成約率39%向上、勝率6倍:データが証明する「マルチスレッド」と、産業用太陽光セールスを加速する「エネがえるBiz」の戦略的活用法

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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目次

成約率39%向上、勝率6倍:データが証明する「マルチスレッド」と、産業用太陽光セールスを加速する「エネがえるBiz」の戦略的活用法

序章:エンタープライズセールスの「不都合な真実」— なぜあなたのディールは「あと一歩」で失速するのか

B2Bセールスの根本的パラドックス

現代のエンタープライズセールス(B2Bセールス)は、一つの根本的なパラドックスに直面しています。それは、B2Bバイヤーが、営業担当者と積極的に会う時間を望んでいないという現実です。世界的な調査会社Gartnerの研究によれば、バイヤーが購買プロセス全体で、潜在的なサプライヤー(つまり営業担当者)とのミーティングに費やす時間は、驚くべきことに、わずか17%に過ぎません 1

この事実は、多くの営業組織にとって衝撃的かもしれません。しかし、バイヤーは残りの83%の時間で、営業担当者の見えないところで、より重要かつ困難なタスクに奔走しています。それは、オンラインでの自己リサーチであり、そして最も重要なのが「社内での合意形成」です。

「失速」の真犯人:競合ではなく「内部の混沌」

多くの営業責任者は、失注の最大理由を「競合の価格設定」や「製品機能の優劣」だと考えがちです。しかし、近年の複数の調査データは、それとは異なる「不都合な真実」を突きつけています。ディールが失速する真の犯人は、競合他社ではなく、顧客の「内部の混沌」なのです。

EdelmanとLinkedInによる共同レポートによれば、B2Bディールの実に40%以上が、競合に負けたのではなく、「内部の意見不一致(Internal Misalignment)」によって失速、あるいは停滞していることが明らかになっています 3。Gartnerもこの見解を強力に裏付けており、多くのB2B購買が「コンセンサス不在(No Consensus)」を理由に、最終的に「購入しない」という決定(No Decision)に終わるか、仮に購入しても深刻な後悔(Post-purchase Regret)に繋がることを示しています 5

この17%という限られた接触時間 1 の意味を、我々は再解釈する必要があります。これは営業担当の「無力化」を意味するのではなく、「役割の根本的変更」を要求しています。営業担当が貴重な17%の時間でなすべきことは、旧来型の「製品ピッチ」ではありません。顧客が残りの83%の時間で行っている「社内合意形成」のプロセスを、いかに能動的に支援し、その障壁を取り除くか、という「バイヤー・イネーブルメント」 8 の視点こそが不可欠なのです。

シングルスレッド(単一接点)の致命的な脆弱性

この「内部の混沌」という現実を知らず、営業担当が「推進者(チャンピオン)」や「窓口担当者」ただ一人とのみ関係を構築する販売戦略は、「シングルスレッド(単一接点)」と呼ばれ、現代のB2Bセールスにおいて極めて脆弱なアプローチです。

その単一の接点担当者が、突如として異動、退職、あるいは単にCFO(最高財務責任者)への説明に失敗した瞬間、営業担当が握っていたはずの糸は切れ、ディールは「完全な無線状態(Total Radio Silence)」となり、あれほど有望に見えたパイプラインから静かに消滅します 1。この40%のディール失速 3 は、この「バイヤー・イネーブルメント」の失敗に直結しているのです。

本レポートの核心と読者への約束

本レポートの目的は、この「失速」を、営業担当にとっての「不可避な運命」から「回避可能な戦略ミス」へと変えることです。

そのために、特に日本国内で最も複雑なステークホルダーが絡む「最難関」のB2B商材の一つである、「産業用自家消費型太陽光発電」および「産業用蓄電池」のセールスを具体的なユースケースとして取り上げます。

まず、第1章で、「マルチスレッド(複数ステークホルダーへのアプローチ)」という販売戦略の圧倒的な有効性を、GongOutreachといったグローバルな調査機関の統計データによって冷徹に証明します。

次に、第2章で、B2B購買の「バイング・センター(購買関与者グループ)」という名の迷宮を解体し、なぜ「合意形成の失敗」が失注の主因となるのかを心理的・構造的に解き明かします。

そして、第3章で、産業用太陽光・蓄電池セールス特有のバイング・センター(CFO、設備部、経営層など)を具体的に特定し、彼らが持つ個別の懸念事項を分析します。

最後に、第4章および第5章で、「エネがえるBiz」のような経済効果シミュレーションツールが、このマルチスレッド戦略を実行し、複雑なステークホルダー間の「合意形成(コンセンサス)」を能動的に創出するために、いかに強力な「戦略的武器」となり得るのかを、具体的かつ実践的に論証します。

本レポートは、日本の再生可能エネルギー普及を「販売戦略」の側面から加速させるための、データドリブンな処方箋です。

第1章:データが明かす「マルチスレッド」の圧倒的優位性【グローバル統計分析】

営業の世界では長らく「担当者との人間関係」が重視されてきましたが、現代のデータドリブンな営業組織は、その「感覚」を「数字」で検証しています。その結果、マルチスレッド(複数のステークホルダーとの関係を構築・維持すること)は、単なる推奨事項ではなく、ディールの勝敗を分ける決定的な変数であることが証明されています。

Gongの衝撃的なデータ(1):成約ディール vs 失注ディール

AIレベニュー(収益)インテリジェンスプラットフォームのGong.ioは、AIを用いて180万件もの膨大な商談データを分析しました。その結果、驚くべき事実が判明しました。成約したディール(Closed-Won Deals)は、失注したディール(Lost Deals)に比べて、関与したバイヤーコンタクト(顧客側の関係者)の数が2倍多いことが明らかになったのです 9

このデータは、現代のB2Bディールの大多数(77%)が、既に何らかの形でマルチスレッド化されている(複数の関係者が関与している)9 にもかかわらず、その「接触の量」と「質」が、最終的な勝敗を明確に分けていることを示しています。

Showpadのデータ:勝率「6倍」の分岐点

セールスイネーブルメントプラットフォームのShowpadによる調査は、さらに具体的な数値を示しています。単一のコンタクト(バイヤー)のみが関与するディールと比較して、複数のバイヤーが関与するディールは、成約(クローズ)する可能性が6倍高いことが報告されています 10

これは、シングルスレッドのリスク(前述の1)の裏返しです。単一の接点に依存するディールは、その人物一人の意向や社内政治力によって容易に覆る一方で、複数の接点を持つディールは、組織全体としてのレジリエンス(回復力・耐性)を持つことを意味します。

さらにShowpadは、営業チームが目指すべき具体的な目標値も示唆しています。ディールに6人以上のコンタクトが関与している場合、クローズ率(成約率)は、平均的な約8%から最大39%まで飛躍的に増加する可能性があると指摘しています 10

Outreachのデータ:接触人数より「関与部門数」が重要

では、単に関与する「人数」を増やせば良いのでしょうか? AI収益ワークフロープラットフォームのOutreachは、この問いに対して、さらに解像度の高い分析を提供しています 11

Outreachのデータによれば、確かに複数のコンタクト(2人以上)が関与すると、ディールがクローズする可能性は37%高まります 11

しかし、同社の分析で最も強力な相関関係を示した変数は、単純な「人数(Breadth: 広さ)」ではなく、「関与した部門の数(Depth: 深さ)」でした 11

  • 1部門のみと接触していた場合の勝率: 28%

  • 2部門と接触していた場合の勝率: 39%

  • 3部門以上と接触していた場合の勝率: 44%

この28%と44%の差は決定的です。このデータが示すのは、「1つの部門(例:IT部)の10人と知り合いである」ことよりも、「3つの異なる部門(例:IT部、財務部、法務部)のキーパーソンそれぞれと接点を持っている」ことの方が、勝率に遥かに強く寄与するということです。なぜなら、B2Bの意思決定とは、特定の部門による「積極的な採択」であると同時に、他の全部門による「消極的な拒否権の不行使」、すなわち「合意形成」によって成立するからです。

Gongのデータ(2):大型案件における絶大な効果

この傾向は、ディールの規模が大きくなるほど顕著になります。産業用太陽光のような高額商材のセールスにおいて、マルチスレッドは「推奨」から「必須」の戦略へと変わります。

Gongの分析によれば、特に5万ドル(約750万円)を超えるような大型案件において、マルチスレッド戦略は勝率を平均130%もブースト(引き上げる)する効果があります 9。Gongでトップセールスとして活躍するSarah Brazierは、自社のデータに基づき、「少なくとも4人のコンタクトが関与しているディールでは、私たちは58%の勝率を上げている」と具体的に証言しています 12

Gongのデータ(3):「チームセリング」という鏡

マルチスレッド戦略は、顧客側(買い手)だけの話ではありません。顧客のバイング・センターが複雑で多層的であるならば、売り手側もそれに対応した「鏡写し(ミラーリング)」の体制で臨むべきです。これが「チームセリング」の概念です。

Gongのデータは、このチームセリングの効果がいかに絶大であるかを明らかにしています。売り手側から3人以上のチーム(例:営業担当、技術専門家、財務アナリスト)として販売に関与することで、ディールをクローズする可能性が最大で258%も高まることが示されているのです 12

この「勝率258%向上」という驚異的な数値の背景には、単純な「人海戦術」を超えた理由があります。それは「信頼のミラーリング」です。例えば、顧客のCFO(最高財務責任者)は、営業担当が語る「ROIは素晴らしいです」という言葉よりも、売り手側の「財務専門家」が提示する詳細なキャッシュフロー分析を信頼します。同様に、顧客の設備部長は、営業担当よりも売り手側の「技術エンジニア」との専門的な対話を望みます。この「専門家 vs 専門家」の信頼構築が、単一の営業担当による「万能型ピッチ」を圧倒的に凌駕することの証左が、この258%という数字なのです。

【テーブル①:マルチスレッドとB2Bディール成約率に関する主要統計】

本章で提示した統計データを一覧化することで、マルチスレッド戦略が曖昧な「関係性構築」ではなく、「測定可能なROI」を持つ経営判断であることを確認します。

調査機関 調査対象・条件 主要な発見(Key Finding) 具体的な数値(Win Rate / Close Rateへの影響)
Gong.io 180万件の商談 成約ディールは失注ディールより関与者数が多い

成約ディールは失注ディールに比べ、バイヤー関与者数が2倍 9

Gong.io 5万ドル以上の案件 大規模案件におけるマルチスレッドの効果

勝率が平均130%向上 9

Showpad B2Bディール全般 複数バイヤー関与の効果

単一バイヤーのディールに比べ、成約可能性が6倍 10

Showpad B2Bディール全般 6名以上の関与による効果

成約率が平均8%から最大39%に向上 10

Outreach B2Bディール全般 「部門数」の重要性

1部門(28%)に対し、3部門以上関与で勝率44% 11

Gong.io B2Bディール全般 売り手側(チームセリング)の効果

売り手側3名以上の関与で勝率が最大258%向上 12

第2章:現代のB2B購買プロセス解体新書:「バイング・センター」という名の迷宮

第1章では、マルチスレッドが「なぜ」有効なのかをデータで示しました。本章では、マルチスレッドが「なぜ」不可欠なのか、その背景にある現代のB2B購買プロセスの複雑性、すなわち「バイング・センター(Buying Center)」の構造を解き明かします。

B2B購買の「人数」という現実

Gartnerの調査によれば、現代のB2B購買における意思決定グループ(バイング・センターまたは購買委員会)には、平均して6〜10人のステークホルダーが関与しています 1。LinkedInの調査も同様に、この数字を平均6〜10人としており、さらに、この全員を納得させてディールを前に進めるためには、17回もの「意味あるインタラクション(対話)」が必要であると報告しています 3

営業担当が対面している「窓口担当者」は、この6〜10人のうちの1人に過ぎず、文字通り「氷山の一角」です。

最大の敵:「内部の意見不一致」による失速

営業担当が直面する最大の障害は、この「6〜10人」のグループが、それぞれ異なる優先順位、異なる懸念、異なるKPI(重要業績評価指標)を持っているという厳然たる事実です 16

  • 法務部は、「規制対応」や「データ保護」を最優先で懸念します 16

  • LOB(事業部門)は、「KPI達成への貢献」や「ROI(投資対効果)」を懸念します 16

  • エンドユーザー(現場)は、「日々の使いやすさ」や「業務効率」を懸念します 16

営業担当が「エンドユーザー」の懸念(使いやすさ)に完璧に答えたとしても、その提案が「法務部」の懸念(規制対応)や「事業部門」の懸念(ROI)を解決できなければ、必ずや内部から「待った」がかかります。これが、前述の「B2Bディールの40%以上が内部の意見不一致によって停滞する」 3 という現象の正体です。Gartnerが「No Consensus = NO BUY(コンセンサス不在は、購入しないことと同義である)」と断言する 5 のは、このためです。

「隠れた購入者(Hidden Buyers)」というリスク

さらに問題を複雑にするのが、「隠れた購入者(Hidden Buyers)」の存在です 3ディール失速の多くは、営業担当がその存在すら認識していない、あるいは重要性を過小評価している人物の「見えざる影響力」によって引き起こされます

多くの営業担当は、「VP(ヴァイス・プレジデント)」や「部長」といった「役職(Job Title)」を「影響力(Influence)」と勘違いする致命的なミスを犯します 17。しかし、実際のディールは、そのVPが非公式に意見を求める中堅の技術専門家や、最終的な予算執行に対して暗黙の拒否権を持つCFO(最高財務責任者)によって動かされているケースが後を絶ちません 17

バイング・センターの6つの主要ロールの解読

真のマルチスレッド戦略とは、この「6〜10人」を単なる「個人の集まり」としてではなく、「役割(ロール)の集合」として体系的に理解することから始まります。古典的かつ最も実用的な分類として、バイング・センターは主に6つの役割に分類されます 19

  1. Initiator(起案者)

    組織内の問題やニーズを最初に認識し、「何かを購入すべきでは?」と購買プロセスを開始(Initiate)する人物です 19。

  2. Influencer(影響者)

    技術仕様の定義や製品評価を行い、意思決定プロセス全体に(しばしば非公式に)強い影響を与える人物です。技術者やコンサルタントがこの役を担うことが多いです 19。

  3. Decider(決定者)

    どのサプライヤーの、どの製品を採用するかについて、最終的な「Yes / No」を決定する権限を持つ人物です。多くの場合、部門長や役員クラスが該当します 19。

  4. Approver(承認者)

    決定者(Decider)が下した決定を、予算やコンプライアンスの観点から「承認」する人物です。特に高額案件において、CFOや財務部門がこの強力な役割(事実上の拒否権)を持ちます 19。

  5. Buyer(購買担当者)

    実際の選定プロセスの管理、サプライヤーとの折衝、価格交渉、契約手続きなど、調達の実務を担当する人物です 19。

  6. User(利用者)

    導入後、その製品やサービスを日常的に利用するエンドユーザーです。彼らの受容性や満足度が、導入後の成否や将来の追加契約を左右します 19。

この6つのロール 19 は、それぞれが異なる「評価基準」と「懸念事項」を持っています 16。したがって、単一の「万能な提案書」は、原理的に失敗する運命にあります。

営業担当の役割は、もはや「自社製品を売るセールスパーソン」ではありません。顧客のバイング・センターというオーケストラを指揮し、彼らが「合意形成」という調和のとれた音楽を奏でるために必要な「楽譜(=論拠とデータ)」を提供する、「オーケストレーター(指揮者)」 9 へと変わらなければならないのです。

第3章:【特定ユースケース】産業用自家消費型太陽光・蓄電池セールスのバイング・センター

第2章で解明した「バイング・センター」の複雑性は、あらゆるB2B商材に共通する課題ですが、本章で取り上げる「産業用自家消費型太陽光・蓄電池」市場は、その中でも「最難関」と言える特有の構造を持っています。

なぜこの市場は「最難関」なのか?(日本の課題)

産業用太陽光・蓄電池の導入は、プリンターやソフトウェアの導入とは根本的に異なります。それは単なる「製品購入」ではなく、企業の財務、運用、戦略の根幹に関わる「経営判断」そのものです。

その背景には、日本特有の深刻な導入ハードルが存在します。

  1. 高コストの課題:日本の太陽光発電コストは着実に低下しているものの、2023年下半期のデータでも 5.8円/kWh であり、世界平均の 4.1円/kWh と比較すると依然として割高な状況が続いています 28

  2. 適地制約の課題:FIT制度の開始以降、導入に適した土地(適地)が減少し続けています 29。これが設置コストの高騰や、景観・安全性への懸念といった「社会的受容性」の問題を引き起こしています 28

  3. 運用・保守の課題:導入後の長期安定稼働が不可欠ですが、特に中・小規模設備に適用できる低コストな運用・保守(O&M)技術や、重大トラブルの予兆を推定する技術が不足しているのが現状です 29

【洞察】日本の課題が「複雑なバイング・センター」を生み出す

注目すべきは、上記の日本特有の課題 28 こそが、この商材の意思決定を必然的に「マルチステークホルダー化」させているという事実です。

  • 高コスト28 だからこそ、CFO(財務部門)投資の是非を厳しくジャッジするために関与します。

  • 適地制約・運用保守29 の問題があるからこそ、工場長(設備部門)が現場のオペレーションと安全性を担保するために関与します。

  • 社会的受容性・脱炭素28 が経営アジェンダであるからこそ、CEO(経営層)やESG部門が企業のレピュテーション(評判)に関わる戦略マターとして関与します。

このように、産業用太陽光セールスは、これら3つの異なる利害関係者の「合意」なしには、原理的に成立し得ない構造になっているのです。

産業用太陽光バイング・センター解剖図(ペルソナ別・懸念事項)

第2章で定義した「6つのロール」を、この特定市場のバイング・センターにマッピングし、彼らの「言語」と「懸念」を具体化します。

1. CFO(最高財務責任者) / 財務部 (役割:Approver / Decider)

  • 最大の懸念:「これは『投資』として合理的か? 他の設備投資案件と比較して優先順位は高いか?」

  • 彼らの言語:ROI(投資対効果)、投資回収期間、初期投資額(イニシャルコスト)の圧縮、キャッシュフローへの影響、税制優遇措置(例:中小企業経営強化税制など)の適用可否 30

  • 懸念の詳細:PPAモデル(第三者所有モデル)は初期投資ゼロ 31 が魅力だが、長期契約に縛られるリスクや、自己所有と比べた場合の長期的なコストメリットの限定性 30 を天秤にかける。

  • 典型的な拒否理由:「ROIが不明確」「補助事業を活用しても採算性が確保できない」 31

2. 設備管理者 / 工場長 (役割:User / Influencer)

  • 最大の懸念:「これは『現場』で安定稼働し、安全か? 運用負荷は高くないか?」

  • 彼らの言語:BCP(事業継続計画)対策としての非常時電源の確保 31、電力使用量のピークカットによるデマンド料金低減 31、運用・保守(O&M)の具体的な手法と負担 29、屋根設置による遮熱効果 30

  • 懸念の詳細:大規模災害や停電時に、蓄電池が本当に業務継続に必要な電力を供給できるのか 31。保守点検のコストと手間が、電気代削減メリットを上回らないか 29

  • 典型的な拒否理由:「運用保守の具体的な技術やコストが不明確だ」 29。「停電時に本当に業務データの管理や連絡手段を確保できるのか」 31

3. 経営層(CEO) / ESG・サステナビリティ推進室 (役割:Initiator / Decider)

  • 最大の懸念:「これは『企業価値』向上に貢献するか? 社会的な責任を果たせるか?」

  • 彼らの言語:CO2排出削減量の定量化 31、サステナブルな社会実現への具体的貢献 31、脱炭素社会へのコミットメント 28、自社のカーボンニュートラル目標(例:2030年CO2実質ゼロ)への貢献度 31

  • 懸念の詳細:導入することが「目的」ではなく、それによってどれだけの「環境価値」を生み出し、ステークホルダー(投資家、顧客、地域社会)にアピールできるか。

  • 典型的な拒否理由:「CO2削減効果が定量化できない」「環境価値の創出と、投資回収のバランスが取れているのか説明できない」 31

4. 法務・調達部 (役割:Buyer / Gatekeeper)

  • 最大の懸念:「これは『契約』としてリスクがないか? 手続きは適正か?」

  • 彼らの言語:PPA契約期間(15年~20年)の柔軟性と中途解約リスク 30、補助金申請の複雑な条件と手続きの遵守 30、PPA事業者への長期的な依存リスク 30

  • 典型的な拒否理由:「PPA契約が複雑で、長期的なリスクが計り知れない」「補助金の申請条件を満たせるか不明瞭だ」。

同時並行する「3つのディール」

この分析から導き出される重要な結論は、産業用太陽光セールスとは、単一の商談ではなく、「3つの異なるディール」を同時にクロージングするプロセスである、という事実です。

  1. 対 CFO:「金融ディール」(ROIと投資回収) 31

  2. 対 設備部:「技術・BCPディール」(安定稼働とリスクヘッジ) 31

  3. 対 経営層:「戦略・PRディール」(CO2削減と企業価値) 31

シングルスレッド営業の典型的な失敗パターンは、これら「3つのディール」のうち、営業担当が最も話しやすい相手(例えば、InitiatorであるESG室)の「1つのディール(戦略・PRディール)」しか進めないことです。

ESG室と「CO2削減の重要性」 31 でどれだけ盛り上がったとしても、その裏でCFOが「で、ROIはどうなってる?」 31 と懸念し、設備部が「O&Mの負担は?」 29 と危惧しているかもしれません。営業担当が、この残る2つの懸念(金融ディールと技術ディール)を、彼らの言語(=定量データ)で解決する「武器」を提供できなければ、推進者であるESG室は「内部の意見不一致」 3 の壁を突破できません。結果、ディールは「失速」するのです。

第4章:戦略的ソリューション:「エネがえるBiz」はなぜマルチスレッドを加速させるのか

第3章では、産業用太陽光セールスの成否が、CFO、設備部、経営層という、異なる「言語」を話すステークホルダーの「合意形成」 5 にかかっていることを特定しました。

本章では、この「最難関」のマルチスレッド戦略を実行する上で、なぜ「エネがえるBiz」のような経済効果シミュレーションツールが、単なる「便利な道具」を超えた「戦略的武器」となるのかを論証します。

シミュレーションツールの「役割」の再定義

多くの営業組織では、シミュレーションツールを「提案書を見栄え良く作成するためのツール」あるいは「複雑な計算を自動化する効率化ツール」と誤解しています。しかし、その戦略的価値は、はるかに高い次元にあります。

マルチスレッド戦略におけるシミュレーションツールの真の役割は、「合意形成(コンセンサス)エンジン」として機能することです。それは、バイング・センターの各ロールが話す異なる「言語」(財務、技術、戦略)を、「客観的なシミュレーション結果」という万国共通の「データ言語」に翻訳する装置なのです。「エネがえるBiz」は、この「エンジン」の役割を果たすために設計された機能群を提供します 32

「エネがえるBiz」の定量化アウトプットが、ステークホルダーの「言語」を翻訳する

「エネがえるBiz」は、第3章で特定された各ステークホルダーの「懸念」に対し、客観的かつ定量的な「回答」を自動生成する能力を持っています 32

1. CFO(財務部)への回答:金融ディールを成立させる「ROI」

  • CFOが最も知りたい「投資」としての合理性に対し、「エネがえるBiz」は「ROI(投資対効果)・回収期間の自動算出」機能で即座に応えます 32

  • 任意の期間における「長期収支シミュレーション」や、「補助金等を反映させた投資回収期間」もExcelレポートとして自動出力できます 32。これにより、CFOは「採算性が不明確」 31 という理由でディールを拒否することが困難になります。

2. 設備管理者(工場長)への回答:技術・BCPディールを成立させる「自家消費率」

  • 設備管理者が懸念する現場の運用に対し、「自家消費量・自家消費率、余剰電力量・余剰率の自動計算」機能が応えます 32

  • 顧客の30分デマンドデータをCSVでインポートするだけで、技術的に最適なPV(太陽光パネル)容量やPCS(パワーコンディショナー)容量をシミュレーションできます 32

  • さらに、「蓄電池を併設した場合のROIも自動計算されます 32。これは極めて重要です。なぜなら、彼らの懸念である「BCP対策」 31 が、単なる「保険的なコスト」ではなく、「投資回収計画に組み込まれた合理的な判断」であることを、財務部門に対しても同時に証明できるからです。

3. 経営層(ESG室)への回答:戦略・PRディールを成立させる「CO2削減量」

  • 経営層が求める「企業価値」の根拠に対し、「エネがえるBiz」は「CO2排出削減量」も具体的に算出します 33

  • その計算式は明確に定義されており、CO2排出削減量=(太陽光自家消費量+太陽光蓄電池充電量 × 0.438 / 1000(二酸化炭素排出係数0.438を使用 ※排出係数は数値をユーザー設定も可)として計算されます 33

  • これにより、経営層の「戦略・PRディール」 31 に対し、「我が社は、この設備投資によって、年間XトンのCO2を削減できる」という明確な定量的根拠を提供できます。

【テーブル②:産業用太陽光バイング・センターの懸念事項と「エネがえるBiz」の対応解】

本レポートの核心である「シミュレーションがマルチスレッドを機能させる」ロジックを一覧化します。これは、営業責任者が自社の営業プロセスを改革し、営業担当者が現場で活用するための「戦略マップ」そのものです。

ステークホルダー(役割) 主要な懸念・評価基準(第3章の分析) 営業が直面する「拒否理由」 「エネがえるBiz」が提供する「解(ソリューション)」

CFO / 財務部

(Approver / Decider)

投資回収期間 (ROI)、初期投資額、採算性、税制優遇 30

「ROIが不明確で投資判断できない」

「補助金を使っても採算が合わない」 31

「ROI・回収期間の自動算出(Excel)」

「補助金・税制優遇反映後の長期収支シミュレーション」 32

設備部 / 工場長

(User / Influencer)

BCP対策(非常時電源)、運用負荷(O&M)、ピークカット効果 29

「停電時に本当に役立つか不明だ」

「O&Mの負担が過大で現実的でない」 29

「蓄電池併設時のROI自動計算」

「30分デマンド連動の自家消費率シミュレーション」

「365日時間単位のローデータ出力」 32

経営層 / ESG室

(Initiator / Decider)

CO2削減効果、企業価値(環境価値)、カーボンニュートラル目標への貢献 31

「CO2削減効果が定量化できない」

「投資額と環境価値のバランスが不明」 31

「CO2排出削減量の自動算出」

(計算式:$(自家消費量+充電量)\times 0.438 / 1000$33

法務 / 調達部

(Buyer / Gatekeeper)

PPA契約リスク(長期拘束)、補助金適用の複雑さ 30

「PPAの長期契約リスクが不明確だ」

「自己所有とどちらが得か判断できない」 30

(シミュレーション自体が)PPAモデルと自己所有モデルのROIを客観的に比較検討するデータとなり、契約リスクの判断材料を提供する 30

ケーススタディ分析:「自家消費型太陽光を3ヶ月で受注」の裏側

「エネがえるBiz」を導入したある企業が、導入後わずか3ヶ月で難易度の高い自家消費型太陽光案件を受注できたという事例 34 は、本章の論証を裏付ける格好のケーススタディです。この成果は、単なる「効率化」の物語ではありません。

1. 「提案リードタイムが30日から5日へ短縮」の真の意味 34

これは単なる「スピード」の問題ではなく、「議論の主導権」の問題です。

従来、メーカーに試算を依存していたため、初回の提案(議論の土台)が出てくるまでに「30日~45日」かかっていました 34。その間、顧客のバイング・センター(CFO、設備部)は他の検討事項に進んでしまい、案件の優先順位は下がり、やがて失速します。

「エネがえるBiz」の導入により、このリードタイムが「5日」に短縮されました 34。これは、競合他社がまだ試算を待っている間に、顧客のバイング・センター(CFO、設備部、経営層)の全員が求める「それぞれのデータ(ROI、自家消費率、CO2削減量)」 32 を最速で提示し、議論の主導権を握ることを意味します。顧客からも「提案が早かったのが良かった」「他社はまだ提案できていない」というフィードバックが得られており 34、このスピードが合意形成の「熱量」を維持する上で決定的な要因となったことがわかります。

2. 「入社2ヶ月目の新人が試算・提案可能」の真の意味 34

これは単なる「属人性の排除」ではなく、「組織的なマルチスレッド戦略のスケーラビリティ(拡張性)」の確立を意味します。

従来、CFOと渡り合えるのは、高度な財務知識と経験を持つ一部のトップ営業だけでした。しかし、「エネがえるBiz」「ROI」 32 という「CFOの言語」を自動生成してくれるため、入社2ヶ月目の新人であっても、「CFOが求める客観的データを持参し、提示する」ことが可能になります 34。

これにより、組織全体として、第1章で述べた「チームセリング」 12 のような高度なマルチスレッド戦略を、標準的かつスケーラブルに実行する「基盤」が整うのです。

第5章:【実践編】シミュレーションを活用したマルチスレッド戦略の実行手順

理論(第1~3章)と武器(第4章)が揃いました。本章では、シミュレーションツールを「タクト(指揮棒)」として、複雑なバイング・センターを「オーケストレーション(指揮)」する、具体的かつ実践的な実行手順を提示します。

ステップ1:最初の接点(Initiator)からバイング・センター全体像を仮説立てる

最初の商談相手(例えば、第3章のESG推進室 31)とのリレーション構築は重要です。しかし、そこで「CO2削減」の話だけに終始してはなりません。必ず、バイング・センターの全体像を把握するための質問を行います。

「今回の導入をご検討されるにあたり、他にどの部門の方とご相談・調整されるご予定でしょうか? 例えば、財務部門や設備管理部門の方々ともお話し合いが持たれますか?」

この質問により、営業担当は第3章の「バイング・センター解剖図」に基づき、関与するステークホルダー(CFO、設備部など)をマッピングします 17

ステップ2:「共通言語」としてのシミュレーションの提示

次に、「エネがえるBiz」で作成した経済効果シミュレーション 32 を提示します。この時点では、詳細な30分デマンドデータが顧客から提供されていなくても構いません。「エネがえるBiz」には「業種別ロードカーブテンプレート機能」が搭載されており、これを用いることで、初回提案のスピードを劇的に早めることができます 34

ここでの重要なポイントは、このシミュレーションを「完成品」としてではなく、「議論のたたき台(ドラフト)」として提示することです。「これが弊社の提案です」ではなく、「これが御社の経営課題を解決するための議論の出発点です」と位置づけます

ステップ3:シミュレーションを「武器」として推進者(Champion)に提供する

営業担当が、バイング・センターの全員(6〜10人) 14 と直接会うことは非現実的かもしれません。そこで、最初の接点である推進者(例:ESG室)を「社内営業マン(Champion)」として武装させます。

「このシミュレーション結果(ドラフト)を基に、各部門の皆様の懸念をクリアにしていきましょう」と提案します。

  • 「CFO様には、こちらの『ROI・投資回収期間レポート』(エネがえるBizより出力)をご提示いただき、財務的なメリットをご説明ください」

  • 「設備部長様には、こちらの『蓄電池併設による自家消費率・自給率シミュレーション』(エネがえるBizより出力)をお持ちし、BCP効果と最適な容量設計について、ぜひ一度ご相談させてください」

これは、単なる資料提供ではありません。営業担当が、自らの推進者(Champion)に対し、「社内の承認プロセスをいかに攻略するかをコーチングする35 という、極めて高度なバイヤー・イネーブルメント 8 の実践です。

ステップ4:「部門横断ワークショップ」による能動的な合意形成

ここが、ディールが「失速」するか「成約」するかの最大の分岐点です。

  • 失敗する営業:「資料(PDF)をお送りしましたので、皆様でご検討いただき、結果が出たらご連絡ください」。

    • 結果:これは、最も困難な「合意形成」のプロセスを顧客に丸投げする行為です。各部門はそれぞれの懸念を解消できず、「内部の意見不一致」 3 により、ディールは40%の確率で失速します。

  • 成功する営業(オーケストレーター)「CFO様、設備部長様、ESG室様。皆様がそれぞれお持ちの懸念事項 31 を一度に解消し、御社にとっての最適解を導き出すため、30分間だけ『経済効果シミュレーション・ワークショップ』を開催させていただけないでしょうか?」

    • 結果営業担当が、能動的に「合意形成の場」を創出します。

このワークショップで実行すべきは、「エネがえるBiz」 32画面を共有し、リアルタイムでシミュレーションを調整することです。

  • CFOが「もし補助金がX円減額されたら、回収期間はどうなる?」と質問すれば、その場でExcel諸元の補助金額を変更し、即座に再計算されたROIを提示します 32

  • 設備部長が「蓄電池容量をY%増やした場合のBCP効果とROIへの影響は?」と質問すれば、その場でパラメーターを変更し、再計算された自家消費率とROIを提示します 32

ステップ5:「隠れた購入者(Hidden Buyers)」の炙り出しとエンゲージ

この「部門横断ワークショップ」(ステップ4)は、ディールを停滞させる「隠れた購入者(Hidden Buyers)」 3 を炙り出し、直接エンゲージする絶好の機会となります。

ワークショップに「CFO代理」として参加した財務部の担当者が、シミュレーション結果 32 を見て、こう指摘したとします。

「このROI計算の前提となっている諸元(例:電力単価上昇率) 32 は、うちの経営企画室が設定している基準と異なります」

その瞬間、営業担当は、その人物こそがCFOの意思決定に多大な影響を与える真の「Influencer(影響者)」 19 であることを特定できます。その場で彼(彼女)の懸念(計算前提のズレ)を解消し、シミュレーションに反映させることが、CFOの「承認(Approval)」 19 を得るための最短距離の鍵となるのです。

このステップ4と5の実践こそが、Gartnerが示す「営業との接触時間はわずか17%」 1 という厳しい制約の中で、最大の成果を出すための最適解です。

従来型の営業が、17%の時間を使って「静的な提案書」をプレゼンする(=情報の一方通行)のに対し、オーケストレーター型営業は、17%の時間を使って「動的なワークショップ」を開催し、その場で「CFOの懸念(金融ディール)」 31、「設備部の懸念(技術ディール)」 31、「経営層の懸念(戦略ディール)」 31 を同時に吸い上げ、同時に解決(32)するのです。

これにより、合意形成のスピードは劇的に向上し 34、「40%の失速」 3 という罠を回避することが可能になります。

結論:2025年のB2Bセールスは「共感」から「合意形成のオーケストレーション」へ

マルチスレッドは「技術」ではなく「戦略」である

本レポートで提示した数々のデータが示す通り、2025年現在のエンタープライズセールスの勝率は、顧客組織のいくつの部門 11、何人のステークホルダー 10 とエンゲージしているかに強く相関しています。勝率6倍 10、勝率130%向上 9 という数字は、その冷徹な結果です。

もはや、一人の営業担当の「共感力」や「人間的魅力」といった属人的なスキルだけで、平均6〜10人 14 が複雑な利害と思惑で絡み合うバイング・センター 19 を突破し、40%の確率で発生する「内部の意見不一致」 3 を乗り越えることは不可能です。マルチスレッドは、個人の「技術(Technique)」ではなく、組織として実行すべき「戦略(Strategy)」なのです。

産業用太陽光の成約率こそが、日本の脱炭素のボトルネックである

視点をマクロに移すと、日本の脱炭素化は、「導入コストの高さ」 28 や「適地制約」 29、「社会的受容性」 28 といった構造的な課題に直面しています。

これらのマクロな課題は、個々の企業の導入プロセスにおいて、「CFOによる投資採算性の懸念」 31、「設備部門による運用リスクの懸念」 29、「経営層による戦略的価値の不透明性」 31 といった、ミクロな「合意形成の難しさ」 3 として具体化されます。

であるならば、日本の再生可能エネルギー普及というマクロな課題を解決する最も現実的かつ強力なアプローチは、個々の企業の「合意形成」を、データとツールによって加速させることに他なりません。

日本のエネルギーソリューション企業が、その「販売戦略」を変革することこそが、日本の脱炭素化のボトルネックを解消する鍵となります。

データ(マルチスレッド統計)とツール(エネがえるBiz)の掛け算が未来を定義する

トップパフォーマーは、自らが「製品を売る」のではなく、顧客のバイング・センターが「合意するのを助ける」オーケストレーター(指揮者) 9 として振る舞います。

「エネがえるBiz」のような経済効果シミュレーションツールは、そのオーケストレーターが振るう「タクト(指揮棒)」です。

そのタクトは、

  • CFO 31 には「ROI32 という「数字(=金融ディール)」を、

  • 設備部 31 には「自家消費率とBCP効果32 という「安定(=技術ディール)」を、

  • 経営層 31 には「CO2削減量33 という「未来(=戦略ディール)」を示します。

これら3つの異なる言語を話すステークホルダー全員が、客観的なシミュレーションという「共通言語」の上で、同時に「Yes」と合意した時。その時初めてディールは「成約」し、日本の脱炭素化が、また一歩確実に前進するのです。


FAQ(よくある質問)

Q1: B2Bセールスにおける「マルチスレッド」の最大のメリットは何ですか?

A1: 最大のメリットは、ディールの「失速リスクの低減」と「成約率の劇的な向上」です。統計によれば、複数のバイヤーが関与するディールは、単一の接点に依存するディールと比較して成約可能性が6倍高く 10、6名以上が関与すると成約率は最大39%に達する可能性があります 10。これは、特定の担当者一人(シングルスレッド)に依存するリスクを分散し、組織全体の「合意形成」 5 を確実にするためです。

Q2: 産業用太陽光の導入で、企業が最も懸念する点(バイング・センター別)は何ですか?

A2: ステークホルダーごとに懸念が全く異なります。

  • CFO(財務部)は、「投資回収期間(ROI)は明確か」「採算性は確保できるか」という「投資」の観点を最重要視します 31

  • 設備管理者(工場長)は、「停電時のBCP対策として機能するか」「運用・保守(O&M)の負担は重くないか」という「現場の安定稼働」を最重要視します 29

  • 経営層(ESG室)は、「CO2排出量をどれだけ定量的に削減できるか」「企業価値向上に貢献するか」という「戦略・PR」の観点を最重要視します 31。

    これら3つの異なる懸念を同時に解決することが成約の鍵です。

Q3: 「エネがえるBiz」のようなシミュレーションツールは、なぜ成約率を高めるのですか?

A3: それは、シミュレーションツールが「合意形成エンジン」として機能するからです。「エネがえるBiz」は、Q2で挙げたCFO、設備部、経営層という異なるステークホルダーに対し、彼らがそれぞれ求める「回答」を「客観的なデータ」として同時に提供します 32。CFOには「ROI・回収期間レポート」 32 を、設備部には「自家消費率・蓄電池併設シミュレーション」 32 を、経営層には「CO2削減量」 33 を提示できます。これにより、営業担当は「内部の意見不一致」 3 を防ぎ、合意形成を能動的に指揮(オーケストレーション)できるため、成約率が向上します。

Q4: 営業担当が1人しかいない中小企業でも、マルチスレッドは可能ですか?

A4: 可能です。マルチスレッドとは「売り手の人数」ではなく、「買い手組織の複数の関係者・部門と接点を持つ」戦略を指します 11。むしろ、リソースが限られる中小企業こそ、データに基づきアプローチすべきです。Gongのデータでは、売り手側も「チームセリング(例:営業+技術者)」で臨むと成約率が最大258%向上する 12 と示しており、シミュレーションツール 34 を活用して営業担当の専門知識(特に財務面 32)を補強することは、リソース不足を補う非常に有効な戦略です。


ファクトチェックサマリー

本レポートの主張は、以下の客観的な調査結果とデータに基づいています。

  • B2B購買の複雑性: B2B購買には平均6〜10人の意思決定者が関与します 1

  • ディール失速の主因: B2Bディールの40%以上が、競合ではなく「内部の意見不一致」によって失速しています 3

  • マルチスレッドの成約率への効果:

    • 複数バイヤーの関与で成約可能性が6倍に増加します 10

    • 6名以上の関与で成約率が最大**39%**に向上します 10

    • 5万ドル以上の案件では、勝率が平均**130%**向上します 9

    • 成約ディールは失注ディールに比べ、バイヤー関与者数が2倍多いです 9

  • 部門数の重要性: 1部門のみとの接触(勝率28%)に対し、3部門以上との接触で勝率は**44%**に向上します 11

  • チームセリングの効果: 売り手側が3名以上で販売する場合、勝率は最大**258%**向上します 12

  • 産業用太陽光の課題(日本):

    • 日本の太陽光コスト($5.8\text{円/kWh}$)は世界平均($4.1\text{円/kWh}$)より割高です 28

    • 適地制約や、中・小規模設備のO&M技術の不足が課題となっています 29

  • バイング・センターの懸念: CFOは「ROI・投資回収」 31、設備部は「BCP・運用」 29、経営層は「CO2削減」 31 をそれぞれ異なる基準で評価します。

  • シミュレーションツールの機能:

    • 「エネがえるBiz」は「ROI・回収期間」「自家消費率」「蓄電池併設ROI」を自動算出します 32

    • CO2削減量は $CO_2\text{排出削減量}=(\text{太陽光自家消費量}+\text{太陽光蓄電池充電量})\times 0.438 / 1000$ の式で算出されます 33

  • ツールの導入効果(事例): 「エネがえるBiz」の導入により、提案リードタイムが30日から5日に短縮され、入社2ヶ月の新人でも提案が可能になり、3ヶ月での受注に成功した事例が報告されています 34


出典一覧

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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