太陽光発電の今後を6つの視点から解説!今後オトクなのは自家消費!

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国際航業株式会社公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・導入シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)を開発提供。

太陽光発電の今後を6つの視点から解説!今後オトクなのは自家消費!
太陽光発電の今後を6つの視点から解説!今後オトクなのは自家消費!

「太陽光発電を導入したいが今後が不安…」「太陽光発電はオワコンって本当?」など悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

結論からいうと、太陽光発電は今後も持続可能なエネルギー源としてますます存在感を増していくでしょう。国を挙げて太陽光発電の導入を促進させる動きがあるため、多くのエリアでの設置義務化が進み、補助金が増える可能性もあります

一方で、売電価格は今後も下がる傾向にあるため、売電収入は期待できないでしょう。FIT制度の売電単価が下がり続けていることが「太陽光発電がオワコン」と言われている原因です。

しかしながら、今後は、売電収入の代わりに「自家消費(自分で使うこと)」することによる電気代削減効果が期待できます。

つまり、今後も、依然として、太陽光発電を導入するメリットは大きいと言って良いでしょう。

太陽光発電は今後電気代削減のために設置する人が増える

今回の記事では、今後の太陽光発電の導入メリットを考える上で、以下の6つの観点から「太陽光発電の今後」について解説していきます。

「太陽光発電の今後」についての6つの観点

太陽光発電の将来性や未来予測を多角的に知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

導入前に知っておきたい「太陽光発電の今後はどうなる?」

導入前に知っておきたい「太陽光発電の今後はどうなる?」

「太陽光発電の今後はどうなるか」「将来性はどうか?」という部分が気になっている方は多いことでしょう。

結論からいうと、自家消費を目的として導入する場合には、今後も太陽光発電システム導入には大きなメリットがあるといえます。

今回の記事では、以下の6つの観点から、太陽光発電の今後について解説していきます。

太陽光発電の6つの「今後」

❶固定買取価格の「今後」
❷システム設置費用の「今後」
❸導入状況の「今後」
❹補助金の「今後」
❺製品性能の「今後」
❻産業ビジネスの「今後」

太陽光発電の【固定買取価格】の今後:下落または横ばい

太陽光発電の【固定買取価格】の今後:下落または横ばい

太陽光発電の買取価格(FIT制度で保証されている固定価格)が今後どうなるか気になっている方は多いでしょう。

結論からいうと、固定買取制度による太陽光発電の買取価格は、もう少し下落し続けると予想されます。

以下は、2012年から2023年までの固定買取価格を折れ線グラフで示したものです。

太陽光発電の固定買取価格の推移(2012年~2024年)

2012年には1kWhあたり40円または42円だった固定買取価格は、2018年頃まで毎年2円~4円ずつ下落が続きました。2019年頃からは10kW未満での下げ幅が1円~2円程度になり、2024年は前年の価格が初めて据置きとなりました。

毎年「固定買取価格」が下がっているのには理由があります。

もともと固定買取価格は「調達価格(設置するのにいくらかかるかなどを考慮した価格)」から算出されているため、太陽光発電システムの設置費用が下がっているのに伴って、固定買取価格も年々下落し続けてきたのです。

今後、さらに太陽光発電システムの設置費用が下がれば、固定買取価格もそれに応じて下がることが予想できます。

しかしながら2024年は初めて前年の価格が据置きとなっており、下げ幅は鈍化しています。

今後も固定買取価格は下落傾向にはあるものの、下がらない年を挟む可能性はあります。あくまで予測ですので、ぜひ資源エネルギー庁が発表する最新の情報に注視してください。

最新のFIT制度についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「FIT制度の2023年最新情報|太陽光発電を始めたい方向けに解説」もぜひ参考にしてください。

太陽光発電の【システム設置費用】の今後:下落または横ばい

太陽光発電の【システム設置費用】の今後:下落または横ばい

太陽光発電システムの設置費用は、2012年から2022年まで下がり続けており、今後も下がると予想できます。ただし近年は下げ幅が縮小しているため、横ばいに近い状態になることも予想できます。

以下は、2012年から2022年までの住宅用太陽光発電システムの設置費用の推移です。ここでの費用には、パネルなどの材料費だけでなく架台やパワコン、工事費も含んでいます。

住宅用太陽発電のシステム費用の推移とその内訳

出典:経済産業省|令和5年度以降の調達価格等に関する意見(案)

同様に、事業用太陽光発電システムの設置費用も、以下のように毎年下がり続けています。また、2021年から2022年を比較すると、システム規模によっては「ほぼ横ばい」で推移しているところもあります。

事業用太陽光発電のシステム費用の規模別の推移

住宅用と事業用ともに、2012年から2022年で太陽光発電システムの設置費用は大幅に下がったことが分かります。

ただしここ数年の下げ幅は縮小しており、今後の費用は下落傾向は続くものの、横ばいになる可能性もあります。

太陽光発電の【導入状況】の今後:伸びる

太陽光発電の【導入状況】の今後:伸びる

太陽光発電の導入状況については、国を挙げて導入を進めているため、今後ますます伸びていく予測となっています。

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所の調査によると、2022年の日本国内の全発電電力量のうち、太陽光発電による発電電力量の割合は9.9%でした。

国の目標では、今後、2030年には全発電電力量の19%を目指しており、2050年には48%を目標にしています。

2030年に向けた自然エネルギー導入目標量の考え方

出典:公益財団法人 自然エネルギー財団|2030年におけるエネルギー目標量のあり方 太陽光発電(PDF資料)

これを実現するために、国や自治体の補助金制度が拡充され、エリアによっては太陽光発電の設置義務化も進んでいます。

太陽光発電に対する【補助金】の今後:義務化エリアは増額されるかも

太陽光発電に対する【補助金】の今後:義務化エリアは増額されるかも

太陽光発電システム設置にかかる費用についての今後の補助金は、義務化の対象エリアについては増額される可能性があると考えられます。

国による太陽光発電の補助金制度:今後も復活しなさそう

2009年から導入された国による太陽光発電の補助金制度は、2014年を最後に終了しており、現在(2023年11月時点)では終了しています。

国による補助金については、今後復活する見込みは今のところ情報がありません。前述した通り、設置費用が下がってきた現状を考えると、復活はそれほど期待できないという見方が一般的のようです。

※家庭用蓄電池の導入についての補助金は、「こどもエコすまい支援事業」「DR補助金」「DER補助金」「ZEH」があり、住宅の建設と絡めて条件が合えば補助金を受け取ることができるようになっています。

自治体の補助金制度:今後はエリアによっては補助金拡充もあるかも

自治体による太陽光発電の補助金は、地域によってかなり内容が違うものの、現在も継続中のものがたくさんあります。

例えば東京都の場合、東京都が交付する補助金以外にも、市区町村が独自に交付する補助金もあり、併用することが可能です。

また、東京都では2025年4月から太陽光発電の義務化が決まった影響もあり、太陽光発電や蓄電池の設置に対する高額な補助金が用意されています。

【東京都の太陽光発電の設置に対する補助金(令和5年度)】

補助金額(または補助率)

新築住宅への太陽光パネル設置

1kWあたり12万円(上限36万円)

既存住宅への太陽光パネル設置

1kWあたり15万円(上限45万円)

事業者による太陽光発電システム設置

補助率
(中小企業等) 3分の2(上限額:1億円)
(その他) 2分の1(上限額:7,500万円)

※上記に加えて、クール・ネット東京「家庭における太陽光発電導入促進事業」により架台設置や防水工事、優れた機能性を有する太陽光発電システムに対する上乗せ助成もあります。

【東京都の家庭用蓄電池の設置に対する補助金(令和5年度)】

補助金額(または補助率)

太陽光発電システムが4kW以上の場合の蓄電池の補助金

以下のうちいずれか小さい額(※)
 (a)蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(100kWh未満)
 (b)蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)
 (c)太陽光発電システムの発電出力:30万円/kW
 (d)助成対象経費×3/4の額

太陽光発電システムが4kW未満または不明の場合の蓄電池の補助金

以下のうちいずれか小さい額
 (a)蓄電容量(6.34kWh以上):15万円/kWh(最大120万円)
 (b)蓄電容量(6.34kWh未満):19万円/kWh(最大95万円)
 (c)助成対象経費×3/4の額

※最大1,500万円

義務化についての詳細は、別記事「2023年最新|太陽光発電の設置義務化とは?投資回収期間も解説」の記事もぜひご覧ください。

一方で、自治体によっては太陽光発電に対する補助金の予算が決まっており、年度の予算に達し次第、補助金を終了するところも多くあります。

自治体の予算に依る部分が多いため、住んでいるエリアによって補助金の今後の見通しは分かれることになるでしょう。

太陽光発電の【製品性能】の今後:さらに飛躍的に高性能化する

太陽光発電の【製品性能】の今後:さらに飛躍的に高性能化する

太陽光発電を支える製品(パネルやパワーコンディショナー)の性能は、今後さらに飛躍的に高性能化することが期待されます

変換効率の向上や小型化が進むことで導入しやすくなれば、太陽光発電の導入率にも大きく貢献することになるでしょう。

太陽光パネル:今後は変換効率の大幅改善が期待される

太陽光パネルは現在も日進月歩で技術革新が進んでおり、特に太陽光発電の発電効率に直結する「モジュール変換効率」の改善が進んでいます。

現在(2023年時点)購入できる太陽光パネルの変換効率は、だいたい15%~20%程度が一般的な値です。20%を超える製品が現時点で世界最高レベルとされています。

今後も変換効率がより高い製品が登場し、発電効率の向上が期待できます。研究レベルでは30%台のモジュールも登場しています。

最近注目されている「ペロブスカイト太陽電池」は、25%以上の高い変換効率に加えて、軽くて薄くて柔らかいフレキシブルであること、さらに少ない光でも発電できるメリットがあります。

今後、さらに改良された太陽光パネルの実用化が期待されます。

太陽光発電の効率については、別記事「太陽光発電の効率とは?効率が高い素材・メーカーと5つの効率向上策」もぜひ参考にしてください。

パワコン:今後も変換効率の向上や小型化などが進む

太陽光発電システムに欠かせない「パワーコンディショナー(パワコン)」の性能も、今後さらに向上していくことが予想されます。

最近では、変換効率の向上や小型化といった性能改善だけでなく、日射量が変化しても高い効率で変換できる追従性の高いパワコンも登場しています。

今後もさらにパワコンの性能が向上し、今までよりも多くの発電量を得られるパワコンが登場することでしょう。

太陽光発電の【産業ビジネス】の今後:自家消費型がメインになる

太陽光発電の【産業ビジネス】の今後:自家消費型がメインになる

太陽光発電の産業ビジネスの今後としては、売電収入を得るような太陽光発電事業が縮小し、自家消費型太陽光発電の需要が拡大していくことが予想されます。

FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が始まった2012年は、発電容量10kW以上の事業規模の固定買取価格は、1kWhあたり40円でした。

しかしながら、現時点(2023年11月時点)では、

  • 10kW以上50kW未満:10円/1kWh
  • 50kW以上(入札制度対象外):9.5円/1kWh

と、当初の4分の1の金額にまで下がっています

太陽光発電の固定買取価格の推移(2012年~2024年)

以前は「売電価格>買電価格(電力会社から電気を買う価格)」だったため、売電したほうがメリットが大きい状態でした。

ところが、2020年頃からは売電単価が買電単価を下回るようになり、売電のメリットが小さくなってしまいました。

現時点では、売電収入を目的にした産業ビジネスを展開するのは難しい状況です。

一方で、電気代が高騰しているため、太陽光発電で得た電気を自社で使い、電気代を削減することを目的にした導入が増えています。

今後は、産業ビジネスとしての太陽光発電よりも、自家消費を目的とした太陽光発電の導入がますます増えると考えられます。

今後も導入メリットがあるのは【自家消費したい人】

今後も導入メリットがあるのは【自家消費したい人】

ここまで説明した内容を踏まえて、今後、太陽光発電を導入してメリットがある人がどのような人なのかをまとめます。

ずばり、今後も導入メリットがあるのは「自家消費して電気代を削減したい人」、その中でも、「補助金を活用して安くシステムを設置できる人」です。

今後は売電収入よりも電気代削減を期待した方が良い

2章で解説したとおり、太陽光発電の「固定買取価格」は今後も下落または横ばいが予想されます。そのため、太陽光発電システムを設置して「売電収入だけで稼ごう」ということは今後は期待できないでしょう。

例えば、2023年度からFIT制度(固定価格買取制度)を利用する場合、買い取ってもらえる単価は1kWhあたり16円です。

一方で、電気代は、電力会社やプランによりますが、2023年11月の水準で1kWhあたり30円程度(※)です。

※:東京電力エナジーパートナーの従量電灯B・C(第1段階料金)の電気量料金単価を参考にしました。実際の電気料金は電力会社やプラン、電気使用量によって異なります。

売電収入より電気代削減で得られるメリットのほうが大きい

今後も「電気代(=電力会社から電気を買う料金)」は高い水準が続くと考えられるため、太陽光で発電した電力を使うことによって、かなりの電気代を削減できるでしょう。

今後、太陽光発電システムを設置することのメリットを考えたときには、売電収入よりも電気代削減をメインに考えていくのが賢明です。そして、自家消費率をできるだけ上げていくことが、導入メリットを上げていく条件になるでしょう。

補助金を活用できる場合にはかなりメリットが大きくなる

今後、太陽光発電システムを設置して大きなメリットを受けられるのは、補助金を活用できる人です。

現時点で言うと、東京都の補助金の金額が大きいため、東京都で太陽光発電システムを導入する場合、費用はかなり抑えることができます

【3kWの太陽光発電システムの導入コスト(ケース別)】

初期コスト

蓄電池なしの場合

補助金なしの場合

78万円

東京都の補助金が使える場合
(新築住宅)

48万円(78万円−30万円)
(※1)

東京都の補助金が使える場合
(既存住宅)

42万円(78万円−36万円)
(※2)

蓄電池ありの場合
(5kWh容量)

補助金なしの場合

175.5万円(78万円+蓄電池本体77.5万円+蓄電池工事20万円)

東京都の補助金が使える場合
(新築住宅)

50.5万円
内訳175.5万円−30万円(※2)−95万円(※3)

東京都の補助金が使える場合
(既存住宅)

44.5万円
内訳175.5万円−36万円(※2)−95万円(※3)

※設置費用の算出の根拠などは、「太陽光発電の導入コストを蓄電池・補助金別に解説【2023年最新】」で詳しく解説しています。

例えば、既存住宅に3kWの太陽光発電システムを導入する場合、補助金を使えれば42万円程度で設置が可能です。一方で、3kWの太陽光発電システムを導入すると、環境や設置条件にもよりますが、15年間で約170万円の経済メリット(※)を得ることができます。

※導入前の電気代が月2万円でオール電化の家庭(東京都)が、3kWの太陽光発電システムを導入した場合のシミュレーションを「エネがえる」で試算した値です。

このように補助金を多く得られる条件であれば、3~4年など太陽光発電の設置費用を早いスパンで回収できるため、かなりメリットが大きいと言えます。

太陽光発電を導入するかどうか決める場合には、補助金を含めた設置費用と、太陽光発電を導入することによって得られる経済メリットを比べてみて、「何年で回収できるのか」「費用対効果はどうなのか」をシミュレーションしたうえで判断することをおすすめします。

まとめ

本記事では、太陽光発電は今後どうなるか?について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

▼太陽光発電の今後

・太陽光発電は今後も持続可能なエネルギー源としてますます存在感を増していく
・多くのエリアでの設置義務化が進み、補助金が増える可能性もある
・売電収入の代わりに「自家消費(自分で使うこと)」による電気代削減効果が期待できる

太陽光発電の6つの「今後」

❶固定買取価格➡下がる/横ばい
❷システム設置費用➡安くなる/横ばい
❸導入状況➡安くなる/横ばい
❹補助金➡地域によって増えるかも
❺製品性能➡飛躍的に高性能化する
❻産業ビジネス➡自家消費がメインになる

今後の導入メリット

・今後は売電収入よりも電気代削減を期待した方が良い
・補助金を活用できる場合にはかなりメリットが大きくなる

今後太陽光発電がどうなるかにかかわらず、導入するかどうかを決めるには、自分の状況に応じてできるだけ正確なシミュレーションを行い、費用対効果をしっかり見極めたうえで判断することをおすすめします。

 

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