卒FIT後に蓄電池を導入するメリット・デメリット|蓄電池の選び方も紹介

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

卒FIT後に蓄電池を導入するメリット・デメリット|蓄電池の選び方も紹介

電力が固定価格で買い取られる「FIT制度」の期間が終了することを卒FITといいます。卒FIT後は多くの場合、電力を売るのではなく自家消費することが選択されます。自家消費をする上では蓄電池が欠かせません。

本記事ではFIT制度の期間中・卒FIT後の売電価格の比較や、蓄電池のメリット・デメリット、選び方などを解説します。参考にしてください。

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卒FIT後の3つの選択肢

卒FIT後には売電を続けること、新電力の卒FITプランに切り替えること、自家消費することの3つの選択肢があります。それぞれ解説します。

 

売電を続ける

1つ目の選択肢はFTI制度の期間中に売電していた大手電力会社に、今まで通り電気を売り続けることです。売電の契約や仕組みを変更するわけではないため、費用が必要なく手間もかからない方法です。

 

一方、FIT制度の期間中と比べると、売電価格が1/5程度と大幅に下がるため経済的な利点はあまりないといえます。また、売電を10年など長期にわたって継続する場合には、パワーコンディショナーの経年劣化・故障などに注意する必要があります。

 

新電力の卒FITプランに切り替える

新電力とは電気小売の全面自由化により、新規参入した電気事業者のことです。従来は全国での大手10社が発電・送電・小売業を独占していました。しかし、規制緩和によって異業種でも小売に参入可能になったことで、現在ではライフスタイルや価値観によって電気会社を選べます。

 

電力は地域によって価格・取り扱いなどが異なりますが、新電力では大手電力会社よりも電気を高い値段で買取している傾向があります。例として、東京における主な新電力の買取価格を紹介します。

新電力

買取価格(/kWh)

JXTG

11円

Looop

7円

出光

9.5円

伊藤忠エネクス

9円

生活クラブエナジー

8.5円

全農エネルギー

8.5円

坊ちゃん電力

10円

丸紅ソーラートレーディング

11円

みんな電力

8.5円

 

卒FIT後は売電先を新電力に切り替えることで、費用をかけることなく売電単価を上げられます。売電に関わる契約をやり直さなくてはなりませんが、比較的手間がかからないお得な方法です。

 

蓄電池を導入して自家消費する

卒FIT後は電気を売るのではなく、自宅や事業所で自家消費することもおすすめの選択肢です。効率的に自家消費するためには蓄電池の導入が役立ちます。蓄電池があれば昼間に発電しておいた電気を貯めておき、夜間に利用することもできます。

 

近年では電気料金が値上がっており、また卒FIT後に売電価格が下がった状況では、電気を売るより自家消費する方がメリットが大きいでしょう。紹介した卒FIT後の3つの選択肢の中では、自家消費が最も経済的にお得だといえます。

 

FIT開始時からの売電価格の変化

FIT制度における電気の買取価格は一定ではなく、年度ごとに異なります。FIT制度が開始された2009年は、買取価格が48円/kWhと最も高く設定されていました。価格推移の例として、2017年から2023年にかけての住宅用太陽光発電の買取価格を下記で紹介します。

 

年度

買取価格(/kWh)

2017年

28円(出力抑制ありなら30円)

2018年

26円(出力抑制ありなら28円)

2019年

24円(出力抑制ありなら26円)

2020年

21円

2021年

19円

2022年

17円

2023年

16円

 

FIT制度は太陽光発電の普及推進のために開始されたため、制定当初から買取価格を年々引き下げていくことが決められていました。また、住宅用太陽光発電の買取価格については2025年までに、11円/kWhと通常の市場価格程度まで引き下げることが目標にされています。今後もFIT制度での電気の買取価格は下がり続ける可能性が高いでしょう。

 

蓄電池を導入するメリット

蓄電池を導入する主なメリットは非常時に電気が使えること、電気代が安くなること、パワーコンディショナーを新しくできることです。それぞれ解説します。

 

非常時にも電気が使える

自然災害時には停電することがありますが、太陽光発電と蓄電池があれば災害への効果的な対策となります。例えば、地震の際には2~3日ほど、長いと8日以上も電気が使えない場合があります。普段から蓄電池に電気を貯めていれば、非常時にも不便な生活を強いられることなく電気のある生活が可能です。

 

自家消費で電気代が安くなる

蓄電池を導入すればより効率的な自家消費が可能です。太陽光発電は昼間しか電気を作れませんが、作った電気を蓄電池に蓄えておくことで夜間にも使えます。電力会社から購入する電気の量を減らせるため、電気代の節約になります。

 

また、電気を購入する場合でも蓄電池があればお得な買い方が可能です。例えば、深夜間は電気が安いプランに加入し、その時間中に電気を買って貯めておく方法がおすすめです。

 

太陽光発電のパワーコンディショナーを新しくできる

パワーコンディショナーとは太陽光発電で作った電気を、家庭や事業所で使用可能な電気に変換させる機器です。また、太陽光発電のシステムを効率的に稼働させる重要な役割もあります。太陽光発電に欠かせないパワーコンディショナーですが、寿命は10~15年程度といわれています。

 

ハイブリッド蓄電池を導入する場合は、パワーコンディショナー自体を買い換えることなく新しくできます。ハイブリッド蓄電池とは蓄電池・太陽光発電におけるパワーコンディショナーが一体化し1台にまとめられたものです。

 

EVを導入している家庭や事業所なら、トライブリッド蓄電池もおすすめです。トライブリッド蓄電池とは蓄電池・太陽光発電に加えて、V2Hのパワーコンディショナーも一体化させたものをいいます。EVに蓄えられた電気を自宅・事業所でも使えるようになり、より電気の使い方の柔軟性が増します。

蓄電池を導入するデメリット

メリットが多い蓄電池の導入ですが、デメリットもいくつかあります。主なものを解説します。

イニシャルコストが必要

蓄電池の導入にはイニシャルコスト(初期費用)が必要です。例えば、蓄電池を購入・設置するためには100万~200万円前後の費用がかかります。蓄電池とあわせてEVやV2Hなども導入するなら必要な費用が大きくなります。

 

蓄電池は容量によっても価格が変わるため、大容量のものを購入するならさらに費用がかさむでしょう。蓄電池の導入には国・自治体の補助金が利用できる場合もあるため、支給条件に該当するか購入前に確認することがおすすめです。

 

メンテナンス費が必要

蓄電池を使い続けるためにはメンテナンスが必要となります。太陽光発電のみを設置していた場合と比べて、メンテナンスのための費用や手入れ・管理の手間が増えることは、蓄電池の導入におけるデメリットといえます。

 

蓄電池の選び方

蓄電池にはハイブリッド蓄電池、単機能蓄電池、トライブリッド蓄電池など、いくつか種類があります。蓄電池の選び方を解説します。

 

パワーコンディショナーを交換する予定ならハイブリッド蓄電池

パワーコンディショナーを近いうちに交換しようと考えている場合は、ハイブリッド蓄電池を選ぶことがおすすめです。前述したように、ハイブリッド蓄電池なら蓄電池と太陽光発電のパワーコンディショナーが一体化しているため、パワーコンディショナーを新しく買い換える必要がありません。

 

また、FIT制度の終了が近い場合は、正常に稼働しているように見えるパワーコンディショナーでも、10年近く使い続けているため寿命が近いかもしれません。パワーコンディショナーが壊れる前に、ハイブリッド蓄電池に買い換えることも1つの手です。

 

パワーコンディショナーの状態が良い場合は単機能蓄電池

パワーコンディショナーが比較的新しく、使わないのがもったいない場合には単機能蓄電池を選ぶことがおすすめです。単機能蓄電池では蓄電池と太陽光発電のパワーコンディショナーが別々になっていて、ハイブリッド蓄電池やトライブリッド蓄電池と比べて初期費用が抑えられます。

 

EV導入ならトライブリッド蓄電池

EVを導入している場合や、近いうちに導入予定の場合にはトライブリッド蓄電池を選ぶことがおすすめです。トライブリッド蓄電池なら蓄電池・太陽光発電・V2Hの3つを同時制御できます。

 

例えば、昼間に太陽光発電で作っておいた電気を、V2Hによって夜間にEVに充電でき、電気ロスを最小限に抑えることが可能です。トライブリッド蓄電池は太陽光発電を最大限活用したい場合に適しています。

 

蓄電池の注意点

蓄電池を導入・運用する際には設置場所や機種について、いくつか注意点があります。主なものを解説します。

 

蓄電池の設置条件に適した設置場所を確保

蓄電池を導入するなら適切な設置場所を確保する必要があります。蓄電池サイズが大きいため、設置にはある程度のスペースが必要です。重さもあるので落下しないよう考慮することも求められます。また、定期的な点検のため、スペースには余裕を持たせておきましょう。

 

屋内に蓄電池を設置する場合は換気の良い場所、屋外に設置する場合は直射日光が当たらない場所を選ぶことも必要です。蓄電池の設置場所についてはいくつか制約があるため、購入前に販売店やメーカーに確認しておくと良いでしょう。

 

蓄電池の機種は太陽光発電メーカーで絞る

蓄電池は自由に選んでも良いわけではなく、太陽光発電のメーカーが認定したものから選ぶ必要があります。蓄電池を使用する際は太陽光発電と連携する必要があり、認定外のものを導入することで太陽光発電のメーカー保証を受けられなくなる場合があります。

 

また、蓄電池と太陽光発電の機器には相性もあるため、認定外のものを連携させることで不具合・トラブルが生じる可能性が高まります。リスクを避けるためには、導入予定の蓄電池が認定されたものか確認しておきましょう。

 

まとめ

卒FIT後の選択肢の中で、経済的なメリットが最も大きいのは自家消費です。効率的な自家消費のためには蓄電池の導入が必要で、非常時の備えにもなります。ハイブリッド蓄電池・単機能蓄電池・トライブリッド蓄電池にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、ニーズにマッチしたものを選ぶと良いでしょう。

 

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著者プロフィール(太陽光・蓄電池シミュレーションエキスパート)

会社名:国際航業株式会社
部署名:公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG
執筆者名:樋口 悟

執筆者の略歴:国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年上場大手コールセンター会社に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立。30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発、エネがえる事業開発を担当。

太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションの国内唯一のエキスパートとして、大手電力・ガス会社、有名太陽光・蓄電池メーカー、全国販売施工店・工務店など約700社以上と、最近ではエネルギー政策立案サイド(国・官公庁・地方自治体)で太陽光・蓄電池推進政策をしている方々へもエネがえるを活用した太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションやアドバイスを提供している。

執筆記事:https://energy-shift.com/news/author/71cbba7e-dbbc-4728-9349-9cdbed975c6e

執筆者のSNS:
・Twitter:@satoruhiguchi
・LinkedInプロフィール:https://www.linkedin.com/in/satoruhiguchi/
・Sansan名刺交換:https://ap.sansan.com/v/vc/bu56hqnjvw5upna463tcfvkxka/

 

 

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

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国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。お仕事・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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