地方自治体の脱炭素化を加速する2025-2030戦略 – 燃料費高騰・高齢化・エネルギー貧困…未言語化ニーズを構造解決

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

自治体 脱炭素 エネルギー 太陽光 蓄電池
自治体 脱炭素 エネルギー 太陽光 蓄電池

目次

燃料費高騰・高齢化・エネルギー貧困…未言語化ニーズを構造解決し地方都市の脱炭素化を加速する【2025-2030戦略】

30秒要約

東京に次ぐ脱炭素意欲を持ちながら成果が伸び悩む地方中核都市向けに、2025-2030年の戦略を提言。

住民・事業者の「未言語化されたバーニングニーズ」(燃料費高騰・高齢化・エネルギー貧困など)を出発点に、①革新的な再エネ導入手法の展開②地元工務店との共創スキーム③需要家とのマッチング支援④自己所有型導入による収益最大化モデル⑤BPO活用による施策の迅速実装—という5つの柱で構造的アプローチを提案。

エネルギー地産地消により年間数千億円の域外流出を防ぎ、地域経済を活性化しながらCO₂削減目標を加速達成する戦略を示します。

参考:経済効果の見える化による再生可能エネルギー普及加速戦略 | 東京都・川崎市・京都府など太陽光・蓄電池普及施策の鍵は経済効果の可視化 

はじめに:地方中核自治体の挑戦と機会

東京に次いで脱炭素に熱心な地方中核都市(例:中部・関西・九州エリアの主要市)でも、思うように成果が上がらず伸び悩むケースが見られます。2025年から2030年に向けて、こうした自治体が直面する課題を掘り下げ、構造的な解決策によって再エネ普及や脱炭素KPIの達成を加速させる戦略を検討します。

本記事では、地域の住民・事業者の未言語化された「バーニングニーズ」(心の奥底で燃えるような切実なニーズ)に光を当て、それらを満たすことで地域全体の脱炭素化を前進させる方策を提案します。

地方都市で脱炭素を進める意義は極めて大きく、エネルギーの地産地消は地域経済にも好影響をもたらします。例えば、日本全体では毎年約27兆円ものエネルギー代金が海外に流出しており、青森県だけでも年間約3,000億円が電気代として支払われその多くが化石燃料の輸入費用として域外・海外へ出て行っています。もしこのお金が地域に残せれば、地域経済は飛躍的に潤うでしょう。したがって、地方自治体による再生可能エネルギー導入の推進は、単なる環境施策に留まらず地域経済の活性化策でもあります。

本稿では、現状のボトルネックとなっている複数の課題を整理し、それらを同時に解決する革新的かつ現実的な戦略を提示します。

具体的には以下のポイントに焦点を当てます:

  • 地域で潜在化している燃料費高騰・高齢化・エネルギー貧困などの課題とその影響
  • 太陽光・蓄電池・EV等の再エネ導入を加速する革新的かつ実効性の高い手法
  • 地元工務店との共創による地域密着型の事業スキームと人材活用
  • 需要家(住民・企業)とのマッチング支援策による需要喚起と信頼醸成
  • PPA一辺倒ではない収益最大化モデルの構築による経済メリットの地元還元
  • BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用による自治体施策の迅速な実装

これらを組み合わせた政策提言型のアプローチにより、地域の未充足ニーズを満たしつつ、2030年に向けた脱炭素・再エネ普及のKPI(例えば再生可能エネルギー比率やCO₂排出削減量)の達成を加速させる道筋を描きます。

地域に潜む”未言語化バーニングニーズ”とは

まず、地方自治体が抱える主な課題(=住民や事業者の「燃えるようなニーズ」だが十分表面化していないもの)を整理します。これらの課題は相互に関連し、放置すれば脱炭素化のボトルネックになります。

  • 1. 燃料費・電力費の高騰による生活・経営圧迫: 近年のエネルギー価格上昇により、家庭も企業も光熱費負担が急増しています。例えば東京電力管内では、標準家庭の月額電気代が前年比24%増の8,565円(260kWh想定、2022年6月)に達しました。大手企業のみならずスーパー等の地域商店でも電気代増は価格転嫁を迫る深刻な問題です。この「化石燃料インフレ(Fossilflation)」とも呼ばれる状況は、地域経済から資金を流出させ住民の可処分所得を減らし、脱炭素投資の余力を奪っています。地方ほどエネルギー自給率が低く、脆弱性が高いため、燃料費高騰を構造的に緩和する策が求められます。

  • 2. 高齢化と住宅の老朽化: 多くの地方都市では高齢化率が高く、築年数の古い住宅が多い傾向にあります。断熱性能や設備効率が低い住宅に高齢者が暮らしているケースでは、冷暖房費がかさむ一方で収入は年金のみという状況も少なくありません。結果として「必要なエネルギーを十分使えない(夏の冷房や冬の暖房を控える)」といったエネルギー貧困状態に陥る懸念があります。高齢世帯は新技術の情報や導入サポートからも取り残されがちであり、この層への手当て(住宅の省エネ改修支援や分かりやすい導入スキーム)が不可欠です。

  • 3. エネルギー貧困と地域格差: 日本でも所得の低い世帯ほどエネルギー支出の負担割合が高く、「エネルギー貧困層」の存在がじわじわと問題化しつつあります。一般に、可処分所得に対するエネルギー費割合が10%を超えるとエネルギー貧困とされますが、地方の寒冷地や旧産炭地などではこの比率が高い地域が確認されています。エネルギー価格高騰やカーボンプライシングの導入によって、低所得世帯ほど相対的負担が増す逆進性が指摘されており、脱炭素政策の推進と同時に弱者保護策を講じなければ「気候正義」の観点で不公平が生じてしまいます。対策として、料金補助だけでなく再エネや省エネ技術による根本的な光熱費削減が求められています。

  • 4. 地元工務店の意欲と利益構造のミスマッチ: 地域の住宅建設・設備工事を担う地元工務店は、本来なら家庭向け脱炭素化(高断熱リフォーム、太陽光・蓄電池設置など)のキープレイヤーです。しかし現状では、こうしたグリーン改修・設備導入が工務店の主要ビジネスになりにくい構造があります。新築着工件数が減少する中、工務店も事業転換が必要ですが、高性能リフォームや再エネ設備の提案には専門知識が要り、初期投資の大きさから営業ハードルも高い。さらに、大手ハウスメーカーや外部のエネルギー企業が参入すると、利益が地域外に流出し地元企業の出番が限られるという懸念もあります。工務店側には「地域に貢献したい」という意欲があっても、それが利益につながる仕組みが不十分なため、結果的に再エネ普及の現場で十分活躍できていないのです。

  • 5. 自治体のリソース・知見不足: 多くの自治体で専門人材やノウハウの不足がボトルネックとなり、計画策定から事業実行までスピード感を欠いています。環境部門の職員は限られ、兼務や異動でせっかく蓄えた知見が継承されにくい問題もあります。また、最新技術やファイナンススキームに通じた人材は民間に多く、公的セクターでは調達が難しいケースも。結果として、「計画はあるが進まない」「国の補助金を取りこぼす」「企業との協働の持ち掛けに対応しきれない」といった機会損失が生じています。東京都など先進自治体との実行力の差を埋めるには、新たな連携やアウトソーシングの仕組みが必要です。

以上のような課題は、いずれも当事者が日常的に痛感しながらも十分声高に表明されていない「未言語化」ニーズといえます。しかし、これらを真正面から捉えて対策を講じることで、逆に脱炭素化推進の強力な原動力に変えることが可能です。次章以降では、2025-2030年に向けてこれら課題を構造的に解決し、地域の再エネ導入を加速する戦略を具体的に提案します。

戦略の全体像:未言語化ニーズを満たす5つの柱

地方自治体が地域の脱炭素・再エネ普及を加速させるには、上記課題に対応した包括的戦略が必要です。そこで本稿では、5つの戦略の柱を設けました。まずは全体像を整理します。

  1. 現実的かつ革新的な再エネ導入手法の展開
    – 燃料費高騰への構造的対策として、地域の再生可能エネルギー電源を最大限活用します。太陽光発電や蓄電池、風力、小水力、バイオマスなど地域資源に応じた多様な再エネ導入を図り、エネルギー自給率を高めます。特に自家消費型の太陽光発電地域内エネルギー融通の仕組みを促進し、外部から買うエネルギーを減らすことで、住民・事業者の光熱費負担を軽減します。また、停電時のレジリエンス向上など付加価値も提供しつつ、新技術(AIによる需給最適化制御など)も積極活用する「実現可能な範囲でのイノベーション」を追求します。

    参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 

    参考:国際航業、「自治体スマエネ補助金検索サービス」を提供開始 約2,000件の国や地方自治体の創・蓄・省エネ関連補助金を網羅 

  2. 地元工務店との共創スキーム
    – 地域の施工業者である工務店・設備業者と自治体・エネルギー企業が協働チームを組みます。住宅や事業所への再エネ・省エネ導入を地元企業が主体的に担えるよう、研修や情報共有、ビジネスモデル構築を自治体が支援します。工務店が再エネ提案で収益を上げ、雇用も維持できるモデルを作ることで、彼らのモチベーションと利益のミスマッチを解消します。具体的には、後述する「フリエネ」の事例のように、地域ぐるみのプロジェクトを立ち上げて地元工務店に新たな収益源を提供し、地域経済に好循環を生み出します。

    参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは? 

  3. 需要家とのマッチング支援と需要創出
    – 再エネ設備を導入したい(または光熱費に課題を感じる)住民・企業と、適切なソリューション提供者を橋渡しする仕組みを強化します。自治体主導でワンストップ相談窓口やオンラインマッチングプラットフォームを整備し、「興味はあるが何から始めていいか分からない」層の背中を押します。加えて、自治体Webサイト上に誰でも使える経済効果シミュレーションツールを埋め込んで提供し、ユーザー自身が太陽光や蓄電池導入のメリットを具体的に試算できるようにします。これにより漠然とした不安を解消し、潜在需要を顕在化させます。

    参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 

    参考:国際航業、「自治体スマエネ補助金検索サービス」を提供開始 約2,000件の国や地方自治体の創・蓄・省エネ関連補助金を網羅 

  4. PPA一辺倒ではない収益最大化モデルの構築
    – 従来、初期費用ゼロで導入できる第三者所有モデル(PPA)は普及に大きく貢献してきました。しかし、PPAでは利用者の経済メリットは初期費用ゼロの代償として限定的で、第三者事業者に利益が流れがちです。そこで、資金調達に余力のある需要家には自己所有型(自己投資型)の導入を促し、長期的な電気代削減メリットや税制優遇を享受してもらう方針に転換します。自己所有型はPPAより初期費用こそかかるものの、運用期間を通じた経済効果は格段に大きく、地域内に残る利益も増大します。自治体は融資制度や補助金情報提供、リスク低減策(後述のシミュレーション保証等)を組み合わせ、「出せる人は出してより得をする」仕組みを構築します。一方で初期投資が難しい層にはPPAやリースモデルも柔軟に併用し、裾野を広げつつ全体の収益率を底上げします。

    参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 

    参考:国際航業、「自治体スマエネ補助金検索サービス」を提供開始 約2,000件の国や地方自治体の創・蓄・省エネ関連補助金を網羅 

  5. BPO活用による自治体施策の迅速実装
    – 限られた自治体リソースを補完し、プロジェクトの速度と質を高めるために業務の外部委託・代行(BPO)を積極活用します。専門性の高い再エネ関連業務(例:太陽光プラン設計や経済効果シミュレーション、補助金申請サポート等)を、実績豊富な外部企業へアウトソーシングすることで、自治体職員は企画調整や意思決定に専念できます。すでに一部の自治体や企業向けに、再エネ導入提案業務を丸ごと代行するサービスも始まっており、提示資料によって需要家や提案企業の行動変容(自家消費型への転換等)が実際に促されたという報告もあります。BPOの活用によって、短期間(場合によっては数日)で地域の複数シナリオの診断レポートを作成・納品し、即座に普及施策に反映させることも可能になっています。このスピード感あるPDCAが、東京など先進都市との差を埋める鍵となります。

    参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは? 

以上の柱を相互に関連づけて推進することで、燃料費高騰からエネルギー貧困まで複合的な課題に対処しつつ、地域の脱炭素化を加速する「地に足の着いたイノベーション戦略」が実現できます。それでは、各戦略の詳細と具体策を順に見ていきましょう。

1. 現実的かつ革新的な再エネ導入手法の展開

地域の再エネ導入を拡大する第一の柱は、実効性の高い技術・手法を選択し集中展開することです。単なる理想論ではなく、現場で機能する再エネソリューションを導入します。

太陽光発電の自家消費モデル転換と屋根面積の活用

太陽光発電(PV)は多くの地域で導入可能性が高く、まず核となる技術です。今後はFIT(固定価格買取)に依存せず、自ら発電した電力を自ら消費する「自家消費型」へとシフトさせます。自治体は地域内の住宅・事業所・公共施設の屋根や遊休地のポテンシャル調査を行い、「使える屋根・土地は全て太陽電池に」くらいの勢いで設置を促進します。特に新築住宅については国の方針で2030年以降ZEH基準義務化(ネットゼロエネルギーハウス)が見込まれており、自治体独自にそれを前倒しして太陽光パネル設置の事実上の義務化や補助を実施することも検討できます。東京都も2025年度から戸建新築への太陽光設置を義務化する条例を制定しましたが、地方でも同様の施策で新築時から再エネ化を図ります。

既存住宅に対しては、共同購入スキームやエネルギーサービス会社(ESCO)事業を活用し、大量導入によるコスト引き下げと手離れの良いプランを提示します。例えば自治体が仲介して住民の屋根を一括募集し、地域の協同組合や信用金庫の融資と組み合わせたソーラープロジェクトを立ち上げます。これにより、個々の住民は低コストで太陽光を設置し、毎月の電気代削減分でローン返済できるモデルを実現します。「月々◯◯円の支払いで◯◯円の電気代節約」という明確なメリット提示は高齢者にも分かりやすく、導入の心理的ハードルを下げます。

参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~

蓄電池・EV・需要側調整によるエネルギーマネジメント

太陽光とセットで蓄電池(定置型バッテリー)EV(電気自動車)も積極導入し、再エネ電力の地内消化率を高めます。日中の余剰電力を蓄電池やEVに蓄えて夜間に活用することで、購入電力量をさらに減らし、電力系統への逆潮流を抑えて系統負担も軽減します。自治体は蓄電池やV2H(Vehicle-to-Home:EVから家への給電)の導入補助や利活用支援策を設け、家庭・事業所がバーチャルパワープラント(VPP)の一員となる仕組みを構築します。

例えば地域の配電網エリア単位で「○○市バーチャルパワープラントプロジェクト」を立ち上げ、参加者(太陽光+蓄電池所有者やEV所有者)に対して需給調整サービスへの協力インセンティブを提供します。これにより、ピークカットや非常時の電力確保を地域ぐるみで実現し、「再エネは不安定」という懸念を払拭します。

また、地元の新電力会社(地域電力小売事業者)と提携し、時間帯別料金メニューデマンドレスポンスを導入して需要側をコントロールします。AIを活用した最適制御システムで、天候予測に基づく蓄放電計画を自動実行することで、個々の需要家が意識せずともエネルギーコスト最小化と系統調整に貢献できるようにします。実際、先端的な事例ではAIによる蓄電池の充放電最適制御が実用化され始めています。「おまかせでお得」な仕組みを提供することで、高齢者世帯でも無理なく参加でき、地域全体でスマートエネルギー化を進めます。

小規模分散電源の開拓

太陽光以外の地域資源にも目を向け、多様な再エネ電源を開発します。風況の良い沿岸部や山間部では小型風力発電や中規模の風力発電所を誘致・開発します。自治体が主体となり地元企業や地権者と共同出資ファンドを組成して、利益を地域還元する形で進めると良いでしょう。山間部や農村部では小水力発電(用水路や河川を利用)やバイオマス熱電併給(製材廃材や間伐材、地域のバイオマス資源を活用)も検討します。これらは規模は小さくとも365日安定稼働しうるため、太陽光の出力変動を補完し地域のベース電源的な役割を果たします。特に地域冷暖房や産業用熱需要がある場合、バイオマスボイラーや地熱・温泉熱の利用も有効です。

ごみ処理施設のエネルギー利用も推進します。ごみ焼却の廃熱発電やメタン発酵ガス利用は既に各地で実績がありますが、未導入であれば早期に取り組むべきです。自治体が自ら管理するインフラから再エネを生み出し、公共施設で利用する「地産地消」のロールモデルを示します。

エネルギー地産地消と地域電力の活用

上記の分散電源を最大限活用するため、地域で発電された電気を地域で融通する地産地消スキームを確立します。一つの方法は、自治体や地元企業が出資する地域新電力会社を設立し、地域内の再エネ電源から調達した電力を地域の家庭・企業に販売する仕組みです。既に全国で数多くの自治体新電力が誕生していますが、単独では経営が難しいケースもあるため、近隣自治体との広域連携や、先述したVPP機能との組み合わせで収益性を高めます。地産電力メニューでは、市民が自分の街の太陽光や風力で作った電気を選んで購入できるようにし、付加価値サービス(環境ポイント、地元特産品との連携など)を提供します。

さらに一歩進めて、地域の電気代支出を地域内に循環させるモデルを構築します。前述の通り青森県で年間3,000億円が域外流出しているような構造は全国どこでも見られます。これを逆手に取り、「日本一電気代の安い街」を目指す挑戦も面白いでしょう。実際、岐阜県多治見市など東濃地域では、地元工務店と連携して電気の需給管理により電気代の安い町を目指す「フリエネ」というプロジェクトが開始されています。人口減少対策の一環として電気代を下げ定住促進につなげる狙いもあり、地域の脱炭素化と地域振興を両立する試みです。

このように再エネによる供給拡大と需要側管理を組み合わせれば、エネルギー価格高騰への耐性が高い街を実現できます。燃料費高騰という外的ショックに強い地域経済を築くことは、住民生活を守るセーフティネットにもなるのです。

参考:自治体間連携による再生可能エネルギー導入支援 |コンサルティング/ソリューション

2. 地元工務店との共創スキーム

次に、人材とプレイヤー戦略として重要な地元工務店(地域の建築・設備業者)との共創について詳述します。地域の脱炭素化を進める上で、工務店は住宅・建物分野の最前線にいる頼もしい存在です。このセクションでは、工務店の力を引き出しながら課題(意欲と収益のミスマッチ)を解消するスキームを提案します。

工務店を脱炭素ビジネスの主役に位置付ける

まず発想の転換として、「地域の脱炭素の主役は工務店である」との位置付けを明確にします。リアルで生々しい現場の工事やトラブルシューティングを知らない行政や大企業が旗を振るだけでなく、実際に家庭やオフィスで再エネ設備を設置したり断熱改修を行ったりするのは工務店だからです。地域密着の工務店ほど地元住民から信頼されており、そのネットワークを活かさない手はありません。

自治体は工務店を巻き込んだ協議会やプロジェクトチームを編成し、計画段階から意見を取り入れます。例えば「○○市ゼロカーボン協議会」に工務店代表を加え、現場目線の課題やアイデアを吸い上げます。これにより机上の空論ではない実効策が生まれ、工務店側も主体意識を持って取り組めます。

地場企業優遇のルール整備と高性能基準の設定

地域の工務店がビジネスチャンスを得やすくするため、自治体レベルでのルールメイキングも検討します。例えば住宅の省エネ改修補助や太陽光設置補助の要件に「地域業者を使うこと」を加味すれば、地元企業への発注が促進されます。

また、地域独自の住宅性能基準を国基準より厳しく設定することも一策です。鳥取県では全国に先駆けて地域版省エネ基準を設けましたが、これは地元工務店が優位になる市場を生む狙いもありました。高性能住宅(ZEHなど)を建てるには高度な施工技術が要るため、それが得意でない大手ハウスメーカーは参入しづらくなり、地元工務店が活躍しやすくなるというわけです。

自治体がこうした基準設定や認証制度(「地元工務店認定ゼロカーボン住宅」など)を通じて地場企業を実質的に優遇すれば、工務店は安心して脱炭素ビジネスに投資できます。

共創プロジェクト「地域版エネルギープロジェクト」の立ち上げ

具体的な共創の場として、自治体と工務店、および関連プレイヤーが参画する地域エネルギープロジェクトを立ち上げます。前述の「フリエネ」は好例で、岐阜県のエネファント社が地元6社の工務店と協業し20年契約のサービスとして展開しています。このプロジェクトでは工務店経由で住宅購入者に再エネ導入とエネルギー管理サービスを提供し、工務店には長期収入が生まれる仕組みです。結果として工務店の売上確保や雇用維持につながり、地域経済にも貢献しています。

同様に、自治体が音頭を取って「地域エネルギーまちづくり事業」を企画し、地元工務店・設備業者、有志の市民、金融機関、エネルギーベンチャー等とコンソーシアムを組みます。例えば「○○市スマートエネルギー住宅プロジェクト」と銘打ち、新築・リフォーム時に太陽光+高断熱+蓄電池+EV充電設備をワンセットで導入するようなパッケージを作ります。

工務店は住宅施工を担い、エネルギーベンチャーはエネルギー管理システムを提供、金融機関が低利ローンを用意し、自治体が補助金と広報を行う、といった役割分担です。成果に応じた成功報酬設定し、関係者全員がメリットを享受できるようにします。

工務店への教育研修・デジタルツール提供

工務店が最新の脱炭素ソリューションを提案・施工できるよう、人材育成とツール提供も不可欠です。自治体主催や商工会議所協力で研修会を開き、太陽光発電システムの設計や蓄電池・EVの基礎、補助金制度の知識などを共有します。また営業面では、工務店のスタッフが経済効果を正確にシミュレーションして顧客に説明できるように支援します。

ある調査では、太陽光や蓄電池を販売する営業担当者の多くが電気代計算を苦手としており、それが適切な提案を妨げていると報告されています。そこで誰でも簡単に使える経済効果シミュレーションツールを工務店に導入してもらい、見積提案時に活用してもらいます。例えば、タブレットやPCで顧客の電力使用状況を入力すれば光熱費削減額が瞬時に表示されるようなエネがえるASPエネがえるEV・V2Hのようなツールです。これにより営業担当者は自信を持って提案でき、顧客もメリットを直感的に理解できます。

さらに、これらのツールを自治体の公式ウェブサイトにも公開し、住民自ら試算できるようにします。「見てごらん、太陽光を付けると15年で◯◯万円お得になるってと家族内で話題になればしめたものですさらに希望者には専門家が訪問して結果内容を説明し、疑問点に答えるサービスも提供します。ここで次章で述べるシミュレーション結果の保証制度に触れ、「この結果は保証付きです。もし想定より発電しなければ補償されます」と伝えれば、なお一層安心してもらえるでしょう。

参考:工務店の太陽光・蓄電池販売戦略 

地元工務店+自治体+外部企業の三位一体モデル

工務店と自治体だけで抱え込まず、技術を持つ外部企業との連携も図ります。地域にはノウハウが乏しい分野(たとえばAI制御や高度なエネルギーデータ分析)は、スタートアップや大手メーカーと協業するのが近道です。工務店とデジタル企業が協力して「住宅のエネルギーデータ管理プラットフォーム」を構築したり、IoTセンサーを活用したエネルギー診断サービスを提供したりすることも可能でしょう。

要は、地元工務店をハブとして多様なリソースを結集することがポイントです。工務店は現地施工と顧客対応に強みを持ち、自治体は調整役と信用付与、外部企業は技術・資金を提供する――それぞれの長所を活かした三位一体モデルで、地域のエネルギー転換を推し進めます。このモデルにより、工務店のビジネスが拡大し若者の就職先としても魅力が増せば、地域の雇用創出・人材循環にも寄与する好循環が生まれます。

3. 需要家とのマッチング支援と需要創出

第三の柱は、エネルギーの需要側(=エンドユーザー)に焦点を当てた戦略です。どんなに良い技術や制度があっても、実際に使ってもらわなければ脱炭素は進みません。そこで、地域の住民や事業者の「導入したい」を喚起し、実行につなげるためのマッチング支援策を講じます。

参考:太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーション保証で普及加速!安心・信頼のマッチングプラットフォーム構想 

ワンストップ相談窓口とアウトリーチ

自治体内にエネルギー相談のワンストップ窓口を設置します。専門の相談員やエネルギーアドバイザーを配置し、太陽光・蓄電池・EV・省エネ改修などあらゆる相談に応じます。ここで重要なのは「待ち」の姿勢ではなく、積極的なアウトリーチです。高齢者世帯や中小企業など、自ら情報収集しにくい層に対しては、市役所職員や地域の民生委員、工務店OBなどが連携して訪問ヒアリングを行います。「光熱費でお困りではありませんか?」「屋根貸しやってみませんか?」などニーズを引き出し、適切なソリューションを提案します。自治体自ら訪問することで住民の安心感も高まります。

参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは?

オンラインマッチングプラットフォーム

デジタル技術も活用し、オンライン上のマッチングプラットフォームを構築します。例えば自治体公式サイトに「エネルギー設備マッチングページ」を作成し、導入希望者と施工業者・金融機関等の情報を集約します。住民や企業は簡単なフォームに自宅・施設の情報や希望を書き込むと、登録された地元施工業者から提案を受け取れる仕組みです。見積比較サイトの公的版のようなイメージですが、自治体のお墨付きにより信頼性が担保され、悪質業者は排除されます。さらに、蓄積したデータを解析して潜在需要の所在を把握することもできます。例えば「◯◯地区で太陽光関心が高いが資金面で足踏み」という傾向が見えれば、その地区向けの説明会や金融支援策を検討する、といったターゲティングが可能になります。

参考:太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーション保証で普及加速!安心・信頼のマッチングプラットフォーム構想 

経済効果シミュレーションの提供と普及

需要創出には、「導入すると具体的にこれだけ得する」という見える化が極めて効果的です。そこで、自治体は経済効果シミュレーションツールを地域住民・企業に広く提供します。前述のようにウェブサイト上で誰でも使えるシミュレーションを公開するほか、希望者には詳細な個別シミュレーションレポートを作成して提供します。近年では、入力項目に沿って電気代プランや設備仕様を入れるだけで、太陽光+蓄電池導入のライフサイクルコストやCO₂削減効果が瞬時に計算されるクラウドサービスも登場しています。自治体はそうしたツールのAPIを活用し、自前で高機能なシミュレーション環境を整えなくとも、既存サービスを住民向けに展開できます。実際、国際航業が提供するクラウドシミュレーター「エネがえるAPI」は複数の地方公共団体のウェブサイトで導入が進んでおり、自治体独自の試算ニーズにも応えられる柔軟性を持っています。

シミュレーション結果は紙のレポートやPDFとして出力し、希望者には郵送することも検討します。デジタルに馴染みのない高齢者には紙媒体が有効です。見てごらん、太陽光を付けると15年で◯◯万円お得になるってと家族内で話題になればしめたものです。さらに希望者には専門家が訪問して結果内容を説明し、疑問点に答えるサービスも提供します。ここで次章で述べるシミュレーション結果の保証制度に触れ、「この結果は保証付きです。もし想定より発電しなければ補償されます」と伝えれば、なお一層安心してもらえるでしょう。

参考:再エネ導入の加速を支援する「エネがえるAPI」をアップデート 住宅から産業用まで太陽光・蓄電池・EV・V2Hや補助金を網羅 ~大手新電力、EV充電器メーカー、産業用太陽光・蓄電池メーカー、商社が続々導入~ 

参考:エネがえる 太陽光発電量を基準とした経済効果シミュレーション保証サービス(オプション)

参考:「自治体スマエネ補助金データAPIサービス」を提供開始 ~約2,000件に及ぶ補助金情報活用のDXを推進し、開発工数削減とシステム連携を強化~ 

需要家コミュニティの形成と情報共有

需要側の裾野を広げるために、エネルギーに関心のある市民コミュニティを育成します。例えば太陽光発電を設置済みの家庭やEVユーザーが集まる「○○市エネルギーの会」を支援し、導入事例や生の声を共有してもらいます。まだ導入していない人にとって、近所の○○さんが「うちはパネル付けてから電気代半分になったよ」と話すことほど説得力があるものはありません。自治体はコミュニティの活動に補助金を出したり、会合に職員を派遣して最新情報を提供したりします。また、学校やPTAとも連携し次世代への教育・啓発にも注力します。小中学校で再エネの出前授業を行い、子供から親へ省エネ・再エネの話題が伝わるようにゲーム形式で脱炭素や再エネの重要性を学べるボードゲームなどの活用も有効となるでしょう。

このようにトップダウンとボトムアップの両面から需要家との接点を作り、「知りたい・やってみたい・紹介してほしい」という潜在ニーズを受け止めて具体的なアクションへつなげていきます。自治体が潤滑油や橋渡し役となることで、放っておけばマッチしなかった供給側ソリューションと需要側ニーズが結びつき、着実な普及実績に結実していくのです。

参考:国際航業「ボードゲームdeカーボンニュートラル」を使った脱炭素研修サービスを開始

4. PPA一辺倒ではない収益最大化モデルの構築

第四の柱では、事業収益モデルの最適化について掘り下げます。脱炭素施策を持続可能にするには、関わる全ての主体に経済的メリットが行き渡る必要があります。ここでは特に再エネ導入に際しての費用負担と利益配分のモデルを見直し、地域内の粗利(グロスプロフィット)を最大化する戦略を考えます。

自己資金投資 vs. PPAモデルの選択

再エネ設備導入の代表的なビジネススキームであるオンサイトPPAモデル(第三者所有による0円設置)は、資金負担ゼロ・運用保守任せられるメリットがあり、日本でも企業や自治体で広がっています。一方で前述の通り、PPA利用者の享受できる電気料金削減効果は自己所有に比べ小さいのが通例です。ある比較では「経済効果を重視するなら自己所有、初期費用ゼロを重視するならPPA」と評されています。そこで自治体としては、利用者の状況に応じたモデル選択を適切にガイドすることが重要です。

具体的には、十分な資金調達力や与信を持つ需要家(例:大企業、本社機能、市内の富裕層世帯など)には自己資金投資による導入を基本とします。これに対し、中小企業や資金余力の乏しい一般世帯にはPPAモデルも選択肢として提示し、「自己資金型とPPA型の徹底比較」資料を用意してメリット・デメリットを分かりやすく説明します。ポイントは、全体として地域内に残る利益を極大化する視点です。自己資金型で浮いた電気代は全額利用者の利益となり、それは地域経済に再投資される可能性があります。一方PPAでは一部が外部事業者の利益となり流出します。もちろん、外部事業者も地元企業であれば利益は地元に落ちますが、多くの場合は大手資本です。したがって、地元でまかなえる資本は地元で出し、地元で利益回収するという原則で取り組むと、長期的に見て地域全体の経済効果が高まります。

金融支援とリスクヘッジ策

自己資金型を促進するために、自治体は金融面・リスク面での支援策を用意します。一つは低利融資・信用保証です。自治体が地元金融機関と協定を結び、太陽光や省エネ設備導入向けの低金利ローンを提供します。元利金の一部補助や信用保証協会との連携で無担保融資枠を拡大するなど、資金調達ハードルを下げます。また、補助金情報の提供と申請サポートもセットで行い、国や県の補助を確実に活用できるようにします。資金計画上、補助金適用後の正味コストで判断できれば、自己投資に踏み切りやすくなります。

もう一つはスクヘッジ(不確実性の低減)です。再エネ設備導入における主な不安要素は、「期待した発電量・省エネ効果が得られなかったらどうしよう」という点です。これに対して近年登場したのが経済効果シミュレーション結果の保証という仕組みです。例えば、事前シミュレーションに基づき太陽光発電を設置した場合に、万一設備トラブル等で実発電量が保証発電量を下回った場合、損失を補填するサービスがあります。これは保険のようなもので、年間発電量を基準として不足分を金銭補償するものです。自治体はこうした保証付きサービスを地域向けに斡旋し、利用者の投資不安を取り除きます。**「この発電量は保証されています」**と約束できれば、企業の経営層や自治体内部の決裁者にとっても採択の強力な後押し材料となります。実際、「エネがえる経済効果シミュレーション保証」のような保証オプション付きのシミュレーション提示は、投資承認のハードルを下げる効果があると報告されています。

参考:地方自治体が地域の家庭に太陽光と電気自動車または蓄電池を普及させる具体的な戦略と施策 

参考:【自治体に調査】82.4%が、再生可能エネルギーの施策を行う中で「市民からの理解が得られていない」と実感 「経済的負担」や「経済効果の不透明さ」に課題の声〜80.4%が、太陽光・蓄電池導入の際、経済効果シミュレーション結果を保証する制度があれば「スムーズに普及する」と期待〜 

非FIT・自家消費ビジネスでの収益確保策

再エネ事業者側(供給側)にとっても、FITに頼らない新たな収益モデルを構築する必要があります。地域の需要家に直接売電する自己託送モデルや、地域新電力を通じたプレミアム価格販売など、複線的な収入源を設けます。自治体はこれらの調整をサポートし、例えば送配電事業者との交渉や託送料金の優遇措置(地域マイクログリッドの活用等)に働きかけます。また、環境価値(非化石証書やJクレジット)の活用も収益拡大に重要です。地元で生まれた再エネ電力の環境価値を見える化し、市内の企業のRE100対応に提供する、あるいはカーボンオフセット商品の形で市民に販売するといった施策で追加収入を得ます。

さらに、需要側への付加サービスで収益機会を増やします。例えば太陽光+蓄電池を導入した家庭向けに、エネルギー見守りサービス(月額課金)や余剰電力のポイント還元サービスを提供すれば、小口ながら継続的な収益となります。電力プラットフォームに蓄積したデータを分析し、省エネアドバイスを有料コンサルする事業も考えられます。要は、一度顧客と繋がったら継続課金型のサービスをいくつか組み合わせて提供し、単発の設備売り切りで終わらせないモデルに転換します。工務店なども、設備保証や定期メンテナンス契約で長期収入を得ることができます。PPAに代わる収益確保策として、「小さく産んで長く稼ぐ」発想を地域全体で共有し、新ビジネスに挑戦することが重要です。

地域経済への波及効果の最大化

収益最大化モデルの究極の目的は、地域内経済の厚みを増すことです。需要家が光熱費削減で浮かせたお金は他の消費に回り、事業者がエネルギー事業で得た利益は地元で再投資され、新たな雇用や産業を生む――そうした好循環が理想です。最初に触れたように、日本全体で見ればエネルギー費の地域外流出額は莫大です。これをどれだけ引き留めて地域内循環させられるかが勝負です。自治体は毎年、地域から流出したエネルギーコストを試算し、公表して問題提起するとともに、その削減目標を掲げます。例えば「2030年までにエネルギー地産地消率を50%に引き上げ、域外流出額○○億円を削減」といったKPIです。これを軸に据えれば、PPAを含めたあらゆる事業スキームの評価も「地域経済への貢献度」で測れるようになります。収益モデルの工夫は単なる儲け話ではなく、地域づくりそのものだという共通認識を持つことが大切です。

5. BPO活用による自治体施策の迅速実装

最後の柱は、自治体内部の実行力強化策です。計画を作り施策を設計しても、それを実現する実務リソースが不足していては宝の持ち腐れになりかねません。そこでBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の力を借りて、施策の遂行スピードと品質を飛躍的に高めます。

参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは? 

なぜ自治体にBPOが必要か

地方自治体の職員数や専門スキルには限りがあります。脱炭素分野は技術革新が速く専門知識も高度化しており、全てを内製で賄うのは非現実的です。さらに、短期間に多くの案件を処理したり住民対応したりするにはマンパワー不足が深刻です。BPOは従来、コールセンター業務や庶務の外注といった文脈で語られることが多かったですが、近年ではコンサルティング的な高度業務までアウトソーシングするケースが増えています。再エネ・省エネ施策も然りで、「提案書作成代行」「シミュレーション代行」「補助金書類作成代行」などのサービスが既に存在します。自治体職員がゼロからエクセルを叩いていた作業を、専門企業に依頼すれば短時間で高精度に片付けてくれるのです。

例えば、某官公庁では地域の住宅・事業所のモデルケース30パターンについて、太陽光+蓄電池導入時の経済効果を全部シミュレーションして比較表にまとめるというプロジェクトがありました。自前ではとても間に合わないところ、「エネがえるBPO」サービスに依頼したところ数日で診断レポート一式を納品してもらえ、地域の自治体・事業者向け説明会で活用できたそうです。今後はさらなる補助事業の消化率アップに繋げていくシナリオが見えているようです。このように、BPOは時間との戦いを制し、なおかつ専門性の高い成果物を得る手段として有効なのです。

参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは? 

参考:太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーション保証で普及加速!安心・信頼のマッチングプラットフォーム構想 BPOでアウトソースすべき業務

では、具体的にどのような業務をBPOに出すと良いでしょうか。いくつか例を挙げます。

  • シミュレーション・データ分析業務: 太陽光発電や蓄電池の経済効果シミュレーション、地域のCO₂排出量算定、需要予測モデル作成など。高度なエネルギーデータ解析はツールと知見を持つ専門企業に任せたほうが効率的です。BPO企業は数千種類の電力料金プラン情報や数千件の自治体補助金データを保有しているケースもあり、それらを駆使した分析レポートを提供できます。

  • 設計・施工計画支援: 再エネ設備の設置レイアウト設計、収支シミュレーション付きの事業計画書作成など。自治体自らが公共施設への太陽光設置計画を立てる際にも、BPOで詳細設計から利回り計算までパッケージで依頼できます。専門家チームが対応することで見落としが減り、民間事業者との調整もスムーズになります。

  • 補助金・契約事務: 国や県の補助金申請書類の作成支援、交付申請・実績報告の代行、事業者との契約書ドラフト作成など。煩雑な事務作業はアウトソースしてしまい、職員は企画立案とチェックに集中します。

広報・啓発支援

広報・啓発支援も重要なBPO対象業務です。再エネ施策の住民向けパンフレット作成やWebコンテンツ制作、説明会やワークショップの運営支援なども、専門の会社に委ねてクオリティ向上と負担軽減を図ります。エネルギー分野に特化した専門的なコンテンツ制作や分かりやすい解説資料などは、専門家の視点からより効果的に作成できるため、自治体施策の市民理解を高めるのに役立ちます。

このように、専門性が高いもの・定型反復的なものは積極的にBPOに任せます。一方で、条例制定や合意形成といった官の権限や調整力が必要なものは職員が担います。この住み分けをすることで、全体として施策実行の処理能力が上がり、停滞していた案件も前に進むようになります。

信頼できるパートナー選定と体制づくり

BPOの効果を最大化するには、信頼できるパートナー企業を選定し、継続的な協力関係を築くことが大切です。価格競争だけでなく実績や専門人材の質で評価し、単発ではなく包括的な業務委託契約を結ぶことも検討します。例えば「脱炭素施策推進包括BPO契約」として、一定期間内の様々な依頼に対応してもらえる柔軟な枠組みにしておけば、イレギュラーな相談にも乗ってもらいやすくなります。情報漏洩や公平性への配慮も必要ですが、官民連携として適切にマネジメントすれば問題ありません。

参考:太陽光・蓄電池 設計代行・経済効果試算代行・教育研修代行「エネがえるBPO」とは? 

また、BPO企業のスタッフと自治体職員が一体となってチームを組む感覚も重要です。定例ミーティングやチャットツールで密にやり取りし、進捗管理やフィードバックを双方向に行います。BPO側から施策提案や最新事例の情報提供を受けるくらいの関係性になれば理想的です。いわば「自治体の外部ブレーン兼作業部隊」として機能してもらうイメージです。

こうした体制が整えば、自治体は限られた職員数でも次々と新施策を打ち出し、迅速に事業化していけます。結果として東京など先進自治体に匹敵するスピードで脱炭素化を進めることが可能となり、国のモデルケースに選ばれるような成功事例を創出することも夢ではありません。

参考:日本における太陽光発電システム普及のための政策提言 

参考:日本の蓄電池普及率を高めるための政策提言 

参考:経済効果の見える化による再生可能エネルギー普及加速戦略 | 東京都・川崎市・京都府など太陽光・蓄電池普及施策の鍵は経済効果の可視化 

おわりに:構造的アプローチによる加速と共同プロジェクトへの展望

以上、燃料費高騰・高齢化・エネルギー貧困といった未言語化されたニーズを出発点に、地方自治体が2025年から2030年にかけて脱炭素・再エネ普及を加速させるための戦略を5つの柱に沿って提案しました。これらの施策群は、それぞれが個別に効果を発揮するだけでなく、相乗効果によって地域のエネルギー転換を大きく前進させる構造的アプローチです。

本戦略の特徴は、技術・人・資金・制度のあらゆる面で「あるものを最大限に活かす」点にあります。地域に眠る屋根や人的ネットワーク、既存サービスのAPIやBPOリソースまで動員し、足りない部分は外部と連携することで補っています。まさに持続可能な形でのイノベーションと言えるでしょう。

最後に、本稿で述べた方策を具体化するには、自治体単独ではなく産官学の共同プロジェクトとして展開することが効果的です。幸いなことに、世の中には既に本稿で触れたような各種ソリューション(「エネがえるAPI」経済効果シミュレーションツールや「エネがえるBPO」サービス、「エネがえる経済効果シミュレーション保証」等)が存在し、数多くの実績を積んでいます。それらの提供企業や専門機関とパートナーシップを結び、自治体のフィールドで実証・実装を進めれば、成功の確度は飛躍的に高まります。自治体は課題を提示しコーディネート役を担い、民間企業は技術とノウハウを提供し、工務店など地元プレイヤーは現場を動かす――そんなオール○○市(自治体名)体制で挑めば、きっと脱炭素先進地域への道が拓けるはずです。

私たちは今、大きな転換期に立っています。気候変動対策の観点からも地域経済持続の観点からも、待ったなしの行動が求められます。未言語化のニーズに耳を澄まし、それを起点に据えて構造的に解決策を設計することができれば、停滞感を打ち破り一気に前へ進むことが可能です。東京に次ぐ情熱を持つ地方都市が、この戦略をもとに独自のイノベーションを起こし、全国のモデルケースとなることを期待しています。その成功は、他の自治体へ横展開できる貴重な知見となり、日本全体の脱炭素化を力強く牽引するでしょう。

地方発のエネルギー革命で、地域も地球も豊かにする――そんな未来を実現するために、共に知恵と力を結集していきましょう。地域住民・事業者・行政が一丸となった挑戦が、必ずや次代のスタンダードを創り出すに違いありません。

参考文献・情報源

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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