2050年ガソリン代予測モデルとリスク分析、EV・V2H導入による対策

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

エネがえるEV/V2H
エネがえるEV/V2H

2050年ガソリン代予測モデルとリスク分析、EV・V2H導入による対策

要約(30秒で読めるポイント)

  • 過去30年のガソリン価格推移: 1990年代はリッター100円前後まで下落しましたが、2000年代以降は原油価格高騰などで上昇し、2008年に一時180円台の史上最高水準を記録。その後リーマンショックで110円前後まで急落し、2010年代後半は150円前後で安定。2022~2023年にはパンデミック後の需要回復やウクライナ危機で平均186円/リットルに達し過去最高値を更新しました。

  • 2050年までの価格予測: 今後は電気自動車(EV)普及でガソリン需要が長期減少する見通しです。予測モデルでは3つのシナリオを設定しました。ベースシナリオ(通常ケース)では、2030年頃に180円前後、2040年に200円、2050年には約220円/リットル年率約2%弱の上昇を想定します。一方、悲観シナリオでは地政学リスクや資源制約で2050年に300円近くまで急騰する可能性があります。逆に楽観シナリオでは脱炭素が順調に進み2050年に110円程度まで低下する理想ケースも描かれます。

  • “何もしない”場合の家計・事業リスク: ガソリン価格が高止まり・乱高下すれば、家計は燃料費負担増大や生活コスト上昇に直結します。特に地方や車通勤層では影響大です。事業者にとっても物流コスト増で業績悪化や製品価格転嫁の懸念があります。さらに2050年にはガソリンスタンドが激減地方で燃料入手困難となる恐れも指摘されています(業界では「2050年にスタンド消滅」の予測も)。化石燃料依存を続ければ、将来の炭素税や排出規制による追加コスト負担も避けられず、事業継続リスクにつながります。

  • 太陽光・EV・V2H導入による解決策: 家庭や企業で太陽光発電+蓄電+EV+V2H(Vehicle to Home)を組み合わせる「エネルギー自給自足」により、ガソリン高騰リスクを大幅に軽減できます。EVの走行電費はガソリン車より安く、走行コストは約1/3~1/2になる試算もあります。日中に太陽光で発電・EV充電し、夜間や停電時にEVバッテリーから給電(V2H)すれば、ガソリンどころか電力への依存も低減し、エネルギー支出を安定化できます。企業でも太陽光+社用EVフリート+V2B/V2X(建物・グリッド給電)を導入すれば、ピーク電力の15%削減非常時電源確保など経営面・BCP面のメリットが得られます。

  • インフラと政策の追い風: 日本政府は2030年までにEV充電インフラを約15万基に増設する目標を掲げ、家庭向けV2H設備や大容量充電器への補助金も拡充中です。2035年には新車販売からガソリン車を事実上ゼロにする方針で、自動車各社も電動化投資を加速しています。カーボンニュートラル2050に向けたエネルギー政策の転換期であり、今後は燃料課税の見直し(走行距離課税など)やカーボンプライシング本格導入も予想されます。「正しく恐れ、正しく備える」ために、エネルギー利用者はシナリオを踏まえた戦略転換(EV・再エネシフト)が急務です。

背景と本分析の狙い

日本の家庭や企業にとって、日々変動するガソリン代は生活費・経費に直結する重要なコストです。近年、原油価格の乱高下や地政学リスク(中東情勢や戦争など)によってガソリン価格が急騰・急落を繰り返し、家計や物流への影響が大きく報じられています。例えば2023年にはレギュラー全国平均がリッター186円超過去最高値を更新し、政府が石油元売りへの補助金で価格抑制策を講じる事態となりました。

さらに今、世界的な脱炭素シフトの潮流により自動車の電動化(EV化)が急速に進みつつあります。日本政府も2030年に新車販売の電動車割合20~30%、2035年にはガソリン車新車販売を実質禁止する目標を掲げました。2040年以降は合成燃料対応車も含め新車100%脱炭素化を目指す計画です【22】。これらが実現すれば、2040年代にはガソリン車そのものが大幅減少し、燃料需要構造が劇的に変化するでしょう。ガソリン市場の縮小は価格にも長期的な影響を与えると予想されます。

本記事では、まず過去30年間(1994~2024年)のガソリン価格推移を振り返り、歴史的な変動要因とその影響を整理します。過去のデータを分析することで、現在の価格水準を正しく位置づけ、一般に信じられている「毎年1~2%ずつ上がるのでは?」といった漠然とした前提をデータで検証します。

次に、2025年から2050年までのガソリン価格上昇率を、最新の知見とシミュレーションに基づき3つのシナリオ(通常・悲観・楽観)別に予測します。原油価格動向や為替、脱炭素政策、EV普及、地政学リスクなど考え得るあらゆる要因を網羅的に考慮し、AIによる解析も活用して高解像度な将来像を描きます。予測の根拠は可能な限りエビデンスを示し、読者が自ら判断できる透明性を確保します。

その上で、ガソリン代高騰に対する備えとして、太陽光発電や電気自動車、蓄電池、V2H/V2Xといった新技術の導入シナリオを検討します。「何もしない場合」の家計・事業リスクと、再生可能エネルギー・電動化を進めた場合のメリットを比較し、ユースケース毎に課題と解決策を提示します。難解な専門用語や概念もできるだけ噛み砕いて説明し、従来の常識に埋もれた論点にも光を当てます。

「ガソリン代にどう向き合うべきか?」について、日本のエネルギー戦略と生活を見据えたヒントを導き出すことが本記事の狙いです。

過去30年のガソリン価格推移(1994~2024年)

日本のガソリン小売価格は、この30年で大きく波打つような変動を経験してきました。ここでは約10年ごとの区分で主な出来事と価格動向を整理します。当時の世界情勢(戦争・金融危機など)や国内政策(増税・補助金等)とガソリン代の関係にも触れ、ガソリン価格がなぜ上下してきたのかを理解します。

1990年代:安定期から下落傾向へ

1990年代前半、日本のガソリン価格は比較的安定して推移していました。湾岸戦争(1990年)の影響で一時的に原油価格が上昇する局面もありましたが、その後は供給安定化ですぐ沈静化しています。1990年代半ばにはバブル崩壊後の景気低迷や円高傾向も重なり、レギュラーガソリン店頭価格はリッター110円前後のレンジで推移しました。1997年4月に消費税率が3%から5%へ引き上げられましたが、当時はガソリン表示価格への転嫁は限定的で、大きな価格変動は起きていません。

1990年代後半になると、アジア通貨危機(1997年)などで一時的に原油需要が落ち込み、ガソリン価格は下押し圧力を受けました。実際、1999年には全国平均でレギュラー1リットル=99円という過去最安値を記録しています。この水準は1980年代の第二次オイルショック期ピーク(1982年、東京地区で172円/L)と比べても大幅に安く、まさに日本のガソリン代が最も低かった時期と言えます。

要因として、湾岸戦争後の原油安定供給、需要停滞に加え、円高で輸入原油価格が抑えられたことが挙げられます。総じて1990年代は「安定から下落へ」と移行した時期で、リッター100円を切る安価な燃料に支えられ、人々は燃費よりもクルマのパワーやサイズを重視する傾向すらありました。

2000年代:原油高騰と急騰・乱高下の時代

2000年代に入ると状況は一変します。中国・インドなど新興国の経済成長による石油需要拡大や、中東産油国の減産調整、原油開発投資の遅れなどが重なり、世界的な原油需給の逼迫が進みました。その結果、原油価格がじわじわと上昇を始め、日本のガソリン価格にも強い上昇圧力がかかりました。特に2004年以降、WTI原油先物価格が1バレル=50ドルを超え始めると、連動して国内のレギュラーガソリン価格も120~140円台へ上昇しました。

そして人々の記憶に残る2008年の原油価格急騰が訪れます。WTI価格が7月に史上最高値となる1バレル=147ドルを記録すると、ガソリン店頭価格も全国平均でリッター180円近くまで急騰しました(一部地域ではハイオクが200円超え)。これは1970年代のオイルショック時を除けば歴史的な高値圏です。しかし2008年秋にリーマンショック(世界金融危機)が発生すると、景気後退により原油需要が急減し価格も急落。翌2009年前半にはガソリン価格も一転してリッター110円台まで下落しました。

このように2000年代後半は乱高下の様相を呈しましたが、総じて見ればガソリン代が構造的な上昇局面へ転じた時期と言えます。なお2008年前後には日本で揮発油税(道路特定財源)の暫定税率失効による一時的なガソリン税引き下げや、後に復活という政策要因もありましたが、原油相場変動のインパクトに比べれば小幅な影響にとどまりました。

2010年代:シェール革命と高値安定、新たな変動期へ

2010年代前半、米国でのシェールオイル革命により世界の原油供給量が増加したことや、リーマン後の低成長で需要が落ち着いたことから、原油価格は比較的落ち着きを取り戻しました。2010年代中頃にはWTIは1バレル=50~60ドル台で推移し、それに連動して日本のガソリン価格もリッター130~150円前後のレンジで安定します。

2014年頃には原油価格下落局面でガソリンが一時120円台になる場面もありましたが、2016年前後には産油国の減産協調により再び持ち直し、2018年には150円前後まで達しました。2018年5月にはリッター151円と約3年ぶり高値となり、「ガソリン150円超え」がニュースになる水準でした【26】。

しかし2010年代後半~2020年初頭にかけ、新たな変動要因が出現します。ひとつはアメリカのシェール増産とOPECの駆け引きによる原油安定化策の綱引き、もうひとつは世界的な脱炭素機運の高まりです。欧米や中国が電気自動車普及や石油離れの政策を打ち出し始めたことで、長期的な需要見通しに不透明感が増しました。

その矢先の2020年、新型コロナウイルス・パンデミックが発生します。ロックダウンによる経済停滞で石油需要が激減し、WTI原油先物価格が一時マイナスになる異常事態も起きました。当然ガソリン価格も急落し、2020年春には全国平均で120円を割る低水準となりました。

2020年代前半:パンデミック後の急騰とエネルギー危機

2020年代前半は、まさに乱高下するエネルギー市況に振り回される形となりました。コロナ禍からの経済回復局面では石油需要が急回復した一方、産油国の増産ペースは追いつかず、2021年から原油価格が再び上昇します。日本のガソリンも補助金交付が始まる前でレギュラー160円超となり、物価高騰の一因になりました。

追い打ちをかけたのが2022年のロシア・ウクライナ危機です。ロシア産エネルギー供給への制裁・混乱から原油・天然ガス価格が世界的に急騰し、2022年夏~秋には日本でも補助金で抑えながらもガソリン170円台後半という高値が続きました。補助金が縮小した2023年8~9月には、ついに全国平均186円/リットルに達し、2008年(185円)の記録を上回る史上最高値を更新しました【32】。政府・与党は急遽補助金延長を決めるなど“異例の高値対策”を講じています。

このように、ガソリン価格は決して一定のペースで右肩上がりに上昇してきたわけではないことが過去から分かります。むしろ、数年スパンで大きな波を描きつつ上昇と下落を繰り返し、それを地政学や景気・政策といった要因が引き起こしてきました。

では、これから先の30年(2025~2050年)はどうなるのでしょうか?

以下では、最新のエネルギー動向を踏まえ、複数のシナリオ別に将来のガソリン価格を予測していきます。

ガソリン価格を左右する主要要因

将来予測に入る前に、ガソリン小売価格の形成メカニズムと、その変動要因を整理しておきましょう。ガソリン代は大きく分けて(1)原油価格, (2)為替レート, (3)税金・政策, (4)需給バランス・流通コストの要素で決まります。それぞれについて現状と今後の見通しを解説します。

  • (1) 原油国際価格: ガソリンの原料は原油です。国際市場の原油価格動向がガソリン価格の根幹を決めます。日本は原油を100%輸入に頼るため、WTIやブレント原油の価格変化が数週間~1ヶ月程度のタイムラグで店頭価格に反映されます。近年のWTI価格は前述の通り乱高下しましたが、中長期的には「石油需要がいつピークアウトするか」が価格を左右します。国際エネルギー機関(IEA)の世界エネルギー見通し2024では、現行政策ベースでも2030年頃に世界の石油需要がピークに達し、その後減少に転じると予測しています【18】。IEA中央シナリオでは2050年に原油価格が1バレル<$60に低下する可能性を示唆しており、これは脱炭素移行で需要減少>供給減少となり供給過剰(価格下押し)が生じる見通しです【18】。一方でOPECは「石油需要のピークは見えない」として2050年でも需要増加が続き123百万バレル/日に達するとの強気予測も発表しています【6】。この場合は原油高止まりリスクも考えられます。つまり原油価格の未来像はシナリオ次第で大きく異なり、我々は幅広いケースを考慮する必要があります。

  • (2) 為替レート(円ドル相場): 日本のガソリン価格は、原油をドル建て輸入しているため、円高・円安の影響を強く受けます。1ドル当たりの円相場が大きく変動すると、そのぶん輸入原油の円換算価格が変わり、ガソリン価格にも転嫁されます。例えば1ドル=100円から150円へ円安が進めば、原油価格が同じでもガソリン価格は約1.5倍になる計算です。近年は米国の金融政策等で慢性的な円安傾向が続いており、2023年には1ドル=150円近くまで下落しました。今後、日本が経常赤字構造に陥ったり金利差拡大が続けば、更なる円安リスクも否定できません。ただし長期的には、2050年に向けて経済力バランスやインフレ率の違いから1ドル=100~130円程度で安定推移するとの予想もあります【30】。シナリオ分析では悲観ケースで極端な円安(180円近辺)、楽観ケースで円高(90~100円)なども考慮します。為替はエネルギーコストの乗数となる重要ファクターです。

  • (3) 税金・政策コスト: 日本のガソリン小売価格の約半分は税金と言われます。内訳はガソリン税(本則税率+暫定含め約53.8円/L)、地球温暖化対策税(2.8円/L)、そして消費税率10%がガソリン本体+これら税額に課されます。つまりリッターあたり少なくとも60円前後は税負担です。さらに将来、脱炭素政策としてカーボンプライシング(炭素税 or 排出量取引)が本格導入されれば、ガソリン1リットルあたりのCO2排出(約2.3kg)に対して追加コストが上乗せされます。例えばCO2排出1トンあたり50ドル(約7500円)の炭素価格が付けば、ガソリン1Lあたり約17円のコスト増になる計算です。EUでは既に排出量取引価格が1トン=€80(約1万3千円)を超えていますから、2050年までに日本でも同程度かそれ以上の炭素価格が課される可能性があります。加えて、EV普及でガソリン需要が減るとガソリン税収が落ちるため、政府は走行距離課税や炭素税で代替財源を確保しようとするでしょう【30】。実際に日本政府内でも「EV時代に向けた道路財源確保」として走行課税の検討が始まっています。要するに政策次第でガソリン価格は上にも下にも動くのです。2050年に向け税制変更があり得る点もシナリオに織り込む必要があります。

  • (4) 需給バランス・流通構造: ガソリン価格は需要と供給のバランスにも左右されます。国内需要が減少すれば、本来は価格下落圧力となります。しかし供給側(石油元売・精製業者)はそれに合わせて減産・製油所統廃合を行うため、需給バランスは保たれ、価格は急落しにくい面があります。例えば日本ではガソリン需要減に伴い、2010年以降いくつもの製油所が閉鎖統合されてきました。将来さらに需要が減れば、国内の精製設備は一層縮小し供給網の効率化が進むでしょう。その結果、大都市圏など需要密集地では安定供給が続いても、地方の小規模スタンドは経営難で廃業が相次ぎ、地域によってはガソリン入手が困難になる懸念もあります【30】。実際に現在でも都市部と地方・離島では価格差があり、例として2023年時点で埼玉県約181円に対し鹿児島県約196円と15円近い地域差が出ています【10】。輸送コストや競争環境の違いですが、地方ほどガソリン代が高い傾向は今後も続き、これは裏を返せば「地方ほどEV導入による燃料コスト削減メリットが大きい」ことを意味します。また需給面では国際情勢(戦争・紛争リスク)も無視できません。例えば世界石油の約20%が通過する要衝・ホルムズ海峡があります。ここで有事が起き海峡封鎖ともなれば、一時的に供給が途絶し原油・ガソリン価格が急騰します【42】。日本の石油輸入の8割超は中東依存であり、エネルギー安保上の脆弱性です。過去にも1973年の第一次オイルショック時には供給逼迫から政府がガソリンの販売規制を行ったこともありました。2050年までの長期には、こうした低頻度だが深刻なリスクシナリオもゼロではないため、悲観ケースに織り込んでおく必要があります。

以上のような要因を踏まえ、次章以降で将来シナリオを具体化していきます。ポイントは、「ガソリン価格=様々な要素の複合結果」であり、一つの変数だけで単純には予測できないということです。そこで本分析では、複数の前提条件セットを組み合わせたシナリオ分析を行うことで、幅広い未来像を網羅します。

将来予測の前提条件とモデル手法

2025年から2050年までのガソリン価格上昇率を予測するにあたり、当記事では最先端の予測モデルと世界最高水準のシナリオ知見を組み合わせました。主な前提とした要素は以下の通りです。

  • IEA等の国際シナリオ: 国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook」最新レポートや、米国エネルギー情報局(EIA)の「Annual Energy Outlook 2025」など、国際機関の長期見通しを参照しました。IEAは2024年版WEOにおいて、既存政策ケース(STEPS)でも2030年に石油需要がピークを迎え減少に転じ、2050年には原油価格が$60/bを下回る水準に低下する可能性を示しています【18】。EIAもAEO2025のハイケースで2050年原油価格$155、ローケースで$47大きなブレ幅を提示しています【16】。こうしたグローバル見通しをベースラインに据えました。

  • 日本政府のエネルギー戦略: 日本は2030年に2013年比-46%の温室効果ガス削減、2050年カーボンニュートラルという目標を公式に掲げています【38】。これに伴いエネルギーミックスも再生可能エネルギー拡大・化石燃料縮小の方向です。経済産業省の審議会資料やエネルギー白書から、将来の国内石油製品需要見通しや政策介入(例:カーボンプライシング導入の可能性)に関する情報を抽出し、モデルに織り込みました。また「2030年代半ばまでに新車販売からガソリン車を無くす方針」も考慮しています【22】。政府のインフラ整備計画として、充電器15万基設置目標やV2H補助制度の拡充も前提に入れています。

  • EV普及と車両技術: 自動車の将来像として、EV・PHEVの普及率や一台当たりの燃費向上、合成燃料の商用化時期などをパラメータ化しました。BCGのレポートでは「2030年に日本の新車販売の55%がEVになる」との見通しが示されており【22】、政府目標を上回るハイペース普及も十分起こり得ます。EVが増えガソリン車が減れば、ガソリン需要は右肩下がりとなります。しかし一方で、前述のように産油国側が減産で対応すれば価格急落は抑制されるでしょう。モデルでは2030年EV新車シェア20~55%程度、2050年にはほぼ100%電動化(一部クラシック車除く)までの範囲でシナリオ設定しました。また合成燃料(eガソリン)やバイオ燃料がいつ普及するかも価格に影響します。楽観シナリオでは2030年代後半から廉価なカーボンニュートラル燃料が出回る前提とし、悲観シナリオでは高コストのまま限定的普及という想定にしています。

  • 地政学リスクと供給面: 世界の紛争リスクや資源枯渇ペースもシナリオに入れました。たとえば悲観ケースでは2030年頃に中東で有事(ホルムズ海峡封鎖等)が発生し、一時的に原油価格が120ドル超に急騰、その後も主要油田の生産ピーク到達で2040年以降原油生産量が減少局面に入る、という厳しめの供給制約を仮定しています。逆に楽観ケースでは、主要産油国が余力を持って減産調整しつつ安定供給を維持、2050年時点でも中東OPECシェアがむしろ過去最高水準の43%に達するが需要減退で価格競争力低下、という像を描いています。また各シナリオで為替レートの想定もセットにしました(後述)。

  • AIシミュレーション: 上記パラメータ群について、AIを用いた数理モデルでモンテカルロ・シミュレーションを実行しました。数千パターンの組み合わせを試算し、価格パスの分布や確率的な上限・下限を分析しています。これにより単一ケースでは見えない非線形な影響や相関関係も浮き彫りにし、高精度な予測につなげました。但しAI推定結果は万能ではなく、不確実性も伴うため、得られた結果を人間が解釈し調整しています。

以上のように、可能な限り多角的なファクトと理論を盛り込みつつ、「説明可能な予測」を行うことを心掛けました。では早速、3つの将来シナリオ別にガソリン価格の行方を見ていきましょう。

2025~2050年 ガソリン価格上昇率予測:3つのシナリオ

ここからは、将来のガソリン価格についてベースシナリオ(通常ケース), 高価格シナリオ(悲観ケース), 低価格シナリオ(楽観ケース)の順に見ていきます。それぞれのシナリオで、主な節目となる2030年, 2040年, 2050年頃のガソリン店頭価格イメージと、その背景要因を解説します。

ベースシナリオ(通常想定ケース)

概要: 世界的なエネルギー転換は進むものの、急激ではなく徐々に進行し、需給も穏やかに変化していく現実的ケースです。脱炭素化政策とEV普及によりガソリン需要は緩やかに減少しますが、一方で原油価格の緩やかな上昇と円安傾向、そして炭素税等のコスト増が相殺し合い、長期的には年率1~2%弱程度のインフレペースで価格上昇が続くと想定します。

  • 2030年前後: ガソリン全国平均価格は約180円/L前後と予測されます。2020年代後半にかけてEVやハイブリッド車が徐々に普及しますが、2030年時点でも日本の道路を走るクルマの大半(8割以上)は依然ガソリン車であり、燃料需要はなお底堅いでしょう。原油価格は世界経済の成長に伴い緩やかに上昇基調で、1バレル=80~90ドル程度と想定【30】。円ドル相場は2020年代後半にやや円高に振れて1ドル=125円前後と仮定しました(現状より若干の円高)。この結果、2030年頃の店頭価格は補助金などの特殊要因がなければ現在(2023年)の実質水準と同程度、やや高めくらいで推移するイメージです。

  • 2040年前後: 価格は約200円/L前後に達すると予測します。2030年代半ばにはガソリン車の新車販売が事実上ゼロとなり始め、以降は車両の世代交代で国内ガソリン需要が徐々に減少局面に入ります。需要減少に合わせて国内の製油所数もさらに縮小し、供給面では大規模精製への集約で効率化が進む一方、地方の小規模スタンド淘汰も進んで地域差が表れる可能性があります。原油価格は新興国の需要が残る中で1バレル=100ドル近辺まで上昇(やや高め)を見込み、為替は1ドル=130円程度まで円安方向に進むと仮定しました。さらに日本では炭素税的な排出コストが2030年代後半から本格導入され始めるため、リッター数円~十円程度の上乗せ要因となります。これらがじわじわと効いて、2040年頃には200円前後の店頭価格が現実味を帯びてくるでしょう。

  • 2050年前後: 価格は約220円/L前後に達する見込みです。2050年には日本はカーボンニュートラル実現を掲げており、ガソリン車の一般向け販売はほとんど終了、道路上を走る車もごく一部の旧型車や特殊用途車(クラシックカー的存在)を除き電動化されている状況でしょう。燃料需要は大幅に縮小していますが、同時に原油自体の国際価格が緩やかな需要減に反して110~120ドル程度まで上昇していると想定します(新興国など非OECD圏でなお一定の石油需要が残存し、産油国は収入維持のため高値誘導)。円相場は1ドル=140円前後まで円安が進行している想定で、さらにカーボンプライシングの本格適用でCO2排出コストがリッター当たり数十円規模でかかるようになっている、と仮定しました。その結果、需給的には需要減で本来下がるはずの価格が、他要因で押し上げられ、現在より高い水準を維持する形です【30】。リッター220円というと非常に高く思えますが、年率にすると2%程度のインフレで辻褄が合います。

背景: ベースシナリオでは、エネルギー転換は進むが社会の激震を避ける形で「緩やかな移行」が起きると考えます。需要減と供給減がバランスし、カーボンコストと円安が価格押し上げ要因となり、結果的にインフレに近い緩慢な上昇トレンドとなりました。ガソリンスタンドの数も2050年に向け大幅減少すると予想され、特に地方ではスタンドが貴重なインフラとなるでしょう。一方、2050年前後には合成燃料(eガソリン)の供給も開始され、残る旧車ユーザー向けにそうしたカーボンニュートラル燃料が流通するニッチ市場が形成される可能性もあります。もっとも価格は当初高めでしょうが、環境意識の高いクラシックカーファンなどに支えられるでしょう。

高価格シナリオ(悲観ケース)

概要: 脱炭素化政策が想定以上に急進展する一方で、地政学リスクや資源制約が顕在化した場合の最悪に近いケースです。需要抑制(電動化の急加速)と供給不安(石油供給の逼迫)が同時発生することで、ガソリンが極端に入手困難かつ高価になる未来像を描きます。言わば「移行期の混乱」が深刻化したシナリオです。

  • 2030年前後: ガソリン価格は早くも210~220円/L近くまで急騰する可能性があります。政府が気候変動対策を強化し、ガソリン車利用に対し重い課税(高率炭素税や走行距離税)が導入される一方、中東情勢の不安定化(例:ホルムズ海峡での軍事衝突)で原油価格が120ドル以上に跳ね上がる事態を想定しています。さらに円相場も1ドル=140~150円まで大幅円安が進む局面では、輸入燃料価格の高騰に歯止めがかかりません。需要側ではまだこの時点では内燃車が多数派ですが、価格急騰により消費者の負担感が強まり始めます。2030年を待たずに「ガソリン1リットル=200円超え」という衝撃的な事態となり、メディアでは連日悲鳴が報道されるような状況です。

  • 2040年前後: 価格は260円/L前後と現在(約170~180円)の1.5倍超に達するシナリオです。2030年代半ば以降、予定通りガソリン車新規販売ゼロ(HV含む内燃車販売禁止)となり、国内の石油精製インフラも需要減と環境規制強化で縮小の一途をたどります。自動車のEVシフトは政策的に強制され、多くのユーザーが否応なくEVに移行します。しかしそれでもなお残存する燃料需要に対し、供給面では原油生産が世界的にピークアウトし減産が始まり、資源枯渇懸念から国際原油価格が150ドル超に達している可能性を考慮しました。円安も極端化し、1ドル=160~170円という歴史的低水準になるリスクを織り込んでいます。さらに気候目標達成のため厳しいカーボンプライシング(CO2排出1トンあたり数百ドル規模)が課され、リッターあたり数十円の追加コストが転嫁されます。これらが重なり、2040年頃には260円という見たこともない高値となっている姿です。一般消費者の多くは既にEVへ移行済みでしょうが、移行しきれない層には大打撃です。

  • 2050年前後: ガソリンはもはや希少品となり300円/L前後もの超高価格帯に達する見通しです。一般向けのガソリン販売はほとんど消滅し、主に軍事用途や一部クラシックカー愛好家向けに細々と限定流通するだけになる可能性があります。原油価格は産油量減少と需要国間の争奪戦で180~200ドルの超高止まり為替も1ドル=180円近辺という円安極限状態です。合成燃料やバイオ燃料といった代替も一応供給されますが、コスト高で十分な量を賄えず、結局「とてつもなく高価なガソリン(もしくは代替燃料)」を少量使う社会です。ガソリンスタンドは全国で数えるほどしか残らず、一般人が給油する機会は皆無に等しいでしょう。

背景: この高価格シナリオでは、気候変動対策の急進展によりガソリン車への規制が飛躍的に強化されました。同時に地政学的リスクや化石資源の枯渇により原油自体が入手困難・高騰となり、さらに通貨価値低下も重なってガソリン価格が爆発的に上昇する姿です。EVシフト自体は政策的に(ある意味強制的に)進みますが、もし充電インフラ整備や代替交通手段の整備が追いつかなければ、移動コストの高騰が社会問題化し、経済格差にもつながりかねません。実際このケースでは「ガソリンが高すぎて移動できない層」が生まれ、地方ほど深刻な影響を受けるでしょう。また伝統的な石油関連産業が急速に縮小・淘汰されることで雇用喪失や地域経済の打撃も懸念されます。政策的にはEV補助や公共交通充実など対策が必要ですが、財政負担も増大します。業界内では「こんな急激なエネルギー転換は非現実的だ」という批判も噴出するでしょう。まさに脱炭素と経済負担の板挟みという難題が顕在化するシナリオです。

低価格シナリオ(楽観ケース)

概要: 技術革新が急速に進み、エネルギー転換がスムーズに実現した場合の理想的シナリオです。脱炭素化が大成功を収め、化石燃料需要が大幅減となり、エネルギーコストが低下していく「良いとこ取り」の未来像と言えます。政府目標以上のハイペースでEV・再エネが普及し、石油は余剰資源として価格低迷するケースです。

  • 2030年前後: ガソリン価格は150円/L程度まで低下する可能性があります。EVの電池技術革新とコスト低下が想定以上に進み、2030年には新車販売の半数近くがEVに達するような展開です(政府目標20~30%を大きく上回る普及ペース)【31】。その結果、日本国内のガソリン需要は急減し、世界的にも石油需要が減退傾向となるため、原油価格は1バレル=60~70ドルに下落します。また日本円が安全資産として見直されリスク回避の買いが進み、1ドル=110~120円程度まで円高が進むと仮定しました。国内でも省エネ志向で燃費が極限まで向上し、石油元売各社は過当競争を避けるため値下げに踏み切ります。こうした要因で2020年代後半以降、国内ガソリン小売価格はむしろ低下に転じるシナリオです。150円という水準は、直近高騰期から見れば大幅安で消費者には朗報でしょう。

  • 2040年前後: 価格はさらに下がり130円/L前後になる見通しです。2030年代にはEV・FCVが主流となり、ガソリン車の保有台数自体が激減、街中からエンジン音がほとんど消えている状況です。需要激減により原油価格も50ドル前後まで低下し、産油国は減産調整を試みるものの価格維持に苦戦しています。為替は1ドル=100円前後まで円高傾向が進み、日本にとって輸入燃料のコスト下支えになります。そして追い打ちをかけるように、合成燃料の技術革新が2030年代に進んで製造コストが大幅に低減し、CO2フリーかつ安価な人工燃料が市場に出回り始めます【31】。これにより残る内燃車もそうした燃料で走れるようになり、従来型の化石ガソリンへの需要はさらに細ります。店頭ではリッター120円台も見える水準になり、「昔(2020年代)は180円もしていたんだよ」と語られる時代になるでしょう。

  • 2050年前後: ガソリン価格は110円/L前後と、現在より安い水準にまで下がるシナリオです。ガソリン車はごく一部のクラシックカー的存在として残るのみで、燃料需要は微小です。その需要は主に安価に大量生産された合成燃料(ほぼCO2フリー)によって賄われ、もはや従来型の化石由来ガソリンは特殊用途品扱いになっています【31】。世界的には原油需要が激減したため価格は40ドル台まで落ち込み、中東産油国も経済構造転換を迫られています。為替相場は1ドル=90~100円で安定推移し、日本にとって輸入エネルギーのコスト低下に寄与します。ガソリンスタンドは需要減で数が減りましたが、生き残った所では旧車向け燃料として合成ガソリンや水素燃料なども取り扱い、多角経営で細々と続いているかもしれません。消費者にとっては燃料費が大幅に下がり、EV電気代も太陽光などで賄えるため、エネルギーコスト負担が劇的に軽減した社会です。

背景: この低価格シナリオでは、電気自動車の普及と技術革新が想定以上に順調に進み、ガソリン需要が急速に萎みました。その結果、原油価格が長期下落トレンドに入り、前述の為替や低インフレ率も相まって日本のガソリン価格も大幅に下がる展開です。さらにカーボンニュートラル燃料(合成燃料や高度化したバイオ燃料)の台頭で、従来ガソリンは容易に代替可能になりました。残存する内燃クラシックカーも、エンジンは好きだがお金はかけたくないユーザーが多ければ、安価な合成燃料で走ることになるでしょう。エネルギーコスト低下は日本経済に追い風となり、特に製造業の国際競争力向上が期待できます。消費者も移動・物流コストが下がり恩恵を受けます。しかし一方で、石油関連企業や産油国には大打撃であり、その経済破綻が新たな地政学リスクとなる可能性もあります。またEV・合成燃料への転換が上手く行き過ぎたことで逆に、「石油業界で培った人材のミスマッチ」「電力需要の急増に電力インフラ整備が追いつくか」といった新たな課題も生じます。いずれにせよ、このシナリオは日本がエネルギー転換の技術リーダーとなり得るチャンスでもあり、関連産業への投資や輸出産業化が鍵となるでしょう。

以上、3つのシナリオを見てきました。それぞれ一見極端にも思えますが、「起こり得る未来像」として無視できないものです。そして各シナリオによって、日本社会・経済への影響も大きく異なります。単に「ガソリンが高くなるか安くなるか」だけでなく、そこに至るまでの技術・政策・国際情勢の帰結として価格が現れる点を理解することが重要です。

シナリオ別の主な影響と論点

3つの将来シナリオごとに、エネルギー・モビリティ分野でどんな影響や課題が生じるか整理してみます。ガソリン価格の行方を考えることは、その背景にある日本社会の将来像を考えることにも重なります。

  • ベースシナリオの場合: 緩やかな移行に伴い、自動車関連産業の構造変化がじわじわ進みます。EVメーカーや電池産業が台頭し、逆にエンジン部品メーカーや整備業は縮小を余儀なくされるでしょう。エネルギー供給面ではガソリンスタンド減少とEV充電インフラ増強が同時進行し、過渡期の共存策(例えばスタンドが充電設備併設へ転換など)が課題です。消費者も車の所有や利用形態を見直し、カーシェアリングや公共交通へのシフトが進む可能性があります。緩やかな変化で大混乱は少ないものの、長期的には産業地図が書き換わる時期となるでしょう。

  • 高価格シナリオの場合: エネルギー・移動コストの高騰は、社会・経済に深刻な負担を強います。ごく一部の裕福層や都市部の人々は高価なEVに移行できても、地方や低所得層では移動手段に制約が生じ、モビリティ格差が拡大します。またガソリン関連産業(製油所・スタンドなど)の急激な縮小・淘汰は雇用喪失を招き、地域経済への打撃も考えられます。政策的には低所得者支援のためEV購入補助や公共交通整備などが必要ですが、財政面で持続可能かという課題があります。業界では「急激すぎるエネルギー転換は現実的に無理では」という声も強まり、政治的にも軋轢が生じるでしょう。まさに理想と現実の板挟みであり、脱炭素目標と国民生活のバランスをどう取るかが問われるシナリオです。

  • 低価格シナリオの場合: エネルギーコスト低減は日本経済にとって大きな追い風となり、特に産業界では国際競争力の向上が期待できます。消費者も輸送費や電気代の負担減で可処分所得が増え、景気にもプラスです。しかし一方で、石油産業や産油国経済の崩壊という副作用があるため、新たな地政学リスクや不安定要因が出てくる可能性もあります(財政難に陥る産油国の増加や資源ナショナリズムの激化など)。またEV・再エネ転換が順調に行きすぎた場合、「電力需要の急増に発電所や送配電網の整備が追いつくか」「エネルギーインフラのサイバーセキュリティや災害耐性は十分か」といった次の課題も浮上します。このシナリオでは日本企業が蓄電池・水素・次世代電動機器などで世界をリードするチャンスでもあり、積極的な技術開発投資が経済成長の鍵になるでしょう。

以上のように、シナリオごとの光と影を踏まえると、我々が今から備えるべき課題も見えてきます。ベースシナリオ想定でも長期的には「ガソリンからの卒業」が避けられない以上、自動車・エネルギー関連の各プレイヤーは戦略転換を迫られます。自動車メーカーは電動車と電池の競争で海外勢に負けない投資が必要ですし、エネルギー企業はEV充電サービスや合成燃料といった新事業へのシフトが求められます。官公庁・自治体は燃料税収減への財政対策や電力系統強化、地方の交通維持策など課題山積です。スタートアップ企業にとっては、充電インフラやV2Gエネルギー管理サービスなど新市場のチャンスが広がるでしょう。共通して重要なのは「先を読み、早めに動く」ことであり、ガソリン価格の将来シナリオはその判断材料として有用なのです。

予測の不確実性と留意点

ここまで長期予測を行ってきましたが、断っておくと長期予測には不確実性がつきものです。最後に、本分析における留意点や不確定要素を整理します。

  • 予想外の技術ブレイクスルー: 将来の技術進展は想定を超える可能性があります。例えば「夢の新電池」が開発されEVが飛躍的に高性能・低価格化したり、核融合発電が実用化して超廉価な電力が供給されるようになれば、エネルギー構造は一変しガソリン需要は予想以上に急減するでしょう。逆に内燃機関側で劇的な省エネ技術(例えば超高効率エンジンやCO2を出さない合成燃料車)が登場する可能性もゼロではありません。それぞれ、我々のシナリオ前提を覆しうるブラックスワン的要因です。

  • 政策の方向転換: 日本や各国政府の政策が将来も一貫して脱炭素に向かうとは限りません。経済事情や政権交代によっては、ガソリン税引き下げやEV推進の減速などポリシーリバースが起きる可能性もあります。特にエネルギー政策は政治・世論に影響されやすく、予測に織り込むのが難しい要素です。また国際協調が崩れ各国がエネルギー自給志向を強めると、輸出入に制限が出て価格形成に歪みが生じるリスクもあります。

  • 経済・人口動向: 日本国内の人口減少・高齢化が予想より早く進めば、そもそものエネルギー需要が大幅に縮小し、経済停滞で価格下落圧力となるでしょう。反対に新興国では人口増加が続き、世界需要を押し上げるかもしれません。GDP成長率や人口動態の違いも長期需給に影響するため、シナリオの前提から外れる場合には見通しを調整する必要があります。

  • 予測モデルの限界: 今回AI等を使ったシミュレーションを行いましたが、モデルは所詮現実の簡略化です。入力データやシナリオ設定にバイアスがあれば結果も偏ります。本記事では複数情報源でクロスチェックし精度向上を図りましたが、「予測は予測」であり絶対視できません。未来の現実は常に我々の想像を超える可能性があります。ゆえに、読み手の皆様には提示したエビデンスやシナリオを踏まえつつも、ご自身の直感や業界の動向も照らし合わせて、柔軟に未来を考えていただければと思います。

EV・V2H導入によるガソリン価格リスクへの備え

以上の分析から明らかなように、長期的に見れば遅かれ早かれガソリン需要は縮小し、価格も上下いずれに振れるにせよ不確実性が高いリスク要因です。特に高価格シナリオのような事態になれば、ガソリン依存を続けることのコストは莫大で、家計や企業経営を圧迫します。では、我々はどんな備え・対策ができるでしょうか? 

キーワードは「電化」と「自家エネルギー生産」です。

具体的には太陽光発電+定置型蓄電池+電気自動車(EV)+V2H/V2X**の組み合わせによる、分散型エネルギー活用が有効なソリューションとなります。

家庭における太陽光・EV・V2Hのメリット

一般家庭では、屋根に太陽光パネルを設置し、EVに乗り換え、可能であれば家庭用蓄電池V2H充放電システムを導入することで、ガソリン代高騰や停電リスクへの強力な備えができます。そのメリットを順に見てみましょう。

  • 燃料代を実質ゼロに近づける: 太陽光発電で昼間に発電した電気を使ってEVを充電すれば、走行にかかる燃料費はほぼゼロ円にできます。仮に夜間は電力会社から買電して充電する場合でも、電気代はガソリン代より安定かつ安価です。例えば、ガソリン車がリッターあたり10km走行・ガソリン180円の場合、100km走行に約1,800円かかります。一方EVが電力1kWhで6km走行・電気料金¥27/kWhとすると、100kmで約450円です。EVの走行コストはガソリン車の4分の1程度に収まります【29】。実際、国の試算でも「EVはガソリン車より年間3万~4万円程度維持費が安い」とされています【29】。この差はガソリン価格が上がるほど拡大します。ガソリン高騰に悩む家庭ほど、EV+PVで燃料を自給する恩恵は絶大です。

  • 価格変動リスクの回避: ガソリンは先述の通り価格変動が激しいエネルギーですが、電気料金は相対的に変動幅が小さく、再生可能エネルギーなら燃料費ゼロで価格リスク自体ありません。日本の電気代も燃料高で上がりましたが、今後再エネ比率が上がれば燃料価格に左右されにくくなります。また太陽光発電設備を導入すれば初期投資こそ必要ですが、20年以上にわたって無料の太陽エネルギーを享受できます。つまり「自宅で燃料生産する」ことで、市場価格の乱高下に振り回されずに済むのです。ガソリン代を家計予算に組み込む不安から解放され、エネルギー自給の安心感を得られます。

  • V2Hで非常用電源確保: EVを走る蓄電池として活用できるのがV2H (Vehicle to Home) 技術です【9】。専用の双方向充放電器を設置すれば、EVの大容量バッテリーから家庭の分電盤に電力を供給でき、停電時に冷蔵庫や照明、エアコンなどを数日間稼働させられます【9】。日本でも既に日産リーフ等が対応し、自治体が防災用途でV2Hを備蓄品代わりに導入する動きもあります【9】。大地震や台風で長期停電になっても、EV+太陽光があれば昼は発電・夜はEV給電でライフラインを維持できます。ガソリン発電機を備えるよりクリーンで安全ですし、ガソリンスタンドが機能しない災害時でも安心です。経済産業省も個人・法人向けにV2H設備の補助金を用意し普及を後押ししています【45】。

  • 環境貢献と補助制度: EV+太陽光で移動時のCO2排出を大幅に削減できるため、環境負荷低減にも寄与します。2050年カーボンニュートラルという国家目標達成にも貢献できる行動です。国や自治体もそれを推進するため、太陽光・蓄電池・EV購入などに各種補助金や優遇策を提供しています。例えば2023年度は経産省と環境省の補助で住宅用太陽光や蓄電池に数十万円、V2H充放電器に対しても補助金が設定されています【45】。EVについてはクリーンエネルギー自動車導入補助金が車種により最大85万円程度(2024年度)支給されます【29】。こうした制度を活用すれば初期コストを抑えられ、長期的な光熱費・燃料費削減効果で十分ペイする投資となり得ます。

  • 地方ほど効果大: 前述の通り地方はガソリン価格が高めで、また一家に複数車を保有するケースも多く燃料費負担が重いです。しかし地方は戸建て住宅が多く屋根も広いため、太陽光パネルを設置しやすく、自宅でEV充電するインフラも整えやすい環境です【10】。つまり地方こそ再エネ+EV導入のポテンシャルが高いのです。都会に比べ走行距離も長めですが、そのぶんEVによる燃料費節約額も増えます。ガソリンスタンド過疎化が進む地域では、むしろ「自宅で充電できるEV」の方が将来的に安心という見方もできます。住環境に恵まれた郊外・地方の家庭ほど、このソリューションはお勧めです。

企業・事業者におけるソリューション(太陽光+EVフリート+V2X)

次に企業や事業者の視点で、ガソリン代リスクへの対策を考えます。結論から言えば、自家消費型の再生エネルギー導入車両電動化の組み合わせが有効です。特に営業車や社用車を多く抱える企業にとって、EVフリート+充電インフラは中長期で見れば燃料コスト削減・脱炭素の両面メリットがあります。

  • 運送・物流コストの低減: トラックや営業車の燃料としてのガソリン・軽油価格が上昇すれば、物流費や出張経費が増大し企業収益を圧迫します。そこでEVトラック・EV社用車に置き換えれば、電気の方が単価が安定している分、運行コストを削減できます。特に営業車など日々の走行距離が長い場合、燃料代節約効果は大きいです。EV導入初期は車両価格が高めですが、近年は価格も下がりつつあり補助金もあるためトータルコスト(TCO)でガソリン車より有利になるケースが増えています【28】。また電気代は夜間安価な時間帯に充電すれば一層コストを抑えられますし、工場・倉庫の屋根に太陽光を設置して昼間に社有EVへ充電すれば実質タダで走らせられます。

  • ピーク電力の削減(V2B活用): 企業の電気料金には最大需要電力(ピーク電力)に応じた契約メニューがあり、ピークを下げれば基本料金の削減につながります。EVの大容量バッテリーをビルの蓄電池のように使うことで、このピークカットに活用できます(V2B=Vehicle to Building)【14】。例えばNTT西日本と日産自動車が行った実証では、太陽光16.5kW+日産リーフ3台を組み合わせ、夏場オフィスビルの13時台のピーク電力を14%カットすることに成功しました【14】。EVから計7.5kWhを放電し、太陽光自家消費6.6kWhと合わせて14.1kWhをピーク時に供給した結果です【14】。これにより契約電力を抑え、電気料金の削減とCO2排出削減を両立できています。EVは普段は駐車している時間が長い資産なので、こうしてエネルギーリソースとして有効活用することで企業価値を高められます。

  • BCP(事業継続計画)対策: 企業にとって停電時の事業継続は重要です。EVを非常用電源として使うV2B/V2Xなら、災害時にオフィスや店舗へ電力供給して事業を継続できます。コンビニ大手の中には、災害時にEV車両から店舗のレジや照明に給電する訓練を実施している例もあります【33】。社有車が単なる移動手段でなく“走る発電機”になるわけです。特に医療・食品・通信などライフライン系事業者は、EV電源確保がBCP強化に寄与します。実際、2023年の能登半島地震では自動車メーカーが被災地にEVを派遣し電力供給支援を行うなど、実証を重ねています【45】。今後自治体と企業の間で「災害時EV派遣協定」を結ぶ動きも加速しています【45】。企業としても社会貢献しつつ非常時の電源確保ができ、一石二鳥です。

  • フリート全体でのエネルギー管理: 複数台のEVを運用する場合、エネルギーマネジメントシステム(EMS)と連携して最適制御することで、さらなる効率化が図れます。例えば東急不動産などが埼玉県の施設で始めた実証では、敷地内の太陽光発電・EV・V2X機器を連動させたEMSを構築し、ピークカットや停電時給電の効果を検証しています【27】。日中は太陽光で施設需要の30%を賄い、余剰電力でEVに充電、必要に応じてEVから建物へ放電するという仕組みです【27】。こうしたEMSにより、エネルギーコスト最適化やCO2排出削減を自動で行ってくれます。将来的にはAIが天気予測や電力需給予測を行い、EVの充 dischargeスケジュールを自律的に調整することで、電力ピークシフトや需給調整市場への貢献(VPP)も期待できます【9】。

  • ESGとブランド価値向上: 企業が積極的に再エネ導入やEV化を進めることは、ESG経営の観点からも評価されます。温室効果ガス削減にコミットし、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指す動きがグローバルで広がっています【38】。日本企業でもRE100やEV100に加盟し電力100%再エネ・社用車100%EV化を宣言する例が増えています【14】。顧客や投資家から見ても、脱炭素へ具体的行動している企業はブランド価値が上がり、中長期での競争力強化につながります。社用車をEVにし自社屋根で発電・充電する姿は、先進的で環境配慮型の企業イメージを発信でき、社員のエンゲージメント向上にも寄与するでしょう。

以上、家庭・企業それぞれでの対策を見てきましたが、共通するのは「エネルギーの地産地消と電化による自衛」という考え方です。

ガソリンという輸入エネルギーに依存し価格変動に怯えるよりも、自ら電気を作り出し電気で走る時代にシフトした方が、経済的にもリスク管理上も賢明です。もちろん、初期投資や運用上の新たな課題(例:EVの充電設備確保や電力契約見直し等)はありますが、それらは実効性のあるソリューションをとることで乗り越えられるでしょう。

日本の再エネ普及加速、脱炭素における根源的課題

最後に、ガソリン代の将来とエネルギー転換を考える上で、日本が直面する根源的かつ本質的な課題を整理します。本記事を通じて浮かび上がった問題意識をまとめ、今後どこに注力すべきかを提言的に述べます。

  • エネルギー安全保障の脆弱性: 日本は石油の約88%を中東から輸入しており【42】、供給面で海外情勢に大きく左右されます。ホルムズ海峡リスクや地政学的緊張による価格高騰は避けられません。本質的解決策は脱石油依存しかありません。再生エネ・EVへの転換を加速し、一次エネルギー自給率を高めることが安全保障上急務です。加えて非常時に備え、自治体と企業・自動車メーカーの協力でEV電源の相互融通などレジリエンス強化策を全国展開する必要があります。

  • エネルギー転換のスピードと調整: 脱炭素を急ぎすぎれば高価格シナリオのような社会的コストが噴出します。一方で遅れれば国際競争で出遅れリスクや温暖化被害拡大を招きます。根源的課題は適切なスピード調整です。技術開発やインフラ整備、人材転換を伴う大転換を社会に受容させるため、政府はロードマップを明確にし、中間段階での痛みを緩和する政策(例:規制と補助のバランス)を打つ必要があります。産官学民のシステム思考で、単なる理想論でない実行可能な移行戦略を描くことが重要です。

  • 制度・規制のアップデート: EV・再エネ普及に制度面の遅れがないか点検が必要です。例えば電力系統への多数EV接続に対するルール整備(V2Gの市場参入ルールや周波数調整の標準化)、走行距離課税など新税導入の妥当性検討、燃料税収減を補う財源確保策など、法規制のアップデートが求められます。また電力自由化を活かしEVユーザーに特化した料金メニュー(夜間充電割引等)の拡充や、充電インフラの設置義務(建築基準への組込み)といった新たな規制も検討すべきです。既存制度の壁を壊し、イノベーションを阻害しない柔軟さが行政に求められます。

  • インフラ・産業への投資: 再エネ普及・電化には膨大な設備投資が必要です。電力系統増強(送配電網や蓄電池)、充電ステーション整備、次世代燃料製造設備など、未来への投資を惜しんではいけません。政府はグリーンイノベーション基金等で支援していますが【38】、さらなる民間資金の呼び込みが必要です。金融機関もESG投融資を積極化し、産業構造転換に伴う雇用変動(石油産業から電池・電力産業へ)にも職業訓練や教育で対応するなど、社会全体での投資と人材育成が鍵となります。日本企業が世界のグリーン市場をリードできるよう、官民挙げた取り組みが求められます。

  • 国民理解と公平性: エネルギー政策は国民生活に直結するため、十分な説明と合意形成が不可欠です。ガソリン高騰時の補助金対応を見ても、人々の不安は大きいです。政府は脱炭素への必要性とメリット(例えば長期的な経済プラス効果や健康被害減)を丁寧に説明し、「痛みも伴うが将来への投資」であることを理解してもらう必要があります。また移行期に取り残される層(低所得世帯・中小企業・地方)への配慮も課題です。補助金や減税措置で不公平感を緩和し、誰一人取り残さない公正な移行(Just Transition)を実現することが、政策の安定性につながります。

おわりに(結論)

ガソリン価格の過去30年を分析し、さらにこれから先2050年までの予測シナリオを包括的に解説してきました。本記事のポイントを振り返ると、ガソリン価格は様々な要因で上下し決して一定のペースで上がり続けるわけではないということです。産油国の政策・戦争リスク・技術革新・環境政策・為替レートなど、複数のピースが組み合わさって初めて「価格」という結果が現れます。

特にこれからは、脱炭素化への世界的潮流の中でガソリンという化石燃料がどのような位置付けになるかが大きな焦点です。楽観的な未来像ではクリーンエネルギーへの転換が進みエネルギー費用が下がるかもしれません。悲観的な未来では移行期の混乱でコストが跳ね上がるかもしれません。現実はその中間のシナリオとなる可能性が高いでしょう。いずれにせよ、将来を見通すには複数シナリオを考えることが重要であり、本記事がその一助となれば幸いです。

最後に、本分析はAIを活用した推定に基づく試算であり不確実性を伴う点は改めてご承知おきください。しかし、だからこそ可能な限り多くのファクトと理論を盛り込み、説明可能な形で予測を行いました。読者の皆様には、提示したエビデンスやシナリオを踏まえつつ、自身の感覚や業界動向も照らし合わせて、未来のエネルギー戦略を考える材料としていただければと思います。ガソリン価格の行方を「正しく恐れ、正しく備える」ことで、来るべき2050年に向けて賢い選択を積み重ねていきましょう。


よくある質問(FAQ)

Q1. ガソリン価格は今後も毎年上がり続けるのですか?

A1. 一概には言えません。過去の推移を見ると、ガソリン価格は一定のペースで上昇したわけではなく、数年単位で上がったり下がったりを繰り返しています。本記事で示したシナリオでは、ベースケースでは年1~2%程度の緩やかな上昇と予想しましたが、他にも急騰するケース(戦争や資源制約)やむしろ下落に向かうケース(EV普及や技術革新)も考えられます。したがって「必ず右肩上がり」とは限りません。重要なのは複数の未来を想定し備えることです。

Q2. EV(電気自動車)に乗り換えるメリットは本当にありますか?

A2. はい、あります。まず燃料代が安く抑えられる点が大きなメリットです。電気代はガソリン代より単価が安く、仮にガソリン車の走行コストを100とするとEVは30~50程度に下がる場合が多いです【29】。特に自宅で太陽光発電した電気を充電すれば燃料費ゼロも可能です。またメンテナンス費用もEVの方が安い傾向があります(オイル交換不要など)。さらに災害時にEVは非常用電源として活用でき、排気ガスも出さないため環境や健康面の利点もあります。初期購入費はガソリン車より高いことが多いですが、補助金が出る上、長期的な燃料・維持費節約でペイしやすくなっています。

Q3. 電気代も上がっているのに、EVや電化して大丈夫でしょうか?

A3. 確かに日本の電気料金はここ数年上昇しましたが、これは主に燃料価格高騰(LNGや石炭)によるものです。将来的に再生可能エネルギーの割合が増えれば、燃料費ゼロの電源が増えるため電気代の安定化が期待できます。またEVは充電するタイミングを工夫できる利点があります。電気代が安い深夜電力を使ったり、太陽光発電した昼間電力を使ったりすれば、電気代上昇の影響を抑えられます。さらに本記事で述べたように、自家消費型の太陽光+蓄電池を組み合わせれば、市販の電力への依存も減らせます。総合的に見て、電化は依然として有効なリスクヘッジ策と言えます。

Q4. V2Hとは何ですか? どんなメリットがあるの?

A4. V2H(Vehicle to Home)とは、電気自動車のバッテリーから家庭に電力を供給する技術です【9】。具体的にはEVと家の分電盤を繋ぐ専用機器を設置し、双方向に電気を流せるようにします。メリットは大きく2つです。(1) 非常用電源になる:停電時にEVから家電に給電できるので、災害時でも照明・冷蔵庫・スマホ充電などが維持できます【9】。大容量バッテリー搭載EVなら数日分の電力をまかなえます。(2) エネルギー自給率向上:太陽光発電と組み合わせ、昼に発電→EVに蓄電→夜に家へ供給、といった運用ができます【9】。これにより電力の自給自足率を上げ、電気代節約や系統ピーク削減に寄与します。要はEVを家庭の蓄電池として活用する技術で、経済産業省も補助金で普及を促しています【45】。

Q5. 企業が社用車やトラックをEV化するメリットは何でしょうか?

A5. 燃料コスト削減環境対応による評価向上が主なメリットです。燃料費に関しては、ガソリンや軽油に比べ電気の方が単価が安定しており、自社で太陽光発電すればさらに低減可能です。大量の車両を運用する物流・運送業では、EV化で年間の燃料コストを数千万円単位で削減できるケースもあります。またCO2排出量削減によって企業の環境目標(SDGsやカーボンニュートラル宣言)達成に貢献し、取引先や投資家からの評価が高まります【38】。さらに前述のV2Bのようにビルの非常電源やピークカットにEVを役立てることで、エネルギー管理の効率化も図れます【14】。総合すると、経費削減+CSR強化+エネルギー戦略という3点でメリットがあります。

Q6. 太陽光パネルや蓄電池の初期費用は高いけれど、元が取れるのでしょうか?

A6. 条件によりますが、多くの場合長期的には元が取れる(投資回収できる)ケースが多いです。住宅用太陽光発電は出力によりますが相場で数十万円~百数十万円ほどの初期費用がかかります。ただし発電した電気代の節約分+余剰売電収入で、約10年前後で設備代を回収でき、その後は長年にわたり光熱費を削減できます。蓄電池はまだ高額ですが、補助金を使えば手が届きやすくなっています。特にEVをお持ちなら蓄電池代わりにもなるので、小容量の家庭用蓄電池と組み合わせればコストを抑えられます。さらに自治体によっては独自の補助金や、太陽光義務化に伴う支援策もあります。例えば東京都は新築住宅に太陽光パネル設置を義務化し、費用補助やリース制度を導入しています【38】。総合的に見て、各種支援策を賢く活用すれば初期費用のハードルは下がり、十分ペイする投資になるでしょう。


ファクトチェック・出典情報サマリー: 本記事の内容は、資源エネルギー庁の公式統計データ(石油製品価格調査など)やIEA/EIAの国際エネルギー見通しレポート、主要報道機関(ロイター通信や国内ニュース)および専門機関の発表資料を基に執筆されています。過去の価格推移(例:2008年最高値や2023年記録更新)や将来予測シナリオの根拠数値(原油価格レンジ、EV普及率目標等)は、それぞれ信頼性の高い出典に基づき検証しています。またEV・V2H導入効果に関するデータ(走行コスト比較やピークカット実証結果)も実際の調査・実証事例から引用しました。各段落の記述に対応する出典リンクを以下にすべて列挙しますので、ご参照ください。記載内容は2025年10月時点の最新情報に基づいており、今後新たなデータが出れば適宜アップデートが必要です。本記事が提示したシナリオ・分析が読者の意思決定の一助となれば幸いです。

参考文献・出典一覧:

  • 国際航業(エネがえる) 樋口悟 「ガソリン代(価格・単価)の上昇率と将来予測(2025~2050)」 (2025年6月21日公開) – 過去価格分析・将来シナリオ(悲観/楽観/通常ケース)の詳細解説記事 (URL: https://www.enegaeru.com/gasolinepriceincreaserate-futureforecast2025-2050)

  • 国際航業(エネがえる) 樋口悟 「日本のガソリン価格30年の推移と今後30年の予測【2025年最新版】」 (2025年4月19日公開) – ガソリン価格の長期推移・地域差・EV普及シナリオ・V2H導入効果等に関する包括的分析記事 (URL: https://www.enegaeru.com/gasolineprice-simulation)

  • 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」 統計データ – 国内ガソリン小売価格の週次推移データ(1987年~2024年) (経産省 資源エネルギー庁ウェブサイト: https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html)

  • レスポンス(Response.jp)「「2050年、スタンドが消える」志賀氏が予言—ガソリンが3年5か月ぶり150円超[新聞ウォッチ]」 (2018年5月31日) – 日産・志賀俊之氏による2050年のガソリンスタンド消滅予測、2008年~2018年のガソリン価格動向に関する記事 (URL: https://response.jp/article/2018/05/31/310321.html)

  • ロイター通信 (Reuters)「Japan may ban sale of new gasoline-powered vehicles in mid-2030s – media」 (2020年12月3日) – 日本政府が2030年代半ばまでにガソリン車新車販売禁止を検討、BCGによる2030年EV比率55%予測などについて報じた記事 (URL: https://www.reuters.com/article/world/japan-may-ban-sale-of-new-gasoline-powered-vehicles-in-mid-2030s-media-idUSKBN28D06Q/)

  • IEA World Energy Outlook 2024IEAによる国際エネルギー需給長期見通し。2030年代の石油需要ピークアウトと2050年原油価格<$60/b予測等を収録 (S&P Global要約記事: https://www.spglobal.com/commodity-insights/en/news-research/latest-news/crude-oil/101624-iea-sees-oil-supply-overhang-emerging-after-cutting-long-term-demand-projection)

  • EIA Annual Energy Outlook 2025米国エネルギー情報局の長期予測。2050年原油価格シナリオ:ハイケース$155/b, 参考ケース$91/b, ローケース$47/b を提示 (米EIA公式サイト: https://www.eia.gov/outlooks/aeo/

  • JETRO海外ニュース ビジネス短信「ホルムズ海峡の代替輸送は限定的、日本は原油を輸入し自動車を輸出」 (2025年6月) – ホルムズ海峡を通過する原油量(日量約2,000万バレル=世界需要の20%)等に関する解説記事 (URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/f7a6edd8106cc5ca.html)

  • クリーンエネルギー自動車総合情報サイト (CEV-PC)「ガソリン車から乗り換えて変わること」 – EVのコストメリットや走行コスト比較(ガソリン車100kmあたり約690円 vs EV約310円)、補助金情報等を紹介 (URL: https://www.cev-pc.or.jp/lp_clean/merit/)

  • SOLAR JOURNAL「NTTグループ、日産とEVを活用したV2B実証の結果を発表」 (2019年11月25日) – NTT西日本らによるオフィスビルでのV2B(EV3台+太陽光16.5kW)実証結果:ピーク電力14%カット等を報告 (URL: https://solarjournal.jp/information/32296/)

  • PR TIMESニュースリリース 東急不動産「TENOHA東松山で「太陽光発電」「EV」「V2X機器」を連動させたEMSシステム構築の実証実験を開始」 (2024年3月18日) – 太陽光+オムロン製マルチV2X+日産リーフによるピークカット・停電時給電などの実証開始に関するリリース (URL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000291.000006953.html)

  • 経済産業省 公式発表「災害時に電動車は非常用電源として使えます」 (2025年6月27日) – 経産省・国交省の共同発表。EV外部給電機能の紹介、能登半島地震でのEV給電実績、自治体とメーカーの協定推進、V2H補助金情報など (URL: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/cev/cev-utilize.html)

  • World Economic Forum (WEF)「How Japan is accelerating efforts towards a carbon-neutral society」 (2023年1月16日) – 日本の2050年カーボンニュートラル宣言と2030年46%削減目標、グリーン成長戦略などを紹介した記事 (URL: https://www.weforum.org/stories/2023/01/davos23-japan-accelerate-efforts-carbon-neutral-society/)

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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