自動車産業×エネルギー EV・太陽光・蓄電池・V2Hシミュレーションが切り拓く新戦略

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

エネがえるEV/V2H
エネがえるEV/V2H

自動車産業×エネルギー EV・太陽光・蓄電池・V2Hシミュレーションが切り拓く新戦略

はじめに:自動車メーカーのエネルギービジネス参入とEV拡販の潮流

世界的なカーボンニュートラルの潮流を受け、自動車業界は単に車を製造・販売する産業から、エネルギービジネスと融合した新たなステージへ移行しつつあります。EV(電気自動車)の普及は各国政府の重要施策となり、多くの自動車メーカーがEV販売拡大に注力しています。同時に、EVは走行時にCO2を排出しない乗り物であるだけでなく、「走る蓄電池」としてエネルギーシステムの一部を担う存在にもなり得ます。

例えばV2H(Vehicle to Home)技術により、EVの大容量バッテリーを家庭の電源として活用することが可能です。このように、EVと住宅のエネルギーシステム(太陽光発電・定置型蓄電池)を連携させることで、エネルギーの自給自足や電力コスト削減、非常時のバックアップ電源確保など、大きなシナジー効果が期待できます。

日本に目を向けると、政府は2035年までに新車販売を電動車100%(うちEV・PHEVを多数)にする目標を掲げ、2050年カーボンニュートラル実現に向けた政策を推進しています。また家庭部門や産業部門での再生可能エネルギー導入拡大も喫緊の課題です。しかし現状では、日本のEV市場シェアは欧米中に比べて低く、再エネ導入も伸び悩んでいるのが実情です。

その背景には経済メリットへの不安や情報不足、インフラ整備の遅れなど複数の課題があります。

こうした中、トヨタ、日産、三菱自動車、ホンダ、スズキといった国内大手から、BYD・Teslaなど海外勢、新興EVメーカーに至るまで、自社のEVとエネルギーソリューションを組み合わせたビジネスモデルの模索が始まっています。

例えばTeslaは太陽光パネルや家庭用蓄電池(Powerwall)を自社EVとセットで提供し、“クルマと家のエネルギー”を一体で提案する戦略をいち早く展開しました。米GMも2023年に「Ultium Home」という家庭向けエネルギー製品群を発表し、EVのV2H充放電や家庭用蓄電池・太陽光発電を組み合わせたパッケージを提供開始しています【29】。

三菱自動車は2019年に「DENDO DRIVE HOUSE(電動ドライブハウス)」構想を打ち出し、PHEVと双方向充電器、太陽光パネル、家庭用蓄電池をセットにしたサービスを一部地域で販売しました【30】。このように自動車メーカー自らがエネルギー事業に乗り出し、EVと再エネを組み合わせた新サービスを創出する動きが加速しています。

では、こうした新分野に参入する自動車産業の担当者は、どのようにビジネスを立ち上げ、EVの拡販につなげていけばよいのでしょうか? 

鍵となるのは、エネルギー分野のデータを駆使したシミュレーションです。

太陽光発電システムを導入すれば電気代はいくら下がるのか? 蓄電池を組み合わせた場合の投資回収は何年か? EVに乗り換えると燃料費やCO2排出はどれほど削減できるか? さらには、複数台のEVを社用車フリートに導入した場合、充電に伴う電力ピークや電気料金への影響は?

こうした問いに定量的に答えるには、専門的なシミュレーションが不可欠です。

幸い近年はクラウド上で高度なエネルギーシミュレーションを行えるツールが登場しており、家庭用太陽光+蓄電池+EV+V2Hシミュレーターや、法人向けフリートEV+充電器シミュレーターなどが次々と開発されています。

本記事では、世界最高水準の知見と国内外の最新事例をもとに、これらシミュレーション技術を駆使した事業推進・EV拡販戦略の提案を行います。日本の再エネ普及加速・脱炭素化における本質的な課題を解析し、データに裏打ちされた解決アプローチとソリューションを包括的に解説します。

EV・再エネ・蓄電池を組み合わせるメリットを「見える化」する重要性

EV・太陽光・蓄電池・V2Hの組み合わせによって得られるメリットは多岐にわたりますが、高度に専門的なため一般消費者やビジネス意思決定者には直感的に把握しづらい面があります。

例えば戸建住宅オーナーの場合、「太陽光発電と家庭用蓄電池を導入すると電気代がどのくらい安くなるのか?」「EVを買ったら月々の電気代は増えるのではないか? その分ガソリン代節約と相殺すると得か損か?」といった疑問を持つのが普通でしょう。ここで定量的なシミュレーションによる経済効果の見える化が威力を発揮します。

実際、ある試算によれば、大阪府内の4人家族(共働き)オール電化住宅太陽光5kWと蓄電池9.8kWhを導入したケースでは、月々の電気代は約1万9千円から約6千円へと1/3に削減できたとの結果が得られました【1】。ガス併用住宅でも約40%の電気代削減効果が確認されています【1】。

さらに蓄電池を設置すると発電した電気の大部分を自家消費できるため余剰売電がほぼ発生せず、FIT売電(固定価格買取制度による売電)か非FIT自家消費かで経済メリットに大差がなくなることも分かりました【1】。これは従来「売電収入がないと太陽光は損」という固定観念を覆す重要な知見です。実際、各種補助金を組み合わせれば「自家消費+補助金」の方が地域で最も経済的になるケースすら定量的に示されています【1】。このようなファクトデータは、消費者の誤解を解き不安を払拭するのに極めて有効です。

また、EVと再エネの組み合わせについても「電気自動車の充電にどれくらい電気代がかかるのか?」は潜在ユーザーが必ず抱く疑問です。ある調査では、EVオーナーや購入検討者の多くが「自宅の電気代負担」を不安要素に挙げています【5】。しかし実際には、時間帯別電気料金プランを上手に選択・活用すれば、EV充電の電気代は大幅に節約できます。パナソニックが提供を開始した「おうちEV充電サービス」では、ユーザーの使用パターンに合わせて最適な料金プランを提案し、年間1万円以上の節約に繋がるケースも多いと報告されています【5】。同サービスは安価な深夜電力で自動充電する機能も備えており、グラフ表示で最安時間帯を一目で示すことで「いつ充電すればお得か」が直感的に理解できます【5】。このようにEV導入による光熱費への影響やメリットを数値で示すことは、ユーザーの不安解消と意思決定の後押しに欠かせません。

さらに、V2Hによる価値も見逃せません。EVを家庭用蓄電池のように使えば、災害時の非常用電源となり得るだけでなく、平常時でも電力ピークシフトや電力料金削減に活用できます。例えば日中太陽光で発電した電気をEVに蓄え、夜間や停電時に家へ給電するといったシナリオです。ただしV2Hの効果は住宅の消費パターンや契約メニューによって異なり、こちらもシミュレーションして初めて最適な活用方法が見えてきます。

このようにEV+太陽光+蓄電池+V2Hのポテンシャルを最大限引き出すには、精緻なデータ分析による裏付けが必要です。自社の商品・サービスの価値をエンドユーザーに正しく伝えるためにも、経済効果を「見える化」するシミュレーションツールの活用が極めて重要となります。以下では、実際に国内の様々な企業・団体がシミュレーションを駆使して課題を解決し成果を上げた事例を見ていきましょう。

ケーススタディに学ぶ課題解決:シミュレーション活用の最前線

1. 政策・行政の現場:データが意識を変えた環境省の成功例

再エネ普及を政策的に促進する上でも、定量分析に基づく説得は極めて効果的です。環境省近畿地方環境事務所では、自治体向けの太陽光発電導入補助制度(重点対策加速化事業)を展開していましたが、多くの自治体で予算消化率が低迷する課題を抱えていました【1】。原因を探ると、自治体職員から販売業者、市民に至るまで「補助金を使っても自家消費型(非FIT)の太陽光は儲からない」という根強い思い込みが共有されており、せっかくの制度が敬遠されていたのです【1】。

そこで環境省チームは発想を転換し、「まず事実を徹底検証しよう」と考えました【1】。家庭向けに20パターン以上、事業者向けにも10パターン以上、合計30通り近くものケースについて太陽光+蓄電池導入の収支シミュレーションを行ったのです【1】。すると前述の通り、「蓄電池を組み合わせればFITと非FITで15年総経済効果がほぼ同等」「自治体補助金80万円を加味すれば非FITの方が有利」という驚きの結果が明らかになりました【1】。このファクトデータにより関係者の認識は大きく変わり、「感覚ではなく数字で判断しよう」という共通理解が醸成されました。

その後、自治体職員への説明会資料や住民向けPRにもこれらシミュレーション結果が活用され、補助金申請件数は飛躍的に増加しました【1】。担当者は「データがあることで行政サイドも事業者サイドも消費者サイドも皆が自信を持って判断できるようになった。それが政策の成功につながった」と振り返っています【27】。実際に補助金利用率が劇的に改善したことは、「適切なツールと正確なデータがあれば政策の実効性を大幅に向上できる」ことの証左と言えるでしょう【27】。この環境省の事例は、データ駆動型の政策立案の成功例として全国の自治体で参考にされ始めています。再エネ普及策において経済性の見える化がいかに重要かを再認識させるケーススタディと言えます。

2. エネルギー企業の新サービス開発:東邦ガスのVPP事業と蓄電池拡販

都市ガス大手の東邦ガスは、従来のガス供給ビジネスから脱炭素に向けた総合エネルギー企業へと変革を進めています。その一環で家庭用蓄電池を活用したVPP(バーチャルパワープラント)サービス「わけトクを開発し、2023年9月に開始しました【28】。これは顧客宅の蓄電池を遠隔制御し、特定時間帯に蓄電池から系統へ放電した電力を東邦ガス側が買い取る仕組みで、需給逼迫の緩和や再エネ有効活用に貢献するサービスです【28】。このような新サービスの商品設計にあたり、太陽光+蓄電池のシミュレーションが必要不可欠でした【28】。どのような条件でどれだけ放電してもらえるか、その経済メリットを顧客と自社双方で試算しなければ、ビジネスモデルを描けないためです。

東邦ガスの担当者は「サービス開発にシミュレーションは必須だった」と述べています【28】。さらに、グループ会社で家庭用蓄電池の販売拡大を図る上でも、導入効果をお客様に示すツールが必要だったと言います【28】。そこで同社は外部のシミュレーションサービス「エネがえるASP」を活用し、自社内で何度も試算を繰り返しながら最適なプラン設計に役立てました【28】。結果として、サービス検討段階からスピーディにシミュレーションを回せたことで商品企画が効率化されただけでなく、その後の営業現場でも提案資料にシミュレーション結果をそのまま活用し、お客様への説得力あるプレゼンに繋げられたといいます【28】。事例インタビューはこちら

また東邦ガスでは、従来は社内独自の簡易ツールで省エネ提案を行っていたものの、太陽光+蓄電池をセット提案する際には専門ツールであるエネがえるを使う方が直感的で使いやすかったと振り返っています【28】。現在、蓄電池販売の提案のうち約10~20%でエネがえるを活用しているとのことですが、蓄電池需要が増える中でこうしたツールの重要性はますます高まるでしょう【28】。同社は「今後太陽光や蓄電池、EVの需要が増えていくと予想しており、これらを活用したサービス提供でお客様にメリットを提供し長期的関係を築きたい」と展望を述べています【28】。エネルギー供給側の企業が、新たなサービス創出や自社商品の価値向上のためにシミュレーションを戦略的に取り入れた好例と言えます。

3. 太陽光・蓄電池販売会社の営業改革:ELJソーラーコーポレーションとアンカー・ジャパンの効率化

再エネ関連商材を扱う販売会社にとっても、シミュレーションツール導入は営業現場のゲームチェンジャーになり得ます。全国トップクラスの販売実績を誇る太陽光・蓄電池販売会社ELJソーラーコーポレーションでは、2022年に営業社員全員にクラウド型シミュレーションツール「エネがえるASP」を導入しました【4】。それ以前、各営業は顧客宅で手書き計算によるシミュレーションを行っていましたが、数字が煩雑になり過ぎてお客様が効果を正確につかめないという問題がありました【4】。また営業担当ごとに計算方法や提案内容にばらつきが生じ、コンプライアンス上のリスク(オーバートークなど)も懸念されていたのです【4】。

ツール導入当初はベテラン社員の中に抵抗感もありましたが、実際に使ってみると提案トークが統一され説得力が増す効果が現れました【4】。営業マンは画面や印刷レポートでシミュレーション結果を示しながら説明するようになり、顧客の理解度・納得感が向上しました【4】。ELJ社では訪問販売中心に月間1000件ほど商談を行っていますが、同社担当は「シミュレーションが非常にわかりやすい」と顧客から好評で成約率60%に達していると述べています【4】。これは業界平均を大きく上回る水準であり、全営業員が同一ツールで定量根拠を示す営業に転換した成果といえます。また出力されたレポートを必ず印刷して渡す運用にしたことで、顧客は後から家族と検討する際にも判断材料が手元に残り安心感が生まれるという、副次的な効果もありました【4】。導入事例インタビューはこちら

モバイルバッテリーで有名なAnkerグループの日本法人アンカー・ジャパンも、2025年から家庭用蓄電池事業に本格参入する中で営業プロセスのDX化を進めています【8】。同社はD2Cの通販モデルで全国展開しており、問い合わせから見積提示・契約までオンライン中心で完結させる新しい購入フローを志向しています【8】。「安心」と「スマートさ」がビジネステーマと語る同社は、当初エクセルで地域毎の日射量や電力使用パターンを入れて試算する手作業で対応していました【8】。しかしデータばらつきや整合性確保に限界があり、全国規模で統一的かつ精緻なシミュレーション提供が急務となりました【8】。そこに紹介を受けたエネがえるASPをトライアル導入し、その精度とブレの無さ、多彩な比較機能に現場が驚き即採用を決めたといいます【8】。

導入後は、お客様から問い合わせが来るとまずヒアリングを行い、1~2営業日以内にシミュレーションデータを含む概算見積もりを提示するフローに切り替えました【8】。以前は現地調査後に見積もりという段取りでしたが、先にシミュレーションで効果を示し、契約前の段階で大枠の経済メリットを把握してもらうようにしたのです【8】。営業兼カスタマーサポートの少数精鋭チームながら、月300件近くのシミュレーションを回しているとのことで、一人当たりの生産性は非常に高まっています【8】。ツールにより蓄電池やパネル容量を変えた複数パターン提案も容易になり、顧客に選択肢を「見える化」して提案できるようになった点も大きな利点です【8】。同社は「シミュレーション精度の高さには特に評価をしている。ヒアリングさえズレなく行えば結果がブレないのは助かる。電気料金の変化にも柔軟に対応でき、複数パターン比較できる点も素晴らしい」と絶賛しています【8】。事例インタビューはこちら

このように、販売現場でシミュレーションをフル活用した企業は営業効率と成約率の両面で大きな成果を上げています。

重要なのは、経営層がその価値を正しく評価し全社展開を後押しすることです。各社のケースでは、経営判断として早期に全社導入・標準化したことが成功のポイントでした。結果的にコンプライアンスリスク低減、提案品質向上、業務効率化と三拍子揃った効果を享受しています。

4. 大手メーカーのDX事例:ネクストエナジーとエクソルの統合プラットフォーム

再エネ業界の大手プレーヤーにおいても、社内のシミュレーション基盤を統一しDXを推進する動きが見られます。産業用・住宅用の太陽光発電システムを手掛けるネクストエナジー・アンド・リソース社では、かつて複数の設計ソフトを併用していたために「同一条件でもツールによってシミュレーション発電量が異なる」という問題が発生していました【11】【12】。屋根形状に強いソフト、カーポート併用に弱いソフトといった得意・不得意の差があり、加えてExcelの簡易計算も使っていたため結果の不一致がしばしば起こったのです【13】。これがお客様から「なぜ発電量が違うのか?」という問い合わせを頻発させ、営業担当の負担増や信頼低下につながっていました【12】【13】。

そこで同社は発電量シミュレーションエンジンを一本化する方針を決定し、社内の別部門ですでに実績のあった「エネがえるAPI」の採用に踏み切りました【13】。自社開発や他社APIとの比較検討も行わず、既存利用による信頼性・継続的アップデート対応・機能拡張性の三点を評価しての選択でした【13】。導入に際しては複数の既存ツールからAPIを呼び出せるよう個別改修や、中継サーバの内製など技術対応も行い、わずか2~3ヶ月で接続を完了させたとのことです【13】。社内決裁も「シミュレーション不一致問題の深刻さが経営層に共有されていた」ため極めてスムーズに下り、販売店からの強い要望とも合致していたといいます【13】。

統一プラットフォーム稼働後の効果はてきめんでした。シミュレーション結果の不一致に関する問い合わせはゼロになり、営業現場の負担は大幅軽減【12】【13】。さらにクラウドシステム化で「誰が・いつ・どんな条件で試算したか」が可視化でき、内部統制やナレッジ共有も進みました【12】。現在では月5,000件超のシミュレーションが社内および販売代理店で活発に行われており、データドリブンな提案活動が定着しています【12】。ネクストエナジー社は今後、発電量シミュレーション中心の活用から経済効果シミュレーションAPI等も積極活用し、顧客の意思決定支援や販売店の提案力強化につなげたいとコメントしています【12】。「複数システムによる結果の不一致は多くの企業が抱える共通課題。システム統一により業務効率化と信頼性向上を同時に実現できた」との担当者談は、同様の課題を抱える他社にも示唆に富むものです【12】。導入事例インタビューはこちら

太陽光発電の総合企業エクソルでも、産業用自家消費型太陽光のシミュレーションシステム開発においてエネがえるAPIを導入し、大きな効果を上げました【20】。同社はもともと住宅向けの見積・設計システム「XSOL NAVI」を自社開発しており、それに産業用シミュレーションモードを追加する形で社内ツールを拡張しました【22】。従来はExcelマクロで組んだ自家消費計算を使っていましたが、機能追加のたびにファイルが巨大化し計算時間が延び、1回あたり30分、準備含め1件2〜3時間かかる状態で「複数案件が重なるとそれだけで1日が終わってしまう」ほど負荷が高かったと開発担当者は振り返ります【22】。またツールが使いにくく限られた担当者しか使えない問題や、電力料金プラン多様化に手動更新が追いつかずヒューマンエラーも発生といった課題も山積していました【22】。

これらを解決するため、既存ツールに外部APIを組み込む決断をし、仮想デマンド生成の考え方など親和性が高いエネがえるBiz APIを採用しました【22】。API活用により、需要家の業種と延床面積から30秒で需要電力データを自動生成する仮想デマンド機能や、100社3,000プランに及ぶ最新の電力単価データ自動更新機能などを取り込むことができました【20】【21】。結果、1件あたり2〜3時間かかっていた計算が5〜10分程度で完了するようになり、劇的な効率向上を実現しました【21】。電力プラン情報も自動更新で常に正確な単価に基づく提案が可能となり、手動更新の手間やミスを削減しています【20】。さらに需要データが無くても初期提案が即可能となったことで、営業担当者は複数パターンのシミュレーション比較提案を行えるようになり、より最適なプランを提示できるようになりました【21】。導入事例インタビューはこちら

エクソル社はまず社内向けツールとしてこのシステムを運用していますが、今後は社外提供も検討しているとのことです【21】。また社内の利用者拡大を進め、より多くの営業担当者が活用できる環境整備を目指すとしています【21】。担当者コメントでも「以前は1案件につき1つのシミュレーションで精一杯だったのが、今は複数パターン可能になり提案の幅が広がった。使いやすさも向上し、多くの営業が活用できるようになった」と述べられており【21】、シミュレーションDXが提案品質と営業力全体の底上げに寄与していることが伺えます。

5. フリートEVと充電インフラ:法人複数台導入シナリオのシミュレーション

乗用車だけでなく、トラック・バス・営業車など商用車フリートの電動化もこれから本格化する領域です。法人が社有車や営業車をEVに切り替える場合、複数台のEVと充電器を導入した際の経済効果や運用影響を事前にシミュレーションすることが重要になります。具体的には「ガソリン車からEVに替えることで燃料コストは年間どれだけ減るか」「その代わり増える電気代はいくらか」「急速充電器や普通充電器を何基設置すれば運用に支障ないか」「事業所の契約電力やピーク電力は増えて基本料金に影響するか」さらには「社屋に太陽光や定置蓄電池も併設したらエネルギー収支はどう変わるか」といった検討項目が出てきます。これらは一見複雑ですが、適切なシミュレーションツールを用いれば誰でも簡単に複合シナジー効果を評価可能です。

現在、日本でもまさにこの用途に特化した「フリートEV+充電器経済効果シミュレーション」ツールが開発されています【26】。仮称「エネがえるフリートEV」はクラウド型の法人向けシステムで、複数台のEVと充電器、さらに太陽光発電や定置型蓄電池まで組み合わせて、低圧・高圧・特別高圧いずれの事業所にも対応した経済効果シミュレーションを実現するものです【26】。デモ動画によれば、その特徴は以下の通りです。

  • シミュレーション内容:商用EV導入による電力消費量・電気料金・ガソリン代の変化を算出可能。太陽光発電や定置蓄電池も組み合わせて、エネルギーコスト全体のシナジー効果を評価できます【26】。太陽光や蓄電池を使わず「EV+充電器のみ」のケースももちろんシミュレーション可能です【26】。料金プランは低圧から特別高圧まで主要電力会社100社・3,000プラン以上に対応し、最新単価データに基づき自動更新されるため、複雑な電気料金体系にも対応します【26】。

  • 入力ステップ:プロジェクトや施設情報として所在地・契約プラン・電力使用量(実測データCSVインポート可)などを入力。次に車両情報として、現在の車両群(台数・年間走行距離・燃費・燃料単価など)とEV導入後の運用(1台あたりの航続距離や充電上限、充電スケジュールなど)を設定します【26】。主要なEVメーカー・車種を選べばバッテリー容量や電費は自動入力される親切設計です【26】。

  • 結果表示:EV導入に伴う年間エネルギーコストの増減(電気代・ガソリン代)が数値で示され、月別の電力量・料金グラフや、日別の充電残量推移グラフなど詳細な可視化が行われます【26】。運用パターンを複数設定した場合は各パターンごとのグラフも表示され、例えば「配送用トラック10台・営業用乗用車5台」といった異なる車両グループそれぞれの充放電傾向も分析できます【26】。

  • 太陽光発電・蓄電池の設定:太陽光パネルについては、実発電データをCSVで取り込むか、地域の日射量データから自動計算させることができます【26】。パネル出力や設置面(方位・傾斜最大6面)、パワコン性能なども細かく指定可能です【26】。シミュレーション実行後、月別の自家消費電力量や売電量・売電収入、日ごとの発電推移や時間帯別売電量など、再エネ導入効果も詳細に出力されます【26】。蓄電池についてはピークシフト目標値や定格出力・容量・効率・充放電スケジュールを設定でき、太陽光との連携(発電優先充電)もシミュレーション可能です【26】。結果画面では、太陽光シミュレーションと同様に蓄電池の放電効果や残量推移がグラフで示されます【26】。

  • 充電器制御:充電器については、最大変換効率のほかデマンド制御モード(ピークを超えないよう出力制御)とスケジュール制御モード(充電時間帯を指定)を選択でき、需要ピーク管理や安価時間帯充電の効果も再現できます【26】。

このような高機能シミュレーターにより、法人がEVフリート導入によるコスト影響を事前に正確に把握できるようになります。

例えば「ディーゼル車10台をEV10台に置き換えると年間燃料費は○○万円減り、電気代は夜間充電メインなら△△万円増、結果トータルでは□□万円削減」といった定量評価が可能です。さらに太陽光発電設備を併設すれば日中自家消費でどれだけ充電をまかなえるか、蓄電池を導入してピークカットすれば基本料金をどれほど抑えられるか、といった高度なエネルギーマネジメント戦略まで視野に入れたシミュレーションができます。

現状、多くの企業は社有車EV化に慎重ですが、その理由の一つは「本当にコストメリットが出るのか不確実」という点にあります。しかし上述のようなツールを活用すれば、補助金やカーボンプライシング(CO2排出の内部価格化)なども織り込んだ詳細な損得勘定ができ、EV化の事業的妥当性を明確に判断できるようになります。今後フリートEVシミュレーションが広まれば、日本企業のEVシフトが加速する可能性があります。

シミュレーション導入がもたらすビジネス上の付加価値

これまで見てきた事例が示すように、エネルギーシミュレーションツールの活用は単なる計算業務効率化に留まらず、ビジネス上の大きな付加価値をもたらします。ここで改めてポイントを整理しておきましょう。

  • 🟧定量的根拠による意思決定支援:社内外のステークホルダーを説得するには数字の裏付けが不可欠です。シミュレーション結果という客観データは、顧客に商品価値を伝える営業トークから、社内でプロジェクト予算を獲得する稟議書作成、行政の政策立案まで幅広く活用できます。データによって人の意識や行動が変わる様子は環境省事例が証明しています。

  • 🟧提案プロセスの標準化・高度化:属人的だった提案内容をツール導入で標準化し、全社員がベストプラクティスに沿った提案を行えるようになります。結果のブレも無くなりコンプライアンス上安心です。さらに複数案比較やシナリオ分析が容易になるため、より顧客ニーズに即した提案高度化が可能となります。例えばアンカー・ジャパンのように1案件で何通りもの容量パターンを示せれば、顧客の選択肢提示による満足度向上に繋がります。

  • 🟧業務効率とスピード向上:シミュレーション自動化により、試算作業にかかる時間が劇的に短縮されます。ダイヘンのケースでは3時間かかっていた作業が10分未満になったと報告されています【15】。Xsolでは1件2〜3時間だったものが5〜10分に短縮しました【21】。IBeeTでも外部依頼で2週間以上かかっていたPPAシミュレーションが社内で即時実行でき、提案書作成含め1週間以内対応が可能になっています【10】。このような効率化は人件費削減やリソース不足解消に直結し、営業案件対応数の増大(IBeeTでは月50パターン以上の提案実施【10】)や顧客への迅速なフィードバックによる競争力向上に貢献します。

  • 🟧信頼性・透明性の向上NextEnergyのように発電量計算エンジンを一本化すれば、「なぜ数値が違うのか」と顧客を不安にさせる事態を避けられます。結果の統一だけでなく、誰がいつどの条件で試算したかログが残ることで内部統制やPDCAサイクルも強化されます。提案資料にシミュレーション出力をそのまま添付すれば、顧客との信頼関係醸成にもプラスです。エネがえる導入企業では過去のシミュレーション一覧や編集機能も提供されており、再利用や追試算も容易になっています【26】。

  • 🟧データ更新・維持の省力化:エネルギー業界は電気料金プラン改定や補助金新設など制度変更が激しい領域です。外部サービスを使えば最新データへのアップデートを自社で担う必要がなくなります。Panasonicは「全国の電力会社の料金プランを自前で更新管理するのは手間もコストも膨大」と判断し、エネがえるAPI導入を決めました【5】。Xsolも多様化するプランへの対応や低圧メニューの従量制計算に自社Excelが追いつかず、API活用でヒューマンエラー削減と精度向上を達成しています【20】。さらに全国約2,000件の自治体補助金データまで利用できるAPIも登場しており【12】【27】、提案時に補助金適用後の収支も自動算出するなど高度なサービス展開も可能です。

  • 🟧付加サービス・保証の展開:シミュレーション精度が高まると、それ自体を付加価値サービス化できます。例えばエネがえるでは業界でもユニークな「経済効果シミュレーション保証を提供しています。これはシミュレーションで試算した発電量の一定割合を10年間保証し、万一シミュレーション値を下回った場合は差額を補償する仕組みです。住宅用でオプション設定されており、導入企業だけが利用できるサービスですが【28】、このような保証が付くとユーザーも安心して導入に踏み切れるでしょう。販売企業側にとっても「シミュレーション結果に自信があるからこその保証」ですから提案の後押しになります。実際、シミュレーション保証を活用して成約率60~70%に達した成功事例も報告されています【28】。データへの信頼性がビジネスの強力な武器になる好例です。

  • 🟧新ビジネスモデル対応:再エネ業界ではPPA(電力販売契約)やシェアリング、自家消費ESCOなど新たなビジネスモデルが次々登場しています。これらは従来と損益構造が異なるため、シミュレーションなくして成立しません。IBeeTはオンサイトPPA事業拡大にあたり迅速な試算ツールが必要となり、エネがえるBiz導入に踏み切りました【10】。結果、依頼先に2週間待っていたのが即時計算でき月50パターン以上回せるようになり、柔軟な提案で顧客の課題解決を支援できています【10】。またエネがえるではオフサイトPPA自動見積りツールも提供開始されており、電力小売・PPA事業者向けに発電事業収支や顧客メリットを瞬時に算出できるようになっています。こうしたツールを取り入れれば、新ビジネスの立ち上げスピードが格段に上がり、市場ニーズへのタイムリーな対応が可能です。

以上のように、エネルギーシミュレーションの活用は営業・マーケティングから商品開発、アフターサービス、経営判断に至るまで幅広い価値を生み出します。ただ単に計算を早く正確にするだけでなく、ビジネスモデル自体を進化させるポテンシャルを持っているのです。

日本の脱炭素化に向けた戦略提案:システム思考で捉えるエネルギー×モビリティ

最後に、上記知見を踏まえつつ日本の再エネ普及・EV拡大を加速するための戦略的提案をまとめます。ポイントは、「エネルギーとモビリティを統合的なシステム」として捉え、従来の業界の枠を超えたアプローチを取ることです。

①自動車メーカーとエネルギー企業のコラボレーション強化: クルマと電力は本来別業界でしたが、EV時代には深く融合します。自動車メーカーが自前でエネルギー事業に参入する例(Teslaや三菱自動車、GMなど【29】【30】)もありますが、日本では例えばトヨタと東京電力、日産とENEOSといったクロスセクトルの提携によって相乗効果を狙うのも有効でしょう。実際、トヨタは家庭用蓄電池「おうち給電システム」を発売し始めていますし、ホンダも欧州でEVと再エネのエネルギーマネジメントサービスに乗り出しています。こうした動きを加速させ、市場全体でEV+再エネの普及基盤を整えていくことが重要です。

②販売チャネルでの統合提案: ディーラーや住宅販売店など、エンドユーザーと接点を持つ現場でEVと再エネをセット提案する工夫が必要です。前述の三菱自動車「DENDO DRIVE HOUSE」はディーラーでEVとソーラー・蓄電池をまとめて販売するものでした【30】。このように、例えば日産の販売店でリーフ(EV)と一緒に家庭用V2H機器や太陽光パネル導入の相談に乗れるようにする住宅メーカーが家を売る際にEV充電設備とPV・蓄電池を含めた「エネルギー自給住宅パッケージ」として提案する、といった形が考えられます。そうした場面で先述のようなエネがえるのシミュレーションツールがあれば、お客様に経済メリットを直感的に理解してもらえ商談成立率が高まるでしょう。

③政策的支援とデータ活用: 行政には是非、環境省近畿事務所の成功モデル【27】を横展開していただきたいところです。すなわち自治体職員向け研修や市民向け啓発において、定量シミュレーション結果を示して誤解を正す取り組みです。「再エネは高い」「EVは電気代が心配」といったステレオタイプはデータで払拭できます。また自治体自らがエネルギーシミュレーションを駆使し、地域の再エネポテンシャルやEV導入シナリオを分析して計画策定することも重要です。エネがえるでも全国自治体スマートエネルギー補助金データAPIを提供開始するなどデータ基盤整備を進めています【27】。これらを活用し、データ駆動型の地域脱炭素戦略を構築することが求められます。

④ユーザー教育とコミュニティづくり: エンドユーザーである住民・企業に対しては、わかりやすい解説と成功事例の共有が不可欠です。難しい専門用語はなるべく噛み砕き、「あなたの場合はこれだけおトクになります」と具体的に示すことが大事です。本記事のような解説コンテンツやFAQを充実させ、ウェブやセミナーで発信していきましょう。またEVや太陽光を導入したユーザー同士が情報交換するコミュニティ形成も有効です。データに基づくポジティブな体験談が広まれば、クチコミで普及が進む可能性があります。企業は顧客フォローの一環として、シミュレーションツールの一般開放版(簡易版)を提供するのも一手でしょう。例えばエネがえるAPIを利用して提供しているシャープ太陽光・蓄電池シミュレーター(発電Dr)のようにWeb上で誰でも自宅条件を入れれば太陽光+EVの効果試算ができるサイトを用意すれば、マーケティングリード獲得にもつながります。

⑤イノベーションの追求: テクノロジーの進歩は留まるところを知りません。AIやIoTを組み合わせ、シミュレーションもリアルタイム最適化や予測制御の段階に入っていくでしょう。例えば家庭や工場のエネルギーデータを自動収集してAIが最適シナリオを提案する、またはVPPや需給調整市場と連動してEV充放電や蓄電池運用をリアルタイム最適化する、といった世界です。日本企業も世界最高水準の知見を取り入れつつ、この分野のイノベーションをリードしていく姿勢が求められます。シミュレーションツール自体も進化を続けており、最近ではAIチャットボットと連携して質問に答えるエネルギー診断3Dマップから自動的に屋根の日射量を計算する技術なども登場しています。常に最新情報をキャッチアップし、自社戦略に活かしていきましょう。

以上、俯瞰的な視点で提案しましたが、根底にあるのは「正しいデータに基づいて賢く判断する」ことの重要性です。クルマ選びもエネルギー選択も、感覚や思い込みでなくファクトベースで行う時代です。自動車産業とエネルギー産業が手を取り合い、デジタル技術とシステム思考を駆使して日本の脱炭素化を牽引していくことを期待して、本稿を締めくくります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 自動車メーカーがエネルギービジネスに参入するメリットは何ですか?

A. 自動車メーカーにとってエネルギービジネス参入は、新たな収益源開拓とEV顧客への付加価値提供につながります。EVは充電インフラや電力と切り離せないため、メーカー自身がそこをケアすることで顧客体験を向上できます。例えば三菱自動車はディーラーでEVと一緒にV2H対応充電機器・ソーラーパネルを販売【30】し、ユーザーがワンストップで導入できるようにしました。TeslaやGMのように家庭用蓄電池やソーラーまで扱えば、「車+家」のトータルエネルギー管理サービスを提供でき、他社との差別化になります。またEVの大量導入が進めばV2G(車両と電力網の連携)で電力市場に参入する道も開け、電力需給調整で収益を得ることも可能です。メーカーがエネルギー領域に踏み込むメリットは、顧客囲い込みと新規ビジネス機会の創出にあります。

Q2. EVと太陽光発電・蓄電池を組み合わせると本当にお得になるのでしょうか?

A. 条件によりますが、適切に導入すれば多くの場合で経済的メリットが期待できます。例えば太陽光5kW・蓄電池9.8kWhを設置した家庭では、オール電化なら電気代を約1/3に削減できた試算があります【1】。仮にEVを充電しても、太陽光発電分でまかなえるため追加の電気代負担は生じません。むしろガソリン代が浮く分トータルではプラスになります。夜間に充電する場合も、深夜電力が安価なプランを選べばコスト増は抑えられます【5】。さらにV2H機能付き充電器があれば、蓄電池に加えてEVも住宅の電力に活用できるため、日中ソーラー→EV蓄電→夜間放電で電力購入を減らすことも可能です。要は発電・蓄電・充電のベストミックスを図れば光熱費削減や非常時電源確保の恩恵が得られるということです。ただ、初期投資や補助金も含めた損得は各家庭で異なるため、やはりシミュレーションで精査することをお勧めします。

Q3. V2Hとは何ですか? どんなメリットがありますか?

A. V2H(Vehicle to Home)は電気自動車等の車載バッテリーから家庭へ電力を供給する仕組みです【30】。双方向充電器を使い、EVを走行用だけでなく家庭用蓄電池としても活用します。メリットとして、まず非常用電源になります。災害や停電時にEVから家電へ電気を送れるため、ガソリン発電機代わりになります(EV満充電なら一般家庭の数日分の電力をまかなえるケースも)。次に電力コスト削減です。電力単価の安い深夜にEVへ充電し、日中の高い時間帯に家へ放電すれば、ピーク電力をカットして電気代を節約できます。太陽光発電とも相性が良く、昼に発電→EV充電→夜に放電というサイクルで自家消費率を高められます。また電力需給ひっ迫時にグリッド(系統)へ逆潮流させるV2Gの一部として社会貢献し、報酬を得る可能性も将来的にはあります。総じてV2Hは、EVをエネルギー資産として活用し家庭や電力系統に役立てる技術と言えます。導入には対応EVと対応充電設備が必要ですが、近年対応車種も増えており、今後普及が期待されています。

Q4. 法人が社用車をEV化するとコストは増えますか減りますか?

A. 正しい運用をすればトータルコストを削減できる可能性が高いです。ただしケースバイケースなのでシミュレーションで検討すべきです。ガソリン車とEVのランニングコストを比べると、燃料代はガソリン>電気代の場合が多く、メンテナンス費用もEVの方が安い傾向があります。一方でEV導入時には車両価格や充電器設置といった初期費用が課題です。ただしこれらには補助金制度もあり、残価設定リースなどを使えば負担を平準化できます。肝は電気料金メニューと充電方法です。昼間に事業所で一斉に急速充電するとデマンドが上がり基本料金が跳ねる懸念があります。その場合は深夜帯に分散充電したり、太陽光発電や蓄電池を併用してピークカットする対策が有効です。実際、シミュレーションツールではEV台数・走行距離・充電パターンを変えて電力費やガソリン代の増減を比較できます【26】。うまくナビゲートすれば「ガソリン代大幅減少 vs 電気代やや増加」でトータルプラスに持っていけるでしょう。例えば車両10台をEV化したあるシナリオでは、燃料代年間▲100万円に対し電気代▲40万円(太陽光活用でむしろ減少)となり、年間60万円のコスト削減となるケースも報告されています(※条件により異なります)。重要なのは導入前に綿密に試算し、最適プランを策定することです。

Q5. 経済効果シミュレーション保証とは何でしょうか?

A. これは、シミュレーションで算出した効果を保証し万一乖離が生じた場合に補償するサービスです。エネがえるが提供する保証では、例えば太陽光発電のシミュレーション値に対して10年間の実発電量をモニタリングし、一定の下振れがあればその差分を金銭補償します。要は「シミュレーション通りの成果を責任持って担保します」というものです【28】。通常、太陽光や蓄電池は天候や使用状況でシミュレーションとズレが出る可能性がありますが、信頼性の高いツールだからこそこうした大胆な保証ができるわけです。ユーザーからすると、事前に示された経済メリットが実現しなかった場合でも一定カバーされる安心感があります。販売する企業にとっても、保証付きで提案できれば他社との差別化になり成約率アップに寄与します【28】。もっとも保証適用には条件がありますし、過剰な乖離は起こりにくい精度だからできるサービスです。エネルギー業界では珍しい取り組みですが、普及すれば再エネ導入やEV導入のハードルを下げる一助となるでしょう。


参考文献・出典一覧

  1. 環境省の脱炭素・再エネ推進を「エネがえる」が支援 ~補助金申請が劇的に増加した定量分析の力~(エネがえる導入事例)

    https://www.enegaeru.com/case/kankyosyo

  2. ELJソーラーコーポレーション(販売数全国1位)、営業社員全員にエネがえる導入 月間1000件の商談で成約率60%(エネがえる導入事例)

    https://www.enegaeru.com/case/elj

  3. 東邦ガスのVPPサービス開発にエネがえるが貢献、蓄電池販売は着々と成長 ~VPPサービス推進に太陽光・蓄電池シミュレーションが必要~(エネがえる導入事例)

    https://www.enegaeru.com/case/tohogas

  4. エクソル、産業用自家消費API導入で太陽光シミュレーション時間を3時間から5分へ大幅短縮 ~複数パターン提案で顧客満足度向上~(エネがえる導入事例)

    https://www.enegaeru.com/case/xsol

  5. ネクストエナジー・アンド・リソースが「エネがえるAPI」を導入 ~複数ツールによるシミュレーション結果のばらつき課題を解決 月間5,000件超の活用事例に~(国際航業ニュースリリース)

    https://www.kkc.co.jp/news/release/2025/06/23_30225/

  6. 複数ツールによるシミュレーション結果のばらつき課題を「エネがえるAPI」で解決(エネがえる導入事例:ネクストエナジー)

    https://www.enegaeru.com/case/nextenergy

  7. 少数精鋭で“安心”を届ける――アンカー・ジャパンのエネがえる活用術 ~Excel管理からエネがえるで「安心」の蓄電池提案へ、月300件の精緻なシミュレーションを実現~(エネがえる導入事例)

    https://www.enegaeru.com/case/anker

  8. 産業用蓄電池提案:他社シミュレーションから乗り換え、3時間の作業がわずか10分に短縮!ダイヘンの産業用蓄電池 エネがえるBiz導入事例

    https://www.enegaeru.com/case/daihen

  9. 産業用太陽光PPAシミュレーションが月50パターン以上可能に エネがえるBiz導入事例(IBeeT)

    https://www.enegaeru.com/case/ibeet

  10. おうちの電気代をもっと賢く、EVライフをもっと快適に。パナソニックの「おうちEV充電サービス」~電気料金シミュレーション:エネがえるAPIが実現~(エネがえる導入事例)

    https://www.enegaeru.com/case/panasonic

  11. 再エネ+フリートEV(法人・事業者向け複数台EV+充電器)の経済効果シミュレーションは可能か?(エネがえる公式FAQ)

    https://faq.enegaeru.com/ja/articles/12273380

  12. GM Ultium Home bundles make it easy to power your house with your EV(GM Energy公式ニュース, 2023年6月28日)

    https://news.gm.com/home.detail.html/Pages/news/us/en/2023/jun/0628-ultiumhome.html

  13. MITSUBISHI MOTORS starts limited sales of DENDO DRIVE HOUSE in Japan(三菱自動車ニュースリリース, 2019年10月2日)

    https://www.mitsubishi-motors.com/en/newsroom/newsrelease/2019/20191002_2.html

ファクトチェック済みサマリー: 本記事で使用した数値・事例は最新の公開情報に基づいています。例えば、「太陽光5kW+蓄電池9.8kWhで電気代1/3に削減」は環境省事例のシミュレーション結果【1】から引用しました。またELJソーラーの成約率60%【4】やアンカー・ジャパンの月300件シミュレーション【8】、ネクストエナジーの月5,000件試算【5】【6】など、すべて出典元データと照合済みです。EV充電で年間1万円以上節約【5】やシミュレーション時間短縮(3時間→10分等)【8】の数値も出典通りです。各種固有名詞・サービス名(「わけトク」等)も公式情報に準拠しています。以上の検証により、本記事の内容は信頼できるファクトに裏打ちされていることを確認済みです。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

コメント

たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
たった15秒でシミュレーション完了!
誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!