結論から言います。上下水道の電気代を下げる一番の近道は、設備を買うことではなく「配水池に水を貯めて、ポンプを動かす時間をずらす」ことでした。浄水場・下水処理場(日量1万/5万/20万m³)と配水ポンプ場の7施設を、関東・関西・九州の2026年11月以降の単価で、運用2通り×蓄電池3通り×電気代の上昇率3通りの297ケース、1時間ごとに試算しました。需要に合わせて動く配水ポンプを1日の中で平らに動かすだけで、契約電力は浄水場で約8%、配水ポンプ場で約27%下がり(合成した需要の形の場合)、投資ほぼゼロで年約43万〜683万円(税抜)安くなります。太陽光は全99ケースで回収約6.5〜9.4年と、シリーズの業種の中でも早い部類です。24時間止まらない需要があり、発電をほぼ捨てずに使えるためです。一方、蓄電池は198ケースすべてで15年では回収できず、配水池でならした後は電池の価値が約5分の1に縮みました。下水処理場では、消化ガス発電をFITで売ると20年の正味が自家消費の約1.7〜2倍になります。
3つの答え
- 最初の一手は「配水池でならす」。投資ほぼゼロで契約電力が約8〜27%下がる。(合成した需要の形の場合)需要に合わせて動く配水ポンプ(浄水場はポンプ電力の5割、ポンプ場は全量と仮定)を、その日の平均の流量で運転すると、日量5万m³の浄水場(関東)で基本料金が年約256万円、配水ポンプ場で年約165万円下がります(税抜)。必要な貯留は1日の平均流量の約1.5〜2.9時間分で、配水池の容量の範囲で収まる計算です。
- 太陽光は「置ける面積」が上限。回収は約6.5〜9.4年だが、まかなえるのは電力の約4〜15%。浄水場・下水処理場は昼夜を問わず電気を使うため、太陽光の自家消費率は全ケースで99%以上でした。日量5万m³の浄水場(関東、600kW)では20年の正味が約2.2億円(税抜)です。ただし、池の上の架台などで設置費が4割上がると回収は約10年に延びます。
- 蓄電池は後回し。下水処理場は消化ガス発電、浄水場はポンプのインバータ化が先。蓄電池の15年の損益分岐価格は最大でも約12.8万円/kWhで、想定価格14万円/kWh(税抜)に約1割届きませんでした。消化ガス発電は日量5万m³でFIT売電なら回収約5.9年、配水ポンプのインバータ化は単純回収約1.8〜8.5年(関東、削減率10〜25%)です。
数値の要点
- 電気代は水1m³あたり約3〜15円(税抜、いまの運用)。浄水場約8.5〜11.1円、下水処理場約9.5〜15.4円、配水ポンプ場約2.9〜3.1円。全国の給水原価182.84円/m³・汚水処理原価147.82円/m³(令和6年度決算)の約2〜10%です。
- 上下水道で日本の電力の約1.5%(年約150億kWh)。浄水場は約5,000か所、下水処理場は約2,200か所あります(環境省)。
- 水道は赤字構造、下水道は使用料で費用をまかなえていない。供給単価177.09円は給水原価を5.75円下回り、下水道の経費回収率は94.2%です(総務省、令和6年度決算)。
- DRの収入は電気代の約0.2〜2.0%。容量市場(発動指令電源)の2029年度向け約定価格×受け取り50%の仮定で、浄水場・ポンプ場が向きます。
- 何もしない20年の差:日量5万m³の浄水場(関東)で、運用の見直し+インバータ化+太陽光を行うと、投資約1.59億円を含めても20年で約4.7億円(水1m³あたり約1.3円)安くなります。

なぜ今、上下水道の電気代を「経営の数字」として試算するのか
上下水道は、人口減少で料金収入が減る一方、高度成長期に整えた管路・施設の更新と、物価・人件費・電気代の上昇に同時に向き合っています。総務省の令和6年度決算では、水道事業(用水供給を除く)の供給単価177.09円/m³は給水原価182.84円/m³を5.75円下回り、令和6年度中に料金改定を行った水道事業は130事業(前年度91事業)でした。下水道は汚水処理原価147.82円/m³に対して使用料単価139.27円/m³、経費回収率94.2%で、他会計からの繰入金の53.9%が下水道事業に向かっています。
電気代は原価の約2〜10%と大きくはありませんが、料金改定のように議会と住民の理解を経なくても、施設の運用と投資で毎年確実に動かせる費用です。しかも上下水道は日本の電力の約1.5%を使う大口の需要家で、行政の中でもCO2の排出が多い分野です。2024年4月1日には水道整備・管理行政が厚生労働省から国土交通省に移り、上下水道を一体で見る体制になりました。国は上下水道施設での太陽光の導入目標(2022〜2030年度に上水道107,000kW・下水道160,000kW)を掲げ、水インフラの再エネ・省エネ設備に補助(1/2・1/3)を出しています。「どの打ち手から、いくら効くのか」を施設の電気の形から数えておくことが、料金と更新の議論の土台になります。
経営課題からエネルギー費の打ち手までを4段で整理する
エネがえるの業種別のエネルギー費マップと同じ4段(経営課題→エネルギー費の構造→打ち手の順番→本試算の位置づけ)で、上下水道を整理します。
① 経営課題:料金を上げにくいまま、更新と物価高を背負う
地方公営企業として独立採算が原則ですが、人口減少で有収水量が減り、施設は過大になっていきます。更新投資は増え、委託料・人件費・薬品費・電気代は上がります。料金改定には時間と説明が必要で、すぐには転嫁できません。加えて、地方公共団体実行計画(事務事業編)の中で、上下水道は削減量の大きな部門として目標を求められます。「費用を下げながらCO2も減らし、しかも水質と安定給水は1秒も落とせない」のが上下水道の制約です。
② エネルギー費の構造:ポンプと送風機の電気が大半。山は「水の動き」で決まる
水道では、電力の約6割が送水・配水のポンプで使われます(水コン協の資料)。下水道では、反応タンクに空気を送る送風機、流入・送水のポンプ、汚泥の濃縮・脱水・焼却が主な用途です。どちらも24時間止まらないため電力量(kWh)が大きく、高圧・特別高圧の基本料金は「年間の最大需要」で決まります。最大需要をつくるのは、朝夕の水の使用に合わせて動く配水ポンプや、平日の日中に動かす汚泥処理です。熱は、下水の消化槽の加温や汚泥の乾燥・焼却で使い、消化ガスを燃料に回せます。
③ 打ち手の順番:設備を買う前に「水を貯めて時間をずらす」
業種別マップの基本の順番(運用・契約→省エネ→電化・熱転換→創エネ→蓄エネ・蓄熱→調達→モビリティ)を上下水道向けに読み替えると図2になります。上下水道には配水池・浄水池という「水の蓄電池」がすでにあるため、蓄エネの多くは運用(①)で先に取れます。下水の消化ガスは「熱」と「創エネ」の両方にまたがる資源です。

④ 本試算の位置づけ
本記事は③のうち、①運用(配水池でならす)、②省エネ(配水ポンプのインバータ化)、④創エネ(太陽光・消化ガス発電)、⑤蓄エネ(蓄電池)、⑦DRを、施設単位の8,760時間のモデルで数値化したものです。送風機の風量制御・小水力・下水熱・汚泥の燃料化・調達(再エネメニュー)は試算に含めていません。自治体の施設全体(庁舎・学校など)の太陽光は自治体の公共施設の試算、学校は学校の試算、敷地の外の太陽光から電気を買う方法はオフサイトPPAの試算、DRの仕組みと需要家の受け取りはDRの試算を参照してください。
検証の方法:7施設×3エリア×運用2×蓄電池3×電気代の上昇率3=297ケース
施設を1つ置き、その電気を1時間ごと(年8,760時間)に計算しました。前提はすべて記事末尾の表で公開しています。
| 軸 | 水準 |
|---|---|
| 施設 | 浄水場 日量1万/5万/20万m³(1m³あたり0.45/0.45/0.40kWh)、下水処理場 日量1万/5万/20万m³(0.60/0.50/0.45kWh)、配水ポンプ場 日量3万m³(0.12kWh)。年間の電力は約131万〜3,285万kWh |
| 運用 | いまの運用(配水ポンプが水の使用に合わせて動く)/配水池でならす(その日の平均の流量で運転)。下水処理場はいまの運用のみ |
| 太陽光 | 施設の上部・用地に置ける量(浄水場200/600/1,500kW、下水処理場250/1,000/2,500kW、ポンプ場50kW)。逆潮流なし |
| 蓄電池 | なし/契約電力×0.2時間分/0.4時間分(太陽光ありの上に追加) |
| エリア | 関東(東京電力EP)・関西(関西電力)・九州(九州電力)の高圧の2026年11月以降の単価。日量20万m³は特別高圧(仮定で補正) |
| 電気代の上昇率 | 年1%/2%/3%(本文の数値は特記なければ2%) |
| 追加の分析 | 配水ポンプのインバータ化(削減率10/15/25%)、消化ガス発電(下水 日量5万・20万m³、自家消費とFIT/FIPの比較)、DR(容量市場の発動指令電源)、太陽光の感度、何もしない場合との20年の比較 |
需要の置き方:水道は、ポンプ6割・浄水処理3割・その他1割とし、ポンプの半分(配水分)が時間別の水の使用(朝7〜8時と夕方18〜19時に山、深夜に谷)に合わせて動くとしました。下水は、送風機約45%・ポンプ20%・汚泥処理25%・その他10%で、流入は水の使用から約2時間遅れ、日量1万・5万m³の脱水機は平日の日中に運転、日量20万m³は焼却を含め24時間運転としました。いずれも施設の実データではなく合成プロファイル(仮定)です。年間の電力の原単位は、全国の下水道(約75億kWh÷約147億m³=約0.51kWh/m³)と照らして置いています。
何で決まるのか:1kWhは約20〜22円、基本料金は1kWで年約2.0万〜2.4万円
施設の電気代は、使った量にかかる単価と、年間の最大需要(契約電力)にかかる基本料金の2つで決まります。
| エリア | 電力量料金+燃料費等調整+再エネ賦課金(税抜、1kWhあたり) | 基本料金(税抜、契約電力1kWあたり年、力率割引後) |
|---|---|---|
| 関東(東京電力EP 高圧ベーシックプラン) | 約21.0円 | 約2.45万円 |
| 関西(関西電力 高圧電力AS) | 約21.3円(夏季 約22.2円) | 約2.04万円 |
| 九州(九州電力 業務用電力A) | 約19.5円(夏季 約20.3円) | 約2.17万円 |
| 特別高圧(日量20万m³、仮定) | 上記より約0.9円安い | 上記の0.75倍(約1.5万〜1.8万円) |
水1m³あたりに直すと、いまの運用の電気代は浄水場で約8.5〜11.1円、下水処理場で約9.5〜15.4円、配水ポンプ場で約2.9〜3.1円でした(図3)。燃料費調整が1円/kWh動くと、浄水場の電気代は水1m³あたり約0.4円動きます。小さな下水処理場ほど1m³あたりの電力が多い(本試算では0.60kWh/m³の仮定)ため、電気代の重みが大きくなります。

結果①:配水池でポンプをならすだけで、契約電力が約8〜27%下がる
需要に合わせて動く配水ポンプを、その日の平均の流量で平らに動かすと、年間の最大需要は浄水場で約8.4%、配水ポンプ場で約27.1%下がりました(図4)。基本料金だけで、浄水場 日量1万m³で年約43万〜51万円、5万m³で約214万〜256万円、20万m³で約569万〜683万円、配水ポンプ場で約138万〜165万円(税抜)安くなります。使う電力量は同じ前提なので、削減はすべて基本料金です。
必要な貯留量は、1日の平均流量の約1.5時間分(浄水場の配水分)〜約2.9時間分(ポンプ場)でした。配水池は、一般に計画一日最大給水量の12時間分程度を標準とする設計の考え方があり(水道施設設計指針)、多くの施設で容量の範囲に収まる計算です。ただし、水圧・残留塩素・滞留時間の管理、運用水位の上下限、配水区域の構成で実際に動かせる量は変わります。高圧の契約電力は実量制で、その月を含む過去1年の最大需要で決まるため、効果が基本料金に表れるのは、ならした運用を1年続けた後です。

結果②:太陽光は全99ケースで回収約6.5〜9.4年。ただし電力の約4〜15%まで
太陽光(逆潮流なし)は、全99ケース(3エリア×電気代の上昇率3×運用2通りを含む)で回収約6.5〜9.4年でした。電気代上昇2%・いまの運用では約6.7〜9.0年で、中央値は関西約6.9年、関東約7.4年、九州約8.1年です(図5)。浄水場・下水処理場は夜も休日も電気を使うため、発電した電気は全ケースで99%以上を施設内で使えました。昼の需要が少ない倉庫や学校のように「余りを捨てる」問題がほとんど起きないことが、回収を早くしています。
20年の正味(関東、税抜)は、浄水場 日量1万m³(200kW)で約0.64億円、5万m³(600kW)で約2.19億円、20万m³(1,500kW)で約5.39億円、下水処理場 日量1万m³(250kW)で約0.89億円、5万m³(1,000kW)で約3.80億円、20万m³(2,500kW)で約9.04億円、配水ポンプ場(50kW)で約0.20億円でした。初年度の削減のうち約5〜17%(いまの運用の場合。ならした後は約6〜20%)は、昼の最大需要が下がることによる基本料金の低下です。これは晴れた日に最大需要が出る年の計算で、曇りや雨の日に最大需要が出れば、この分は小さくなります。

一方で、太陽光でまかなえるのは年間の電力の約4〜15%でした(図6)。施設の電力量に対して、置ける面積が足りないためです。日量20万m³の浄水場では1,500kWを置いても約6%にとどまります。上下水道の脱炭素は、太陽光だけでは届かず、省エネ・消化ガス・調達(再エネメニューやオフサイトPPA)を重ねる必要があります。

結果③:蓄電池は198ケースすべてで15年では回収できない
太陽光ありの上に蓄電池(契約電力×0.2時間分・0.4時間分)を足し、最大需要を削った場合の15年の損益分岐価格は、いまの運用で約2.4万〜12.8万円/kWh、配水池でならした後は約0.2万〜2.5万円/kWhでした(図7)。想定価格14万円/kWh(税抜)に対し、最大の約12.8万円でも約1割届かず、198ケースすべてで15年では回収できません。最大需要の削減は完全予見の7割、初年度の基本料金の低下は1/12(実量制)と仮定しています。
理由は2つです。上下水道の山は朝夕や平日の日中に数時間続き、0.2〜0.4時間分の電池では削れる量が小さいこと。そして、浄水場とポンプ場にはすでに配水池という「水の蓄電池」があり、ならした後は電池で削れる山がほとんど残らないことです。日量5万m³の浄水場(関東)では、いまの運用なら損益分岐は約9.2万円ですが、ならした後は約1.8万円に下がりました。下水処理場(日量1万・5万m³)は損益分岐が約11.9万円と比較的高く、平日日中の汚泥処理が山をつくっているためです。脱水機の運転時間の分散など、下水でもまず運用で山を下げられないかを見るのが先です。

結果④:配水ポンプのインバータ化は単純回収約1.8〜8.5年
需要に合わせて動く配水ポンプを、バルブの開度で流量を絞る運転から、回転数を変える運転(インバータ化)に替えた場合を試算しました(図8)。削減率は既設の制御方式とポンプの特性で大きく変わるため、配水分の電力の10/15/25%の3通りとしています。関東では、15%の場合の単純回収は浄水場で約5.2〜5.6年、配水ポンプ場で約3.0年、10〜25%の全体で約1.8〜8.5年でした(3エリア全体では約1.8〜9.1年)。日量5万m³の浄水場(モーター約962kW、費用約4,810万円の仮定)で、15%の削減は年約37万kWh、電気代は年約921万円(関東、税抜)です。
国の水インフラの補助では、インバータなど省CO2型設備は削減率15%以上30%未満で1/3、30%以上で1/2の補助率が示されています(令和6〜10年度の事業)。ポンプの更新の時期に合わせて回転数制御と高効率モーターを入れるのが、最小の追加費用で済むやり方です。

結果⑤:消化ガス発電は、自家消費よりFIT売電のほうが20年の正味が約1.7〜2倍
下水汚泥を消化槽で発酵させると、メタンを含む消化ガスが出ます。日量5万m³の下水処理場で、消化ガスを年約207万kWh(施設の電力の約23%相当、290kW)発電する場合、設置費約3.8億円(約131万円/kW、仮定)に対して、FITで売ると回収約5.9年・20年の正味約9.0億円、自家消費では回収約9.4〜10.4年・正味約4.5億〜5.4億円でした(図9、電気代上昇2%)。2026年度のFITのメタン発酵ガスの調達価格は35円/kWh(税抜、20年)で、買う電気の単価(約20〜22円)より高いためです。
日量20万m³(1,170kW、年約828万kWh、電力の約25%相当)では、1,000kW以上のためFIPとなり、市場価格に連動するので実収入は下振れしえます。35円相当で概算すると回収約4.5年、自家消費では約7.8〜8.6年です。2026年度のFITの新規認定(1,000kW未満)には地域活用要件があり、またFITで売った電気の環境価値は施設には残らないため、CO2の削減として自治体の計画に計上する場合は扱いを確認する必要があります。消化槽の加温には発電の排熱を使う前提です。ガスの量(下水1m³あたり0.06m³)、発電効率、設置費・保守費は仮定で、汚泥の性状・消化槽の有無で大きく変わります。

調達と地域脱炭素:自己所有かPPAか、そして施設の外の電気
太陽光を自分で持つ(自己所有)か、事業者が設置して電気を買う(オンサイトPPA)かも比べました。関東で太陽光1kWhが減らす電気代は、電力量料金分で約21.0円/kWh(特別高圧は約20.1円)、昼の最大需要が下がる基本料金分を含めると約22.6〜25.2円/kWh(税抜、初年度)です。PPAの単価を15円/17円/kWh(税抜、20年固定、仮定)とすると、需要家の20年の削減の合計は浄水場 日量5万m³(600kW)で約1.80億円/約1.53億円、下水処理場 日量5万m³(1,000kW)で約3.23億円/約2.79億円でした(電気代上昇2%)。同じ施設の自己所有の20年の正味は約2.19億円・約3.80億円で、初期費用を出せるなら自己所有のほうが20年で約1.1〜1.5倍残ります(7施設全体)。一方、PPAは初期投資と維持管理を事業者が持つため、起債や更新投資の枠を他に回せます。どちらを選ぶかは、20年の総額だけでなく、債務負担行為の設定、施設の更新・統廃合の計画との整合で決めます(自治体の財源の比べ方は自治体の公共施設の試算)。
太陽光でまかなえるのは電力の約4〜15%なので、残りの脱炭素は調達で埋めることになります。配水池・調整池・処理場の空き地など電気をあまり使わない場所で発電し、自己託送やオフサイトPPAで別の施設に送る方法は、環境省の資料でも余剰電力の活用策として整理されています。再エネメニューや地域新電力からの調達を含め、市町村全体の地域脱炭素の計画の中で、上下水道を「大口の需要家」かつ「発電の場所」として位置づけるのが近道です。
結果⑥:DRの収入は電気代の約0.2〜2.0%。配水池のある施設が向く
容量市場の発動指令電源として、年12回・3時間・平日9〜20時の発動に応じる場合を試算しました(図10)。2029年度向けの約定価格(関東・九州 約15,111円/kW・年、関西 12,388円)×需要家の受け取り50%(仮定)で、出せるkWは浄水場で平均のポンプ電力の5割、ポンプ場で6割、下水処理場で送風機・汚泥処理の1割としました。年間の受け取りは、浄水場 日量5万m³で約214万円(関東、電気代の約1.1%)、配水ポンプ場で約62万円(約1.8%)、下水処理場 日量5万m³で約55万円(約0.2%)です。
国土交通省も、浄水池の貯留量を使ってポンプを部分的に止める・動かすことで、水道施設がVPP(仮想発電所)に参加できると整理しています。ポンプを止めても配水池の水で給水が続く時間の範囲で応じるのが前提で、下水処理場は水質を守るため出せる量が小さくなります。応じられなかったときのペナルティは計算に含めていません。DRの仕組みと需要家の受け取りの比べ方はDRの試算にまとめています。

何が変わると結論が変わるか
日量5万m³の浄水場(関東・太陽光600kW)を基準に、前提を1つずつ変えました(図11)。太陽光の回収を一番動かすのは設置費で、覆蓋や池の上の架台で4割高くなると約9.9年に延びます。燃料費調整が3円/kWh下がると約1.1年延び、3円上がると約0.9年縮みます。電気代の上昇率(年1〜3%)の影響は±0.3年程度でした。

| 変わる前提 | 結論への影響 |
|---|---|
| 配水池の運用余裕が小さい(水圧・水質・区域の制約) | ならせる量が減り、結果①の削減が小さくなる。その分、蓄電池の価値は残る(いまの運用の損益分岐 約2万〜13万円/kWh) |
| 太陽光の設置場所(覆蓋・池の上・法面) | 設置費が2〜4割上がると回収は約8.6〜9.9年(日量5万m³の浄水場)。屋根・平地の用地から先に使う |
| 燃料費調整・市場価格調整 | ±3円/kWhで回収が約1年動く。上がるほど太陽光・インバータ化が有利 |
| 消化ガスの量・発電効率 | ガスが3分の2になれば収入も約3分の2。消化槽のない処理場では消化ガス発電は成り立たない |
| FIT・FIPの区分 | 1,000kW以上はFIP。市場価格が下がると収入も下がる。FITの地域活用要件を満たせるかの確認が要る |
| 容量市場の価格・配分 | 約定価格が5,000円/kW程度に下がると、DRの収入は約3分の1 |
| 施設の統廃合・広域化 | 処理量が集約されると1m³あたりの電力は下がりやすく、太陽光の割合は下がる。投資は統廃合の計画と同時に決める |
反実仮想:何もしない20年と比べると
日量5万m³の浄水場(関東・電気代上昇2%)で、①配水池でならす運用、②配水ポンプのインバータ化(15%削減)、③太陽光600kWを行った場合と、何もしない場合の20年の累計を比べました(図12)。何もしない場合の電気代は約49.3億円、打ち手を行った場合は投資約1.59億円(太陽光約1.1億円、インバータ化約0.48億円)を含めて約44.6億円で、差は約4.7億円、水1m³あたり約1.3円です。初年度の電気代は約2.03億円から約1.75億円に、約14%下がります。補助・DR・消化ガスは含めていません。

CO2:太陽光・インバータ化・消化ガスで減らす。運用の見直しは電力量を変えない
関東の排出係数(0.452kg-CO2/kWh)で、日量5万m³の浄水場の太陽光600kWは年約313t、配水ポンプのインバータ化(15%)は年約168tのCO2を減らします。日量5万m³の下水処理場の消化ガス発電を自家消費すると年約935tです(FITで売る場合は、環境価値が施設に残らない点に注意)。配水池でならす運用は電力量を変えないため、CO2は減りませんが、契約電力が下がり、将来の太陽光・DRの土台になります。
停電対策(BCP):給水を止めないのは自家発電。太陽光・蓄電池は補助
浄水場・ポンプ場の停電対策の主役は、非常用の自家発電設備と、停電しても自然流下で配れる配水池の水です。本試算の蓄電池(契約電力×0.2〜0.4時間分、出力0.5C)は、最大需要の削減を目的とした大きさで、ポンプを長時間動かす容量はありません。また、一般的な産業用蓄電池は停電から自立運転への切替に数秒〜数十秒かかる機種が多く、無停電ではありません。監視・制御・水質計器など止められない機器はUPSで別に守ります。太陽光は、昼の間、自家発電の燃料を節約する補助になりますが、自家発電と並列で動かせる構成かどうかの確認が必要です。
追いかけるべきKPI
| KPI | 見る理由 | 目安・本試算の値 |
|---|---|---|
| 水1m³あたりの電力(kWh/m³)と電気代(円/m³、いまの運用) | 施設・年ごとの比較の基本。料金改定の説明にも使える | 浄水場0.40〜0.45kWh、下水0.45〜0.60kWh(本試算の仮定)。電気代は約3〜15円/m³ |
| 年間の最大需要と、それが出た日時 | 基本料金を決める。1回の山で1年間決まる(実量制) | 配水池でならすと浄水場で約−8%、ポンプ場で約−27% |
| 配水池の運用水位の幅(時間換算) | ポンプをずらせる量の上限。DRで出せるkWも決める | 本試算では平均流量の約1.5〜2.9時間分が必要 |
| ポンプの制御方式と効率(バルブ開度・回転数) | インバータ化の効果の大きさを決める | 削減率10〜25%で単純回収約1.8〜8.5年(関東) |
| 太陽光の自家消費率・まかなう割合 | 余りを捨てていないか、どこまで脱炭素できるか | 自家消費率99%以上、まかなう割合約4〜15% |
| 消化ガスの発生量と利用率(発電・加温・余剰燃焼) | 燃やして捨てているガスは、そのまま収入の機会 | 下水1m³あたり0.06m³の仮定で電力の約23〜25%相当 |
よくある思い込みと、試算の結果
| 思い込み | 試算の結果 |
|---|---|
| 電気代を下げるには設備投資が要る | 配水池でポンプをならすだけで、契約電力が約8〜27%下がった(投資ほぼゼロ、効果が出るのは1年後から) |
| 太陽光は昼しか発電しないから、24時間施設には効かない | 逆。24時間需要があるので発電を99%以上使い切れ、回収は約6.5〜9.4年と早い |
| 太陽光を載せれば上下水道は脱炭素できる | 置ける面積の限界で電力の約4〜15%。省エネ・消化ガス・調達が要る |
| ピーク対策には蓄電池 | 198ケースすべてで15年では回収できず。配水池が先で、ならした後は電池の価値が約5分の1 |
| 消化ガスは自分で使うのが一番 | FITで売ると20年の正味が自家消費の約1.7〜2倍。ただしCO2の扱いは変わる |
| DRは大きな収入になる | 電気代の約0.2〜2.0%。ゼロではないが、運用の見直しの「ついで」の収入 |
施設・規模別の読み解き
- 浄水場(日量1万m³前後):電気代は年約3,800万〜4,100万円。配水池でならす運用(年約43万〜51万円)と太陽光200kW(回収約7.8〜9.0年)から。インバータ化はポンプの更新に合わせて。
- 浄水場(日量5万〜20万m³):電気代は年約1.9億〜6.7億円。運用の見直しだけで年約214万〜683万円。太陽光の20年の正味は約2.2億〜5.4億円(関東)。DRは年約200万〜760万円。日量20万m³は特別高圧で、料金は個別契約を前提に確認します。
- 下水処理場(日量1万m³前後):1m³あたりの電力が多く、電気代の重みが大きい(約14〜15円/m³)。消化槽がない処理場が多いため、太陽光(回収約7.6〜8.7年)と送風機の風量制御・脱水機の運転時間の見直しから。
- 下水処理場(日量5万〜20万m³):消化ガス発電が最大の打ち手(電力の約23〜25%相当)。太陽光は覆蓋・用地で1,000〜2,500kW、回収約6.9〜8.0年。蓄電池より、平日日中の汚泥処理の山をならす運用が先です。
- 配水ポンプ場:電力の9割がポンプ。ならす運用で契約電力が約27%下がり、インバータ化の単純回収も約1.8〜4.5年(関東)と短い。太陽光は敷地が小さく、まかなえるのは約4%です。
稟議・説明に使える一文
- 管理者・首長向け:「料金改定の前にできることとして、配水池の運用の見直しで基本料金を年約210万〜260万円(日量5万m³の浄水場の場合)下げ、太陽光とポンプのインバータ化で20年に約4.7億円の電気代を抑えます。」
- 財政・議会向け:「電気代は水1m³あたり約11円で、燃料費調整が1円動くと約0.4円動きます。打ち手の順番を守れば、投資約1.6億円に対して20年で約4.7億円の差が出る試算です(関東・電気代上昇2%)。」
- 現場(維持管理)向け:「水圧と残留塩素の範囲で、配水池の水位の幅を1〜3時間分使ってポンプをならします。最大需要が出た日時を毎月確認します。」
- 下水道向け:「消化ガスはFITで売ると20年で約9億円(日量5万m³)。燃やして捨てている分がないか、まず利用率を確認します。」
導入の進め方
- 施設ごとの30分値と最大需要の日時を集める:電力会社の30分値(スマートメーター)と、配水量・流入量・ポンプの運転記録を1年分そろえます。
- 配水池の運用余裕を確認する:水圧・残留塩素・滞留時間・運用水位の上下限から、ポンプをずらせる時間を決め、まず1年運用します。
- ポンプ・送風機の更新計画に省エネを組み込む:回転数制御・高効率モーター・送風機の風量制御を、更新の時期に合わせて設計します。
- 太陽光の置き場所を洗い出す:屋根・平地の用地→覆蓋・池の上の順で、架台の費用と維持管理(点検・清掃の動線)を確認し、自己所有・PPA・リースを比べます。
- 消化ガスの利用率と売り方を決める(下水):FIT(1,000kW未満、地域活用要件)か自家消費かを、20年の収支とCO2の扱いの両方で決めます。
- DR・調達・補助をまとめる:アグリゲーターとの配分、再エネメニュー・オフサイトPPA、国の補助(水インフラの省CO2設備・再エネ設備)と公営企業債(脱炭素化推進事業)を組み合わせ、経営戦略に位置づけます。
エネがえるでできること
本記事の試算は、エネがえるの試算シリーズの独立計算モデルによるものです。実際の施設では、30分値、ポンプ・送風機の構成、配水池の容量、料金メニュー、設置できる面積で結果が変わります。施設の30分値をもとに太陽光・蓄電池・運用の見直しを比べる法人・公共施設向けにはエネがえるBiz、敷地の外の太陽光から電気を買う比較にはオフサイトPPAの試算の考え方が使えます。自治体の複数施設の試算の代行(BPO)にも対応しています。シリーズの他の試算はエネがえる試算ライブラリにまとめています。
よくある質問
浄水場・下水処理場の電気代は、どこから下げるのが効果的ですか?
まず運用です。需要に合わせて動く配水ポンプを、配水池の容量の範囲で1日の中で平らに動かすと、本試算では契約電力が浄水場で約8%、配水ポンプ場で約27%下がり、投資ほぼゼロで基本料金が年約43万〜683万円(税抜)下がりました。次にポンプのインバータ化(単純回収約1.8〜8.5年、関東)、太陽光(回収約6.5〜9.4年)の順です。
上下水道施設の太陽光は何年で元が取れますか?
本試算(逆潮流なし、2026年11月以降の単価)では全99ケースで回収約6.5〜9.4年、電気代上昇2%では中央値が関西約6.9年・関東約7.4年・九州約8.1年でした。24時間需要があるため発電の99%以上を施設内で使えることが理由です。ただし、覆蓋や池の上の架台で設置費が4割上がると約10年に延びます(日量5万m³の浄水場)。
太陽光で上下水道の電気をどこまでまかなえますか?
置ける面積の限界で、年間の電力の約4〜15%でした(浄水場200〜1,500kW、下水処理場250〜2,500kW、ポンプ場50kWの仮定)。残りは省エネ、下水の消化ガス発電、再エネメニューやオフサイトPPAなどの調達で埋める必要があります。
上下水道に蓄電池は必要ですか?
電気代の削減だけでは、本試算の198ケースすべてで15年では回収できませんでした(損益分岐は最大約12.8万円/kWh、想定14万円/kWh、ピークカットは完全予見の7割の仮定)。浄水場・ポンプ場には配水池という「水の蓄電池」があり、ならした後は電池の価値が約5分の1になります。停電対策は自家発電とUPSが主役です。
下水の消化ガス発電は、自家消費とFIT売電のどちらが得ですか?
本試算では、日量5万m³(290kW)でFIT売電(2026年度 35円/kWh、20年)なら回収約5.9年・20年の正味約9.0億円、自家消費なら回収約9.4〜10.4年・正味約4.5億〜5.4億円でした(ガス量・設置費は仮定)。ただし2026年度のFITの新規認定(1,000kW未満)には地域活用要件があり、売った電気の環境価値は施設に残らないため、CO2の削減として計上できるかは別に確認が必要です。1,000kW以上はFIPになります。
水道施設はDR(デマンドレスポンス)に参加できますか?
できます。国土交通省は、浄水池・配水池の貯留量を使ってポンプを部分的に止める・動かすことで、水道施設がVPPに参加できると整理しています。本試算では、容量市場(発動指令電源、2029年度向け約定価格、受け取り50%の仮定)の収入は電気代の約0.2〜2.0%で、配水池のある浄水場・ポンプ場ほど大きくなりました。
上下水道の脱炭素に使える国の支援はありますか?
環境省などの「水インフラにおける脱炭素化推進事業」(令和6〜10年度)で、上下水道施設の再エネ設備や、インバータなど省CO2型設備(削減率15%以上30%未満で1/3、30%以上で1/2)の導入が支援されています。国土交通省は水道事業の温室効果ガス削減推進モデル事業(令和8年度募集)や、公営企業債(脱炭素化推進事業)についての質問と回答も公開しています。受付状況は各年度の公募要領で確認してください。
試算は税込と税抜のどちらですか?
税抜です。水道料金・下水道使用料は消費税の課税対象で、公営企業は課税事業者として電気代や設備費の消費税を仕入税額控除できる前提で比べました。補助金や他会計からの繰入金などの特定収入が多い場合は控除が制限されることがあるため、実際の資金計画は各事業の会計で確認してください。
試算の前提条件(すべて公開)
| 項目 | 値 | 区分 |
|---|---|---|
| 計算方法 | 1時間ごと(年8,760時間)、太陽光は20年、蓄電池は15年。消費税は除いて比較(公営企業は課税事業者として仕入税額控除ができる前提) | M/H |
| 施設の原単位 | 浄水場 1m³あたり0.45kWh(日量1万・5万m³)、0.40kWh(20万m³)。下水処理場 0.60/0.50/0.45kWh。配水ポンプ場 0.12kWh。全国の下水道の平均(約75億kWh÷約147億m³=約0.51kWh/m³)と照合 | H(照合はA) |
| 電力の内訳 | 水道:ポンプ60%(うち半分が配水で需要に追従)・浄水処理30%・その他10%。下水:送風機約45%・ポンプ20%・汚泥処理25%(日量1万・5万m³は半分を平日8〜17時の脱水機、20万m³は24時間)・その他10%。ポンプ場:ポンプ90%(全量が需要に追従) | H(水道の送配水約6割はB) |
| 時間別の水の使用 | 深夜0.48〜0.55、朝7時1.45、夕方18〜19時1.30(平均=1)。夏季+8%・冬季−4%。下水の流入は約2時間遅れ+浸入水30%。日・時間の揺らぎを付与 | H |
| 配水池でならす運用 | 需要に追従する配水ポンプを、その日の平均の流量で運転。必要な貯留は平均流量の約1.5〜2.9時間分(配水池は計画一日最大給水量の12時間分程度を標準とする設計の考え方) | H(設計の考え方はB) |
| 太陽光 | PVGIS(ERA5)の東京・大阪・福岡の時間別発電量を年1,132〜1,213kWh/kWに補正。劣化0.5%/年。設置費は規模で14.5万〜20万円/kW(税抜)×浄水場1.1・下水処理場1.2(覆蓋・池の上の架台分)。保守3,000円/kW/年、13年目にパワコン交換2万円/kW。逆潮流なし | A/H |
| 蓄電池 | 契約電力×0.2/0.4時間分、出力0.5C、往復効率88%、劣化1.5%/年、補機0.2kW/100kWh。14万円/kWh(税抜)。ピークカットは完全予見の7割。初年度の基本料金の低下は1/12(実量制) | H |
| インバータ化 | 配水ポンプ(需要追従分)の電力を10/15/25%削減。費用はモーター出力1kWあたり5万円(盤・工事込み)、出力は配水ポンプの最大の1.2倍 | H |
| 消化ガス発電 | 消化ガス0.06m³/m³(下水)、発電2.1kWh/m³(メタン60%・発電効率35%)、稼働90%。設置費 約131万円/kW(290kW)・約99万円/kW(1,170kW)、保守4円/kWh。FIT 35円/kWh(メタン発酵ガス、2026年度、20年)。1,000kW以上はFIPを35円相当で概算。自家消費は電力量料金のみ削減(基本料金は下げない) | A/H |
| DR | 容量市場の発動指令電源、2029年度向け約定価格(関東15,111円・関西12,388円・九州15,112円/kW・年)×受け取り50%。出せるkWは浄水場で平均のポンプ電力の5割、ポンプ場6割、下水は送風機・汚泥処理の1割。ペナルティは含まない | A/H |
| 電気料金(関東) | 東京電力EP 高圧ベーシックプラン:基本料金2,530円/kW+11月の託送見直し分108.57円/kW(推計)、電力量料金17.43円/kWh、燃料費調整1.50円/kWh(2026年11月分、関東エリア、計量期間の始期が毎月1日ではない場合、税込) | A(託送分は推計) |
| 電気料金(関西) | 関西電力 高圧電力AS:基本料金2,200円88銭/kW、電力量料金 夏季19円22銭・その他季18円15銭、燃料費調整+市場価格調整1.05円/kWh(12月分)。500kW以上の施設も同じ単価で近似 | A(近似はH) |
| 電気料金(九州) | 九州電力 業務用電力A(高圧):基本料金2,343円19銭/kW、電力量料金 夏季16円98銭・その他季16円05銭、燃料費等調整1.20円/kWh(12月分、離島ユニバーサルサービス調整を含む) | A |
| 特別高圧(日量20万m³) | 公表の標準料金がないため、高圧の基本料金×0.75、電力量料金−1.0円/kWhで近似 | H |
| 共通 | 再エネ賦課金4.18円/kWh(2026年度)。力率100%(基本料金15%割引)。契約電力は年間の最大需要(30分平均を1時間値で近似)。電気代の上昇は年1/2/3% | A/H |
| 排出係数 | 各社の2024年度実績の残差メニュー(関東0.452・関西0.415・九州0.472kg-CO2/kWh) | A |
この試算の限界
- 施設の需要は合成プロファイルです。実際の施設の30分値、ポンプの台数・揚程、送風機の制御、汚泥処理の運転時間で、最大需要の出方は変わります。
- 配水池でならせる量は施設ごとに違います。水圧・水質・滞留時間・配水区域の構成・非常時の貯留の確保で、実際に動かせる量は本試算より小さいことがあります。
- 雨天時の下水の流入は入れていません。合流式の処理場では、雨の日の流入でポンプの最大需要が出ることがあります。
- 太陽光の置き場所と費用は仮定です。覆蓋・池の上・法面は、架台・防食・維持管理の動線で費用が大きく変わります。
- 消化ガスの量と設置費は仮定です。汚泥の性状、消化槽の有無・容量、ガスの精製設備で大きく変わります。FITの地域活用要件・環境価値の扱いは個別に確認が必要です。
- 特別高圧の料金は近似です。日量20万m³の施設は個別の契約条件で確認してください。
- 補助・公営企業債・料金改定は数値に入れていません。補助を使えば回収は短くなります。
- 小水力・下水熱・送風機の風量制御・汚泥の燃料化は計算していません。施設によってはこれらが大きな打ち手になります。
ファクトチェック・エビデンス検証一覧
主要な数値と主張の根拠と検証方法を一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・電力会社・公的機関の公式資料)にリンクし、仮定とモデル計算は区分で区別しています(A=一次情報で確認、B=業界団体などの資料、M=本記事のモデル計算、H=仮定・専門家判断)。
検証の方法
- 一次情報との照合:上下水道の電力消費と施設数、地方公営企業の決算(給水原価・供給単価・汚水処理原価・経費回収率)、水道行政の移管、国の太陽光の導入目標と補助、FITの調達価格、容量市場の約定価格、料金表・燃料費調整・再エネ賦課金・排出係数を公式資料で確認しました(確認日:2026年11月7日)。
- 独立レビュー:独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。
- 独立計算モデルによる再計算:8,760時間のモデルで297ケースと追加の分析を試算し、コードとケース別データで管理しています。料金計算・蓄電池の運転は業種別×規模別の試算と同じモデルです。
| 主張・数値 | 値 | 区分 | 出典・検証 |
|---|---|---|---|
| 上下水道の電力消費と施設数 | 年間約150億kWh、日本全体の約1.5%。浄水場約5,000か所、下水処理場約2,200か所。2022〜2030年度の太陽光の導入目標 上水道107,000kW・下水道160,000kW | A | 環境省「上下水道事業への最大限の太陽光発電導入に向けて」(2025年2月25日) |
| 下水道の電力消費 | 全国の電力消費量の約0.7%(約75億kWh)、年間電力費約1,100億円、処理水量約147億m³。バイオガス発電で約3億kWh(令和元年度) | A | 国土交通省 下水道部「2050年カーボンニュートラル実現に向けた最近の動向と下水道事業における取組」(令和3年6月) |
| 水道の電力消費と内訳 | 年間73.3億kWh、日本全体の0.8%(平成28年度実績)。送水・配水工程で全体の約60% | B | 全国上下水道コンサルタント協会「上水道事業における脱炭素化に向けた取り組み」(令和4年度版) |
| 水道施設のVPP参加・モデル事業 | 浄水池の貯留量を使いポンプを部分的に稼働・停止させて調整力を生み、アグリゲーターに提供できる。水道事業における温室効果ガス削減推進モデル事業(令和8年度募集)、公営企業債(脱炭素化推進事業)のQ&A | A | 国土交通省「上下水道:脱炭素化・資源の有効利用」 |
| 水道事業の経営(令和6年度決算) | 給水原価182.84円/m³、供給単価177.09円/m³(5.75円下回る)、料金改定130事業(前年度91) | A | 総務省「地方財政白書」令和8年版 第1部6 公営企業等の状況 |
| 下水道事業の経営(令和6年度決算) | 汚水処理原価147.82円/m³、使用料単価139.27円/m³、経費回収率94.2%。他会計繰入金の53.9%が下水道事業 | A | 同上 |
| 水道行政の移管 | 2024年4月1日に水道整備・管理行政が厚生労働省から国土交通省へ移管、上下水道審議官グループを設置 | A | 国土交通省 報道発表(2024年3月28日) |
| 水インフラの脱炭素化の補助 | 再エネ設備・省CO2型設備(削減率15%以上30%未満で1/3、30%以上で1/2)。実施期間 令和6〜10年度。補助対象 地方公共団体・民間事業者等 | A | 環境省 同資料(水インフラにおける脱炭素化推進事業)。各年度の受付は公募要領で確認 |
| FIT メタン発酵ガス | 2026年度 35円/kWh(20年)。FIT新規認定(2025・2026年度は1,000kW未満)に地域活用要件。課税事業者は価格に消費税を加算。発電側課金相当額0.46円/kWhを加算(2026年度認定) | A | 資源エネルギー庁 買取価格・期間等(2026年度以降)、発電側課金相当額(2026年度) |
| 容量市場 2029年度向け約定価格 | 東北・東京15,111円/kW、中部・北陸・関西・中国・四国12,388円、九州15,112円 | A | OCCTO(2026年1月20日) |
| 発動指令電源の条件 | 年12回・1日1回・3時間前の指令・3時間継続・平日9〜20時 | A | OCCTO 2029年度向け説明会資料 |
| 電気料金・燃料費調整 | 前提条件の表のとおり(関東は東京電力EPの関東エリアのページの2026年11月分の公表値、九州は離島ユニバーサルサービス調整を含む) | A | 東京電力EP 高圧の料金(2026年の見直し資料)、東京電力EP 燃料費調整単価、関西電力 高圧電力AS、関西電力 燃料費調整、九州電力 業務用電力A、九州電力 燃料費等調整 |
| 再エネ賦課金 | 4.18円/kWh(2026年度) | A | 経済産業省(2026年3月19日「2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」。シリーズで確認済みの値) |
| 排出係数 | 前提条件の表のとおり | A | 環境省 電気事業者別排出係数 |
| 配水池の容量の考え方 | 計画一日最大給水量の12時間分程度を標準とする設計の考え方 | B | 日本水道協会「水道施設設計指針」。実際の容量は施設ごとに確認 |
| 消費税の扱い | 水道料金・下水道使用料は課税対象で、公営企業は課税事業者として仕入税額控除を行う。特定収入が多い場合は控除が制限される | B | 消費税法第60条(国・地方公共団体等の特例)。各事業の会計で確認 |
| 電気代 水1m³あたり | 浄水場約8.5〜11.1円、下水処理場約9.5〜15.4円、配水ポンプ場約2.9〜3.1円(税抜) | M/H | ケース別データで確認(施設の原単位は仮定) |
| 配水池でならす運用 | 最大需要 浄水場−8.4%、ポンプ場−27.1%。基本料金 年約43万〜683万円(税抜)。必要な貯留 平均流量の約1.5〜2.9時間分 | M/H | 需要の形は仮定 |
| 太陽光 | 全99ケースで回収約6.5〜9.4年(2%・いまの運用で約6.7〜9.0年、中央値 関西6.9・関東7.4・九州8.1年)。自家消費率99%以上、まかなう割合約4〜15%。初年度の削減のうち基本料金分約5〜17%(いまの運用。ならした後は約6〜20%) | M/H | 設置場所・設置費は仮定 |
| 蓄電池 | 198ケースすべてで15年では回収できず。損益分岐 いまの運用約2.4万〜12.8万円/kWh、ならした後約0.2万〜2.5万円/kWh | M/H | ピークカットは完全予見の7割の仮定 |
| インバータ化 | 単純回収 関東で約1.8〜8.5年(3エリアで約1.8〜9.1年)。日量5万m³の浄水場・15%で年約37万kWh・約921万円(関東) | M/H | 削減率・費用は仮定 |
| 消化ガス発電 | 日量5万m³:290kW・年約207万kWh(電力の約23%相当)、FIT回収約5.9年・20年正味約9.0億円、自家消費 回収約9.4〜10.4年・正味約4.5億〜5.4億円。日量20万m³:1,170kW(FIP、35円相当で概算) | M/H | ガス量・設置費・保守費は仮定 |
| 自己所有とオンサイトPPA | 関東・20年:PPA 15円/17円で浄水場5万m³ 約1.80億/1.53億円、下水処理場5万m³ 約3.23億/2.79億円。自己所有はPPAの約1.1〜1.5倍(7施設)。太陽光1kWhが減らす電気代は電力量料金分約21.0円(特別高圧約20.1円)、基本料金分を含め約22.6〜25.2円(初年度) | M/H | PPA単価は仮定(20年固定、税抜)。ケース別データ ppa.csv で確認 |
| DR | 電気代の約0.2〜2.0%。浄水場 日量5万m³で年約214万円(関東) | M/H | 出せるkWと配分は仮定 |
| 何もしない場合との差 | 日量5万m³の浄水場(関東)で20年約4.7億円(水1m³あたり約1.3円)。投資約1.59億円を含む | M/H | 電気代の上昇2% |
| 経営課題・打ち手の順番 | 本文と図2のとおり | H | 専門家判断。試算値ではない |
試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開:2026年11月7日/試算条件の確認日:2026年11月7日。更新履歴(2026年11月7日):独立レビューの指摘(PPAと比べる電気代の単価、図2の数値、需要の形の仮定の明記など)を反映。毎月、燃料費調整・市場価格調整・再エネ賦課金・FIT/FIPの価格・容量市場の結果・補助の受付状況を確認し、変化があれば再計算して更新します。関連する試算:自治体の公共施設の太陽光は起債・交付金・PPAのどれが得?/学校の太陽光・蓄電池の試算/オフサイトPPAの試算/DRの需要家メリットの試算/産業用の自家消費型太陽光・蓄電池の業種別×規模別の試算/業種別のエネルギー費はどこで削れる?/エネがえる試算ライブラリ。






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