太陽光発電の垂直積雪量とは?積雪荷重・構造設計・発電量試算の確認手順

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループ。再エネ設備導入効果シミュレーター「エネがえる」(ASP、Biz、EV・V2H、API、BPO)の事業開発を担当。太陽光、蓄電池、オール電化、EV・V2H、電力料金、補助金、再エネ設備の経済効果シミュレーションを専門領域とし、サービス企画、顧客提案、マーケティング、パートナー連携を横断して推進しています。エネがえるは国内700社以上で導入され、年間15万件以上の診断に利用されています。取材、登壇、協業、サービスに関するお問い合わせは、エネがえる公式お問い合わせページからお願いします。

ZEBとは?ネット・ゼロ・エネルギー・ビルのイメージ
ZEBとは?ネット・ゼロ・エネルギー・ビルのイメージ

更新日:2026年9月1日

太陽光発電の設計で使う「垂直積雪量」は、発電量の低下率そのものではありません。建物や太陽電池アレイに作用する積雪荷重を検討するための地域条件です。構造安全性の確認と、パネルが雪に覆われることによる発電量ロスの見積もりは、分けて行う必要があります。

先に結論:案件住所を特定し、特定行政庁が定める垂直積雪量を確認したうえで、建物・屋根・架台・取付部を構造設計者やメーカーと照合します。経済効果はその確認とは別に、長時間の積雪被覆を追加シナリオとして試算してください。

安全上の注意

本記事は確認項目を整理するもので、構造計算書や設計判断の代わりにはなりません。垂直積雪量だけで設置可否を決めたり、一般的なウェブ上の一覧値だけで荷重を確定したりせず、案件ごとの法令・条例・告示、設計図書、現況、製品仕様を有資格者・専門事業者に確認してください。

垂直積雪量とは

垂直積雪量は、建築物の積雪荷重を算定するときに使う基礎条件です。建築基準法施行令第86条では、積雪荷重を、積雪の単位荷重、屋根の水平投影面積、地方における垂直積雪量などに基づいて扱います。

ただし、実務で使う数値は全国一律ではありません。特定行政庁が、区域の標高、気象、地形などを踏まえて定めています。同じ市町村内でも標高や区域指定で条件が異なる可能性があるため、住所を確定して所管行政庁の条例・規則・告示を確認することが出発点です。

また、垂直積雪量は「現在屋根に積もっている雪の深さ」や「パネル上の積雪深」と同義ではなく、その数値から年間発電量の低下率を直接求めることもできません。

混同しやすい2つの判断

判断 主な問い 主な確認先・入力 成果物
構造安全性 雪の荷重に建物・架台・取付部が耐えられるか 特定行政庁、構造設計者、架台・モジュール・屋根メーカー、設計図書、現地調査 構造計算・仕様適合・設置可否と条件
発電量・経済性 雪で発電できない時間や期間がどれくらいあるか 日射量・気象データ、パネル角度と高さ、現地の積雪被覆実績、除雪・保守方針 基準ケースと積雪ロス感度ケース

一方が良好でも、もう一方が自動的に満たされるわけではありません。たとえば構造上設置できても、雪の滑落先や保守動線が確保できなければ運用上の問題が残ります。逆に、冬季発電量を保守的に見積もっても、それは架台や屋根の安全性を証明しません。

構造設計で確認する順番

1.案件住所と所管行政庁を確定する

都道府県名や最寄り観測地点だけでは不十分です。町丁目・地番、標高、用途地域などを整理し、建築確認を所管する行政庁に、適用する垂直積雪量、多雪区域の指定、関連する条例・規則・告示を確認します。行政庁への照会記録や参照資料の版も案件ファイルに残します。

2.建物と屋根の既存条件を確認する

屋根上設置では、太陽電池アレイ単体だけでなく、既存建物の構造、屋根材・下地、劣化や腐食、過去の改修、取付部、残存耐力を確認します。設計図書がない、用途変更や増改築がある、劣化が疑われるといった場合は、現地調査を含む専門判断が必要です。

3.アレイ・架台・基礎・接合部を一体で確認する

JIS C 8955:2017は、太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法を定めています。2026年3月にも日本電機工業会(JEMA)から補足資料が公表されており、規格名や表の一部だけを拾うのではなく、現行規格、補足資料、メーカーの適用条件を一式で確認する必要があります。

地上設置では、架台だけでなく基礎、地盤、接合部、腐食、防護・排水も検討対象です。NEDOの地上設置型ガイドラインには積雪荷重算定の技術資料がありますが、掲載された一般・強風・多雪の設計例は、すべての案件にそのまま当てはめられる万能仕様ではありません。

4.偏り・吹きだまり・滑雪と維持管理を確認する

雪は常に均一に載るとは限りません。屋根形状、段差、風、隣接建物、パネル配置により偏りや吹きだまりが生じる可能性があります。落雪範囲、雪止め、軒先・通路・設備への影響、排水、除雪方法、作業員の安全、緊急時対応まで設計条件に含めます。

「垂直積雪量○cmなら設置可能」と一律に言えない理由

設置可否は、垂直積雪量だけでは決まりません。積雪の単位荷重、屋根形状、建物と架台の構造、支持点、材料、基礎・地盤、風荷重・地震荷重、製品の適用範囲、施工方法などが関係します。そのため、「一定の積雪量を超えた地域はすべて同じ区分」「ある深さを超えたら屋根上設置は一律に不可能」といった全国共通の境界として扱うのは適切ではありません。

制度や補助事業が独自に「多雪地域」を定義する場合もありますが、その定義は当該制度の対象判定用です。構造設計に使う法令上の条件と混同しないでください。

発電量シミュレーションで積雪をどう扱うか

NEDOは、時刻別日射量データベースMETPV-20を公開しています。エネがえるの太陽光発電量推計でもMETPV-20を参照し、地域性や短時間の降雪の影響を含む日射量データを基に計算します。

一方、エネがえるのFAQでは、パネル全体が長時間雪に覆われて発電が止まる影響は標準の推計に含まれないと明記しています。地上積雪深と、傾斜したパネル上の積雪被覆時間は同じではなく、角度、最低地上高、滑雪、雪の再堆積、除雪、設備仕様によって変わるためです。

積雪地域では複数シナリオを比較する

  • 基準ケース:標準の日射量・需要・料金条件で試算する
  • 積雪ロスケース:現地実績や専門シミュレーター、メーカー資料に基づき、長時間の積雪被覆を補正する
  • 保守ケース:除雪費、点検費、停止期間、アクセス制限など運用条件を反映する

補正率を一律に決めるのではなく、根拠、対象月、対象時間、データ期間、誰が承認したかを記録します。エネがえるBizでは、積雪などを考慮した別シミュレーターの時系列データをCSVで取り込む方法もFAQで案内しています。

シミュレーション結果は、入力条件に基づく推計です。構造安全性の保証や、無条件の年間発電量保証ではありません。保証サービスを検討する場合も、対象、免責、申込期限、保証期間などの最新条件を個別に確認してください。

案件開始時の確認チェックリスト

  • 案件住所、地番、標高、所管する特定行政庁
  • 垂直積雪量、多雪区域、適用条例・規則・告示と確認日
  • 積雪の単位荷重、屋根形状係数など構造設計に必要な条件
  • 建物の構造図、屋根伏図、構造計算書、確認済証・検査済証の有無
  • 屋根材・下地・防水・劣化・腐食・改修履歴
  • モジュール、架台、金具、基礎、接合部の製品仕様と適用範囲
  • パネル角度、最低地上高、列間隔、偏雪・吹きだまり・滑雪の検討
  • 落雪先、通路、非常口、隣地、車両、室外機などへの影響
  • 除雪・点検・補修の方法、作業者の安全、費用、停止条件
  • 基準・積雪ロス・保守の各シナリオと、補正根拠・承認者

社内の役割分担

担当 主な役割
営業・企画 住所、需要データ、料金条件、顧客要件を収集し、未確認事項を明示する
設計・施工 法令条件、現地条件、建物・架台・取付部の安全性と施工条件を確認する
メーカー 製品の荷重条件、適用範囲、施工要領、保証条件を提示する
構造設計者等 案件固有の条件に基づき、構造上の成立性を判断する
顧客・運用者 積雪時の運用、除雪、立入制限、保守費用とリスク許容度を決める

よくある質問

垂直積雪量はどこで調べられますか?

案件を所管する特定行政庁の条例・規則・告示や案内ページで確認します。自治体名だけで判断せず、住所・標高・区域を伝えて照会してください。

JIS C 8955:2017に沿えば、建物も安全だと判断できますか?

それだけでは判断できません。同規格は太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法を扱います。既存建物、屋根、基礎、接合部、施工状態など案件全体の確認が別途必要です。

METPV-20を使えば、積雪ロスはすべて入りますか?

いいえ。エネがえるFAQでは、短時間の降雪の影響は参照データに含まれる一方、長時間の積雪でパネルが覆われて発電が止まる影響は標準推計に含まれないとしています。必要に応じて別シナリオで補正します。

垂直積雪量が大きい地域では太陽光発電を諦めるべきですか?

数値だけで一律に結論づけることはできません。安全に成立する設計、保守・落雪条件、冬季ロスを含む経済性を案件ごとに評価して判断します。

関連サービス

一次情報・参考資料

法令・規格・サービス仕様は改定される場合があります。上記は2026年9月1日に確認した情報です。実案件では必ず最新の原文と所管行政庁・専門家の判断を確認してください。

記事の内容を、自社案件の数字で確認

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国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループ。再エネ設備導入効果シミュレーター「エネがえる」(ASP、Biz、EV・V2H、API、BPO)の事業開発を担当。太陽光、蓄電池、オール電化、EV・V2H、電力料金、補助金、再エネ設備の経済効果シミュレーションを専門領域とし、サービス企画、顧客提案、マーケティング、パートナー連携を横断して推進しています。エネがえるは国内700社以上で導入され、年間15万件以上の診断に利用されています。取材、登壇、協業、サービスに関するお問い合わせは、エネがえる公式お問い合わせページからお願いします。

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