目次
- 1 Aルート・Bルート・Cルート(電力スマートメーター)の基本と活用アイデア
- 2 スマートメーターが創る新たなエネルギーエコシステム
- 3 スマートメーターとは
- 4 3つのデータ通信ルート
- 5 Aルート・Bルート・Cルートの詳細解析
- 6 Aルートの機能と仕組み
- 7 Aルートの通信方式
- 8 Aルートのデータフロー
- 9 Bルートの機能と活用可能性
- 10 Bルートの通信方式
- 11 Bルート通信プロトコル:ECHONET Lite
- 12 Cルートの機能と将来性
- 13 Cルートの開放と新サービス
- 14 スマートメーターデータの利活用と経済効果シミュレーション
- 15 データ活用の現状と課題
- 16 HEMS・EMSとの連携による省エネ効果
- 17 太陽光・蓄電池導入効果のシミュレーション
- 18 シミュレーションロジックと計算モデル
- 19 TOU(時間帯別料金)と組み合わせたシミュレーション
- 20 TOU最適化の計算モデル
- 21 日本の再エネ導入ポテンシャルと最適化戦略
- 22 再エネ導入ポテンシャルの現状
- 23 導入余地の大きい設置場所
- 24 スマートメーターデータを活用した最適設計
- 25 小売電気事業者のための革新的顧客獲得戦略
- 26 スマートメーターデータを活用した料金プラン設計
- 27 顧客セグメンテーションと最適プラン提案の計算モデル
- 28 Webシミュレーションによる顧客獲得事例
- 29 TOU料金と需要家参加型デマンドレスポンスの可能性
- 30 次世代スマートメーターの展望と課題
- 31 2025年からの次世代スマートメーター導入計画
- 32 Bルート利用促進に向けた課題と対策
- 33 電力DXを加速させるデータ活用の未来
- 34 総合的なエネルギーマネジメントへの展望
- 35 スマートグリッドとVPP(仮想発電所)の可能性
- 36 セクターカップリングへの展開
- 37 デジタル・エネルギー政策と自治体の役割
- 38 FAQと実践的なアドバイス
- 39 スマートメーターのBルート活用に関するFAQ
- 40 エネがえるAPIの活用事例とポイント
- 41 太陽光・蓄電池導入のポイント
- 42 まとめと今後の展望
- 43 出典
Aルート・Bルート・Cルート(電力スマートメーター)の基本と活用アイデア
スマートメーターデータ活用による再エネ導入と革新的電力ビジネスの創出
電力業界は今、大きな転換期を迎えています。スマートメーターの普及により、これまでブラックボックスだった電力使用データが「見える化」され、様々な形で活用できるようになってきました。中でも「Aルート」「Bルート」「Cルート」と呼ばれるデータ通信経路の理解は、エネルギーの効率的利用や再生可能エネルギーの普及促進にとって極めて重要です。
本記事では、これら3つのルートの詳細と、データ活用による太陽光発電・蓄電池導入シミュレーション、TOUによる電気料金最適化、そして小売電気事業者の革新的顧客獲得戦略までを包括的に解説します。
スマートメーターが創る新たなエネルギーエコシステム
スマートメーターとは
スマートメーターは、従来のアナログ式誘導型電力量計に代わる次世代型の電力計測器です。最大の特徴は、双方向通信機能を備えていることで、30分ごとの電力使用量の計測や遠隔での開閉機能、宅内向け通信機能などを有しています1。日本では2014年から本格導入が始まり、2024年時点ではほぼすべての家庭や事業所に設置が完了しています。
従来のメーターでは、検針員が毎月訪問して使用量を記録する必要がありましたが、スマートメーターでは自動で使用量データが電力会社に送信されるため、検針業務が効率化されました。さらに、これまで月に一度しかわからなかった電力使用量を30分ごと、あるいはリアルタイムに把握できるようになったことで、電力の「見える化」が進み、省エネ行動の促進や多様なサービス展開が可能になっています。
3つのデータ通信ルート
スマートメーターにおけるデータ通信には、「Aルート」「Bルート」「Cルート」の3つの経路があります。それぞれの特性と役割は大きく異なり、これらを正しく理解することが、スマートメーターの可能性を最大限に活かすために不可欠です。
Aルート・Bルート・Cルートの詳細解析
Aルートの機能と仕組み
Aルートとは、スマートメーターで計測した使用電力量のデータを送配電事業者へ送るルートです1。このルートを通じて、30分ごとの電力使用量データが電力会社に送られ、検針・料金算定などの基礎データとして活用されています。
Aルートの通信方式
Aルートの通信には、設置環境に応じて以下の3つの方式が用いられています57:
-
無線マルチホップ(MH)方式:主に住宅密集地で利用され、スマートメーター同士がバケツリレーのように情報を伝達する方式(ARIB STD-T108規格)
-
1:N(携帯)方式:山間部など住宅密度が低い地域で利用され、携帯電話網を利用する方式(ARIB STD-T63規格)
-
PLC(電力線通信)方式:高層マンションなどで利用され、電力線を通信媒体として利用する方式
これらの通信方式は、スマートメーターの設置場所に合わせて適材適所で選定されています。住宅密度が高いエリアでは無線マルチホップ方式が、密度が低いエリアでは携帯方式が選ばれることが多いです5。
Aルートのデータフロー
Aルートでは、スマートメーターで計測されたデータがHES(ヘッドエンドシステム)を経由してMDMS(メーターデータ管理システム)に送られます。MDMSでは、データの保管や使用料の算定、小売電気事業者への情報提供などが行われます5。
Bルートの機能と活用可能性
Bルートは、スマートメーターで計測した使用電力量データをリアルタイムで需要家(家庭や事業所)へ送るルートです1。このルートを通じて、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などの機器と連携し、電力使用量の「見える化」や家電制御などが可能になります。
Bルートの通信方式
Bルートの通信には、主に以下の方式が用いられています567:
-
Wi-SUN方式(920MHz帯特定小電力無線):電力のBルート通信に標準採用された方式で、通信速度は比較的遅いものの、通信距離が長く、障害物に強いという特徴がある
-
PLC(G3-PLC)方式:環境条件などにより無線設定が困難な場合の補完方式
2025年からは次世代スマートメーター導入に伴い、Bルート通信にWi-Fi(2.4GHz帯)も選択肢として加わる予定です15。これにより、Bルートの利用促進が期待されています。
Bルート通信プロトコル:ECHONET Lite
Bルートの通信プロトコルにはECHONET Liteが採用されています4。これは、家電・住宅設備機器などをネットワーク経由で制御することを目的とした国際標準の通信プロトコル(ISO/IEC 14543-4-3など)です27。
ECHONET Liteでは、スマートメーターから以下のような情報が取得可能です89:
-
積算電力量計測値
-
瞬時電力計測値
-
力測積算電力量計測値(オプション)
-
力測積算無効電力量計測値(オプション)
-
係数
-
積算電力量有効桁数
-
単位(kWh, MWh など)
-
時刻情報
これらの情報を活用することで、リアルタイムの電力使用状況の把握や家電制御が可能になります。
Cルートの機能と将来性
Cルートは、スマートメーターから直接または送配電事業者を経由して小売電気事業者やその他の民間事業者など第三者に送るルートです1。このルートを通じて得られたデータを活用し、需要家への多様なサービス提供が検討されていますが、日本ではまだ本格的な利用は始まっていません。
2016年の電力小売全面自由化以降、Cルートの重要性は高まっており、電力データを活用した新たなサービス創出が期待されています。例えば、ENECHANGEとLooop社の共同実証実験では、スマートメーターデータを活用したTOU料金の効果検証が行われ、平均9.2%の電気料金削減と7.7%の電力消費量削減が実現しています19。
Cルートの開放と新サービス
近年、「Cルート開放」と呼ばれる、スマートメーターの電力使用状況を事業者に提供して活用する制度が進められています16。これにより、電力データを活用した様々なサービスが生まれることが期待されています。
例えば、「エネチェンジ・マイエネルギー」のような、スマートメーターデータと連携したサービスが開発されており、2023年10月から順次リリースされています16。
スマートメーターデータの利活用と経済効果シミュレーション
データ活用の現状と課題
スマートメーターの導入によりデータ取得の基盤は整ったものの、その活用はまだ途上段階にあります。特にBルートについては、2019年末時点での申込率はわずか0.06%と非常に低い水準にとどまっています15。データ活用を促進するため、次世代スマートメーターではWi-Fi搭載などの対策が進められています。
HEMS・EMSとの連携による省エネ効果
スマートメーターとHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の連携により、電力使用量の「見える化」が実現します。これにより、家庭内の電力使用パターンを把握し、節電行動につなげることが可能になります。
具体的な省エネ効果として、「見える化」だけで5~15%程度の省エネ効果が期待できるとされています。さらに、HEMSによる家電制御を組み合わせることで、より効果的な省エネが可能になります。
太陽光・蓄電池導入効果のシミュレーション
スマートメーターから取得したデータを活用して、太陽光発電や蓄電池の導入効果をシミュレーションすることができます。例えば、太陽光・蓄電池・EV・V2Hの経済効果シミュレーター「エネがえる」では、実際の電力使用パターンに基づいた精度の高いシミュレーションが可能となっています。実際に大手太陽光・蓄電池メーカーのWeb太陽光・蓄電池シミュレーター、大手EV充電器メーカーによる電力データ連携のEV充電時間最適化アプリ、大手蓄電池メーカーの気象予測・電気料金プラン連動の最適制御スケジュール送信等に実装されているようです。
シミュレーションロジックと計算モデル
太陽光発電・蓄電池の導入効果をシミュレーションする際の主な計算式は以下の通りです:
1. 年間経済効果(円)の計算式
年間経済効果 = 電気代削減効果 + 売電収入 - 初期費用の年間償却額 電気代削減効果 = 導入前の年間電気代 - 導入後の年間電気代 売電収入 = 売電量(kWh) × 売電単価(円/kWh) 初期費用の年間償却額 = 初期費用合計 ÷ 償却年数
2. 投資回収年数の計算式
投資回収年数 = 初期費用合計 ÷ 年間キャッシュフロー改善額 年間キャッシュフロー改善額 = 電気代削減効果 + 売電収入
3. 太陽光発電量の推計式
月別発電量(kWh) = 設置容量(kW) × 日射量(kWh/m²・月) × 総合設計係数 総合設計係数 = 変換効率 × 温度補正係数 × 角度補正係数 × その他損失係数
4. 蓄電池による自家消費量の計算
自家消費量(kWh) = min(時間帯別発電量, 時間帯別消費量) + min(蓄電池からの放電可能量, max(0, 時間帯別消費量 - 時間帯別発電量))
これらの計算式をベースに、時間帯別の電力消費パターンと発電パターンを組み合わせることで、より精緻なシミュレーションが可能になります。
エネがえるシミュレーションツールでは、これらの計算を自動化し、個々の家庭の電力使用パターンに合わせた最適な太陽光発電・蓄電池システムの提案が可能となっています。
TOU(時間帯別料金)と組み合わせたシミュレーション
TOU(Time-Of-Use)料金とは、電力需要の高い時間帯の電気料金を高く、低い時間帯の料金を安く設定する料金体系です。このTOU料金と太陽光発電・蓄電池を組み合わせることで、さらなる経済効果を得ることができます。
例えば、東京電力エナジーパートナーの「電化上手(季節別時間帯別電灯)」では、ピーク時間(10時~17時)、オフピーク時間(7時~10時・17時~23時)、夜間時間(23時~翌7時)で料金が異なります17。こうした料金体系を前提に、太陽光発電による自家消費と蓄電池による電力シフトを最適に組み合わせることで、電気料金の削減が可能になります。
最近では、昼間の再エネ余剰電力の高まりもあり、昼間安いプランも大手電力や新電力から相次いでリリースされ、昼間の太陽光余剰電力や昼間安価な系統電力を用いたエコキュートの昼間沸かしシフト等もトレンドになってきています。
参考:大手電力、電気の「昼シフト」プラン続々 余剰再エネをなるべく活用:朝日新聞
TOU最適化の計算モデル
TOUと蓄電池を組み合わせた場合の電気代削減効果は、以下のような計算で求められます:
TOU最適化による電気代削減効果 = Σ(時間帯別電力量 × 時間帯別料金単価)導入前 - Σ(時間帯別電力量 × 時間帯別料金単価)導入後
ここで、導入後の時間帯別電力量は、蓄電池の充放電を最適化することで変化します。具体的には、料金の安い夜間時間帯に蓄電池を充電し、料金の高いピーク時間帯に放電することで電気代を削減します。
実際の事例では、Looop社とSMAP ENERGY社によるTOU料金の実証実験において、平均9.2%の電気料金削減と7.7%の電力消費量削減が達成されています19。
日本の再エネ導入ポテンシャルと最適化戦略
再エネ導入ポテンシャルの現状
環境省の調査によると、日本には現在の発電電力量の実績値の約2倍の再生可能エネルギー導入ポテンシャルがあるとされています13。特に導入ポテンシャルが高いのは次の順序です:
-
洋上風力発電:15,584億kWh
-
太陽光発電:5,041億kWh
-
陸上風力発電:4,539億kWh
太陽光発電に関しては、2020年度の発電電力量が791億kWhであることから、約6倍を超える導入ポテンシャルが残されていることになります13。
導入余地の大きい設置場所
環境省の2021年度の調査によれば、太陽光発電の導入ポテンシャルは以下の場所に多く残されています13:
-
建物系:「戸建住宅等」に相当量の導入ポテンシャル
-
土地系:「耕地」に多くの導入ポテンシャル
-
その他:「荒廃農地(耕作放棄地)」にも導入の余地がある
特に戸建住宅への太陽光発電の導入は、自家消費型の再エネ利用として効率的であり、FIT(固定価格買取制度)に依存しない持続可能なモデルとして注目されています。
スマートメーターデータを活用した最適設計
スマートメーターのBルートから取得したデータを活用することで、個々の家庭や事業所の電力使用パターンに最適化した太陽光発電・蓄電池システムの設計が可能になります。具体的には以下のような最適化が考えられます:
-
太陽光パネルの最適容量計算:自家消費率を最大化する容量の選定
-
蓄電池の最適容量計算:余剰電力の有効活用と電気代削減を両立する容量の選定
-
経済効果の精緻な試算:実際の電力使用パターンに基づく投資回収シミュレーション
これらのシミュレーションを行うツールとして、エネがえるAPIサービスが活用できます。このAPIを利用することで、複雑なシミュレーションロジックを簡単に実装できるようになります23。
小売電気事業者のための革新的顧客獲得戦略
スマートメーターデータを活用した料金プラン設計
スマートメーターのデータを活用することで、個々の顧客の電力使用パターンに合わせた最適な料金プラン提案が可能になります。例えば、夜間の電力使用が多い家庭には、夜間の電気料金が安いプランを、昼間の使用が多い家庭には、昼間の料金が割安なプランを提案するといった戦略が考えられます。
顧客セグメンテーションと最適プラン提案の計算モデル
顧客の電力使用パターンに基づくセグメンテーションと最適プラン提案のプロセスは以下のとおりです:
-
時間帯別使用率の計算
text時間帯別使用率 = 特定時間帯の使用電力量 ÷ 全時間帯の総使用電力量
-
プラン別年間電気代の計算
textプランA年間電気代 = 基本料金A + Σ(時間帯別使用電力量 × プランAの時間帯別料金単価) プランB年間電気代 = 基本料金B + Σ(時間帯別使用電力量 × プランBの時間帯別料金単価) ...
-
最適プランの選定
text最適プラン = min(プランA年間電気代, プランB年間電気代, ...)
このようなセグメンテーションと料金提案を自動化するツールとして、エネがえる電気料金プランAPIや電気料金プラン単価参照APIが活用できます。このAPIは、大手10電力・新電力含め120社のプランに対応しており、毎月自動更新される燃料調整費の単価も反映されます34。
Webシミュレーションによる顧客獲得事例
APIを活用したWebシミュレーターの導入により、顧客獲得数が飛躍的に伸びた事例があります。例えば、サニックス社では、エネがえるAPIを導入したことで契約数が10倍に増加し、新規申込の7割が他の新電力からの切り替え顧客となっています1823。
他にも、ソフトバンク、TRENDE、大和ハウス工業、九州エナジー、シャープ、パナソニック、ネクストエナジー・アンド・リソース、エクソルなど、多くの企業がエネがえるAPIを活用したWebシミュレーターを導入し、顧客獲得や商品販売に成功しています1823。
TOU料金と需要家参加型デマンドレスポンスの可能性
TOU料金は、ピーク時の電力需要を抑制する効果があり、電力系統全体の安定化に寄与します。さらに進んだ取り組みとして、需要家参加型のデマンドレスポンス(DR)があります。これは、電力需給が逼迫する時間帯に需要家が電力使用を抑制することで、報酬を得られる仕組みです。
次世代スマートメーターの展望と課題
2025年からの次世代スマートメーター導入計画
現在のスマートメーターは、法律により検定有効期限が10年と定められているため、2014年から順次導入されたスマートメーターは、2024年以降に更新時期を迎えます。これに伴い、2025年度から次世代スマートメーターの導入が始まり、2034年度までに全数の置き換えが完了する予定です1529。
次世代スマートメーターの主な特徴は以下のとおりです:
-
Wi-Fi(2.4GHz帯)通信機能の搭載(Bルート用)15
-
5分単位の計測による詳細なデータ取得29
-
複数のEMS・アグリゲーションコントローラーによるデータ利用の実現27
-
IoTルートの新設による電力、ガス、水道の検針一体化33
Bルート利用促進に向けた課題と対策
現在、Bルートの利用率は極めて低い状況ですが、次世代スマートメーターの導入により、以下の対策が進められます:
これらの対策により、Bルートの利用促進が期待されています。ただし、需要家のプライバシー保護やセキュリティ確保も重要な課題となっています。
電力DXを加速させるデータ活用の未来
次世代スマートメーターの導入により、電力DX(デジタルトランスフォーメーション)がさらに加速すると予想されています。具体的には、以下のtような展開が考えられます:
-
電力リソースアグリゲーション:家庭内の蓄電池やエコキュート、エアコン、照明などの電力リソースを束ねて最適制御27
-
P2P電力取引:ブロックチェーン技術を活用した個人間の電力取引
-
AIによる予測と最適化:電力需要予測や再生可能エネルギーの発電予測に基づく系統運用の最適化
これらの取り組みにより、再生可能エネルギーの大量導入と電力系統の安定化を両立させる新たなエネルギーシステムの構築が期待されています。
総合的なエネルギーマネジメントへの展望
スマートグリッドとVPP(仮想発電所)の可能性
スマートメーターの普及とデータ活用の進展により、スマートグリッド(次世代送電網)やVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の実現が進んでいます。VPPは、分散型の太陽光発電や蓄電池などを一つの発電所のように制御することで、柔軟な電力供給を可能にする技術です。
VPPの実現には、スマートメーターのBルートやCルートから得られるリアルタイムデータが不可欠です。これにより、再生可能エネルギーの変動を吸収し、電力系統の安定化に貢献することが可能になります。
※参考:2026低圧VPPを控え業態転換を迫られる自動車メーカー 〜エネルギーマネジメント市場への戦略的参入と太陽光・蓄電池・EV・V2H拡販成功への道筋〜
セクターカップリングへの展開
エネルギー分野における次なる展開として、電力・ガス・熱・水素などのエネルギーキャリア間の連携「セクターカップリング」があります。次世代スマートメーターのIoTルートを活用することで、電力・ガス・水道の計測データを統合的に管理し、エネルギーシステム全体の最適化が可能になります33。
例えば、余剰電力を水素製造や熱貯蔵に変換することで、再生可能エネルギーの有効活用が進むと考えられます。これにより、エネルギー全体の脱炭素化がさらに加速する可能性があります。
参考:水道スマートメーター遠隔監視システム | サービス・ソリューション | 株式会社ミライト・ワン
デジタル・エネルギー政策と自治体の役割
地方自治体においても、スマートメーターデータを活用したデジタル・エネルギー政策の展開が期待されています。例えば、エネがえるAPIを活用した地方自治体のGovTechでは、最適な電力料金プランへの見直しや、時間帯別使用データからTOUプラン適用可否の判断などが可能になると提言しています25。
こうしたデータ活用により、自治体は地域のエネルギー政策を効果的に進めることができます。特に、公共施設の省エネ推進や地域マイクログリッドの構築などにおいて、スマートメーターデータが重要な役割を果たすと考えられます。
参考:地方自治体のGovTech×エネがえるAPIによるデジタル・エネルギー変革戦略
FAQと実践的なアドバイス
スマートメーターのBルート活用に関するFAQ
Q1: Bルートを利用するにはどうすればよいですか?
A1: 電力会社(送配電事業者)にBルート利用の申し込みをする必要があります。申し込みが受理されると、ID・パスワードが発行され、HEMS機器などと連携させて利用できるようになります7。
Q2: Bルートで取得できるデータはどのようなものですか?
A2: 30分ごとの積算電力量、1分値の有効積算電力量、瞬時電力値、時刻情報、製造番号などが取得可能です9。
Q3: BルートとHEMS機器の接続方法は?
A3: Wi-SUN(920MHz帯無線)対応のHEMS機器を用意し、電力会社から発行されたID・パスワードを設定することで接続できます。次世代スマートメーターではWi-Fi接続も可能になる予定です15。
エネがえるAPIの活用事例とポイント
Q4: エネがえるAPIの主な機能は何ですか?
A4: エネがえるAPIには、電気料金プランシミュレーション、太陽光・蓄電池経済効果シミュレーション、EV・V2H経済効果シミュレーション、産業用自家消費型シミュレーションなどの機能があります11。
Q5: APIの導入コストと効果は?
A5: 導入コストは初期150万円、月額40万円程度ですが、導入企業では契約数10倍などの効果が報告されています23。投資対効果は非常に高いと言えるでしょう。
Q6: スマートメーターデータとの連携はどのように行いますか?
A6: Bルート、Cルート、CTセンサーなどから取得された電力消費量データとAPI連携することで、実際の使用パターンに基づいた精緻なシミュレーションが可能になります18。
太陽光・蓄電池導入のポイント
Q7: 太陽光発電の最適な導入容量はどう決めればよいですか?
A7: 自家消費を主目的とする場合は、基本的に平均消費電力(kW)の1.5~2倍程度の容量が目安となります。ただし、屋根の面積や予算に応じて調整が必要です。詳細なシミュレーションにはエネがえるのようなツールが有効です。
Q8: 蓄電池は必ず必要ですか?
A8: 必須ではありませんが、蓄電池を導入することで自家消費率を高め、停電時のバックアップ電源としても活用できます。特に、FIT期間が終了した太陽光発電設備と組み合わせると効果的です。
Q9: TOUと太陽光・蓄電池の組み合わせで最大の経済効果を得るコツは?
A9: ピーク時間帯(料金が高い時間帯)に太陽光発電の発電量が多い場合は自家消費を、少ない場合は蓄電池からの放電を活用します。また、深夜の安い時間帯に蓄電池を充電し、朝や夕方の高い時間帯に放電するという運用が効果的です。
まとめと今後の展望
スマートメーターのAルート、Bルート、Cルートの理解と適切なデータ活用は、エネルギーの効率的利用と再生可能エネルギーの普及促進に不可欠です。特に、次世代スマートメーターの導入が2025年から始まることで、Wi-Fi対応や5分単位の計測など、より詳細かつ利便性の高いデータ活用が可能になります。
太陽光発電・蓄電池の経済効果シミュレーションでは、エネがえるAPIのような先進的なツールを活用することで、個々の電力使用パターンに合わせた最適なシステム提案が可能になります。また、TOUなどの新しい料金体系と組み合わせることで、さらなる経済効果が期待できます。
小売電気事業者にとっては、スマートメーターデータを活用した顧客セグメンテーションと最適プラン提案、Webシミュレーターを活用した顧客獲得など、新たな戦略展開が可能になります。こうした取り組みにより、日本のエネルギー市場の活性化と再生可能エネルギーの普及加速が期待されます。
今後は、VPPやセクターカップリングなど、より高度なエネルギーマネジメントへの展開も視野に入れながら、スマートメーターデータの有効活用を進めていくことが重要です。日本のエネルギー転換を加速させるためにも、官民一体となったデータ活用の推進が求められています。
出典
1 スマートメーター|電気工学用語集 – パワーアカデミー
2 スマートメーター導入前に知っておきたい!Aルート・Bルート・C … – エコめがね
3 スマートメーターのAルートBルートCルート – みんなの自然エネルギー
4 スマートメータとは? | ECHONET
5 スマートメーターシステムの仕組み – 経済産業省
6 Wi-SUN | 無線とは? | エレクトロニクス豆知識 | ローム株式会社
7 ソーラーマニア的スマートメーター導入記。HEMSと連携して発電 … – 価格.com
8 低圧スマート電力量メータ・HEMS コントローラ間 … – ECHONET
9 EMS・アグリゲーションコントローラー スマートメーターBルート … – 経済産業省
10 太陽光 蓄電池シミュレーションの決定版「エネがえる」
11 エネがえるAPI 仕様書
12 API – 太陽光 蓄電池シミュレーションの決定版「エネがえる」
13 日本の再エネ導入ポテンシャルは、あとどれくらい残されている … – ソーラージャーナル
14 次世代スマートメーター導入に向けた論点について – 経済産業省
15 次世代スマートメーターWi-Fi搭載可能に 920MHz帯より … – でんじは.org
16 「エネチェンジ・マイエネルギー」開発秘話。スマートメーターの … – Wantedly
17 東京電力エナジーパートナー電化上手(季節別時間帯別電灯) – 価格.com
18 電気料金プラン シミュレーション API(新電力・電力会社向け) – Speaker Deck
19 日本初となるスマートメーターデータを活用したTOU料金の実証 … – PR TIMES
20 【第44回】スマートメーターBルート利用で電力の見える化 – IT防災リテラシー
21 EMS・アグリゲーションコントローラー スマートメーターBルート … – 経済産業省
22 高圧スマート電力量メータ・EMS コントローラ間 アプリケーション … – ECHONET
23 太陽光 蓄電池 APIサービス(Webシミュレーションを貴社Webに … – Speaker Deck
24 次世代スマートメーターの 仕様の検討状況について – 経済産業省
25 地方自治体のGovTech×エネがえるAPIによるデジタル・エネルギー … – エネがえる
26 スマートメーターBルートを活用するための 解説と実装 – IIJ
27 次世代スマートメーター対応のコントローラーとして ECHONET … – INTEC
28 エネがえるAPI完全ガイド: 電気料金・太陽光発電シミュレーション … – エネがえる
29 電力10社でスマートメーターの仕様統一、5分単位の計測で配電運用 … – 日経クロステック
30 電力のスマートメーター(Aルート、Bルート – 家電とITの達人)
31 スマートメーターと HEMS – アンリツ
32 再生可能エネルギー普及を加速させるためのAPI #太陽光発電 – Qiita
33 次世代スマートメーターが促すエネルギー業界の変化 – Deloitte
34 エネがえる公式(家庭用/産業用太陽光・蓄電池シミュレータSaaS … – X(旧Twitter)
35 スマートメーター通信仕様の認証に関して – 日本ITU協会
36 電力データ算出方法 | Nature Developer Page
37 Web太陽光・蓄電池経済効果シミュレーター「発電Dr.(エネがえる … – PR TIMES
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