公共施設の太陽光は47都道府県でどれだけ違う?本庁舎モデルの回収年数を全都道府県で実試算【2026年10月】

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
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公共施設の太陽光、47都道府県で回収年数はどう違う?エネがえるBiz実試算
公共施設の太陽光、47都道府県で回収年数はどう違う?エネがえるBiz実試算

「うちの県だと、何年で元が取れるのか」。公共施設の太陽光を検討する自治体から、最もよく聞かれる質問です。そこで、需要の形をそろえた同じ本庁舎モデルを47都道府県すべてに置き、エネがえるBizで1県ずつ実際に試算しました。違うのは、日射のデータと、その地域の電力会社の料金だけです。

3つの答え

  1. 同じ本庁舎でも、回収年数は10.1年(長野県)から15.3年(佐賀県)まで、5年以上の差が出ました。47都道府県の中央値は11.3年です(2026年10月分の料金、設置22万円/kW・税抜、電気代上昇3%/年)。消費税を控除できない自治体の実負担に近い税込(24.2万円/kW)では11.2〜16.8年です。
  2. 差の約4分の3は「電気の単価」、約4分の1が「日射」で説明できます。施設が買わずに済む電気1kWhの価値は18.7〜25.4円と約6.7円の幅があり、日射の差(1kWあたり年990〜1,305kWh)よりも結果を大きく動かします。自家消費率は75〜81%で、地域による差はほとんどありません。
  3. 国の値引きが終わった11月以降の単価に置き換えると、回収は8.7〜12.5年に縮みます(推計)。オンサイトPPAが施設にとって得になる県も、10月分料金ではゼロでしたが、11月以降の単価では18道県に増えます。

数値の要点(本庁舎モデル・太陽光=最大デマンド×1.0・蓄電池なし)

  • 回収年数:10.1〜15.3年(中央値11.3年、設備費税抜)。税込では11.2〜16.8年。11月以降の単価での推計は8.7〜12.5年
  • 回収が早い県:長野・三重・静岡・愛知(中部エリア)、高知・徳島(四国)、山梨(関東)、岐阜(中部)。いずれも10.1〜10.4年
  • 回収が遅い県:九州7県(13.8〜15.3年)。削減単価が18.7円/kWhと47都道府県で最も低いため
  • 20年で元が取れる設置単価の上限:25.0〜40.5万円/kW(税抜の見積、消費税を控除できる場合)。消費税を負担する場合は税抜の見積で約22〜36万円/kW
  • 20年NPV:約517万〜3,211万円(割引率2%、設備費税抜)。税込でも全都道府県でプラス(佐賀県は約20万円でほぼゼロ)
  • 設置単価が3万円/kW下がると、回収は約1.3〜1.4年早まる
47都道府県の本庁舎モデルの回収年数を色分けした日本地図と、上位8・下位8の棒グラフ。長野県10.1年が最短、佐賀県15.3年が最長
図1 都道府県別の回収年数(エネがえるBiz実試算、2026年10月分料金)

あなたの都道府県で試す:回収シミュレーター

都道府県を選び、設置単価・補助率・電気代の上昇・料金の基準月・消費税の扱いを変えると、回収年数、20年の正味現在価値、元が取れる設置単価の上限、オンサイトPPAの得失がその場で再計算されます。計算の元データは、本記事のためにエネがえるBizで試算した47都道府県の結果です。

都道府県別 太陽光の回収シミュレーター(本庁舎モデル)

エネがえるBizの47都道府県実試算をもとに、設置単価・補助・電気代上昇などの条件を変えて試せます。

…投資回収年数
…20年の正味現在価値(割引率2%)
…元が取れる設置単価の上限(税抜・/kW)
…初年度の電気代削減
…PPA:施設の得(初年度、事業者IRR4%)

累積キャッシュフロー(割引なし、税抜/税込は選択に従う)

本庁舎モデル(官公庁庁舎・高圧大規模、年間約57万〜59万kWh)、太陽光=最大デマンド×1.0、蓄電池なし、維持費4,000円/kW年(税込時4,400円)、劣化0.5%/年、評価20年。11月以降は各社11月分単価との差をエリア単位で加えた推計。実際の施設は使用量・契約・屋根条件で結果が変わります。

なぜ47都道府県で比べるのか:他県の事例をそのまま使えない理由

公共施設の太陽光は、先行自治体の事例を参考にするのが一般的です。ただ、他県の「回収○年」をそのまま自分の県に当てはめると、説明を誤るおそれがあります。回収年数は、施設の使い方に加えて、その地域の日射とその地域の電力会社の料金で決まるからです。

一方で、実際の事例は施設の規模も使い方も設置条件もばらばらで、地域の違いだけを取り出せません。そこで本記事では、施設の条件をすべてそろえ、地域だけを変えた比較を用意しました。施設の種類による違いは、前回の記事(公共施設の太陽光・蓄電池は元が取れる?6施設類型36ケースを実試算)で詳しく分析しています。本記事はその「地域編」です。

試算の方法:同じ本庁舎モデルを47都道府県に置く

項目設定(47都道府県で共通)
施設本庁舎型。エネがえるBizの業種テンプレート「官公庁庁舎|高圧以上|大規模」で、都道府県ごとに12か月の使用量を設定(年間約57万〜59万kWh)
使い方(需要曲線)官公庁・大規模の平日/土日のロードカーブ。土日・祝日・年末年始(12/29〜1/3)は休庁日
太陽光最大デマンドと同じ容量(166〜187kW)。真南・傾斜10度・基本設計係数0.85・パワコン効率98%。日射は各都道府県の観測地点(Biz標準)
蓄電池なし
電気料金各エリアの高圧業務用の標準メニュー(6,000V)。2026年10月分の料金(Bizの料金データ)。基本料金は導入前の最大デマンドで計算(太陽光による基本料金の削減は見込まない)
投資の前提設置単価22万円/kW(税抜)、維持費4,000円/kW・年、電気代上昇3%/年、発電の劣化0.5%/年、評価20年、割引率2%、補助なし
試算日2026年10月31日(47件をBizで個別に試算し保存)

設置単価22万円/kWは、資源エネルギー庁の調達価格等算定委員会資料にある屋根設置(10kW以上)の中央値に近い水準を、税抜と想定して使っています。関東・関西の料金メニューは、市場価格調整単価にBizの「平均値」を使いました。

結果:回収年数は10.1〜15.3年。上位は中部・四国、下位は九州

47都道府県の回収年数ランキング表。発電量、削減単価、自家消費率、年間削減額を併記。1位長野県10.1年、47位佐賀県15.3年
図2 47都道府県ランキングと、回収年数を決める3つの数字

回収が最も早かったのは長野県(10.1年)で、三重県・静岡県(10.2年)、愛知県(10.3年)と中部エリアが上位に並びました。次いで高知県・徳島県(10.4年)の四国、日射が最も多い山梨県(10.4年)です。最も遅かったのは佐賀県(15.3年)で、九州7県が下位を占めました。

東京都は11.7年で、47都道府県の中では30位です。都市部は電気代が高いという印象を持たれがちですが、高圧の料金単価で見ると、東京電力エナジーパートナーの単価は中部・東北・四国より低く、日射も関東の中では少なめでした。

エリア別のまとめ

エリア(県数)Bizで使った料金メニュー(6,000V)削減単価
10月分
発電量
kWh/kW
回収年数
10月分料金(範囲)
削減単価
11月以降推計
回収年数
11月以降推計(エリア平均)
北海道(1)北海道電力 業務用電力(一般料金)25.4円106711.1年28.4円9.8年
東北(7)東北電力 業務用電力25.0円105910.7〜11.7年28.2円9.9年
関東(8)東京電力EP ベーシックプラン(市場価格調整は平均値)22.9円119310.4〜11.7年24.7円10.3年
北陸(3)北陸電力 業務用電力22.8円106512.1〜12.7年25.5円11.0年
中部(5)中部電力ミライズ 高圧業務用電力FR24.2円121910.1〜10.4年28.2円8.8年
関西(6)関西電力 高圧電力AS(市場価格調整は平均値)21.6円115511.6〜12.5年23.9円10.8年
中国(5)中国電力 業務用電力23.0円111611.2〜12.4年26.9円10.0年
四国(4)四国電力 業務用電力24.0円118910.4〜10.9年26.8円9.5年
九州(7)九州電力 業務用電力A18.7円112513.8〜15.3年22.8円11.9年
沖縄(1)沖縄電力 業務用電力24.3円114311.1年26.1円10.3年

( )内は都道府県の数。削減単価は「太陽光の電気を施設内で使ったことで減った電気代÷その電力量」で、電力量料金・燃料費調整・再エネ賦課金などを含みます(基本料金の削減は含みません)。11月以降推計の方法は後半で説明します。

回収年数を決めるのは日射より「電気の単価」

横軸に太陽光1kWあたりの発電量、縦軸に自家消費1kWhあたりの削減単価をとった47都道府県の散布図。エリアごとに縦の位置がそろい、九州は18.7円で最下段
図3 日射(横)と電気の単価(縦)。円が大きいほど回収が早い

太陽光1kWが1年で減らす電気代は、次の3つの掛け算です。

1kWあたり年間削減額 = 発電量(kWh/kW)× 自家消費率 × 削減単価(円/kWh)

47都道府県の値を見ると、発電量は秋田県の990kWh/kWから山梨県の1,305kWh/kWまで、削減単価は九州の18.7円から北海道の25.4円までの幅がありました。この2つは同じくらいの幅に見えますが、都道府県間のばらつき(対数の分散)を分けると、削減単価が約75%、発電量が約24%、自家消費率は約1%でした(対数の分散を共分散で配分。発電量と自家消費率は逆向きに動くため、単純に分散を比べると約69%・29%・2%)。

図3では、同じエリアの県が横一列に並んでいます。削減単価は電力会社の料金で決まるため、エリアの中ではほぼ同じになるからです。東北のように日射が少なめでも、単価が25.0円と高いため、回収は10.7〜11.7年と全国の中位に入ります。反対に九州は、宮崎県のように日射が多くても、単価が18.7円と低いため13.8年かかります。

エリアごとに、全国中央値に対する1kWあたり年間削減額の差を日射・自家消費率・電気の単価の3要因に分解した横棒グラフ。九州は単価要因でマイナス約18%、中部は日射と単価の両方でプラス12%
図4 全国中央値との差を3つの要因に分ける(エリア平均)

エリア平均で分解すると、九州の不利(−20%)はほぼすべて単価によるものです。中部(+12%)と四国(+9%)は、日射と単価の両方が平均より有利でした。北海道・東北は日射で不利な分を、単価の高さで取り返しています。関東は日射がやや有利で、単価は全国の中央値並みです。

読み方のポイント:「日射が多い県ほど太陽光に向いている」は、自家消費型の公共施設では地域差の4分の1程度しか説明しません。自家消費では、発電した電気の価値は「買わずに済んだ電気の単価」で決まります。地域間の電気料金単価の差のほうが、日射の地域差より回収年数を大きく動かします。

自家消費率は、どの都道府県でも75〜81%

自家消費率を色分けした日本地図と、発電量と自家消費率の散布図。自家消費率は75〜81%の狭い範囲に収まる
図5 都道府県別の自家消費率(太陽光=最大デマンド×1.0)

発電した電気のうち施設内で使えた割合は、最も低い山梨県で75%、最も高い秋田県で81%でした。発電量が多い県ほどやや下がる傾向はありますが、差は小さく、余る発電の割合は地域よりも施設の使い方(土日・祝日に電気を使うかどうか)で決まります。

本庁舎のように平日だけ使う施設では、容量を大きくするほど土日の余剰が増えます。前回の記事では、容量を最大デマンドの1.5倍にすると自家消費率が69〜71%まで下がることを確認しました。どの都道府県でも、容量の決め方は「最大デマンドの0.5〜1.0倍」を出発点にするのが無難です。

いくらまでなら元が取れるか:上限の設置単価は25〜40万円/kW

47都道府県ごとに、20年NPVがゼロになる設置単価を並べた棒グラフ。長野県40.5万円/kWから佐賀県25.0万円/kWまで。基準の22万円/kWを全都道府県が上回る
図6 20年で元が取れる設置単価の上限(NPV=0、割引率2%、電気代上昇3%/年)

見積の妥当性を判断するときは、回収年数よりも「この単価までなら20年で元が取れる」という上限を持っておくと便利です。上限は長野県の40.5万円/kWから佐賀県の25.0万円/kWまででした。中部・四国は37〜40万円/kW、関東は34〜39万円/kW、九州は25〜28万円/kWまでが目安です。

屋根の補強や防水改修、系統連系の工事を含めると、公共施設の設置単価は22万円/kWを上回ることが珍しくありません。九州では、税抜で25〜28万円/kW(県により異なる。消費税を負担する場合は税抜の見積で約22〜25万円/kW)を超えると、20年で元が取れない可能性が高くなります。

エリアごとに、設置単価15〜30万円/kWに対する回収年数を示した折れ線グラフ。設置単価が3万円下がると回収は約1.3年早まる
図7 設置単価と回収年数の関係(エリア平均)
47都道府県×設置単価18〜30万円/kWの回収年数早見表。22万円/kWでは長野県10.1年から佐賀県15.3年、30万円/kWでは13.2年から19.4年
図8 設置単価×都道府県の回収年数早見表(本庁舎モデル、10月分料金)

見積が届いたら、図8で自分の都道府県の行と見積単価の列が交わるところを見てください。たとえば東京都で税抜26万円/kWの見積なら回収は約13.5年、九州の各県では15.8〜17.4年です。

設置単価が1万円/kW下がるごとに、回収は平均で約0.44年早まります。3万円/kWなら約1.3年です。補助を使った場合、補助率1/3で7.1〜10.9年、1/2で5.4〜8.5年になりました(10月分料金)。

11月以降の単価ではどうなるか:回収はエリア平均で0.8〜2.7年早まる

エリアごとに、2026年10月分料金での回収年数(Biz実試算)と、11月以降の単価に置き換えた推計を比べたダンベルチャート。九州は14.6年から11.9年、中部は10.3年から8.8年
図9 10月分料金(Biz実試算)と11月以降の単価(推計)の比較

国の電気・ガス料金支援では、2026年10月分の料金(9月使用分)に高圧1.80円/kWhの値引きが入り、この月で終わりました。Bizの10月分料金で計算した削減単価は、各社が公表する11月分の単価より1.8〜4.1円/kWh低く、この値引きと燃料費調整の違いでおおむね説明できます。さらに、11月分の燃料費調整単価は多くの電力会社で10月分より上がっています。

そこで、11月分の単価が20年間の出発点になると仮定し、各社の11月分の単価(電力量料金+燃料費調整+再エネ賦課金)とBizの10月分の削減単価の差を、エリアごとに削減額へ上乗せして推計しました。単価はエリア平均で1.8〜4.1円/kWh上がり、回収年数は8.7〜12.5年に縮みます(都道府県別では0.8〜2.8年短縮)。燃料費調整は毎月変わるため、幅をもって見てください。最も変化が大きいのは九州(14.6年→11.9年)で、10月分の削減単価が特に低かったためです。関東は値引きの終了分(1.80円)と電力量料金の改定分(0.04円)、沖縄は値引きの終了分だけを上乗せしています。

この推計は、エリア内の各県に同じ単価差を加えた簡易計算です。月ごとの燃料費調整の変化や、季節別単価の重み付けの違いは反映していません。正確な比較が必要な場合は、最新の料金データでBizの試算を更新してください。

前回記事の地域推計との違い:前回の記事では、関東の試算結果に各エリアの発電量の比率(PVGIS)と11月分の単価を当てはめて推計しました(例:北海道の本庁舎8.6年)。本記事の11月推計(北海道9.8年)が長めに出るのは、Bizの都道府県別の日射データでは北海道の発電量が関東より約1割少なく、PVGISの比率(関東より約5%多い)と逆になったためです。都道府県ごとの判断には、本記事のBiz実試算をお使いください。

オンサイトPPAは「得になる県」と「ならない県」に分かれる

都道府県ごとに、施設の削減単価からPPA事業者に必要な単価を引いた差の横棒グラフ。11月以降の単価では長野・三重・静岡・愛知など18道県でプラス、九州7県は大きくマイナス
図10 オンサイトPPAの単価と、施設が買っている電気の単価の差(税込)

屋根を貸して電気を買うオンサイトPPAでは、PPA事業者が成り立つ単価と、施設が今買っている電気の単価の差が施設の得になります。事業者の20年IRR4%を前提に計算すると、事業者に必要な単価(税込)は23.7〜29.2円/kWhでした。1kWあたり施設内で使える発電量が多い県ほど低くなり、山梨県が23.7円で最も安く、青森県が29.2円で最も高くなります。

10月分の料金(値引き込み)では、すべての都道府県でPPAの単価が施設の買電単価を上回り、施設にとっては割高でした。11月以降の単価では、中部5県、四国4県、宮城・岩手・福島・山形・新潟、北海道、広島・岡山、山梨の18道県で施設の得に変わります。一方、九州7県は11月以降の単価でも1kWhあたり2.8〜5.4円割高です。

九州で公共施設のPPAを公募する場合は、自家消費分だけに課金する通常の方式では成り立ちにくく、余剰を自己託送や相対契約で活用する方式や、補助との組み合わせを前提に設計する必要があります。

PPA単価は、設置22万円/kW・維持4,000円/kW年(いずれも税抜)、発電劣化0.5%/年、自家消費分のみ課金・余剰の売電収入なし、20年固定、消費税10%で計算しました。事業者が負担する固定資産税・保険は含めていないため、実際の提示単価はさらに高くなる可能性があります。

20年で見ると全都道府県でプラス、ただし差は約6倍

都道府県別の20年の正味現在価値。設備費税抜では長野県約3,211万円から佐賀県約517万円。税込24.2万円/kWでも全都道府県でプラス
図11 20年の正味現在価値(割引率2%、電気代上昇3%/年)

20年間の電気代削減から設備費と維持費を差し引いた正味現在価値(NPV)は、長野県の約3,211万円から佐賀県の約517万円まで、約6倍の差がありました。自治体の一般会計は消費税を控除できないため(水道・病院などの公営企業会計は一部控除できます)、設備費を税込(24.2万円/kW、維持費4,400円/kW年)にすると、回収年数は11.2〜16.8年に延びます。それでもNPVは全都道府県でプラスでした(佐賀県は約20万円とほぼゼロ)。

電気代が上がらないと仮定すると、福岡県・佐賀県・鹿児島県では20年以内に回収できず、大分県(19.4年)・長崎県(19.7年)もぎりぎりです。九州の自治体が説明資料を作る場合は、電気代上昇の前提を明記したうえで、上昇がない場合の結果も併記するのが安全です。

47都道府県の試算結果一覧

都道府県エリア太陽光発電量
kWh/kW
削減単価
円/kWh
自家
消費率
年間削減
(初年度)
回収年数
(10月分料金)
回収年数
(11月以降推計)
上限単価
(税抜・/kW)
20年NPV
長野県中部174kW124724.2円76%399万円10.1年8.7年40.5万円3,211万円
三重県中部173kW119924.2円78%394万円10.2年8.7年40.1万円3,139万円
静岡県中部174kW124124.2円76%395万円10.2年8.8年40.1万円3,148万円
愛知県中部173kW122024.2円77%392万円10.3年8.8年39.9万円3,096万円
高知県四国177kW121324.0円77%397万円10.4年9.2年39.5万円3,099万円
徳島県四国166kW121524.0円77%371万円10.4年9.3年39.4万円2,882万円
山梨県関東171kW130522.9円75%382万円10.4年9.6年39.2万円2,948万円
岐阜県中部172kW118724.2円78%384万円10.4年8.9年39.2万円2,965万円
宮城県東北172kW112325.0円77%373万円10.7年9.4年38.0万円2,753万円
愛媛県四国173kW116724.0円77%374万円10.8年9.6年37.8万円2,738万円
茨城県関東167kW119622.9円78%356万円10.9年10.1年37.3万円2,547万円
香川県四国175kW116124.0円76%373万円10.9年9.8年37.2万円2,656万円
岩手県東北176kW107925.0円79%374万円10.9年9.6年37.1万円2,658万円
北海道北海道178kW106725.4円78%375万円11.1年9.8年36.7万円2,610万円
群馬県関東170kW122022.9円75%358万円11.1年10.2年36.7万円2,491万円
沖縄県沖縄187kW114324.3円76%393万円11.1年10.3年36.6万円2,726万円
福島県東北171kW108925.0円77%359万円11.1年9.8年36.6万円2,489万円
広島県中国172kW117423.0円77%358万円11.2年9.5年36.1万円2,433万円
栃木県関東171kW116322.9円78%355万円11.2年10.4年36.1万円2,409万円
山形県東北172kW106125.0円78%357万円11.2年9.9年36.0万円2,412万円
岡山県中国170kW117622.9円77%352万円11.2年9.5年36.0万円2,380万円
埼玉県関東175kW118322.9円77%362万円11.3年10.4年35.9万円2,436万円
神奈川県関東173kW117622.9円77%357万円11.3年10.4年35.8万円2,390万円
新潟県東北177kW104125.0円79%364万円11.3年10.0年35.7万円2,423万円
千葉県関東172kW116322.9円77%351万円11.4年10.5年35.3万円2,289万円
兵庫県関西168kW119921.6円78%339万円11.6年10.4年34.8万円2,158万円
大阪府関西176kW119321.6円78%352万円11.6年10.5年34.5万円2,208万円
秋田県東北176kW99025.0円81%351万円11.7年10.3年34.4万円2,184万円
青森県東北178kW102925.0円77%354万円11.7年10.4年34.2万円2,174万円
東京都関東178kW114022.9円76%353万円11.7年10.9年34.2万円2,168万円
和歌山県関西175kW119721.6円76%346万円11.8年10.6年34.1万円2,114万円
山口県中国170kW111023.0円77%335万円11.8年10.1年33.9万円2,016万円
滋賀県関西168kW113021.6円79%325万円12.1年10.9年33.2万円1,876万円
石川県北陸173kW108422.8円78%333万円12.1年10.8年33.0万円1,898万円
福井県北陸170kW107222.8円79%327万円12.1年10.8年32.9万円1,857万円
鳥取県中国172kW106623.0円78%330万円12.2年10.3年32.8万円1,866万円
奈良県関西173kW111221.7円78%326万円12.4年11.2年32.1万円1,743万円
島根県中国166kW105523.0円77%312万円12.4年10.6年32.0万円1,663万円
京都府関西173kW109521.6円79%323万円12.5年11.3年31.7万円1,686万円
富山県北陸173kW103922.8円78%318万円12.7年11.3年31.2万円1,590万円
宮崎県九州177kW120018.7円75%299万円13.8年11.3年28.2万円1,093万円
熊本県九州175kW116118.7円77%294万円13.9年11.4年27.9万円1,037万円
大分県九州170kW110918.7円77%273万円14.6年11.9年26.4万円755万円
長崎県九州177kW111318.7円76%281万円14.8年12.1年26.0万円716万円
福岡県九州176kW109218.7円77%277万円14.9年12.2年25.7万円656万円
鹿児島県九州179kW111918.7円75%281万円14.9年12.2年25.7万円667万円
佐賀県九州174kW108218.7円76%267万円15.3年12.5年25.0万円517万円

回収年数の順。上限単価は20年NPV=0となる設置単価(税抜)。20年NPVは設備費税抜・割引率2%。11月以降推計はエリアごとの単価差を加えた簡易推計。

自分の自治体で使うときの3つのステップ

  1. 上の一覧で、自分の都道府県の「上限単価」と「回収年数」を確認する。上限単価は税抜の見積と比べる値で、消費税を負担する場合は約1割低く見てください。同じ本庁舎モデルなので、都道府県の間で公平に比べられます。
  2. 施設の種類で補正する。上下水道・病院など24時間使う施設は本庁舎より回収が2〜3年早く、学校・支所は本庁舎と同程度です(前回記事の関東の試算)。
  3. 実際の施設のデータで試算し直す。12か月分の電気料金の明細(または30分値)と屋根の面積があれば、施設ごとの回収年数・上限単価・PPAの得失を試算できます。

議会・住民への説明で使える一文の例

「○○県内の本庁舎と同じ規模・使い方の施設に、最大デマンドと同じ容量の太陽光を設置した場合、2026年10月分の電気料金で試算すると回収は約△年(電気代上昇3%/年、設置22万円/kW・税抜)、20年で元が取れる設置単価の上限は税抜の見積で約□万円/kW(消費税を負担する場合は約☆万円/kW)です。料金の値引きが終わった11月以降の単価では、回収は約◇年に縮む見込みです。」

この試算の限界

  • 需要は業種テンプレートによるモデル値です。実際の庁舎の使用量・使い方とは異なります。
  • 日射は各都道府県のBiz標準の観測地点の値です。同じ県内でも、地点・積雪・周囲の影で発電量は変わります。積雪による発電の減少は個別に確認してください。
  • 料金は各エリアの高圧標準メニュー1種類で、新電力や入札で決めた単価とは異なります。入札単価が低い自治体では、回収が遅くなります。
  • 基本料金の削減は見込んでいません。屋根の補強・防水改修、系統連系工事、撤去費、保険、固定資産税は含めていません。
  • 11月以降の推計は、エリア単位の単価差を加えた簡易計算です。

「うちの施設」で試算するなら

本記事の試算は、すべてエネがえるBizの画面で、条件をそろえて1件ずつ行いました。同じ方法で、実際の施設の使用量と料金契約、屋根の条件を入れれば、施設ごとの回収年数、上限の設置単価、PPAとの比較を、前提を開示した形で示せます。複数の施設をまとめて比較し、着手の順番を決める試算代行(エネがえるBPO)にも対応しています。

エネがえるBizの機能と画面を見る/施設の試算代行(エネがえるBPO)を相談する

よくある質問

47都道府県で回収年数が最も短いのはどこですか。

同じ本庁舎モデルでは長野県の10.1年が最短で、三重県・静岡県(10.2年)、愛知県(10.3年)が続きました(2026年10月分の料金、設置22万円/kW、電気代上昇3%/年)。中部エリアは日射と電気の単価の両方が全国平均より有利でした。

九州で回収年数が長いのはなぜですか。

九州電力の高圧業務用料金で計算した削減単価が18.7円/kWhと、47都道府県で最も低かったためです。日射は全国平均並み(1,082〜1,200kWh/kW、全国平均1,140)ですが、太陽光の電気で買わずに済む電気の単価が低いため、削減額が小さくなります。11月以降の単価では、回収は平均14.6年から11.9年に縮む見込みです。

日射が多い県ほど有利ではないのですか。

自家消費型では、日射より電気の単価の影響が大きくなります。47都道府県のばらつきを分けると、削減単価が約75%、発電量が約24%を説明していました。日射が最も多い山梨県(1,305kWh/kW)は上位ですが、単価の高い長野県や三重県のほうが回収は早くなりました。

東京都の回収年数は何年ですか。

本庁舎モデルで11.7年(2026年10月分の料金)、11月以降の単価での推計は約10.9年です。20年で元が取れる設置単価の上限は約34.2万円/kWでした。

オンサイトPPAで導入すれば、どの県でも得になりますか。

なりません。事業者IRR4%を前提にすると、10月分の料金(値引き込み)ではすべての都道府県でPPAが割高でした。11月以降の単価では18道県で施設の得になりますが、九州7県は1kWhあたり2.8〜5.4円割高です。

補助金を使うと回収年数はどうなりますか。

設備費の1/3の補助で7.1〜10.9年、1/2の補助で5.4〜8.5年になりました(10月分の料金、電気代上昇3%/年)。

この結果をそのまま予算要求に使えますか。

都道府県間の比較や、見積の妥当性を確認する目安としては使えますが、予算要求や議会説明には、実際の施設の使用量・料金契約・屋根の条件で試算し直した結果を使ってください。本記事の需要はモデル値です。

試算は再現できますか。

できます。エネがえるBizで、業種テンプレート「官公庁庁舎|高圧以上|大規模」と地域の都道府県を選び、ロードカーブを官公庁・大規模(平日/土日)、太陽光を最大デマンドと同じ容量(真南・傾斜10度)、蓄電池なし、料金を各エリアの高圧業務用メニューに設定すると、同じ条件で試算できます。

試算の前提条件と出典

  • 試算ツール:エネがえるBiz v1.1(2026年10月31日、47件を個別に試算・保存)
  • 料金メニュー:各エリアの高圧業務用標準メニュー(6,000V)、2026年10月分。関東・関西は市場価格調整単価にBizの平均値を使用
  • 国の電気・ガス料金支援:高圧は2026年8月分1.80円、9月分2.30円、10月分1.80円/kWh(7〜9月使用分)。九州電力送配電(2026年6月12日)、出光興産(2026年6月30日)
  • 11月分の単価:北海道電力、東北電力、東京電力EP、北陸電力、中部電力ミライズ、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力の各料金表と燃料費調整単価(2026年10月31日確認)
  • 設置単価:資源エネルギー庁 調達価格等算定委員会資料の屋根設置の中央値を参考に22万円/kW(税抜)と想定
  • 投資評価:維持費4,000円/kW年、電気代上昇3%/年、劣化0.5%/年、評価20年、割引率2%、補助なし(感度:補助1/3・1/2、税込、上昇なし)
  • PPA:事業者IRR4%、20年固定、自家消費分のみ課金、消費税10%
  • 分析:国際航業株式会社 エネがえる(試算の再現手順は「よくある質問」に記載)
著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

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エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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