工場移転では、土地・建物の価格だけでなく、受電設備、操業後の電気代、屋根の利用条件、将来増設までそろえて比較します。太陽光の容量を決める前に、新工場の需要を整理します。
移転先の電気代を、使用量と契約電力に分けて予算化
価格・根拠の確認日:2026年10月3日。公表実績・販売店の提示価格・試算用の仮定を分けて掲載しています。販売店価格は購入成立額や全国平均ではなく、取得時点の表示です。
同じ生産量でも、稼働時間・同時運転・空調負荷が変わると請求額は変わります。土地や建物の比較表に、電気代と受変電設備の条件を並べます。
| 確認項目 | 価格・数値の目安 | 対象・条件・出典 |
|---|---|---|
| 高圧電力・関東の公示例 | 基本2,530円/kW・月、電力量17.43円/kWh(税込) | 東京電力EPの2026年4月実施プラン。燃料費・市場価格調整、賦課金は別。力率による基本料金調整も別。全事業者の相場ではありません。東京電力EP|2026年4月実施 高圧料金表 |
| 契約時期 | 2026年11月の見直しも確認 | 移転・稼働開始日に適用される契約を確認。10月時点の単価を長期固定とは扱いません。東京電力EP|2026年の料金・供給条件見直し |
| 屋根設置PVの公表実績 | 平均20.8万円/kW、中央値18.5万円/kW | 2025年設置・10kW以上。委員会意見本文p.21。規模を混ぜた集計で100kW案件の確定見積ではありません。原資料と見積の税区分・工事範囲を照合。衆議院公開|調達価格に関する報告書・委員会意見 |
悲観・通常・楽観で、どこまで変わるか
税込の年間運転費。買電単価20・25・30円は調整額と賦課金を含めた予算仮定で、公示17.43円とは費用範囲が異なります。基本料金は上記2,530円、力率85%で割増・割引なし、12か月同じ契約電力と仮定。契約超過・初期工事・税務効果は含めません。
以下は条件を置き換えた独自の感度分析です。「通常」は比較の基準ケースで、最頻値・平均的な顧客・将来予測を意味しません。3ケースに発生確率は付けておらず、信頼区間やP90/P50/P10でもありません。
| ケース | 年間使用量 | 契約電力 | 実効電力量単価 | 年間基本料金 | 年間電気代 |
|---|---|---|---|---|---|
| 悲観 | 1,200,000kWh | 250kW | 30円/kWh | 759.0万円 | 4,359.0万円 |
| 通常(基準) | 1,000,000kWh | 200kW | 25円/kWh | 607.2万円 | 3,107.2万円 |
| 楽観 | 800,000kWh | 160kW | 20円/kWh | 485.8万円 | 2,085.8万円 |
計算方法:年間費用=年間kWh×実効単価+契約kW×基本料金単価×12。
判断が変わる境界:上記条件なら契約電力10kW差は年30.36万円、50kW差は年151.8万円です。省エネによるkWh削減と、契約電力を実際に下げられるかは別に検討します。
自分の案件に近づける確認資料
候補地ごとに契約見積、受電容量、直近12か月の30分値、設備増設計画、引込・受変電更新費を取得。工事費は容量・敷地・工期で変わるため一律の全国相場を当てません。
価格・根拠の出典と時点
- 東京電力EP|2026年4月実施 高圧料金表 — p.4 高圧、関東。税込。調整単価は別
- 東京電力EP|2026年の料金・供給条件見直し — 4月改定および11月改定案内。適用日を確認
- 衆議院公開|調達価格に関する報告書・委員会意見 — 上記意見書の本文を収録。取得原本で数値確認
計算の考え方を確認する補足例
ここからの図・数値は、計算方法を説明するための別の仮定例です。上の出典付き価格・3ケース比較とは条件が異なり、現在の市場価格や同一案件の結果を示すものではありません。

移転はエネルギー条件を設計し直す機会
移転後は面積だけでなく、設備効率、生産量、稼働時間、空調範囲、物流動線が変わります。旧工場の電気代を床面積比で拡大するだけでは、設備計画を誤る場合があります。
実例として、ヤクルトの2022年公表の工場移転計画には、生産能力の増強とともに太陽光パネル・再エネ電力の採用が記載されています。本記事はこの計画の竣工後実績や経済効果を示すものではありません。ヤクルト|千葉ヤクルト工場移転計画・2022年11月11日公表
候補地ごとにそろえる7項目
| 項目 | 確認資料 | 担当の例 |
|---|---|---|
| 必要電力・受電 | 設備リスト、同時稼働条件、供給相談 | 電気設計者・電力会社 |
| 稼働後の使用量 | 生産計画、シフト、休日、設備効率 | 工場責任者 |
| 屋根 | 構造、荷重、防水、更新予定、日影 | 建築設計者 |
| 契約 | 料金、契約電力、期間、解約条件 | 調達担当 |
| 太陽光 | 容量、PCS、出力制限、工事費 | EPC |
| 将来変更 | 増設、EV充電、操業日の変更 | 経営・設備担当 |
| 継続費用 | 点検、修繕、撤去、停止損失 | 設備・経理担当 |
設置できる面積から最大容量を先に決めると、稼働初期の需要を大きく上回る場合があります。立ち上がり時、定常稼働時、増設後を分けます。
2候補の簡易比較例
Aは初期費用がBより500万円低く、年間の電力関連費用がBより80万円高いと仮定します。他条件が同じなら10年間でBは800万円の運営費差を生み、初期差を引いた300万円だけ少額です。割引、税、修繕、残価、停止損失は含めていません。
ただし、受電開始の遅れや操業停止があるなら、その影響を別に見ます。電気代の小さな差より、生産機会の損失が判断を左右する案件もあるためです。
太陽光・PPAは同じ需要で比較
自己所有は設備費と運営費、PPAは支払条件と契約拘束、いずれも同じ需要・発電条件で比較します。初期費用だけで順位を付けず、使用量低下、屋根修繕、施設譲渡、中途解約のケースを確認します。環境省|太陽光発電の導入支援サイト
系統や受電設備の容量は、年間電力量から直接決まりません。瞬時・最大需要の検討を電気設計者と行い、経済試算の結果で技術的な接続可否を断定しないようにします。
まず作る1枚
候補地名、利用開始日、稼働条件、初期費用、年別運営費、未確定事項、確認担当・期限を横並びにします。エネがえるへ渡す条件は需要推計と設備見積もりが中心です。構造・消防・接続の確認を別途記録することで、経済性と設置可否を混同せず検討できます。
よくある質問
旧工場の電気代だけで試算できますか。
初期検討の材料にはなりますが、生産量・効率・操業時間等の差を反映した推計が必要です。
太陽光で受電容量を必ず下げられますか。
夜間や天候、ピーク時刻でも必要電力を満たす設計が必要です。発電容量を単純に差し引けません。
候補地選定前に相談する意味はありますか。
受電・屋根・操業条件を比較表へ入れられます。契約後に変えにくい制約を早めに見つけるためです。
出典・確認資料
新工場の需要条件から試算を始める
設備台帳、操業カレンダー、候補施設の条件をそろえ、推計需要の幅を残して設備案を比較します。



