太陽光・蓄電池の回収計算式|損失・劣化・交換・NPVの検算方法
著者:樋口 悟(国際航業株式会社)/確認日:2026年10月3日/公開概算モデル v1.0.0
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計算が信頼できるかは、結果の小数点の細かさでは判断できません。何を入れ、何を省き、どの条件で結果が変わるかを追えることが必要です。ここでは公開概算モデルの式と限界を示します。
家計の言葉で読むROI・IRR・キャッシュフロー・NPV
見積書に見慣れない言葉があっても、知りたいことは4つです。「いつお金が出入りする?」「全部でいくら増える?」「戻る時期を含めた年率は?」「今の価値でいくら得?」。同じ例で順に読み解きましょう。

以下は学習専用の架空例です。最初に30万円払い、維持費等を差し引いた正味の戻りが毎年末3万円、15年間続くと仮定します。太陽光・蓄電池の実勢価格や回収予測を示す例ではありません。

販売店への一言:「エネがえるで、補助金・電気料金プラン・劣化・交換費を入れた年別収支を見せてください。単純回収年とNPVの期間・割引率、ローン返済後の家計負担も説明してほしいです」。ROIやIRRが提示されたら、計算対象と収支表の根拠も確認しましょう。
背景が分かると、試算を読み違えにくくなる
割引率と電気代上昇率
電気代上昇率は、将来の買電単価を何%変えるか。割引率は、将来の収支を今の価値に換算する率。前者で節約額を計算した後、後者で現在価値に直します。同じ率にする必要はありません。名目収支には名目割引率を使い、一般物価の影響を二重に引かないようにします。
評価期間と耐用年数
評価期間は収支を数える年数。保証期間や実際の寿命とは別です。15年と25年のNPVは、期間差を明示して読みます。長く計算するなら交換・停止・撤去条件も確認します。
kWとkWh
kWは一度に使える・出せる電力の大きさ。kWhは電気の量。1kWの機器を1時間動かすと1kWhです。容量10kWhでも、一度に10kW出せるとは限りません。
自家消費と余剰電力
自家消費は、自宅で発電した電気を自宅で使うこと。余剰は、発電した時間に使い切れず残る電気。発電量が多くても、昼の使用量や蓄電池の運転が合わなければ、買電削減は同じだけ増えません。
売電の機会費用と往復効率
蓄電池へ回した電気は売れなくなるので、その売電収入を節約から差し引きます。1kWh充電し、往復効率85%なら使える量は0.85kWh。買電35円・売電8.5円なら追加便益は0.85×35−8.5=21.25円です。機器費用等は別に引きます。
FIT・卒FIT
FITは制度条件に沿った価格で電気を買い取る仕組み。卒FITはその買取期間が終了した状態です。卒FIT後の契約単価は一律ではありません。自宅の実際の売電契約を使って比較します。
劣化率とPCS交換
劣化率は年々発電量や使える容量が減るという前提。PCSは電気を家庭で使える形に変える機器。交換費や保証の範囲が回収結果を変えます。パネルと蓄電池に同じ劣化率を一律適用しません。
セット全体と蓄電池の追加差分
セット全体が黒字でも、太陽光だけに比べて蓄電池を足す効果が黒字とは限りません。買わない場合・太陽光のみ・セット・既設太陽光への電池追加を、同じ生活条件で比べます。
補助金と実質負担
表示された補助上限が、全世帯でそのまま受け取れるわけではありません。地域・対象機器・経費・申請順・併用条件を確認します。入金時期が後なら、最初に払う現金は実質負担より大きいことがあります。
計算定義の参考:Microsoft公式 NPV関数/Microsoft公式 IRR関数。図・架空例の計算は本ラボ作成。確認日:2026年10月3日。
電力量の計算式
| 記号 | 定義・式 | 単位 |
|---|---|---|
| G(t) | 容量×屋根条件反映済み原単位×(1−PV劣化率)^(t−1) | kWh/年 |
| D(t) | min{G(t)×直接自家消費率, 年間需要} | kWh/年 |
| S(t) | max{0, G(t)−D(t)} | kWh/年 |
| C(t) | min{余剰, 使用可能容量×劣化×充電機会×運用係数, 置換可能需要÷往復効率} | 充電側kWh/年 |
| B(t) | C(t)×往復効率 | 家電に届くkWh/年 |
| 損失 | C(t)−B(t) | kWh/年 |
太陽光なしの場合は充電側の余剰上限を使わず、買電充電費を計上します。利用可能な料金差が効率損失を下回る場合は、概算上は充電を停止します。発電・需要・入出力を時間順に計算した結果ではないので、同じ年の中で充電と放電が成立することまでは保証しません。
金額の計算式
| 指標 | 式 |
|---|---|
| 太陽光便益 | 直接自家消費×回避買電単価+余剰×売電単価 |
| 蓄電池追加便益 | 放電量×回避買電単価−充電量×売電単価 |
| 太陽光なし蓄電便益 | 放電量×回避買電単価−充電量×充電買電単価 |
| 年の投資CF | 便益−保守−交換−撤去 |
| 初期投資 | 導入費−確認済み補助金 |
| 累計CF | −初期投資+年次CFの合計 |
| NPV | −初期投資+年次CF÷(1+割引率)^年の合計 |
| 家計CF | 投資CF−元利返済。初期は自己負担分のみ |
回収した後、交換で赤字へ戻ることもある
初めて累計が0円以上になる年を初回回収と呼びます。しかし、その後に電池・PCS交換費を払って再び赤字になる場合があります。本研究所の比較表は、残りの評価期間も0円以上を保つ最初の年を「継続回収」として表示します。年単位の概算なので端数年は表示しません。
固定しない仮定
買電年変化率、卒FIT後単価、太陽光劣化率、電池劣化率、運用係数、充電機会、交換費・時期、撤去費、割引率は変更できます。電池交換時は容量劣化をリセットし、0円設定は交換せず停止する扱いです。将来価格低下は確定予測ではありません。
モデルの適用外と正式診断への引継ぎ
住宅の電気代削減を確認する入口の概算です。産業用の基本料金・デマンド、PPA・リース契約、出力制御、税効果、電力市場収入、DR報酬、月別の負荷・入出力制約、長期停止、保険、残存資産価値は標準計算に含めません。入金前の補助金を差し引くため、資金繰りは別途確認します。実際の工事契約に使う場合は、詳細なエネがえる診断と見積条件を照合します。
検証方法とデータ再利用
初年度の発電・売電・追加便益を手計算と照合し、需要ゼロ、容量ゼロ、直接自家消費0/100%、充電単価差ゼロ、交換なしの稼働停止を確認しています。公開データには版番号と入力条件を含めます。データセットは実測データではなく、同じ式を異なる仮説条件で評価した結果です。
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この研究所の試算は公開式による年次概算です。正式なエネがえるASP/Biz/API診断とは区別しています。数値の根拠と仮定を確認し、契約前に施工店で詳細診断を受けてください。
料金プラン変更と蓄電池の効果を、別々に比較する
「現行プラン・電池なし」「候補プラン・電池なし」「同じ候補プラン・電池あり」の3案で、設備を買わなくても得られる差額を分けます。安い買電プランで家計の節約が増えても、蓄電池の追加便益は小さくなる場合があります。年−1%・0%・3%・5%の単価変化、基本料金・売電・劣化・効率など25条件で検証できます。
料金分解モデルv1.0.0は既設PVの余剰充電・指定時間帯への放電を年次で概算します。PV直接使用後の残りの需要を時間帯比率で分け、放電量はその時間帯の需要以下に制限。請求A−請求Bをプラン変更効果、請求B−請求C−失う売電−保守−交換−撤去を電池追加収支とし、両者を足した値が合計収支になります。NPVも同じ分解で成立します。基本料金と売電単価の上昇は自動仮定せず、変動単価の年変化率はプラン別に入力します。従来の年次4案モデルとは需要制約の定義が異なり、正式な時間別料金診断とは異なります。
記事によって回収年が違うのはなぜ?前提をそろえて読む
「回収できる」と「できない」は、費用・年数・料金・電池を動かせる量が違えば、どちらも成立します。結論だけを比較せず、次の項目を合わせてください。
| 比較項目 | 東京電力EV DAYS | 蓄電ラボのセット比較 | 本ラボの簡易入口 |
|---|---|---|---|
| 対象・期間 | 卒FIT後の電池追加・15年 | 新設/既設等の4パターン・30年 | 新設25年、電池追加等15年を初期設定。変更可 |
| 機器価格 | 6kWh・工事込み132万円の仮定 | 5.5kW+10kWh・約261万円の仮定 | 工事税込の手元見積で置換 |
| 電気単価の変化 | 記事の15年算式は一定 | 買電年+2%を採用 | 初期0%。−1%/+3%等を感度比較 |
| 電池の交換・停止 | 容量保証15年を区切りに検証 | 交換費なし・年2%容量減で長期計算 | 15年停止を初期仮説。16年目交換の感度も表示 |
| 評価指標 | 費用と節約総額の差 | 累積収支による初回回収年 | 後年費用を含む継続回収・累計収支・NPV・追加差分 |
原典:東京電力EV DAYS/蓄電ラボ。2026年10月3日確認。検索順位の上位2件という意味ではありません。各記事はそれぞれの目的で簡略化しており、これだけで正誤や優劣を断定しません。
同じ15年でも、何を含めるかで変わる:算式を追って検算
東京電力記事の表示された算式は、132万円の購入費に対して(31−8.5)円×5kWh×365日×15年。差額は−70.4万円となり、掲載の約70万円未回収と整合します。
そこから以下は本ラボ独自の追加仮説です。放電量を初年度5kWh/日と固定し、充電に必要な量を往復効率85%で算出。さらに年容量減2%、保守3千円/年、最終年撤去5万円、割引率年2%を順に加えます。原記事で未掲載の充電量・費用を仮定しているため、原記事の完全なモデル再現や誤りの指摘ではありません。

| 追加する条件 | 15年累計収支 | NPV(割引率0%または最後の列2%) |
|---|---|---|
| 原記事の算式を再計算 | -70.4万円 | -70.4万円 |
| 充電量と放電量を区別する仮説 | -74.5万円 | -74.5万円 |
| 容量年2%減を加えた仮説 | -81.9万円 | -81.9万円 |
| 保守・撤去を加えた仮説 | -91.4万円 | -91.4万円 |
| 割引率年2%のNPV | -91.4万円 | -96.3万円 |
「いくら節約するか」に加え、「充電するために手放す売電」「将来費用」「お金が戻る時期」まで同じ条件にすると、比較しやすくなります。赤字の額に納得して停電への備えを選ぶ判断も、ここから切り分けられます。
