CO2排出量可視化サービスの市場規模と数値予測 2025年~2050年

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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目次

CO2排出量可視化サービスの市場規模と数値予測 2025年~2050年

CO2排出量可視化サービス市場は、カーボンニュートラル実現に向けた世界的な取り組みにより、急速な成長を遂げています。各企業がサプライチェーン全体の排出量管理を迫られる中、この市場がどのように発展していくのか、今後25年間の詳細な市場予測と動向を徹底解説します。

CO2排出量可視化サービスの基本概念と重要性

CO2排出量可視化とは何か

CO2排出量可視化とは、企業や組織が自社の事業活動を通じて排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの量を計測、集計、分析し、可視的に表現するプロセスです。この可視化は、単なる数値の羅列ではなく、排出源の特定、排出パターンの分析、削減対策の効果測定など、多角的な視点からCO2排出の全体像を捉えることを可能にします。

参考:CO2可視化フレームワークEdition 2.0がもたらす新たな可能性:サプライチェーンにおけるデータ共有とCO2削減へのアプローチ | DATA INSIGHT | NTTデータ – NTT DATA 

重要性が高まる背景

CO2排出量可視化サービスの重要性が高まっている背景には、以下の要因があります:

  1. 国際的な気候変動対策の強化:パリ協定や各国のカーボンニュートラル宣言による法規制の強化

  2. ESG投資の拡大:投資家が企業の環境パフォーマンスを重視

  3. サプライチェーン全体の排出量管理:Scope 1・2だけでなくScope 3(間接排出)の管理要請

  4. 情報開示要求の増加:TCFDなどによる気候関連財務情報開示の推進

  5. 消費者の環境意識の高まり:企業の環境への取り組みが購買判断材料に

これらの要因により、近い将来、ほぼすべての企業が自社の排出量を「見える化」せざるを得ない状況となっています10

世界のCO2排出量可視化サービス市場の現状

現在の市場規模

2023年時点での世界のCO2排出量可視化・カーボンフットプリント管理市場は、約113億米ドル(約1.5兆円)と推定されています13。この市場は、従来の単純な排出量計算ツールから、AIを活用した高度な分析・予測機能を持つプラットフォームまで、多様なソリューションで構成されています。

主要プレイヤーと市場構造

市場は大きく分けて以下のプレイヤーで構成されています:

  1. 大手テクノロジー企業:マイクロソフト、SAP、IBMなど

  2. 専門ソリューションプロバイダー:エコバ、エナブロン、グリーンストーンなど

  3. コンサルティング会社:デロイト、PwC、EYなど

  4. スタートアップ企業:革新的なAIベースの可視化ツールを提供

市場は急成長している一方で、サービスの過当競争が進み、早くも淘汰の時代に突入しつつあります10。特に、大手テクノロジー企業が既存の企業向けソフトウェアにCO2可視化機能を統合する動きが加速しており、独立型のソリューションプロバイダーにとっては厳しい競争環境となっています。

年代別市場規模予測(2025年~2050年)

2025年の市場規模予測

2025年のCO2排出量可視化市場は、世界全体で約16.9億米ドル(約2.5兆円)に達すると予測されています。日本国内市場においては、CO2排出量可視化プラットフォームの市場規模は約22.7億円と見込まれています。

この時期は、気候変動に関する情報開示が多くの国・地域で義務化され、大企業を中心に導入が急速に進む段階です。特に欧州のCBDR(企業持続可能性報告指令)の本格適用や、アメリカのSEC気候変動開示ルールの施行により、市場の急成長が見込まれます。

2030年の市場規模予測

2030年になると、CO2排出量可視化サービス市場は世界で約46.0億米ドル(約6.9兆円)に拡大すると予想されています。日本国内市場では、66億円規模に成長すると見込まれ、2022年比で5.5倍の成長となります8

2030年は多くの国や企業が掲げるカーボンニュートラル中間目標の節目であり、市場の成長が加速する時期となります。規制対象の中小企業への拡大や、サプライチェーン全体での可視化要求の強まりが、市場拡大の大きな要因となります。

2035年の市場規模予測

2035年には、市場規模は125.3億米ドル(約18.8兆円)と、2030年から約3倍に拡大すると予測されています。日本国内市場も191.5億円に成長する見通しです。

この時期には、CO2排出量可視化が「義務」から「当然の前提条件」となり、企業価値評価の基本的要素として定着します。また、サービスの高度化が進み、AIによる排出量予測や削減シミュレーション機能が標準装備となるでしょう。

2040年の市場規模予測

2040年の市場規模は341.4億米ドル(約51.2兆円)に達し、日本国内市場も555.9億円にまで成長すると予測されています。

この頃には、CO2排出量可視化サービス炭素取引・相殺(カーボンオフセット)サービス統合され、企業はリアルタイムで排出量をモニタリングしながら、最適な炭素取引戦略を実行できるようになるでしょう。また、製品単位でのカーボンフットプリント可視化が一般化し、消費者向け商品のほとんどにCO2排出量情報が表示されるようになると考えられます。

2050年の市場規模予測

2050年には、CO2排出量可視化サービス市場は2,535.1億米ドル(約380兆円)という巨大市場に成長し、日本国内市場4,682.2億円に達すると予測されています。

2050年は多くの国や企業がカーボンニュートラル達成を目指す節目の年です。この時点では、CO2排出量可視化は単なる「見える化」から、社会全体の炭素循環を最適化するためのインフラとして機能していると考えられます。デジタルツインブロックチェーン技術と融合し、地球規模でのカーボンバジェット(炭素予算)管理を支える基盤になるでしょう。

市場成長の主要因と市場動向

主要成長要因

CO2排出量可視化サービス市場の急成長を支える主な要因は以下の通りです:

  1. 規制強化と義務化:各国・地域での排出量開示義務化の拡大

  2. 投資家からのプレッシャー:ESG評価を重視する機関投資家の増加

  3. サプライチェーン連動:取引先からの排出量情報提供要請の増加

  4. 技術革新と低コスト化:クラウドサービスやAIの発展による導入障壁低下

  5. カーボンプライシングの普及:炭素税や排出権取引制度の拡大

  6. 消費者の環境意識向上:環境配慮型商品・サービスへの需要増

特に、2030年以降はインターナルカーボンプライシング(ICP)の一般化により、企業内での炭素コストが可視化され、投資判断や経営戦略に組み込まれるようになります6。これにより、CO2排出量可視化サービスの価値はさらに高まるでしょう。

参考:インターナルカーボンプライシング実践ガイド|GX戦略 

市場動向と変革の波

市場の発展には、以下のような段階的な変革が予想されます:

  • 第1段階(現在~2025年):基本的な排出量算定・開示対応

  • 第2段階(2025~2030年):企業間データ連携とサプライチェーン全体の可視化

  • 第3段階(2030~2040年):リアルタイム可視化とAIによる予測・最適化

  • 第4段階(2040年以降):社会全体の炭素循環マネジメント

特筆すべき点として、2025年から多くの企業がサプライチェーン全体でのCO2排出量把握を迫られることが挙げられます14。これにより、従来の自社のみの排出量管理(Scope 1・2)から、サプライチェーン全体(Scope 3)を含めた統合的な可視化ソリューションへの需要が急増すると予測されています。

参考:GHGプロトコルイニシアチブのガイドライン 

地域別の市場分析

アジア太平洋地域

アジア太平洋地域は、2022年時点でCO2排出量可視化市場全体の45.8%のシェアを占め、最大の市場となっています3。この地域では、中国やインドなどの新興国における工業化の進展と環境規制の強化が市場拡大の主な要因です。

特に注目すべきは、インドの排出量は2021年の6.8%から2030年には9.3%に増加すると予測されている点です16。急速な経済発展を続けるアジア諸国では、経済成長と排出削減を両立するための効率的なCO2管理ツールへの需要が高まっています。

北米市場

北米市場は、特に米国を中心に、最先端の技術革新とスタートアップエコシステムによって特徴づけられます。米国のSECによる気候関連情報開示の義務化が進められており、これが市場拡大の大きな推進力となっています。

米国の排出量は2030年には全世界の13.6%を占めると予測されていますが、排出量可視化技術の導入によって効率的な削減が期待されています16

欧州市場

欧州市場は、規制環境の先進性と高い環境意識により、CO2排出量可視化サービスの導入が最も進んでいる地域です。欧州連合(EU)のCBDRや企業サステナビリティデューデリジェンス指令(CSDDD)など、厳格な開示要件が市場をけん引しています。

特にドイツと英国が欧州地域で急速なCAGRで発展すると予想されており3、これらの国々は持続可能性報告の標準化における世界的リーダーとしての地位を固めつつあります。

日本市場の特徴

日本市場は、2022年度時点でCO2排出量可視化プラットフォーム市場が12億円であり、2030年度には66億円(5.5倍)に成長すると予測されています8

日本のCO2排出量可視化プレイヤーにはスタートアップ、大企業、ソフトウェア会社、外資系企業と続々と新規参入が相次いでおり、以下のような企業群が市場を活性化している。

アスエネ株式会社|CO2排出量見える化・削減・報告、持続的なサプライチェーン調達のためのESG評価 

株式会社ゼロボード|ESG関連データの収集・管理・報告とサプライヤー評価のクラウドソリューション 

Booost|サステナビリティERPで CSRDやISSBへの対応を起点としたSXプロジェクト成功を支援 

Sustana|CO2排出量算定・削減支援クラウドサービス :三井住友銀行(smbc.co.jp) 

Persefoni – Climate Management & Carbon Accounting Platform 

e-dash|CO2排出量の可視化・削減を総合的にサポート 

invox炭素会計 – CO2排出量の算定・可視化から目標設定、削減、カーボンオフセットまで対応

CO2排出量可視化プラットフォーム「EcoNiPass(エコニパス)」|ウイングアーク1st 

CARBONIX | 脱炭素化支援プラットフォーム | GHG排出量算定・可視化ツール

株式会社タンソーマンGX-脱炭素スタートアップ企業 

オンド株式会社|SaaS × 気候変動コンサルティング 

なお、CO2排出量可視化は国、地方自治体、大手企業、金融機関、可視化ツール提供ベンダーが怒涛の勢いで広げてきて入るが、こと需要家の観点にたつと、「CO2排出量可視化だけでは収益力アップにつながっていない」という調査結果にある通り、本来最重要となるキャッシュフロー改善や収益力アップに可視化だけではつながっていないという根源的な課題が浮き彫りとなっている。今後は「アフター可視化」の「排出量削減&収益力アップ」を同時に実現できる屋根上自家消費型太陽光・蓄電池の普及がさらに注目されると推測される。

参考:[独自レポートVol.25] CO2排出量可視化ツールを導入する企業のうち、排出量削減に取り組むのは3社に1社に留まる 〜約7割から、CO2排出量の可視化が「直接的な利益やコスト削減につながっていない」と悩みの声〜 | エネがえる総合ブログ – リサーチ | 商品・サービス | 国際航業株式会社 

太陽光・蓄電池・EV・V2Hなどの再生可能エネルギーソリューションと連携した経済効果シミュレーションツールへの関心が高まっています。例えば、エネがえるのようなシミュレーションソフトは、CO2排出量削減と経済的なメリットを同時に可視化することで、導入企業の脱炭素化を支援しています。

また、現在推進されているGXスキル標準化やグリーン人材の要件の中には、「儲ける、収益を出す」といった事業開発、ビジネスモデル構築、プロダクト開発などのスキルを必須でいれていく観点が必須になるだろう。さもなくば、「可視化」しただけで、次に何も生み出せない事業会社が続発するはずである。

参考:利益を生めるグリーンスキル・GX人材とは何か?新規事業・人材開発・研修設計に役立つ完全ロードマップ【政策・エネルギー分野対応】 

参考:GXスキル標準から始める儲かるグリーンビジネス人材育成マスタープラン 「グリーンレベニューアーキテクト」へのGX人材進化論

参考:700社導入のエネがえるが仕掛ける地域革命!ELVL構想で「電力×教育×ゲーム」が地域の脱炭素シフトを加速 

参考:脱炭素先行地域 – 儲かるビジネス構築と人材像を提案する 

産業別の導入動向と事例

製造業における可視化

製造業では、製品ライフサイクル全体のカーボンフットプリント管理が重要課題です。原材料調達から製造、流通、使用、廃棄までの各段階でのCO2排出量を可視化し、製品設計段階から低炭素化を図る取り組みが進んでいます。

例えば、自動車メーカーでは、EVシフトに伴い、製造過程でのCO2排出量可視化と削減が競争力の源泉となっています。特にバッテリー製造時の排出量削減が注目されており、サプライヤーを含めた排出量データの連携が進んでいます。

金融業界における可視化

金融業界では、投融資ポートフォリオのフィナンスドエミッション(融資先の排出量)の可視化が進んでいます。TCFDやPCFAなどの枠組みに基づき、投融資先のCO2排出量を計測・開示する動きが加速しています。

金融分野でのCO2排出量可視化ツールの導入は、予測期間中に最も高いCAGRで成長すると予想されており9、持続可能な金融の実現において中核的な役割を果たすと考えられています。

参考;金融業界のGX戦略・再生可能エネルギー普及貢献におけるボトルネックと課題の構造 

参考:産業用蓄電池 × エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)による新価値創造アイデア10選とは? 

小売・消費財産業における可視化

小売・消費財産業では、製品単位でのカーボンラベリングに向けた取り組みが進んでいます。消費者に製品のカーボンフットプリント情報を提供することで、環境意識の高い消費者からの支持獲得を目指す企業が増加しています。

例えば、食品業界では原材料の生産から流通、調理、廃棄までのライフサイクル全体の排出量を計算し、消費者に開示する取り組みが始まっています。エネがえるのようなシミュレーションツールを活用することで、CO2排出量削減と経済的メリットの両立を可視化し、消費者への訴求力を高めることが可能になります。

エネルギー業界における可視化

エネルギー業界では、供給側と需要側の両面での可視化が進んでいます。再生可能エネルギーの発電量と、それによるCO2削減効果の可視化が、カーボンクレジット創出の基盤となっています。

特に、分散型エネルギーリソース(DER)の普及に伴い、地域単位でのエネルギー生産・消費とCO2排出のバランスを可視化するプラットフォームの需要が高まっています。エネがえるBizのような産業用自家消費型太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションツールは、こうした文脈で重要な役割を果たしています。

技術トレンドと革新

データ連携とプラットフォーム化

CO2排出量可視化の分野では、異なる企業間のデータ連携基盤の構築が重要なトレンドです。JEITAが推進する「見える化ワーキンググループ」では、サプライチェーン上の異なる企業間でCO2排出量データを共有し、Scope 3を含むサプライチェーン全体の排出量を可視化するデータプラットフォームの構築を目指しています17

このようなプラットフォームは、2025〜2030年に実用段階に入り、サプライチェーン全体での最適化を可能にすると予想されます。

AIと機械学習の活用

AI技術の発展により、CO2排出量データの自動収集・分析・予測が可能になっています。具体的には以下のような機能が実現しています:

  1. 予測分析:過去のデータから将来の排出量を予測

  2. 異常検知:通常とは異なる排出パターンを検出

  3. シナリオ分析:様々な削減施策のシミュレーション

  4. 最適化:コスト効率の高い削減策の提案

これらの技術は2030年以降さらに進化し、企業の意思決定プロセスにリアルタイムで統合されるようになると予想されます。

IoTとセンサー技術の発展

IoTセンサーの普及により、リアルタイムでのCO2排出量モニタリングが可能になりつつあります。二酸化炭素モニター市場は予測期間中に7.60%のCAGRで成長すると予測されており3、センサーの小型化・低コスト化により、様々な場所での排出量のリアルタイム計測が実現します。

特に、固定式CO2モニターは市場シェアの約54.6%を占めており2、ビルや工場などの固定施設での常時監視に活用されています。

ブロックチェーン技術による透明性の確保

ブロックチェーン技術は、CO2排出量データの信頼性と透明性を高めるために活用されています。排出量データの改ざん防止や、カーボンクレジットの二重計上防止など、データの信頼性確保において重要な役割を果たしています。

2030年以降は、ブロックチェーンベースのカーボンクレジット取引プラットフォームと連携した排出量可視化サービスが主流になると予想されます。

企業のための導入ガイダンス

CO2排出量可視化の段階的アプローチ

企業がCO2排出量可視化を始める際には、以下の段階的アプローチが推奨されます:

  1. 基礎段階:自社直接排出(Scope 1)とエネルギー由来間接排出(Scope 2)の可視化

  2. 発展段階:サプライチェーン排出(Scope 3)の主要カテゴリーの可視化

  3. 統合段階:全排出源の可視化とリアルタイムモニタリング

  4. 最適化段階:AIによる予測と最適化

各段階に応じたツール選定と体制構築が重要であり、専門家の支援を受けることも有効です。

コスト効率と投資対効果

CO2排出量可視化サービスの導入コストは、企業規模や要求機能によって大きく異なります。概ね以下のような価格帯が一般的です:

  • 基本的なツール:年間数十万円〜数百万円

  • 中規模企業向け包括的ソリューション:年間数百万円〜数千万円

  • 大企業向けエンタープライズソリューション:年間数千万円〜

導入による主な便益としては、規制対応コストの削減エネルギー効率化によるコスト削減投資家・顧客からの評価向上などが挙げられます。

太陽光・蓄電池・EVなどの再生可能エネルギー設備投資と組み合わせる場合は、エネがえるのような経済効果シミュレーションツールを活用することで、より精度の高い投資判断が可能になります。導入企業の事例では、成約率の大幅アップや商談期間の短縮などの効果が報告されています。

サービス選定のための評価基準

機能面の評価ポイント

CO2排出量可視化サービスを選ぶ際の機能面での評価ポイントは以下の通りです:

  1. 排出源カバレッジ:Scope 1,2,3のどこまでカバーするか

  2. データ収集方法:自動連携の範囲と手動入力の必要性

  3. 算定方法:使用する排出係数データベースの信頼性と更新頻度

  4. 分析・レポート機能:ダッシュボードの使いやすさと出力レポートの充実度

  5. 目標設定・進捗管理:SBTなどの目標管理機能

  6. シミュレーション機能:削減施策のシミュレーション精度

  7. 外部連携:他システムとのAPI連携の容易さ

信頼性と標準適合性

選定時には、以下の標準・枠組みへの適合性も重要な評価基準となります:

  1. GHGプロトコル準拠:国際的に認められた温室効果ガス算定方法への準拠

  2. ISO 14064/14067対応:組織・製品のカーボンフットプリント算定規格への対応

  3. TCFD/CSRD対応:情報開示フレームワークとの整合性

  4. SBTi対応:科学的根拠に基づく削減目標設定への対応

  5. 第三者検証対応:算定結果の第三者検証プロセスへの対応

導入・運用の容易さ

実務面での評価ポイントとしては、以下の点に注目する必要があります:

  1. 導入期間:システム導入から本稼働までの期間

  2. ユーザーインターフェース:操作性と学習曲線

  3. サポート体制:日本語サポートの有無と対応時間

  4. カスタマイズ性:自社プロセスに合わせたカスタマイズの可能性

  5. スケーラビリティ:企業成長や対象範囲拡大への対応

  6. 教育トレーニング:導入時・運用時のトレーニング提供

将来の展望と課題

直接大気回収(DAC)市場との関連

CO2排出量可視化市場は、将来的に直接大気回収(DAC)市場と密接に関連していく可能性があります。IEAによると、DACによるCO2回収は2030年には9千万トン/年、2050年には9.8億トン/年が必要とされており、その市場規模は2030年に126億ドル、2050年に2,450億ドルと想定されています7

CO2排出量可視化ツールは、どこでDACが最も効果的に実施できるかを特定するために重要な役割を果たすでしょう。

カーボンニュートラル実現に向けた統合プラットフォーム

2030年以降は、CO2排出量可視化サービスは単独のソリューションから、カーボンマネジメントの統合プラットフォームへと進化していくと予想されます。具体的には以下の機能が統合されるでしょう:

  1. 排出量可視化:現状の排出量計測

  2. 削減シミュレーション:様々な対策の効果予測

  3. カーボンクレジット取引:不可避な排出のオフセット

  4. 規制対応レポーティング:各種規制への自動対応

  5. サプライチェーン連携:取引先とのデータ共有

こうした統合プラットフォームの出現により、企業はより戦略的なカーボンマネジメントが可能になります。

データの標準化と精度向上の課題

CO2排出量可視化の大きな課題の一つは、データの標準化と精度向上です。現在の算定手法では、企業の排出量削減努力が反映されないという問題があります17

この課題を解決するために、各業界団体や国際機関が協力して、製品・サービスごとの詳細な排出係数データベースの整備や、企業間での実排出データ共有の仕組み作りが進んでいます。2030年までには、より正確で標準化されたデータ基盤が構築されると期待されます。

日本市場の特徴と課題

日本市場の成長要因

日本国内のCO2排出量可視化市場は、2021年度実績0.7億円から2022年度見込19.3億円(対前年比2764%)、2023年度予測57.3億円(同296%)と急加速しています1。この背景には以下の要因があります:

  1. プライム市場上場企業への開示義務化:市場区分の再編に伴う情報開示強化

  2. 金融機関によるESG評価の重視:融資判断におけるESG要素考慮の強化

  3. 日本政府による2050年カーボンニュートラル宣言:国策としての位置づけ

  4. GXリーグの創設:企業間の自主的な取り組み促進

今後は、上場企業だけでなく、サプライチェーンの中小企業への波及が市場拡大の鍵となるでしょう。

国内固有の課題

日本市場における特有の課題としては、以下の点が挙げられます:

  1. データ収集の効率化:紙ベースのプロセスが残る中小企業でのデータ収集

  2. 人材不足:CO2排出量算定の専門知識を持つ人材の不足

  3. サプライチェーン連携の複雑さ:多層的な下請け構造における情報収集の難しさ

  4. 費用対効果の見極め:特に中小企業における投資判断の難しさ

これらの課題に対応するため、日本市場向けには低コストで導入しやすいクラウドサービスや、業種特化型の排出係数データベースなどの開発が進んでいます。

日本企業の競争力強化のポイント

グローバル市場での競争力強化において、日本企業は以下の点に注力する必要があります:

  1. サプライチェーン全体の可視化:Scope 3排出量の把握と削減

  2. 製品単位のカーボンフットプリント管理:低炭素製品の差別化

  3. 再生可能エネルギー調達の最適化:PPA等による効率的な脱炭素化

特に再生可能エネルギー導入においては、産業用自家消費型太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションソフト「エネがえるBiz」などを活用し、CO2削減と経済性を両立させる戦略が重要になります。実際に導入企業では、有効商談率・成約率が大幅UPし、ご成約85%という成果も報告されています。

結論:CO2排出量可視化サービスの未来

パラダイムシフトが加速する市場

CO2排出量可視化サービス市場は、単なる「規制対応ツール」から「戦略的経営資源」へと位置づけが変化しつつあります。2025年から2050年にかけて、世界市場は16.9億ドルから2,535.1億ドルへと150倍以上に拡大すると予測されており、カーボンニュートラル実現に向けた重要なインフラとなります。

企業にとっての機会とリスク

この市場変化は企業にとって以下の機会とリスクをもたらします:

機会

  • CO2削減によるコスト最適化

  • 資本市場からの評価向上

  • 新しいビジネスモデルの創出

  • 規制対応の効率化

リスク

  • 対応遅れによる市場アクセスの制限

  • 投資家からの評価低下

  • 優秀な人材の流出

  • レピュテーションリスク

持続可能な未来に向けて

CO2排出量可視化サービスは、単に「見える化」するだけでなく、具体的な削減アクションを促進し、効果を測定することが求められています。今後は、可視化から削減、そして新たな価値創造へとつながるエコシステムの一部として発展していくでしょう。

例えば、太陽光や蓄電池などの再生可能エネルギー設備導入においては、CO2削減効果と経済的メリットを同時に可視化するエネがえるのようなソリューションが、意思決定を効率化し、普及を加速させる役割を果たしています。

最終的に、CO2排出量可視化サービスは、パリ協定の目標達成と持続可能な社会の実現に不可欠なツールとなるでしょう。企業は早期に適切なソリューションを導入し、自社の排出量を正確に把握・削減することで、社会的責任を果たしながら競争優位性を確立することができます。

よくある質問(FAQ)

Q1: CO2排出量可視化サービスを導入するメリットは何ですか?

A1: 主なメリットには以下があります:

  • 規制対応の効率化と法的リスクの低減

  • エネルギーコストの削減につながる無駄の発見

  • ESG投資家からの評価向上

  • サプライチェーン上での取引先からの要請への対応

  • 環境意識の高い顧客からの支持獲得

  • 従業員の環境意識向上とエンゲージメント強化

Q2: 中小企業でもCO2排出量可視化に取り組む必要がありますか?

A2: はい、必要です。現在は大企業が中心ですが、サプライチェーン排出量(Scope 3)の把握が進む中で、大企業の取引先である中小企業にも排出量データの提供が求められるようになります。2025年頃から本格化すると予想されており、早めの準備が推奨されます。

Q3: サービス選定で最も重視すべきポイントは何ですか?

A3: 自社の事業特性と成長段階に合ったサービスを選ぶことが重要です。具体的には以下のポイントを検討してください:

  • 自社が対応すべき規制・基準への適合性

  • データ収集プロセスの効率性(自動化の程度)

  • 使いやすさとユーザートレーニングの必要性

  • 拡張性と将来のニーズへの対応

  • コスト構造と予算との整合性

Q4: CO2排出量可視化サービスと再生可能エネルギー導入はどう関連していますか?

A4: CO2排出量可視化により、エネルギー由来の排出(Scope 2)が明確になり、再生可能エネルギー導入の効果が定量的に把握できます。太陽光発電や蓄電池などの再エネ設備投資判断には、CO2削減効果と経済性の両面からの検討が重要です。このような総合的な判断に役立つツールとして、エネがえるのような経済効果シミュレーターが活用されています。

Q5: 今後のCO2排出量可視化サービスにはどのような機能が追加されていくと予想されますか?

A5: 今後10年間で以下のような機能の実装が予想されます:

  • AIによる排出量予測と削減シナリオの自動生成

  • デジタルツインと連携したリアルタイムシミュレーション

  • ブロックチェーンを活用したサプライチェーン全体の透明性確保

  • カーボンクレジット取引プラットフォームとの統合

  • 製品単位でのカーボンフットプリントリアルタイム計算

  • 消費者向け製品のカーボンラベリング自動化

Q6: データの信頼性をどのように確保すればよいですか?

A6: CO2排出量データの信頼性確保には以下の方法があります:

  • 国際的に認められた算定方法(GHGプロトコルなど)の採用

  • 一次データ(実測値)の割合を増やす

  • 第三者検証の実施

  • データ収集・管理プロセスの文書化

  • 内部監査システムの構築

  • 定期的な品質チェックと改善

出典

コード実行データによるCO2可視化市場予測
1 環境経営を推進するESG情報開示ソリューション市場動向
2 二酸化炭素モニターの世界市場予測(2023-2030)
3 二酸化炭素 (CO2) モニター市場の予測:~2030年
4 Product Carbon Footprint Verification Market Size & Forecast
5 二酸化炭素排出量管理 市場規模・予測 2025 に 2032
6 インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン – 環境省
7 DACロードマップの策定検討に向けた 今後の論点整理
8 CO2・環境価値取引関連市場を調査
9 Carbon Footprint Management Market worth $30.8 billion by 2028
10 「CO2見える化」市場でベンチャー廃業の嵐が吹く理由
13 世界のGHG可視化市場、2028年に約4兆円へ
14 ESG徹底予測2025 供給網のCO2排出把握が急務
16 世界の脱炭素|2030年に向けた国内外の最新動向とCO2排出量の推移
17 サプライチェーンのCO2排出量見える化に関する最新動向
18 二酸化炭素の世界市場 2025~2029年
19 環境価値(炭素削減価値)市場に関する調査

Citations:

  1. https://mic-r.co.jp/mr/02670/
  2. https://presswalker.jp/press/46520
  3. https://www.gii.co.jp/report/marf1477945-carbon-dioxide-co2-monitors-market-forecast-till.html
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  12. https://pando.life/article/1018861
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  23. https://econipass.com/carbon-neutral-market-trend/
  24. https://www.hitachi-solutions.co.jp/smart-manufacturing/sp/column/detail22/
  25. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000047675.html
  26. https://blog.marketresearch.com/3-major-factors-driving-carbon-footprint-management-market-growth
  27. https://hacobu.jp/blog/archives/1371
  28. https://www.rvsta.co.jp/news/20240401/

 

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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