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V2Hを実現するニチコン トライブリッドシステムとは?システムの概要とメリットを徹底解説
電気自動車を保有する家庭が増えている昨今では、V2Hという考え方も浸透し始めています。V2Hは、電気自動車の利点を家庭で活かすことで、実現するためにはV2Hスタンドの設置やトライブリッドシステムの導入が必要です。
この記事では、電気自動車をエコ生活に活用したい人向けに、V2Hのトライブリッドシステムについて解説します。
V2Hとトライブリッドの概要
V2Hでは、太陽光システムと組み合わせて家庭に還元するトライブリッドシステムが注目されています。まずは、V2Hの詳しい内容と、トライブリッドシステムについて解説します。
電気自動車の普及で注目のV2Hとは?
V2Hとは、「Vehicle to Home」のことを指します。Vehicle は電気自動車を指し、電気自動車で貯めた電気を家庭でも活用するという考え方です。V2Hでは、電気自動車を移動手段としてだけではなく、蓄電池として蓄えた電気を家庭にも還元して、エコな生活に活かします。
従来、電気自動車は家庭用のコンセントに繋いで充電するのが主流でしたが、充電時間が遅いなどのデメリットがありました。いざ使用したいときに充電できていなければ利点が活かしきれません。
そこで、充電時間を早めるために、家庭用の充電スタンドが普及し、さらには電気自動車の電気を家庭で利用できる変換機能があるV2Hスタンドが登場したことで、V2Hの考え方が広がりました。
トライブリッドシステムとは?
家庭用の太陽光発電と蓄電池、さらにはV2Hにおける充放電をまとめて制御してくれるシステムのことです。これまで太陽光発電と蓄電池の連携システムや、V2Hのシステムは確立されていましたが、それぞれを連携させるシステムはありませんでした。
電気自動車が普及したことにより、太陽光・蓄電池・電気自動車の連携にも注目が集まったため、トライブリッドシステムの開発が進み、2018年にニチコンが世界初のトライブリッドシステムを発売したことにより話題になりました。
V2Hのトライブリッドシステムを構成する3つの製品
トライブリッドシステムは、V2Hスタンド・トライブリッドパワーコンディショナー・トライブリッド蓄電池の3つの設備によって構成されています。ここからは、3つの設備について詳しく解説します。
1.V2Hスタンド
V2Hスタンドは、電気自動車への充電と、電気自動車で貯めた電気を家庭に供給するための変換装置です。従来の家庭用コンセントから電気自動車への充電よりも圧倒的に早く充電できます。また、V2Hスタンドがあることで、電気自動車を蓄電池の様に家庭で活用できるため、エコ意識が強まっている昨今では、設置する家庭が増えています。
2.トライブリッドパワーコンディショナー
トライブリッドパワーコンディショナーは、太陽光発電システムと蓄電池、V2Hスタンドをまとめて制御する装置です。太陽光発電システムで生成した電気や蓄電池に貯まっている電気、電力会社から供給される電気、V2Hスタンドから送られてくる電気を自動制御・変換し、各設備への給電や売電ができます。
トライブリッドシステムで代表的なニチコンが提供する全負荷対応のトライブリッドパワーコンディショナーの場合、停電時でも家庭用電気をバックアップ可能で、200V電源の大型家電への給電も可能です。
3.トライブリッド蓄電池
トライブリッドシステム用の蓄電池です。太陽光発電システムで生成した電気を蓄電するために必要です。貯めた電気は、電気代が高い昼間に使用したり、夜間に電気自動車の充電用として使用したりできます。貯める電気量を増やしたい場合には、増設も可能です。
トライブリッドシステムを取り入れるメリット
ここからは、トライブリッドシステムを家庭に導入することで期待できるメリットについて解説します。
電気のロスを防ぎ無駄なく活用できる
従来は太陽光発電システム、蓄電池、V2Hシステムそれぞれにパワーコンディショナーを設置していましたが、電気ロスが発生し、効率よく活用できていませんでした。しかし、トライブリッドシステムであれば、すべてを一括制御・変換ができるため、電気ロスの発生を防げます。
節電効果が高い
電気自動車の充電に家庭用電源を使うと電気代が発生しますが、太陽光で発電した電気を使用すれば、電気代はかかりません。1日のなかで最も電気代が高い昼間でも、蓄電しておいた電気を使用すれば電気代が抑えられます。さらに、余剰電気は売電することも可能なので、節約効果は高くなるでしょう。
蓄電容量が大きく防災対策にもなる
トライブリッド蓄電池は、蓄電容量が大きく、さらには増設も可能です。また、トライブリッドシステムでは、電気自動車の蓄電池も連携できます。停電などで電気が止まってしまった場合でも、貯めておいた電気を自家消費できるため、防災対策になります。オール電化の家や、長時間の停電でもある程度耐えられるでしょう。
トライブリッドで気になるデメリット
トライブリッドシステムは、2018年に初めて発売されたもので、ニチコン以外のメーカーでは販売されていません。そのため、家庭環境は様々ある中で、選択肢が少ないというのはデメリットです。
また、導入には初期費用がかかります。さらに、トライブリッドシステムの太陽光発電システムは、すでに設置している家庭以外は設置が必要となるため、初期費用はその分高額になります。
トライブリッドシステムは、徐々に新型も発売されているため、少しずつ種類は増えてきています。さらに、国や自治体の補助金を利用すれば、初期費用を抑えられます。トライブリッドシステムの導入に活用できる補助金について詳しくは後述しますので、参考にしてください。
V2Hのトライブリッドを上手く活用するためのポイント
トライブリッドシステムを効果的に活用するためには、以下の3つのポイントが役立ちます。
自宅の消費電力と必要な蓄電池容量を把握する
トライブリッドシステム導入前に、自宅でどのくらいの電気を使用しているのか把握しておくことが大事です。トライブリッドシステムを導入したことによって十分な節電効果が得られるのか、しっかり見極めましょう。
また、導入を決めた場合には、どのくらいの蓄電容量が必要になるかも考えて最適なものを選ぶのも重要です。
V2H・トライブリッドに対応している車種を確認する
トライブリッドシステムは、対応している車種でなければ活用できません。事前に最新の対応車種について確認しておく必要があります。対応車種であっても、ソフトウェアによって使用できない場合もあるので、販売店に確認しておくと確実です。
国や自治体の補助金を活用する
トライブリッドシステムの導入はエコな生活に繋がるため、国や自治体の補助金・助成金が利用できる可能性があります。数十万円以上の補助金が出るものもあるため、高額になる初期費用を抑えられ、コスト負担を軽減できます。
トライブリッドシステムに関する補助金・助成金制度には、さまざまものがあるので、自分自身で調べるか、販売店に確認してみましょう。
V2Hのトライブリッドに対応している車種
トライブリッドシステムに対応している代表的な電気自動車の車種を紹介します。ここになくても対応しているケースもあるので、必ず導入する際に確認してください。
メーカー | トライブリッドシステム対応車種 |
トヨタ | プリウスPHV、MIRAI、bZ4X |
三菱 | エクリプスクロスPHEV、ミニキャブ・ミーブ・バン、アウトランダーPHEV |
日産 | 日産LEAF、日産LEAFe+、e-NV200、アリア、サクラ |
ホンダ | Honda e |
ベンツ | EQS、EQE |
V2Hのトライブリッドが向いている家庭は?
効果的にV2Hを実現するトライブリッドシステムは、以下で紹介する家庭に向いています。導入に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
電気自動車を所有している家庭
すでに電気自動車を所有し、頻繁に使用している家庭にはおすすめです。電気自動車で貯めた電気を家庭内で活用できるほか、太陽光発電との連携で燃料費の節約にもなります。電気自動車をこれから購入する予定の家庭では、トライブリッドシステムも併せて検討するのがおすすめです。
太陽光発電システムを導入・検討している家庭
トライブリッドシステムは、太陽光発電を無駄なく活用できるため、太陽光発電システムを設置している家庭やこれから太陽光発電システムを導入する家庭に向いている設備です。家庭で使いきれない余剰電気は、売電も可能です。
電気代を節約したい家庭
電気代の高騰などで、電気代を節約したいと考えている家庭にもおすすめです。蓄電池に蓄えた電気を、日中の電気代が高い時間帯に使えたり、電気自動車の充電に太陽光発電で貯めた電気を使用したりすることで、電気代の節約につながります。
停電などの万が一に備えたい家庭
台風や地震など災害の多い日本では、防災対策を考える家庭も多いでしょう。トライブリッドシステムなら、大容量の蓄電池と併せて、電気自動車を蓄電池として活用できるため、長時間の停電でも電気が使えます。また、家族が増えても蓄電池の増設が可能なため、長期的な防災対策として活用できます。
まとめ
電気自動車や太陽光発電システムを取り入れている家庭では、トライブリッドシステムを導入することで、高い節電効果や防災対策につながります。電気自動車や太陽光発電システムで生成した電気を無駄なく活用し、エコな生活を送れます。
トライブリッドシステムの導入には、自宅の電気消費量を把握し、どれだけの効果が見込めるのか確認しておくことも大事です。V2Hによる経済効果を知るためには、効果測定できるツールを活用してみるのもおすすめです。
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太陽光+電気自動車+V2Hの経済効果徹底解説
太陽光+電気自動車(EV)+V2H+定置型蓄電池の経済効果を電力エリア別に徹底解説したおすすめ記事です。
太陽光+電気自動車(EV・V2H)+定置型蓄電池の経済効果を徹底解説(東京電力エリア編)
太陽光+電気自動車(EV・V2H)+定置型蓄電池の経済効果を徹底解説(関西電力エリア編)
2023年地域別 住宅用太陽光導入による経済メリットまとめ
電力エリア別に住宅用太陽光導入の経済メリットをシミュレーションしてまとめました。
2023年 東京電力エリア(東京都) 住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション
2023年 関西電力エリア(大阪府) 住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション
2023年 東北電力エリア(宮城県)住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション
2023年 北陸電力エリア(石川県)住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション
2023年 中部電力エリア(愛知県)住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション
2023年 中国電力エリア(広島県)住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション?
2023年 九州電力エリア(福岡県) 住宅用太陽光発電の経済効果シミュレーション?
蓄電池購入者1,090人アンケート調査結果 – 太陽光 蓄電池 経済効果シミュレーションで約6割の顧客が販売店への信頼度アップ
著者プロフィール(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)
会社名:国際航業株式会社
部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG
執筆者名:樋口 悟
執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。
太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。
執筆記事:https://energy-shift.com/news/author/71cbba7e-dbbc-4728-9349-9cdbed975c6e
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