太陽光・蓄電池のロス計算ガイド|劣化・変換・日陰・積雪を分けて二重控除を防ぐ

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループ。再エネ設備導入効果シミュレーター「エネがえる」(ASP、Biz、EV・V2H、API、BPO)の事業開発を担当。太陽光、蓄電池、オール電化、EV・V2H、電力料金、補助金、再エネ設備の経済効果シミュレーションを専門領域とし、サービス企画、顧客提案、マーケティング、パートナー連携を横断して推進しています。エネがえるは国内700社以上で導入され、年間15万件以上の診断に利用されています。取材、登壇、協業、サービスに関するお問い合わせは、エネがえる公式お問い合わせページからお願いします。

むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる
むずかしいエネルギー診断をカンタンにエネがえる
日陰、積雪、変換、蓄電池、劣化を電気の通り道ごとに分けて適用する図
ロスは一つの率ではなく、電気の通り道に置く。図の数値条件や制度条件は本文とリンク先一次資料で確認してください。

この記事の結論

未反映の損失だけを該当する枝へ1回適用し、二重控除を防ぎます。

見る数字基準発電量・反映済みロス・通過電力量
結論が変わる条件日陰、積雪、PCS、往復効率、劣化
次の一手未反映ロスだけを該当枝へ1回置く

最終確認:2026年8月26日

太陽光・蓄電池のロス計算で最も多い誤りは、すでに発電量へ織り込まれた損失をもう一度引くことです。設備容量kWから計算を始める場合、パネルの光電変換効率は公称出力に反映済みなので「変換効率20%だから80%を追加控除」とはしません。まず基準発電量に含まれる補正を確認し、未反映の劣化、変換、日陰、積雪だけを、電気が通る段階と時間帯に合わせて適用します。

損失を反映した後に、料金、FIT・非FIT、自家消費、蓄電池、交換費まで同じ年次CFへつなぐ手順は、太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーション完全ガイドで確認できます。本記事は、そのうち発電・変換・蓄電の損失台帳と二重控除防止を詳しく解説します。

ロスは「一つの率」ではなく、電気の通り道に置く

太陽光から家庭内利用までには、異なる種類の損失があります。

段階 主な要因 適用先 確認する根拠
日射・屋根面 地点、方位、傾斜、気象年、地平線 屋根面日射量 使用した日射量DBの名称・版、地点、気象年
モジュール 温度、初期変化、経年劣化 DC発電量 型番、温度係数、出力保証、実測
アレイ 日陰、積雪、汚れ、ミスマッチ 影響を受けるモジュール・ストリング 配置図、影時刻、積雪、ストリング、バイパスダイオード
DC・PCS 配線、PCS変換、クリッピング、待機 DCからACへの変換部分 PCS効率曲線、DC/AC比、配線設計、型番
運用 故障停止、保守停止、出力制御 該当期間の発電 運転記録、停止率、出力制御実績
蓄電池 充電・放電変換、待機、SOC制約、容量・出力劣化 蓄電池を経由する電力量だけ 実効容量、効率、SOC、出力、保証、温度条件

ここで重要なのは、太陽光の直接自家消費や売電へ、蓄電池の往復効率を掛けないことです。蓄電池ロスは、蓄電池へ入った電力量だけに発生します。

最初に「基準発電量の中身」を確認する

発電量の出発点は、大きく二つあります。

1. 日射エネルギーと面積から計算する場合

屋根面日射量、モジュール面積、変換効率からDC出力を求めるなら、光から電気への変換効率を計算に含めます。

2. 設備容量kWから計算する場合

5kWなどの公称設備容量は、標準試験条件下の電気出力です。ここから発電量を求める場合、パネル変換効率をもう一度掛けて80%を失わせる計算はしません。変換効率の違いは、同じ屋根面積に何kW載るかには効きますが、すでに決まった5kWの公称出力へ再控除するものではありません。

また、JISを参照した発電量計算や市販シミュレーターの「基本設計係数」に、温度、配線、PCS、汚れなどが含まれる場合があります。係数の内訳を確認せず、同じ損失を外部Excelでも引くと二重控除になります。

二重控除を防ぐ「損失台帳」

各損失について、次の列を持つだけで計算の透明性が大きく上がります。

基準発電量にすでに含まれるロスを確認し未反映分だけ適用する図
未反映のロスだけを、通過地点へ1回。図は判断構造を示すもので、案件の数値条件は本文・Excel・一次資料で確認してください。
記入例
損失名 PCS変換、1月の積雪、午後の樹木影、モジュール劣化
適用段階 DC発電、AC変換、蓄電池経由、停止期間
適用粒度 年、月、日、30分・時間帯、ストリング
根拠 メーカー仕様書、NEDO、現地影解析、実測、研究値
基準発電量に含むか 含む/含まない/不明
適用値 係数、効率、停止時間、劣化曲線
重複候補 基本設計係数、別の雪モデル、実績校正値
確認日・版 URL、資料名、型番、更新日

「不明」のまま一律率を掛けず、シミュレーター提供元または計算仕様を確認します。確認できない場合は、含むケースと含まないケースを分けて結果幅を示します。

基本式:未反映の係数だけを掛ける

時間 t、年 y の交流発電量を概念的に表すと、次のようになります。

E_AC(t,y) = E_ref(t) × K_temp(t) × K_shade(t) × K_snow(t) × K_soiling(t) × K_age(y) × K_DC(t) × η_PCS(t) × K_availability(t)

ただし、この式のすべてを無条件に掛けるわけではありません。E_ref に含まれている係数は除外します。また、損失同士が独立とは限りません。日陰と積雪が同じ時間に重なる場合や、実測発電量で複数要因をまとめて校正した場合は、個別係数を重ねると過剰控除になります。

仮に、基準発電量6,000kWhに温度・配線・PCSが織り込み済みで、外部から追加する日陰6%、積雪4%、初年度劣化0.5%が互いに独立、かつ未反映だと仮定した例では、次の計算になります。

6,000 × 0.94 × 0.96 × 0.995 ≒ 5,387kWh

これは計算方法を示す例示であり、標準損失率ではありません。基準発電量に初年度劣化まで含まれるなら、0.995 は掛けません。日陰と積雪を同一の実測値から推定したなら、二つを分離して重ねない場合もあります。

1. 劣化:発電量、容量、効率、故障を混ぜない

太陽光モジュール

NRELの2025年レビューでは、固定架台の結晶シリコン系で劣化率の中央値がおおむね年0.5%低下と報告されています。ただし、これは海外を含むデータ群の代表値であり、日本の全製品へ一律適用する確定値ではありません。

優先順位は、対象型番の出力保証、メーカー技術資料、同一地域・同一構成の実測、研究値の順です。初年度変化と2年目以降の劣化率を分け、少なくとも低位・基準・高位の感度を置きます。

PCS交換、故障停止、出力制御は、モジュールの経年劣化へ混ぜません。劣化は「稼働中の出力が徐々に変わる現象」、故障・停止は「発電できない時間」、交換費は「キャッシュフロー」です。

蓄電池

蓄電池は、容量低下だけでなく、最大充放電出力、往復効率、待機電力、SOC上下限が使える電力量を左右します。カレンダー劣化とサイクル劣化を分け、温度、充放電回数、スループット、保証条件を確認します。

「毎年2%劣化」などの一律値だけで容量・出力・効率を同時に下げると、製品仕様と合わないことがあります。対象型番の定格容量と実効容量も区別してください。

2. 変換ロス:どの電力量が機器を通ったかで決める

PCS効率は、常に一つの定格値で動くとは限りません。負荷率や電圧、温度で変わるため、詳細試算では効率曲線を使います。DC過積載では、PCS上限を超えた時間のクリッピングを別に扱います。

蓄電池のエネルギー収支は、次のように分けます。

蓄電池から利用できる電力量 = 蓄電池への充電電力量 × 往復効率

仕様上の往復効率に待機電力が含まれない場合は、年間エネルギー収支で待機電力量を別に控除します。往復効率に含まれる損失をさらに個別控除しないことも、損失台帳で確認してください。

太陽光の総発電量が6,000kWhでも、蓄電池へ入るのが1,500kWhなら、往復効率を掛ける対象は原則1,500kWhです。直接自家消費と売電まで一律に10%減らすと、蓄電池ロスの二重・過剰計上になります。

3. 日陰:影の面積率と電力損失率は同じではない

JPEAは、薄い影では散乱光により一定の発電がある一方、落ち葉など不透明な物体では影面積以上に発電量が下がる場合があり、バイパスダイオードで影響を緩和する設計があると説明しています。

日陰損失を計算する際は、少なくとも次を確認します。

  • 月別・時刻別の影
  • 障害物の距離と高さ、遠景地平線
  • モジュール配置、セル分割、ストリング構成
  • バイパスダイオード、オプティマイザ、マイクロインバータの有無
  • 樹木の成長、落葉、アンテナ等の将来変化
  • 薄い影、完全遮光、汚れを別要因として扱っているか

年間の影面積率だけをそのまま年間発電損失率に置き換えないでください。日陰の現地確認と計算上の注意点は、太陽光の影・日陰損失を見積もる方法で詳しく解説しています。

4. 積雪:遮蔽損失と雪面反射を分ける

積雪は、モジュールを覆って発電を止める「遮蔽」と、露出したモジュールへ雪面反射光を増やす「アルベド」の両面があります。

SandiaのPV Performance Modeling Collaborativeは、乾燥したコンクリートやアスファルトのアルベドを約0.2、新雪を約0.8とする例を示し、モジュール面が雪で覆われていない条件なら、雪面反射で出力が5〜10%増える場合があると説明しています。これは日本の住宅屋根に一律で加算できる値ではありません。モジュールが雪に覆われれば、反射増益より遮蔽損失が支配的になります。

積雪試算では、次の入力を分けます。

  • 月別・日別の積雪日数と積雪深
  • 屋根勾配、方位、軒先、雪止め、落雪・除雪条件
  • 時間別のモジュール露出率
  • 部分積雪時のストリングとバイパスダイオードの影響
  • 地表・屋根面のアルベド
  • 現地の月別発電実績と気象実績

全国一律の「積雪ロス10%」ではなく、少雪・基準・多雪のケースを作り、実測が得られたら月別発電比で校正します。積雪地域の設計と経済効果は、雪国の屋根上太陽光・蓄電池の試算ガイドも参照してください。

ロスを金額へ変えるときも二重計上しない

年間価値は、電力量の行き先ごとに分けます。

年間価値 = 直接自家消費量 × 回避買電単価 + 売電量 × 売電単価 + 蓄電池放電による回避買電価値 − 蓄電池充電で失う売電価値 − 保守・交換費

蓄電池へ充電した太陽光余剰は、そのまま売電した電力量ではありません。同じ1kWhを「売電収入」と「蓄電池による買電削減」の両方に計上しないでください。また、買電1kWh減で基本料金が変わらない契約なら、基本料金まで回避単価に含めません。

劣化率や電気料金上昇率で結論が変わる案件は、太陽光・蓄電池の劣化率と電気代上昇率の感度分析へ進むと、単一予測による過大・過小評価を避けられます。

試算前の10項目チェック

  • 発電量の出発点が日射×面積か、公称容量kWかを確認した
  • 使用するNEDO日射量DBの名称・版・地点を記録した
  • 基本設計係数やシミュレーターが含む損失を確認した
  • パネル変換効率を公称容量へ再度掛けていない
  • モジュール劣化とPCS故障・交換を分けた
  • 日陰を月×時刻、配置・ストリング単位で確認した
  • 積雪の遮蔽と雪面反射を分けた
  • 蓄電池効率を蓄電池経由分だけへ適用した
  • 同じPV余剰を売電・蓄電・EV・給湯へ重複配分していない
  • 根拠URL、型番、確認日、計算版、実測校正の有無を残した

エネがえるの発電量算出根拠は、JIS C 8907:2005とNEDO日射量を用いる計算FAQで確認できます。実物の入力・出力イメージは診断レポートサンプル、操作の流れはプロダクトツアーをご覧ください。

影・積雪・複数方位・特殊機器など、図面と製品仕様から前提を起こす必要がある案件は、ロス台帳を確認し、根拠不明・複雑条件はBPOで再計算するで試算条件の整理から依頼できます。提案数値の説明責任をさらに高めたい場合は、経済効果シミュレーション保証の対象・条件も確認してください。

FAQ

Q1. 太陽光発電のロスは、合計で何%と置けばよいですか?

全国一律の正解はありません。地点、方位、気象年、機器、影、雪、運転で変わります。まず基準発電量に含まれる損失を確認し、未反映の要因だけを段階別に加えてください。

Q2. パネル変換効率が20%なら、設備容量から80%を引きますか?

公称設備容量kWから計算する場合は引きません。公称容量は標準試験条件下の電気出力であり、光電変換効率はすでに反映されています。日射エネルギーと面積から計算する場合にのみ、変換効率を使います。

Q3. NRELの年0.5%を全製品へ使えますか?

年0.5%は研究データ群の代表値であり、日本の個別製品の確定値ではありません。対象型番の保証・技術資料を優先し、研究値は感度分析に使ってください。

Q4. 日陰面積10%なら、発電量も10%減ですか?

一致するとは限りません。影の濃さ、時刻、セル・ストリング構成、バイパスダイオード等で変わります。月×時刻と電気回路を確認します。

Q5. 積雪ロスは毎年10%でよいですか?

一律には置けません。積雪日数、屋根勾配、落雪、部分被覆、ストリング、アルベドで変わります。少雪・基準・多雪を分け、実測で校正してください。

Q6. 蓄電池の往復効率は太陽光総発電量へ掛けますか?

掛けません。原則として蓄電池を経由する電力量だけへ適用します。直接自家消費と売電は別経路です。

Q7. ロス率は足し算と掛け算のどちらですか?

異なる段階の独立した係数は一般に掛け合わせます。ただし、同じ現象を含む係数や、同一実測から推定した係数を重ねてはいけません。時間的に重なる影と雪などは詳細モデルまたは実測校正が必要です。

一次出典・技術資料

NREL・Sandiaの数値は高品質な研究・技術情報ですが、日本の個別住宅へ無条件に転用する値ではありません。対象地点、屋根、製品、施工、運転実績で校正してください。

記事全体の最終確認日:2026年8月27日。制度・料金・公募・製品仕様は、リンク先の一次資料と個別条件を公開・提案時に再確認してください。

記事の内容を、自社案件の数字で確認

住宅用、産業用自家消費、EV・V2Hの経済効果を、用途に合うデモで確認できます。

住宅用ASP産業用BizEV・V2H

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループ。再エネ設備導入効果シミュレーター「エネがえる」(ASP、Biz、EV・V2H、API、BPO)の事業開発を担当。太陽光、蓄電池、オール電化、EV・V2H、電力料金、補助金、再エネ設備の経済効果シミュレーションを専門領域とし、サービス企画、顧客提案、マーケティング、パートナー連携を横断して推進しています。エネがえるは国内700社以上で導入され、年間15万件以上の診断に利用されています。取材、登壇、協業、サービスに関するお問い合わせは、エネがえる公式お問い合わせページからお願いします。

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