卒FIT後の最適解は、全家庭で一律に「売る」または「蓄電池を入れる」と決まるものではありません。まず現在の余剰売電量と時間帯別の消費量を確認し、売電を続けた場合の収入と、余剰電力を自家消費へ移した場合に避けられる買電費を同じ条件で比較します。蓄電池やV2Hの容量は、その差額だけでなく、実効容量、充放電ロス、停電時に残したい容量、補助金適用後の自己負担まで含めて決めるのが安全です。
更新・制度確認日:2026年8月22日。買取プランと補助金は対象地域、設備、申請時期で変わるため、契約・発注前にリンク先の公式情報を再確認してください。
目次
卒FIT後に選べる3つの方針
10kW未満の住宅用太陽光は、FITの固定価格での買取期間が10年です。期間が満了しても太陽光発電そのものが止まるわけではなく、買取事業者との契約により余剰電力を売ることもできます。最初に比較したいのは次の3案です。
| 方針 | 向いている条件 | 先に確認する数値 |
|---|---|---|
| 現状設備で売電を継続 | 追加投資を抑えたい、昼間の余剰が少ない | 買取単価、年間余剰売電量、PCS等の保守費 |
| 運用変更で自家消費を増やす | 昼間に給湯・家事・EV充電を移せる | 時間帯別消費量、余剰発電量、料金プラン |
| 蓄電池・V2Hを追加 | 夕方・夜間の買電が多い、停電対策も重視する | 移行可能電力量、実効容量、出力、自己負担額 |
設備を買う前に、費用ゼロまたは小さい「契約先の確認」「家電や給湯の昼間シフト」「EV充電時間の変更」を先に試すと、必要容量を過大に見積もるリスクを減らせます。
卒FITの売電単価は契約先ごとに確認する
資源エネルギー庁は、住宅用太陽光のFIT買取期間満了後も発電を続けられることと、売電または自家消費という選択肢を案内しています。卒FIT後の買取単価はFITの調達価格ではなく、各買取事業者のプランと条件で決まります。
例として、東京電力エナジーパートナーの「再エネ買取標準プラン」は、確認時点で発電設備10kW未満の買取単価を8.50円/kWh(税込)と案内しています。これは同社の対象エリア・契約条件における例であり、全国共通単価ではありません。自宅の買取単価は、現在の契約書と事業者の公式ページで確認してください。
自家消費の価値も「一般的な電気料金」ではなく、自宅の請求書から求めます。時間帯別料金、燃料費調整、再エネ賦課金、売電機会の減少をどこまで含めたかを揃えないと、比較結果が変わります。
売電派と自家消費派で容量の決め方はどう違うか
売電継続を優先する場合
追加設備を入れない現状維持案を比較の基準にします。太陽光の増設は、増えた発電量の多くを低単価で売るだけなら回収しにくい場合があります。一方、在宅勤務、給湯、EV充電などで昼間需要が増えているなら、増設分を自家消費できる可能性があります。屋根、パワーコンディショナ容量、系統連系、既存保証への影響も確認が必要です。
自家消費を優先する場合
蓄電池容量は、太陽光のkW数だけで決めません。晴天日の最大余剰に合わせると、曇天日や冬季に使い切れない過大容量になり得ます。30分または1時間データから、次の順序で候補を絞ります。
- 日ごとの余剰発電量と、夕方から翌朝までの消費量を集計する。
- 「余剰発電量」と「蓄電池で置き換えたい夜間消費量」の小さい方を、日ごとの移行可能量とする。
- 充放電ロス、最低SOC、停電時に残す容量、劣化を反映し、定格容量ではなく実効容量で比較する。
- 容量を複数案に分け、年間の充放電量と使い切れない容量を比較する。
停電対策が主目的なら、kWhだけでなくkW出力、200V機器への対応、全負荷型か特定負荷型か、停電時に太陽光から再充電できるかも選定条件です。EVを日中に駐車できない家庭では、V2Hの大容量だけを見て経済効果を判断しないようにします。
回収年数は条件付き試算で比較する
蓄電池の回収年数を全国一律の年数で断定することはできません。概算では、次のように入力を分けます。
- 年間の経済メリット = 自家消費へ移せた電力量 ×(回避できた買電単価 − 失う売電単価)− 充放電ロスの影響 − 年間費用
- 単純回収年数 =(機器・工事費 − 確定した補助額)÷ 年間の経済メリット
この式は税、資金調達費、交換費、劣化、料金改定を省いた単純比較です。実務では、低位・基準・高位の3シナリオを作り、電気料金や買取単価が変わった場合も確認します。補助金は採択や交付額が確定する前に経済メリットへ算入しません。
入力データで比較する:太陽光・蓄電池の無料デモシミュレーションで、発電量、電気使用量、料金プランを変えた場合の差を確認できます。
2026年の補助金は「申請可能か」を確認する
補助制度は年度名だけでなく、受付中か、予算到達で終了していないか、契約・着工前の手続きが必要かまで確認します。
- 国のDR家庭用蓄電池事業:令和7年度補正の公式ページでは、2026年5月29日に公募終了と案内されています。過年度の補助額を、現在も申請できる制度として案内してはいけません。
- 東京都:クール・ネット東京は令和8年度の家庭用蓄電池導入促進事業を案内しています。対象機器、事前申込、対象経費、併用可否、期限は公式要綱で確認してください。
- その他の自治体:都道府県と市区町村で別制度がある場合があります。設備の契約・発注前に、住所と設置条件を指定して最新情報を確認します。
補助制度を営業・提案業務で継続的に確認する場合は、エネがえる補助金データベースAPIの対応範囲も参照してください。
経済性以外に確認する価値
停電時のレジリエンス
太陽光、蓄電池、V2Hで停電時に使える機器と時間は異なります。冷蔵庫、通信、照明、医療・介護機器など優先負荷を決め、必要な出力と継続時間を販売事業者に確認します。「蓄電池があれば家中を平常時と同じように使える」とは限りません。
環境価値
卒FIT後も発電を継続し、電力を自家消費または売電することは、既存の再エネ設備を活用する選択です。ただしCO2削減量は、発電量、使用先、算定係数、環境価値の扱いで変わります。根拠のないスギ換算や一律の削減量は使わず、必要な場合は算定条件と出典を明示します。
よくある質問
卒FIT後も売電できますか?
できます。FIT満了後の買取プランを提供する事業者と契約します。単価、対象地域、契約期間、支払条件は事業者ごとに確認してください。
蓄電池は必ず得になりますか?
必ずとは言えません。日中の余剰が少ない、夜間消費が少ない、自己負担額が大きい場合は回収が難しくなることがあります。現状維持案と、運用変更だけの案を含めて比較します。
容量は太陽光1kWあたり何kWhですか?
固定比率では決められません。同じ太陽光容量でも、地域、屋根方位、季節、在宅時間、給湯、EV利用で余剰量が異なります。時間帯別データと実効容量で決めます。
補助金を見込んで契約してよいですか?
交付条件と手続き順序を確認する前の契約・着工は避けてください。予算到達や対象外判定もあり得るため、確定前は「補助なし」のケースも比較します。
判断のための公式出典
- 資源エネルギー庁:住宅用太陽光発電のFIT買取期間満了と選択肢
- 東京電力エナジーパートナー:再エネ買取標準プラン
- SII:令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業の概要・公募終了情報
- クール・ネット東京:家庭における蓄電池導入促進事業
制度・単価の確認日と、試算に使った発電量・消費量・料金・機器条件を保存しておくと、後日条件が変わった際にも再計算できます。
次のアクション:社内提案や顧客説明に使う比較資料が必要な方は、エネがえるASPサービス資料をご覧ください。まず自宅条件で結果を確認したい方は、登録不要の無料デモから試算できます。



コメント