公共施設の太陽光・蓄電池は元が取れる?どの施設から載せるべきか6施設類型36ケースを実試算【2026年10月単価】

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

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公共施設の太陽光・蓄電池、どの施設から元が取れるか:エネがえるBiz実試算36ケース
公共施設の太陽光・蓄電池、どの施設から元が取れるか:エネがえるBiz実試算36ケース

結論から言います。公共施設の屋根に載せる太陽光の回収年数は、日射よりも「その施設がいつ電気を使うか」で決まります。エネがえるBizで、6種類の公共施設 × 太陽光の容量3段階 × 蓄電池の有無、合わせて36ケースを同じ前提で実際に試算しました。さらに、その結果を全国8エリアの電気料金に当てはめた144ケースの地域推計を加えています。答えは次の3つに整理できます。

3つの答え

  1. 24時間または毎日電気を使う施設(上下水道・病院・体育館など)から載せると、回収は約8.6〜9.0年。発電した電気をほぼすべて施設内で使い切れるためです(関東・設置単価22万円/kW・電気代上昇3%/年の場合)。
  2. 平日だけ使う施設(庁舎・支所・学校)は、屋根いっぱいに載せるほど回収が遅くなる。容量を最大デマンドの0.5倍から1.5倍に増やすと、自家消費率は84〜94%から69〜71%に落ち、回収年数は9.1〜10.2年から12.1〜12.5年に延びました。20年で手元に残る金額は増えますが、増え方は小さくなります。
  3. 蓄電池は、電気代の削減だけでは元が取れない。15年で回収できる蓄電池の価格は、最も有利な施設でも約2.8万円/kWhで、実勢価格(工事費を除き約20万円/kWh)とは大きな差があります。導入するなら、避難所の非常用電源としての価値で判断する設備です。

数値の要点(関東・高圧・2026年10月31日試算)

  • 太陽光1kWあたりの年間削減額:18.6千円〜27.0千円(施設の種類と容量で約1.5倍の差)
  • 回収年数:8.6年〜12.5年(蓄電池なし、設置22万円/kW)
  • 20年で元が取れる設置単価の上限:24時間型 約46〜49万円/kW、平日型 約32〜46万円/kW
  • 補助1/2を使った場合の回収年数:4.5年〜6.1年(太陽光=最大デマンド×1.0)
  • 地域推計:電気料金の高い北海道・東北・中部では、本庁舎型の回収が8.2〜8.8年(関東のBiz実試算は11.3年)
  • 小中学校(太陽光83kW)で使い切れずに余る発電:年間の31%(大型連休・夏休み・週末に集中)
  • オンサイトPPA:24時間型は事業者が税込約19.5円/kWhで成り立ち、施設は1kWhあたり約3円得。平日型(×1.0)は税込で買電単価を上回る
  • 導入方式:基準の前提(割引率2%)では、20年NPVは自己所有>リース>PPA。自治体の割引率がリース料率を上回ると、リースが逆転
  • モデル自治体31施設:経済性の高い順に進めると、累計3億円の時点で、学校・庁舎から屋根いっぱいに載せる順より年約990万円多く削減

試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)。関東の電気料金は、エネがえるBizに登録されていた2026年10月時点の単価です。10月分の料金に国の支援値引き(高圧1.80円/kWh)が含まれている場合、11月以降の単価では回収年数が約0.7〜1.0年短くなります。本記事の主な結果は、長めに出る10月単価のまま示しています。設置単価22万円/kWは資源エネルギー庁資料の中央値で、税抜と考えられます(電気代は税込)。税込(24.2万円/kW)で計算すると、回収年数は約0.8〜1.0年延びます(×1.0で9.3〜12.2年)。エネがえるBizは、産業用・公共施設向けの太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーターです。本記事の数値は、標準的な需要パターンを使った推計で、個別の施設の結果を保証するものではありません。前提条件はすべて記事の後半で公開しています。

なぜ今、施設ごとに計算し直す必要があるのか

政府実行計画(令和7年2月18日閣議決定)は、2030年度に「設置可能な建築物(敷地を含む)の約50%以上」に太陽光発電設備を設置することを目指しています。環境省は、地方公共団体の施設についても施設種別の導入目標と進捗を集計しています。

その集計(令和7年10月1日時点)では、令和4年度以降に追加で導入された容量は300,203kWで、目標4,824,000kWに対して容量ベースでは6.2%にとどまります。容量ベースの施設種別では、行政施設21.6%、水道施設19.5%、下水道施設14.9%に対し、公営住宅は2.7%でした。参考値として示されている件数ベース(令和3年度以前の実績を含む)は39.1%です。両者は対象期間と分母が異なるため単純には比べられませんが、容量の目標に対しては大きく遅れていることは確かです。

2030年度まで残り4年余りで目標に近づくには、容量の大きな施設の判断が欠かせません。それらの施設は、屋根の大きさ、電気の使い方、耐震や防水の状態、自己所有かPPAかといった条件がばらばらで、「平均で何年で回収」という一般論では次の着手先を決められません。

施設を持つ事業者にも期限があります。省エネ法の特定事業者(年度のエネルギー使用量が原油換算1,500kL以上。地方公共団体や学校、病院も含まれる場合があります)は、2026年度以降に提出する中長期計画書に屋根設置太陽光の定性的な目標を書き、2027年度以降の定期報告書では、設置できる屋根の面積と設置済みの面積を報告します。報告すれば、「設置できるのに、なぜ載せないのか」を経済性で説明する必要が出てきます。

電気料金も動いています。各社の高圧の標準メニューは2026年11月1日に託送料金の見直しを反映し、基本料金を中心に改定されました。10月分まで続いた国の電気・ガス料金支援(高圧1.80円/kWhの値引き)は、11月分には適用されていません。

出典:環境省「地方公共団体における施設種別の太陽光発電の導入目標及び進捗状況について」(令和8年3月30日一部改定)/資源エネルギー庁「屋根設置太陽光発電の新たな報告制度とは」(2026年5月26日)/東京電力エナジーパートナー 高圧料金の見直し

検証の方法:6施設類型 × 容量3段階 × 蓄電池の有無 = 36ケース

比較を公平にするため、地点・料金プラン・設備単価は全ケースで揃え、変えるのは施設の電気の使い方と設備の大きさだけにしました。試算はすべて、エネがえるBizの画面で施設・需要・カレンダー・太陽光・蓄電池を設定して実行し、結果を保存しています。

施設類型需要の作り方(エネがえるBiz)休日・長期休業の扱い年間使用量導入前の最大デマンド導入前の電気代(年)
上下水道施設上水・下水処理施設(高圧・大規模−)の月別使用量/24時間一定の需要曲線なし(毎日同じ)1,010,855kWh121.2kW約2,711万円
公立病院病院(急性期/総合・高圧・大規模−)/病院の平日・土日曲線土日祝・年末年始は土日曲線851,323kWh149.1kW約2,438万円
本庁舎官公庁庁舎(高圧・大規模)/官公庁(大)の平日・土日曲線土日祝・12/29〜1/3は土日曲線577,559kWh174.8kW約1,896万円
支所・出張所官公庁庁舎(高圧・中規模)/官公庁(中)の平日・土日曲線土日祝・12/29〜1/3は土日曲線85,741kWh30.5kW約297万円
体育館・コミュニティセンター公共体育館・コミュニティセンター(高圧・中規模+)/スポーツ施設の曲線なし(毎日同じ)131,795kWh23.7kW約380万円
小中学校小学校・中学校(高圧・大規模−)/学校の平日・休日曲線(休日は平日の0.4倍)土日祝・夏休み(7/21〜8/31)・冬休み・春休みは休日曲線159,450kWh55.5kW約548万円
  • 地点と料金:埼玉県(日射量観測地点:さいたま)、東京電力エナジーパートナー「ベーシックプラン(高圧・500kW未満)」。単価はエネがえるBizに2026年10月31日時点で登録されていたものです。
  • 太陽光の容量:屋根面積は施設ごとに違うため、導入前の最大デマンドの0.5倍・1.0倍・1.5倍の3段階にしました。真南向き・傾斜10度・基本設計係数0.85、パワーコンディショナは太陽光と同じ容量(変換効率98%)です。
  • 蓄電池:「なし」と「太陽光1kWあたり2kWh(実効容量)」の2通り。充放電の出力は太陽光と同じkW、太陽光の余剰で充電し、17時〜翌8時に放電、系統からの充電はしない設定です。ピーク抑制の目標値は自動探索にしました。
  • 経済性:Bizの結果(年間電気代の削減額)に、設備費・維持費・劣化・電気代上昇率を当てはめて、回収年数と20年の正味現在価値(NPV、割引率2%)を計算しました。前提値の根拠は前提条件にまとめています。

太陽光は何で稼ぐのか:1kWhあたり約23円の電気を買わずに済む

公共施設の太陽光は、FITで売電するのではなく、施設内で使って電気を買う量を減らすのが基本です。今回の関東のケースでは、施設内で使った太陽光1kWhが、電気代を約22.8円減らしました(電力量料金+燃料費調整+再エネ賦課金に相当。2026年10月単価)。使い切れずに余った電気は、売電も他施設への融通もしない前提で0円と評価しています。

一方、蓄電池なしの試算では基本料金の削減を見込んでいません。エネがえるBizの太陽光の試算で「導入前の最大デマンド値を使用して計算」を選んだためで、削減額を施設内で使った太陽光の量で割ると、全ケースで1kWhあたり22.80〜22.88円とほぼ一定です。実際には太陽光で最大デマンドが少し下がるケースがあり(公立病院×1.0で149.1kW→142.6kW)、その分の基本料金は上振れ要因です。ただし、高圧の基本料金は過去1年の最大の30分値で決まり、曇りの日や夕方に最大が出れば下がらないため、確実な削減としては数えない方が保守的です。

太陽光1kWあたりの年間削減額。上下水道・病院・体育館は約26〜27千円、平日型の庁舎・支所・学校は×0.5の22.8〜25.4千円から×1.5では18.6〜19.3千円に下がる
図1 太陽光1kWあたりの年間削減額(初年度、蓄電池なし)

だから、太陽光1kWの稼ぎは「発電した電気をどれだけ施設内で使えたか」でほぼ決まります。24時間または毎日電気を使う施設では、最大デマンドの1.0倍まで載せても発電をすべて使い切り、1kWあたり年27.0千円を減らしました。平日だけ使う施設では、容量を増やすほど土日や長期休業の発電が余り、1kWあたりの稼ぎが下がります。

結果①:回収は8.6〜12.5年。施設の種類と容量で約4年の差

施設類型ごとの投資回収年数。上下水道・病院・体育館は8.6〜9.0年、支所は9.3〜12.1年、本庁舎は10.2〜12.4年、小中学校は9.1〜12.5年
図2 施設類型と太陽光の容量ごとの投資回収年数(蓄電池なし、設置22万円/kW)
施設類型太陽光(×0.5/×1.0/×1.5)自家消費率年間削減額電気代の削減率回収年数20年NPV
上下水道施設61/121/182kW100/100/98%165/326/483万円6.1/12.0/17.8%8.6/8.6/8.7年1,636/3,245/4,707万円
公立病院75/149/224kW100/100/96%202/402/578万円8.3/16.5/23.7%8.6/8.6/9.0年2,012/3,996/5,473万円
本庁舎87/175/262kW84/77/69%198/362/492万円10.5/19.1/26.0%10.2/11.3/12.4年1,584/2,436/2,625万円
支所・出張所15/31/46kW93/81/71%37/68/89万円12.6/22.8/29.9%9.3/10.6/12.1年341/504/512万円
体育館・コミュニティセンター12/24/36kW100/100/97%32/65/95万円8.5/17.0/24.8%8.6/8.6/8.8年322/644/912万円
小中学校28/56/83kW94/79/69%71/120/155万円13.0/22.0/28.2%9.1/10.8/12.5年658/869/804万円

全36ケースのうち蓄電池なしの18ケースは、すべて20年以内に回収できました(設置22万円/kW、電気代上昇3%/年)。ただし、回収年数は施設の種類と容量で8.6年から12.5年まで、約4年の差があります。

見落とされやすいのは、回収年数とNPV(20年で手元に残る金額)は別の指標だという点です。小中学校では、容量を1.5倍にすると回収年数は12.5年に延びますが、20年NPVは804万円で、0.5倍の658万円より大きくなります。「早く回収したい」のか「20年で多く残したい」のかで、最適な容量は変わります。予算の制約が強い自治体ほど、回収年数とNPVの両方を並べて判断する必要があります。

結果②:平日だけ使う施設は、容量を増やすと「使い切れない」

太陽光の容量と自家消費率の関係。上下水道・体育館・病院は1.5倍でも96〜98%、支所・本庁舎・小中学校は1.5倍で69〜71%に低下
図3 太陽光の容量と自家消費率(蓄電池なし)

24時間または毎日使う施設は、最大デマンドの1.5倍まで載せても自家消費率が約96%以上でした。一方、庁舎・支所・学校は、0.5倍では84〜94%でも、1.5倍にすると69〜71%まで下がります。土日祝や長期休業の日にも太陽光は発電しますが、施設の電気はほとんど使われないからです。

小中学校・太陽光83kWの月別内訳。余剰は5月4,235kWh、8月4,054kWhが多く、年間では発電の31%が余る
図4 小中学校(太陽光83kW)の月別の発電と使用量(エネがえるBiz)

小中学校(太陽光83kW)では、年間の発電98,224kWhのうち30,583kWh、31%が使い切れずに余りました。余りが最も多いのは5月(4,235kWh、大型連休)と8月(4,054kWh、夏休み)で、電気を使わない時期と発電の多い時期が重なっています。

ここから言えるのは、「設置できる屋根の面積いっぱいに載せる」ことと「経済的に最適な容量」は一致しないということです。回収年数を重視するなら、平日型の施設はまず最大デマンドの0.5倍前後で自家消費率を高く保ち(20年の手元資金を重視するなら1.0倍前後。小中学校では1.0倍で20年NPVが最大)、屋根が余る場合は、余った電気を他の施設に回す仕組み(自己託送やオフサイトPPA)と組み合わせて検討するのが筋です。工場・倉庫を含めた屋根の候補選定は工場・倉庫・公共施設の屋根耐荷重と構造調査の進め方で整理しています。

結果③:20年で元が取れる設置単価の上限は、24時間型で約46〜49万円/kW

20年NPVがゼロになる太陽光の設置単価。上下水道・病院・体育館は46〜49万円/kW、本庁舎は32〜40万円/kW、支所は33〜45万円/kW、小中学校は32〜46万円/kW
図5 20年で元が取れる上限の設置単価(20年NPV=0、割引率2%)

見積の設置単価がこの値を下回れば、20年の収支はプラスになります。最も厳しい本庁舎・小中学校の1.5倍でも、上限は約32万円/kWです。資源エネルギー庁の資料にある屋根設置10kW以上の設置単価(2024年設置の中央値22.12万円/kW)と比べると、どの施設でも約9.6万円/kW以上の余裕があります。ただし、この余裕には屋根の補強や防水改修の費用は含まれていません。築年数の古い施設では、構造調査と改修費を先に見積もる必要があります(公共施設の太陽光PPAで公募前に確認する屋根耐荷重・図面・改修費、屋根補強・構造調査費用の見積内訳)。

設置単価と施設類型ごとの回収年数のヒートマップ。15万円/kWなら6.1〜8.1年、30万円/kWなら11.2〜14.6年
図6 設置単価ごとの回収年数(太陽光=最大デマンド×1.0、蓄電池なし)

設置単価が15万円/kWなら、すべての施設が6.1〜8.1年で回収します。30万円/kWでも11.2〜14.6年です。見積の単価を2〜3万円/kW下げる交渉は、回収年数を約1年縮める効果があります。複数の施設をまとめて発注して単価を下げる手法は、この効果を狙ったものです。

エネがえるBizで実際に試算した36ケース

本記事の数値は、すべてエネがえるBizの画面で施設・需要・カレンダー・太陽光・蓄電池を設定し、1年分(365日×1時間)を計算した結果です。1ケースごとにシミュレーションとして保存しており、同じ条件で再計算できます。

手順(Bizの画面)今回の設定自治体・企業が自分の施設で試算するとき
施設埼玉県・東京電力EP ベーシックプラン(高圧)実際の電力会社・料金プランを選ぶ
ロードカーブ業種別テンプレート(50業種×20規模)の平日・休日曲線デマンドデータ(30分値)があれば取り込む
カレンダー土日祝・長期休業を休日曲線に割り当て開館日・休館日、学校行事を反映する
月別使用量「業種・規模・地域から12か月の一般的な使用量をセット」12か月分の請求書のkWhを入れる
太陽光最大デマンドの0.5/1.0/1.5倍、真南・傾斜10度屋根の面ごとに方位・傾斜・容量を入れる(最大6面)
蓄電池太陽光1kWあたり2kWh、余剰充電・夕方〜朝放電非常用の容量、放電時間、系統充電の有無を入れる

実際の施設では、デマンドデータ(30分値)と12か月分の請求書があれば、需要の推計を実測に差し替えられます。本記事の早見表で「検討する価値がある」と分かった施設から、実データで試算し直すのが近道です。

補助金を使うと:補助1/2なら回収は4.5〜6.1年

施設類型(×1.0)補助なし補助1/3補助1/2
上下水道施設・公立病院・体育館8.6年5.9年4.5年
本庁舎11.3年7.9年6.1年
支所・出張所10.6年7.5年5.7年
小中学校10.8年7.6年5.8年

補助率は、地域脱炭素推進交付金など国の制度、都道府県の上乗せ、事業ごとの要件で変わります。本記事では、補助率を「設備費に対する割合」として一律に当てはめています。実際に使える補助と補助率は、各制度の最新の要綱で確認してください。

補助があると、平日型の施設でも回収が6年前後になり、24時間型との差は小さくなります。補助で短縮される年数は、回収年数が長い平日型の施設ほど大きくなります。24時間型は補助なしでも8〜9年で回収できるため、補助の枠や要件に限りがある場合は、平日型の施設に充てると施設間の回収年数をそろえやすくなります。容量1.5倍まで含めた蓄電池なしの18ケースでは、補助1/2で4.5〜6.9年でした。

PPAで導入するとどうなるか:得をする施設と、しない施設がはっきり分かれる

初期費用を自治体が負担しないオンサイトPPA(電力購入契約)では、事業者が設備を所有し、施設は発電した電気を1kWhいくらで買います。事業者が成り立つ単価と、施設が今買っている電気の単価の差が、施設の得になります。

PPA事業者が20年でIRR4%を得るのに必要な単価(税込)。上下水道・病院・体育館は19.5〜20.4円/kWh、本庁舎は25.5〜28.2円、支所は24.2〜27.4円、小中学校は24.6〜28.4円。施設の買電単価は約22.8円
図13 PPA事業者が20年でIRR4%を得るのに必要な単価(税込、自家消費分のみに課金、余剰の売電収入なし)
施設類型(×1.0)事業者に必要な単価(税込)施設の買電単価(税込)施設の年間の得(初年度)
上下水道施設19.5円/kWh22.8円/kWh約47万円
公立病院19.5円/kWh22.8円/kWh約57万円
体育館・コミュニティセンター19.5円/kWh22.8円/kWh約9万円
支所・出張所24.2円/kWh22.9円/kWh約−4万円(割高)
小中学校24.6円/kWh22.8円/kWh約−9万円(割高)
本庁舎25.5円/kWh22.9円/kWh約−43万円(割高)

24時間型の施設では、事業者は税込約19.5円/kWhで20年のIRR4%を確保でき、施設は今より1kWhあたり約3円安く電気を買えます。一方、平日型の施設は、使い切れない発電の分だけ事業者の売上が減るため、容量1.0倍でも必要な単価(税込24.2〜25.5円)が買電単価を上回り、施設にとっては割高になりました。容量1.5倍では27.4〜28.4円です。なお、この単価にはPPA事業者が負担する固定資産税・保険を含んでいないため、実際の提示単価はさらに高くなる可能性があります。

ここから、PPAの公募設計について2つのことが言えます。1つ目は、平日型の施設をPPAで進めるなら、容量を抑えるか、余剰を事業者が売電・融通できる契約にする必要があることです。余剰の扱いを決めないまま「屋根いっぱい」で公募すると、応募が集まらないか、単価が高くなります。2つ目は、24時間型と平日型を1つの公募にまとめると、事業者は採算の良い施設で全体を支えられ、単価をそろえやすくなることです。ただしこれは、24時間型の施設が得られたはずの得を平日型の施設に回す形になるため、自治体全体として何を優先するかを決めたうえで設計する必要があります。

固定単価のPPAでは、電気代が上がるほど施設の得は増えます(今回の初年度の得は電気代上昇を含まない)。事業者のIRR4%は仮定で、資金調達コストや保守条件で変わります。

自己所有・リース・PPAを同じ物差しで比べる(20年NPV・感度分析)

導入方式の比較でよくある誤りは、自己所有は「回収年数」、PPAは「初年度の単価差」と、別々の物差しで比べてしまうことです。ここでは3つの方式を施設側の20年の正味現在価値(NPV、税込・割引率2%)という同じ物差しにそろえました。

方式施設の初期負担施設が払うもの電気代が上がったときの得本記事の前提
自己所有設備費(税込24.2万円/kW)維持費(税込4,400円/kW・年)すべて施設のもの補助なし
リースなし定額のリース料(設備費を料率3%・20年で割賦+維持費)すべて施設のもの料率3%は仮定
オンサイトPPAなし自家消費した電気×PPA単価(20年固定)施設のもの(PPA単価は固定)事業者IRR4%で成り立つ単価
施設側の20年NPVの比較。上下水道は自己所有2,900万円・リース2,610万円・PPA2,319万円、本庁舎は1,937万円・1,517万円・1,097万円、小中学校は709万円・575万円・441万円
図16 導入方式別の施設側20年NPV(太陽光=最大デマンド×1.0、税込、割引率2%)
施設類型(×1.0)自己所有リースオンサイトPPAリース料(年)PPA単価(税込)
上下水道施設2,900万円2,610万円2,319万円約250万円19.5円/kWh
公立病院3,570万円3,213万円2,855万円約308万円19.5円/kWh
本庁舎1,937万円1,517万円1,097万円約362万円25.5円/kWh
支所・出張所416万円342万円267万円約64万円24.2円/kWh
体育館・コミュニティセンター575万円518万円460万円約50万円19.5円/kWh
小中学校709万円575万円441万円約116万円24.6円/kWh

この節は税込(設備費24.2万円/kW)で計算しているため、自己所有のNPVは前半の表(税抜22万円/kW、本庁舎2,436万円)より小さくなります。基準の前提では、すべての施設で自己所有のNPVが最も大きく、次いでリース、PPAの順でした。PPAでも20年で見ればどの施設もプラスです。初年度は平日型のPPA単価が買電単価を上回りますが、PPA単価は20年固定で、買電単価は年3%上がると仮定しているため、途中から施設の得に転じます。

累積キャッシュフローの推移。上下水道施設では自己所有が約10年で回収し、15年目にリース・PPAを逆転、20年で4,334万円。小中学校では自己所有が約12年で回収し、20年で1,219万円
図17 導入方式別の累積キャッシュフロー(割引なし)

ただし、時間軸で見ると印象は変わります。自己所有は初年度に設備費を払うため、累積がプラスになるのは上下水道施設で約10年、小中学校で約12年後です。リースやPPAの累積を上回るのは14〜15年目で、それまでは自己所有の方が手元資金が少ない状態が続きます。単年度予算で動く自治体にとって、この資金繰りの差は無視できません。リースと24時間型のPPAは初年度からプラスで、予算の平準化に向きます。平日型のPPAは、初年度の単価が買電単価を上回るため、電気代が上がるまでの数年間(小中学校で約5年)は累積がマイナスになります。

結論を入れ替える条件:自治体の資金コストと、相手の資金コスト

自治体の割引率とリース料率による最も得な方式。割引率がリース料率より低ければ自己所有、高ければリースが有利。PPAが最も有利になるのは、リース料率がPPA事業者のIRR(4%)以上で、かつ割引率がそれを超える場合
図18 割引率とリース料率で決まる「最も得な方式」(本庁舎×1.0、PPA事業者IRR4%)

感度分析の結果、方式の優劣を決めているのは電気代の上昇率でも設置単価でもなく、「自治体の資金コスト(割引率)」と「リース会社・PPA事業者の資金コスト(料率・IRR)」の大小でした。理屈は単純です。3つの方式は、同じ設備の同じ発電を、誰のお金で買うかが違うだけだからです。

  • 自治体の割引率 < リース料率:自己所有が有利(基準の割引率2%・料率3%では、本庁舎で約420万円の差)。
  • 自治体の割引率 = リース料率:自己所有とリースはほぼ同じ(例:割引率3%・料率3%で本庁舎はともに1,327万円)。
  • 自治体の割引率 > リース料率:リースが有利。PPAがリースに並ぶか上回るのは、リース料率がPPA事業者のIRR(4%)以上の場合です。また、自治体の割引率がPPA事業者のIRRを超えると、PPAが自己所有を上回ります。
本庁舎で自己所有とリースのNPV差を動かす要因。リース料率2〜5%で0〜1,322万円、割引率1〜4%で−366〜902万円、補助1/2で210万円、設置単価18〜30万円/kWで312〜520万円
図19 自己所有とリースのNPV差に対する感度(本庁舎×1.0)

電気代の上昇率と維持費は、自己所有とリースの両方に同じだけ効くため、差には影響しません。一方、補助は自己所有とリースの差を縮めます(補助1/2で420万円→210万円)。設置単価が高いほど、割賦の利息の分だけ自己所有が有利になります。

自治体が実務で使う割引率は、地方債の金利、基金の運用利回り、総務省の公共事業評価で使われる社会的割引率など、目的によって異なります。方式を選ぶ前に「自分たちの資金コストを何%と置くか」を決めることが、比較の出発点です。そのうえで、初年度の負担、予算の平準化、維持管理の手間、契約期間の終わりの扱い(撤去・譲渡)を加味して判断してください。

リース料率3%、PPA事業者IRR4%は仮定です。PPA事業者が負担する固定資産税・保険、リースの残価・中途解約条件は含めていません。実際の提示条件で同じ比較をし直すことをおすすめします。

何が変わると結論がひっくり返るか

本庁舎・太陽光175kWの感度分析。設置単価15万〜30万円/kWで回収8.1〜14.6年、補助1/2で6.1年、電気代上昇率0〜5%で10.2〜13.7年、維持費で10.3〜13.5年
図7 本庁舎(太陽光=最大デマンド×1.0)の回収年数に対する各前提の影響

前提を1つずつ動かしたとき、回収年数を最も大きく動かすのは設置単価(8.1〜14.6年)と補助(補助1/2で6.1年)でした。電気代の上昇率は、0%なら13.7年、5%なら10.2年です。維持費(2,000〜8,000円/kW・年)も10.3〜13.5年と同じくらい効きます。劣化率の影響は小さく、0.3%と0.8%の差は0.3年でした。

つまり、「電気代がこの先どうなるか」を議論するより、見積単価を下げることと補助を確保することの方が、結論への影響が大きいということです。電気代の将来は誰にも分かりませんが、単価と補助は交渉と申請で動かせます。

意外な発見:蓄電池を足しても、電気代がほとんど下がらない施設がある

蓄電池1kWhあたりの年間削減額。上下水道では22〜260円、平日型の庁舎・支所・学校で1,396〜3,315円。20万円/kWhの蓄電池を15年で回収するには年13,333円が必要
図8 蓄電池1kWhあたりの年間削減額(太陽光1kWあたり2kWhを追加)

上下水道施設に太陽光121kWと蓄電池242kWhを入れても、電気代は太陽光だけの場合より年5,324円しか下がりませんでした(蓄電池1kWhあたり年22円)。太陽光の発電をすべて施設内で使い切っているため、蓄電池にためる余りがないからです。今回は系統から充電しない設定にしたため、上下水道ではピーク抑制にもほとんど使えませんでした。なお、蓄電池ありの試算では、太陽光による最大デマンドの低下が基本料金に反映されています(蓄電池なしの試算では反映していない)。病院・体育館で放電量が小さいのに年数万〜20万円程度の追加削減が出たのは主にこの差によるもので、蓄電池そのものの価値ではありません。図8・図9の蓄電池の価値は、この分だけ大きめに出ていると読んでください。それでも回収できる価格に届かないことが、この結論の強さを示しています。

蓄電池が働いたのは、余りが出る平日型の施設です。それでも、蓄電池1kWhあたりの年間削減額は最大3,315円で、20万円/kWhの蓄電池を15年で回収するのに単純計算で必要な年13,333円の4分の1にとどまりました。

15年NPVがゼロになる蓄電池の上限価格。小中学校・本庁舎・支所で約2.8万円/kWh、病院・体育館で約0.7〜0.8万円/kWh
図9 電気代の削減だけで15年で回収できる蓄電池の上限価格(太陽光=最大デマンド×1.0)

電気代の上昇(3%/年)・蓄電池の劣化(3.5%/年)・維持費・割引率2%を入れて、15年の正味現在価値がゼロになる蓄電池の価格を求めると、最も有利な小中学校・本庁舎・支所でも約2.8万円/kWhでした。定置用蓄電システム普及拡大検討会の資料では、業務・産業用の蓄電システムは補助事業の平均で9.2万円/kWh、それ以外の実勢で約20万円/kWh(いずれも工事費を除く)とされています。公共施設の蓄電池は、電気代の投資ではなく、停電時の電源を確保する防災投資として予算化するのが現実的です。家庭用の蓄電池を全国243ケースで試算した蓄電池は元が取れるか(全国9エリア243ケース)でも、蓄電池単体の回収は電気代だけでは難しいという同じ傾向が出ています。

全国8エリア(北陸・沖縄を除く)ではどうか:電気の単価が高い地域ほど回収は早い

全国8エリアの回収年数の推計。上下水道は6.2〜8.7年、本庁舎は8.2〜11.5年。1kWhあたりの単価は九州22.8円から北海道28.4円
図10 エリア別の回収年数(推計、太陽光=最大デマンド×1.0、蓄電池なし)

関東のBiz実試算の自家消費量を、各エリアの発電量の比率と、各社の高圧標準メニューの単価(電力量料金+燃料費調整+再エネ賦課金、2026年11月分)に当てはめて推計しました。施設内で使う太陽光1kWhの価値は、九州22.8円、関西23.9円から、北海道28.4円、東北28.2円、中部28.1円まで約5.6円の差があります。関東はBizの実試算(10月単価、22.8円)をそのまま使っています。

単価が高い北海道・東北・中部では、本庁舎型の回収が8.2〜8.8年に縮みます。九州・関西は10.2〜11.5年です。北海道・東北は、推計に使った発電量データ(PVGIS-ERA5)で関東より発電が多く出ている点にも注意が必要です。ただし、この推計には積雪による発電の減少や、地域ごとの需要の違いは入っていません。北海道・東北の積雪地では、実際の発電量が推計より少なくなる可能性があります。

エリア電力会社・メニュー(高圧)1kWhあたりの単価(推計)上下水道(×1.0)本庁舎(×1.0)小中学校(×1.0)
北海道北海道電力 業務用電力28.4円6.5年8.6年8.3年
東北東北電力 業務用電力28.2円6.7年8.8年8.5年
関東東京電力EP ベーシックプラン22.8円(Biz・10月)8.6年11.3年10.8年
中部中部電力ミライズ 高圧業務用電力FR28.1円6.2年8.2年7.9年
関西関西電力 高圧電力AS23.9円7.8年10.2年9.8年
中国中国電力 業務用電力26.9円6.9年9.1年8.7年
四国四国電力 業務用電力26.8円6.8年8.9年8.6年
九州九州電力 業務用電力A22.8円8.7年11.5年11.1年

関東は、エネがえるBizの実試算値(2026年10月時点の単価)です。10月分の料金には国の電気・ガス料金支援(高圧1.80円/kWh)が含まれていた可能性があります。11月以降の単価(支援なし、電力量料金+0.04円)で計算し直すと、本庁舎(×1.0)の回収は約10.4年と、約1年短くなる見込みです。東京電力EPの11月分の燃料費調整単価は、本記事の確認時点で数値を読み取れていません。

予算をどの施設に使うか:1億円の配分とモデル自治体31施設

設置単価22万円/kWのとき、1億円で載せられる太陽光は約454kWです。これを24時間型の施設に載せれば年間約1,230万円(1kWあたり27.0千円)、平日型の施設に最大デマンドの1.5倍で載せれば年間約850万円(同18.6千円)の削減になります。同じ1億円でも、年間約380万円、20年で約7,600万円(単純合計、上昇率・劣化を除く)の差が出ます。平日型でも最大デマンドの0.5倍に抑えれば1kWあたり22.8〜25.4千円で、差は縮まります。

投資100万円あたりの年間CO2削減量。上下水道・病院・体育館で2.07t、本庁舎で1.58t、小中学校で1.64t
図11 投資100万円あたりの年間CO2削減量(太陽光=最大デマンド×1.0、自家消費分×0.384kg-CO2/kWh)

CO2の削減量で見ても、24時間型の施設は投資100万円あたり年2.07tで、本庁舎(1.58t)より3割多く減らせます。脱炭素の目標を同じ予算で早く達成するなら、まず24時間型の施設に、需要に見合った容量を入れるのが合理的です。

ただし、容量で見た目標(政府実行計画の「設置可能な建築物の50%」)に対しては、平日型の大きな屋根を後回しにすると達成が遅れます。経済性と目標のどちらを優先するかは自治体の判断です。両方を満たす方法として、平日型の施設は屋根を使う権利をPPA事業者に任せ、余剰は事業者が他で活用する、という分担も選択肢になります。

モデル自治体(31施設)で着手の順番を比べる

本庁舎1、支所5、小中学校15、体育館・コミュニティセンター6、上下水道施設3、公立病院1の、計31施設を持つ自治体を想定しました。各施設の容量を最大デマンドの0.5倍ずつ増やしていくとき、経済性の高い施設・容量から順に進める場合と、屋根の広い学校・庁舎から屋根いっぱいに載せる場合で、累計の投資額と年間の電気代削減額を比べました(すべて実施すると約6.0億円、年間約5,850万円の削減)。

モデル自治体31施設の着手順の比較。累計投資3億円の時点で、経済性順は年3,564万円、学校・庁舎から屋根いっぱいでは年2,577万円の削減で、差は年約990万円
図14 着手の順番による年間削減額の違い(モデル自治体31施設、設置22万円/kW)

最終的に全施設に載せれば結果は同じです。しかし、予算が年度ごとに分かれる自治体では、途中の年の効果が大きく違います。累計3億円の時点で、経済性順は年約3,560万円、屋根いっぱい順は年約2,580万円の削減で、年約990万円の差が出ました。早く削減できた分は、次の年度の予算の原資にもなります。なお、比較した「屋根いっぱい順」は、24時間型の施設を最後に回した一例で、差の大きさは比べる順番によって変わります。

限界削減費用曲線。CO2削減の大半は得をしながら進み(24時間型の0.5〜1.0倍の追加分は1tあたり約2.1万円の得)、平日型を1.0倍から1.5倍に増やした追加分だけが1tあたり約1.0万〜2.2万円の費用になる
図15 CO2削減の限界削減費用曲線(施設ごとに容量を0.5倍ずつ追加、年価換算・電気代上昇なし)

CO2削減の費用で見ると、24時間型の施設の0.5〜1.0倍の追加分は1tあたり約2.1万円の得(1.5倍の追加分も1.5万〜1.9万円の得)、平日型の0.5倍も約1.4万〜1.9万円の得でした。損に転じたのは、本庁舎・支所・小中学校を1.0倍から1.5倍に増やした追加分だけです(1tあたり約1.0万〜2.2万円の費用、電気代上昇を見込まない保守的な計算)。脱炭素の目標と経済性は、施設と容量を選べば大部分で両立するということです。なお、平日型の1.0→1.5倍の追加分は、この曲線(電気代上昇なし)では費用ですが、電気代上昇3%/年を見込む20年NPVでは小さなプラスになります。前提の違いで結論が入れ替わる「境界」の領域だと理解してください。

着手する順番:4つの質問で決める

どの施設から、どの大きさで載せるかを決める4つの質問。電気を使う時間帯、容量の目安、見積の設置単価、蓄電池の判断
図12 施設の着手順と容量を決める4つの質問
  • □ 施設台帳に「電気を使う時間帯(24時間型/平日昼型)」の列があるか
  • □ 候補施設の12か月分の請求書、またはデマンドデータ(30分値)を集めたか
  • □ 平日型の施設は、回収年数とNPVの両方を見て容量(最大デマンドの0.5〜1.0倍)を検討しているか
  • □ 見積の設置単価が、施設類型ごとの上限(図5)を下回っているか
  • □ 屋根の残りの耐用年数と、防水・補強の費用を確認したか(屋根耐荷重・太陽光パネルの疑問30問)
  • □ 自己所有とPPAの両方で比べたか
  • □ 蓄電池は、停電時に動かす設備と時間から容量を決めているか
  • □ 使える補助制度と補助率を確認したか

予算要求・議会説明で使える5つの数字と説明文の例

試算を意思決定につなげるには、数字を「誰に、何を判断してもらうか」に合わせて選ぶ必要があります。公共施設の太陽光で、財政担当・議会・住民がよく尋ねるのは次の5点です。

聞かれること示す数字本記事の例(関東・本庁舎×1.0)注意点
いくらかかるのか設備費(税込)、補助の見込み175kW×22万円=約3,850万円(税抜、税込約4,235万円)屋根改修・連系工事を別に見積もる
何年で元が取れるのか回収年数(条件つき)11.3年(電気代上昇3%/年)、上昇なしなら13.7年幅で示す。1つの数字にしない
結局いくら得をするのか20年の正味現在価値(NPV)約2,436万円(割引率2%、設備費税抜。税込では約1,937万円)割引率と評価年数を明記する
なぜこの施設からなのか1kWあたりの削減額、自家消費率1kWあたり年20.7千円、自家消費率77%他施設との比較表を添える
脱炭素にどれだけ効くのか年間CO2削減量、目標に対する寄与年約61t-CO2排出係数の出典と年度を書く

説明文の例:「本庁舎の屋上に太陽光175kWを設置した場合、設備費は約3,850万円(税抜)です。電気代の削減額は初年度で約362万円、電気料金が年3%上昇した場合は約11年、上昇しない場合でも約14年で回収できる見込みです。施設内で使い切れない電気が約23%生じるため、容量は最大デマンドの0.5〜1.0倍を軸に、他施設との一括発注やPPAとの比較を行います。」

このように、回収年数は必ず条件と幅で示し、余剰の有無と容量の考え方まで書くと、後から「想定と違った」という指摘を受けにくくなります。

PPA事業者・EPC・地域新電力にとっての示唆

  • 案件の選別:24時間型の施設は税込約19.5円/kWhで事業が成り立ち、自治体にも明確な得を示せます。最初の提案先として最も通りやすい施設です。
  • 平日型の設計:支所・学校は容量を最大デマンドの0.5倍前後に抑えれば税込約21円/kWhで成り立ちますが、本庁舎は0.5倍でも約23.2円と買電単価並みです。余剰を自己託送・相対取引で活用できる契約形態とセットで提案しないと、平日型の多くは単価が買電単価を上回ります。
  • バンドル公募:採算の異なる施設を束ねると、全体の単価をそろえやすくなります。自治体の公募仕様に、施設の需要データ(30分値)と運用カレンダーの開示を求めると、応募側のリスクが下がり、単価も下がりやすくなります。
  • 蓄電池の位置づけ:電気代だけで蓄電池を回収できる価格は最大でも約2.8万円/kWhです。避難所機能や停電対応の要件として、防災側の予算・補助と組み合わせて提案するのが現実的です。

いずれも、施設ごとの需要の形を把握することが出発点です。エネがえるBizの業種別テンプレートを使えば、デマンドデータが手元にない段階でも概算の比較ができ、データが揃った段階で実測に差し替えて精度を上げられます。

試算を再現する方法(エネがえるBizの設定)

  1. プロジェクトと施設:施設ごとにエリア・都道府県、電気事業者、料金プラン、基本料金タイプ(500kW未満/以上)を設定します。
  2. ロードカーブ:「既存テンプレートからコピー」で業種別の1日の需要曲線を選びます。平日と休日の2つを用意し、休日の総使用量の比率(今回の学校は0.4)を確認します。上下水道は24時間一定の曲線を自分で作りました。
  3. カレンダー:曜日ルール(土日)、祝日ルール、日付ルール(長期休業・年末年始)の順に休日の曲線を割り当てます。月別使用量は「業種・規模・地域から12か月の一般的な使用量をセット」で入れました。
  4. 太陽光:設置面1に容量・方位・傾斜・基本設計係数を入れ、パワーコンディショナの出力と効率を設定して「シミュレーション」を実行します。画面に自家消費率・余剰率・最大デマンドが表示されます。
  5. 蓄電池:実効容量、充放電の出力と効率、放電時間(今回17時〜翌8時)、系統充電の有無(今回なし)を設定し、目標の最大デマンド値を探索して実行します。
  6. 結果と保存:月別の電力量と電気料金(導入前・導入後)を確認し、シミュレーションとして保存します。診断レポート(Excel)では、設備単価・維持費・劣化率・余剰売電単価・適用期間などを変えて、簡易キャッシュフローと回収期間を確認できます(エネがえるBizのお知らせ・製品ページの記載による)。

試算を依頼するなら:前提を開示できる相手に

公共施設の太陽光は、議会や住民への説明が欠かせません。だからこそ、試算の結果だけでなく、どの需要データ、どの料金単価、どの設備単価で計算したかを示せることが大切です。本記事のように前提を開示した試算であれば、条件を変えたときに結論がどう動くかも説明できます。

エネがえるBizは、施設ごとの需要(実測データまたは業種別テンプレート)、料金プラン、太陽光・蓄電池の条件から、1年分の電気代の変化と投資回収を試算し、グラフ付きのExcelレポートに出力します。複数の施設をまとめて比較し、着手の優先順位を整理する試算代行(エネがえるBPO)にも対応しています。

エネがえるBizの機能と画面を見る/施設の試算代行(エネがえるBPO)を相談する

よくある質問

この試算結果を、そのまま予算要求に使えますか。

本記事の数値は、業種別の標準的な需要パターンを使った推計です。予算要求や議会説明には、対象施設の12か月分の請求書やデマンドデータで試算し直した結果を使ってください。

太陽光の容量はどう決めればよいですか。

屋根の面積ではなく、施設の電気の使い方で決めるのが基本です。今回の試算では、平日だけ使う施設は最大デマンドの0.5倍前後で自家消費率84〜94%を保ち、回収年数が最も短くなりました(20年で残る金額を重視するなら1.0倍前後)。24時間または毎日使う施設は1.5倍でも約96%以上を使い切れました。

学校の太陽光は損ですか。

損ではありません。今回の小中学校は、どの容量でも20年以内に回収できました(9.1〜12.5年)。ただし、夏休みと週末に発電が余るため、容量を大きくするほど回収年数が延びます。

蓄電池は付けない方がよいですか。

電気代の削減だけで判断すると、今回の条件では回収できませんでした。避難所の非常用電源として必要な場合は、停電時に動かす設備と時間から容量を決め、防災の予算として検討してください。

基本料金は下がらないのですか。

高圧の基本料金は過去1年の最大デマンドで決まります。最大デマンドは太陽光が発電していない時間に出ることもあるため、今回の蓄電池なしの試算では基本料金の削減を見込まず、保守的に計算しました。基本料金を下げたい場合は、蓄電池のピーク抑制や需要側の運用を組み合わせて検討します。

自己所有・リース・PPAのどれが得ですか。

今回の前提(割引率2%、リース料率3%、PPA事業者IRR4%)では、20年NPVはすべての施設で自己所有が最も大きく、次いでリース、PPAの順でした。ただし、自治体の割引率(資金コスト)がリース料率を上回ると、リースが有利になります。初年度の負担や予算の平準化を重視するならリースやPPAが向きます。実際の提示条件で同じ物差しにそろえて比べてください。

積雪地でも同じ結果になりますか。

本記事の地域推計には積雪による発電の減少は入っていません。積雪地では発電量が減り、回収年数が延びる可能性があります。設置角度や積雪の条件を入れて個別に試算してください。

PPAで導入すれば、どの施設でも得になりますか。

今回の試算では、24時間型の施設は事業者に必要な単価が税込約19.5円/kWhで、施設は1kWhあたり約3円安く電気を買えました。平日型の施設は、必要な単価が税込で買電単価を上回り、施設にとっては割高でした。余剰の扱いと容量の設計がPPAの成否を分けます。

複数の施設をまとめて進めると、何が良いのですか。

経済性の高い施設から順に進めると、同じ予算で早く大きな削減を得られます。モデル自治体31施設では、累計3億円の時点で年約990万円の差が出ました。PPAでも、採算の異なる施設を組み合わせると単価をそろえやすくなります。

自分の施設で同じ試算をするには何が必要ですか。

施設の所在地、電力会社と料金プラン、12か月分の請求書(またはデマンドデータ)、屋根の面積か図面があれば試算できます。開館日・休館日などの運用も分かると精度が上がります。

試算の前提条件(すべて公開)

項目値根拠
試算ツール・試算日エネがえるBiz v1.1、2026年10月31日実画面で設定・計算・保存
地点埼玉県(日射量観測地点:さいたま)Bizの日射量データ
料金プラン東京電力EP ベーシックプラン(高圧・500kW未満)※市場価格調整は平均値Bizの料金データ(2026年10月時点の単価)
需要業種別テンプレート(50業種×20規模)の月別使用量と時間別曲線、カレンダーBiz初期値。上下水道は24時間一定の曲線を仮定
太陽光最大デマンドの0.5/1.0/1.5倍、真南・傾斜10度、基本設計係数0.85、PCS効率98%仮定(Bizの入力)
太陽光の設置単価22万円/kW・税抜と想定(感度15〜30万円/kW。税込24.2万円/kWでは回収9.3〜12.2年=×1.0)資源エネルギー庁「太陽光発電について」屋根設置10kW以上・2024年設置の中央値22.12万円/kW
維持管理費4,000円/kW・年(感度2,000〜8,000円)同資料 屋根設置の実績中央値0.40万円/kW/年
蓄電池の設置単価20万円/kWh(維持費は設備費の1%/年)定置用蓄電システム普及拡大検討会(2025年3月7日)補助事業以外の実勢(工事費除く)
劣化率太陽光0.5%/年、蓄電池3.5%/年Bizの初期値
電気代の上昇率3%/年(感度0〜5%)仮定
評価期間・割引率20年・2%(蓄電池の上限価格は15年NPV=0となる価格)屋根設置の想定運転年数20年(同資料)
補助なし(感度1/3・1/2)仮定
導入方式の比較税込(設備費24.2万円/kW・維持4,400円/kW年)、リース料率3%・20年元利均等・維持費込み、PPA事業者IRR4%・20年固定単価、割引率2%(感度1〜5%)仮定(感度分析で幅を提示)
余った電気0円(売電・他施設への融通なし)仮定
基本料金蓄電池なし:導入前の最大デマンドで計算(削減を見込まない)。蓄電池あり:導入後の最大デマンドで計算Bizの設定
CO2排出係数0.384kg-CO2/kWhBizの初期値
地域推計の単価各社の高圧標準メニューの電力量料金(夏季4か月の加重平均)+燃料費調整(2026年11月分)+再エネ賦課金4.18円各社公式資料・経済産業省(賦課金)

この試算の限界

  • 需要は業種別テンプレートからの推計で、実際の施設の30分ごとの使用量やピークの時刻とは異なります。
  • 最大デマンドは1時間値で計算しています。実際の高圧の基本料金は30分値で決まるため、ピークが高く出る施設では基本料金の見え方が変わります。
  • 料金単価は2026年10月時点(地域推計は11月分)です。燃料費調整や市場価格調整は毎月変わります。
  • 屋根の補強・防水改修、系統連系の工事、撤去費、固定資産税・減価償却、保険は含めていません。
  • 地域推計は、関東の自家消費率をそのまま使い、積雪や地域の需要差を入れていません。
  • 蓄電池は「余剰充電+夕方〜朝放電、系統充電なし」の1通りで試算しています。系統充電でピークを抑える運用や、非常用電源としての価値は金額に入れていません。

ファクトチェック・エビデンス検証一覧

検証の方法

  1. 一次情報との照合:制度・統計・料金単価は、官公庁・電力会社の公式資料で値と適用条件を確認しました(確認日:2026年10月31日)。
  2. 実製品による試算:36ケースはすべてエネがえるBizの画面で実行し、シミュレーションとして保存しています。
  3. 独立した再計算:回収年数・NPV・感度分析・地域推計は、Bizの結果を入力に別の計算プログラムで再計算しました。太陽光の発電量(埼玉・傾斜10度で約1,183kWh/kW)は、資源エネルギー庁資料の屋根設置の想定設備利用率14.3%(約1,253kWh/kW)と比べて約6%低く、低い傾斜角と基本設計係数0.85を考えると整合的です。
  4. 表現の確認:断定を避け、数値には条件を添えました。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。

根拠の確かさの区分

区分意味
A 一次情報官公庁・電力会社・公的機関の公式資料で確認した値
M 計算結果エネがえるBizの試算結果と、それをもとにした再計算
E 推計Bizの結果を他の条件に当てはめた推計(地域推計など)
H 仮定値確かな統計がないため置いた値。幅を持たせて感度分析した
主張・数値区分根拠
件数39.1%・容量6.2%(地方公共団体の太陽光)A環境省 資料(令和7年10月1日時点)
2027年度定期報告から屋根の設置可能面積を報告A資源エネルギー庁 エネこれ
屋根設置の設置単価 中央値22.12万円/kW、維持費中央値0.40万円/kW/年A資源エネルギー庁 調達価格等算定委員会資料
業務・産業用蓄電システム 補助事業平均9.2万円/kWh、実勢約20万円/kWh(工事費除く)A定置用蓄電システム普及拡大検討会
各施設の自家消費率・電気代削減額(36ケース)MエネがえるBiz(2026年10月31日)
回収年数・NPV・上限単価・感度分析MBiz結果をもとに再計算
PPA単価(IRR4%)・自己所有/リース/PPAの20年NPV比較・限界削減費用・モデル自治体31施設の比較M/HBiz結果をもとに再計算。IRR4%・施設数の構成は仮定
全国8エリアの回収年数EBiz結果×地域別発電量比×各社単価
電気代上昇率3%/年、補助率、蓄電池の維持費1%/年H仮定(感度分析で幅を提示)

試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/試算日:2026年10月31日/料金単価・制度の変更に合わせて更新します。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
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