業種別・規模別ロードカーブテンプレート|月別使用量・稼働カレンダーから30分値を作る方法

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループ。再エネ設備導入効果シミュレーター「エネがえる」(ASP、Biz、EV・V2H、API、BPO)の事業開発を担当。太陽光、蓄電池、オール電化、EV・V2H、電力料金、補助金、再エネ設備の経済効果シミュレーションを専門領域とし、サービス企画、顧客提案、マーケティング、パートナー連携を横断して推進しています。エネがえるは国内700社以上で導入され、年間15万件以上の診断に利用されています。取材、登壇、協業、サービスに関するお問い合わせは、エネがえる公式お問い合わせページからお願いします。

デマンドデータがなくても、太陽光・蓄電池の初回スクリーニングは始められます。必要なのは、直近12か月の電力使用量、業種の代表的な一日負荷、平日・休日・営業時間を使って「仮想30分値」をつくることです。ただし、その仮想値は実測の代わりではありません。容量選定、契約電力、保証、最終投資判断には実測30分値へ置き換える必要があります。

この記事では、請求書だけの案件を止めずに前へ進めながら、提案の確度を段階的に上げる方法を解説します。記事と同じ計算を再現できるExcel、エネがえるBizの取込構造に合わせた30分・60分CSVも用意しました。

30秒で分かる結論

  • 月別kWhは「量」は分かるが「いつ使ったか」は分からない。
  • 業種別ロードカーブは、初回提案の仮説づくりには使えるが、実測値とは呼ばない。
  • 月合計、日数、平休日、30分×2=60分、負値・欠損、文字コードまで検査して初めて取込用CSVになる。
  • 最終設計では、実測30分値、請求書、最大需要電力、操業カレンダーを突合する。
請求書12か月から実測30分値・BEMS突合へ確度を上げるデータ品質の階段
請求書12か月から実測30分値・BEMS突合へ確度を上げるデータ品質の階段

目次

無料Excel・CSVテンプレート

以下の3ファイルは、同じ初期条件から作成しています。

  • enegaeru_loadcurve_demand_template_2026.xlsx:月別入力、5業種の編集可能ロードカーブ、365日×48コマ、60分集約、品質チェック、CSV仕様
  • usepowers30.csv:2025年8月1日~2026年7月31日の365日、30分48コマ、CP932、CRLF
  • usepowers.csv:同期間の60分24コマ。各値は隣接する30分2コマの和
  • 生成前提:synthetic_annualized、対象期間、選択業種、休日係数、利用制約はExcel内の説明・設定欄で確認できます

ロードカーブExcelをダウンロード
30分CSV(usepowers30.csv)をダウンロード
60分CSV(usepowers.csv)をダウンロード

数値は説明用の仮想データです。「この業種ならこの使用量になる」という統計値ではありません。青字セルを請求書や顧客ヒアリングの値に置き換えて使います。

誰が、どこまで使えるツールか

読者・部署 いま困っていること このテンプレートでできること 次に必要なもの
太陽光・蓄電池販売施工店の営業 初回面談で30分値がなく、容量も効果も話せない 月別kWhから仮想負荷をつくり、比較条件を整理 次回面談で30分値と操業表を依頼
EPC・設計 自家消費率の初期当たりをつけたい 業種・平休日・月量をそろえた一次スクリーニング 現地調査、発電量設計、実測負荷
電力・PPA事業者 案件受付時のデータ品質がばらばら A~Eの品質ランクと不足項目を共通化 PPA単価、契約、事業者CFの二面評価
需要家の総務・設備 どのデータを社内で集めればよいか分からない 請求書、最大需要、操業日、30分値の取得リスト 小売ポータル、BEMS、設備ログ
金融・審査 推定値と実測値が混在している measured / modeled / imputedを分けて確認 原票、取得日、補完履歴、感度分析
自治体 多数施設を一度に候補選定したい 月量と施設用途から優先調査先を絞る 施設台帳、屋根、BCP、調達条件

このテンプレートの役割は「答えを確定すること」ではなく、次に何を取りに行けば答えが変わるかを見えるようにすることです。

そもそもロードカーブとデマンドデータは何が違うのか

ロードカーブ

ロードカーブは、時間の経過に沿って電力需要がどう変わるかを表した曲線です。工場なら始業前の立ち上がり、昼休みの低下、終業後のベース負荷、小売店舗なら開店準備、営業時間、閉店後という「形」があります。

ロードカーブには、実測から作ったものと、業種・営業時間から推定したものがあります。本記事で配布するのは後者です。個社実測の統計値ではなく、形状を編集できる仮説です。

30分値

30分値は、30分ごとの電力量または平均需要を並べたデータです。1日48コマ、365日なら17,520コマになります。

ここで最も多い事故が、kWkWhの混同です。

  • 30分間の使用電力量が 50kWh なら、その区間の平均電力は 100kW
  • 30分平均需要が 100kW なら、その区間の使用電力量は 50kWh

式にすると次の通りです。

30分電力量[kWh] = 30分平均電力[kW] × 0.5時間

30分平均電力[kW] = 30分電力量[kWh] × 2

CSVの列が何を意味するかを確認せず、数値だけコピーすると、年間使用量も最大需要も2倍または半分になります。

最大需要電力

最大需要電力は、年間使用量が同じでもロードカーブの形で変わります。設備が同時に立ち上がる30分があればピークは高くなり、同じ仕事量を時間分散できれば下がります。

高圧の契約電力を検討するときは、単月のピーク削減だけでは不十分です。料金制度や契約によって、過去の最大需要が後月の契約電力に影響するため、対象電力会社の現行約款と12か月の推移を確認します。たとえば東京電力エナジーパートナーは、実量制の契約電力を当月を含む過去12か月の最大需要電力で決める仕組みを案内しています。これは全国・全契約へ一律適用する説明ではなく、契約エリア・メニューごとの確認が必要です。

なぜ月10万kWhだけでは太陽光の価値が決まらないのか

同じ月10万kWhでも、次の2施設は太陽光の自家消費率が違います。

  • A工場:平日8~17時に需要が集中し、土日は停止
  • B倉庫:冷凍冷蔵設備が24時間動き、夜間もベース需要が高い

A工場は日中需要と発電が重なりやすい一方、休日余剰が増える可能性があります。B倉庫は昼夜を通じた負荷があるため、自家消費の下支えがありますが、太陽光だけで夜間需要は減らせません。蓄電池の役割も変わります。

年間値だけで計算すると、発電と需要が同じ時間に存在したかを無視します。これは「年間の降水量が同じだから、毎日同じ天気だった」と考えるのに似ています。太陽光の経済効果では、量だけでなく同時性が価値を決めます。

データ品質を5段階で管理する

ランク データ 分かること 分からないこと 表示ラベル
A 12か月以上の実測30分値+請求書+最大需要+操業表 自家消費、ピーク、月別料金を高い確度で再現 将来操業・故障・制度変更 measured_validated
B 実測30分値、請求書との軽微な差あり 時間形状、自家消費の主要傾向 欠損・単位・期間差の影響 measured_pending_reconciliation
C 時間別・日別実測から30分へ補完 代表的な時間形状 30分ピーク、突発運転 imputed_interval
D 月別kWh+個社の操業カレンダー+設備ヒアリング 初回の容量レンジ 実ピーク、工程別負荷 synthetic_calendar_adjusted
E 月別kWh+業種テンプレート 調査優先順位、初回仮説 個社固有の時間形状全般 synthetic_annualized

配布テンプレートの初期状態はEです。月別合計が完全に一致しても、データ品質がAになるわけではありません。「数式が合う」と「現場を表す」は別の合格条件です。

迷いやすい用語を一枚で整理する

用語 この文章での意味 混同しやすいもの
使用電力量 ある時間内に使った電気の量。単位はkWh 瞬間・平均の電力kW
平均需要電力 区間内の平均的な電力。30分50kWhなら100kW 30分電力量50kWh
最大需要電力 定められた区間で記録した最大の平均需要 機器定格の単純合計
ロードカーブ 時間ごとの需要の形 年間・月間の合計だけの表
負荷率 最大需要に対して平均需要がどの程度かを示す比率 自家消費率
自家消費率 PV発電量のうち施設内で使った割合 需要のうちPVで賄った自給率
余剰率 PV発電量のうち同時消費されず余った割合 契約上、実際に売電できる量
measured 計測機器・請求原票から得た実測 検査済みを必ず意味するわけではない
modeled 数式・テンプレートで推定した値 実測値
imputed 欠損を一定の根拠で補完した値 ゼロ、未入力
検針期間 請求対象となる読取日間の期間 暦月の1日~末日
30分同時性 同じ30分に需要とPV発電が重なること 年間量同士が近いこと

「自家消費率80%」という一つの数字でも、分母がPV発電量なのか需要量なのか、仮想か実測か、余剰売電や蓄電池を含むかで意味が変わります。提案書では数値の隣に、式・期間・単位・データ品質を置きます。

月別kWhを365日×48コマへ分解する計算式

1. 形と量を分ける

まず、業種ロードカーブを一日合計100%の比率に正規化します。

Σ p(t,s) = 1

  • t:30分コマ(1~48)
  • s:平日または休日
  • p(t,s):その日の電力量に対する各30分コマの比率

次に月別使用量を日へ配分します。休日の日量を平日のα倍とすると、月mの平日日数をDw、土日日数をDh、月間使用量をEmとして、日d・コマtの電力量は次式です。

x(d,t) = Em × a(d) × p(t,s) ÷ (Dw + α × Dh)

ここで、平日はa(d)=1、休日はa(d)=αです。

この式の利点は、平休日で形を変えても月合計が必ず元の請求書値へ戻ることです。

Σd Σt x(d,t) = Em

2. 60分値は隣接する30分値を足す

60分値の0時は、30分値の0:00と0:30の和です。

x60(d,h) = x30(d,2h) + x30(d,2h+1)

平均電力に直す処理ではありません。30分電力量kWhを1時間電力量kWhへ集約しています。

3. 丸めは最後にする

各コマを整数や小数1桁に丸めてから月合計を作ると、17,520回の丸め誤差が積み上がります。計算内部は十分な桁数を保ち、CSV出力時に小数6桁、表示上は小数3桁など、用途別に分けます。

計算例:年間107.4万kWhの昼間操業工場を30分値へ分解する

ここからは、配布ファイルに入れた説明用データを使い、月別請求量からどこまで判断できるかを具体的に追います。対象期間は2025年8月1日から2026年7月31日までの365日、業種テンプレートは「製造業・昼間操業」、土日の日量は平日の55%と置いています。55%は統計的な業界標準ではなく、計算構造を確認するための仮定です。

入力した使用量 仮想30分値の月合計 読み取るときの注意
2025年8月 98,000kWh 98,000kWh 夏季空調・休業日を個別確認
2025年9月 92,000kWh 92,000kWh 残暑と操業日の影響を分ける
2025年10月 85,000kWh 85,000kWh 中間期でも工程負荷は残る
2025年11月 82,000kWh 82,000kWh 暖房開始日を確認
2025年12月 90,000kWh 90,000kWh 年末休業と稼働日の偏りを確認
2026年1月 94,000kWh 94,000kWh 年始休業を通常休日と同一視しない
2026年2月 88,000kWh 88,000kWh 28日であるため日量が相対的に高くなる
2026年3月 86,000kWh 86,000kWh 年度末の増産・棚卸を確認
2026年4月 83,000kWh 83,000kWh 新年度の設備・シフト変更を確認
2026年5月 84,000kWh 84,000kWh GW停止日を通常土日と分ける
2026年6月 91,000kWh 91,000kWh 梅雨期の空調・除湿負荷を確認
2026年7月 101,000kWh 101,000kWh 冷房と生産量を分解する
合計 1,074,000kWh 1,074,000kWh 合計一致は構造検査であり、実測性の証明ではない

月合計を一致させるだけなら、極端な形のロードカーブでも計算上は合格します。そこで、この例では次の三つを別々に確認します。

  1. エネルギー整合:30分値の月合計が入力した12か月の請求量へ戻るか。
  2. 構造整合:365日、日付連続、48コマ、非負、欠損なし、30分から60分への集約が正しいか。
  3. 現場整合:始業・休憩・終業・夜間・休日の形が、設備担当者の認識とBEMS・実測に合うか。

配布CSVは、1と2を機械検査済みです。30分値と60分値の年間差は丸め許容範囲内で、各月も入力値と一致しています。一方、3は利用者の現場確認が必要です。これを混同しないため、メタデータへsynthetic_annualizedを記録しています。

仮想ピークは「設備容量の上限」ではない

この仮想データでは、30分電力量を平均電力へ換算した月別ピークが、おおむね269~320kWの範囲に出ます。しかし、この数字は実測最大需要電力ではありません。テンプレートの滑らかな形は、コンプレッサー、炉、冷凍機、充電器などが同じ30分に重なる現象を再現していないからです。

したがって、仮想ピークは次の用途に限定します。

  • 太陽光容量を100kW、300kW、500kWと振った一次比較
  • 自家消費率がどの範囲にありそうかのスクリーニング
  • 休日余剰が大きい案件の早期発見
  • 実測取得後に結論が変わりやすい論点の特定

受変電設備、契約電力、蓄電池のピークカット出力、性能保証、PPA最低購入量の確定には使いません。

一つの曲線ではなく、結論が反転する三つの形を見る

初回提案で一つの仮想曲線だけを出すと、推定値が確定値のように見えます。最低でも次の三ケースをつくります。

ケース 形の置き方 太陽光・蓄電池の結論へ与えやすい影響 顧客に確認する事実
日中集中 8~17時の比率を高め、夜間を低くする 太陽光の直接自家消費が増えやすい 主工程と空調は本当に日中だけか
夜間ベース高 24時間の最低負荷を引き上げる 太陽光単体では夜間購入を減らせず、蓄電池評価が変わる 炉、冷蔵、サーバー、保安負荷の実態
休日低負荷 土日・長期休業の係数を下げる 休日余剰が増え、PV増設の限界が早く来る 年間カレンダー、棚卸、臨時稼働

三ケースで推奨容量やNPVの順位が変わらなければ、初回提案は比較的頑健です。順位が変わるなら、数字を細かく見せるより「30分値を取得すればこの判断が確定する」と伝える方が、顧客にとって有用です。

5業種のテンプレートはどう使い分けるか

配布Excelには、以下の5形状を初期値として入れています。

テンプレート 形状の仮定 必ず聞く質問 誤差が大きくなる案件
オフィス 夜間低負荷、朝立上げ、日中高負荷、夕方低下 在宅率、サーバー室、空調時間、休日出勤 データセンター併設、24時間コールセンター
小売店舗 開店準備から上昇、営業時間高負荷、閉店後低下 開店日、冷凍冷蔵、厨房、テナント区分 スーパー、飲食、24時間営業
製造業・昼間操業 始業で上昇、昼休み低下、終業後ベース負荷 シフト、コンプレッサー、炉、休日、季節工程 交替勤務、連続炉、受注変動が大きい工場
冷凍冷蔵倉庫 24時間ベース+日中入出庫・外気温影響 冷媒設備、設定温度、デフロスト、扉開閉 季節商品、急速凍結、老朽設備
病院・24時間施設 夜間も負荷、日中に診療・空調・厨房が上乗せ 病床、手術、厨房、給湯、非常設備 大型画像機器、研究設備、増改築

これらは「業界平均」ではなく、編集可能な形状です。日本サステナブル建築協会のDECCなど、建物属性・用途別の公表データは初期モデルの外部参照になりますが、公開データの対象年・粒度・母集団を個社30分値と混同してはいけません。

業種名ではなく「設備が動く理由」で曲線を組み立てる

同じ「工場」でも、日勤の組立工場、24時間の連続炉、冷凍設備を持つ食品工場では曲線が違います。同じ「小売」でも、衣料店と冷凍冷蔵ケースの多い食品スーパーは夜間ベースが違います。業種テンプレートを選んだ後、負荷を次の四層へ分けると、営業担当と設備担当が同じ言葉で修正できます。

負荷層 時刻の決め方 太陽光・蓄電池への影響
常時ベース サーバー、保安、冷凍冷蔵、待機、換気 24時間または停止日も残る 夜間買電を残し、蓄電池の放電先になり得る
営業・操業連動 照明、空調、ライン、厨房、給湯 開始前の立上げから終了後の停止まで 太陽光との同時性を主に決める
バッチ・イベント 炉、コンプレッサー、ポンプ、デフロスト、EV充電 曜日・工程・予約・温度で発生 仮想曲線が平滑化しやすく、ピーク誤差の主因になる
季節・外気連動 冷暖房、除湿、冷凍負荷 月、気温、湿度、営業時間 月別量と同じ一日形状を使う誤りを生みやすい

まず常時ベースを置き、次に営業・操業時間を重ね、最後にバッチ負荷を別シナリオで足します。一つの滑らかな曲線へ全部を平均化すると、年間kWhは合ってもピーク発生時刻とPV同時性が失われます。

現場ヒアリングを48コマへ翻訳する例

設備担当から「8時始業、昼休みは一部停止、17時終業、コンプレッサーは18時まで」と聞いた場合、単純に8~17時を同じ比率へしません。たとえば次の順で仮説を置きます。

  1. 0~6時:保安・待機・連続設備のベース
  2. 6~8時:空調・集塵・コンプレッサーの立上げ
  3. 8~12時:主工程
  4. 12~13時:停止できる工程だけ低下、連続工程は維持
  5. 13~17時:主工程
  6. 17~18時:清掃・残業・補機
  7. 18時以降:停止確認後のベース

「昼休み30%低下」「始業前1時間で上昇」などの率は、最初は仮定です。設備担当が見て違和感を指摘できるよう、時刻と設備名をメモ列へ残します。後で実測へ置換した際に、どの仮説が外れたか学習できます。

代表日を平均だけで作らない

実測を得た後も、全平日の単純平均だけでは不十分です。停止日や異常日を含むと通常日の形が薄まり、繁忙日のピークも消えます。平日、土日、祝日、長期休業、繁忙、設備停止、異常日へ日タグを付け、用途ごとに代表日を分けます。

通常平日の形には、各30分コマの中央値を使う方法があります。中央値は一日の突発ピークへ引っ張られにくい一方、ピーク設計には向きません。平均、中央値、95パーセンタイル、実最大日を別に保持し、目的で使い分けます。

  • 自家消費率の中心推定:代表日平均または中央値
  • 契約電力・受変電の確認:実測最大日と発生原因
  • 蓄電池ピークカット:ピーク日群、連続発生、SOC回復時間
  • PPA最低購入・余剰:休日、休業、低需要日の分布

代表日を選んだ後、月間kWhへ合うよう比率を正規化します。ただし正規化前後の最大電力が不自然に変わった場合は、月量と代表日が同じ操業状態を表していない可能性があります。月量を無理に一日形状へ押し込まず、増産・休業・設備更新を別期間へ分けます。

5業種を同じ年間kWhにしても結論が違う

年間100万kWhという量が同じでも、昼型オフィス、夜間ベースの高い冷凍倉庫、24時間病院では、太陽光発電と重なる割合が違います。そこで業種別テンプレートは「年間量の目安」ではなく、同じ量をいつへ配るかの仮説として使います。

たとえば100kWの太陽光を比較するとき、年間需要が十分大きいから余剰ゼロと決めません。土日休業の工場は休日昼間に余剰が出る一方、24時間施設は同じ年間量でも吸収しやすい場合があります。逆に夜間需要が大きくても昼間負荷が小さければ、太陽光自家消費率は高くなりません。年合計の大小ではなく、30分同時性を確認します。

この違いを顧客に説明するときは、設備容量を先に決めず、50kW、100kW、200kWなど複数容量を各曲線へ重ねます。容量を増やしたときの追加1kWが、どれだけ自家消費され、どれだけ余剰になるかを出すと、屋根一杯案と経済最適案を分けられます。

規模別・月別使用量の目安をどう作るか

「業種別の月別使用量目安」は、単純な業種平均ではなく、規模の分母をそろえて作ります。

候補となる原単位は次の通りです。

  • 延床面積あたり:kWh/m²・年
  • 売上あたり:kWh/百万円
  • 生産量あたり:kWh/製品単位
  • 病床あたり:kWh/床・日
  • 営業時間あたり:kWh/時間
  • 冷蔵容積あたり:kWh/m³

異なる業種・規模を比較するときは、年合計だけでなく次の4点を並べます。

  1. 使用量の分母
  2. 稼働日・営業時間
  3. 月別季節係数
  4. 最大需要電力と負荷率

配布Excelでは月別kWhを直接入力する設計にしています。統計値を初期値へ自動流し込みません。根拠の古い原単位が、個社の請求書より強く見えてしまう事故を避けるためです。

操業カレンダーテンプレートで聞く15項目

営業担当が「平日ですか」とだけ聞いても、十分なカレンダーにはなりません。最低限、次を確認します。

  1. 通常の営業曜日
  2. 祝日の扱い
  3. 年末年始、GW、夏季休業
  4. 月末・棚卸日
  5. 繁忙期・閑散期
  6. 始業前の設備立上げ時間
  7. 終業後の停止時間
  8. 休憩・昼休みの停止範囲
  9. 夜間ベース負荷
  10. 交替勤務・夜勤
  11. 冷暖房の季節開始・終了
  12. 生産設備の定期停止
  13. EV・フォークリフトの充電時間
  14. 将来の増産・減産・移転
  15. 非常用・保安設備の常時負荷

これをExcelの「休日係数」と業種ロードカーブへ反映します。個社ごとの違いが大きい場合は、48コマの比率を直接編集します。

エネがえるCSVの構造

項目 usepowers30.csv usepowers.csv
用途 30分48コマ 60分24コマ
列数 51列 27列
行数 ヘッダー+365日=366行 ヘッダー+365日=366行
先頭列 年、月、日 年、月、日
時間列 0:00、0:30、…、23:30 0時、1時、…、23時
文字コード CP932 CP932
BOM なし なし
改行 CRLF CRLF
単位 kWh/30分 kWh/60分

ファイル名はそれぞれusepowers30.csvusepowers.csvです。表計算ソフトで開いて保存すると、文字コード、区切り、日付表示、先頭ゼロが変わる場合があります。取込直前に再検査してください。

公開テンプレートで実施した13の監査

  1. 30分値が365行ある
  2. 60分値が365行ある
  3. 開始日が2025年8月1日、終了日が2026年7月31日
  4. 未来日がない
  5. 年月が12グループで重複しない
  6. 各30分値が0以上
  7. 30分値に欠損がない
  8. 各60分値が隣接30分2コマの和
  9. 30分年合計と60分年合計が一致
  10. 月別出力合計が月別入力値と一致
  11. 各ロードカーブ列の一日合計が100%
  12. CP932、BOMなし、CRLFがテンプレートと一致
  13. synthetic_annualizedと明示されている

構造検証を通過した場合の表現は「エネがえる取込構造に適合」です。「案件精度を保証」「実測と同等」とは表現しません。

なお、検証結果JSONも同梱しています(監査用)。日数、対象期間、月グループ、30分・60分の年間合計、文字コード、BOM、改行、エラー一覧を、加工前の証跡として確認できます。

実測30分値を受け取ったら、仮想値を上書きせず比較する

実測が届いたとき、仮想CSVを消して置き換えるだけでは、初回仮説のどこが外れたか分かりません。案件ID、期間、版を変えて仮想と実測を並べ、次の差を確認します。

比較項目 見る差 差が大きいときの原因候補 経済効果への影響
月合計 請求書、仮想、実測のkWh 検針期間、欠損、単位、対象メーター 年間便益全体
日種別 平日・休日・休業の日量 カレンダー、臨時稼働、設備停止 休日余剰、PPA購入量
時刻別 各30分の平均・中央値 始終業、昼休み、夜間ベース PV自家消費、蓄電池運転
ピーク 最大kW、時刻、継続、再発頻度 バッチ設備、同時起動、異常日 契約電力、ピークカット
季節 月別形状の変化 空調、冷凍、増産、休日 最適容量、料金感度
欠損・補完 件数、連続時間、ピーク帯 通信、メーター交換、抽出漏れ 確信度、保証可否

仮想と実測の年合計が同じでも、昼間自家消費が大きく変わることがあります。逆に、時刻形状が近くても検針期間がずれて月合計が合わない場合があります。「量」「形」「ピーク」「データ品質」を別々に判定します。

欠損補完の具体例

30分値の欠損を見つけたとき、停止確認がないままゼロを入れると、需要とピークを過小評価します。補完は欠損の長さと時刻で方法を変えます。

  • 単独1コマ:前後の線形補間を候補にし、バッチ設備の時刻なら同曜日同時刻も確認
  • 数時間連続:直近の同曜日・同操業日の同時刻プロファイルを使う
  • 1日単位:操業カレンダーが同じ代表日を選び、当該月量へ合わせる
  • 月の大部分:補完で精度を装わず、その月を低信頼度として再取得または別ケース化
  • 年間最大需要付近:自動補完せず、請求書の最大需要と設備ログを優先

各補完セルには、元値空欄、補完値、方法、参照日、担当、日時を別台帳へ残します。補完後は月合計へ機械的に再調整するだけでなく、最大kW、負荷率、日量分布が隣接月と不自然でないか確認します。

重複・時刻ずれ・単位ずれを順番に潰す

電力CSVでは、同じタイムスタンプの重複、区間開始と区間終了の違い、kWとkWhの混同が同時に起きることがあります。いきなり月合計を合わせると原因が隠れるため、次の順で処理します。

  1. 原本を読み取り専用で保存し、ファイルハッシュと取得日時を記録
  2. タイムスタンプの意味、タイムゾーン、区間長を確認
  3. 重複・欠損・順序逆転を検出
  4. 単位を確認し、30分平均kWなら原則0.5を掛けてkWhへ変換
  5. 対象メーター・計量点と請求書範囲を照合
  6. 月合計、最大需要、日数を原票と突合
  7. 必要な欠損だけ補完し、補完前後を保存
  8. エネがえるCSV列へ変換し、構造監査を再実行

30分50kWを50kWhとして入れると、電力量は原則2倍になります。反対に50kWhへさらに0.5を掛けると半分になります。ヘッダー名だけでなく、データ提供元の定義と請求書合計で判定します。

仮想モデルの誤差を、次案件で減らす

実測へ差し替えた案件は、業種名だけで保存せず、規模、営業時間、休日係数、主要設備、夜間ベース比率、季節性、仮想と実測の差を匿名・適法に学習台帳へ残します。次の工場案件では、「製造業平均」ではなく、近い操業・設備条件の過去案件を初期仮説にできます。

評価指標は一つの平均誤差に絞りません。月合計誤差、日量誤差、時刻別絶対誤差、ピーク時刻差、自家消費率差、推奨PV・蓄電池容量の順位変化を見ます。目的が太陽光容量なら、自家消費率と余剰の誤差を重くし、ピークカットなら最大需要とSOC成立を重くします。

ただし、過去案件の顧客データを権限なく再利用しません。利用目的、匿名化、保管期間、アクセス権を定め、個社を推定できる情報をテンプレートへ埋め込まないことが前提です。

仮想値のまま進めてよい判断、止めるべき判断

「データがないから何もできない」と「仮想値で契約まで進める」の間に、実務で使える境界線があります。

判断・成果物 仮想30分値で可能か 条件
初回ヒアリング用の容量レンジ 可能 仮想であること、3ケース、未取得データを併記
現地調査の優先順位 可能 屋根・需要・料金・BCPの別スコアも使う
太陽光単体と蓄電池併設の方向性比較 条件付き SOC・効率・料金を簡易化し、結果を幅で示す
顧客社内の概算予算取り 条件付き 上下限、除外費用、再試算条件を明示
EPC最終容量・機器型式の確定 不可 実測、現地、系統、設計条件が必要
PPA単価・最低購入量の契約 不可 課金点、実測需要、事業者CF、契約精査が必要
蓄電池ピークカットの保証 不可 実測ピーク時刻、SOC、出力、制御・保証条件が必要
投資委員会の最終NPV・IRR 原則不可 実測、見積、税・金融・残価・下振れが必要

ポイントは、仮想値の利用を禁止することではありません。意思決定の不可逆性が高くなるほど、実測と証拠の水準を上げることです。

顧客へ30分値を依頼する、そのまま使える文面

「デマンドデータをください」だけでは、担当者は何を、どこから、どの形式で出すか分かりません。次のように、目的・対象期間・形式・代替案を一度に伝えます。

太陽光・蓄電池の容量と自家消費率を実態に合わせて再計算するため、直近12か月分の30分ごとの使用電力量をご提供ください。小売電気事業者の会員ページ、BEMS、電力管理担当者からCSV等で取得できる場合があります。データには年月日、時刻、単位が分かる情報を含め、元ファイルのままお送りください。取得できない場合は、月別請求書、最大需要電力、操業カレンダーから仮想値で一次評価し、結果を幅で提示します。

受領時には、ファイルを開いて保存し直す前に原本を保管します。表計算ソフトの自動変換で、文字コード、日付、時刻、先頭ゼロ、桁数が変わることがあるためです。

取込エラーを15分で切り分ける診断表

症状 最初に見る場所 よくある原因 修正の考え方
ヘッダーエラー 先頭行のバイト列 全角記号、時刻表記、列順の変更 正式テンプレートのヘッダーをそのまま使う
列数エラー 51列/27列 末尾カンマ、途中の空列、引用符内カンマ 行ごとの列数を機械検査する
日付エラー 年・月・日列 Excelの日付シリアル、和暦、月日逆転 年月日を別列の整数へ戻す
期間エラー 最初と最後の日 365/366日、重複日、欠落日、未来日 処理基準日と直前12暦月を確認
数値エラー 時間列 単位記号、空白、全角数字、- 数値と欠損理由を分離する
合計が2倍 単位定義 kWをkWh/30分として投入 平均kWなら0.5時間を掛ける
合計が半分 単位定義 kWh/30分を平均kWと誤認 CSV仕様の単位を再確認する
60分値が合わない ペア集約 30分値を平均した、時刻が1コマずれた 隣接2コマを和で集約する
月量だけずれる 検針期間 請求月と暦月の境界が違う 検針日を記録し、比較期間をそろえる
最大需要だけずれる タイムスタンプ 区間開始/終了、kW/kWh、欠損補完 電力会社・BEMSの定義へ合わせる
文字化け 文字コード UTF-8、BOM付き、機種依存文字 CP932・BOMなしで再出力
一行扱いになる 改行 LFとCRLFの不一致 正式テンプレートと同じ改行へ統一
負値がある 元データ・符号 逆潮流、補正値、欠測コード 消費と逆潮流を別系列にし、意味を確認
同じ月が複数ある 年月 年の欠落、12か月を超える結合 YYYY-MMでグループ化し重複を検出
取込後に結果が不自然 内容 構造は正しいがロードカーブが現場と違う 操業表・実測・請求書で現場整合を再確認

エラーを手作業で一つずつ直す前に、「構造」「期間」「単位」「内容」の四層へ分けると、原因を速く絞れます。構造が直っても内容の妥当性は自動的に上がりません。

初回提案から最終設計までの実務フロー

Step 1 請求書12か月を受け取る

最低限、各月の使用量、請求期間、契約電力、最大需要、料金プランを取得します。暦月と検針期間がずれる場合は、月別値をそのまま暦月へ置換せず、対象日数を記録します。

Step 2 業種・規模・カレンダーを聞く

テンプレートを選ぶ前に、営業時間、休業、夜間負荷、主要設備を聞きます。業種名より、負荷を動かす設備と時間の方が重要です。

Step 3 仮想30分値を作る

月別kWhと平休日係数を使い、月合計を保ったまま365日×48コマへ分解します。初回はベース、日中高負荷、夜間高負荷の3ケースを作ると、容量提案の幅を説明できます。

Step 4 太陽光発電と重ねる

30分ごとに需要と発電の小さい方が直接自家消費です。

直接自家消費(d,t) = MIN(需要(d,t), PV発電(d,t))

余剰PV(d,t) = MAX(0, PV発電(d,t) − 需要(d,t))

この段階では蓄電池を足さず、まず太陽光単体の同時消費を確認します。

Step 5 蓄電池・料金・デマンドを別々に評価する

蓄電池は余剰充電、SOC、出力、効率、最低SOC、劣化で制約します。従量料金削減と基本料金・デマンド削減を分けます。同じ放電を自家消費増加とピークカットの両方へ二重計上しません。

Step 6 実測を取得して差し替える

初回提案で「30分値がないため幅がある」と示し、次回までの宿題を具体化します。取得先は、小売事業者のWebポータル、請求担当、BEMS、エネルギー管理担当などです。取得期間、タイムスタンプ、単位、欠損を確認します。

Step 7 請求書と再現値を突合する

月別kWh、最大需要、料金を比較し、差が残る理由を、検針期間、力率、基本料金、燃料費等調整、再エネ賦課金、税、政府支援などに分けます。

部署間で数字が変わらない「一枚のデータ台帳」

案件が遅れる原因は、計算時間だけではありません。営業は請求書、設計はCAD、経理は料金明細、顧客設備担当はBEMSを持ち、同じ「使用量」という言葉で別の期間・単位を話していることがあります。受領ファイルを一つの台帳へ登録すると、再試算のたびに前提を探し直す作業が減ります。

台帳項目 記録例 なぜ必要か
案件ID・施設ID CUST-001/FAC-03 複数拠点・複数版の混同を防ぐ
データ名 30分使用電力量 「デマンド」という曖昧語を避ける
値・単位 kWh/30分 kWとの2倍・半分事故を防ぐ
対象期間 2025-08-01~2026-07-31 検針月・暦月・年度を区別する
取得元 小売ポータル原本CSV 転記値と原票を区別する
取得日・担当 2026-08-20/設備部A氏 鮮度と確認先を残す
品質区分 measured / modeled / imputed 実測と推定を一目で分ける
変換処理 kW×0.5、欠損6コマ補完 再現可能性を残す
照合結果 7月請求比+0.04% 何をもって合格したかを示す
採用版 demand_v03 古いデータで再計算する事故を防ぐ
利用制約 初回概算のみ 契約・保証への誤用を防ぐ

役割分担は、次のように「入力」「検査」「判断」を分けると機能します。

  1. 営業が請求書、操業、意思決定期限を集める。
  2. データ担当が期間、単位、欠損、文字コードを検査する。
  3. 設計担当がPV発電、屋根、逆潮流、蓄電池制約を重ねる。
  4. 財務・料金担当が回避単価、基本料金、NPVの範囲を確認する。
  5. 顧客設備担当がロードカーブの形を反証する。
  6. 承認者が標準・慎重・ストレスの三ケースで判断する。

一人が全部を担当する小規模チームでも、工程を分けてチェック欄を残せば、セルの色だけに頼るより追跡しやすくなります。

実測へ差し替えたとき、結論が変わる三つの典型

仮想ロードカーブの価値は、実測を当てることより、何が外れると提案が変わるかを先に示すことにあります。

典型1 昼休みの停止を見落とす

月量だけでは、12時台に主要設備が止まるか分かりません。太陽光発電が大きい時間に需要が落ちれば、仮想値より余剰が増えます。売電価値が自家消費価値より低い案件では、PVを大きくするほど限界便益が低下します。

対策は、昼休みの2~3コマを一律に下げることではありません。コンプレッサー、空調、搬送、冷凍冷蔵など、止まる設備と止まらない設備を分け、実測の昼谷が再現されるか確認します。

典型2 休日係数を高く置きすぎる

土日係数55%で概算した工場が、実際には保安負荷だけで15%だった場合、休日の太陽光余剰は大きく増えます。年間使用量を月別に一致させても、その分だけ平日日量が高くなるため、平日と休日の両方で形が変わります。

このとき、単に休日係数だけを変更して終わらず、次を再計算します。

  • PV容量別の自家消費率と余剰率
  • 余剰売電単価が下がる場合のNPV
  • 休日充電・平日放電が可能な蓄電池運用
  • 生産日変更や自家消費先追加の代替案

典型3 夜間ベース負荷を低く見積もる

冷凍冷蔵、連続炉、給排気、サーバー、保安設備がある施設では、夜間負荷が仮想値より高いことがあります。年間kWhを固定したまま夜間比率を上げると、日中需要は相対的に下がり、太陽光の直接自家消費が減ることがあります。一方、日中のPV余剰を夜へ移せる蓄電池の価値は上がり得ます。

重要なのは、「夜間負荷が高いから蓄電池が必ず得」と短絡しないことです。充放電効率、容量、出力、サイクル、料金差、劣化、更新費まで入れ、太陽光単体、蓄電池併設、運用変更を同じ期間で比べます。

仮想ロードカーブを「当てる」より、外れ方を校正する

月別合計が請求書と一致しても、ロードカーブの妥当性を検証したことにはなりません。月10万kWhを48コマへどう配っても、最後に倍率を掛ければ月合計は合わせられるからです。検証すべきなのは「合計」ではなく、太陽光容量、蓄電池運転、最大需要の判断を変える形です。

実測30分値を取得できたら、仮想値を捨てて終わりにせず、次の案件へ使えるよう外れ方を記録します。ただし、実測全期間へ形を合わせ込むと、その施設だけに都合のよいモデルになります。作成に使う期間と、評価だけに使う期間を分けてください。12か月あるなら、夏・冬・中間期を偏らせず一部を評価用に残すか、月を順番に入れ替えるローリング検証にします。

比較する指標は、少なくとも次の五つです。

指標 計算・見方 判断への影響
月量差 推計月量-請求月量 量の保存。ゼロでも形の合格ではない
形状誤差 推計と実測の30分値の絶対差合計÷実測30分値合計 日中・夜間・休業日の配分が合うか
最大需要差 推計最大kW-実測最大kW 契約電力、受変電、ピークカット
ピーク時刻差 最大需要が出た30分コマのずれ 蓄電池が必要時刻に放電できるか
PV重なり差 推計と実測の直接自家消費量の差 PV容量、余剰、PPA課金量、NPV

形状誤差はWAPEに近い見方ですが、万能な合格点はありません。冷凍倉庫の夜間ベースを評価する案件と、学校の長期休業を評価する案件では、同じ誤差率でも意思決定への影響が違います。案件開始時に「何を決めるモデルか」を固定し、その指標へ許容幅を置きます。

校正では、一度に多くの係数を動かしません。まず①平日・休日の日量、②始業・終業・休憩の時刻、③止まらないベース負荷の三つだけを修正します。その後、評価用期間で同じ五指標を再計算します。評価用期間でも外れるなら、係数不足ではなく、季節工程、臨時休業、設備増設など別の説明変数が必要です。

最終判定は誤差率だけでなく、設備案が変わるかで行います。たとえば実測へ差し替えてもPV300kWが全ケースで正のNPVなら、初期スクリーニングの結論は頑健です。一方、500kW案の余剰率やPPA需要家便益が反転するなら、追加期間の実測、操業表、発電との30分重ね合わせを取得するまで容量を確定しません。

実測が一度もない業種・規模では、バックテスト済み、検証済みと表現できません。標準・日中低位・休日低位など複数形状を並べ、結論が共通する範囲だけを提案します。案件台帳には、使用した形状版、校正期間、評価期間、五指標、設備案が変わったか、次回の取得データを残します。こうするとロードカーブは「それらしい絵」ではなく、案件を重ねるほど外れ方が説明できる業務資産になります。

省エネ・増産・EV充電を「将来のロードカーブ」へ重ねる

過去12か月の実測は最も強い出発点ですが、投資後の需要をそのまま表すとは限りません。LED更新、空調改修、生産ライン増設、営業時間変更、ヒートポンプ化、EV充電器の導入が決まっている案件では、過去実績を再現した基準ロードカーブと、意思決定に使う将来ロードカーブを分けます。

ここで起きやすい失敗は、年間使用量へ一律の増減率を掛け、48コマすべてを同じ割合で伸縮することです。省エネ設備が昼だけ効く、増設ラインが平日二交代で動く、EVが夕方に戻る、といった時刻の違いが消えるからです。年間kWhが合っていても、太陽光の自家消費率、蓄電池の必要出力、最大需要は別の答えになります。

実務では、将来の変化を一つずつ「差分レイヤー」として管理します。

差分レイヤー 30分値へ入れる情報 誤りやすい点
省エネ 対象設備、稼働時刻、削減kW、季節 年間削減kWhを全コマから均等に引かない
増産・増床 稼働日、開始・終了時刻、負荷率、同時運転 設備定格kWを常時需要として足さない
電化 ガス等から移る熱需要、COP、外気温、運転制御 電気使用量だけ増やし、既存燃料削減をTCOから落とさない
EV充電 台数、到着・出発、必要充電量、充電器出力、制御 充電器定格の単純合計を最大需要と決めない
操業変更 休日、シフト、昼休み、季節休業 年間kWhを固定したままカレンダーだけ変えない
新設PV・蓄電池 発電、充放電、SOC、系統制約 元の需要から先にPVを引き、需要実績と混ぜない

計算の順番は、①実測または仮想の基準需要を固定する、②省エネや増産など設備側の差分を時刻別に足し引きする、③その後にPV発電と蓄電池運用を重ねる、です。需要、発電、系統からの買電を別列に保てば、「省エネで需要が減った」のか「太陽光で買電が減った」のかを説明できます。

例:充電器10台を「最大600kW」と置かない

60kW充電器を10台設置する場合、接続容量の上限は600kWでも、請求上の最大需要へ600kWが必ず加わるわけではありません。10台が同時に最大出力で動く条件、車両の到着分布、必要充電量、出発期限、出力制御の有無で変わります。初回提案では、たとえば次の三ケースを分けます。

  • 慎重ケース:帰庫が集中し、制御が効かない時間帯の同時充電が大きい
  • 標準ケース:到着時刻と必要充電量を反映し、施設の既存ピークと一部だけ重なる
  • 制御ケース:出発期限を守りながら施設ピークを避け、PV余剰の時間へ寄せる

この三つを既存需要へ重ね、年間充電kWh、30分最大値、PV直接充電量、系統充電量、未充電リスクを同時に確認します。制御ケースが最も安いとは限りません。制御装置費、充電完了率、車両運行への影響を含めて初めて比較できます。

将来需要は4つの版を残す

将来計画は変わるため、最新値で過去版を上書きしません。

  1. As-is:直近実測を再現した現状版
  2. Committed:予算化・発注済みの変更だけを反映した確定計画版
  3. Planned:増産、電化、EV等の未確定計画を反映した検討版
  4. Stress:需要減、計画延期、同時ピーク等の下振れ版

各版に、案件ID、作成日、基準データ、差分設備、開始予定日、根拠資料、確認者を付けます。投資判断はCommittedを中心に行い、Plannedを上振れ、Stressを下振れとして示すと、「将来需要を楽観的に置いたから得に見えた」という疑念を避けられます。

最後に、各版で月別kWh、年間kWh、最大30分値、最大値の発生日、昼間需要比率を比較します。年間合計だけでなくピークの時刻と原因まで一致して初めて、太陽光容量、蓄電池出力、充電制御、料金プランを同じ土台で判断できます。

提案書では一点の予測より「幅と反転条件」を見せる

初回提案で、仮想需要から算出した自家消費率を小数点まで断定すると、精密に見えても説明責任は弱くなります。提案書では、次の順に示します。

  1. 標準ケースの結果
  2. 日中需要が低い慎重ケース
  3. 休日・長期休業が多いストレスケース
  4. 三ケースで変わらない判断
  5. 結論が反転する条件
  6. 反転条件を確定するために必要なデータ

たとえば「PV300kWは三ケースすべてで正の便益、500kWは休日係数30%未満で余剰が急増」のように示します。すると顧客は、500kW案を否定されたのではなく、操業カレンダーを確認すれば判断できると理解できます。

この表現は、営業の勢いを弱めるものではありません。むしろ次回アクションが「再検討」ではなく「30分値と休日表を取得する」と具体化し、需要家、施工店、PPA事業者の認識差を早い段階で小さくします。

実務では、どのくらい時間を短縮できるのか

エネがえるの公開事例では、NTT-MEが従来Excelで約3時間かかっていたシミュレーションを約30分へ短縮したと説明しています。初期提案時にデマンドデータがない案件へ対応し、利用アカウントを拡大した事例です。また、エクソルは従来2~3時間かかっていた試算が約5分になり、仮想電力消費量の作成が約30秒と紹介しています。

これらは各社の導入条件下の公開事例であり、すべての企業で同じ時間短縮を保証する数値ではありません。ただし共通しているのは、計算を速くしただけではなく、データがない初期段階でも次の提案へ進めるようになったことです。

このテンプレートだけではできないこと

  • 30分最大需要の実績再現
  • 機器別の突入・同時運転の再現
  • 市場連動型料金のJEPX48コマ精算
  • 蓄電池SOC・出力・劣化の最終運用設計
  • 日陰、積雪、出力制御を含む発電量確定
  • PPA事業者IRR、融資、税、会計、DSCRの確定
  • 系統接続、屋根構造、施工可否の判定
  • 経済効果保証の適用可否判定

できないことを先に示すと、テンプレートの価値は下がりません。むしろ「初回提案用」と「最終設計用」の線引きが明確になり、顧客説明の信頼性が上がります。

エネがえるの使い分け

1件を自分で検証したい

まず配布Excelで、月量、業種、休日係数、固定対象期間、構造チェックを確認します。期間を変える場合はカレンダーとCSVを一式で再生成します。入力の不足が分かったら、顧客へ取得依頼を出します。

産業用自家消費案件を継続的に提案したい

エネがえるBizのサービス資料で、需要・発電・料金・設備条件を同じ案件として診断します。実際の出力イメージは診断レポートサンプル、画面の流れはプロダクトツアーで確認できます。

CSVや請求書の整形に時間がかかる

経済効果シミュレーションBPOでは、入力整理、試算、レポート作成を外部化できます。単発・変則データ・繁忙期の大量案件は、ツール導入とは別の選択肢です。

大量案件や基幹システムへ組み込みたい

エネがえるAPIを使い、CRM、見積、顧客ポータルから同じ計算基盤へ接続します。入力・出力項目と更新責任を先に決めることが重要です。

提案結果の説明リスクを下げたい

経済効果シミュレーション保証は、対象・適用条件・審査を確認したうえで検討します。テンプレートを使っただけで自動的に保証対象になるわけではありません。

よくある質問

Q1. デマンドデータがなくても自家消費率を出せますか?

概算は可能です。月別使用量を業種ロードカーブへ分解し、30分発電量と重ねます。ただし結果は仮想需要に基づくスクリーニングです。最終値は実測30分値で再計算します。

Q2. 業種別ロードカーブは公的な平均値ですか?

配布Excelの5形状は説明用の編集可能テンプレートで、公的平均値ではありません。DECCやエネルギー消費統計は母数・原単位の参照に使えますが、個社30分値の代わりにはなりません。

Q3. 30分デマンド値のkWをCSVへ入れてよいですか?

CSVがkWh/30分を求める場合、そのままではいけません。kWh = kW × 0.5で換算します。元CSVの定義とタイムスタンプを確認してください。

Q4. 60分値は30分値の平均ですか?

電力量kWhなら平均ではなく和です。0時の60分値は0:00と0:30の30分電力量を足します。

Q5. うるう年はどうしますか?

対象期間に2月29日を含む場合は366日、17,568コマになります。処理月直前の12暦月を使うルールと、対象システムの行数要件を確認します。

Q6. 休日係数は何%が正解ですか?

全国共通の正解はありません。配布版の55%は説明用です。休日の操業、冷凍冷蔵、サーバー、保安設備を聞き、実測で校正します。

Q7. 月別kWhとCSV合計が少しずれます。

各コマの丸め、欠損補完、検針期間と暦月の差を確認します。内部計算は十分な桁数を保ち、出力時に丸めます。

Q8. 最大需要電力は月間kWhから推定できますか?

仮説は作れますが、確定はできません。最大需要は短い時間の同時運転で決まり、月間合計だけでは一意に決まりません。

Q9. 何か月の30分値が必要ですか?

季節性を含む直近12か月が基本です。新設、増産、空調更新など構造変化がある場合は、過去データだけでなく将来カレンダーも使います。

Q10. 仮想需要で蓄電池容量を決めてよいですか?

初期レンジまでにします。最終容量は、実測需要、PV発電、SOC、出力、効率、予備SOC、ピーク発生時刻、料金制度を使って決めます。

Q11. CSVが取込エラーになります。

ファイル名、文字コード、BOM、改行、列数、ヘッダー、日付、負値、欠損、未来日、30分/60分の混在を順に確認します。

Q12. 顧客が30分値を出してくれません。

「データがないと試算できない」ではなく、「仮想値ではこの幅、30分値があればこの判断が確定する」と差を示します。取得先、必要期間、ファイル例まで渡すと依頼しやすくなります。

Q13. 月別使用量の業種平均を入力すればよいですか?

自社の請求実績があれば、業種平均より優先します。平均は新設施設やデータ欠損時の仮説には使えますが、対象年度、地域、延床面積、営業時間、母集団を記録し、個社実績と混同しません。

Q14. 太陽光容量は年間使用量の何割にすればよいですか?

一律の割合では決まりません。日中需要、休日、発電の季節性、余剰価値、屋根、逆潮流、料金で最適容量は変わります。30分ごとに需要と発電を重ね、容量を複数案で比較します。

Q15. 仮想値の精度を一番速く上げる質問は何ですか?

主要設備が「何時に動き、休日も動くか」です。業種名だけより、コンプレッサー、炉、冷凍機、空調、厨房、充電器、サーバーの運転時間を聞く方がロードカーブを具体化できます。

Q16. 30分値に欠損がある場合、ゼロで埋めてよいですか?

停止が確認できない限り、ゼロ埋めは避けます。前後、同曜日、同時刻、請求月合計との整合から補完し、imputed、方法、対象コマ、補完前後の合計を記録します。重要なピーク帯の欠損は再取得を優先します。

Q17. 市場連動型料金もこのCSVで比較できますか?

需要の時刻分布を確認する土台にはなりますが、JEPX48コマ価格、エリア、インバランス、上限、調整費、残余料金まで含む精算モデルとは別です。エネがえるASPの市場連動対応範囲も、現行FAQに記載された月別×時間帯別の概算仕様と更新頻度を確認してください。

Q18. テンプレートを顧客へそのまま渡してよいですか?

説明用仮想値であること、版、基準日、単位、対象期間、未取得データ、利用できない判断を残したまま渡します。自社の見積・提案へ組み込む場合は、元データの権利、個人・機密情報、再配布条件も確認してください。

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配布3ファイルの使い分け

最初にenegaeru_loadcurve_demand_template_2026.xlsxで月別使用量、業種、休日係数を入力し、仮想30分・60分需要と品質チェックを確認します。配布版の対象期間は2025年8月1日から2026年7月31日までに固定しているため、期間を変える場合は入力欄だけでなく、カレンダー、月別日数、CSV、検証結果を一式で再生成します。次に、30分案件はusepowers30.csv、60分案件はusepowers.csvを複製し、対象案件の値へ置き換えます。CSVは説明用の製造業サンプルなので、そのまま顧客実績として提出しません。

生成日時、データ区分、利用目的と確度、対象期間、選択業種、休日係数、主要仮定は、Excel内の説明・設定欄へ案件ID・基準日・版とともに残します。単位、文字コード、BOM、改行、月別・年間合計、丸め許容差は、ExcelのCSV仕様と品質チェックで確認します。「生成前提」と「出力検証」を分けて記録することで、どこを再計算すべきか追跡しやすくなります。

月別電力量しかない段階では「概算」、請求・休日・主要設備運転を反映した段階では「提案」、12か月の実測30分値と現地条件を反映した段階では「投資判断」と版を分けてください。ファイル名にも案件ID、基準日、版を入れ、上書き保存ではなく差分を残します。誰がどのデータをいつ置き換えたか追えることが、曲線の見栄えより重要です。

出典・根拠

  1. 電力広域的運営推進機関:小売電気事業者等との連携(2026年4月基準改定、2026年8月26日参照)
  2. 東京電力エナジーパートナー:契約電力の決定方法(2026年8月26日参照)
  3. 東京電力エナジーパートナー:30分ごとの電力量CSVダウンロード案内(2025年案内、2026年8月26日参照)
  4. 日本サステナブル建築協会:DECC(データ対象年度・母集団を確認して利用)
  5. 資源エネルギー庁:2024年度エネルギー消費統計(2026年3月31日公表)
  6. エネがえるBiz サービス資料
  7. エネがえる NTT-ME導入事例
  8. エネがえる エクソル導入事例

更新履歴

  • 2026-08-26:初版。処理月直前12暦月、365日、CP932・CRLF、30分/60分ペア検証済みテンプレートを公開。
著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループ。再エネ設備導入効果シミュレーター「エネがえる」(ASP、Biz、EV・V2H、API、BPO)の事業開発を担当。太陽光、蓄電池、オール電化、EV・V2H、電力料金、補助金、再エネ設備の経済効果シミュレーションを専門領域とし、サービス企画、顧客提案、マーケティング、パートナー連携を横断して推進しています。エネがえるは国内700社以上で導入され、年間15万件以上の診断に利用されています。取材、登壇、協業、サービスに関するお問い合わせは、エネがえる公式お問い合わせページからお願いします。

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