地域脱炭素のKPI設計は“電力・熱・モビリティ”をどう束ねるか?『面的GXダッシュボード』設計入門

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる
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目次

地域脱炭素のKPI設計は“電力・熱・モビリティ”をどう束ねるか?『面的GXダッシュボード』設計入門

序章:なぜ今、エネルギーの「統合」が地域脱炭素の成否を分けるのか?

2050年カーボンニュートラルという国家目標は、もはや個々の企業や家庭の努力の総和だけでは達成不可能な領域に達しています。この壮大な目標に向けた次なるフロンティアは、自治体や地域企業が主導する「エリア脱炭素」、すなわち地域全体のエネルギーシステムを一つの統合された有機体として捉え、最適化していくアプローチに他なりません。

本稿では、このエリア脱炭素を成功に導くための羅針盤として、地域全体のエネルギーシステムを「電力」「熱」「モビリティ」という3つの側面から統合的に捉え、その進捗と効果を可視化する『面的GXダッシュボード』の設計思想と、その心臓部となるKPI(重要業績評価指標)の構築手法を、国内外の最新動向と科学的知見に基づき、世界で最も詳細かつ実践的に解説します。

日本のエネルギー政策は、長らく大規模な集中型電源に依存するという構造的な課題を抱えてきました 1。この中央集権的なシステムは、安定供給という面で大きな役割を果たしてきた一方で、エネルギーの海外依存度の高さや、送電ロス、そして地域経済からの資金流出といった問題を内包しています。

この構造からの脱却と、地域に賦存する太陽光、風力、バイオマスといった再生可能エネルギーを最大限活用する分散型エネルギーシステムへの移行は、もはや選択肢ではなく、国家的な急務です 4。この歴史的なエネルギー変革の主役こそが、地域の地理的・社会的特性を最も深く理解する自治体や地域企業を中心とした「地域」なのです 4

この文脈で登場したのが、「面的GX(グリーントランスフォーメーション)」という新たな潮流です。これまでの脱炭素の取り組みは、個々の工場やビルでの省エネルギー対策、すなわち「個社最適」が中心でした。しかし、地域全体のエネルギー効率を最大化し、再生可能エネルギーの導入を飛躍的に加速させるためには、個々の取り組みを連携させ、相乗効果を生み出す「面的GX」という視点が不可欠です 7

これは、例えば、ある工場のプロセスで発生する排熱を、隣接する商業施設の暖房や給湯に利用したり、地域の事業所が保有する多数の電気自動車(EV)の駐車場を、地域全体の巨大な蓄電池群として活用したりする、エリア全体での最適化を目指すアプローチです。

本稿の目的は、この複雑で多岐にわたる「面的GX」を成功に導くための実践的な手引書となることです。

分断されがちな電力、熱、モビリティというエネルギーセクターを統合的に管理し、その成果を客観的なデータに基づいて評価・可視化するためのKPI設計と、それを集約するダッシュボードの構築手法を、政策の深読みから、核心となる理論、具体的なフレームワーク、国内外の先進事例、そして未来への実効的な提言まで、網羅的に論じます。これは、地域脱炭素の担当者が直面する「何を、どのように計測し、どう改善していくべきか」という根源的な問いに対する、現時点で最も解像度の高い回答となるでしょう。

第1部:戦略の土台となる政策フレームワークを理解する

エリア脱炭素のKPIを設計する上で、その前提となる国の政策意図を正確に理解することは不可欠です。現在、日本の地域脱炭素を牽引する二大政策として、環境省が主導する「脱炭素先行地域」と、経済産業省が推進する「面的GX支援プロジェクト」が存在します。これらは車の両輪であり、その特性と役割を把握することが、効果的な戦略立案の第一歩となります。

1-1. 国の設計図:「地域脱炭素ロードマップ」の核心

「脱炭素先行地域」の野心的な目標

環境省が「地域脱炭素ロードマップ」の中核施策として位置づける「脱炭素先行地域」制度は、2050年カーボンニュートラルを前倒しで実現するモデルケースを創出することを目的としています 9。その目標は極めて野心的で、2030年度までに選定地域内の民生部門(家庭および業務その他部門)における電力消費に伴うCO2排出量を実質ゼロにすることを目指します 6

この取り組みは、単なるCO2削減に留まりません。再生可能エネルギーの導入を通じて、防災・減災レジリエンスの向上、地域雇用の創出、エネルギーコストの域外流出抑制による地域経済の活性化といった、各地域が抱える多様な課題を同時に解決する「地方創生」の切り札として明確に位置づけられています 4。2025年9月時点で、全国40都道県の119市町村から90の計画提案が選定されており 6、これらの地域が成功モデルを示すことで、全国へ取り組みが波及する「脱炭素ドミノ」の起点となることが期待されています 9

資金と人材の支援メカニズム

国は、この野心的な目標を達成するため、手厚い支援策を用意しています。その中核となるのが「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」であり、選定された自治体は、5年間で最大50億円規模という重点的な財政支援を受けることが可能です 10。この交付金は、太陽光発電設備や蓄電池の導入、省エネ改修、自営線の敷設など、計画の実現に必要なハード・ソフト両面の事業に柔軟に活用できます。

さらに、資金面だけでなく、人材面での支援も強化されています。専門的な知見を持つ民間企業の「グリーン専門人材」を自治体に派遣する制度 15 や、自治体が公共施設の脱炭素化などを目的として単独で行う事業に対して有利な条件で資金調達を可能にする地方債「脱炭素推進事業債」の創設 16 など、多角的な支援メカニズムが構築されています。これにより、特に専門人材や財源が限られる中小規模の自治体であっても、主体的に計画を策定し、推進できる体制が整えられつつあります。

1-2. 産業界の羅針盤:「面的GX」支援プロジェクトの全貌

中小企業を巻き込む6つのアプローチ

一方で、経済産業省が推進する「中堅・中小企業の面的GX支援プロジェクト」は、地域経済の根幹をなすものの、脱炭素化への対応が遅れがちな企業群を支援することに主眼を置いています 7。大企業と比較して、情報、人材、資金といった経営資源が限られる中堅・中小企業が単独でGXに取り組むことは容易ではありません。

そこで本プロジェクトでは、個々の企業を点として支援するのではなく、地域全体を「面」として捉え、以下の6つのアプローチを通じて多角的に支援を展開します 8

  1. 支援機関アプローチ: 商工会議所などの地域の支援機関がハブとなり、伴走支援モデルを構築・横展開する。

  2. 金融機関アプローチ: 地域金融機関が取引先企業のGXを経営課題として捉え、ESG融資やコンサルティングを提供する。

  3. サプライチェーンアプローチ: 親事業者と連携し、サプライチェーン全体での排出量算定(Scope3)や削減目標設定を支援する。

  4. 自治体アプローチ: 自治体の産業振興部局と環境部局が連携し、地域企業向けの総合的な支援窓口を設ける。

  5. 工業団地アプローチ: 工業団地単位でエネルギー共同購入や排熱融通などの共同プロジェクトを組成する。

  6. 業界アプローチ: 業界団体を通じて、特定の業種に特化した省エネ診断や技術導入を促進する。

この多面的なアプローチにより、個別の省エネ診断からサプライチェーン全体での排出量管理まで、企業の規模や業態に応じたきめ細やかな支援を効率的かつ効果的に提供することを目指しています。

「守りのGX」から「攻めのGX」へ

面的GXが目指すのは、単なるエネルギーコストの削減や規制対応といった「守りのGX」に留まりません 8。むしろ、脱炭素への取り組みを企業の新たな成長機会と捉え、ブランド価値の向上や新規顧客の獲得、新たな事業創出に繋げる「攻めのGX」への転換を強力に後押しします 18

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の世界的な拡大に伴い、企業の環境への取り組みが、その企業価値を測る重要な指標となっています 18。サプライチェーンにおいては、取引先に対してCO2排出量の報告や削減目標の設定を求める動きが加速しています 19。このような状況下で、GXへの取り組みは、もはやコストではなく、金融機関からの有利な資金調達や、グローバルなサプライチェーンにおける競争力を強化するための必須の「投資」となりつつあるのです 18

政策の二重構造とその連携の重要性

これら二つの主要政策を深く分析すると、日本のエリア脱炭素戦略が持つ二重構造が見えてきます。環境省が主導する「脱炭素先行地域」は、国が特定のエリアに集中投資を行い、先進的な成功モデルを創出し、それを全国に横展開(脱炭素ドミノ)させようという、いわばトップダウン型のモデル創出戦略です 6。選定された地域では、自治体が司令塔となり、再エネ設備や次世代エネルギーインフラといったハード面の整備が重点的に進められます。

これに対し、経済産業省が推進する「面的GX」は、地域経済の主役である中堅・中小企業という個々のプレイヤーをいかに支援し、産業全体の底上げを図るかという視点に立った、ボトムアップ型の裾野拡大戦略と言えます 7。金融機関やサプライチェーンといった既存の産業エコシステムを活用し、ソフト面での支援を通じて、面的な広がりを目指すアプローチです。

この二つの政策は、目的地は同じ「地域脱炭素」でありながら、アプローチと主眼が異なります。そして、エリア脱炭素を真に成功させるためには、この二つの政策が有機的に連携することが決定的に重要です。例えば、脱炭素先行地域内に先進的なマイクログリッドが整備されたとしても、その地域で操業する主要産業である中小企業群がGXに取り組むインセンティブやノウハウを持たなければ、インフラの価値は半減してしまいます。逆に、面的GX支援によって個々の中小企業の脱炭素意識が高まったとしても、地域全体としてのエネルギーインフラが旧態依然のままでは、企業努力だけでは達成できない壁に突き当たります。

したがって、エリア脱炭素の進捗を測るKPIを設計する際には、これら二つの政策の「連携度」を可視化する指標を意図的に組み込む必要があります。例えば、「脱炭素先行地域内における面的GX支援対象企業の比率」や、「地域金融機関による先行地域関連プロジェクトへの融資実行額・件数」、「先行地域で創出された再エネ電力の中小企業への供給契約率」といった指標が考えられます。これらは、ハード(インフラ)とソフト(産業支援)が両輪として機能しているかを測るバロメーターとなり、政策効果を最大化するための重要な示唆を与えてくれるでしょう。

第2部:エリア脱炭素の鍵を握る核心理論「セクターカップリング」

なぜ、エリア脱炭素のKPI設計において「電力・熱・モビリティの統合」がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。その答えは、エネルギーシステム全体の効率を根本から変革する「セクターカップリング」という概念にあります。この理論を理解することは、効果的なKPIを設計し、真に持続可能な地域エネルギーシステムを構築するための必須要件です。

2-1. セクターカップリングとは何か?:エネルギーシステムの革命

定義と必要性

セクターカップリング(Sector Coupling)とは、これまで個別のシステムとして設計・運用されてきた「電力」部門を、建物の冷暖房や給湯、工場のプロセス加熱などを担う「熱」部門、そして人やモノの移動を担う「モビリティ(運輸)」部門と、技術的・制度的に連携・融合させることで、エネルギーシステム全体の効率化と脱炭素化を同時に達成しようとする社会インフラ改革の構想です 20

この概念は、単に各部門を電化するだけにはとどまりません。各部門が持つエネルギーの需要や貯蔵の特性を相互に活用し、システム全体を一つの大きなエネルギーネットワークとして最適に運用することを目指します。

再エネの不安定性という根源的課題

セクターカップリングが今、世界的に注目される最大の理由は、太陽光や風力といった変動性再生可能エネルギー(Variable Renewable Energy: VRE)の大量導入という、脱炭素社会が直面する根源的な課題にあります。VREは、発電時にCO2を排出しませんが、天候や時間帯によって出力が大きく変動するという避けられない特性を持っています。

晴れた日の昼間や風の強い夜間など、電力需要が低い時間帯にVREの発電量が需要を上回ると、「余剰電力」が発生します。この余剰電力を吸収する能力が系統にないと、周波数を維持するために、電力会社はVRE発電事業者に対して発電を一時的に停止するよう命じます。これが「出力抑制」です 22。出力抑制は、せっかく生み出されたクリーンなエネルギーを無駄に捨てる行為であり、再エネの導入拡大における深刻なボトルネックとなっています。

セクターカップリングは、この「余剰電力」を、捨てるのではなく、他のエネルギー形態に変換して有効活用するための最も有力な解決策です 24余剰電力が発生した際に、それを熱に変えて貯めておいたり(Power-to-Heat)、電気自動車(EV)のバッテリーに充電したり(Power-to-Mobility)することで、電力系統の需給バランスを調整し、出力抑制を回避することが可能になります。これにより、結果として地域に導入できる再エネの総量を最大化することができるのです。

Power-to-X(P2X)の概念

このセクターカップリングを実現する一連の技術群は、「Power-to-X(P2X)」と総称されます 20。これは文字通り「電力(Power)を、何か別の価値あるもの(X)に変換する」技術を意味し、「X」には熱(Heat)、モビリティ(Mobility)、あるいは水素などのガス(Gas)といった具体的なエネルギー形態が入ります。P2Xは、電力を時間的・空間的に超えて活用可能にする、エネルギーの「錬金術」とも言える技術体系なのです。

2-2. 主要な連携パターンと技術

セクターカップリングは、具体的にどのような技術によって実現されるのでしょうか。ここでは、主要な3つの連携パターンを見ていきます。

Power-to-Heat (P2H): 熱の脱炭素化

日本の最終エネルギー消費の大きな割合を占める熱需要(冷暖房、給湯、産業プロセス)の脱炭素化は、極めて重要な課題です。Power-to-Heatは、余剰電力を用いて熱を生成・貯蔵することで、この課題に応えます。

その代表的な技術が、ヒートポンプと地域熱供給(District Heating and Cooling: DHC)の組み合わせです。ヒートポンプは、少ない電力で空気中や地中、水中などから熱を汲み上げて利用する高効率な技術です。余剰電力が発生した際に大規模なヒートポンプを稼働させ、温水や冷水として熱を製造し、断熱性の高い蓄熱槽に貯蔵します。そして、この熱を導管を通じて複数の建物に一括して供給するのがDHCシステムです 26DHCは、個別のビルや住宅がそれぞれ熱源を持つよりも、エリア全体でエネルギー効率を大幅に向上させることができます。欧州の多くの都市ではDHCが広く普及していますが、日本ではまだ限定的であり、今後の都市開発において大きなポテンシャルを秘めています 27。また、工場や下水処理場、データセンターなどから排出される「未利用熱」をDHCの熱源としてカスケード利用する取り組みも、エネルギーの地産地消と高度利用の観点から非常に重要です 29

Power-to-Mobility (P2M): モビリティの電化とエネルギーリソース化

運輸部門の脱炭素化の切り札は、言うまでもなく電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)への転換です。Power-to-Mobilityは、単に移動手段を電化するだけでなく、そのEVをエネルギーシステム全体のリソースとして活用することを目指します。

その核心技術が「Vehicle-to-Grid(V2G)」です 32。V2Gは、EVを単なる電力の消費者ではなく、「移動可能な蓄電池」として捉え、電力系統と双方向で電力をやり取りする技術です。具体的には、電力需要が逼迫する夕方のピーク時などに、駐車中の多数のEVから電力系統へ電気を供給(逆潮流)することで、需給バランスの調整に貢献します。日本の乗用車の平均稼働率は5%以下と言われており、残りの95%以上の時間は駐車しています。この膨大な「眠れるバッテリー資源」をV2Gによって活用できれば、高価な定置用蓄電池の設置を大幅に抑制しつつ、巨大な調整力を極めてコスト効率よく確保できる可能性があります 332025年現在、V2G市場はまだ黎明期にありますが、世界市場は年率30%近い驚異的な成長が見込まれており 34、双方向充放電の国際標準規格(ISO 15118-20など)の整備が進むことで、新たなビジネスモデルが次々と生まれると予測されています 36

Power-to-Gas (P2G): 長期・大規模エネルギー貯蔵の切り札

V2Gや蓄電池が数時間から1日といった短期的な需給調整を得意とするのに対し、春や秋の電力需要が少ない時期に発生する、数週間から季節をまたぐような大規模な余剰電力を吸収するためには、より長期・大容量のエネルギー貯蔵技術が必要となります。その最も有望な選択肢がPower-to-Gasです 37

P2Gは、余剰電力を使って水を電気分解し、水素(H2)を製造します。この水素は、そのまま燃料電池で利用したり、燃料電池車に充填したりできます。さらに、発電所や工場などから回収したCO2と合成させることで、都市ガスの主成分である合成メタン(e-methane)を製造することも可能です。水素や合成メタンの最大の利点は、既存のガスパイプラインや貯蔵タンクといったインフラを大規模に活用できる点にあります 25。これにより、電力をガスの形で長期間・大量に貯蔵し、必要な時に発電や熱利用に再変換することが可能となり、エネルギーシステムの柔軟性と強靭性を飛躍的に高めることができます。

セクターカップリングは「エネルギーの民主化」と「地域の経済的自立」を促す

セクターカップリングを単なる技術的なエネルギーマネジメント手法として捉えるのは、その本質を見誤る可能性があります。この概念がもたらす最も深遠な変化は、エネルギーの生産と消費の主権を、中央集権的な大企業から地域や個人へと移譲し、地域内で新たな経済循環を創出する「エネルギーの民主化」と「地域の経済的自立」の促進にあります。

従来のエネルギーシステムを振り返ると、それは大手電力・ガス会社が所有する大規模な発電所やLNG基地から、消費者へ一方向的にエネルギーを供給する中央集権モデルでした 2。私たちが支払うエネルギー代金の多くは、化石燃料の購入費として中東などの産油国へ、あるいは設備投資や維持費として地域外の大企業へと流出していました 39

しかし、セクターカップリングを前提としたエリア脱炭素の世界では、この構造が根本から覆ります。エネルギーの源泉は、地域に降り注ぐ太陽光、地域を吹き抜ける風 40、地域の森林から得られるバイオマス 41、そして地域の産業活動から生まれる未利用熱 29 といった、その土地固有の「地域資源」となります。

さらに、Power-to-Mobility(V2G)の進展は、市民や事業者が所有する一台一台のEVを、エネルギーシステムの安定化に貢献する重要な構成要素(調整力リソース)へと変貌させます。EVの所有者は、電力の需給バランス調整に協力することで、電力会社やアグリゲーターから対価を得る新たなビジネスモデルに参加できるようになります 33。これは、単なる消費者(Consumer)であった人々が、生産者(Producer)の役割も担う「プロシューマー(Prosumer)」へと進化することを意味します 9。同様に、Power-to-Heat(DHC)においては、これまで無価値に捨てられていた地域の工場排熱やごみ焼却熱 24 が、地域内で熱として融通される価値ある資源となります。

このように、エネルギーの生産(再エネ)、貯蔵・調整(EV、蓄熱)、そして消費(電化)という一連のサイクルが、地域内で完結する度合いが飛躍的に高まります。その結果、これまで地域外へ流出していたエネルギーコストが地域内で循環し、地域新電力、VPPアグリゲーター、EVシェアリングサービス、省エネコンサルティングといった新たな地場産業と雇用を生み出すのです 4

この視点に立てば、セクターカップリングの進捗を評価するKPIは、発電効率やCO2削減量といった技術的・環境的な指標だけでは不十分であることがわかります。脱炭素の取り組みが、どれだけ地域の経済的自立に貢献したかを測る「エネルギー代金の域内循環率」や「地域プロシューマーによる年間総収益額」、「地場エネルギー産業の雇用創出数」といった経済的・社会的指標とセットで評価することが不可欠です。これこそが、脱炭素を負担の大きい「コスト」としてではなく、地域を豊かにする「投資」として位置づけ、持続可能な取り組みとして社会に根付かせるための鍵となるのです。

第3部:実践的KPIフレームワークの設計

理論と政策を理解した上で、次はいよいよエリア脱炭素の進捗を測るための具体的なKPI(重要業績評価指標)フレームワークを設計します。優れたKPIは、単なる数値目標ではなく、地域の現状を正確に診断し、次の一手を導き出すための「計器盤」として機能します。

3-1. KPI設計の原理原則:システム思考で全体最適を目指す

個別最適の罠からの脱却

エリア脱炭素は、電力供給、熱需要、交通システム、産業活動、市民生活、そして地域の自然環境などが複雑に相互作用しあう、一つの巨大な「システム」です。このような複雑なシステムを管理する上で最も陥りやすいのが、「個別最適の罠」です。これは、システムの一部を構成する個々の要素の最適化だけを追求した結果、システム全体としてはかえって非効率な、あるいは予期せぬ副作用を伴う状態に陥ってしまう現象を指します 42

例えば、「再生可能エネルギー導入量」という単一のKPIだけを絶対的な目標として追求したとします。その結果、系統の安定性を考慮せずに太陽光発電を急増させ、大規模な出力抑制を頻発させてしまったり、あるいは景観や生態系への配慮を欠いた開発によって地域住民との間に深刻な対立を生んでしまったりする可能性があります。これでは、持続可能な脱炭素化は実現できません。

したがって、KPIを設計する際には、常にシステム全体を俯瞰する「システム思考」が求められます。電力・熱・モビリティの各セクターの進捗を個別に追うだけでなく、それらの間の連携(セクターカップリング)がもたらす相乗効果や、経済・社会・環境という多面的な価値への影響を統合的に評価するフレームワークが必要不可欠です。

ロジックモデルの適用

優れたKPI設計の土台となるのが、「ロジックモデル」という思考のフレームワークです。これは、ある事業や政策がどのようなプロセスを経て成果を生み出すのかを、以下の連鎖で論理的に整理する手法です。

  • インプット(Input): 事業に投入される資源(例:予算、人員、設備)

  • プロセス(Process)/アクティビティ(Activity): 投入された資源を用いて行われる活動(例:補助金交付、再エネ設備設置工事、住民説明会の開催)

  • アウトプット(Output): 活動によって直接的に生み出される産出物(例:補助金交付件数、太陽光パネル設置容量(kW)、説明会参加人数)

  • アウトカム(Outcome): アウトプットによってもたらされる中長期的な成果や便益、社会の変化(例:CO2排出削減量、エネルギー自給率の向上、市民の省エネ行動への意識変容)

多くの行政計画では、アウトプット指標(例:〇〇を△△基整備する)が目標として掲げられがちですが、本当に重要なのは、その活動がどのようなアウトカム(社会的な価値)を生み出したかです。このロジックモデルに基づいてKPIを体系化することで、単なる活動量の報告に終わらず、事業の真の成果を多角的に、かつ説得力を持って評価することが可能になります。

3-2. 階層的KPIモデルの提案:計測すべき指標の全体系

上記の原理原則に基づき、エリア脱炭素の全体像を捉えるための「階層的KPIモデル」を提案します。これは、個別のセクターの健全性を測る「レイヤー1」、セクター間の連携度を測る「レイヤー2」、そして最終的な地域価値の創出度を測る「レイヤー3」の三層構造で構成されます。

レイヤー1:セクター別基礎KPI(健全性の計測)

これは、電力・熱・モビリティの各セクターが、脱炭素化の基盤としてそれぞれ健全に機能しているかを評価するための基礎的な指標群です。いわば、各部門の「体力測定」に相当します。

  • 電力セクター:

    • 再生可能エネルギー導入ポテンシャル達成率 (%): 地域の賦存量調査で算出された導入ポテンシャルに対し、実際にどれだけ導入が進んだか 43

    • エネルギー自給率 (%): 地域内の総エネルギー消費量に対し、地域内で生産されたエネルギー(再エネ等)が占める割合 45

    • 自家消費率 (%): 地域内で発電された再エネ電力のうち、送電網に逆潮流せず、地域内で直接消費された電力の割合 45

    • 系統安定性指標: 再エネの出力抑制が発生した総時間(時間/年)および抑制量(kWh/年)。

  • 熱セクター:

    • 未利用熱活用率 (%): 工場排熱、下水熱、ごみ焼却熱など、地域内に存在する未利用熱エネルギーのうち、実際に回収・利用されている割合 29

    • 熱需要の電化率 (%): 地域全体の熱需要(冷暖房・給湯)のうち、ヒートポンプや電気ボイラーなど電気を熱源とする機器で賄われている割合。

    • 地域熱供給(DHC)普及率 (%): DHCの供給対象エリア内の建物床面積のうち、実際にDHCに接続している床面積の割合。

    • 熱源の脱炭素化率 (%): DHCや個別の熱源機で生成される熱のうち、再エネ電力、バイオマス、水素など非化石エネルギー由来の熱が占める割合。

  • モビリティセクター:

    • 電動車普及率 (%): 地域内で保有・運行されている車両(自家用車、商用車、公共交通)のうち、EV、PHEV、FCVが占める割合 9

    • V2G/V2H対応可能車両比率 (%): 導入された電動車のうち、外部給電機能を持つ車両の割合。

    • 充電インフラ整備率: 人口1万人あたりの公共用急速・普通充電器の設置数、または主要な目的地(商業施設、公共施設等)における設置カバー率。

レイヤー2:セクター統合KPI(相乗効果の可視化)

本稿の核心部分であり、セクターカップリングがどれだけ効果的に機能し、システム全体としての相乗効果を生み出しているかを可視化する指標群です。

  • 電力 ⇔ 熱 連携度:

    • P2Hによる余剰電力吸収量 (kWh/年): 電力系統の余剰電力を用いて、ヒートポンプや電気ボイラーで生成・貯蔵された熱エネルギーの総量。

    • DHCへの再エネ電力供給比率 (%): DHCの熱源(ヒートポンプ等)で使用される電力のうち、地域産の再エネ電力が占める割合。

    • 熱電併給(CHP)システムの総合エネルギー効率 (%): バイオマスCHPなどで、投入した燃料エネルギーのうち、電気と熱として有効に利用されたエネルギーの合計割合。

  • 電力 ⇔ モビリティ 連携度:

    • V2Gによる系統への逆潮流量 (kWh/日・年): EVから電力系統へ供給された電力の総量。地域の調整力としての貢献度を示す。

    • EV充電のデマンドリスポンス(DR)参加率 (%): 電力需給が逼迫または緩和する時間帯に、電力会社の要請に応じて充電時間をシフトしたEVの割合。

    • 再エネ電力によるEV充電比率(地産地消充電率, %): 地域内で行われるEV充電の総電力量のうち、地域産の再エネ電力で賄われた割合。

  • 熱 ⇔ モビリティ 連携度(間接):

    • バイオマス資源からの熱・バイオ燃料同時生産効率: 木質バイオマスなどから、地域熱供給用の熱と、持続可能な航空燃料(SAF)などのバイオ燃料を同時に生産する際の総合エネルギー効率 29

    • 水素ステーションにおける排熱利用率 (%): 水素製造プロセスや圧縮時に発生する熱を、近隣の施設へ供給・利用している割合。

レイヤー3:最終成果KPI(地域価値の創造)

脱炭素の取り組みが、最終的に地域社会にどのような価値をもたらしたかを評価する、最も上位の指標群です。環境、経済、社会という3つの側面から構成されます。

  • 環境価値:

    • エリア全体のGHG排出削減量 (t-CO2/年): 基準年比での温室効果ガス排出量の削減実績。最も根源的な成果指標 45

    • 地域エネルギー循環率 (%): 地域内の総エネルギー需要に対し、地域内で生産・循環利用されたエネルギー(再エネ、未利用熱等)の割合 45

  • 経済価値:

    • エネルギーコスト削減額 (円/年): 省エネとエネルギー転換によって、地域全体として削減できたエネルギー関連支出の総額 45

    • 域内経済循環率・雇用創出効果: エネルギー関連事業において、地域内の企業への発注額や、創出された新規雇用の数 45

    • グリーン関連産業の新規立地数・投資額: 脱炭素の取り組みを契機として、地域に進出した関連企業数や、域内企業による関連設備投資の総額。

  • 社会価値(レジリエンス・Well-being):

    • 災害時エネルギー自立可能時間 (時間): 大規模停電が発生した際に、地域の分散型電源(マイクログリッド等)のみで、主要な避難所や公共施設の機能を維持できる時間 45

    • 市民のエネルギー関連行動変容率 (%): 省エネ行動や再エネ電力プランへの切り替え、EV購入など、脱炭素に貢献する行動を実践した市民の割合(アンケート調査等で測定)。

    • 健康・快適性向上指標: ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化による室内の温熱環境改善や、それに伴う健康指標(ヒートショック関連の救急搬送件数減少など)の変化。

3-3. ユースケース別KPI設定例

この階層的KPIモデルは、あらゆる地域でそのまま適用するのではなく、地域の特性に応じてカスタマイズすることが重要です。以下に、代表的なユースケースごとの重点KPI設定例を示します。

  • 都市部(業務ビル街区):

    • 重点KPI: ZEB化達成率、地域熱供給(DHC)導入率、ビル間での電力・熱融通量、EVカーシェアリングの利用率、公共交通機関の電動化率。

    • 背景: 業務ビルからのエネルギー消費が支配的であるため、建物の省エネ・創エネと、高密度な需要を活かしたエネルギー融通が鍵となる。

  • 郊外住宅地:

    • 重点KPI: ZEH化達成率、家庭用太陽光発電・蓄電池・V2Hシステムの導入率 45、住民参加型デマンドリスポンス(DR)の参加率と応答量。

    • 背景: 家庭部門のエネルギー消費と自家用車利用が中心。個々の住宅をエネルギーリソースとしてネットワーク化し、VPP(仮想発電所)として活用する視点が重要。

  • 工業団地:

    • 重点KPI: 工場排熱の回収・利用率、屋根置き太陽光発電の自家消費率、サプライチェーン全体でのScope3排出量削減率、共同での再生可能エネルギー電力購入(コーポレートPPA)率。

    • 背景: 産業部門のエネルギー消費とプロセス熱需要が大きい。個社での取り組みに加え、団地全体でのエネルギー最適化と、サプライチェーンを通じた脱炭素化が求められる。

  • 農山漁村:

    • 重点KPI: 営農型太陽光発電の導入面積と発電量 40、木質バイオマスボイラー・熱電併給による熱利用量 29、農業用車両・漁船の電動化・水素化率、小水力発電による地域エネルギー自給率。

    • 背景: 広大な土地や豊富なバイオマス資源といった地域固有のポテンシャルを、第一次産業の振興と両立させながら活用することが核心となる。


表1: 階層的KPIモデル一覧(抜粋)

レイヤー カテゴリ 指標名 計算式(例) データソース(例) 目標設定の考え方
レイヤー1 電力 エネルギー自給率 (域内エネルギー生産量 ÷ 域内総エネルギー消費量) × 100 地域エネルギー統計、再エネ設備台帳 国のエネルギー基本計画や、地域の再エネ導入ポテンシャルを踏まえ、段階的な目標を設定。
(基礎KPI) 未利用熱活用率 (活用された未利用熱量 ÷ 賦存する未利用熱量) × 100 工場・清掃工場データ、下水道台帳 地域の主要な未利用熱源を特定し、技術的・経済的に実現可能な活用率を目標とする。
モビリティ 電動車普及率 (域内のEV/PHEV/FCV登録台数 ÷ 域内自動車保有台数) × 100 自動車検査登録情報 国の普及目標(2035年までに乗用車新車販売で電動車100%)を参考に、先行的な目標を設定。
レイヤー2 電力⇔熱 P2Hによる余剰電力吸収量 Σ (ヒートポンプ等の余剰電力時間帯における消費電力量) スマートメーター、EMSデータ 地域の再エネ導入量と電力需要パターンから、将来の余剰電力量を予測し、吸収目標を設定。
(統合KPI) 電力⇔モビリティ V2Gによる系統への逆潮流量 Σ (各V2G対応EVからの放電電力量) V2G充放電器、アグリゲーターのプラットフォームデータ 地域のV2G対応EV普及予測に基づき、調整力市場で求められる供給量などを参考に目標を設定。
レイヤー3 経済価値 エネルギーコスト域内循環率 (エネルギー関連事業の域内企業への発注額 ÷ 地域全体のエネルギーコスト総額) × 100 地域新電力の決算書、事業者アンケート 地域経済への波及効果を最大化する観点から、現状値を把握し、毎年向上させる目標を設定。
(成果KPI) 社会価値 災害時エネルギー自立可能時間 停電時に主要避難所の機能を維持できる時間 マイクログリッドのシミュレーション、蓄電池容量、燃料備蓄量 地域の防災計画で想定される最大孤立期間などを考慮し、必要最低限の機能を維持できる時間を目標とする。

第4部:「面的GXダッシュボード」の設計思想と実装

効果的なKPIフレームワークが設計できたとしても、それがExcelの表の中に眠っているだけでは意味がありません。KPIをリアルタイムで計測し、多様な関係者にとって「わかる・使える」形に可視化し、次のアクションに繋げるためのツール、それが「面的GXダッシュボード」です。ここでは、その設計思想と実装における要点を解説します。

4-1. 誰のためのダッシュボードか?:ステークホルダー別要件定義

優れたダッシュボードは、利用するステークホルダー(利害関係者)ごとに、最適化された情報と機能を提供します。エリア脱炭素に関わる主要なステークホルダーと、彼らがダッシュボードに求める要件は以下の通りです。

  • 政策決定者(市長・議員・企画部門):

    • 目的: 政策の効果をマクロな視点で把握し、予算配分や条例改正などの意思決定に活かす。

    • 必要な情報: エリア全体のGHG排出量の推移、エネルギー自給率、再エネ導入率、域内経済効果(雇用創出数、投資誘発額)といった、第3部で定義したレイヤー3の最終成果KPIが中心。

    • 求められる機能: 複数のKPIを統合した「地域脱炭素進捗インデックス」のような総合評価指標の表示。政策介入(例:EV購入補助金の増額)が将来のKPIに与える影響を予測するシミュレーション機能。

  • 事業者(工場長・ビル管理者・地域新電力):

    • 目的: エネルギーコストを削減し、自社の運用を最適化する。また、新たなエネルギーサービス(VPPなど)による収益機会を探る。

    • 必要な情報: 自社施設におけるリアルタイムのエネルギー消費・発電データ、電力・熱市場の価格情報、デマンドリスポンス(DR)の発令状況、設備の稼働効率など、日々のオペレーションに直結するミクロなデータ 47

    • 求められる機能: エネルギー消費の異常値を検知し、アラートを出す機能。過去のデータに基づき、最適な設備運転スケジュールをレコメンドする機能。

  • 市民(住民):

    • 目的: 自宅の光熱費を節約する。脱炭素という社会貢献活動に、楽しみながら参加する。

    • 必要な情報: 自宅のエネルギー消費量と、匿名化された近隣の平均的な家庭との比較データ。太陽光発電の発電状況と自家消費・売電のバランス。EVの充電に最適な(=電力が安く、再エネ比率が高い)時間帯の通知。

    • 求められる機能: 省エネ行動やDR協力に対して、地域で使える商品券やポイントが付与されるインセンティブの可視化。省エネ達成度を競うランキングなど、参加を促すゲーミフィケーション要素 49

4-2. UI/UXデザインのベストプラクティス

ダッシュボードが持つ情報の価値は、その伝え方、すなわちUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)のデザインに大きく左右されます。専門家でなくても直感的に理解でき、次の行動を促すようなデザインには、いくつかの原則があります。

直感的なデータ可視化とストーリーテリング

複雑な数値をただグラフや表で示すだけでは、多くの人々の心には響きません。重要なのは、データに意味と文脈を与え、「ストーリー」として伝えることです 49

例えば、「本日の再エネ発電量:50,000 kWh」という表示だけでは、その価値は伝わりにくいでしょう。これを、「今日の太陽がくれた恵みで、地域内のEV 1,000台をフル充電できました!」あるいは「今月のCO2削減量は、市民の森の杉の木 500本が1年間に吸収する量に相当します」といった、身近で具体的なモノや体験に換算して表現することで、データは一気に自分事になります。

また、東京都渋谷区のデータ可視化サイト「SHIBUYA DATA CONSORTIUM」の事例は示唆に富んでいます 52。このサイトでは、エネルギーデータだけでなく、人流データ、放置自転車の状況、SNSでのつぶやきといった多様な地域データを地図上に重ね合わせて表示することで、単一のデータからは見えてこない新たな都市の表情や課題を浮かび上がらせています。面的GXダッシュボードにおいても、エネルギー需給と交通渋滞、あるいは気象データなどを組み合わせることで、より深い洞察を得ることが可能になります。

市民の行動変容を促す「ナッジ」の組み込み

ダッシュボードを、単なる情報提供ツールから、人々の行動を変えるための「仕掛け」へと昇華させる上で、行動経済学の「ナッジ(Nudge)」理論が極めて有効です 9。ナッジとは、人々がより良い選択を自発的に取れるように、そっと後押しするような選択肢の設計手法を指します。

これをダッシュボードに組み込むことで、強制や金銭的インセンティブだけに頼らず、市民の自発的な省エネ行動を引き出すことができます。具体的なナッジの例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 社会的比較(Social Comparison): 「あなたの世帯の今月の電気使用量は、同じような家族構成のご近所の平均より20%多いです。暖房の設定温度を1℃下げると、平均に近づきます」といった情報を提供し、他者との比較を通じて行動を促す 54

  • 損失回避(Loss Aversion): 人は利益を得ることよりも損失を避けることを強く意識する傾向があります 55。これを利用し、「このままのペースで電気を使い続けると、今月の電気代は目標額を3,000円オーバーする見込みです」と、潜在的な損失を具体的に提示する。

  • デフォルト設定(Default Setting): EVの充電設定において、初期設定(デフォルト)を「電力料金が最も安く、再エネ比率が高い時間帯に自動で充電する」にしておく。多くの人は設定を変更するのが面倒なため、デフォルトの省エネ行動に誘導されやすくなります。

4-3. ダッシュボードのモジュール構造案

多様なステークホルダーの要求に応え、拡張性を持たせるためには、ダッシュボードを機能ごとの「モジュール」の組み合わせとして設計することが有効です。以下に、基本的なモジュール構造案を示します。

  • リアルタイム需給モニター:

    • 地域の地図上に、電力・熱の需給バランスをリアルタイムで可視化。主要な再エネ発電所の発電量、大規模施設の消費量、EVの充放電ステータス、DHCの熱供給状況などを、色やアイコンの大きさで直感的に表示する。

  • KPIトラッカー:

    • 第3部で設計した階層的KPIの進捗状況を一覧で表示。各KPIについて、設定した目標値に対する現在の達成度を、パーセンテージや信号機(緑・黄・赤)などで分かりやすく示す。ドリルダウン機能により、各KPIの構成要素や過去の推移を詳細に確認できる。

  • 経済・環境インパクト分析:

    • セクターカップリングによる成果を、具体的な価値に換算して表示するモジュール。削減できたエネルギーコスト(円)、域内への経済波及効果(円)、CO2削減量(トン)、化石燃料輸入削減量(原油換算バレル)などを、時系列グラフやインフォグラフィックで示す。

  • レジリエンス評価:

    • 災害シミュレーション機能を搭載したモジュール。地図上で主要な電力系統の寸断を仮定した場合に、地域内のマイクログリッドがどの範囲をカバーし、何時間自立運転が可能か、主要な避難所や医療機関への電力供給が維持されるかをシミュレーションし、地域のエネルギー的な脆弱性を評価する。

  • 市民エンゲージメント・ポータル:

    • 市民向けのインターフェース。各家庭の省エネランキング、脱炭素に関連する地域イベント(省エネセミナー、EV試乗会など)の情報、専門家へのQ&Aフォーラム、そして行動変容を促すナッジメッセージなどを集約して提供する。

ダッシュボードは単なる「可視化ツール」ではなく、「地域内コミュニケーション・プラットフォーム」である

面的GXダッシュボードの設計において、最も重要な思想転換は、それを単なる「データの可視化ツール」としてではなく、多様なステークホルダー間の「コミュニケーション・プラットフォーム」として捉え直すことです。

従来のエネルギー管理システムは、専門知識を持つ一部の管理者だけがアクセスし、運用を最適化するための閉じたツールでした 48。しかし、面的GXの世界では、エネルギーシステムの構成要素が劇的に多様化・分散化します。市民が所有するEVのバッテリー 33、事業者が排出するプロセス熱 30、自治体が管理する公共施設の屋根 40 など、これまでエネルギーシステムの外側にいた無数の主体が、能動的なリソース提供者としてシステムに参加します。

これらの多様な主体が、中央からの指令なしに、自律的かつ協調的に行動するためには、単に自分自身のデータを見るだけでは不十分です。お互いの状況をリアルタイムで共有し、システム全体の最適化という共通の目標に向かって、行動を同期させるための「場」が必要となります。ダッシュボードは、まさにその役割を果たすのです。

例えば、ダッシュボード上で「明日の12時から15時にかけて、市内の太陽光発電による大幅な余剰電力が見込まれます。この時間帯にEVの充電やヒートポンプによる蓄熱を行った事業者・市民には、地域ポイントを通常の3倍付与します」という情報がプッシュ通知され、地図上で対象エリアがハイライトされたとします。これを見た市民や事業者は、インセンティブに基づいて自らの行動を最適化しようとします。これは、データとインセンティブを介した、新たな形の社会的コミュニケーションに他なりません。

この視点に立つと、ダッシュボードの技術的なデータ表示能力以上に、社会的なインタラクションをいかにデザインするかが、その成否を分けることがわかります。誰がどの情報にアクセスできるのか(データガバナンス)、どのような協調行動にインセンティブを与えるのか(インセンティブ設計)、ステークホルダー間の合意形成をどう促進するのか(コミュニケーション機能)。これらの設計には、エンジニアやデータサイエンティストだけでなく、社会学者、行動経済学者、都市計画家といった多様な専門家の知見を取り入れ、地域社会の文脈に根差した設計を行うことが不可欠です。ダッシュボードは、テクノロジーと社会が交差する、エリア脱炭素の神経系なのです。

第5部:国内外の先進事例から学ぶ

理論やフレームワークを現実世界に適用するためには、先人たちの試行錯誤から学ぶことが最も有効な近道です。ここでは、日本国内で進められている「脱炭素先行地域」の計画と、セクターカップリングの本場である欧州の先進的な取り組みを、これまで論じてきたKPIの視点から再解釈し、実践的な教訓を抽出します。

5-1. 日本の挑戦:「脱炭素先行地域」の計画をKPIで再解釈する

静岡市モデル(港湾エリア×産業連携)

静岡市は、県内で唯一、第1回の脱炭素先行地域に選定されました 56。その計画の核となるのは、清水港周辺の「清水駅東口エリア」「日の出エリア」「恩田原・片山エリア」という3つの特色あるエリアでの連携です 57。特に、石油コンビナート跡地などの広大な土地を活用し、メガソーラー、大型蓄電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、そして施設間を結ぶ自営線を組み合わせた地域マイクログリッドの構築を目指しています 39

このモデルの特筆すべき点は、港湾という物流拠点と産業エリアが密接に連携していることです。日の出エリアでは、鈴与グループなどが所有する倉庫群の広大な屋根を最大限活用したPPA(電力販売契約)モデルによる太陽光発電を推進し、創出した電力を地域内で融通します 58。これにより、民生部門だけでなく、エネルギー消費の大きい産業部門や、港湾機能(荷役機械、冷凍倉庫、将来的な船舶の陸電供給など)を支える運輸部門も含めた一体的な脱炭素化を図っています。

  • 【KPIによる再解釈】:

    • レイヤー2(統合KPI): 「電力⇔モビリティ連携度」として、「港湾エリアで稼働するEVトラックや荷役機械への再エネ電力充電率」が重要な指標となります。また、「自営線によるエリア間電力融通量」も連携度を測る上で核心的なKPIです。

    • レイヤー3(成果KPI): 計画書にも明記されている「エネルギー代金の流出抑制額」 39 や、港湾機能の脱炭素化による「国際競争力強化への貢献度(取扱貨物量の推移など)」が、経済価値を測る上で重要な評価指標となるでしょう。

京都市・亀岡市モデル(文化遺産×住宅街区)

古都・京都では、その歴史的景観との調和という、他にはない制約と機会の中で脱炭素化を進めています。京都市の計画では、伏見エリアを中心に、伏見稲荷大社などの文化遺産において、景観に配慮しつつ駐車場や関連施設の屋根に太陽光発電と蓄電池を導入します 60。同時に、廃校跡地などを活用して、全戸ZEH仕様の新たな住宅街区(約400戸)を民間活力で創出。文化と暮らしの両面から脱炭素化を図る「ゼロカーボン古都モデル」を掲げています。

一方、隣接する亀岡市は、2030年度に温室効果ガス排出量を50%削減(2013年度比)という全国でも特に高い目標を設定 61。家庭用蓄電池とEVを連携させるV2H(Vehicle-to-Home)システムの普及に力を入れており、停電時でも3日間の生活を維持できるレジリエンス向上と、電力コストの効率化を両立させるモデルとして注目されています 45

  • 【KPIによる再解釈】:

    • レイヤー3(成果KPI): 京都市モデルでは、「文化遺産の付加価値向上」を測る指標として、「脱炭素をテーマにした観光客の増加率」や「サステナブルツーリズム認証の取得数」などがユニークな社会価値KPIとなり得ます。

    • レイヤー1(基礎KPI): 亀岡市モデルでは、「モビリティセクター」における「V2Hシステム導入世帯率」が、地域のレジリエンスとエネルギー柔軟性を測る上で最も重要な基礎KPIとなります。

岡山県真庭市モデル(バイオマス資源循環)

岡山県北部に位置する真庭市は、市域の約8割を森林が占める、日本有数の林業地帯です。同市の脱炭素計画は、この豊富なバイオマス資源を徹底的に活用する「地域資源循環モデル」の典型例です 41。計画の中心には、製材端材や林地未利用材を燃料とする木質バイオマス発電所があり、これは地域の電力供給を担うだけでなく、林業の安定的な需要創出にも貢献しています。

さらに、2024年稼働予定の新施設では、これまで焼却されていた生ごみやし尿汚泥などをメタン発酵させ、バイオガス発電を行うとともに、発酵後の消化液を液肥として農地に還元する、廃棄物処理とエネルギー創出、農業振興を一体化した循環システムを構築します 63。これにより、ごみ焼却量を大幅に削減し、脱炭素と地域課題解決を同時に実現します。

  • 【KPIによる再解釈】:

    • レイヤー2(統合KPI): 「熱⇔電力連携度」として、「木質バイオマス熱電併給(CHP)プラントの総合エネルギー効率」が核心的な指標です。また、「廃棄物エネルギー回収率(生ごみ等からのバイオガス生成量)」も、資源循環の効率性を測る重要なKPIです。

    • レイヤー3(成果KPI): 経済価値として、「林業・農業振興への貢献度(林材価格の安定化、液肥利用による化学肥料削減額など)」を定量的に評価することが、このモデルの成功を示す上で不可欠です。

5-2. 世界の最先端:欧州のセクターカップリング実践例

セクターカップリングの概念が生まれ、実践が進む欧州の事例は、日本の数歩先を行くモデルとして多くの示唆を与えてくれます。

デンマーク・コペンハーゲン市(スマートシティの統合モデル)

首都コペンハーゲンは、2025年までに世界初のカーボンニュートラル首都になるという極めて高い目標を掲げ、都市全体のエネルギーシステムを再設計してきました 64。同市の戦略の根幹にあるのは、電力、熱、交通、水、廃棄物といった都市インフラをデジタル技術で統合管理するスマートシティ思想です 65

特に注目すべきは、都市の隅々まで張り巡らされた地域熱供給(DH)ネットワークを、巨大な「熱のバッテリー」として活用している点です。デンマークは風力発電大国であり、風が強く吹く夜間などには大量の余剰電力が発生します。この電力を利用して大規模ヒートポンプや電気ボイラーを稼働させ、DH網に熱を供給・蓄熱することで、電力系統の変動を吸収しています 66。新開発地区のノーハウン(Nordhavn)は、こうした次世代エネルギーシステムの「リビングラボ(生きた実験室)」と位置づけられ、住民の参加のもとでスマートヒーティングやEVとの連携が実証されています。

デンマーク・ソンダーボル市「ProjectZero」(市民・企業主導モデル)

人口約7万人の地方都市ソンダーボルは、2029年までに地域全体でカーボンニュートラルを達成するという「ProjectZero」を推進しています 67。このプロジェクトの最大の特徴は、行政だけでなく、市民、そして地元に本社を置くグローバル企業Danfoss社が三位一体となった強力な公民連携(Public-Private Partnership)体制にあります 69

ソンダーボルのアプローチは、「エネルギー効率化を最優先する(Efficiency First)」という原則に貫かれています。まず建物の断熱改修や省エネ設備導入でエネルギー需要そのものを徹底的に削減し、その上で、地域内のエネルギーを無駄なくカスケード利用します。象徴的な事例が、地域の病院(Sygehus Sønderjylland)の取り組みです。ここでは、冷房設備から発生する排熱をヒートポンプで回収し、病院内の給湯や暖房に利用するだけでなく、余った熱を地域のDHネットワークに販売しています 70。これにより、病院はエネルギー消費者から生産者へと転換し、地域全体の脱炭素化に貢献しています。セクターカップリングが、単なる環境対策ではなく、地域経済を活性化させる好循環を生み出すモデルとなっています 71

ドイツの都市事例(ドレスデンなど)

ドイツでは、エネルギー転換(Energiewende)政策のもと、各都市で多様なセクターカップリングの実証プロジェクトが進められています 72。例えば、旧東ドイツの古都ドレスデン市では、地域熱供給(DH)網の「デジタルツイン」を構築するプロジェクトが進行中です 73。物理的な熱導管ネットワークを仮想空間上に忠実に再現し、様々な需要変動や熱源の組み合わせをシミュレーションすることで、ネットワーク全体の運用を最適化し、再エネ熱源の統合を促進することを目指しています。

また、大手エネルギー企業Vattenfall社は、ベルリンなどの大都市において、既存の建物ストック(特に断熱性能の低い古い集合住宅)の脱炭素化という大きな課題に対し、地域熱供給とヒートポンプ、蓄熱槽、そしてEV充電を組み合わせたセクターカップリングをソリューションとして提案しています 74。これは、新築だけでなく、膨大な既存建築物をどう脱炭素化していくかという、日本も直面する共通の課題に対する一つの答えを示しています。


表2: 国内外の先進事例におけるセクター統合アプローチ比較

比較軸 静岡市(日本) 真庭市(日本) コペンハーゲン市(デンマーク) ソンダーボル市(デンマーク)
地域特性 港湾都市、産業集積地 中山間地域、林業地帯 大都市、首都 地方都市、工業(Danfoss社)
主導主体 自治体主導、大手企業(鈴与等)連携 自治体主導、林業・農業組合連携 自治体主導(強力なリーダーシップ) 公民連携(市、市民、地元企業)
中心技術 地域マイクログリッド、自営線、大規模太陽光・蓄電池 木質バイオマス熱電併給、廃棄物バイオガス化 広域地域熱供給(DH)、大規模風力、スマートグリッド エネルギー効率化、産業排熱利用、DH、多様な再エネ
主要KPI(特徴) 港湾機能の脱炭素化率、エネルギー代金流出抑制額 バイオマス自給率、林業・農業への経済波及効果 DH網の柔軟性貢献度(余剰電力吸収量)、交通の電化率 CO2排出削減率(2029年目標)、エネルギー効率改善率
資金調達 国の交付金、民間投資(PPA等) 国の交付金、市の予算、地域金融機関 市の予算、国・EUの補助金、インフラ投資ファンド 公的資金、民間投資(Danfoss等)、市民出資
市民巻き込み PPAによる余剰電力供給(間接的) 環境学習、バイオマス資源の市民参加による収集 リビングラボとしての実証参加、情報提供 ProjectZeroへの参画、省エネコンサル、教育プログラム

第6部:日本の根本課題を乗り越えるための実効的ソリューション

国内外の先進事例は、エリア脱炭素の大きな可能性を示しています。しかし、その成功モデルを日本全国に展開するには、我が国特有の構造的な課題を乗り越えなければなりません。ここでは、その根本課題を特定し、それを克服するための地味ながら実効性のあるソリューションを提案します。

6-1. なぜ進まないのか?:エネルギーミックス、系統制約、法制度の三重苦

日本のエリア脱炭素の進展を阻む障壁は、複雑に絡み合った「三重苦」として要約できます。

エネルギーミックスの硬直性

第一に、国のエネルギー政策の根幹をなす「エネルギー基本計画」が、依然として大規模な火力発電と原子力発電を「ベースロード電源」として重視する思想から抜け出せていない点です 3。これは、需要の変動に合わせて出力を柔軟に変えることが難しい電源を土台に据える考え方であり、天候によって出力が大きく変動する太陽光や風力といったVREの大量導入とは、本質的に相性が良くありません。

この硬直性は、具体的な運用ルールにも表れています。電力の供給が需要を上回る際、日本では再生可能エネルギーの出力を抑制することが、原子力発電所の出力を調整するよりも優先される「優先給電ルール」が存在します 23。これは、再エネの発電機会を奪い、その事業性を損なうことで、結果的に新規導入の大きな障壁となっています。VREの変動を、セクターカップリングによって柔軟に吸収するのではなく、VRE側に出力抑制を強いるという発想が、システム全体の柔軟な進化を妨げているのです。

送電網のボトルネック(系統制約)

第二に、物理的なインフラの問題、すなわち送電網の制約です。日本の国土において、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域(北海道、東北、九州など)と、電力の大部分を消費する大都市圏(首都圏、関西圏など)が地理的に大きく離れています 1。そして、これらの地域間を結ぶ送電網の容量(インターコネクター)が著しく不足しているのです。

この結果、再エネのポテンシャルが豊富な地域で大規模な発電所を計画しても、送電網に空き容量がなく、電力会社から系統への接続を拒否されたり、多額の送電網増強費用を求められたりする「系統接続のボトルネック問題」が深刻化しています 77。これは、地域で生み出されたクリーンなエネルギーを、必要な場所へ届けられないという、もどかしい状況を生み出しており、再エネへの投資意欲を削ぐ最大の要因の一つとなっています。

縦割りな法制度と規制

第三に、セクターカップリングという新しい概念に対応できていない、縦割りで硬直的な法制度の存在です。日本のエネルギー関連法規は、伝統的に「電気」「ガス」「熱」というセクターごとに個別の法律(電気事業法、ガス事業法、熱供給事業法など)で規制されてきました。

この縦割り構造が、セクターを横断した革新的なビジネスモデルの創出を阻害しています。例えば、隣接するビル間で余剰電力を直接融通する「自営線による電力融通」 78 は、保安規制や託送料金の算定などが障壁となる場合があります。また、地域熱供給のための熱導管を道路下に敷設しようとしても、道路法において電気やガス、水道に比べて明確な位置づけがなされておらず、許認可プロセスが煩雑になるという課題も指摘されています 79。2016年の熱供給事業法改正で一部規制緩和はされたものの 80、セクター間の壁は依然として高く、事業者の参入意欲を削いでいます。

6-2. 提案:「地域エネルギーアライアンス」による段階的セクター統合モデル

国のエネルギーミックスの転換や、数兆円規模の送電網増強、そして複雑な法制度の抜本改革は、いずれも必要不可欠ですが、実現には長い年月を要します。2030年という目前に迫った目標達成のためには、それらを待つだけでなく、現行制度の枠組みの中でも始められる、地域主導のボトムアップ型アプローチが必要です。

そこで本稿が提案するのが、「地域エネルギーアライアンス」による段階的なセクター統合モデルです。これは、特定のプロジェクトごとに集まるコンソーシアムよりも一歩進んだ、地域内の主要なステークホルダーが継続的に連携し、エリア脱炭素に関する意思決定と事業推進を担うための恒常的な「共同体」です。

アライアンスの構成員と役割

このアライアンスは、以下の多様な主体で構成されることを想定しています。

  • 自治体: アライアンスの事務局機能を担い、地域の脱炭素ビジョンを策定・共有する。公共施設の屋根や遊休地を再エネ開発用地として提供し、必要に応じて規制緩和のための国家戦略特区申請などを主導する。

  • 地域新電力・アグリゲーター: アライアンスの中核を担う実務部隊。地域内の多様な分散型エネルギーリソース(DER)を束ねる司令塔として機能する。VPP(仮想発電所)を構築し、需給調整市場や容量市場に参加して収益を上げ、その利益を地域に還元する 81

  • 地域金融機関: プロジェクトの事業性評価と資金供給の要。脱炭素関連プロジェクトに対するプロジェクトファイナンスを組成したり、地元企業が省エネ設備やEVを導入する際のESG融資を積極的に行ったりする。

  • 地元企業・工業団地: 主要なエネルギー消費者であり、同時に供給者でもある。自社の屋根や駐車場に自家消費型太陽光を導入し、プロセス排熱を地域に提供する。社用車をEV化し、V2Gリソースとしてアライアンスに提供する。

  • 大学・研究機関: アライアンスのシンクタンク機能を担う。地域固有のエネルギーデータの収集・分析、エネルギーシステムの最適化モデルの開発、そして次世代のグリーン人材の育成を担う。

フェーズドアプローチ

このアライアンスは、壮大な目標を掲げるだけでなく、実現可能なステップを段階的に踏んでいくことが成功の鍵です。

  • フェーズ1:データ連携と小規模融通の開始(~2年)

    • 最初の一歩は、信頼関係の構築と現状の可視化です。アライアンスに参加する各主体が保有するエネルギー関連データ(電力・ガス使用量、熱需要パターン、車両の稼働状況、再エネ発電量など)を、プライバシーに配慮しつつ共有するためのプラットフォームを構築します。これこそが、本稿で論じてきた「面的GXダッシュボード」のプロトタイプとなります。

    • 並行して、現行制度下で比較的実現しやすい小規模なエネルギー融通プロジェクトに着手します。例えば、特定の工業団地内での工場排熱の融通や、隣接する公共施設と民間商業施設を自営線で結んだ電力融通など、物理的・法的にハードルの低い成功事例を早期に創出することが、アライアンスの求心力を高めます。

  • フェーズ2:VPP構築と面的融通の拡大(~5年)

    • フェーズ1で構築したデータ基盤と信頼関係を土台に、地域内の太陽光発電、蓄電池、EV、ヒートポンプなどを束ねたVPPを本格的に構築し、アグリゲーションビジネスを開始します。

    • エネルギー融通の範囲を、特定の街区や工業団地から市町村全体へと「面的」に拡大します。これにより、地域内でのエネルギー地産地消率を飛躍的に高め、エネルギーコストの域外流出を大幅に抑制します。この段階で、ダッシュボードはリアルタイム制御と市場取引を支援する、より高度な機能を実装します。

  • フェーズ3:広域連携とP2Gへの挑戦(5年~)

    • 一つの市町村で成功モデルを確立した後、近隣の市町村のアライアンスと連携し、より広域でのエネルギー融通を目指します 82。例えば、豊富な再エネポテンシャルを持つ山間部の自治体と、エネルギー需要の大きい平野部の都市自治体が連携し、電力を融通し合うモデルなどが考えられます。

    • 将来的には、この広域アライアンスが共同で、大規模な余剰電力を活用したPower-to-Gas(水素・合成メタン製造)プラントを建設・運営するなど、国のエネルギー安全保障にも貢献するような、より大きなスケールのプロジェクトに挑戦することも視野に入れます。

この「地域エネルギーアライアンス」モデルは、国の大きな方針転換をただ待つのではなく、地域の主体性と創意工夫によって、今できることから着実に変革を進めていくための、現実的かつ強力な処方箋となるはずです。

終章:ダッシュボードは未来への航海図である

本稿では、エリア脱炭素という壮大な目標を達成するための羅針盤として、「面的GXダッシュボード」とその心臓部であるKPIの設計手法について、多角的に論じてきました。電力・熱・モビリティという分断されたセクターを統合するセクターカップリングの理論から、それを計測・評価するための具体的なKPIフレームワーク、そして国内外の先進事例に至るまで、その解像度を可能な限り高めることを試みました。

結論として強調したいのは、「面的GXダッシュボード」は、単なる現状把握や実績報告のための静的なツールではない、ということです。それは、データという共通言語に基づき、多様なステークホルダーが未来を予測し、対話し、協調行動をデザインするための「動的な航海図」に他なりません。

この航海図がなければ、私たちは暗闇の中を手探りで進むしかありません。個々の灯り(個別最適)は点在していても、地域全体としてどの方向に進んでいるのか、目的地(カーボンニュートラル)まであとどれくらいの距離なのか、そして前方にどのような嵐(リスク)や新たな航路(機会)が待ち受けているのかを知ることはできません。

ダッシュボードは、地域に降り注ぐ太陽の光や吹き抜ける風の力をリアルタイムで示し、工場から立ち上る熱や街を走るEVのバッテリー残量といった、これまで見過ごされてきた無数のエネルギー資源を可視化します。そして、それらをどう組み合わせれば、最も効率的で、強靭で、経済的に豊かなエネルギーシステムを構築できるのか、その最適解を導き出すためのシミュレーションを可能にします。

この航海図を手にすることで、地域は初めて、国や巨大資本といった外部の力に運命を委ねるのではなく、自らの手で、自らの地域の未来、すなわち脱炭素と持続的成長に向けた航海の舵を取ることが可能になるのです。エリア脱炭素は、困難な挑戦であると同時に、地域の自立と再生のための、またとない機会でもあります。

今日から始めるためのアクションプラン

この壮大な航海は、小さな一歩から始まります。

  1. 知る: まずは、あなたの地域のエネルギーの姿を知ることから始めましょう。RESAS(地域経済分析システム)や自治体が公表する環境報告書など、公開されているデータを活用して、自分の地域がどのようなエネルギーを、どの部門で、どれだけ消費しているのかを大まかに把握してみてください。

  2. 繋がる: 次に、地域内の仲間を探しましょう。自治体の環境計画や商工振興の担当者、地元の商工会議所、地域に根差した金融機関、あるいは大学の研究者などに連絡を取り、「私たちの地域でも、エネルギーデータを持ち寄って未来を考えてみませんか?」と、本稿で提案した「地域エネルギーアライアンス」の小さな種を蒔いてみてください。

  3. 始める: 最初から完璧なダッシュボードを目指す必要はありません。まずは関係者が集まり、Excelや無料のBIツールを使って、手に入るデータだけでも共有し、可視化してみる。そんな小さな勉強会から始めることで、ダッシュボードの必要性についての共通認識が醸成され、次なる大きなステップへと繋がっていくはずです。

このレポートが、日本全国の意欲ある地域で、未来への航海図を描くための一助となることを心から願っています。

FAQ(よくある質問)

Q1. 面的GXと脱炭素先行地域はどう違うのですか?

A1. 脱炭素先行地域は、国が選定した特定の「エリア」で、2030年までの民生部門電力の脱炭素化など先進的なモデルを構築する、環境省主導のトップダウン型に近い取り組みです 6。一方、面的GXは、地域の中堅・中小企業群をサプライチェーンや金融機関などを通じて「面」として捉え、産業界全体の脱炭素化を支援する、経済産業省主導のボトムアップ型に近い産業支援策です 8。両者は、先行地域内で面的GXを推進するなど、連携することで大きな相乗効果を生むことが期待されます。

Q2. KPIが多すぎると管理できません。何から始めるべきですか?

A2. 最初から全てのKPIを網羅する必要はありません。まずは本稿で提案したレイヤー1(セクター別基礎KPI)の中から、ご自身の地域の特性に最も関連が深いと思われる2〜3個の指標に絞って計測を始めることをお勧めします。例えば、都市部であれば「業務ビルのエネルギー消費原単位」や「自家消費率」、農山村部であれば「バイオマス資源のエネルギー利用率」などが考えられます。データ収集の体制が整い、分析のノウハウが蓄積されてきた段階で、レイヤー2(セクター統合KPI)へと段階的に拡張していくのが現実的なアプローチです。

Q3. 中小企業でもV2Gなどの先進技術に参加できますか?

A3. はい、可能です。個々の企業が直接、電力市場と取引してV2Gシステムを運用するのは技術的・制度的にハードルが高いですが、本稿で提案した「地域エネルギーアライアンス」のような共同体に参加することが有効な解決策となります。アライアンス内にいるアグリゲーター(エネルギーリソースを束ねる事業者)を通じて、自社の社用EVをVPP(仮想発電所)のリソースとして登録することで、間接的に需給調整に参加し、その貢献度に応じた収益を得るビジネスモデルが現実的になりつつあります 81。

Q4. ダッシュボード構築の初期投資はどのくらいかかりますか?

A4. ゼロからフルカスタムでシステムを開発する場合、数千万円以上の投資が必要になることもあります。しかし、既存のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールや、安価なクラウドサービス、オープンソースのソフトウェアなどを活用すれば、初期投資を大幅に抑えることが可能です。重要なのは、最初から完璧なシステムを目指さないことです。まずはオープンデータや各事業者が手動で入力したデータを用いてプロトタイプを構築し、その有用性を検証しながら、必要に応じてリアルタイムデータを取得するためのセンサーや通信機器といったハードウェアへの投資を段階的に行っていくのが賢明な進め方です。

Q5. 住民のプライバシーを守りながらデータを活用するには?

A5. これは、市民参加型のダッシュボードを構築する上で最も重要な点です。大前提として、収集したデータは、個人が特定できないように統計処理・匿名化することが絶対条件です。その上で、①データを利用する目的、②利用するデータの範囲、③プライバシー保護の具体的な方法を、住民に対して明確に、かつ分かりやすく説明し、事前の同意(オプトイン)を得るプロセスが不可欠です。自治体が主導して、データ利用に関する透明性の高いルール(データガバナンス条例など)を策定し、第三者機関による監査を受け入れるといった体制を構築することが、住民からの信頼を醸成する鍵となります。

ファクトチェックサマリー

  • 本稿で引用した「脱炭素先行地域」の選定数(90提案)は、2025年9月11日時点の環境省公表データに基づくものです 6

  • 各種エネルギー政策の目標値、例えば2030年度のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー比率36~38%などは、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画に準拠しています 75

  • セクターカップリング関連技術、特にV2Gの市場規模や成長率に関する予測は、2023年から2025年初頭にかけて公表された複数の国際的な市場調査レポートや技術白書のデータを相互参照し、その整合性を確認しています 34

  • 国内外の事例紹介における各自治体およびプロジェクトの目標、具体的な取り組み内容、関連数値は、各主体が公式に発表している計画概要書、ウェブサイト、および関連する公的機関の報告書に基づいています 39

参考文献・引用元一覧

6

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脱炭素先行地域とは?重点対策や選定事例についても解説

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環境省 脱炭素先行地域に9地域を追加選定。全国82地域に

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環境省 10月6日から脱炭素先行地域の第7回募集を開始

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54

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https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000394837.pdf

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https://www.tokyo-co2down.jp/assets/company/seminar/check/past/2018-10-18/11semi_2.pdf

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
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