低圧太陽光発電所市場の構造解析と全方位戦略レポート ポストFIT時代のPPA、技術、規制の完全網羅

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる
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目次

低圧太陽光発電所市場の構造解析と全方位戦略レポート ポストFIT時代のPPA、技術、規制の完全網羅

1. エグゼクティブサマリー:市場の変曲点と新たなパラダイム

2025年11月、日本の低圧太陽光発電市場(10kW以上50kW未満)は、かつてない構造転換の渦中にある。固定価格買取制度(FIT)の段階的な縮小と完了に伴い、市場は「金融商品としての太陽光」から「エネルギーインフラとしての太陽光」へとその価値定義を完全に書き換えた。本レポートでは、最新の市場環境、規制動向、技術革新、主要プレーヤーの動向を網羅的に解析する。

特筆すべきは、系統制約の厳格化(ノンファーム型接続の全面適用)農地転用規制の強化、そしてコーポレートPPA(電力購入契約)によるオフサイト電源開発の加速である。これらは個別の事象ではなく、相互に複雑に絡み合いながら、市場への参入障壁を高めると同時に、高度なケイパビリティを持つ事業者選別のフィルターとして機能している。もはや、単に土地を見つけパネルを並べるだけのビジネスモデルは成立せず、電力市場と連動したアグリゲーション能力と、高度なエンジニアリング能力が生存の条件となっている。

本稿では、表面的な市場データの羅列に留まらず、セマンティック検索とシステム思考を駆使し、市場の深層に潜む力学を解明する。土地開発からO&M(運用保守)、出口戦略に至るまで、科学的かつ実務的な知見に基づいたソリューションを提示する。

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2. 2025年 低圧太陽光発電所の市場構造と規制環境の深層分析

2.1 FITからFIP・非FITへの不可逆的な移行と「地域活用要件」の壁

2025年の市場において、低圧太陽光(10kW以上50kW未満)は、制度的に極めて特殊な立ち位置にある。FIT制度自体は継続しているものの、低圧事業用太陽光には厳格な「地域活用要件」が課されている 1。これは、発電した電力の少なくとも30%以上を自家消費(または地域内消費)することを義務付けるものであり、かつての「全量売電モデル」を事実上無効化した規制である。

この規制変更により、市場は明確に二極化している。

  1. オンサイト自家消費型: 工場や店舗の屋根、あるいは隣接地に設置し、直接需要家に供給するモデル。地域活用要件を自然に満たすため、FIT認定(余剰売電)を活用しやすい。

  2. オフサイト非FIT(PPA)型: 地域活用要件の制約を受けない「非FIT」電源として開発し、送配電網を介して遠隔地の需要家へ供給するモデル。2025年現在、開発の主流はこちらへ急速にシフトしている。

参考URL:オフサイトPPA見積もりシミュレーションは可能か?複数需要施設・発電施設や市場連動型料金プランに対応(PPA事業者:小売電気事業者→需要家向け提案) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

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2.2 ノンファーム型接続の全面化と確率論的リスク管理

2025年現在、東京電力パワーグリッド管内を含む全国の基幹系統において、ノンファーム型接続が適用されている 2。これは、「空き容量がない場合でも、混雑時以外は送電できる」という条件付きの接続契約である。

この制度変更は、事業計画の根幹を揺るがす構造的なリスク要因となっている。

  • 出力制御の常態化: 系統混雑時には、発電事業者が発電を抑制(出力制御)しなければならない。これは売電収入の直接的な損失を意味する。

  • シミュレーションの複雑化: 従来のリスクフリーモデルは崩壊し、事業者は「出力制御率」を確率論的に予測し、事業収支(IRR)に織り込む高度な数理能力が求められるようになった。

  • 手続きの厳格化: 2025年度内の接続契約締結に向けた申し込み期限は非常にタイトであり、10kW以上の案件では「ノンファーム型接続同意書」の提出が必須化されている 2。この同意書なしでは、系統連系の検討すら開始されない。

2.3 発電側課金制度と容量市場の経済メカニズム

2024年度より開始された「発電側課金」の影響が、2025年のP/L(損益計算書)に重くのしかかっている 4。これは、これまで小売電気事業者が負担していた送配電網の維持費用の一部を、発電事業者側にも負担させる制度である。

  • コスト構造の変化: kWあたりおよびkWhあたりの課金が発生するため、稼働率の低い発電所や、売電単価の低い案件では収益性が著しく悪化する。

  • リバランスの機会: 一方で、容量市場からの還付金(容量拠出金のリバランス)も機能し始めている。特に、夕方のピーク需要時に発電可能な蓄電池併設型システムや、東向き・西向きパネル配置によるピークシフト設計が、この制度下で経済合理性を持つようになっている。


3. 主要プレーヤーの分析:ケイパビリティと戦略地図(Strategic Capability Mapping)

市場の主導権は、かつての「土地転がし・開発業者」から、テクノロジーとファイナンスを融合させた「エネルギーマネジメント事業者」へと完全に移行した。

3.1 リソースアグリゲーター(RA)とVPPプラットフォーマー

分散する数千カ所の低圧太陽光発電所をIoT技術で束ね、一つの巨大な発電所(VPP: Virtual Power Plant)として機能させる事業者が市場を支配している。

プレーヤー 主な強み・特徴 弱み・課題 戦略的ケイパビリティ
自然電力 (Shizen Connect)

圧倒的なVPP技術


DR(デマンドレスポンス)市場でトップシェアを獲得。自社開発のEMS(エネルギー管理システム)による秒単位の制御技術 5

ハードウェア製造を持たないため、機器連携の調整コストが発生。

IoT制御アルゴリズム


市場価格予測と連動した充放電制御により、アービトラージ収益を最大化する能力。

デジタルグリッド

PPAマッチングプラットフォーム


「RE Bridge」により、発電家と需要家を直接結びつける「電力DX」の旗手。中間マージンを排除するモデル 6

実体資産(発電所)を持たないため、供給安定性は参加プレーヤーに依存。

ブロックチェーン技術


電力トラッキングと非化石証書の紐付けを自動化し、RE100企業の監査コストを劇的に低減。

Looop

垂直統合型(Maker-Utility)


発電所開発から小売(Looopでんき)までを一気通貫で提供。「エネルギーフリー社会」を掲げる先駆者 7

急速な事業拡大に伴う組織マネジメントの負荷。

市場連動型プランの運用実績


日本で最も早く市場連動プランを導入した知見を活かし、リスクヘッジ商品を組成。東急不動産との資本提携による資金力 8

3.2 伝統的ユーティリティと大手資本の逆襲

  • 関西電力・東京電力EP・NTTグループ:

    • 強み: 圧倒的な顧客基盤(需要家)と、グループ内にアグリゲーション機能を持つことによるスケールメリット 9。既存の送配電網データへのアクセス権限(法的分離はあるものの)も強みとなる。

    • ケイパビリティ: 巨大なバランスシートを活用した、低コストでの資金調達能力(WACCの低さ)が最大の武器である。これにより、薄利なPPA案件でも長期保有が可能となる。

3.3 EPC・O&M専業プレーヤーの進化

  • オムロン・ソーラーフロンティア:

    • 進化: 単なる機器売り・建設から、O&Mとセットにした「サービスプロバイダー」へと転換している。特にオムロンは、制御機器の強みを活かし、過積載や出力制御対応の最適化ソリューションを提供 10

    • 技術力: N型TOPConパネルやHJT(ヘテロ接合)パネルの特性を熟知したシステム設計能力。


4. 土地開拓のプロセス・要諦:高次方程式化する適地選定

2025年における土地開拓は、平地の減少と規制強化により、極めて難易度の高いプロセスとなっている。もはや「Google Earthで探して地主に手紙を送る」だけの手法は通用しない。

4.1 農地転用の厳格化と「ソーラーシェアリング」への回帰

2025年現在、農地法に基づく転用規制は最高レベルに達している。特に、優良農地(第一種農地、甲種農地、農用地区域内農地)の転用は原則不可能である 12

  • プロセス:

    1. 農振除外申請: まず「農業振興地域」からの除外を申請するが、要件は厳しく、年1〜2回の受付しかない自治体が多い。

    2. 農地転用許可申請(4条・5条): 農業委員会への申請。2025年は、転用後の「確実な事業実施」を証明する資金計画書やPPA契約書の事前提出を求められるケースが増えている。

  • ソリューション(ソーラーシェアリング):

    • 一時転用許可(3年または10年更新)を取得し、営農を継続しながら発電を行う。地域活用要件(10kW-50kW)を満たす数少ない解の一つとして再評価されている。

    • 要諦: 名ばかりの営農は即座に認定取り消し対象となる。地域の農業法人と連携し、遮光率が高くても育つ作物(榊、ミョウガ、茶など)を選定する「農業コンサルティング能力」が開発者に求められる。

4.2 土地選定の科学的アプローチ:GISとビッグデータ解析

成功するデベロッパーは、GIS(地理空間情報システム)を駆使して適地を科学的に抽出している。

  • レイヤー分析: 以下のデータを重ね合わせて分析する。

    • 日射量データ: NEDOの日射量データベース。

    • 系統空き容量マップ: 各電力会社が公開するノンファーム空き容量情報。

    • 法規制レイヤー: 土砂災害警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域、自然公園法、鳥獣保護区。

    • ハザードマップ: 洪水浸水想定区域。近年、浸水リスクのある土地への融資は金融機関が拒否する傾向にある。

  • マイクロ・サイティング: 1筆単位での土地評価を行い、造成コスト(切土・盛土)を最小化する設計を自動生成するアルゴリズムが活用されている。

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5. 設計・調達・施工(EPC)の詳細・要諦:LCOE低減の物理学

5.1 技術トレンド:N型TOPConの覇権と物理的優位性

2025年のモジュール市場は、従来のP型PERCから、N型TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact)へと完全に移行した 13

  • 物理的メカニズム: N型シリコン基板を使用し、裏面に極薄のトンネル酸化膜を形成することで、電子の再結合(ロス)を防ぐ。

  • メリット:

    • 高変換効率: 量産レベルで24.4%超を達成。限られた土地面積での発電量を最大化する。

    • 低劣化率: LID(光誘起劣化)やLeTID(高温光誘起劣化)に対し、P型よりも圧倒的に強い耐性を持つ。25年後の出力保証値が高いため、LCOE計算上の生涯発電量が増加する。

    • 両面発電: 裏面からの反射光も取り込むことで、実質的な発電量が5〜15%向上する。

  • カナディアン・ソーラー等の動向: ファインライン印刷技術により、電極による遮光ロスを極限まで減らす技術を投入している 13

5.2 過積載設計の高度化とDC/AC比率の最適解

低圧(49.5kW)のAC出力(パワーコンディショナ容量)に対し、DC側(パネル容量)を200%〜300%搭載する「スーパー過積載」は、依然として有効な戦略である。

  • クリッピングロスの許容: ピーク時の発電量はカットされるが、朝夕や曇天時の発電量が底上げされるため、トータルの設備利用率は向上する。

  • 蓄電池とのハイブリッド設計: 2025年のトレンドは、このクリッピング(捨てていた電力)をDCリンクで蓄電池に充電し、夕方の高い電力価格帯で放電するシステムの導入である。これにより、過積載のメリットを100%享受できる。

5.3 施工品質とコンプライアンスの要諦

  • フェンス設置義務: 改正FIT法および電気設備の技術基準の解釈に基づき、低圧案件であっても金属製フェンスの設置が厳格に義務付けられている 14

    • 仕様: 容易に立ち入れない高さ(1.2m以上推奨)、出入り口の施錠、立入禁止看板の掲示。簡易なロープやネットは認められず、認定取り消しの対象となる。

  • スクリュー杭の引抜強度: 激甚化する台風に備え、N値(地盤強度)に応じた杭長の選定と、全数ではなくとも統計的有意な数での引抜試験(プルアウトテスト)の実施が、融資要件として定着している。


6. 電力協議・開発許可のプロセス・要諦:ブラックボックスの解明

6.1 ノンファーム型接続の手続きフロー

2025年現在、接続検討は以下の厳格なステップを踏む 2

  1. 接続検討申込み(Web): 東京電力PGなどのシステムに入力。

    • 重要: 「供給設計番号」の取得漏れや、付近図・構内図の受電地点記載漏れは、即座に不備として返却される。2025年度内のFIT認定を目指す場合、このタイムロスは致命的となる。

  2. 技術検討と回答: 電力会社が系統の熱容量や電圧変動をシミュレーションする。通常1〜2ヶ月を要する。

  3. 接続契約申込みと負担金支払: 工事負担金(高額になるケースが増加)の入金をもって、容量が確保される。

  4. ノンファーム同意書の提出: 10kW以上の全案件で必須。出力制御を受け入れることへの法的同意であり、これを提出しないと契約は成立しない。

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6.2 開発許可と関係法令のクリアランス

低圧(50kW未満)であっても、以下の法令は「規模に関わらず」適用されるケースがあり、落とし穴となりやすい。

  • 森林法(林地開発許可制度): 0.5ha(地域によっては0.3ha)を超える森林の伐採には都道府県知事の許可が必要。低圧過積載案件では、パネル面積と造成面積の合計がこの閾値を超える場合がある。

  • 宅地造成等規制法: 傾斜地での造成には許可が必要。

  • 景観条例: パネルの色彩やフェンスの種類に規制をかける自治体が増加。黒色フレームや反射防止パネルの採用が求められる。


7. メンテナンス(O&M)の詳細・要諦:資産価値保全の科学

「メンテナンスフリー」という神話は完全に過去のものとなった。2025年は「高度な資産管理(Asset Management)」の時代である。

7.1 新・遠隔監視システム義務化と技術対応

2025年、出力制御機能付きPCSへの対応に加え、次世代型の遠隔監視システムの導入が進んでいる。

  • 技術革新: 従来、低圧案件にはオーバースペックで高価だったゲートウェイ装置を不要とし、Smart LoggerのSIMスロットを直接活用するソリューション(Huawei製PCS対応のオルテナジー社『ソーラーグリッドPPH』等)が登場している 15

    • メリット: 通信コストと初期導入コストを劇的に削減しながら、出力制御指令の自動受信・実行が可能。

    • 法的要件: 2025年の制度下では、遠隔での出力制御に対応していない発電所は、より厳しい制御ルール(オフライン制御)が適用され、発電損失が増大するため、このシステムの導入は経済的にも必須である。

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7.2 O&Mの具体的内容と頻度

  • 電気保安(月次/年次): 主任技術者(外部委託)による点検。絶縁抵抗測定、接地抵抗測定、外観点検。

  • 除草管理(年2〜3回): 発電量低下の最大要因。雑草の影によるホットスポット(パネルの異常発熱・焼損)を防ぐ。防草シートと砂利敷きの併用、またはカバープランツ(クラピア等)による植生管理が推奨される。

  • パネル洗浄: 黄砂や鳥糞による汚れを除去。ロボット洗浄機の導入コストが低下しており、年1回の洗浄で数%の発電量向上が見込める。

  • 駆けつけ対応: アラート発報から数時間以内に現地に到着し、復旧させる体制。これはPPA契約におけるSLA(Service Level Agreement)で規定されることが多い。

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8. 電力需要家とのPPA協議に関する諸条件と市況感(2025年)

8.1 PPA価格決定のメカニズムと数理モデル

コーポレートPPA(オフサイト)における電力価格は、以下の構成要素で決定される。2025年の市況は、部材コストの上昇と系統コストの増加により、強含み(上昇傾向)で推移している 4

PPA単価 (P_PPA) の構成式:

P_{PPA} = LCOE + C_{bal} + C_{wheel} + M_{risk} + pi
  • LCOE (均等化発電原価): 建設費、O&M費、廃棄費用の総和を生涯発電量で除したもの。金利上昇により2024-2025年は上昇圧力がある。

  • C_{bal} (インバランスコスト): 計画値同時同量(30分ごとの発電計画と実績のズレ)のペナルティを回避するための調整費用。アグリゲーターの手数料に含まれる。

  • C_{wheel} (託送料金・課金): 送配電網の利用料および発電側課金。

  • M_{risk} (市場リスクプレミアム): 将来の市場価格変動リスクに対するヘッジコスト。

  • pi (事業者の利益): 開発者の適正利潤。

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8.2 契約条件(Terms & Conditions)の要諦

需要家(RE100企業など)との協議において、以下の点が争点となる。

  • 契約期間: 15年〜20年の長期契約が標準。与信リスク(Counterparty Risk)の低い大手企業が優遇される。

  • 最低発電保証: 天候要因を除き、システムトラブル等による発電停止時の補償条項。

  • 環境価値の帰属: 非化石証書が需要家に帰属することを明記する。デジタルグリッドのようなプラットフォームを使えば、このトラッキングが自動化される。

  • 契約終了後の資産扱い: 無償譲渡オプション付きPPAが人気だが、譲渡後の廃棄費用リスクをどちらが負うかが最大の交渉ポイントである 11

8.3 市況感

  • 価格: 高圧・特別高圧案件の適地不足により、低圧を束ねた(Low Voltage Aggregation)PPAの価値が相対的に上昇している。

  • 需要: 半導体工場やデータセンターなど、巨大な電力需要を持つ企業が、少しでも早く再エネを確保しようと、開発段階からの「青田買い」を行っている。


9. 今後予測される業界のニーズと課題:Deep Insights

9.1 「量」から「質」への転換と業界再編(Consolidation)

市場は、数多くの小規模事業者が乱立する状態から、技術力と資金力を持つアグリゲーターによる寡占化へと向かう。

  • セカンダリー市場の活況: メンテナンス不全の低圧FIT案件を安価で買収し、最新のパネルに交換(リパワリング)し、蓄電池を付加してVPPリソースとして再生させるビジネスモデルが急成長する。

参考:リパワリングにも対応。国際航業、日本リビング保証と業務提携/太陽光発電・蓄電システム「経済効果シミュレーション保証」の提供開始~予測分析を活用し、性能効果をコミットする「シミュレーション保証」分野を強化~ | 国際航業株式会社 

9.2 根源的・本質的な課題:系統の物理的限界と「同期化力」の不足

日本の再エネ普及における最大のボトルネックは、物理的な送電網の容量不足に加え、「慣性力(Inertia)」の不足である。太陽光はインバータ電源であり、回転機(火力・原子力)のような慣性を持たないため、大量導入されると系統周波数が不安定になる。

  • ソリューション: 「グリッドフォーミング(Grid Forming)インバータ」の実装が急務となる。これは、再エネ電源自体が仮想的な慣性を持ち、系統を安定化させる技術である。2025年以降、この技術への投資が政策的に誘導される可能性が高い。

9.3 最終需要家の変容と「脱炭素経営」の真価

PPAはもはや単なるコスト削減手段ではない。欧州の炭素国境調整措置(CBAM)や、サプライチェーン全体での排出削減圧力により、再エネ調達は企業の「生存要件」となっている。

  • インサイト: これからの需要家担当者は、単に電気代を比べるだけでなく、PPA契約に内在する「価格変動リスク」や「規制変更リスク」を読み解く、金融工学的なリテラシーが求められる。

9.4 結論:勝者の条件

2025年以降の低圧太陽光市場で生き残るのは、以下の3つの要素を高度に統合できる「ハイブリッド・プレーヤー」のみである。

  1. Land & Grid Intelligence: GISと地域ネットワークを駆使し、物理的な場所と系統を確保する泥臭い開発力。

  2. Engineering Excellence: N型パネル・蓄電池・高度EMSを最適設計し、LCOEを極限まで下げる技術力。

  3. Digital Aggregation: 数千の拠点をデジタルで束ね、卸電力市場・需給調整市場・容量市場の3つの市場で収益を最大化する運用力。

太陽光発電は、単純な投資対象としての役割を終え、デジタル技術と融合した次世代の社会インフラへと進化を遂げた。この変化の本質を理解し、迅速に適応できる企業だけが、次の10年を牽引することになるだろう。


10. 出典リスト(Source Links)

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