組み合わせたケースが挙げられます。大規模な太陽光発電において過積載は一般的で、最近では住宅用の太陽光発電でも増加しています。
太陽光発電の「過積載」は違反行為ではない
太陽光発電の過積載は違反行為ではありません。トラックなどが既定の重量を超えて荷物を載せる過積載のイメージと混同しやすく、ネガティブなイメージを持つ人もいます。しかし、太陽光発電の過積載は違法ではないため心配は不要です。効率よく太陽光発電を運用する手段の1つであり、経済産業省も推奨している方法です。
「スーパー過積載」とは
過積載のなかでも、特に過積載率が高いものをスーパー過積載と呼びます。過積載率は「パネル容量÷パワーコンディショナー容量×100」という計算式で算出できます。何%以上の過積載率がスーパー過積載であるといった定義はありませんが、おおむね150%以上の過積載率がスーパー過積載に分類されます。なかには過積載率が200%以上のケースもあります。
太陽光発電における「過積載」の3つのメリット
太陽光発電の過積載には、いくつかのメリットがあります。ここでは、代表的な3つのメリットについて解説します。
発電量が増える
過積載のメリットとして、発電量が増えることが挙げられます。過積載の場合、季節・天候などの発電条件が良好で日中の時間帯は、ソーラーパネルの出力がパワーコンディショナーの容量を上回るため、発電量がカットされます。しかし、発電条件が望ましくない日や、朝と夕方の時間帯は発電量が高まるため、全体を通じた発電量は増加します。
設備を効率よく利用できる
設備を効率よく利用できることも、過積載のメリットです。太陽光発電は、季節や時間帯によって発電量が変化するため、発電量がパワーコンディショナーの最大容量に満たない時間帯が存在します。過積載ではない場合、最大容量に満たない時間が長く、設備コストが無駄になります。過積載にした場合、パワーコンディショナーの稼働率が上がり、設備コストの費用対効果が高くなります。
「低圧」で運用できる
過積載でも低圧とみなされて、効率よく太陽光発電を行えることもメリットです。太陽光発電は、設備容量によって低圧と高圧に分類されます。高圧の場合、高圧電力契約が必要となり、高水準の技術基準や安全管理、電気主任技術者の選任などが求められます。
例えば、ソーラーパネルの容量が65kWでも、パワーコンディショナーの容量が49.5kWなど、50kW未満であれば低圧になり、効率よく運用できます。
太陽光発電における「過積載」の2つのデメリット
過積載のメリットを解説しましたが、いくつかのデメリットも存在します。ここでは主なデメリットについて解説します。
ピーク時の発電量がカットされる
季節・天候などの発電条件が良好な場合、発電量がカットされてしまうことがデメリットです。過積載は、ソーラーパネルの容量がパワーコンディショナーの容量を超えている状態です。発電条件がよく、ソーラーパネルによって多くの発電量を生み出せたとしても、パワーコンディショナーの容量を超えれば、超過分を捨てることになります。
初期費用がかかる
過積載のデメリットとして、初期費用が増えることも挙げられます。ソーラーパネルの容量を高めて過積載を行う場合、準備するソーラーパネルが増えるため、初期費用も増加します。初期費用が高い場合、売電による投資資金回収に時間がかかります。過積載の導入を検討する場合は、初期費用と回収期間を考慮しましょう。
太陽光発電における「過積載」の注意点
過積載を導入するといくつかのメリットを享受できますが、注意すべきポイントがあります。ここでは主な注意点について解説します。
保証範囲を確認する
パワーコンディショナーの保証範囲を確認しましょう。過積載の場合も設備保証があるのが一般的ですが、保証される過積載率の範囲はメーカーによって異なります。ソーラーパネルのメーカーは、パワーコンディショナーメーカーより保証範囲が狭い傾向があり、パワーコンディショナーメーカーのなかでも保証範囲に幅があります。
過積載率が高いほどよいわけではない
過積載率が高いほど、発電効率がよいとは限りません。発電環境の条件によっては、ピーク時の発電量のロスが多くなり、総発電量が期待しているほど増えないこともあります。過積載には、ソーラーパネルの初期導入費用も余計にかかるため、バランスのよい過積載率にすることが重要です。
後から過積載にすると罰則を受ける場合がある
発電設備の認定後に設備容量を増設する場合、その増設量は「3kW未満かつ3%未満」という制限があります。制限を超えると罰則があり、電力の買取価格が増設時の最新価格に変更されます。売電価格は年々低下しているため、売電収入も減少する可能性があります。増設による過積載を検討する場合は、採算性について慎重に検討しましょう。
太陽光発電の発電量をシミュレーションするには
太陽光発電の売電収入は、おおよそ発電量に比例するため、発電量のシミュレーションが重要です。ここでは、シミュレーション方法について解説します。
年間の発電量の目安は1kWシステムあたり1,183kWh
太陽光による発電量は、設備状態や周辺環境の条件によって大きく異なりますが、太陽光発電協会(JPEA)が、年間の発電量の目安は1kWシステムあたり1,183kWhと示しています。この目安は、経産省調達価格等算出委員会の2019年度意見書に基づき、設備利用率を13.5%として年間発電電力を算出した数値です。
※参考:住宅用太陽光発電システムのメリット | JPEA 太陽光発電協会
太陽光発電の年間発電量をシミュレーションする方法
発電量のシミュレーションには、年間の発電量を求める計算式「システム容量×設置場所の日射量×損失係数×365日」が活用できます。設置場所の日射量については、NEDO(独立行政法人 新エネルギー産業技術総合開発機構)が日射量に関するデータベースを公開しているため、設置予定場所の日射量を確認してください。損失係数は一般的に80%程度とされています。
例えば、システム容量が20kW、設置場所の日射量が5kWh/㎡と仮定した場合、年間の発電量は、20×5×0.8×365=29,200kWhとなります。
※参考:日射量データベース閲覧システム | NEDO
「過積載」の年間発電量をシミュレーションする方法
過積載の年間発電量をシミュレーションする場合は、ピーク時の発電量のロスであるピークカットを考慮して計算する必要があります。前述の計算式の「システム容量」を「ソーラーパネルの容量×ピークカット係数」に変換します。「ソーラーパネルの容量×ピークカット係数×設置場所の日射量×損失係数×365日」という計算式で過積載の年間発電量を算出できます。
例えば、ソーラーパネルの容量が30kW、ピークカット係数が0.9、設置場所の日射量が4kWh/㎡と仮定した場合、年間の発電量は、30×0.9×4×0.8×365=31,536kWhとなります。
設置業者にシミュレーションを依頼する
発電量のシミュレーションを業者に依頼する方法もあります。シミュレーションには、設備性能や設置地域、傾斜、方角などのさまざまな要素を組み込む必要があります。依頼時は、どのデータを考慮したシミュレーションであるかを事前に確認しましょう。業者によるシミュレーション結果だけでなく、自分で算出した数値も考慮に入れて、太陽光発電の運用方針について検討しましょう。
2022年の電気代高騰の背景
電気代高騰の大きな原因は、発電燃料費の高騰や再エネルギー賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)です。発電燃料であるLNG(液化天然ガス)の価格が高騰しているため、電気代にも反映されます。
世界的にLNGの需要が増加しているなか、LNGが不足していることやウクライナ危機の影響もあります。電気代の高騰を抑えるためには、省エネを意識した電気の使い方をしていく必要があります。
太陽光自家消費のトレンド
太陽光自家消費とは、太陽光発電で作った電気を電力会社に売らずに、自社設備で自家消費するシステムです。政府は、2030年度の温室効果ガス削減の目標達成を目指し、太陽光発電機能設備の導入を推奨しています。
FIT制度(固定価格買取制度)の期間が終わった家庭に、太陽光自家消費の人気が高まることが予想されています。太陽光自家消費の普及に伴い、今後の蓄電池の導入コストが安くなる可能性も期待されています。
まとめ
太陽光発電の過積載は、発電量の増加や設備の稼働率アップなどのメリットがあります。過度な過積載率や設備の補償範囲などに注意しながら、過積載の導入を検討してください。太陽光発電の発電量のシミュレーション方法や、電気代の推移、太陽光発電の自家消費のトレンドも参考にしてください。
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●著者プロフィール
会社名:国際航業株式会社
部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG
執筆者名:樋口 悟
執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。
https://energy-shift.com/news/author/71cbba7e-dbbc-4728-9349-9cdbed975c6e
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