47都道府県・10電力エリアをつなぐ、住まいのエネルギー比較シリーズ
エネがえる独自比較:住宅性能・補助金の考え方を地域固有の論点として、太陽光だけからオール電化・蓄電池・EV・V2Hまで、6構成の追加効果と投資判断を同じ比較軸で読み解く。
目次
この記事で分かること
太陽光だけにするか、給湯・蓄電池・EVまで組み合わせるか。設備価格、地域の制度、電気を使う時刻を別々に見ると、家計に合う案を選びにくくなります。このシリーズは、6構成を同じ条件で比較するために、地域の資料を読み解く企画です。
岩手県では、何を確認すると選択が変わるのか。 新築住宅に太陽光と蓄電池を載せる相談と、既存住宅の高い冬季電気代を下げる相談では、比較の出発点が違う。岩手県の2026年度「いわて省エネルギー住宅建設推進事業費補助金」の最大257.3万円は、太陽光・蓄電池だけへの補助ではない。断熱等性能等級7等の住宅性能部分180万円を含む合計である。
- 販売施工店・工務店:地域の制度を見積条件に落とし、顧客に説明する比較軸をそろえられます。
- ご家庭・施設の担当者:価格だけの比較から一歩進み、相談先に確認する条件と依頼内容を整理できます。
- 自治体・メーカー:普及統計、制度の対象、個別世帯の効果を区別し、支援や提案の設計に使えます。
資料確認:2026年9月21〜22日。制度の対象・受付状況は申請時に公式窓口で確認してください。
新築住宅に太陽光と蓄電池を載せる相談と、既存住宅の高い冬季電気代を下げる相談では、比較の出発点が違う。岩手県の2026年度「いわて省エネルギー住宅建設推進事業費補助金」の最大257.3万円は、太陽光・蓄電池だけへの補助ではない。断熱等性能等級7等の住宅性能部分180万円を含む合計である。
この金額を既存住宅へ設備を追加する6案すべてから差し引けば、回収期間は短く見える。しかし、その比較では制度の対象住宅も、建築費の増分も落ちている。本稿は、新築と既存を分けたうえで、住宅性能と設備の組合せを考える。県の制度案内
県の目標と、家庭の投資判断をつなぐ
2026年3月改訂の第2次岩手県地球温暖化対策実行計画は、2030年度の温室効果ガスを2013年度比57%削減し、再エネによる電力自給率66%を目標に掲げる。この66%は、各家庭が電気を66%自給する目標や、住宅の太陽光普及率を表すものではない。県の実行計画
2023年住宅統計では、居住住宅476,700戸のうち太陽光設置ありは30,400戸、割合は6.38%。環境省カルテの2024年度FIT・FIP10kW未満設備は累積37,820件、2023年度の住民基本台帳534,717世帯に対する件数比は7.07%である。二つの指標の差は前年比ではない。住宅統計原表・環境省カルテ
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県の排出削減と住民の家計収支を結び付けるには、住宅性能、機器効率、電気の使い方を分けて測る必要がある。再エネの導入量だけを増やしても、既存住宅の暖房方式や熱損失がそのままなら、冬の購入エネルギーは残り得る。
最大額の内訳をほどくと、追加投資の比較が見える
この制度は省エネ性能の高い新築戸建住宅が対象となる。登録された建設事業者、県産木材5m³以上、性能証明、見学会等、気密測定でC値1.0以下などの条件がある。詳細は要綱による。太陽光とHEMSは必須、蓄電池は選択項目である。制度要綱
| 構成要素 | 等級6等の場合 | 等級7等の場合 | 金額の性質 |
|---|---|---|---|
| 住宅性能部分 | 100万円 | 180万円 | 対象基準を満たす住宅への定額 |
| 太陽光 | 最大35万円 | 最大35万円 | 7万円/kW、5kW上限 |
| HEMS | 最大6.6万円 | 最大6.6万円 | 対象経費の2/3 |
| 蓄電池 | 最大35.7万円 | 最大35.7万円 | 対象経費の1/3、単位容量等の制約あり |
| すべて上限に達する合計 | 177.3万円 | 257.3万円 | 個別の交付額ではない |
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蓄電池なしでも他の上限を満たす場合の合計は、等級6等で141.6万円、等級7等で221.6万円となる。そこへ蓄電池を足したときの補助増分は最大35.7万円だ。最大257.3万円を蓄電池投資の費用から引く計算にはならない。
等級6等と7等の住宅性能部分の補助差は80万円である。これだけでは等級7等が家計に有利とは断定できない。追加建築費、暖冷房負荷の変化、維持費、暮らしの価値を分けて評価する必要がある。住宅価格全額を設備の投資額と混ぜず、比較する住宅の仕様差を見積書に残す。
価格基準は「補助を打ち切る値」か「対象外になる値」か
岩手のこの制度の蓄電池には、工事費込み・税抜で15.5万円/kWh以下という対象要件がある。さらに登録製品等の要件もあり、補助は経費の3分の1、1kWh当たり5.1万円・7kWhを上限とし、千円未満を切り捨てて計算する(1戸最大35.7万円)。価格が高い場合に基準単価へ切り下げれば必ず対象になる制度ではない。要綱・別表第2、第3
青森の住宅用制度FAQは、14.1万円/kWhを超える価格についても基準単価側で計算する例を掲載している。数字が近くても規則は同じではない。複数県へ提案する事業者は、補助単価と対象要件を別々の入力項目として持つべきである。青森のFAQ
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受付予定期間は2026年5月18日〜12月4日。県が9月2日に掲載した8月末時点の申請受付は、募集予定19戸に対して9戸で、等級6等2戸、等級7等7戸だった。これは9月21日時点の予算残や新規採択を保証する数値ではない。必要書類が整った申請から先着順で、予算到達時は受付を停止する。県の受付状況
給湯補助を足し算できないことが、6案の順位に効く
県の2026年4月14日更新Q&Aは、この制度と「みらいエコ住宅2026」「給湯省エネ2026」等の併用を不可と表示している。対象が重複しない場合の個別確認はあるが、給湯機を加えたから国の給湯補助を自動加算する設計にはできない。県Q&A
FIT・FIP認定は取得できず、PPA・リース事業者側でFIT・FIPを活用することも認められない。敷地内での発電電力の消費30%以上も要綱の遵守事項に含まれる。住宅性能の条件、売電契約、自家消費条件を満たした案の中で、夜間給湯と昼間給湯、蓄電池とEV・V2Hを比較する必要がある。要綱の遵守事項
新築では、まず同じ外皮・同じ居住条件を固定してS1〜S6を比べる。その後に住宅性能を変えた別の組を作る。断熱で下がった暖房需要を、機器更新の削減効果としてもう一度計上しない。既存住宅ではこの新築補助をゼロとして扱い、実際に使える別制度を個別確認する。
岩手県南の公開事例が示す、提案の価値
エネがえるの公開取材に登場するスマート環境デザインは、岩手県南・宮城県北で太陽光や蓄電池、V2H等を提案している。取材で印象的なのは、導入後の価値を単純な作業時間短縮や成約率上昇と説明していないことだ。従来のExcel資料を併用し、電気の流れをグラフで示すことで、住民が複数案を理解しやすくなったと述べている。公開取材
本稿が採用したいのは、この比較の姿勢である。「蓄電池が欲しい」という相談でも、家計支出を抑えたいのか、停電中も生活を続けたいのか、車の買い替えが近いのかで提案は変わる。車を日中使う世帯に、常時在宅を前提としたV2H効果を提示してはいけない。定置蓄電池と車載電池を併設しても、同じ余剰電力を二重に充電する計算はできない。
既存の蓄熱暖房機や電気温水器を使う相談では、太陽光を追加する案だけでなく、既存負荷の内訳と設備更新の効果も確認したい。ただし、取材中の個別の高額請求を県平均へ広げることはしない。冬季の月別請求・使用量と、機器ごとの運転条件が次の検証資料になる。
住宅設備はASP、車両の買い替え・充放電はEV・V2Hの対象範囲を確認し、同じ世帯条件で比較する。建築側の断熱性能計算とエネルギー料金計算を接続する際は、需要データがどの仕様を表すか明記する。施策のために複数モデルを整備する自治体は、試算代行を含め、入力・制度判定・検算までの作業範囲を切り分けて依頼できる。製品・サービス一覧
設備一式の回収年数に加え、給湯器・蓄電池・V2Hを追加した分だけの回収も示すと、必要な設備を選びやすい。
6構成で「何が増え、何が減るか」をそろえる
6案を別々の営業資料で並べると、家族人数や売電条件の違いまで設備の差に見えてしまいます。最初に現状の住宅・移動費を一つの基準に固定し、次の順に差分を確かめます。下表は比較設計のための表で、地域別の正式な回収年数を示すものではありません。
| 構成 | 固定する条件 | 比較する差分 | 見積の確認質問 |
|---|---|---|---|
| S1 太陽光 | 屋根・日射・生活需要・売電契約 | 直接使う電気と売る電気の配分 | 屋根改修やパワコン更新を費用に含めたか |
| S2 S1+オール電化・深夜給湯 | 湯量・暖房・給湯機種・ガス撤去範囲 | 夜間買電とガス・灯油費の変化 | ガス契約が残るのに基本料金を全額削減していないか |
| S3 S1+オール電化・昼間給湯 | S2と同じ湯量と設備条件 | 昼の買電・売電・効率の変化 | 雨天・冬季の不足を買電で補ったか |
| S4 S3+定置型蓄電池 | 給湯後の余剰・実効容量・出力・損失 | S3から増える便益と更新費 | 満充電できない日や放電しきれない日を含めたか |
| S5 S3+EV・V2H | 同じ移動距離・駐車時間・出発時残量 | 走行費と家庭放電の両方 | 車両買替差額と住宅設備費を分けたか |
| S6 S3+蓄電池+EV・V2H | S4・S5と同じ住宅と移動条件 | 電池を二つ持つ追加価値 | 同じ余剰電力を二つの電池で重複利用していないか |
新設一式を選ぶ家庭と、太陽光をすでに持つ家庭では、答えるべき問いが違います。既設設備の購入費を再び計上せず、今から支払う費用と、今から変わる収支を比べます。S6の評価も「太陽光なしの家より安いか」だけでなく、「S5に定置型電池を足す費用に見合うか」まで確認します。
見積依頼前にそろえる12項目
すべてが分からなくても相談は始められます。不明な値はゼロで埋めず、推定した項目と実際に確認できた項目を分けて渡してください。チェックはこの画面での整理用です。入力・選択内容は送信・保存されません。
回収年数だけでは見落とす5つの判断
1.総額と追加額
初期費用の総額と、次の設備を足す差額を分けます。太陽光の利益が大きくても、追加の蓄電池が同じ速度で回収するとは限りません。
2.年平均と更新年
平均の年間削減額に加え、機器交換・車の買替・売電単価の切替がある年を見ます。一度黒字になっても、その後の更新費で累積収支が再び赤字になる場合があります。
3.収支と手元資金
補助の入金前に工事代を支払う場合や借入を使う場合、長期便益と当面の支払いは一致しません。初期支出と毎月の返済を別に確認します。
4.家計と停電対策
停電時は残量、使える出力、接続回路、EVの在宅状況が重要です。平常時の節約額と非常時の価値を分け、停電回避額を根拠なく収入に加えません。
5.標準と慎重条件
料金が想定ほど上がらない、発電が少ない、補助を受けられない条件でも比較します。採用案が逆転したら、逆転を起こした前提が商談で優先して確認すべき情報です。
設備の数を増やすことより、判断を変える不明点を一つ減らすことが、追加調査の価値になる場合があります。昼にEVが家にないなら、まず在宅時間を確定する。ガスの基本料金が残るなら、まず解約可能な設備範囲を確定する。この順序で見積の精度を上げます。
販売施工店・工務店が商談で使う5ステップ
- 現状を一枚にそろえる。 電気・燃料・移動費、設備の年齢、暮らし方を聞き、比較前提を顧客と共有します。
- 有力な案を選ぶ。 6構成すべてを機械的に勧めず、屋根、駐車、更新時期、予算から成立する案を残します。
- 同じ条件で再計算する。 住宅設備はASP、車と住宅電力を含む検討はEV・V2Hなど、対象に合う製品を使います。製品間で比較するときも、需要・料金・期間の一致を確認します。
- 不利な条件も一緒に見せる。 補助なし・低い料金上昇・設備更新を含む場合を示し、顧客が何に納得して選んだかを残します。
- 見積変更時に同じ前提へ戻る。 機種・価格・契約が変わったら、前の提案から変えた項目を示して再説明します。
記事を読むだけで止まると、毎回の料金確認、入力のそろえ直し、資料の作り直しが担当者に残ります。エネがえるの導入を検討する意味は、この比較を自社の案件で繰り返し使える業務にすることです。デモでは一般的な画面説明に加え、自社の見積1件を使い、入力から顧客説明までの流れを確かめてください。
ご家庭・施設の条件で調べたい方へ
住宅の平均値をそのままご家庭の節約額に置き換えることはできません。相談先の販売施工店・工務店に「エネがえるを使い、同じ条件で複数案を比較できますか」と尋ねてください。次の依頼文をコピーし、分かる項目を添えて渡すと、比較したい内容を伝えやすくなります。
この入力欄から問い合わせは送信されません。個人情報は、依頼先の正式な相談窓口へ直接お伝えください。施工店のエネがえる利用は施工品質や補助金交付を保証するものではありません。
施設・店舗・工場は、住宅の6構成表をそのまま転用せず、操業時間、契約電力、負荷データ、導入方式をそろえた産業用試算を依頼します。施設向けのエネがえるBizを確認する。
自治体・メーカーが横断比較で確認する3点
- 分母をそろえる。 居住住宅全体、持ち家、一戸建て、新築で普及割合の意味が変わります。都道府県の統計を個別自治体の導入可能件数にそのまま置き換えません。
- 交付件数と住民便益を分ける。 同じ予算でも、新設支援、既設設備の更新支援、相談支援では対象世帯と成果が異なります。補助後の自己負担、電気の使い方、継続条件まで見ます。
- 代表世帯と地域全体を分ける。 一つのモデル世帯で得た結果を県平均と呼ばず、世帯類型・料金・住居・移動の重み付けを示します。基準の6構成に感度条件を加え、何が結論を変えたかを説明します。
岩手県で、相談前に読んでおきたい論点
- 県の目標と、家庭の投資判断をつなぐ。見積のどの費用・条件に反映したかを、相談先と確認してください。
- 最大額の内訳をほどくと、追加投資の比較が見える。見積のどの費用・条件に反映したかを、相談先と確認してください。
- 価格基準は「補助を打ち切る値」か「対象外になる値」か。見積のどの費用・条件に反映したかを、相談先と確認してください。
制度の掲載があることと、その家庭が申請できることは別です。記事内の一次資料で対象・時期を確認し、比較表には確認日と適用条件を残します。

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