結論から言います。卒FITを迎えたオール電化の家が最初に検討すべきなのは、蓄電池ではなくエコキュートの「昼間沸き上げ」です。2026年11月の最新の電気料金で、全国9エリア × 既設太陽光3水準(3・4・6kW)× 月額電気代3水準 × 電気代上昇率3水準、合わせて243ケースについて、「売電を続ける」「昼間沸き上げ」「蓄電池10kWhの後付け」「両方」を1時間単位で試算しました。答えは次の3つに整理できます。
3つの答え
- まずは昼間沸き上げ。対応機種なら設定変更だけで年約2.9万円(中央値、毎日昼に沸かす設定)浮き、曇りの日は夜に沸かす天気連動なら最大で中央値3.2万円(年0.7万〜4.7万円、翌日の発電を完全に予測できた場合の上限)。卒FITで7〜9円でしか売れない昼の電気で、夜に約22〜30円で買っていたお湯を沸かす仕組みです。1年目の節約額は、150万円の蓄電池を付けた場合(中央値2.9万円)と同じくらいになりました。
- 蓄電池の後付けは、補助なしでは243ケースすべてで15年以内に回収できない。補助と目的しだいで選ぶ。東京都の水準(10万円/kWh)の補助を当てはめると、関東の27ケース中17ケースが15年以内に回収できます。ただし昼間沸き上げを先にすると、蓄電池の上乗せ効果は中央値で年1.6万円と約半分に減り、回収できるのは27ケース中4ケースになります。
- 蓄電池は「元を取る」より「停電と自給の安心」で選ばれている。エネがえるの独自調査では、回収が難しいと知りながら蓄電池を買った人の85.6%が「購入して良かった」と答え、理由の上位に「停電への備え」が入りました。試算では、冷蔵庫・照明・通信などに絞れば、既設太陽光4kWに5kWhの蓄電池でも、72時間停電のうち約86%の時間で電気を使えました(関東)。
この記事で分かること(数値の要点)
- 卒FIT後の売電は7〜9円/kWh、エコキュートが夜に買う電気は約22〜30円/kWh。同じ1kWhでも、売るよりお湯にした方が約3〜5倍の価値になります(時間帯別プラン、燃料費調整・再エネ賦課金込み、税込)。
- 昼間沸き上げの15年の節約額は約11万〜92万円(中央値54万円)。エコキュートの交換時に昼間沸き上げ形を選ぶ場合、差額が自宅のケースの15年節約額より小さければ元が取れる計算です(差額30万円なら243ケース中215ケース)。
- 蓄電池10kWh(150万円、税込)の後付けは、15年で回収できる価格が中央値5.1万円/kWh。想定価格15万円/kWhの3分の1です。昼間沸き上げの後に足す場合は2.4万円/kWhまで下がります。
- 九州は昼間沸き上げの効果が小さい(中央値1.9万円)。夜間の単価が約21.5円と全国で最も安く、昼に沸かす得が小さいためです。曇りの日は夜に沸かす「天気連動」にすると、九州では節約額が約5割(約46%)増えました。
- 太陽光が大きい家ほど、どの選択肢も効果が大きい。昼間沸き上げの1年目の節約額は、既設3kWで中央値2.3万円、6kWで3.9万円でした。
- 何もしないと、昼間沸き上げ(天気連動・上限)をした家より15年で約56万円多く払う(毎日昼に沸かす固定設定と比べても約52万円)。関東・既設4kW・月2万円・上昇率2%の例です。
検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。243ケースは1時間単位の独立計算モデルで試算しました。電気料金と蓄電池の運転は、蓄電池は元が取れない?買わない方がいい?全国9エリア243ケースを実試算と同じモデルを使い、太陽光の発電は曇りの日を含む実際の1年の天候(PVGIS)に置き換えています。金額はすべて税込です。アンケートの数値は「エネがえる運営事務局調べ」。試算条件・計算方法・出典はすべて本文末尾に公開しています。
この記事で使う言葉
- 卒FIT:住宅用太陽光の固定価格買取(10年)が終わった状態。終わった後も売電はできるが、単価は大手電力の標準メニューで7〜9円/kWhに下がる。
- 昼間沸き上げ:エコキュートのお湯を、深夜ではなく昼(この記事では9〜16時)に沸かすこと。余った太陽光を使う。昼に沸き上げる専用の機種は「おひさまエコキュート」と呼ばれる。
- 時間帯別プラン:夜の単価が安く、昼の単価が高い電気料金プラン。オール電化の家の多くが使っている。
- 自家消費率:太陽光で発電した電気のうち、売らずに家で使った割合。
- 天気連動:翌日の天気(発電量)を見て、昼と夜のどちらで沸かすか(ためるか)を決める制御。
なぜ今、卒FIT後の選択を計算し直す必要があるのか
住宅用太陽光の固定価格買取(FIT)は10年で終わります。2019年11月に最初の世帯が買取期間を終え、その後も毎年、卒FITを迎える家が続いています。卒FIT後も電力会社などに売ることはできますが、単価は大手電力の標準的な買取メニューで7〜9円/kWhまで下がります(東京電力エナジーパートナー8.5円、中部電力ミライズ7円、九州電力7円など)。
一方で、買う電気は安くなっていません。2026年11月には多くの電力会社で料金が改定され、時間帯別プランの夜間単価は燃料費調整と再エネ賦課金(4.18円/kWh、経済産業省)を含めて約22〜30円/kWhです。オール電化の家では、エコキュートが毎晩この電気でお湯を沸かしています。
この「売る7〜9円」と「買う22〜30円」の差を埋める方法は、蓄電池だけではありません。2026年には次の2つの変化もありました。
- 昼間に沸き上げるエコキュートが広がった。主に9〜16時に沸き上げる「おひさまエコキュート」が各社から販売され、東北・東京・中部・中国・四国・九州の電力会社には、おひさまエコキュート向けの料金プランもあります(三菱電機)。
- 給湯器の補助が続いている。給湯省エネ2026事業では、エコキュートに1台7万円(性能加算の要件を満たせば10万円)、電気温水器からの交換ならさらに2万円が補助されます。交付申請は予算に達するまで、遅くとも2026年12月31日までで、予算の消化状況は2026年10月31日午前0時時点で約55%(概算値)です(給湯省エネ2026事業、パナソニック資料)。
「卒FITになったら蓄電池」という提案は今も多く見られます。しかし、選択肢が増えた今は、同じ条件で並べて比べることが欠かせません。この記事はそのための試算です。卒FIT後の選択肢の全体像は卒FIT後の余剰電力はどう使う?売る・貯める・沸かす・走る4案比較でも整理しています。
オール電化の家は、お湯のために年5万〜7万円の電気を夜に買っている
試算のエコキュートは年約2,370kWhの電気を使います。これを各エリアの夜間単価で買うと、年に約5.1万円(九州)〜約7.2万円(四国)になります(最も安い時間帯の単価で計算した目安)。昼間沸き上げは、この支出の多くを、7〜9円でしか売れない自分の太陽光に置き換える方法です。
| エリア | 夜間単価(目安) | エコキュートの夜間の電気代(年、目安) |
|---|---|---|
| 北海道 | 29.1円 | 約6.9万円 |
| 東北 | 29.5円 | 約7.0万円 |
| 関東 | 27.4円 | 約6.5万円 |
| 中部 | 26.1円 | 約6.2万円 |
| 関西 | 25.7円 | 約6.1万円 |
| 四国 | 30.2円 | 約7.2万円 |
| 中国 | 27.5円 | 約6.5万円 |
| 九州 | 21.5円 | 約5.1万円 |
| 沖縄 | 28.2円 | 約6.7万円 |
エコキュートの使用量(年約2,370kWh)×各プランの最も安い時間帯の単価(燃料費調整・再エネ賦課金・割引込み)。四国でんかeプランの基本料金に含まれる電力量などは考慮していない目安です。
検証の方法:243ケースの設計
卒FITを迎えたオール電化の家を想定し、次の条件の組み合わせ243通りを試算しました。
| 軸 | 水準 | 数 |
|---|---|---|
| エリア | 北海道・東北・関東・中部・関西・四国・中国・九州・沖縄(各エリアのオール電化向け時間帯別プラン) | 9 |
| 既設太陽光 | 3kW・4kW・6kW(設置11年目、毎年0.5%劣化) | 3 |
| 月額電気代(今の状態) | 1.8万円・2.0万円・2.5万円(エコキュートの深夜沸き上げを含む) | 3 |
| 電気代上昇率 | 年1%・2%・3%(買う電気だけに適用) | 3 |
それぞれのケースで、次の5つの選択肢を比べました。
| 選択肢 | 内容 | 初期費用の扱い |
|---|---|---|
| (a) 売電を続ける | エコキュートは深夜(1〜6時)に沸き上げ、余った太陽光は卒FIT単価で売る(基準) | なし |
| (b1) 昼間沸き上げ(固定) | 毎日9〜16時に沸き上げ、まず余った太陽光を使い、足りない分は電力会社から買う | 対応機種なら設定変更のみ(0円)。交換する場合は差額で判定 |
| (b2) 昼間沸き上げ(天気連動) | 日ごとに、昼と夜のどちらで沸かす方が安いかを選ぶ(翌日の発電を予測できた場合の上限) | 同上 |
| (c) 蓄電池10kWhを後付け | 余った太陽光をため、昼〜夜の高い時間帯に使う。夜間の安い電気での充電も最適化 | 150万円(15万円/kWh、工事費込み・税込) |
| (d) 両方 | (b2)の後に、残った余りを蓄電池にためる | 150万円 |
計算は1年8,760時間を1時間ずつ追う方式です。電気料金は2026年11月改定後の単価と12月分の燃料費調整(政府の支援なし)、再エネ賦課金4.18円/kWhを使いました。太陽光の発電量は、欧州委員会のPVGIS(ERA5、2016〜2023年)から各エリアの年間発電量が中央値に近い実際の1年を選び、曇りや雨の日を含めています。ヒートポンプの効率は外気温が高いほど良くなるため、その日の昼と夜の気温差1℃あたり2.5%効率が上がると仮定しました(0〜4%で感度分析)。
蓄電池の性能(使える容量90%、往復効率88%、年1.5%の劣化、待機電力25W)と運転は、蓄電池243ケースの記事と同じです。蓄電池の追加効果の考え方は蓄電池を追加する経済効果の計算方法で詳しく解説しています。
何で得をするのか:「売る単価」と「夜に買う単価」の差
卒FIT後の損得は、ほぼこの一点で決まります。昼に余った太陽光を7〜9円で売るか、それとも夜に22〜30円で買っている電気の代わりに使うかです。

余った1kWhの使い道ごとに価値を比べると、差ははっきりします。

- 売る:7〜9円。
- お湯にする(昼間沸き上げ):夜に買うはずだった電気が要らなくなります。昼は気温が高く、ヒートポンプの効率も上がるため、余った1kWhで夜の電気約1.1kWh分のお湯を沸かせます。価値は約24〜34円です。
- ためて使う(蓄電池):昼の高い時間帯や夕方・夜の電気の代わりになります。図2は昼間の最高単価で計算した上限の目安です。実際には夜間単価との差で使う時間も多く、往復の損失と待機電力もかかります。
お湯にする方法には、蓄電池にない強みがあります。機器を新しく買わずに済む場合があることと、お湯という形で「ためる」ので電池の劣化がないことです。エコキュートは毎日決まった量のお湯を沸かすので、余った電気の受け皿として安定しています。

図3の例では、深夜に沸かしていたときは1日に13.4kWhを買い、11.8kWhを売っていました。昼間に沸かすと、買う電気は8.0kWh、売る電気は7.2kWhに減ります。売っていた昼の電気がお湯に変わり、夜に買う電気が減ったわけです。
結果①:昼間沸き上げは年約3万円。蓄電池とほぼ同じ節約額
1年目の節約額(売電を続ける場合との差)を、選択肢ごとに比べました。

| 選択肢(全243ケース) | 1年目の節約額(最小〜最大) | 中央値 | 初期費用 |
|---|---|---|---|
| (b1) 昼間沸き上げ(毎日固定) | −0.2万〜4.6万円 | 2.9万円 | 0円〜(機種による) |
| (b2) 昼間沸き上げ(天気連動) | 0.7万〜4.7万円 | 3.2万円 | 0円〜(機種による) |
| (c) 蓄電池10kWhを後付け | 1.4万〜5.6万円 | 2.9万円 | 150万円 |
| (d) 昼間沸き上げ+蓄電池 | 1.6万〜7.9万円 | 4.8万円 | 150万円 |
昼間沸き上げ(天気連動)と蓄電池は、1年目の節約額の中央値がほぼ同じです。243ケースのうち84ケースでは、昼間沸き上げの方が蓄電池より節約額が大きくなりました。初期費用は150万円と0円〜(機種による)で、桁が違います。
エリア別に見ると、傾向が分かれます(1年目の節約額の中央値)。
| エリア | 昼間沸き上げ(天気連動) | 蓄電池10kWh | 両方 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 3.4万円 | 2.9万円 | 4.9万円 |
| 東北 | 3.8万円 | 2.0万円 | 4.8万円 |
| 関東 | 3.2万円 | 3.5万円 | 4.6万円 |
| 中部 | 3.3万円 | 4.2万円 | 6.1万円 |
| 関西 | 3.0万円 | 3.3万円 | 4.4万円 |
| 四国 | 3.9万円 | 2.4万円 | 5.0万円 |
| 中国 | 3.2万円 | 3.3万円 | 5.1万円 |
| 九州 | 1.9万円 | 2.8万円 | 3.5万円 |
| 沖縄 | 3.2万円 | 4.3万円 | 4.9万円 |
- 北海道・東北・四国では、昼間沸き上げの方が蓄電池より節約額が大きい。夜間単価が約29〜30円と高く、お湯にする価値が大きいためです。
- 中部・沖縄では蓄電池の効果が大きい。中部は昼の単価(約48円)と夜の単価(約26円)の差が全国で最も大きく、蓄電池が高い時間帯の電気を置き換える価値が大きくなります。
- 九州は昼間沸き上げの効果が最も小さい。夜間単価が約21.5円と安く、昼に沸かす得が小さいためです。
太陽光の大きさと月額電気代で、効果はどう変わるか
| 既設太陽光 | 昼に売っている電気(今の状態、1年目) | 昼間沸き上げの節約(中央値) | 蓄電池の節約(中央値) |
|---|---|---|---|
| 3kW | 約1,300kWh | 2.3万円 | 2.3万円 |
| 4kW | 約2,200kWh | 3.2万円 | 3.0万円 |
| 6kW | 約4,100kWh | 3.9万円 | 3.8万円 |
昼に売っている電気が多いほど、昼間沸き上げも蓄電池も効果が大きくなります。既設6kWの家は、今の状態で年約4,100kWhを7〜9円で売っており、使い道を変える余地が最も大きい家です。
月額電気代については、逆の傾向が出ました。昼間沸き上げの節約額(中央値)は月1.8万円の家で3.4万円、月2.5万円の家で2.7万円です。電気をたくさん使う家は、昼の太陽光をすでに家の中で使っている分が多く、お湯に回せる余りが少なくなるためです。「電気代が高い家ほど得」とは限りません。
自家消費率はどこまで上がるか
| 既設太陽光 | 売電を続ける | 昼間沸き上げ | 蓄電池10kWh | 両方 |
|---|---|---|---|---|
| 3kW | 61% | 93% | 95% | 約100% |
| 4kW | 51% | 83% | 86% | 98% |
| 6kW | 38% | 64% | 68% | 86% |
発電した電気のうち家で使った割合(1年目、各81ケースの中央値)。両方の3kWの100%は「約100%」(四捨五入)です。
既設4kWの家では、昼間沸き上げだけで自家消費率が約51%から約83%に上がり、蓄電池(約86%)とほぼ同じ水準になります。既設6kWの家は、両方を入れても自家消費率は86%で、まだ余りが残ります。こうした家では、昼に充電できるEVなど、余りの受け皿を増やす選択肢も検討の価値があります。
結果②:蓄電池の後付けは、補助なしでは243ケースすべてで15年以内に回収できない
蓄電池10kWh(150万円)を後付けした場合の、15年の収支(節約額の合計−蓄電池価格)を見ます。

補助金なしでは、243ケースすべてで15年以内に回収できませんでした。15年の収支は−130万〜−50万円(中央値−99万円)です。20年に延ばしても回収できるケースはありません。蓄電池の保証期間や寿命を考えると、補助なしの後付け蓄電池を「元を取る投資」として勧めるのは難しいのが現実です。
これは蓄電池243ケースの記事の構成C(卒FIT・既設4kW+10kWh)の結果とも一致します。
結果③:15年で元が取れる蓄電池価格は、中央値で約5.1万円/kWh
逆に、蓄電池がいくらなら15年で元が取れるかを計算しました。

- 蓄電池だけ付ける場合:中央値5.1万円/kWh(2.0万〜10.0万円)。想定価格15万円/kWhの約3分の1です。エリア別の中央値は、東北3.3万円、四国3.9万円から、中部6.8万円、沖縄6.8万円まで差があります。
- 昼間沸き上げの後に足す場合:中央値2.4万円/kWh。同じ「昼の余り」を2つで取り合うため、蓄電池の取り分が減ります。
この損益分岐価格は、複数年の平均的な日射を使った蓄電池243ケースの記事(構成Cの値)とは少し異なります。この記事は曇りの日を含む実際の1年の天候を使っているためです。また、エネがえるASPでの照合ではモデルより低い損益分岐価格が出ており(図7)、「補助なしでは回収できない」という結論は控えめな側の評価です。
補助事業のデータによる蓄電池の平均価格は12.1万円/kWh(2023年度、工事費込み、経済産業省)で、試算の想定より安い水準もありますが、それでも損益分岐の2倍以上です。
エネがえるASPでの照合(参考)
独立計算モデルの結果が、実際の業務用シミュレーターと大きくずれていないかを確かめるため、蓄電池243ケースの記事でエネがえるASP(住宅用太陽光・蓄電池経済効果シミュレーター)を使って照合した構成C(卒FIT・既設4kW+蓄電池10kWh)の11ケースと比べました。


- 15年で回収できるケースはASPでも0件で、結論は一致しました。15年で元が取れる価格はASPで2.7万〜6.1万円/kWhです。
- ASPの一括試算では、エコキュートの深夜沸き上げを個別に設定できないため、この照合は参考扱いです。また、昼間沸き上げの選択肢はASPの一括試算で照合していません。
- この記事の太陽光は実際の1年の天候を使っており、照合時のモデル(複数年の平均的な日射)とは条件が異なります。
エネがえるASPで既設太陽光に蓄電池を後付けした場合の効果の見方は、FAQ:既設太陽光に蓄電池を後付けした場合、蓄電池単体の効果はどこに表示されますか?をご覧ください。
補助金を使うと:蓄電池は東京都の水準で約半数、昼間沸き上げの後なら約1割
蓄電池の補助額ごとに、蓄電池を15年以内に回収できるケースの割合を計算しました。

| 蓄電池の補助額 | 蓄電池だけ付ける場合 | 昼間沸き上げの後に足す場合 |
|---|---|---|
| 5万円/kWh | 0% | 0% |
| 7万円/kWh | 7% | 0% |
| 9万円/kWh | 31% | 5% |
| 10万円/kWh(東京都の水準) | 51% | 12% |
| 12万円/kWh | 91% | 37% |
15年で回収するのに必要な補助額は、蓄電池だけなら中央値9.9万円/kWh、昼間沸き上げの後に足すなら12.6万円/kWhです。
東京都の補助(2026年度、蓄電池10万円/kWh、DR実証に参加すると10万円の上乗せ(EMS・IoT機器の設置などで最大15万円)、補助の上限は1戸120万円か助成対象経費の低い方、クール・ネット東京、東京都)を関東エリアの27ケースに当てはめると、次のようになりました。
| 関東27ケース(東京都の補助を当てはめた場合) | 蓄電池だけ | 昼間沸き上げの後に足す |
|---|---|---|
| 補助 10万円/kWh(100万円) | 17ケース | 4ケース |
| +DR実証の上乗せ10万円(計110万円) | 23ケース | 8ケース |
ここで大事なのは、「蓄電池だけで見れば回収できる」ケースでも、昼間沸き上げという安い選択肢を先に使えば、蓄電池の追加分は回収しにくくなることです。補助を使って蓄電池を入れる場合でも、昼間沸き上げとどちらを優先するか、両方やるなら合計で得になるかを、同じ条件で比べる必要があります。補助金の併用条件は太陽光・蓄電池・V2H補助金の併用条件とNG例で整理しています。
エコキュートの交換を伴う場合は、給湯省エネ2026事業の補助(1台7万円、性能加算の要件を満たせば10万円、電気温水器からの交換はさらに2万円)も使えます。おひさまエコキュートの補助の詳細はおひさまエコキュート補助金2026の全整理をご覧ください。
何が変わると結論がひっくり返るか
関東・既設4kW・月2万円・上昇率2%の家を基準に、条件を1つずつ変えて、昼間沸き上げの15年の節約額と、蓄電池の15年の収支がどう動くかを調べました。

- 昼間沸き上げは、どの条件でもプラス(39万〜68万円)。最も効くのは既設太陽光の大きさ(3kWで39万円、6kWで68万円)です。卒FIT単価が12円に上がっても49万円、ヒートポンプの効率向上をゼロと置いても49万円のプラスでした。
- 蓄電池は、どの条件でも赤字(−143万〜−43万円)。最も効くのは価格です。10万円/kWhまで下がっても−43万円でした。往復効率や上昇率の影響は±10万円程度です。
- 電気代上昇率の影響は小さい。上昇率1%と3%の差は、昼間沸き上げで約11万円、蓄電池で約11万円でした。「電気代がもっと上がるから蓄電池」という説明は、数字の上では根拠が弱いと言えます。
売電先を変えるだけなら、いくら変わるか
卒FIT後は、電力会社や新電力の買取メニューを選び直すこともできます。既設4kW・月2万円の家が今のまま売っている量(年約1,700〜2,500kWh)で、売電単価が3円上がった場合の増収は年約5,200〜7,600円です。12円の買取メニューに変えられたとしても、年約7,600〜12,700円でした。
| エリア(既設4kW・月2万円) | 今売っている量(年) | 売電単価が3円上がった場合 | 昼間沸き上げの節約 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 約2,530kWh | 約7,600円 | 約3.4万円 |
| 関東 | 約2,190kWh | 約6,600円 | 約3.2万円 |
| 中部 | 約2,540kWh | 約7,600円 | 約3.3万円 |
| 九州 | 約1,740kWh | 約5,200円 | 約1.9万円 |
売る単価を数円上げるより、夜に買っている電気を自分の太陽光に置き換える方が、得の幅は3〜5倍大きくなります。もちろん両方を組み合わせることもできます。昼間沸き上げの後も売る電気は残るので、買取単価の高いメニューを選ぶ意味はあります。
意外な発見:昼間沸き上げをすると、蓄電池の上乗せ効果は約半分に減る

昼間沸き上げと蓄電池を両方入れると、1年目の節約額は中央値4.8万円です。しかし、それぞれの単体の合計(3.2万+2.9万=6.1万円)にはなりません。どちらも同じ「昼の余り」を使うため、取り合いになるからです。昼間沸き上げを先にした後の蓄電池の上乗せ分は、中央値で年1.6万円(−0.1万〜4.2万円)と、蓄電池だけの場合の約半分でした。
実務での意味は大きいと考えます。蓄電池の提案書で「年◯万円お得」と示されていても、それが昼間沸き上げをしない前提なら、お客様にとっての本当の上乗せはその半分ほどかもしれません。比較するときは「何と比べた節約額か」を必ず確かめてください。
エコキュートがない家、太陽光が小さい家はどうか
- 電気温水器の家:電気温水器はヒートポンプではないため、同じお湯を沸かすのにエコキュートより多くの電気を使います。交換時にエコキュート(昼間沸き上げ形を含む)を選べば、給湯省エネ2026事業で撤去の加算(2万円)も受けられます。電気温水器のまま昼に沸かす方法もありますが、この記事では試算していません。
- ガス給湯の家:昼間沸き上げという選択肢がないため、卒FIT後の余りの使い道は、売電・蓄電池・EVが中心になります。蓄電池の考え方は蓄電池243ケースの記事が参考になります。
- 太陽光が3kWの家:昼の余りが少ないため、昼間沸き上げも蓄電池も効果が小さくなります(1年目の中央値はどちらも約2.3万円)。九州の3kW・月2.5万円のケースでは、毎日昼に沸かす固定の設定だと、かえって年約2,000円損になりました。曇りの日は夜に沸かす設定が重要です。
- EV・V2Hがある家:昼に家にあるEVへ充電できれば、余りの受け皿はさらに大きくなります。EVの充電費用の考え方はEVの自宅充電と外部充電の費用の考え方、補助金はEV充電器・V2H補助金2026で整理しています。この記事のケースには含めていません。
3つの家のケーススタディ
| 項目 | 東北・既設4kW・月2.5万円 | 中部・既設6kW・月2万円 | 九州・既設3kW・月1.8万円 |
|---|---|---|---|
| 今の実質光熱費(1年目、売電収入を差し引き) | 約28.3万円 | 約20.7万円 | 約20.8万円 |
| 昼間沸き上げ(天気連動)の節約 | 年3.1万円 | 年3.9万円 | 年1.5万円 |
| 蓄電池10kWhの節約 | 年2.2万円 | 年5.0万円 | 年2.3万円 |
| 両方の節約 | 年3.7万円 | 年7.9万円 | 年2.5万円 |
| 蓄電池の15年収支(補助なし) | −115万円 | −65万円 | −113万円 |
| 15年で元が取れる蓄電池価格 | 3.5万円/kWh | 8.5万円/kWh | 3.7万円/kWh |
| この家の最初の一手 | 昼間沸き上げ。蓄電池は停電対策として必要なら | 昼間沸き上げ。余りが多く、蓄電池の上乗せも大きい(15年で約67万円)ので、補助があれば両方が有力 | 天気連動の昼間沸き上げ。蓄電池は採算より停電対策で判断 |
いずれも電気代上昇率2%。中部の家は余りが多いため、昼間沸き上げの後でも蓄電池が15年で約67万円の節約を上乗せします。
エコキュートの交換時期と昼間沸き上げ
卒FITを迎える家は、太陽光と同じころにエコキュートを入れていることも多く、エコキュートの交換時期が近い場合があります。交換が近いなら、次の考え方が合理的です。
- 今の機種に昼間沸き上げの設定があるなら、まず設定を変えて効果を確かめる。電気代の明細で、夜間の使用量が減り、昼の買電が増えすぎていないかを2〜3か月見ます。
- 交換するときは、昼間沸き上げ形と通常の機種の差額を比べる。差額が自宅のケースの15年節約額(全国では約11万〜92万円、中央値54万円)より小さければ元が取れる計算です(差額30万円なら243ケース中215ケース)。
- 補助の申請期限と予算の消化状況に注意する。給湯省エネ2026事業の交付申請は、予算に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)です。予算の消化状況は2026年10月31日午前0時時点で約55%(概算値、給湯省エネ2026事業)でした。
それでも蓄電池を選ぶ理由:購入者と子育て世帯の声(エネがえる独自調査)
試算の上では、卒FIT後の蓄電池の後付けで元を取るのは簡単ではありません。それでも蓄電池を選ぶ人はどんな理由で選んでいるのか。エネがえるが実施した調査から見ていきます。いずれもインターネット調査(各100人前後)で、全国の世帯を代表する数値ではありません。
「元が取れない」と知って買った人の85.6%が満足
投資回収が難しいと知りながら住宅用蓄電池を購入した104人に聞いた調査では、85.6%が「購入して良かった」と回答しました(非常にそう感じる19.3%、ややそう感じる66.3%)。購入した理由(複数回答)は次のとおりです。
| 元を取るのが難しいと知りながら購入した理由 | 回答率 |
|---|---|
| 太陽光と蓄電池のセットでさらに電気代が下がるため | 44.2% |
| 売電単価低下の対策のため | 40.4% |
| 停電時への備え(停電回避)のため | 38.5% |
| CO2排出量の削減や環境への貢献ができるため | 37.5% |
| 昼間の余剰電力を蓄電して夜間使用して自家消費率を高めるため | 37.5% |
| 新しい製品・技術への好奇心・関心を満たすため | 23.1% |
出典:エネがえる運営事務局調べ「住宅用蓄電池購入のメリットに関する実態調査」(独自レポートVol.16)。2024年3月18〜19日、インターネット調査、投資回収が難しいと知りながら住宅用蓄電池を購入した方 n=104。調査結果
「売電単価低下の対策」は、まさに卒FITの家の動機です。ただし試算では、売電単価の低下への対策としては、昼間沸き上げの方が安く同じくらいの効果がありました。蓄電池にしかない価値は、停電時に電気を使えることと、夜の電気まで自給できることです。
小さな子どもがいる家庭では、停電への備えが切実
未就学児の子どもを持つ親104人への調査では、89.4%が停電への備えの重要性を感じ、81.8%が停電への備えとして家庭用蓄電池に関心があると答えました。重要だと感じる理由(重要だと感じた93人の複数回答)の上位は、「寒さや暑さをしのぐことができないから」(74.2%)、「暗がりでは子どもがけがをする危険があるから」(51.6%)でした。
出典:エネがえる運営事務局調べ「災害時の電源確保に関する意識調査」(独自レポートVol.15)。2024年2月15〜19日、インターネット調査、未就学児の子どもを持つ親 n=104。調査結果
蓄電池の購入者・検討者など1,090人への調査でも、購入を考えたきっかけは「光熱費を削減しようと思ったため」と「災害対策をしようと思ったため」がともに約6割でした(エネがえる 家庭用蓄電池の検討者1,090人への調査)。なお、エコキュートの貯湯タンクのお湯や水も、断水時の生活用水として使える場合があります(飲用は不可。使い方は各メーカーの説明に従ってください)。
特集:卒FIT後の選択を6つの角度から測る(反実仮想・値札・順番・制御・停電・保険)
「どれが一番得か」だけでは、卒FIT後の選択は決められません。同じ1時間単位のモデルを使い、6つの角度から測り直しました。
特集の結論
- 何もしないことが一番高くつく。関東・既設4kW・月2万円の例では、昼間沸き上げ(天気連動・上限)をした家より15年で約56万円、毎日昼に沸かす固定設定と比べても約52万円多く支払います。
- やる順番で結果が変わる。まず昼間沸き上げ、蓄電池は補助と目的しだいです。
- 天気を見て昼と夜を選ぶ制御で、昼間沸き上げの効果はさらに増える。九州では約5割(約46%)増えました(翌日の発電を予測できた場合の上限)。
- 停電対策なら5kWhでも効く。冷蔵庫・照明・通信などに絞れば、既設4kW+5kWhで72時間停電のうち約86%の時間で電気を使えました(関東)。
- 昼間沸き上げの後の蓄電池は「保険」。補助なしの実質負担は年約8.4万円(15年・中央値)で、この額を停電と自給の安心にどう見合うと考えるかで決まります。
角度① 反実仮想:「何もしない」と「昼間沸き上げ」の差

| 選択 | 15年間の累積支払い | 「売電を続ける」との差 |
|---|---|---|
| 売電を続ける(何もしない) | 約390万円 | — |
| 昼間沸き上げ(天気連動・上限) | 約334万円 | −56万円(毎日昼に沸かす固定設定では約338万円、−52万円) |
| 蓄電池10kWh(補助なし) | 約483万円 | +93万円 |
| 昼間沸き上げ+蓄電池(東京都補助100万円) | 約362万円 | −28万円 |
補助なしで蓄電池を後付けすると、何もしない場合より15年で約93万円多く支払うことになります。一方、昼間沸き上げは何もしない場合より約56万円(固定設定では約52万円)少なくなります。卒FIT後に本当に損をするのは「蓄電池を買わないこと」ではなく、余った電気を7〜9円で売り続け、夜に22〜30円で買い続けることです。
エリアごとに見ても、順位は同じでした(既設4kW・月2万円・上昇率2%、15年の累積支払い)。
| エリア | 売電を続ける | 昼間沸き上げ | 蓄電池(補助なし) | 両方(補助なし) |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 387万円 | 327万円 | 489万円 | 453万円 |
| 東北 | 384万円 | 317万円 | 497万円 | 452万円 |
| 関東 | 390万円 | 334万円 | 483万円 | 462万円 |
| 中部 | 391万円 | 333万円 | 470万円 | 439万円 |
| 関西 | 392万円 | 340万円 | 487万円 | 468万円 |
| 四国 | 393万円 | 326万円 | 501万円 | 458万円 |
| 中国 | 394万円 | 338万円 | 489万円 | 459万円 |
| 九州 | 400万円 | 366万円 | 503万円 | 492万円 |
| 沖縄 | 393万円 | 337万円 | 472万円 | 462万円 |
角度② 値札の分解:蓄電池150万円のうち、何が埋まり、何が残るか

昼間沸き上げを先にした場合、蓄電池が15年で増やす節約は関東の例で約21万円、東京都以外(8エリアの中央値)で約24万円です。東京都では補助(100万円)とDR実証の上乗せ(10万円)を合わせても約19万円が残ります。東京都以外では約126万円が残ります。この残りが、停電時に電気を使える安心と、夜まで自給できることへの対価です。
角度③ やる順番:何をどの順で選ぶと、何割が得になるか

- 昼間沸き上げ:天気連動(上限)なら243ケースすべて、毎日昼に沸かす固定設定でも240ケースで15年の節約がプラスでした。
- エコキュートの交換時に昼間沸き上げ形を選ぶ(差額30万円と仮定):243ケース中215ケースで、15年の節約が差額を上回りました。差額はメーカー・機種・工事・補助で大きく変わるため、見積もりで確認してください。
- 蓄電池:補助なしでは0ケース、補助10万円/kWhで124ケース。昼間沸き上げの後に足す場合は、補助10万円/kWhでも30ケースです。
角度④ 制御:毎日昼に沸かすか、天気を見て選ぶか

雨や曇りの日に昼に沸かすと、太陽光が足りず、昼の高い電気でお湯を沸かすことになります。そこで、日ごとに「昼と夜のどちらで沸かす方が安いか」を選ぶ天気連動の制御と比べました。
- 全243ケースの中央値で、天気連動は毎日昼に沸かす場合より年約2,600円多く節約できました。
- 効果が大きいのは九州(約46%増)と中部(約16%増)です(各エリアの中央値どうしの比較)。九州は夜間単価が安く、中部は昼間単価が高いため、曇りの日に昼に沸かす損が大きくなります。
- 天気連動の値は翌日の発電を完全に予測できた場合の上限です。実際の機器の予測は完全ではないので、効果はこの差の一部と考えてください。昼に沸き上げ中でも、お湯の不足が予想されるときは夜に沸き上げる機種もあります(三菱電機)。
ヒートポンプの効率と外気温の関係はCOP(成績係数)とは?で解説しています。
角度⑤ 停電72時間:蓄電池の容量と既設太陽光の大きさ

| 設備(関東) | 既設3kW | 既設4kW | 既設6kW |
|---|---|---|---|
| 蓄電池なし(自立運転コンセント1.5kW) | 36% | 37% | 40% |
| 蓄電池5kWh | 82% | 86% | 90% |
| 蓄電池7kWh | 84% | 89% | 92% |
| 蓄電池10kWh | 85% | 90% | 94% |
冷蔵庫・照明・通信・スマートフォンの充電・炊飯などに絞った使い方(約5〜6kWh/日)なら、5kWhの蓄電池でも72時間停電のうち8割以上の時間で電気を使えます。容量を10kWhに増やしても、伸びは数ポイントです。停電が長引くと、毎日どれだけ充電し直せるか(=太陽光の大きさ)が効いてきます。
この試算は曇りや雨が続く日を含む実際の1年の天候を使っているため、平均的な日射を使った蓄電池243ケースの記事の停電試算(4kW+10kWhで約97%)より低めの値になっています。
角度⑥ 保険として考える:昼間沸き上げの後の蓄電池は年約8.4万円の保険料

補助なしの蓄電池の実質負担(蓄電池の価格−15年の節約額)を1年あたりにすると、蓄電池だけなら約6.6万円、昼間沸き上げの後に足す場合は約8.4万円です(中央値)。
停電の価値を金額にすると、普段の停電は低圧の利用者1軒あたり年0.13回・24分(2024年度、OCCTO)とごく短く、価値があるのはまれに起きる長時間の停電です。1回の長時間停電で避けられる損失を、ポータブル電源や発電機の価格帯を参考に3万〜13万円と仮定すると、5年に1回・1回13万円という強めの仮定でも、期待価値(1回の価値×頻度×停電中に電気を使えた時間の割合90%)は年約2.4万円で、実質負担には届きません。
つまり、卒FIT後の蓄電池は期待値で「元を取る」ものではなく、めったに起きないが起きると深刻な事態に、年6万〜8万円程度の保険料を払う選択です。乳幼児や高齢の家族がいる、在宅で医療機器を使う、在宅勤務で通信が止まると困る、といった家庭では、この保険料を払う合理性は十分にあります。停電価値の詳しい考え方は蓄電池243ケースの記事の特集で解説しています。
卒FIT後の判断チェックリスト
| 状況 | おすすめの順番 |
|---|---|
| エコキュートに昼間に沸き上げる設定がある | まず昼間沸き上げに切り替える(曇りの日は夜に沸かす設定があれば使う)。料金プランの条件も確認 |
| エコキュートが古く、交換が近い | 交換時に昼間沸き上げ形(おひさまエコキュートなど)を検討。給湯省エネ2026事業の補助を確認 |
| 電気温水器を使っている | エコキュートへの交換を検討(撤去の加算あり)。昼間沸き上げ形なら効果はさらに大きい |
| 東京都など蓄電池の補助が手厚い地域 | 蓄電池も候補。ただし昼間沸き上げを先にした後の上乗せで採算を確かめる |
| 小さな子ども・高齢の家族・医療機器がある | 停電対策として蓄電池を検討。容量は「何を何日動かしたいか」で決める(5〜7kWhでも効く) |
| 補助がなく、停電への不安も小さい | 蓄電池は待つ。価格が下がるか補助が出たときに再試算する |
| 九州など夜間単価が安いエリア | 昼間沸き上げは「天気連動」が特に重要。固定の昼沸きは損になるケースもある |
昼間沸き上げを始める前に確認すること
- 今の料金プランの条件:夜間にエコキュートを使うことが前提の割引や、季節・時間帯の区切りを確認します。おひさまエコキュート向けの料金プランを用意している電力会社もあります。
- エコキュートの設定:昼間に沸き上げる設定、太陽光と連携する設定があるか。名称はメーカーにより異なります。
- お湯切れの対策:来客や冬場など、お湯を多く使う日は夜にも沸き上げる設定(自動の追加沸き上げ)があるか。
- 太陽光の発電状況:パワーコンディショナの表示やモニターで、昼にどれだけ売っているかを確認します。売っている量が少ない家では効果も小さくなります。
- 冬の朝のお湯の温度:昼に沸かしたお湯を翌朝まで使うため、タンクの放熱で使えるお湯が減る場合があります。使い始めの数週間は、お湯が足りるか様子を見てください。
相談するなら:比較の根拠を見せてくれる販売施工店へ
卒FIT後の提案は、「蓄電池」「エコキュート」「売電先の変更」「EV」など、販売する人によって勧める商品が変わりがちです。相談するときは、次の3点を確かめてください。
- 何と比べた節約額か。「売電を続ける場合」と比べたのか、「昼間沸き上げをした場合」と比べたのか。
- どの料金プラン・単価・売電単価で計算したか。2026年11月の料金改定や燃料費調整を反映しているか。
- 曇りの日・季節の変化を含めた1年分の計算か。晴れた日だけの計算では、昼間沸き上げも蓄電池も効果が大きく見えます。
エネがえるは、販売施工店・メーカー・電力会社などが使う太陽光・蓄電池・エコキュートの経済効果シミュレーションサービスです。エネがえるで日々試算している販売施工店であれば、お客様の電気の使い方と料金プランで、選択肢ごとの差を同じ条件で示せます。※エネがえるは、本記事の発行元である国際航業株式会社が提供しています。
事業者の方へ:本記事と同じ考え方の試算は、エネがえる(ASP・API・試算代行)で行えます。
販売施工店の方へ:卒FITのお客様への説明の型
- 今の損失を見せる:「昼の電気を7〜9円で売り、夜に22〜30円で買っています。その差が毎年◯万円です」
- 安い順に選択肢を並べる:昼間沸き上げ(設定変更・交換)→ 蓄電池 → 両方の順に、それぞれの節約額と初期費用を同じ表で示す。
- 蓄電池は「上乗せ分」で説明する:昼間沸き上げをした後に蓄電池がいくら増やすかを示し、残りは停電・自給の価値として、お客様に判断していただく。
- 補助金を確認する:自治体の蓄電池補助、給湯省エネ2026事業の補助を試算に入れる。
この順番で説明すると、蓄電池を勧めない提案でもお客様の信頼につながり、補助や停電対策の条件がそろったときに蓄電池の提案が通りやすくなります。営業トークの例はエネがえる活用 モデル世帯別の営業トークも参考になります。
よくある質問
卒FITになったら、まず何をすべきですか?
オール電化の家なら、まずエコキュートの昼間沸き上げを検討してください。全国243ケースの試算では、対応機種なら設定変更だけで年約2.9万円(中央値、毎日昼に沸かす設定)浮き、曇りの日は夜に沸かす天気連動なら最大で中央値3.2万円(年0.7万〜4.7万円、翌日の発電を完全に予測できた場合の上限)でした。150万円の蓄電池(中央値2.9万円)と同じくらいです。お使いの機種に昼間に沸き上げる設定があるか、取扱説明書やメーカーで確認し、料金プランの条件も合わせて確かめてください。
卒FIT後に蓄電池を付けると元が取れますか?
補助金なし・15万円/kWh(10kWhで150万円)では、243ケースすべてで15年以内に回収できませんでした。15年で元が取れる価格は中央値5.1万円/kWhです。東京都の水準(10万円/kWh)の補助があれば、関東の27ケース中17ケースで15年以内に回収できましたが、昼間沸き上げを先にした場合は4ケースに減ります。
昼間沸き上げと蓄電池は、両方入れた方が得ですか?
両方入れると1年目の節約額は中央値4.8万円と最も大きくなります。ただし、どちらも同じ「昼の余り」を使うため、昼間沸き上げの後に蓄電池を足した上乗せ分は中央値1.6万円と、蓄電池だけの場合の約半分です。蓄電池の採算は、この上乗せ分で判断してください。
昼間沸き上げは、曇りや雨の日に損になりませんか?
毎日決まって昼に沸かすと、太陽光が足りない日は昼の高い電気でお湯を沸かすことになります。九州の既設3kW・月2.5万円のケースでは、固定の昼沸きで年約2,000円損になりました。曇りの日は夜に沸かす「天気連動」なら、全243ケースで節約がプラスになり、九州では節約額が約5割(約46%)増えました(翌日の発電を予測できた場合の上限)。
エコキュートを交換しないと昼間沸き上げはできませんか?
機種によります。昼間に沸き上げる設定がある機種なら、設定変更で始められます。設定がない場合は、交換時に昼間沸き上げ形(おひさまエコキュートなど)を選ぶ方法があります。差額が自宅のケースの15年節約額(全国では約11万〜92万円、中央値54万円)より小さければ元が取れる計算です(差額30万円なら243ケース中215ケース)。給湯省エネ2026事業の補助(1台7万〜10万円)も使えます。
卒FIT後は、売電先を変えるだけではだめですか?
売電単価が上がれば得になりますが、効果は限られます。関東・既設4kWの例では、卒FIT単価を12円にしても昼間沸き上げの15年の節約額は49万円残りました。売る単価を数円上げるより、夜に22〜30円で買っている電気を自分の太陽光で置き換える方が、得の幅は大きくなります。
停電対策なら、蓄電池は何kWhあればいいですか?
冷蔵庫・照明・通信など約5〜6kWh/日に絞るなら、既設4kWに5kWhの蓄電池で、72時間停電のうち約86%の時間で電気を使えました(関東、曇りの日を含む実際の1年の天候)。10kWhにしても約90%で、伸びは小さくなります。普段どおりに使いたい場合は、容量より太陽光の大きさが効きます。
電気代がこれから上がれば、蓄電池は得になりますか?
得の方向には動きますが、影響は小さいです。関東・既設4kW・月2万円の例では、電気代上昇率を1%から3%に変えても、蓄電池の15年収支の改善は約11万円で、赤字のままでした。蓄電池の価格や補助金の影響の方がはるかに大きくなります。
試算の前提条件(すべて公開)
| 項目 | 設定値 | 出典・根拠 |
|---|---|---|
| 電気料金 | 各エリアのオール電化向け時間帯別プラン(北海道 エネとくスマートプラン、東北 よりそう+スマートタイム、東京 スマートライフS、中部 スマートライフプラン、関西 はぴeタイムR、四国 でんかeプラン、中国 電化Styleコース、九州 電化でナイト・セレクト、沖縄 Eeスマート)。2026年11月改定後の単価(税込) | 北海道電力、東北電力、東京電力EP、中部電力ミライズ、関西電力、四国電力、中国電力、九州電力、沖縄電力 |
| 燃料費調整 | 2026年12月分(政府の支援なし) | 東京電力EP、沖縄電力ほか各社 |
| 再エネ賦課金 | 4.18円/kWh | 経済産業省 |
| 卒FIT後の売電単価 | 北海道8.0・東北9.0・関東8.5・中部7.0・関西8.0・四国7.0・中国7.15・九州7.0・沖縄7.5円/kWh(申込不要の標準メニュー) | 東京電力EP、中部電力ミライズ、九州電力、関西電力、北海道電力、四国電力、中国電力ほか。沖縄は報道に基づく値 |
| 既設太陽光 | 3・4・6kW、設置11年目、劣化0.5%/年。年間発電量は国の想定設備利用率に合わせて補正し、時間ごとの変動はPVGIS(ERA5)の実際の1年を使用 | PVGIS(EU JRC)、調達価格等算定委員会 |
| 家の電気の使い方 | 典型的な1日の形×季節変化(合成値)。月額電気代が1.8万・2.0万・2.5万円になるよう使用量を調整 | 出典なし(合成値)。参考:環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査 |
| エコキュート | 年約2,370kWh(冬は1日約9kWh、夏は約4kWh。北海道・沖縄は季節差を調整)。今の状態は深夜1〜6時に沸き上げ | 仮定(蓄電池243ケース記事と同じ) |
| 昼間沸き上げ | 9〜16時に沸き上げ、ヒートポンプの消費電力は最大1.5kW。効率は昼と夜の気温差1℃あたり2.5%向上(気温はPVGISの同じ年の値) | 時間帯は三菱電機の説明に準拠。出力・効率は仮定(感度分析あり) |
| 蓄電池 | 10kWh、15万円/kWh(工事費込み・税込)、使える容量90%、往復効率88%、劣化1.5%/年、待機電力25W。時間帯別プランに合わせて、翌日を予測した最適な充放電 | 経済産業省(実勢価格)ほか。性能は仮定 |
| 補助金 | 東京都 蓄電池10万円/kWh(DR実証参加で10万円上乗せ)、給湯省エネ2026事業 エコキュート7万〜10万円(電気温水器からの交換は+2万円) | クール・ネット東京、東京都、給湯省エネ2026事業、パナソニック資料 |
| 評価期間・上昇率 | 15年(参考で20年)。電気代上昇率は買う電気だけに適用し、売電単価は一定 | — |
| 停電シミュレーション | 72時間、7時間おき1,247通りの開始時刻。冷蔵庫・照明・通信など約5〜6kWh/日、蓄電池出力3kW、太陽光の自立運転1.5kW | 本モデル(停電前の残量は平常運転から再現) |
| 含めていないもの | エコキュート・蓄電池の保守費や交換費、昼間専用の料金プランへの変更、割引率(現在価値への換算)、ローン金利、EV・V2H | — |
この試算の限界
- 家の電気の使い方とエコキュートの湯量は、典型的な形を使った合成値です。家族の人数や在宅状況で結果は変わります。
- 昼間沸き上げの効率向上(気温差1℃あたり2.5%)とヒートポンプの出力(1.5kW)は仮定です。感度分析では効率向上をゼロにしても15年でプラスでした。貯湯タンクの放熱が沸き上げ時刻で変わる影響は入れていません。
- 昼間沸き上げは、今の時間帯別プランのまま昼に沸かす前提です。おひさまエコキュート向けの料金プランに変えた場合は試算していません(プランにより効果は増減します)。今のプランが夜間の沸き上げを条件にしていないかも確認が必要です。
- 「天気連動」と蓄電池の運転は、翌日の発電と使用量を完全に予測できる前提の上限値です。実機の効果はこれより小さくなります。
- 太陽光の時間ごとの変動は各エリアの実際の1年(2017〜2022年のいずれか)で、年による天候の違いは反映していません。
- エネがえるASPによる照合は、蓄電池243ケース記事で行った構成Cの11ケースを参考として使っています。昼間沸き上げの選択肢はASPで照合していません。
- 関西電力 はぴeタイムRの改定後単価は推計値、中国電力 電化Styleコースの時間帯区分は仮定です。沖縄電力の卒FIT買取単価は報道に基づく値です。
ファクトチェック・エビデンス検証一覧
この記事の主要な数値と主張を、どの方法で検証し、どの根拠に基づいているかを一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・電力会社・公的機関の公式資料)にリンクしています。企業の発表・自社調査は、下の区分(B・C)で区別しています。
検証の方法(4段階)
- 一次情報との照合:単価・制度は、官公庁・電力会社・メーカーの公式資料で値と条件を確認しました(確認日:2026年10月31日)。
- 独立計算モデルによる再計算:8,760時間の計算モデルで243ケース×5つの選択肢を試算しました。コードとケース別データで管理し、前提を変えれば同じ結果を再現できます。
- 実製品による照合(参考):蓄電池243ケース記事でエネがえるASPを使って照合した構成C(卒FIT・既設4kW+10kWh)11ケースと比べ、15年で回収できるケースが0件である点が一致しました。
- 独立レビュー:執筆とは別のAIレビュアーが数値の照合・出典・表現を100点満点で採点し、独立レビュー(85点)で指摘された点を修正し、再採点しました(2回)。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。
根拠の確かさの区分
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| A 一次情報 | 官公庁・電力会社・公的機関の公式資料で確認した値 |
| B 企業・業界資料 | メーカーなどの公式発表・価格。各社の主張を含む |
| C 独自調査 | エネがえる運営事務局のインターネット調査。全国の世帯を代表する値ではない |
| M 計算結果 | 本記事の独立計算モデルの結果 |
| H 仮定値 | 確かな統計がないため置いた値。感度分析や複数のシナリオで示している |
前提条件の検証
| 項目 | 記事での値 | 区分 | 検証結果 |
|---|---|---|---|
| 時間帯別プランの単価・燃料費調整 | 2026年11月改定後、燃料費調整12月分 | A | 作成者が各社の公式資料で確認。関西電力の改定後単価は推計、中国電力の時間帯区分は仮定(開示済み) |
| 再エネ賦課金 | 4.18円/kWh | A | 確認済み |
| 卒FIT後の売電単価 | 7〜9円/kWh | A | 作成者が各社の公式ページで確認。沖縄の7.5円は報道に基づく(開示済み) |
| 給湯省エネ2026事業 | エコキュート7万円(性能加算で10万円)、電気温水器からの交換+2万円、申請は遅くとも2026年12月31日まで | A/B | 国の事業チラシで期間、メーカー資料で金額を確認 |
| 昼間沸き上げの時間帯 | 9〜16時 | B | メーカーの説明に準拠(機種により異なる) |
| 昼間沸き上げの効率向上・出力 | 気温差1℃あたり2.5%、最大1.5kW | H | 仮定。効率向上0〜4%/℃、出力1.0〜2.0kWで感度分析し、どの条件でも15年でプラス |
| 太陽光の発電 | PVGIS(ERA5)の実際の1年、年間量は国の想定に補正 | A/M | 確認済み。曇りの日を含めるため平均値ではなく実年を使用 |
| 家の使い方・エコキュートの湯量 | 合成値 | H | 出典なし(合成値)。月額電気代3水準で幅を確認 |
| 蓄電池の価格・性能 | 15万円/kWh、往復効率88%、劣化1.5%/年、待機25W | A/H | 価格は公的調査の実勢の範囲内の想定値。10〜20万円/kWh、往復効率82〜94%で感度分析 |
| 東京都の蓄電池補助 | 10万円/kWh、DR実証参加で10万円上乗せ | A | 確認済み(令和8年度)。関東エリア全体に当てはめた試算であることを明記 |
結果と主張の検証
| 主張 | 区分 | 検証結果 |
|---|---|---|
| 昼間沸き上げ(天気連動)の1年目の節約は0.7万〜4.7万円(中央値3.2万円)。毎日昼に沸かす固定設定では中央値2.9万円 | M/H | 条件付き。天気連動は翌日の発電を完全に予測できた場合の上限。初期費用0円は対応機種が前提 |
| 補助なしの蓄電池後付けは243ケースすべてで15年以内に回収できない | M | 確認済み。ASP照合(構成C 11ケース)でも0件 |
| 15年で元が取れる蓄電池価格は中央値5.1万円/kWh、昼間沸き上げの後は2.4万円/kWh | M | 確認済み |
| 昼間沸き上げの後、蓄電池の上乗せ効果は約半分(中央値1.6万円) | M | 確認済み |
| 天気連動で九州の節約が約5割(約46%)増える(中央値どうしの比較) | M/H | 条件付き。翌日の発電を完全に予測できた場合の上限値 |
| 停電72時間:既設4kW+5kWhで約86%の時間で電気を使える(関東) | M/H | 条件付き。使い方(約5〜6kWh/日)と出力の想定による |
| 停電1回の価値3万〜13万円、頻度5〜100年に1回 | H | 仮定値。普段の停電統計(年0.13回・24分)はOCCTOで確認 |
アンケート調査の検証
| 主張 | 区分 | 調査の条件 |
|---|---|---|
| 「元が取れない」と知って買った人の85.6%が満足 | C | 2024年3月、インターネット調査、n=104。全国代表ではない |
| 未就学児の親の89.4%が停電への備えを重要と感じる | C | 2024年2月、インターネット調査、n=104(理由はn=93) |
| 購入のきっかけは光熱費の削減と災害対策がともに約6割 | C | 蓄電池の購入者・検討者 n=1,090。設問ごとの回答者数と調査時期は非公表 |
調査は回答者の意識を示すもので、購入率や全世帯の割合を示すものではありません。
試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年10月31日/試算条件の確認日:2026年10月31日。毎月、燃料費調整・再エネ賦課金・補助金の最新情報を確認し、変化があれば再計算して更新します。関連する試算:蓄電池は元が取れない?買わない方がいい?全国9エリア243ケースを実試算/太陽光の余剰電力は「蓄電池」と「お湯」のどちらに回す?/雪国の太陽光は元が取れない?冬の発電ゼロ4パターン×世帯モデル別に実試算






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