市場規模と収益モデル:どこにお金が動くか。
建設市場、評価市場、意思決定支援市場を分ける。
建築LCAは大きな建設市場に関係しますが、建設投資額のすべてが算定ソフトの市場になるわけではありません。義務対応の件数、任意評価の動機、更新・運用への継続価値から、狙う市場を積み上げます。

| 市場の層 | 規模の根拠 | 読み方 |
|---|---|---|
| 関連する建設全体 | 2026年度見通し81.47兆円 | 建築と土木の合計。LCA市場ではない |
| 建築に絞った投資 | 52.95兆円=住宅18.48+非住宅17.18+補修17.29 | 改装・改修を含む名目見通し。低炭素追加投資だけではない |
| 制度初期の届出候補 | 10月5日案の図は約200棟/年を例示 | 対象範囲設定のための政策資料上の概数。実施後の届出件数ではない |
| 説明制度の候補 | 同図は約3,300棟/年を例示 | 届出候補と重なり得るため足し合わせない |
| 自主評価・改修・運用 | この調査で信頼できる独立市場総額は確定できず | 保有棟数、投資案件数、評価頻度、支払意思を別途実査する |
根拠:[2] 国土交通省|各検討事項における検討の骨子と方向性(案)(第8回資料3) / [5] 国土交通省|2026年度建設投資見通し概要
市場を水増ししない積み上げ方
自社売上 = 上記 × 到達可能シェア
粗利 = 自社売上 − 算定・データ整備・検証・外注・運用の変動費
| 仮定シナリオ | 計算 | 意味と限界 |
|---|---|---|
| 届出候補を使う仮定 | 200棟 × 100% × 50万円 = 1億円/年 | 単価・有償化率は仮定。既存設計業務内に含まれる場合もある |
| 説明候補を使う仮定 | 3,300棟 × 20% × 30万円 = 1.98億円/年 | 上の市場と重複するため合算しない |
| 自社の初期受注仮定 | 50社 × 年4案件 × 30万円 = 6,000万円/年 | 顧客数・頻度・単価は独自仮定。売上予測や現行価格ではない |
| 同・追加の年次管理仮定 | 同じ50社 × 年60万円 = 3,000万円/年 | 案件業務と異なる作業・価値に支払意思がある場合のみ別売上 |
上の試算を使う目的は、採算の前提を見える化することです。価格は工数と責任範囲で変わります。650万円の補助上限から「1件650万円の受注市場」を作ることはしません。
収益モデルの比較
| モデル | 顧客が買うもの | 課金単位 | 粗利を崩す要因 | 成立条件 |
|---|---|---|---|---|
| 算定BPO | 不足データを含めて、期限に間に合う評価成果 | 棟・比較案・工程・変更回数 | 数量拾いのやり直し、品番変更、無制限修正 | 入稿条件、責任範囲、追加料金を定義 |
| 設計比較SaaS | 変更案の差分を速く確認できる環境 | 利用者・案件・組織 | 初期教育と個別マッピング | 既存BIM/積算の業務に入る |
| 環境データ整備 | 製品の低炭素価値を採用に使える証拠 | 製品・EPD群・更新 | 一次データ回収、検証費、権利制約 | 調達先と製品IDでつながる |
| 設備投資判断 | 太陽光・蓄電池等の条件別収支比較 | 案件・API・月額 | 需要データ欠損、料金の個別条件 | 営業・設計の反復業務がある |
| ポートフォリオ管理 | 多数棟の改修順と予算配分 | 棟数・年間更新 | 所有者・用途・改修履歴の不整合 | 設備更新・予算策定に毎年使う |
| 金融・稟議支援 | 審査用の比較条件と証拠一式 | 案件・審査接続 | 削減保証や認証との責任混同 | 審査側が使う様式へ合わせる |
| 成果報酬・紹介 | 施工・PPA等の成立 | 契約・成果 | 利益相反、長い回収、契約不成立 | 比較の中立性と手数料を開示 |
独自見立て:計算単価は下がっても、変更管理の価値は残る
無料・低価格の算定手段が増えるほど、数字を一度出す作業だけで高い価格を維持するのは難しくなります。価値が残るのは、顧客が集められないデータを整え、設計変更を追い、投資判断と審査に使える状態で届ける仕事です。ただし、これを「高付加価値」と呼ぶだけでは売れません。見積作成時間、差戻し件数、意思決定までの日数を、導入前後で測る必要があります。
最初の販売対象は、法対応の必要がある建築主に加え、既存顧客へ繰り返し設備提案をするEPC・PPA・設計会社と考えます。制度対象外でも年次の更新案件がある顧客の方が、継続利用が成立する場合があります。これは市場仮説であり、実案件の有償検証で判断します。
受注前に確認する、削減効果の下振れ
以下は市場統計ではなく教育用の仮定例です。追加投資1,000万円、維持費20万円/年、20年、割引率3%、10年目に200万円更新、補助なし。年間の収入・回避支出だけを120万円から±20%変えています。NPVは費用と便益を年末割引した差額です。期間・更新・料金が変われば再計算します。






