
この記事の結論
電気代は単価、劣化は物理量へ作用するため、年次キャッシュフロー上で別経路として扱います。
データの扱い:本文の数値は将来価格の予測ではなく、仮定を変えたシナリオ例です。電気代上昇率、劣化率、交換費、割引率、期間を明示して再計算してください。
結論:電気代上昇率と設備劣化率は、同じ「%」でも作用する場所が違います。電気代上昇は円/kWhという単価を変え、太陽光劣化は発電kWhを変えます。蓄電池劣化は使える容量・出力・効率・生涯充放電量へ影響します。同じ率同士を相殺せず、年次キャッシュフロー上で別の変数として感度分析します。
目次
予測ではなく、投資判断が反転する条件を探す
電気料金の年率2.5%等は、公的な長期予測ではなく感度分析用の一シナリオです。「上昇し続ける」と断定せず、下落・横ばい・上昇の複数ケースを置き、NPVがゼロになる単価上昇、設備費、自家消費率、劣化率を確認します。
電気料金は基本料金、電力量料金、燃料費調整、再エネ賦課金等で構成されます。燃料費調整は燃料価格・為替等で変動します。2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhですが毎年度決定され、将来の単調上昇を保証しません。期限付きの料金支援は長期単価へ埋め込まず、対象期間だけ別項目で扱います。
4つの経路を分ける
| 変数 | 作用先 | 確認する根拠 | 誤りやすい扱い |
|---|---|---|---|
| 電気料金 | 設備なし/ありの請求差額 | 料金表、燃調、賦課金、契約 | 平均単価×自家消費量だけで済ませる |
| PV劣化 | 各年の発電kWh | 型番、保証、実績、仮定 | 蓄電池劣化と一つの率にする |
| 蓄電池劣化 | 容量、出力、効率、生涯量 | 製品仕様、保証条件、使用条件 | 保証下限を期待劣化率へ年率化 |
| 交換・終了 | 特定年のCF、残存価値 | 想定使用期間、保証、見積 | 30年間無交換と置く |
計算モデル
太陽光発電量[y,t]
= 初年度発電量[t] × (1 − PV劣化率)^(y−1)
買電回避価値[y]
= 「設備なしの料金請求額[y]」
− 「設備ありの料金請求額[y]」
NPV
= −初期投資
+ Σ(年次CF[y] ÷ (1+割引率)^y)
PVの式は簡易感度モデルです。製品固有の段階保証や実測があれば区分線形等へ置き換えます。蓄電池は容量だけでなく、充放電効率、出力、SOC制約、生涯蓄電容量、交換・終了を別に扱います。

保証下限を劣化予測にしない
「15年後60%以上」等の容量保証は、所定条件下で保証対応の対象となる最低性能ラインであり、期待容量の予測曲線ではありません。15年で40%低下するから年2.67%劣化、と単純に割りません。JEMAが示す初期実効容量、充放電効率、想定使用期間、システム生涯蓄電容量と、製品ごとの条件を確認します。
最低限の感度シナリオ
| 変数 | 慎重 | 基準 | 上振れ |
|---|---|---|---|
| 電気料金 | 下落または支援終了を分離 | 現在料金を起点に横ばい | 年率上昇を仮定 |
| PV劣化 | 高め | 製品・根拠に沿う | 低め |
| 蓄電池 | 効率・容量低下、早期終了 | 仕様・保証条件 | 長期利用 |
| 設備費 | 見積増・交換あり | 現行見積 | 補助採択・費用減 |
| 自家消費 | 需要減・不在増 | 現行需要 | 給湯・EV等で移行 |
表の値は案件ごとに設定します。重要なのは「どの列が正しいか」ではなく、慎重ケースでもNPVが正か、どの1変数で結論が反転するかです。
再現可能な前提表
- 価格・制度の基準日
- 料金プラン、燃料費調整、賦課金、支援の扱い
- 30分需要、PV発電、直接自家消費、売電、蓄電池通過量
- PV・蓄電池の劣化モデルと根拠
- 設備費、補助、交換、O&M、残存価値
- 分析期間、割引率、税・資金条件
- 確定、見積、仮定、未確認の区分
劣化率と料金上昇に加え、変換・温度・蓄電池ロスを重複計上しない方法は、太陽光・蓄電池ロス台帳で確認できます。
エネがえるで比較するときの使い分け
住宅用の一次比較はエネがえるASP、産業用の需要・設備案比較はエネがえるBizを使います。独自の料金・劣化・交換モデル、複数感度、案件監査が必要なら経済効果試算BPOまたはAPIで別計算範囲を定義します。
FAQ
電気代上昇と劣化はどちらが大きいですか?
案件ごとに変わります。示すべき結論は勝者ではなく、料金、劣化、自家消費率、設備費のどの条件でNPVが反転するかです。
年2.5%の電気代上昇は予測ですか?
予測ではありません。採用する場合は感度分析用の仮定と明記し、下落・横ばい・上昇を比較します。
容量保証から年率劣化を計算できますか?
期待劣化率としては計算しません。保証下限、実際の劣化経路、想定使用期間、生涯蓄電量は別概念です。
最終結論:電気代上昇と劣化の比較は未来を当てる競争ではありません。別の経路で年次CFへ反映し、投資判断が壊れる条件を先に見つける監査です。



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