再エネ賦課金とは?支払いは絶対?仕組み・最新の価格推移も解説

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

電気代の検針票や請求書を見て、「この再エネ賦課金って何だろう?」と疑問に感じている方は多いかもしれません。

再エネ賦課金とは、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を高く買い取るための費用を、一般の電気利用者から徴収されるものです。

電力会社から、当該月の電気使用量に応じて、電気代と同時に請求されます。

「自分とは関係ないしのに、なぜ払わないといけないの?」「できれば支払いたくないけど、どうしたらいいの?」と不満に感じる方もいるかもしれません。

しかし、残念ながら、電力会社からの電気を利用している以上は、再エネ賦課金は必ず支払わなければならないものです。

この記事では、再エネ賦課金(ふかきん)とは何かや仕組み、なぜ毎年単価が変わるのか、今後の賦課金単価の見通しなどを詳しく解説していきます。

また、再エネ賦課金をできるだけ払わなくて済むための方法についても説明します。

再エネ賦課金をできるだけ支払わない方法

再エネ賦課金について深く理解したい方は、ぜひ最後までお読みください。

再エネ賦課金(ふかきん)とは?

再エネ賦課金(ふかきん)とは?

再エネ賦課金(ふかきん)とは、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を高く買い取るための費用を、一般の電気利用者が負担するために支払うものです。正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金(ふかきん)」です。

再エネ賦課金は、使った電気代に応じて請求額が決まり、電力会社から電気代と一緒に請求されます。

再エネ賦課金は電力会社から使った電気代と一緒に請求される

出典:資源エネルギー庁|FIT・FIP制度> 制度の概要

例えば、2023年5月検針分~2024年4月検針分の電気料金の場合、「使用した電気量×1.40円/kWh」が再エネ賦課金として請求されます。

例:2023年10月検針分の電気料金が200kWhの場合、再エネ賦課金=200kWh×1.40円/kWh=280円

例:2023年10月検針分の電気料金が400kWhの場合、再エネ賦課金=400kWh×1.40円/kWh=560円

再エネ賦課金の仕組み

再エネ賦課金の仕組み

再エネ賦課金(ふかきん)の仕組みを表わした図が以下になります。緑の矢印が「再エネ賦課金」を示しています。

再エネ賦課金の仕組み

出典:再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)の改正について|近畿経済産業局

1. 企業や個人が「太陽光・水力・風力・地熱・バイオマス」で発電を行う
2. その発電した電力を「小売電気事業者等」(電力会社のこと)が、国が定めた期間と固定価格で買い取る
3. 電力会社は、電気使用者から「再エネ賦課金」を徴収する

再エネ賦課金は、「再生可能エネルギーによる発電を行う事業者・個人」(以下の図の緑色)が、発電した電力を国が決めた「通常よりも高い価格」で買い取ってもらうための財源となります。

そして、それを支えるのが電力会社から電力を購入している一般消費者(図のピンク色)で、電気料金と合わせて電力会社に支払います。それを原資にして、電力会社が、再生可能エネルギーを買い取るイメージです。

なお、発電した電力を国が決めた固定価格で買い取る制度のことを「FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)」といいます。

つまり、再エネ賦課金は、FIT制度を支えるために必要な仕組みといえます。

FIT制度についてさらに詳しく知りたい方は、「FIT制度の2023年最新情報|太陽光発電を始めたい方向けに解説」の記事もぜひ参考にしてください。

再エネ賦課金を請求されたら支払う義務がある

再エネ賦課金を請求されたら支払う義務がある

再エネ賦課金は電力会社から電力を購入している方が負担しなければならないもので、「再エネ賦課金を支払わない」という選択肢は取ることができません

電力会社から再エネ賦課金を請求された場合、電気料金と同時に、かならず支払う必要があります

再エネ賦課金はそもそも、日本が国を挙げて再生可能エネルギー普及を促進させるために設置されました。

2012年7月1日から制定された「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」でも、以下のように再エネ賦課金について定められています。

(賦課金の請求)
第三十六条 小売電気事業者等は、納付金に充てるため、当該小売電気事業者等から電気の供給を受ける電気の使用者に対し、当該電気の供給の対価の一部として、賦課金を支払うべきことを請求することができる。
2 前項の規定により電気の使用者に対し支払を請求することができる賦課金の額は、当該小売電気事業者等が当該電気の使用者に供給した電気の量に当該電気の供給をした年度における納付金単価に相当する金額を乗じて得た額とする。

引用:e-GOV法令検索

「うちは太陽光パネルを設置していないのに!」と不満に思う方もいるかもしれませんが、国の政策において支払う必要があるものなので、支払いましょう。

再エネ賦課金の支払いを拒否すると、電気料金が未納になってしまうので気を付けてください。

なお、再エネ賦課金を支払わなくて済む方法・削減する方法については、後述する「再エネ賦課金をできるだけ支払わなくて済む方法」を参考にしてください。

再エネ賦課金の単価は毎年変わる(2023年は1.40円/kWh)

再エネ賦課金の単価は毎年変わる(2023年は1.40円/kWh)

再エネ賦課金の単価は、以下の計算式によって算出し、毎年経済産業大臣が決めます。

再エネ賦課金の単価 =
 (①買取費用等-②回避可能費用等+広域的運営推進機関事務費)÷ ③販売電力量

そのため、毎年、賦課金の単価は変動することを覚えておきましょう。

例えば、2023年度は、1.40円/kWhが再エネ賦課金の単価となります。

2023年度の賦課金の単価

なぜ再エネ賦課金の単価が毎年変わるかというと、上記の計算式に使われている3つの要素が、年度ごとに異なるからです。

【賦課金単価の要素】

①買取費用等

2023年度中に再生エネルギーを買い取る費用の推計

②回避可能費用等

上記①の電力量を市場価格で調達したらいくらになるかの推計

③販売電力量

2023年度中に見込まれる販売電力量の推計

再生エネルギーを買い取る費用が増える見込みならば賦課金単価も上がりますし、費用が減るならば賦課金単価も下がります。

再エネ賦課金はどの電力会社でも全国一律

再エネ賦課金の単価は全国一律で決まっており、どの電力会社でも同一の料金体系となります。そのため、電気使用量が同じであれば、再エネ賦課金の金額も同じになります。

新電力会社でも大手電力会社でも、どの地域でも、金額は変わらないので安心してください。「新電力だから安い」「東京電力だから安い」ということはありません。どの会社でも同じです。

再エネ賦課金の単価は2023年度に初めて下落した

再エネ賦課金の単価は2023年度に初めて下落した

再エネ賦課金の2013年から2023年の単価の推移は、以下のグラフのようになります。

再エネ賦課金の2013年から2023年の単価の推移

【再エネ賦課金の単価の推移】

年度

単価(円/kWh)

2012年

0.22円

2013年

0.35円

2014年

0.75円

2015年

1.58円

2016年

2.25円

2017年

2.64円

2018年

2.9円

2019年

2.95円

2020年

2.98円

2021年

3.36円

2022年

3.45円

2023年

1.4円

再エネ賦課金の単価は、初年度2012年度の「0.22円/kWh」から2022年の「3.45円/kWh」まで年々上昇していましたが、2023年度には「1.4円/kWh」に初めて下落しました。

下落幅も大きかったため、「なぜ上がり続けていた再エネ賦課金がいきなり下がったの!?」と疑問に思う方も多いかもしれません。

その理由について、次章以降で解説していきます。

再エネ賦課金の単価が2023年度に下がった理由

再エネ賦課金の単価が2023年度に下がった理由

再エネ賦課金が下がった原因は、「FIT制度による買取価格が下がり、電力市場価格が高くなったから」と考えられます。

FIT制度がスタートした2012年度には、太陽光発電の固定買取価格は1kWhあたり42円でした(住宅用の場合)。しかし実際の電力市場価格は1kWhあたり14.4円であり、単純計算で27.6円程度の赤字となっている状況でした。

この赤字の部分を再エネ賦課金で支えるためには、年々、再エネ賦課金の単価を上げる必要があり、2012年度から2022年度までは単価が上がり続けたと考えられます。

しかしながら、その後、FIT制度による固定買取価格は当初の42円/kWhから、2023年には16円/kWhまで下がりました(10kW未満のシステムの場合の価格)。

10kW未満のFIT買取価格の2012年度から2022年度の推移

逆に、2022年度の電力の市場価格は平均26.7円/kWhまで高騰しました。つまり、買取価格と実際の市場価格とのギャップがかなり解消された状態になりました。

買取価格と市場価格のギャップが埋められたことにより、再エネ賦課金は2023年に下落したと考えられます。

再エネ賦課金はいつまで?今後の価格の展望

再エネ賦課金はいつまで?今後の価格の展望

2023年に初めて単価が下落した再エネ賦課金ですが、今後の価格がどうなるかを考察していきましょう。

再エネ賦課金はいつまで続くのか

まず、「再エネ賦課金はいつまで続くのか」という疑問については、公式な見解はないものの、今後最低でも20年後(2043年)までは続くと考えられます。

なぜならば、「FIT制度」で国が固定価格での買取を保証してくれる期間は、家庭用太陽光発電(10kW未満)の場合は10年、産業用太陽光発電の場合は20年のあいだ続くからです。

つまり、20年のあいだは買取価格と市場価格のギャップを埋め続ける必要があるため、最低でもFIT制度が終了してから20年間は続くでしょう。

FIT制度は現在も続いており、終了する予定も現在のところありません。そのため、これから20年よりも長く、しばらくのあいだは再エネ賦課金の徴収は続くと考えられます。

来年以降の再エネ賦課金は上がるのか下がるのか

再エネ賦課金の単価は2023年度に下落しましたが、来年以降も下がり続けるかというと「そうではなさそう」と考えた方が良いかもしれません。

「再生可能エネルギー普及を促進する」というFIT制度の性質上、今後も、市場価格よりも高く、再エネで発電した電力を買う状況が続きます。

さらに、2025年4月から東京都が太陽光発電設置義務化を始めるのを皮切りに、全国的に住宅への太陽光発電設備の義務化の動きが高まりそうです。

FIT制度を利用して、市場価格よりも高く発電した電気を買い取ってもらう人が増えれば、その分、それを支えるための再エネ賦課金の単価は上がると予想されます。

また、2021年頃から高騰していた電力市場価格も2023年に入ってからは落ち着き、従来の水準に戻りつつあります。

あくまで予測ですが、2024年にはまた再エネ賦課金の単価が上がる可能性はありえると考えられます。

再エネ賦課金をできるだけ支払わなくて済む方法

再エネ賦課金をできるだけ支払わなくて済む方法

最後に、再エネ賦課金を支払わなくて済む方法やできるだけ削減する方法について解説していきます。

電気を買わない「オフグリッド生活」を目指す

電力会社から買う電気をゼロにする「オフグリッド」を実現できれば、再エネ賦課金を支払わずに済みます。

再エネ賦課金は、電力会社から購入した電力量に応じて支払いが必要です。そのため、電力会社から購入する電力量をゼロにできれば、再エネ賦課金もゼロにできます。

しかしながら、太陽光発電は天候に左右されるため、オフグリッドを実現するためには、大掛かりな太陽光発電設備が必要になります。

オフグリッドを実現した施設は登場していますが、一般住宅での完全なオフグリッドの実現はまだまだ難しいと言わざるをえません

※オフグリッドについてさらに詳しく知りたい方は、「オフグリッドは蓄電池で実現可能?その実態、システム例と費用に迫る」の記事もぜひお読みください。

完全なオフグリッドではなく、太陽光発電や蓄電池を活用して「部分的なオフグリッド」を目指すのがおすすめです。

太陽光発電システムを導入して電力会社から買う電気を減らす

電力会社から買う電力を減らすことで、再エネ賦課金の金額も減らすことができます。

例えば、4kWの太陽光発電システムを導入して、年間1,500kWhの電力を買わずに済んだ場合、年間で2,100円の再エネ賦課金を削減できます(再エネ賦課金の単価が1.4円/kWhの場合)。

節電して電力会社から買う電気を減らす

できるだけ節電を心がけて電力会社から買う電力を減らすことで、再エネ賦課金の金額を減らせます。

節電方法の例

・省エネ家電や省エネ照明を使う
・冷蔵庫の設定温度を「強」から「中」に変える
・テレビの主電源を切る
・エアコンの設定温度を上げる
・扇風機を併用する
・使っていないコンセントを抜く

政府広報オンラインに詳しい節電方法アイデアが載っているので、ぜひ参考にしてみましょう。

まとめ

本記事では「再エネ賦課金」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

▼再エネ賦課金(ふかきん)とは?

・再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を高く買い取るための費用を、一般の電気利用者が負担するために支払うもの
・使った電気代に応じて請求額が決まる
・再エネ賦課金を請求されたら支払う義務がある

再エネ賦課金の単価

・2023年最新単価は【1.40円/kWh】
・初年度2012年度の「0.22円/kWh」から2022年の「3.45円/kWh」まで年々上昇していた
・2023年度には「1.4円/kWh」に初めて下落しました

再エネ賦課金はいつまで?今後の価格の展望

・最低でもFIT制度が終了してから20年間は続きそう
・2024年にはまた再エネ賦課金の単価が上がる可能性はありえる

再エネ賦課金をできるだけ削減するには、太陽光発電システムを導入したり節電したりして、電力会社から買う電気の量を少なくすることが大切です。

「今後の電気代急騰が怖い」「再エネ賦課金をできるだけ払いたくない」という方は、家庭への太陽光発電システムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

 

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