家庭向け太陽光・蓄電池シミュレーションにおける「世帯・生活スタイル別ロードカーブ」徹底解説

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

AIエージェント 太陽光 蓄電池
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太陽光・蓄電池シミュレーションにおける「世帯・生活スタイル別ロードカーブ」徹底解説

10タイプの時間帯別消費パターンと経済効果への影響

住宅の電力消費パターン(ロードカーブ)は、家族構成や生活スタイルによって大きく異なります。

しかし太陽光発電や蓄電池の経済効果シミュレーションでは、これらの違いが結果に直結するにも関わらず、現場の営業担当者が時間帯別の消費比率どのように設定すればよいか悩むケースが多くあります。特に、オール電化住宅の昼間余剰電力活用(いわゆる「昼間沸かし」)や、共働きで昼間不在の家庭など、標準的なテンプレートではカバーしきれないライフスタイルでは、デフォルトのロードカーブとのミスマッチがシミュレーション精度に影響します。

本記事では、時間帯別消費割合のテンプレートをユースケースごとに10種類作成し、各ペルソナに最適なロードカーブを提案します。

単に理論値を示すだけでなく、実在するデータや知見を駆使して、なぜそのパターンになるのかを高解像度に解析し、分かりやすく解説します。

太陽光・蓄電池の提案営業において、従来は「なんとなく常識」で済まされてきた部分にもメスを入れ、生活スタイル別の消費パターンを網羅的に見直すことで、「あれ、このお宅はちょっと違うぞ?」というモヤモヤを解消するヒントを提供します。さらに各パターンごとに時間帯区分と比率例を具体的に提示しますので、エネがえるASPエネがえるEV・V2Hの経済効果シミュレーションで使える生活スタイル「カスタム機能」で独自ロードカーブを設定する際の参考にしてください。

30秒でわかる!記事のポイント

  • 生活スタイルに応じたロードカーブの重要性: 電力消費の時間帯別パターンはシミュレーション結果に直結します。実際の使用状況とテンプレートの不一致は、経済効果試算の精度低下に繋がるため、ペルソナ別のカスタム設定が重要です。

  • エネがえるのデフォルトと限界: エネがえるASPには「朝型・昼型・夜型・オール電化型・カスタム型(4つの時間帯で%を定義)」の5つの標準テンプレートがありますが、特殊なケース(例:オール電化の昼間沸かし)では合致せず、カスタム入力が必要です。API経由で独自テンプレート登録も可能なので、営業現場で積極的に活用しましょう。
    産業用のエネがえるBizではより細かい業種別・規模別のロードカーブテンプレートが使えます。

  • 10タイプの生活スタイル別パターン提案: オール電化(昼間沸かし型)、住宅兼店舗型、朝夕ピーク型、深夜電力活用型、エネファーム併用型、ZEH高断熱型、EV充電型、テレワーク型、在宅高齢者型、夜型生活型の10種類を網羅。各パターンの背景・特徴と、最適な時間帯区分&消費比率例を提示します。

  • 実データと知見に基づく妥当性: 各ペルソナの割合設定は、国の統計や実測調査データ、学術知見を引用し裏付けています。例えば共働き家庭では在宅家庭に比べ日中の消費が約25%減となることや、テレワーク導入で平日日中の使用量が94%増加することなど、具体的な数値エビデンスを示します。

  • 太陽光・蓄電池提案への影響: 各ロードカーブが太陽光余剰の発生タイミングや蓄電池の放充電にどう影響するかも考察します。例えば昼間消費型では自家消費率向上、夜間消費型では蓄電池でのピークシフト効果が重要になるなど、ソリューション提案の論点も整理します。


それでは早速、各ペルソナごとの生活スタイルと時間帯別消費パターンを詳しく見ていきましょう。

本ロードカーブテンプレートはあくまでもWeb検索等で入手できる情報をベースにAIを用いて推計されたものです。目安として実際のお客様にヒアリングする等で補正してご活用ください。

1. オール電化(昼間沸かし)型 – 太陽光余剰を活用する昼ピーク型

特徴・背景:
オール電化住宅で太陽光発電の余剰電力を活用して昼間にお湯を沸かすケースです。通常、オール電化住宅では深夜電力が安いため夜間に電気温水器(エコキュート)でお湯を沸かす運用が一般的です。しかし昨今は太陽光発電の普及により、昼間の安価な余剰電力で給湯を行う「おひさまエコキュート」設定が注目されています。これは昼間の自家消費率を高め、売電よりも光熱費削減メリットを優先する考え方です。太陽光+オール電化の組み合わせでは、この昼間沸かし運転により光熱費削減効果が最大化できます。

典型的な生活パターン:
日中も家に誰かが在宅しているケースが多く、昼間にエコキュートが沸き上げ運転を実行します。夜間は逆に給湯のための電力消費が減り、従来のオール電化より夜間使用割合が小さくなります。また昼間在宅ゆえに照明や冷蔵庫以外の電力消費もそれなりにあり、消費のピークが昼に偏る点が特徴です。実際、昼間沸かし運転のエコキュートでは深夜帯の消費を最低限に抑え、昼の高温時に太陽光で沸かす設定が推奨されています。これにより夜間電力使用量の割合を大幅に下げることができます。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~9時) – 15% :朝食準備や身支度で電力使用があるものの、給湯は前日昼に作ったお湯を利用できるため比較的控えめ。

  • 昼(9~17時) – 45% :昼間の在宅時間帯太陽光発電の余剰でエコキュートが沸き増し運転を実施し、お湯を貯蔵。洗濯など電力消費もこの時間帯に集約。最も消費割合が高く、自家消費を優先するスタイル。

  • 夕方(17~22時) – 25% :夕食の調理や照明需要で一定の消費あり。ただし日中にお湯を沸かしているため、この時間帯に電気で給湯する必要はなく、従来オール電化より低負荷

  • 夜間(22~翌6時) – 15% :深夜電力での給湯を最小限にしているため、消費は冷蔵庫や待機電力程度にとどまる。通常のオール電化より夜間使用比率が大幅に低い

(合計100%)

解説・考察:
この昼ピーク型ロードカーブでは、太陽光発電の余剰を有効活用できるため、自家消費率の向上による電力購入量削減メリットが最大化します。エネがえるなどのシミュレーションでも、生活スタイルをこのように昼型(カスタム)に設定することで、実態に近い経済効果を試算可能です。注意点として、エネがえるのシミュレーションツールのデフォルト「オール電化型」は夜間沸かし(深夜2-3時ピーク)前提のロードカーブになっているため、昼間沸かし派の実態とは合いません。必ずカスタム比率を入力し直すか、このペルソナ用テンプレートを登録して対応しましょう。結果として、蓄電池なしでも太陽光の自家消費を最大化しやすい反面、夜間の割安電力を活かしきれないため深夜電力メインの電気料金プランとの相性には留意が必要(※現状のオール電化プランは一旦切り替えると新規停止でもとに戻せないケースが多いため、電気料金プランの切り替えは慎重に検討する)です。とはいえ昨今は売電より自家消費メリットが大きくなっており、本パターンは経済性重視の有力なスタイルと言えます。

2. 住宅兼店舗・事業所型 – 日中営業&家庭生活のハイブリッド型

特徴・背景:
自宅が小規模事業所や店舗を兼ねているケースです。例えば自宅で商店を営む家庭や医院併設住宅などが該当します。契約は家庭用低圧(~10kW)でも、日中は店舗部分でかなりの電力を使うため、需要パターンは一般家庭と異なり昼間の消費が大きくなります。一方、夜間は店舗営業が無いため家庭としての最低限の使用にとどまり、全体に昼型負荷の傾向が強いです。エネがえるASPの想定ユーザにも、小規模店舗や事務所兼住宅が含まれており(低圧電灯以外の動力を含む低圧電力契約でも試算が簡単にできます)、このパターンに合うロードカーブテンプレートが望まれていました。

典型的な生活パターン:
朝は家庭の活動(朝食・身支度)と店舗準備である程度の消費があります。日中(営業中)は照明・空調・業務機器の稼働で電力消費が跳ね上がります。例えば小売店であれば開店の9時頃から夕方まで照明・レジ・冷蔵庫等がフル稼働し、医院なら医療機器や空調で定常的な負荷があります。夕方以降は店舗営業終了により事業用途の負荷が消え、家庭部分のみになるため、一旦大きく消費が落ち込みます。夜は家族の団らんや家事で多少電力を使いますが、昼のピークに比べれば小さいでしょう。要するに「昼に山二つ、夜低い」形のロードカーブとなります。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~9時) – 20% :家庭の朝支度+店舗の開店準備で電力需要が立ち上がる時間帯。看板照明や朝の仕込みで消費あり。

  • 昼(9~18時) – 50% :店舗・事業の営業時間帯に相当し、一日の中で最大の電力消費ゾーン。照明・空調・業務機器がフル稼働し、家庭部分の昼間在宅需要も加わる。消費の過半がここに集中

  • 夕方(18~22時) – 20% :店舗営業終了後、家庭の時間帯。夕食や照明で消費はあるが、昼の事業用途負荷が無いため大幅減。

  • 夜間(22~翌6時) – 10% :家族就寝中で最低需要のみ。店舗設備は停止しており、深夜の電力使用量は全体の一割程度とごく小さい。

(合計100%)

解説・考察:
この住宅兼店舗型では、とにかく日中の消費割合が高い点が特徴です。家庭需要と業務需要が重畳することで昼間の負荷は大きく、電力料金プランでも昼間料金単価の影響を強く受けます。太陽光発電を導入すれば、この昼間負荷のかなりの部分をカバーできる可能性があり、自家消費型太陽光との相性は抜群です。蓄電池についても、夜間の需要は小さいため主に昼ピークの余剰吸収や非常時電源確保が目的となるでしょう。シミュレーション上は、デフォルトの「昼型」テンプレートが近い挙動をしますが、店舗機器の負荷特性によってはそれ以上に尖った昼ピークになることもあります。例えば工場やオフィスでは昼休み~午後にピークが来る傾向も報告されており、個別事情で変わるためカスタム調整が望まれます。

実測データから見ると、家庭とオフィス・工場では負荷の時間分布が正反対です。家庭18時以降に需要が増大しますが、工場など事業所8~17時に需要が高く夜は低下します。本パターンはその両者を足し合わせたような形で、日中の商業需要+夕方以降の家庭需要という二峰性を示します。営業担当者としては、このロードカーブを持つ顧客には太陽光をやや大きめに提案し、自家消費で昼間ピークを賄うようシミュレーションすると良いでしょう。昼の消費が電力契約容量を押し上げている場合、ピークカット効果も期待できます。

3. 朝夕ピーク型(昼間不在) – 共働き家庭の典型的パターン

特徴・背景:
こちらは日中ほぼ不在で、朝と夕方以降に電力を集中して使うスタイルです。典型例は共働き夫婦(核家族)で、「朝8時には夫婦とも出勤、帰宅は夜7~8時頃」というケース。日中は家を空けているため消費電力は極端に少なく、一方、在宅する朝と夜に家事・生活の需要が集中するため、ロードカーブ上は朝と夜に尖った二つのピークが現れます。エネがえるでいえば非オール電化なら「朝型」または「夜型」に分類されそうなパターンですが、実態としては朝食・夕食双方にエネルギーを使う家庭像です。

典型的な生活パターン:
朝6~8時台起床・朝食・身支度で照明、炊飯器、ドライヤーなどを使用し1回目のピークが来ます。出勤後の9~17時は基本的に人がおらず、冷蔵庫や留守番の家電以外ほとんど電力を使いません(昼間は消費がほぼベースロードのみ)。夕方以降、家族が帰宅すると照明がつき、エアコンやテレビ、炊事でレンジを使うなど2回目のピークが訪れます。特に18~22時頃夕食準備~団らん時間帯に一日の最大消費となる傾向が強いです。夜22時以降は就寝に向け徐々に需要が減り、深夜はわずかな待機電力のみとなります。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~9時) – 25% :出勤前の時間帯に電力使用が集中。炊飯やシャワー(給湯)、ドライヤーなど短時間に多くの家電が動作し、全体の1/4程度を消費。

  • 昼(9~17時) – 5% :夫婦とも不在でほぼ無人。冷蔵庫やタイマー運転の機器以外動かず、消費割合は極めて低い。エアコンもオフならば待機電力中心。

  • 夕方(17~22時) – 50% :仕事から帰宅後の時間帯が最大のピーク。にもあるように、在宅家庭に比べ消費量は少ないものの、この時間帯だけは照明・調理・家族団らんでテレビやPCなどフル稼働全体の半分を占める電力を使う。

  • 夜間(22~翌6時) – 20% :就寝時間帯。基本的に照明は消え静かな時間だが、共働きだと夜遅くに洗濯や食器洗い乾燥機を回す場合もあり、完全ゼロにはならない。エアコン暖房期間などは深夜も運転継続することがあるため、2割程度の割合を見込む。

(合計100%)

解説・考察:
この朝夕ピーク型は、日本の共働き世帯ではごく一般的な負荷パターンです。実際、総務省の家計調査などでも平日日中の家庭の電力消費は低く、帰宅後に大きく増える傾向が確認されています。調査によれば、共働き核家族の1日あたり消費電力量は在宅家庭の約75%(5.7kWh vs 7.7kWh)で、日中不在により消費が1/4減少する旨が報告されています。つまり、その削減分はまさに昼間の電力使用が少ないことに起因します。

シミュレーションへの示唆として、太陽光発電のみを導入する場合、昼間の需要が極端に低いため余剰売電率が高くなります。蓄電池なしだと発電の多くを売電に回す形となり、経済効果は売電単価依存となるでしょう。一方、このパターンのお客様には蓄電池を併設する提案が刺さります。昼間の余剰を蓄電池に充電し、夕方~夜のピークに放電して使うことで、購入電力量を大きく削減できます。エネがえるの試算でも、蓄電池有無で夕方以降の買電量に明確な差が出るはずです。実際、EVシフトによる需給逼迫懸念に対しても「夜間に充電シフトすれば需要平準化できる」との指摘があるほどで、夜間の安価電力や蓄電でピークシフトする発想が重要です。

デフォルトテンプレートでは、非オール電化かつ昼不在なら「夜型」に近いですが、実際には朝もピークがある点で異なります。朝型 + 夜型の複合と捉えるべきでしょう。営業目線では、「昼間ご不在ですよね?」と確認しつつ、このロードカーブを想定して太陽光+蓄電池のセット提案や、余剰売電のメリットを丁寧に説明すると良いでしょう。

4. 電気温水器やエコキュートのヘビーユース型(深夜電力集中型オール電化)

特徴・背景:
深夜電力を活用するオール電化住宅の典型パターンです。エコキュートや電気温水器夜間にお湯を沸かし貯めておく従来型の運用で、電力会社の時間帯別メニュー(夜間料金割引プラン)をフルに活用します。オール電化プランでは概ね23時~翌7時頃がナイトタイムで料金が安く設定されており、多くのご家庭でその時間帯に給湯や蓄熱暖房を稼働させています。結果として、ロードカーブ上は深夜帯の消費割合が非常に高く昼間の消費割合が低めになる傾向があります。

典型的な生活パターン:
家族構成は様々ですが、ここではオール電化×共働きでない一般家庭(昼間在宅あり)を想定します。日中もある程度は人が家に居るが、大きな電力は使わず、深夜に電力使用が集中するのがポイントです。具体的には、電気温水器が電力割安な真夜中(例えば午前2~5時)にフル稼働し、一家の1日分のお湯をまとめて沸かします。夜間電力メニューでは「夜間の使用量割合を高くするほど電気料金が下がる」旨が案内されており、ユーザーも意識的に夜間に家電を動かす傾向があります。洗濯機や食洗機もタイマーで深夜に回したりして、とにかく夜に電気を使うのです。一方、朝~夕は給湯を使っても貯湯タンクのお湯消費が中心で電気使用は少なめ、昼間も必要最低限に抑える傾向があります。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(7~10時) – 15% :夜間に沸かしたお湯で朝のシャワーや炊事をこなし、電気としての消費は照明・調理器具が中心。夜型生活ほどではないが朝にも一定の使用がある。※オール電化プランでは朝7~8時頃から昼間扱いで料金が上がるため、それ以降の使用は必要最低限に。

  • 昼(10~18時) – 15% :日中在宅していても、電気代の高い昼間はエアコンや家事をなるべく控え、省エネに努める家庭も。冷暖房不要な季節なら冷蔵庫以外ほぼ使わず、割合は2割未満に抑えられる。

  • 夕方(18~23時) – 20% :夕食時にIH調理器や照明テレビ等を使うが、給湯はタンク湯利用夜間料金になる23時までは消費を抑える意識が働き、家族の団らん時間帯としては控えめな割合。

  • 夜間(23~翌7時) – 50% :圧巻の深夜消費ゾーン。23時以降、待ってましたとばかりにエコキュートが作動し大量の電力を消費洗濯乾燥機・食洗機なども予約運転でこの時間に集中稼働。4人家族なら午前2~4時頃に使用量グラフが山形に突出しているでしょう(実際、オール電化マンションで深夜3~4時だけ消費が飛び抜ける例も報告されています)。全体の半分をこの時間帯が占めることも珍しくありません。 ※エネがえるのオール電化型の生活スタイルはこのパターンを想定して設計されています。

(合計100%)

解説・考察:
この深夜電力集中型ロードカーブは、一昔前までのオール電化住宅の典型でした。「昼間は高い電気をなるべく使わず、深夜にまとめて使う」という節約志向が色濃く反映されています。電力会社も夜間電力メニューを用意し、利用者に夜間シフトを促してきました。メリットとして、夜間の割安単価のおかげで光熱費を大幅に低減できます。例えば関西電力のオール電化プランでは昼の「リビングタイム」と夜間「ナイトタイム」で料金差があり、昼在宅時間が長い家庭には不利とされています。逆に本パターンのような家では「ナイトタイムに電気を多用するほどおトク」になるわけです。

太陽光・蓄電池シミュレーションへの影響を見ると、このスタイルは太陽光との相性がやや悪い側面があります。何せ昼間の消費が少ないため、発電しても自家消費できず余剰が多く出てしまうのです。深夜の大きな消費には太陽光は役立てません。そのため蓄電池による昼充電→夜放電が非常に効果的です。蓄電池があれば、昼間の余剰を貯めて深夜のエコキュート運転に当てる(あるいはエコキュート自体を昼運転にシフトする)ことで、太陽光をフル活用できます。エネがえるの標準「オール電化型」はまさにこの深夜沸かし前提のカーブですが、もし太陽光既設で昼沸かしに切り替える場合やオール電化型でいまいち効果が出づらいケースでは前述のペルソナ1のようにカスタム調整が必要です。

総じて、本パターンのお客様には夜間電力メインの生活から昼間太陽光活用への移行を提案すると良いでしょう。具体的には、「おひさまエコキュート」や蓄電池導入です。そうすることで昼夜の負荷バランスが改善し、より多くの太陽光を自己利用できます。現状のままでも電力会社から見ると理想的な負荷平準化(昼需要低・夜需要高で逆谷型)ですが、再エネ主力化の時代には昼間需要もある程度必要です。太陽光+蓄電池による自己完結型エネルギー生活へのシフトを促すのも、営業担当の腕の見せ所でしょう。

5. エネファーム導入型 – 燃料電池併用によるフラット型負荷

特徴・背景:
家庭用燃料電池「エネファーム」を導入済みの世帯です。エネファームは都市ガス等から水素を取り出し発電しながら、その排熱でお湯も作るというコージェネレーションシステムで、定格出力は通常700W程度(エネファームミニで400W)です。発電された電気は家庭内で使い、熱は給湯に回します。各家庭の電気・お湯の使用パターンを学習して、自動的に最適運転してくれるスマートな設備です。その結果、エネファームのある家では電力会社から買う電力量が大幅に減少し、消費電力カーブも自家発電でかなり平坦化されると考えられます。

典型的な生活パターン:
エネファームは朝夕などお湯を多く使う時間帯に合わせて発電運転することが多いです。例えば朝のシャワーや夜の入浴に備え、その少し前から燃料電池が起動し電気とお湯を供給します(学習の結果、各家庭のピークに合わせる)。これにより朝夕の電力需要の一部を自家発電でまかなうため、グリッドから買う電力のピークが低減します。日中はお湯需要が少なければエネファームは待機または低出力になり、電気は電力会社から供給されます。ただし「学習予測に基づきムダが出ないよう自動運転」するので、例えば昼間在宅でちょくちょくお湯を使う家庭なら昼間も発電するかもしれません。いずれにせよ、エネファームなしの家に比べると買電量の山が慣らされる方向に働きます。

時間帯区分と消費比率例(買電ベース):

  • 朝(6~10時) – 20% :エネファームが朝の需要期に発電を開始し、自家発電電力で照明やテレビ等を賄うため、系統からの購入電力は抑えられるガス式のため電力への影響は小さいが、多少の不足分を買電。比率は2割程度。

  • 昼(10~17時) – 25% :日中はエネファーム停止または低出力のことが多く、この時間帯は通常通り電力会社からの供給に頼る割合が増える。しかし昼間はそもそも電力需要自体が低~中程度の家が多いので、買電比率は全体の1/4前後に。

  • 夕方(17~22時) – 30% :一家が最も電気を使う帰宅後の時間帯だが、同時にエネファームが発電・湯沸かし最大稼働となり、かなりの電力を自給します。例えば700Wをフル活用すれば、照明やテレビ程度ならまかなえます。それでもIH調理器やエアコンなどは不足するため、系統から購入もあるがピークカット効果で比率3割程度に収まる。

  • 夜間(22~翌6時) – 25% :入浴後はお湯需要が減りエネファームは待機状態に。深夜の電力は全て購入となるが、もともと冷蔵庫などベース部分のみなので割合は1/4程度。エネファームなし家庭の深夜と大差ないが、全日トータルで見るとこの区間の占める比率は相対的に上がる。

(合計100%)

解説・考察:
エネファーム導入家庭のロードカーブ最大の特徴は、自家発電による買電負荷の平準化です。エネファームは「必要な分だけつくる」(最大700W)を基本に、余剰電力を貯めておけない代わりに需要に追随して発電する仕組みです。したがって、電力需要が高まる朝夕にはグイっと出力し、その分電力会社から買う量が減ります。一方、需要が低い深夜や留守中は発電しない(or最小)ので、買電に頼る時間帯もあります。その結果、全体の電力購入パターンはエネファーム無しの場合よりフラットになる傾向があります。例えば従来なら夕方に2kW買っていたのがエネファームで1kW補えるため、1kW分で済む、といったイメージです。

太陽光・蓄電池シミュレーション上は、このパターンをモデル化するのはやや高度です(※現状のエネがえるではエネファーム提案には未対応。今後の構想はあり)。太陽光とエネファームを両方導入すると「ダブル発電」となり、日中は太陽光、朝夕はエネファームと役割分担できます。京セラの試算では、エネファーム+蓄電池を組み合わせれば発電分を最大限活用可能で、余剰売電や停電対策にもメリットがあるとしています。エネがえるASPでは現在エネファーム単独の計算ロジックはありませんが、このロードカーブをカスタム設定することで近似は可能でしょう。具体的には朝夕の使用割合を抑え気味にし(自給分があるため)、昼夜をやや高めに振るような調整です。本節の比率例はあくまで一例ですが、実際はガス代との兼ね合いで発電時間をどこまで伸ばすか(つまり昼間もお湯を捨ててでも発電するか)はユーザー設定次第です。そのため営業としては、お客様にエネファーム運転方針(自給重視か省エネ重視か)をヒアリングした上で、シミュレーション条件を微調整すると良いでしょう。

6. 新築ZEH・高断熱全館空調型 – 低ピーク・定常型の省エネパターン

特徴・背景:
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様の高断熱住宅で、全館空調など省エネシステムを備えたケースです。断熱性能が極めて高く、太陽光発電など創エネも組み合わせることで年間エネルギー収支ゼロを目指す住宅です。特徴は冷暖房エネルギーが大幅に削減されることと、24時間稼働の全館空調により家中の温度を均一に保つため、エアコンのオンオフによる消費の山谷が小さくなることです。加えて高効率設備・HEMS制御で無駄を省き、生活全体の電力ピークが低めに抑えられます。つまりロードカーブは平坦かつ低ピークな形になりやすいです。

典型的な生活パターン:
高断熱住宅では夏も冬も家の中の温度変化が緩やかです。そのため、エアコン(全館空調)は常時弱運転で家全体をじわっと冷暖房します。一部屋ごとにオンオフする従来型と違い、起床や帰宅時に一気にエアコンを付ける必要がなく、電力消費も24時間に滑らかに広がります。家族の行動としては普通の生活リズム(朝起床・日中活動・夜就寝)ですが、電力使用の変動幅が小さいのがポイントです。照明や家電のオンオフはありますが、家の熱的安定性が高いのでエアコン起動での突発的な高負荷が少なく、また断熱効果でエアコンそのものの消費も抑えられます。結果、ロードカーブ上はなだらかな丘のような形になります。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~9時) – 20% :高気密住宅では朝起きても室温が下がりきっておらず、暖房の追加消費が少ないです。調理や給湯はありますが省エネ機器採用で効率的。よって朝の比率は20%程度と小さめ。

  • 昼(9~17時) – 30% :在宅時間帯で家電使用はあるものの、断熱性能で冷暖房負荷は抑制。例えば猛暑日でもエアコン消費は通常住宅の半分以下に抑えられるケースがあります。したがって昼間のピークもそれほど高くなく、全体の3割程度。

  • 夕方(17~22時) – 30% :家族が揃う時間帯なので照明・調理である程度の電力は使うが、ここでも全館空調が効いており「帰宅してエアコン全開」のような動きはない。従来のような夕方急峻なピークは現れず、割合は昼と同程度。

  • 夜間(22~翌6時) – 20% :就寝後も全館空調は緩やかに動作し続けるため、深夜の消費がゼロにはならない。ただし深夜帯も外気温変動を建物が緩和するので必要最小限の運転で済む。結果、深夜も一定の負荷があり全体の2割程度を占める。

(合計100%)

解説・考察:
ZEH・高断熱住宅のロードカーブ最大の利点は、冷暖房による尖ったピークがないことです。環境省も「住宅そのものを省エネ住宅にすることで暖冷房エネルギーを大幅に削減可能」と述べており、高性能住宅では夏の夕方や冬の早朝にエアコンがフルパワーで稼働する事態が起きにくくなります。実際、平均的な家庭では猛暑日にエアコン消費だけで平時の倍以上の電力を使うことがありますが、ZEHならその増分を大きく抑え込めます。したがって、電力消費曲線が季節による変動も含めて平坦になり、契約電力(最大需要)も低減できる可能性があります。

シミュレーション上は、太陽光との相性が非常に良いと言えます。もともと消費エネルギーが少ないため、少容量の太陽光でも年間の購入電力量をネットゼロに近づけやすいです。さらに全館空調は常時稼働なので、昼間の発電を無駄なく室温維持に使い、足りない分は蓄電池から夜間補う、といった理想的なフローを描けます。実際の営業シナリオでは、「ZEH対応の新築なら遠慮なく大容量PV+蓄電池でエネルギー完全自給を目指しましょう」という提案も可能です。ロードカーブが平坦な分、蓄電池でシフトすべき夜間需要も小さく、費用対効果が高めです。

ただ一点、このパターンは従来比で電力使用量が少なく電気代も低めになるため、純粋な経済メリットは他パターンより小さく出る場合があります。言い換えると、省エネ達成済みで光熱費が既に安い家庭に太陽光・蓄電池を売る際は、環境価値やレジリエンス(非常時電源)を前面に打ち出す戦略が有効でしょう。シミュレーション上も、CO2削減効果や停電時のバックアップ稼働シミュレーションなどを見せると響くかもしれません。いずれにせよ、ZEHのような先進的住宅にはそれ相応のフラット型ロードカーブを想定して、過大なピークを見込まない現実的な提案が重要です。

7. EV充電型(深夜充電メイン) – 電気自動車ユーザーの夜間大口需要パターン

特徴・背景:
電気自動車(EV)を所有しており、自宅で主に充電している家庭のパターンです。EVのバッテリー充電はかなりの電力を要するため、家庭の消費電力量に占める割合が無視できません。多くのEVユーザーは電気代の安い深夜時間帯に充電する傾向があります。そのため、ロードカーブとしては深夜帯に大きな山が一つ追加され、夜間消費割合が高くなるのが特徴です。日中は通常の家庭同様の使い方でも、夜中にEV充電器(200V)で数時間充電するだけで、その日の電力使用量の相当部分を占めてしまいます。まさに深夜の大口需要家と言えるでしょう。

典型的な生活パターン:
例えば郊外一戸建てでEV(例えば日産リーフ)を所有し通勤に使っている家庭を想定します。日中は共働きで留守、夜に帰宅してからEVを充電器につなぎ、翌朝までに満充電にします。こうしたケースでは、前述の「朝夕ピーク型(昼不在)」のロードカーブに深夜充電の山が付け加わる形になります。すなわち、朝夕に中程度のピークがあり、深夜0~4時頃にEV充電で最大数kWの高負荷が発生します。EVの電費にもよりますが、1日に走行した分(例えば30~40km)の充電に5~10kWh程度を夜間に消費するイメージです。家庭の他の部分は共働きなら日中低負荷・夕方高負荷なので、トリプルピーク(朝・夕・深夜)とも言えるパターンになります。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~9時) – 15% :朝の支度である程度電力を使うが、EV充電は完了しているためこの時間は関係なし。共働きなら朝は短時間で家を出るため、割合は控えめ。

  • 昼(9~18時) – 5% :夫婦とも不在でEVも駐車場で待機しているだけ。日中に充電するデイタイム充電派もいるが、ここでは深夜派を想定しているので昼間消費はごくわずか。

  • 夕方(18~23時) – 30% :仕事から帰宅し家事・団らんで電力使用。この家庭では夕食後に洗濯等はせず、EV充電開始を23時まで待つ。よって夕方帯の割合は3割程度。

  • 夜間(23~翌6時) – 50% :EV充電が主体の時間帯。23時を過ぎ料金が安くなったタイミングで充電開始深夜1~3時にかけて最大出力でバッテリーに電力を注入する。EV1台分の充電だけで10kWh前後消費するため、他の家電の微少な使用と合算すると全体の半分に達する巨大なピークとなる。

(合計100%)

解説・考察:
EVユーザー宅のロードカーブは、ほぼ夜間充電の有無で決まると言っても過言ではありません。国の資料でも「生活者は基本料金を増やさないよう他の設備消費が少ない時間帯に賢く充電している」と分析されており、多くの人は深夜にシフトしています。このため、電力需要が一番低い深夜に充電することでEV普及による電力不足を回避できるともされています。実際、NTTの研究では「EVの充電を深夜1~9時にシフトすれば需要曲線が平準化し追加の設備投資やCO2排出を削減できる」と指摘されています。つまり、深夜充電型は社会的にも推奨されるスタイルなのです。

シミュレーション上は、この深夜の山をどう扱うかがポイントです。太陽光だけでは深夜需要は賄えませんから、蓄電池または安価な夜間電力が鍵となります。EVそのものを蓄電池代わりに昼間充電(V2H)する方法もありますが、本パターンは深夜充電前提なので基本は夜安い電力をそのまま使います。エネがえるではEV・V2H対応版もあり、EVの充放電を考慮したシミュレーションが可能です。深夜充電の場合、経済効果試算では夜間電力単価と走行によるガソリン代節約効果の比較などが論点になります。ロードカーブ的には、蓄電池を導入すれば昼間余剰を夜間に回せるため、太陽光でEV充電するシナリオも描けます。しかし現実には夜間の方が安いプランが多いので、純粋な経済性では夜充電が勝る場合もあるでしょう。その場合、蓄電池は非常用電源や売電益向上など別の価値提案が必要です。

要するに、EV充電型のお客様には電力料金メニュー最適化設備容量検討が重要です。太陽光のサイズは、EV分の消費(年間○kWh)をまかなえるようプランすると喜ばれますし、V2H機器の提案も刺さるでしょう。「夜間電力で走る燃料代0円カー」のようなインパクトある訴求もしやすいので、ロードカーブの山を見せながらEV込みのエネルギー収支を説明できると、提案が現実味を帯びます。

8. テレワーク・在宅勤務型 – コロナ以降の平日日中需要増パターン

特徴・背景:
新型コロナ以降普及したテレワークにより、平日昼間も自宅で仕事をする家庭のパターンです。リモートワークになったことで「昼間家に人がいる」ケースが増え、電力需要にも大きな変化が起きました。調査では、緊急事態宣言を機に平日9~18時の家庭の電力使用量が94%増加したと報告されています。つまり在宅勤務により昼間需要がほぼ2倍になったのです。このペルソナでは、従来昼間不在だった共働き世帯が二人とも在宅勤務となったような状況を想定します。結果、平日昼間のロードカーブが大幅に底上げされ、ほぼ一日中電力消費が途切れないパターンとなります。

典型的な生活パターン:
夫婦2人ともフルリモート勤務、子供もいればオンライン授業、というシナリオを考えます。朝は通勤が無い分ゆっくりめだがPCや照明をつけ始め、9時からはそれぞれ自室でPC・エアコン稼働。ビデオ会議用に照明やWebカメラもON、プリンターを使う場合も。昼間ずっと人が活動しているため、エアコン・照明・ICT機器が動作し続けます。お昼には電子レンジやIHで調理もするでしょう。夕方までほぼ仕事で電力使用が継続し、18時以降は通常の家庭同様に団らんや家事で引き続き電力を使います。深夜は就寝しますが、自宅勤務ゆえ通勤疲れも無く夜更かし傾向なら深夜帯の消費も増えるかもしれません。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(7~10時) – 20% :出勤が無いため朝のバタバタは多少緩和されるが、その分早めにPC起動などで電力使用が始まる。夫婦でリビングと書斎のエアコンを入れたりすれば朝からそこそこの需要に。

  • 昼(10~18時) – 40% :本来は低負荷だった平日昼間が最大の山に変貌。エアコンは一日中稼働(夏冬は特に負荷増)、PC2台・照明・ルーター等フル稼働で在宅勤務。電子レンジや炊飯器も稼働し、昼間の消費が全体の4割と突出する。

  • 夕方(18~23時) – 25% :仕事が終わってからは通常の家庭と同じく夕食・風呂・テレビ等で消費。ただし昼間にかなり使っているので、感覚的には夕方以降の追加消費は従来よりやや少なめかもしれない(在宅で日中に家事も片付けている場合など)。割合は1/4程度。

  • 夜間(23~翌7時) – 15% :翌日に備え就寝。深夜帯の消費自体は普通の家庭と同じく小さい。ただし在宅ワークで通勤が無くなり夜型生活になりがちな人は、深夜もPCで作業や娯楽を続けるケースもあり、その場合は夜更かし分の消費が昼に上乗せされる形になる。

(合計100%)

解説・考察:
テレワーク型ロードカーブ最大の特徴は、平日昼間の需要激増です。在宅率上昇により昼間使用量が大幅増。その理由トップが「照明の点灯時間増加」、次いで「自宅PC使用時間増加」だったという調査結果も報告されています。つまり、日中ずっと照明とPCを使うことが電力消費増加の主要因なのです。

経済効果シミュレーション上は、昼間需要が増える分太陽光自家消費メリットが大きく向上する好条件になります。従来共働きで昼不在なら余剰売電が多かったところ、在宅勤務化によって昼間の消費先ができるため、太陽光で発電した電力をその場でどんどん使えるようになります。蓄電池がなくても自家消費率が自然と高くなるため、売電単価低下の影響を受けにくく、導入効果が出やすいでしょう。実際、昼間在宅2人世帯の標準消費(冷暖房不要時)7.7kWhが猛暑日は17.4kWhまで跳ね上がるとのデータもありますが、太陽光があればその増加分の多くをカバーできます。

提案の現場では、「コロナ以降在宅が増えましたよね。だから太陽光との相性がますます良くなっています」というトークが有効です。ロードカーブを見せ、「以前は昼間いなかったのが今はこれだけ使ってます。太陽光がこれだけ刺さります」と具体的に示せれば、お客様の納得感も高まります。蓄電池に関しては、昼にたくさん使うとはいえ夜間も一定使うため、余剰を蓄えて夜使う効果ももちろんあります。むしろ在宅時間が長い分、停電リスクへの備え(レジリエンス)意識も高まっており、蓄電池の防災価値訴求もしやすいでしょう。

なお、在宅勤務者は家に24時間いるため平日と休日の差異も小さくなります。従来は「平日は昼不在・休日は昼在宅」という差がありましたが、テレワークでは平日も休日も在宅なのでパターンが近づきます。エネがえるでは平日/休日で内部的にロードカーブが同じと仮定していますが、実際このペルソナでは妥当な前提と言えます。もはや「昼型」というより「終日型」とでも呼ぶべきフラットに近い負荷特性であり、シミュレーションでもそのように扱いましょう。

9. リタイア/主婦在宅型 – 昼間在宅だが省エネ志向の穏やかパターン

特徴・背景:
日中に家にいるけれども、テレワークほど積極的に電気を使うわけではないケースです。典型例は高齢のご夫婦(年金生活)や、子育てが一段落した専業主婦(夫は出勤)など。昼間在宅なのである程度電力は使いますが、パソコンや大量の照明を使うわけでもなく、比較的ゆったり省エネに過ごすことが多いと考えられます。ロードカーブ上は、昼間に緩やかな山があり、朝夕もそれなりに電力を使うものの、全体に極端なピークがないバランス型になるでしょう。実際の電力量としては世帯人数が少なめの場合が多く、総使用量も多くありません。

典型的な生活パターン:
例えば60代夫婦のみの世帯で、夫婦とも退職し自宅で過ごす時間が長いパターン。朝はゆっくり起床し、電気ポットでお茶を沸かしテレビを見ながら朝食。日中は暑ければエアコンをつけますが、高齢者は節約志向も強く28℃設定で控えめ運転とか、寒ければ厚着して暖房も20℃設定、といった工夫をされるかもしれません。日中の電力使用はテレビ視聴や趣味程度で大きくはありません。掃除洗濯は電化製品を使いますが、省エネ家電に買い替えていることも多く効率的です。夕方~夜は照明をつけて夫が帰宅する家庭なら夕食を作り、お風呂を沸かし…と普通に電力を使います。ただし就寝時間が早めで夜更かししないため、深夜の消費はごく少ないでしょう。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~9時) – 20% :朝食・身支度でそれなりに電力を使う。特に高齢夫婦二人暮らしなどは朝晩2回炊飯する習慣もあり(朝6時と夜6時に炊く等)、朝にも調理負荷がかかる。

  • 昼(9~17時) – 35% :日中ずっと自宅にいるので昼間需要が高め。とはいえテレワークほど大量のIT機器は使わず、消費量は在宅2人世帯平均程度(7~8kWh/日のうち昼間が3割強)に収まる。冷暖房もほどほどに節約しながら使うイメージで、割合35%。

  • 夕方(17~22時) – 30% :夕刻以降ももちろん在宅なので照明・テレビ・調理で電力を使用。共働き家庭ほどピークは鋭くないが、夕食時が一日の最大にはなるだろう。割合3割程度。

  • 夜間(22~翌6時) – 15% :早寝早起き世帯では深夜はほとんど電力を使わない。電気温水器を使っていなければ尚更で、冷蔵庫や保安灯くらいのもの。割合は15%と控えめ。

(合計100%)

解説・考察:
このパターンはいわば「省エネおだやか型」とも呼べるロードカーブです。昼間在宅型ではありますが、テレワーク型のような大幅増にはならず、在宅2人世帯の平均的データに近いと考えられます。資源エネルギー庁の推計によれば、冷暖房不要な季節の在宅2人世帯では1日の消費7.7kWh程度で、朝から夜にかけてなだらかに増え、23時以降急減するカーブを描きます。まさにそのイメージ通りで、昼も夜もそれなりに使うが突出はしない負荷特性です。

シミュレーション上は、太陽光自家消費もそこそこ、売電もそこそこ、とバランス型の効果になります。昼間の消費がある程度あるので余剰は全部ではなく、かと言って昼の全てをカバーするほど消費も多くないため、適切な容量の太陽光を入れれば自家消費率・売電率のバランスが取れた結果になるでしょう。蓄電池を導入すれば夜間の購入をさらに減らせますが、このパターンだと深夜はあまり使っていないので蓄電池効果も限定的です。むしろ停電対策や電力自由化への不安など、経済性以外の価値訴求がポイントかもしれません。

営業現場では、このタイプのお客様(退職世帯や主婦世帯)は光熱費節約への関心が高い傾向があります。「平均的なご家庭でもこれだけ昼間使っています。太陽光を載せれば年間○万円節約できます」という平均モデルでの試算結果を示すと響くでしょう。実際、在宅時間が長い方ほど電気代高騰の影響を肌で感じています。アンケートでも「79%が在宅時間増加で58%が電気代上がった」との結果があり、電気代値上げへの不安は強いです。シミュレーションでは将来の料金上昇シナリオも織り込んで提案(エネがえるASPで簡単に上昇率を反映できます)すれば、「今後も上がる電気代を太陽光で抑えましょう」というメッセージが説得力を持ちます。

10. 夜型生活(夜勤)型 – 深夜活動・日中休息の逆転パターン

特徴・背景:
最後は少し特殊ですが、夜間に主な活動時間がある家庭のパターンです。例えば夫が夜勤の仕事で日中に寝て夜働く、あるいは家族全員が宵っ張りで深夜まで起きて朝遅く起きる、といったケースです。電力使用が通常の生活リズムと真逆になり、深夜帯に大きなピークが現れるのが特徴です。日中はむしろ静かに休んでいるため消費が少なく、ロードカーブが昼間凹んで夜中に山が来る「逆谷型」になります。電力会社から見ると工場夜勤のような需要パターンで、家庭としてはレアですが存在します。

典型的な生活パターン:
一家の稼ぎ手が夜勤(例:22時~翌6時勤務)の場合を考えます。本人は夕方頃に出勤、残された家族も夜型傾向になりがちで深夜まで起きて待っていたりします。夜勤者が明け方に帰宅して朝食を摂り、それから昼過ぎまで就寝…といった生活です。すると深夜0~3時頃に家族が起きていて電気を使っている状態が発生します。テレビやゲームを深夜まで楽しみ、照明も家中ついているような感じです。逆に昼間10~17時くらいは家族全員寝静まっているか、起きていても静養しておりエアコンも遮光で弱めに効かせている程度でしょう。夕方17~22時は夜勤者が出勤準備、家族は夕食など普通に活動するので一定の消費があります。こうして夜に大、夕方と朝に中、昼に小というユニークな曲線が描かれます。

時間帯区分と消費比率例:

  • 朝(6~10時) – 10% :夜勤明けの方が帰宅して就寝する時間帯。他の家族もまだ睡眠中が多く、朝の活動は最低限。照明も外明るいので不要、お弁当作り程度の消費で全体の1割と小さい。

  • 昼(10~17時) – 15% :家族全員が休息・仮眠している可能性が高く、冷房暖房も快眠優先で弱めに設定。家が静まり返っているため電力使用はかなり低い。ただし日中暑い日は遮光カーテン+弱冷房はつけるだろうから、ゼロにはならず15%程度。

  • 夕方(17~22時) – 25% :夜勤者が起き出し食事や身支度、他の家族も行動開始。夕飯の調理や入浴など一般家庭の夜に当たる動きがある。夜勤に出る22時までに家事を済ませ照明を点灯、割合は4分の1ほど。

  • 夜間(22~翌6時) – 50% :メイン活動時間。夜勤者は不在だが家族が起きており、リビングでテレビ・ゲーム・勉強など。場合によっては夜勤者不在をいいことにエアコンを強めに効かせリラックス? 電力使用量は深夜にも関わらず最大となり、全体の半分を占める。

(合計100%)

解説・考察:
この夜型生活型ロードカーブは非常に特殊ですが、考察する価値があります。一言でいうと家庭版「昼夜逆転」負荷です。電力需要曲線としては深夜帯にピークがある形になり、通常の家庭需要とは真逆です。電力システム的には夜間余剰電力の有効活用になるので歓迎される面もありますが、当の生活者にとっては太陽光発電の有効活用が難しい課題が出ます。何しろ肝心の需要が太陽の無い時間に発生するため、太陽光を入れてもその場では使えず余剰売電に回りがちです。蓄電池を組み合わせて昼発電→夜放電すればニーズとマッチしますが、無い場合は売電頼みになります。

エネがえるなどでシミュレーションする際も、このパターンのお客様には蓄電池付き提案が不可欠でしょう。蓄電池で昼間の発電を貯め、夜型ライフスタイルに電気を供給するシナリオです。幸い電力会社の夜間料金は安いので、蓄電池が無くてもコストは抑えられますが、今後もし夜間も料金差が無くなる(ダイナミックプライシング等導入で)可能性もあります。その際は太陽光+蓄電池によるエネルギー自給が強みになります。

もう一つ、このペルソナでは昼間人がいないため、夏の猛暑日に無冷房だと室温が危険なレベルに上がるリスクがあります。しかし高断熱化していない家だと冷房を切って日中留守にするのはためらわれ、実際には留守でもエアコンをつけっぱなしにする人もいます。その場合昼間の需要が増え、パターン8や9に近づく可能性があります。つまり夜型とはいえ季節次第で昼間消費が無視できなくなるのです。営業時にはその点もヒアリングし、真夏日シナリオも含めてご提案すると良いでしょう。「不在時も冷房つけておくなら、太陽光が勝手に電気作ってくれますよ」と言えば響きます。

最後に、このロードカーブは蓄電池の経済効果保証をアピールする好例かもしれません。深夜電力中心のため通常シミュレーションだとメリットが見えにくいですが、非常時電源や将来の電力市場を見据えた価値を伝えることで受注につなげる工夫が要ります。幸いエネがえるでは業界初のシミュレーション結果10年保証サービスも展開しており、不安の払拭に一役買うでしょう。


以上、代表的なユースケースを想定した10種類のロードカーブテンプレートをご紹介しました。各パターンにはそれぞれ太陽光・蓄電池導入時のメリット・留意点があり、一概にどれが有利とは言えません。重要なのは、お客様ごとの生活スタイルを正確に捉え、シミュレーション条件に反映することです。

参考:生活スタイル・ロードカーブテンプレート カスタム型の入力パターン(電力消費量比率)は? 【ASP】 【EV・V2H】 | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

参考:電気使用量推計時の生活スタイル・月別比率について | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え) 

エネがえるASPでは、入力画面の「生活スタイル」で標準テンプレートを選ぶだけでなく、「カスタム」で時間帯別割合を自由に設定することも可能です。さらにAPI利用企業向けには、独自の時間帯・平日休日・月別比率テンプレートを事前登録して診断に適用する機能も用意されています。

ぜひ本記事のテンプレート例を参考に、営業現場で「このお宅はどのタイプか?」をヒアリングし、適切なロードカーブを設定してください。それにより、シミュレーション結果と施主様の実感との差異が縮まり、提案の信頼性が向上するはずです。

平均からズレたパターンを見極め、寄り添った提案を。太陽光・蓄電池の経済効果は計算ロジックだけでなく入力条件次第。世界最高水準の知見とデータを活用し、生活スタイル別の最適ソリューションを提示できる営業担当者こそ、これからの市場で選ばれる存在となるでしょう。ぜひ多彩なロードカーブテンプレートを武器に、お客様にとっての“ベストなエネルギー活用”を提案していきましょう!

参考文献・出典:生活スタイル別の電力消費データ、エネがえるFAQ・技術資料、関連ブログ記事、統計データ(資源エネルギー庁 他)など.

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著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら

国際航業 カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG。環境省、トヨタ自働車、東京ガス、パナソニック、オムロン、シャープ、伊藤忠商事、東急不動産、ソフトバンク、村田製作所など大手企業や全国中小工務店、販売施工店など国内700社以上・シェアNo.1のエネルギー診断B2B SaaS・APIサービス「エネがえる」(太陽光・蓄電池・オール電化・EV・V2Hの経済効果シミュレータ)のBizDev管掌。再エネ設備導入効果シミュレーション及び再エネ関連事業の事業戦略・マーケティング・セールス・生成AIに関するエキスパート。AI蓄電池充放電最適制御システムなどデジタル×エネルギー領域の事業開発が主要領域。東京都(日経新聞社)の太陽光普及関連イベント登壇などセミナー・イベント登壇も多数。太陽光・蓄電池・EV/V2H経済効果シミュレーションのエキスパート。Xアカウント:@satoruhiguchi。お仕事・新規事業・提携・取材・登壇のご相談はお気軽に(070-3669-8761 / satoru_higuchi@kk-grp.jp)

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