再エネ補助金の費用対効果は?CO2削減1トンあたりの補助額を9種類の設備・10の補助制度で実試算【2026年】

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
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再エネ補助金の費用対効果 CO2削減1トンあたりの補助額を9種類の設備・10の補助制度で試算(エネがえる)
再エネ補助金の費用対効果 CO2削減1トンあたりの補助額を9種類の設備・10の補助制度で試算(エネがえる)

結論から言います。再エネ・省エネの補助金は、CO2を1トン減らすのにかかる公費が制度によって約80〜90倍違います。電気温水器からエコキュートへの交換(給湯省エネ事業)は1トンあたり約2,700円、産業用蓄電池(ストレージパリティ補助)は約24万円でした(216件中144件ではCO2が増えるため参考値。排出係数がいまのまま続く場合、全ケースの合計で計算)。ただし、1トンあたりが安い補助ほど「補助がなくても導入する人」に払われている割合が高く、安さをそのまま費用対効果とは呼べません。エネがえるがこれまで公開してきた試算シリーズのケース別データ、9種類の設備・10の補助制度について、元の試算1,515ケースを評価単位1,893(補助の条件違いを含めて3,072通り)を、同じ物差しで再集計しました(2026年11月時点の電気料金・補助制度にもとづく)。答えは次の3つに整理できます。

3つの答え

  1. 1トンあたりの公費は「安い補助」と「高い補助」で約80〜90倍の差。ただし安い補助の多くは、補助がなくても回収できる人に払われている。1トンあたりの公費(全ケース合計)は、エコキュート2,738円、住宅太陽光(自治体5万円/kWと仮定)4,737円、産業用太陽光(4万円/kW)4,763円、自治体公共施設(交付金1/2と仮定)11,027円に対し、乗用EV(CEV補助・2026年中の登録の額)116,374円、産業用蓄電池243,431円でした(産業用蓄電池は216件中144件でCO2が増え、合計がわずかにプラスになるだけの参考値。除くと最大は商用EVの220,062円で約80倍)。一方、回収の目安(家庭15年・企業10年・自治体15年)で判定すると、エコキュート・住宅太陽光・公共施設は全ケースが補助なしでも回収でき、産業用太陽光も95%が同じでした。この場合、補助は導入を「早める・後押しする」効果はあっても、回収年数だけで見れば決め手にはなっていません。
  2. 「補助が決め手になる力」が大きいのは高額な補助。ただし家庭用蓄電池・V2Hは、CO2の数え方しだいで削減にならない。補助で初めて目安以内に回収できるケースの割合(追加性)は、東京都の蓄電池補助(10万円/kWh)を全国に当てはめた場合64%、V2Hの国+東京都55%、乗用EV49%でした。しかし家庭用蓄電池とV2Hは、平均の排出係数で数えると充放電の損失と待機電力の分だけ排出が増え、出力制御で捨てられる電気をためると仮定した上限でも1トン2.7万〜17.7万円です。また、需要家ごとに「回収に足りない額」だけを払えた場合の理論上の公費は、東京都の蓄電池で現行の53%、V2Hの国+東京都で44%にとどまりました。
  3. 結論は「何年で回収できれば導入するか」「電気の排出係数がどう下がるか」「停電への備えをどう数えるか」で変わる。だから円/トン1本で順位をつけず、3つの物差しを並べて示すのが実務的。企業の回収目安を10年から5年に変えると、産業用太陽光の補助が決め手になる割合は4%から45%に増えます。電気が2030年に0.25kg/kWhまで低炭素化すると、太陽光の1トンは約1.6倍に高くなり、EVの1トンは約2割安くなります。本記事では政策の是非を断定せず、制度設計の論点と、予算要求・事業評価にそのまま転記できる表として整理しました。

この記事で分かること(数値の要点)

  • 1トンあたりの公費(全ケース合計、排出係数はいまのまま):エコキュート2,738円/住宅太陽光(FITの初期投資支援を「暗黙の補助」とみなした場合)3,376円/住宅太陽光(自治体5万円/kW)4,737円/産業用太陽光4,763円/公共施設11,027円/乗用EV 73,009円(2027年の登録の額)〜116,374円(2026年中の登録の額)/商用EV 220,062円/産業用蓄電池243,431円。比較の目安として、東証のJ-クレジット(再エネ・電力)は2026年10月5日の終値で4,699円/トンでした。
  • 死荷重(補助がなくても回収目安以内に回収できるケース)の割合:エコキュート・住宅太陽光・公共施設は100%、産業用太陽光95%、乗用EV27%、商用EV14%、家庭用蓄電池・V2H・産業用蓄電池は0%。
  • 「決め手になった分」だけで割り直した1トンあたりの公費:乗用EV 約24万円、産業用蓄電池 約81万円、産業用太陽光 約144万円、商用EV 約217万円。住宅太陽光・エコキュート・公共施設は、目安で判定すると決め手になったケースがありません。
  • 家庭用蓄電池の「15年で元が取れる」ための補助額:中央値で1kWhあたり約8.5万円(243ケース、15万円/kWh・税込の場合)。一律10万円/kWhでは、76%のケースで必要額を上回ります。
  • エリアによる差:住宅太陽光の1トンあたりは沖縄3,283円〜東北5,512円、乗用EVは中部約10.2万円〜沖縄約17.6万円。排出係数が高いエリアほど太陽光は安く、EVは高くなります。
  • 将来の排出係数の影響:全国平均が0.423kg/kWh(令和6年度実績の全国平均係数)から2030年に0.25kg/kWhへ下がる場合、住宅太陽光の1トンは4,737円→7,736円、公共施設は11,027円→18,007円に上がり、乗用EVは116,374円→91,707円に下がります。

検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。各設備の節約額・回収年数は、すでに公開している試算記事(家庭用蓄電池243ケース、V2H243ケース、EVとガソリン車の車種別TCO、商用EVのTCO、産業用の自家消費型太陽光・蓄電池、自治体の公共施設の太陽光)のケース別データをそのまま使い、補助額とCO2削減量を共通のルールで計算し直しました。排出係数と補助制度は環境省・経済産業省・各執行団体の公表資料を原文で確認しています(確認日:2026年11月1日)。独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。

なぜ今、補助金を「CO2 1トンあたり」で測り直す必要があるのか

理由は3つあります。1つ目は、多くの補助制度が2026年度の終わりに向けて区切りを迎えていることです。乗用車のCEV補助金は、受付終了の見込みが令和8年12月上旬〜12月下旬とされ、令和9年1月1日以降の登録分は交付額が下がります(次世代自動車振興センター 受付終了見込みのお知らせ、銘柄ごとの補助上限額)。国のV2H補助(令和7年度補正)は2026年8月27日到着分で受付を終えました(同センター)。給湯省エネ2026事業の交付申請も、予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)です(給湯省エネ2026事業 事業者向けチラシ)。次の年度の制度や予算を考える担当者にとって、今が見直しのタイミングです。

2つ目は、電気の排出係数が下がり続けていることです。令和6年度実績の全国平均係数は0.423kg-CO2/kWhで、沖縄以外の一般送配電事業者はこの値を代用して公表しています(環境省・経済産業省「電気事業者別排出係数(R6年度実績)」令和8年1月9日公表、2月25日一部更新)。電気事業低炭素社会協議会は、政府の想定が実現した場合の2030年度の国全体の排出係数を「0.25kg-CO2/kWh程度(使用端)」としています(電気事業低炭素社会協議会「目標・行動計画」)。政府の地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)の本文では、排出係数の具体的な数値は確認できませんでした(「排出係数目標の達成状況も踏まえつつ」との記載はあります)。2040年の公式な排出係数の見通しもないため、本記事の2040年の値は仮定です。電気がきれいになるほど、太陽光で「減らせるCO2」は小さくなり、EVやヒートポンプで「電気に置き換える」ことの効果は大きくなります。同じ補助でも、10年後の1トンあたりの値段は変わります。

3つ目は、補助の「1件あたり」や「1kWあたり」だけでは、公費の使い方を比べられないことです。太陽光は1kWあたり、蓄電池は1kWhあたり、EVは1台あたり、公共施設は事業費の割合と、補助の単位がばらばらです。予算要求や事業評価で「同じ1億円をどこに使うと、何トン減り、何件が補助のおかげで導入されるか」を説明するには、共通の物差しが必要です。エネがえるはこれまで、設備ごとに数百ケースの試算を公開してきました。そのケース別データを使えば、制度をまたいで同じ条件で比べることができます。

検証の方法:9種類の設備・10の補助制度、評価単位1,893、補助の条件違いを含めて3,072通り

新しく何かを試算したのではなく、すでに公開している試算のケース別データを共通のルールで計算し直しました。各記事は8,760時間(1時間単位)の電気の流れや、車両の保有総額(TCO)を計算しています。その「補助なしの回収年数」「補助ありの回収年数」「年ごとのCO2削減量」を取り出し、補助額と組み合わせています。

設備(評価する補助)ケース数ケースの組み方補助の設定元の試算
家庭用蓄電池2439エリア×3構成×月額電気代3水準×上昇率3水準東京都10万円/kWh(上限120万円)、国DR 3.45万円/kWh(3/10・上限60万円)蓄電池243ケース
V2H2439エリア×使い方3×EV3車種×月額3水準国(令和7年度補正の算定方法)約81万円、東京都50万円、国+都V2H243ケース
住宅用太陽光1629エリア×4kW・6kW×月額3水準×上昇率3水準自治体の補助5万円/kW・10万円/kW(仮定)、FITの初期投資支援(暗黙の補助)蓄電池243ケースの太陽光単体
エコキュート(電気温水器から交換)819エリア×上昇率3水準×機器の価格差3水準給湯省エネ2026 基本7万円+電気温水器撤去2万円蓄電池243ケースの料金モデル
乗用EV・PHEV2884車種×年間走行4水準×自宅充電2種×9エリアCEV補助(2026年中の登録の額/2027年1月以降の額)車種別TCO
商用EV(軽バン・2tトラック)144車両4種×走行距離×充電方法×エリアCEV補助・LEVO(商用車等の電動化促進事業)商用EVのTCO
産業用太陽光・産業用蓄電池2169業種×規模・エリア8通り(低圧は関東・九州のみ)×上昇率3水準ストレージパリティ補助 太陽光4万円/kW、蓄電池3.9万円/kWh産業用 業種別×規模別
自治体の公共施設の太陽光1388施設類型×規模×3エリア×上昇率3水準重点対策加速化事業など交付金1/2(仮定)公共施設の財源別試算

元の試算のケースは合計1,515です。住宅太陽光の162ケースを自治体補助とFITの2制度で、産業用の216ケースを太陽光と蓄電池で別々に評価するため、評価の単位は1,893になります。補助の設定を変えた組み合わせを含めると3,072通りです。東京都の蓄電池・V2H補助は、本来は都内だけの制度ですが、「同じ設計を全国に当てはめたらどうなるか」を見るために9エリアすべてに当てはめています。自治体の太陽光補助(5万・10万円/kW)と公共施設の交付率(1/2)は、制度の一例として置いた仮定です。

使う物差し(3つの指標の定義)

指標計算式何が分かるか
1トンあたりの公費補助額 ÷ 設備の寿命(または保有期間)のCO2削減量。制度ごとの値は「補助の合計÷削減量の合計」同じ公費で何トン減るか(安いほど効率的に見える)
死荷重補助がなくても回収目安以内に回収できるケースの割合補助がなくても導入されたはずの人に払う割合(大きいほど「上乗せの効果」が小さい)
追加性補助なしでは目安を超え、補助ありで目安以内に回収できるケースの割合補助が導入の決め手になる割合
(参考)補助があっても届かない補助ありでも目安を超えるケースの割合補助額が足りない、または設備そのものが割に合わない割合

回収の目安は、家庭15年、企業10年、自治体15年と置きました。乗用EVは10年保有、商用EVは8年保有の総額で、補助なし・ありでガソリン車(SUVはハイブリッド車)より安くなるかで判定しています。これらの目安は仮定で、結論が大きく動くため、結果③で5〜15年に変えた場合を示します。

そもそも何を比べるのか:「1トンの値段」だけでは費用対効果にならない理由

補助の費用対効果は、よく「CO2を1トン減らすのに何円かかるか」で比べられます。分かりやすい指標ですが、補助がなくても導入した人の削減量まで「補助の成果」に数えてしまうという弱点があります。たとえば、補助がなくても10年で元が取れる太陽光に5万円/kWを払っても、その家の太陽光によるCO2削減は「補助で生まれた削減」とは言えません。補助で回収が数年早まり、導入の時期が早まる効果はありますが、それは別に評価する必要があります。

経済学では、補助がなくても起きた行動に払われる部分を「死荷重(デッドウェイト)」、補助で初めて起きる部分を「追加性」と呼びます。本記事では、ケースごとに「補助なし」と「補助あり」の回収年数を比べ、各ケースを3つに分けました。

  • 死荷重:補助なしでも回収目安以内。補助は「早める・背中を押す」効果にとどまる可能性が高い。
  • 追加性:補助なしでは目安を超え、補助ありで目安以内。補助が決め手になりうる。
  • 届かない:補助ありでも目安を超える。補助の額が足りないか、経済性以外の理由がないと選ばれにくい。

比べる基準として、本記事では2つの値を図に入れました。1つは、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で取引されているJ-クレジット(再エネ・電力)の終値で、2026年10月5日は4,699円/トンでした(日本取引所グループ カーボン・クレジット市場日報)。もう1つは、炭素価格の目安として置いた1万円/トン(仮定)です。どちらも「この値より高い補助は無駄だ」という意味ではありません。補助にはCO2以外の目的(電気代の負担軽減、産業育成、防災)があるためです。ここでは、1トンあたりの公費の大きさを感覚的につかむための目盛りとして使います。

計算の例:関東・4kW・月2万円の家で、太陽光と蓄電池の補助を比べる

同じ家(関東、太陽光4kW、月の電気代2万円、電気代の上昇率年2%)で、2つの補助を具体的に計算してみます。

項目住宅太陽光(自治体5万円/kW)家庭用蓄電池10kWh(東京都10万円/kWh)
設備の費用127.6万円(31.9万円/kW×4kW)150万円(15万円/kWh×10kWh)
補助額20万円100万円
補助なしの回収年数9.6年回収できない(25年以内に回収なし)
補助ありの回収年数8.0年12.7年
判定(家庭の目安15年)死荷重(補助なしでも回収)追加性(補助で初めて回収)
寿命のCO2削減量37.1トン(20年)−3.1トン(15年、平均係数では増加)/上限11.2トン
1トンあたりの公費5,391円(2030年0.25kgなら8,803円)算出不可(上限で約9.0万円)
15年で回収するのに必要な補助額0円約87.4万円(補助100万円との差 約12.6万円は上乗せ)

1トンあたりで見れば太陽光の補助がはるかに安い一方、この家では太陽光は補助がなくても回収でき、蓄電池は補助がなければ回収できません。「1トンあたりの安さ」と「補助が決め手になるか」は別の問いであり、両方を並べないと補助の効き方は判断できない、というのが本記事の出発点です。

結果①:CO2 1トンあたりの公費は、エコキュート2,738円から商用EV 220,062円まで約80倍の差(産業用蓄電池243,431円は参考値)

排出係数がいまのまま(令和6年度実績)続くとして、補助の合計を設備の寿命のCO2削減量の合計で割りました。太陽光・公共施設は20年、蓄電池・V2H・エコキュートは15年、乗用EVは10年、商用EVは8年です。

CO2 1トンあたりの公費。エコキュート2,738円、住宅太陽光(FITの初期投資支援)3,376円、住宅太陽光(自治体5万円/kW)4,737円、産業用太陽光4,763円、住宅太陽光(10万円/kW)9,475円、公共施設11,027円、乗用EV(2027年登録)73,009円、乗用EV(2026年登録)116,374円、商用EV220,062円、産業用蓄電池243,431円
図1 CO2 1トンあたりの公費(全ケースの合計、排出係数は令和6年度実績のまま。家庭用蓄電池・V2Hは図6)
補助(設定)ケース数1件あたりの補助(中央値)1件あたりのCO2削減(中央値)1トンあたりの公費(合計)同(ケースの中央値)
エコキュート(給湯省エネ7万円+撤去2万円)819万円31.9トン(15年)2,738円2,823円
住宅太陽光(FITの初期投資支援)16216.5万円54.7トン(20年)3,376円3,368円
住宅太陽光(自治体5万円/kW)16225万円54.7トン4,737円5,156円
産業用太陽光(4万円/kW)2161,350万円2,958トン(20年)4,763円4,359円
住宅太陽光(自治体10万円/kW)16250万円54.7トン9,475円10,311円
公共施設(交付金1/2)1381,313万円1,186トン(20年)11,027円12,128円
乗用EV・PHEV(CEV・2027年の登録の額)28864.2万円7.9トン(10年)73,009円76,973円
乗用EV・PHEV(CEV・2026年中の登録の額)288107万円7.9トン116,374円126,378円
商用EV(CEV/LEVO)144323万円12.8トン(8年)220,062円110,061円
産業用蓄電池(3.9万円/kWh)216780万円−7.5トン(15年、増加)243,431円—(216件中144件でCO2が増える)

「合計」は補助の合計÷削減量の合計、「ケースの中央値」は各ケースの値の中央値。商用EVは2tトラックの補助が大きく削減量の割に高いため、合計の値が中央値を大きく上回ります。産業用蓄電池は、216件中144件で充放電の損失によりCO2が増え、残りのケースの削減で合計がプラスになっています。家庭用蓄電池・V2Hは平均の排出係数ではCO2が増えるため、表から外して図6で示します。

読み取れることは2つです。1つ目は、「電気をつくる・使う量を減らす」設備は安く、「電気をためる・車を置き換える」補助は高いことです。エコキュートは、電気温水器の約3分の1の電気でお湯を沸かせるため(3倍は仮定)、1台で年約4,700kWhの電気が減ります(中央値)。この倍率を2.5倍にすると1トンあたりは約3,650円、3.5倍にすると約2,190円になり、補助なしの回収年数の中央値は約2.0年・約1.2年です(どちらでも全ケースが死荷重)。これに対して補助は9万円です。太陽光も、発電した電気がそのまま系統の電気を置き換えます。一方、EVは車1台あたりの補助が大きく、10年で減るCO2は7.9トン(中央値)にとどまります。

2つ目は、同じ設備でも補助の単価しだいで1トンの値段は比例して変わることです。住宅太陽光の自治体補助を5万円/kWから10万円/kWに上げると、1トンあたりも2倍になります(4,737円→9,475円)。乗用EVのCEV補助が2027年1月から下がると、1トンあたりは約4割安くなります(116,374円→73,009円)。ただし、次の結果②で見るように、安くした補助が導入の決め手であり続けるかは別の問題です。

結果②:1トンあたりが安い補助ほど、「補助がなくても導入する人」に払われている

各ケースを「死荷重」「追加性(決め手)」「届かない」の3つに分けました。回収の目安は、家庭15年、企業10年、自治体15年、乗用EVは10年保有・商用EVは8年保有の総額です。

補助ごとの死荷重・追加性・届かない割合。エコキュート・住宅太陽光・公共施設は死荷重100%、産業用太陽光95%。追加性は東京都の蓄電池補助64%、V2H国+都55%、乗用EV(2026年登録)49%
図2 補助がなくても回収できる(死荷重)・補助が決め手になる(追加性)・補助があっても届かない、の割合
補助(設定)死荷重追加性(決め手)届かない補助の合計のうち死荷重のケースに払われる割合決め手になった分だけで割った1トンあたり
エコキュート100%0%0%100%—
住宅太陽光(自治体5万・10万円/kW)100%0%0%100%—
住宅太陽光(FITの初期投資支援)99.4%0.6%(1件)0%99%約49.6万円
公共施設(交付金1/2)100%0%0%100%—
産業用太陽光(4万円/kW)95.4%4.2%0.5%99.6%約144万円
乗用EV・PHEV(2026年中の登録の額)27.1%49.3%23.6%30%約23.6万円
乗用EV・PHEV(2027年の登録の額)27.1%28.1%44.8%30%約24.7万円
商用EV(CEV/LEVO)13.9%11.1%75.0%3%約217万円
産業用蓄電池(3.9万円/kWh)0%4.6%95.4%0%約81万円
家庭用蓄電池(東京都10万円/kWh)0%64.2%35.8%0%(CO2が減らないため算出不可)
家庭用蓄電池(国DR 3.45万円/kWh)0%0%100%0%—
V2H(国)0%22.6%77.4%0%(同上)
V2H(東京都50万円)0%0%100%0%—
V2H(国+東京都)0%55.1%44.9%0%(同上)

「決め手になった分だけで割った1トンあたり」=補助の合計 ÷ 追加性のケースのCO2削減量の合計。補助の総額は変えずに、成果を「補助で初めて導入されたケース」に限って数えた値です。死荷重のケースでも導入が早まる効果はありますが、ここでは数えていません(特集の図11で別に示します)。

この表は、結果①の順位をほぼ逆さまにします。1トンあたりが安いエコキュート・住宅太陽光・公共施設・産業用太陽光は、回収目安で判定するとほぼすべてが死荷重でした。補助がなくても、エコキュートは中央値1.5年(電気温水器との価格差10万〜35万円の場合、故障などで買い替える時点で比べた値)、住宅太陽光は約10年、公共施設は8.8年、産業用太陽光は6.6年で回収できます。一方、1トンあたりが高い家庭用蓄電池・V2H・乗用EVは、補助が決め手になる割合が大きい結果になりました。

表の右から2列目の「補助の合計のうち死荷重のケースに払われる割合」は、予算の使われ方を示す数字です。乗用EVは件数では27%が死荷重ですが、補助の合計に占める割合は30%で、死荷重の車種(年2万km走る軽EVなど)にも同じ額が払われていることが分かります。商用EVは件数の14%が死荷重でも、金額では3%です。補助額の小さい軽バンが死荷重になりやすく、補助額の大きいトラックは死荷重にならないためです。件数の割合と金額の割合を両方見ると、どの層に公費が流れているかが具体的に分かります。

2つの軸を1枚にまとめたのが図3です。右下(1トンが高く、決め手にもなりにくい)に商用EVと産業用蓄電池、左上(1トンが安く、決め手にもなる)に入る補助は、今回の組み合わせにはありませんでした。

1トンあたりの公費と追加性の散布図。左下に住宅太陽光・エコキュート・公共施設・産業用太陽光(安いが決め手にならない)、右上に乗用EV(高いが決め手になる)、右下に商用EV・産業用蓄電池
図3 1トンあたりの公費(横軸)と追加性(縦軸)。円の大きさは試算ケースの補助の合計

ここで注意したいのは、「死荷重が100%だから補助は不要」とは言えないことです。本試算は「回収年数が目安以内なら導入する」という単純な想定で、実際には初期費用の手持ちがない、情報がない、屋根の状態が分からない、といった経済性以外の壁があります。住宅太陽光の補助が初期費用の壁を下げて導入を後押ししている可能性は、この計算には表れません。言えるのは、回収年数の改善を目的とする補助としては、決め手になるケースが少ないということです。目的が初期費用の壁や情報の壁なら、補助額より、無利子融資・初期費用ゼロのモデル・相談窓口のほうが効く可能性があります(これは本試算で検証していない仮説です)。

結果③:死荷重の大きさは「何年で回収できれば導入するか」で大きく変わる

結果②の判定は、回収の目安をどこに置くかで変わります。企業は投資に5〜7年程度の回収を求めることが多いとされ、家庭もローンの年数や年齢で目安が変わります。目安を変えて計算し直しました。

回収の目安を変えた場合の追加性。産業用太陽光は目安5年で45%、7年で26%、10年で4%。公共施設は10年で30%、15年で0%。住宅太陽光は10年で46〜51%、15年で0%
図4 回収の目安を変えた場合の死荷重・追加性(目安は仮定)
補助回収の目安死荷重追加性届かない
産業用太陽光(4万円/kW)5年0%45%55%
7年58%26%16%
10年95%4%0.5%
公共施設(交付金1/2)10年70%30%0%
15年100%0%0%
住宅太陽光(自治体5万円/kW)10年49%46%4%
15年100%0%0%
住宅太陽光(FITの初期投資支援)10年20%30%51%
15年99%1%0%
家庭用蓄電池(東京都10万円/kWh)10年0%5%95%
15年0%64%36%
V2H(国+東京都)10年0%22%78%
15年0%55%45%

産業用太陽光は、企業が「5年で回収できなければ入れない」と考えるなら、補助が決め手になる割合は45%に上がります。住宅太陽光も、家庭の目安を10年に置くと補助が決め手になる割合は46〜51%です。つまり、「安い補助は死荷重が大きい」という結論は、需要家がどのくらい長い回収を許すかに強く依存します。制度設計の段階で、対象となる需要家の回収目安をアンケートや過去の申請データで確かめることが、補助単価を決める前提になります。

試算の照合:元の試算記事・公表値との突き合わせ

本記事は新しい試算ではなく再集計のため、照合は「元の試算記事の結果と一致しているか」「外部の公表値と矛盾しないか」の2段階で行いました。エネがえるASP・Bizの画面での新たな照合は、本記事では行っていません(各元記事で実施した照合の範囲は、それぞれの記事に記載しています)。

照合した項目本記事の値元の記事・公表値結果
家庭用蓄電池:補助なしで15年以内に回収0件(243件中)蓄電池243ケース記事と同じ一致
V2H:国+東京都で関東の在宅多めは15年以内に回収本記事の追加性55%に含まれるV2H243ケース記事(関東・在宅多めの9ケースすべて)一致(本記事は都の補助を全国に当てはめて拡張)
公共施設:一般財源で回収年数中央値8.8年、138件すべて15年以内公共施設の財源別試算と同じ一致
産業用太陽光:補助なしの回収年数中央値6.6年産業用 業種別×規模別の記事のケース別データ一致
家庭用蓄電池の補助額東京都10万円/kWh(上限120万円)、国3.45万円/kWh東京都環境局、SII公募要領原文で確認
全国平均の排出係数0.423kg/kWh環境省・経済産業省(R6年度実績)原文で確認

また、CO2の計算方法を元の記事から変えた点があります。EVの記事は電気のCO2を0.45kg/kWhの仮定で計算していましたが、本記事ではエリアごとの排出係数(令和6年度実績の事業者全体の参考値)に置き換えました。産業用・公共施設の記事は残差の排出係数を使っていましたが、制度間でそろえるため、事業者全体の係数に換算しています。このため、CO2削減量は元の記事の値と一致しません。

補助のルールを原文で確認する:単価・上限・期限・対象

費用対効果は、補助の「単価」だけでなく「上限」「対象の絞り方」「期限」で変わります。本試算で使った補助の条件を、執行団体の資料で確認しました(確認日:2026年11月1日)。

補助単価・算定方法上限・条件受付の状況出典
東京都 家庭用蓄電池(令和8年度)10万円/kWhDR実証に参加しない場合の上限120万円/戸。DR実証参加で上乗せあり都内のみ。予算・要件は公募資料で確認東京都環境局
国 DR対応家庭用蓄電システム(令和7年度補正)3.45万円/kWh(初期実効容量)設備費+工事費の3/10以内、上限60万円。最も低い額を採用。DR契約の継続が必要公募資料で確認SII
国 V2H(令和7年度補正)機器の1/2+工事費(上限あり)本試算では約81万円2026年8月27日到着分で受付終了次世代自動車振興センター
東京都 V2H助成対象経費の1/2上限50万円(増額要件を満たす場合は上限100万円)都内のみクール・ネット東京 助成金ガイド
CEV補助(乗用)車種ごとの定額(軽EV 58万円、コンパクトEV 129万円、SUV EV 130万円、PHEV 85万円で試算)令和9年1月1日以降の登録は減額(同45.8万・77.4万・78万・51万円)受付終了見込み 令和8年12月上旬〜下旬銘柄ごとの補助上限額
商用車(LEVO)(電動車両価格−同等ディーゼル車価格)×2/3を基準額とする車両ごとの額エルフEV 事業用5,796,000円・自家用5,684,000円、N-VAN e 782,000円(事業用)公募資料で確認LEVO 基準額一覧
給湯省エネ2026(ヒートポンプ給湯機)基本7万円/台(性能加算+3万円で10万円)電気温水器の撤去で+2万円/台予算上限まで(遅くとも2026年12月31日)給湯省エネ2026事業 事業概要、事業チラシ
ストレージパリティ補助(令和8年度)太陽光4万円/kW(自己所有)、業務・産業用蓄電池3.9万円/kWh自家消費率50%以上・逆潮流なし等二次公募は2026年10月2日で終了公募要領
重点対策加速化事業(地域脱炭素推進交付金)交付率2/3〜1/3・定額(本試算は1/2と仮定)選定された自治体の計画に基づく—環境省
FIT(住宅用10kW未満、初期投資支援)24円/kWh(1〜4年)、8.3円/kWh(5〜10年)本試算では、太陽光の時間帯の市場価値9.4円/kWh(仮定)との差額を賦課金による支援とみなす—資源エネルギー庁

FITの初期投資支援は補助金ではありませんが、市場価値を上回る買取額は再エネ賦課金で電気の利用者全体が負担しています。公費(税)ではないものの「みんなで払う支援」として同じ物差しで並べました。なお、住宅太陽光とFITの関係は2026年の住宅用太陽光FITと非FITの比較、補助の併用ルールは太陽光・蓄電池・V2H補助金の併用条件で詳しく解説しています。

何が変わると結論がひっくり返るか:排出係数の将来とエリアの差

1トンあたりの公費は、分母の「減るCO2」が電気の排出係数で決まるため、電気の低炭素化の進み方で動きます。全国平均(0.423kg/kWh)が2030年に0.25kg/kWhへ直線的に下がる場合(S1)、さらに2040年に0.10kg/kWhまで下がる場合(S2、仮定。2040年の公式な見通しはありません)を計算しました。設置は2027年としています。

排出係数のシナリオ別の1トンあたりの公費。住宅太陽光(5万円/kW)はいまのまま4,737円、2030年0.25kgで7,736円、2040年0.10kgで11,485円。乗用EV(2026年登録)は116,374円、91,707円、87,936円
図5 電気の排出係数が下がった場合の1トンあたりの公費(S1:2030年に0.25kg/kWh、S2:さらに2040年に0.10kg/kWh)
補助いまのまま(S0)2030年0.25kg(S1)2040年0.10kg(S2)S0→S2の変化
エコキュート2,738円4,428円5,892円2.2倍
住宅太陽光(自治体5万円/kW)4,737円7,736円11,485円2.4倍
産業用太陽光4,763円7,778円11,548円2.4倍
公共施設(交付金1/2)11,027円18,007円26,735円2.4倍
乗用EV(2026年中の登録の額)116,374円91,707円87,936円0.76倍
商用EV220,062円152,720円147,143円0.67倍
産業用蓄電池243,431円393,721円523,938円2.2倍

太陽光やエコキュートは「系統の電気を減らす」ことで削減するため、電気がきれいになるほど1トンが高くなります。EVは「ガソリンを電気に置き換える」ため、電気がきれいになるほど1トンが安くなります。今の排出係数だけで順位をつけると、電化の補助を過小評価し、発電・省電力の補助を過大評価する方向にずれる点は、長期の予算を組むうえで押さえておくべき論点です。

エリアの差も無視できません。住宅太陽光(5万円/kW)の1トンあたりは、排出係数の高い沖縄(0.677kg/kWh)が3,283円で最も安く、東北(0.400kg/kWh)が5,512円で最も高くなりました。乗用EVは逆に、中部が約10.2万円で最も安く、沖縄が約17.6万円で最も高い結果です。

エリア別の1トンあたりの公費。住宅太陽光は沖縄3,283円が最も安く東北5,512円が最も高い。乗用EVは中部約10.2万円が最も安く沖縄約17.6万円が最も高い
図10 エリア別の1トンあたりの公費(左:住宅太陽光・自治体5万円/kW、右:乗用EV・CEV2026年登録の額)

補助の単価を全国一律にすると、同じ公費で減るCO2はエリアで1.7倍程度変わります。国の制度では一律が原則ですが、自治体が独自に上乗せを設計する場合は、地域の排出係数と日射を前提にした「地域モデル」で1トンあたりを計算してから単価を決めることが、説明責任の面でも有効です。

意外な発見:家庭用蓄電池とV2Hは、平均の排出係数で数えるとCO2が「増える」

家庭用蓄電池とV2Hは、補助が決め手になる割合が大きい一方で、CO2の削減量の数え方が難しい設備です。蓄電池は太陽光の余りをためて夜に使いますが、ためずに売った場合も、その電気は系統で誰かに使われ、火力発電を減らしていると考えられます。この「平均の排出係数」の考え方では、蓄電池は充放電の損失(往復効率88%と仮定)と待機電力の分だけ、むしろ電気の使用量が増えます。

家庭用蓄電池とV2HのCO2。平均係数では15年で蓄電池が約3.5トン、V2Hが約1.6トン増える(中央値)。出力制御で捨てられる電気をためる上限の場合でも、1トンあたりの公費は国DR約2.7万円〜V2H国+都約17.7万円
図6 家庭用蓄電池・V2HのCO2の数え方(左:1件あたりの15年の削減量、右:上限で数えた1トンあたりの公費)
補助平均の係数で数えた15年の削減量(中央値)上限で数えた削減量(中央値)上限で数えた1トンあたりの公費追加性
家庭用蓄電池(国DR 3.45万円/kWh)−3.5トン(増加)12.0トン27,325円0%
家庭用蓄電池(東京都10万円/kWh)80,459円64%
V2H(東京都50万円)−1.6トン(増加)5.2トン85,407円0%
V2H(国)138,809円23%
V2H(国+東京都)177,157円55%

上限=売るはずだった太陽光の余りが、すべて出力制御で捨てられる電気だったとみなした場合。実際の出力制御の量はエリア・年で大きく異なり、多くの家庭ではこの上限より小さくなります。

削減になるのは、ためた電気が「捨てられるはずの再エネ」だった場合です。九州など出力制御が多いエリアでは、昼の余りをためて夜に使うことに意味があります。そうした条件をすべて満たしたと仮定した上限でも、1トンあたりは2.7万〜17.7万円でした。蓄電池・V2Hの補助を「CO2対策」として評価すると、他の補助に比べて分が悪いというのが本試算の結果です。

ただし、これは蓄電池の補助に意味がないという結論ではありません。蓄電池の価値は、CO2よりも停電時の電気、需給ひっ迫時のDR(需要の調整)、出力制御の緩和にあります。国のDR補助が「DR契約の継続」を条件にしているのは、その価値を買うためと読めます。補助の評価指標を「CO2 1トンあたり」に固定すると、こうした目的の補助が不当に低く評価されます。評価指標を目的ごとに分けることが、次の節のテーマです。なお、産業用蓄電池は、ストレージパリティ補助の要件(逆潮流なし)に合わせて「余った太陽光は捨てられる」前提で計算しているため、余剰をためる分は削減に数えています。家庭用(売電で系統の電気を置き換える前提)とは数え方の前提が異なります。蓄電池そのものの経済性は蓄電池243ケースの試算、V2HはV2H243ケースの試算で詳しく示しています。

EVの補助:「よく走る車」ほど1トンあたりが安く、軽バンと2tトラックでは約10倍の差

乗用EVの1トンあたりの公費は、車種と年間走行距離で大きく変わります。補助は1台あたりの定額なのに、CO2の削減量は走行距離にほぼ比例するためです。

乗用EVの車種別・年間走行距離別の1トンあたりの公費。軽EVは年2万kmで約4.3万円、年5千kmで約17.3万円。コンパクトEVは年2万kmで約7.8万円、年5千kmで約31万円
図9 乗用EV・PHEVの車種×年間走行距離別の1トンあたりの公費(CEV2026年中の登録の額、自宅充電、9エリア合計)
車種(補助額・2026年中の登録)年5,000km年10,000km年15,000km年20,000km
軽EV(58万円)約17.3万円約8.6万円約5.8万円約4.3万円
コンパクトEV(129万円)約31.1万円約15.5万円約10.4万円約7.8万円
SUV EV(130万円、比較相手はHV)約34.5万円約17.3万円約11.5万円約8.6万円
SUV PHEV(85万円、比較相手はHV)約33.4万円約16.7万円約11.1万円約8.3万円

商用EVでは差がさらに大きくなります。軽バン(N-VAN eなど)は1トンあたり約4.1万〜4.2万円、補助が決め手になる割合は17〜28%でした。一方、2tトラック(エルフEV)は補助が約570万〜580万円と大きく、1トンあたりは約37万〜46万円で、今回の走行距離・充電方法の組み合わせでは補助が決め手になったケースはありませんでした(8年保有の総額で比較)。

商用EVの1トンあたりの公費。軽バンは事業用約4.2万円・自家用約4.1万円、2tトラックは事業用約37万円・自家用約46万円
図12 商用EVの車両別の1トンあたりの公費(8年のCO2削減量で割った値、各36ケースの合計)

EVの補助の論点は2つです。1つは走行距離との連動です。年5千kmの車と年2万kmの車に同じ額を払うと、1トンあたりは4倍違います。営業車・配送車・タクシーなど走行距離の長い用途を優先する設計は、1トンあたりの効率を上げます。もう1つは死荷重の存在です。乗用EVでも27%のケースは補助なしで10年の総額がガソリン車(またはHV)より安く、特に年2万km走る軽EVでは78%が死荷重でした。よく走る車ほど1トンは安いものの、補助がなくても選ばれやすい、というトレードオフがあります。なお、乗用EVのCO2は10年保有の期間で数えています。車を13年使うと仮定すると、減るCO2が約1.3倍になり、1トンあたりは2026年中の登録の額で約9.0万円、2027年の登録の額で約5.6万円に下がります(補助が決め手になるかの判定は10年保有の総額のまま)。EVとガソリン車の総額比較は車種別TCOの試算、商用EVは商用EVのTCO試算をご覧ください。

レジリエンス(停電への備え)の価値はどう扱うか:CO2とは別の勘定にする

補助の目的には、CO2の削減のほかに「停電への備え」があります。蓄電池・V2H・公共施設の太陽光+蓄電池は、この価値が大きい設備です。シリーズの試算では、次のような結果が出ています。

  • V2H:リーフ(55kWh)なら冷蔵庫・照明・通信などに絞った電気を満充電から約6日分まかなえる計算でした(V2H243ケース)。
  • 公共施設:系統につながった太陽光だけでは、72時間の停電で重要負荷をまかなえる割合は0%(自立運転用コンセントの限られた利用を除く)。蓄電池を足すと平均41〜90%をまかなえますが、避難所になりうる施設84ケースすべてで、蓄電池は20年の節約より費用が上回りました(公共施設の財源別試算)。

この価値をCO2の1トンあたりの計算に混ぜると、どちらの評価もあいまいになります。本記事では、次のように別の勘定で扱うことを提案します(制度設計の論点としての整理で、正解を断定するものではありません)。

価値測り方の例CO2の1トンあたりに入れるか評価に使う数字
CO2の削減寿命の削減量(排出係数のシナリオ別)入れる1トンあたりの公費、追加性
停電への備え停電時にまかなえる時間・割合、対象世帯数・避難所数入れない「重要負荷72時間を確保できる施設1か所あたりの公費」など
需給ひっ迫時の調整(DR)制御できる容量(kW)と継続年数入れない「調整できる1kWあたりの公費」
出力制御の緩和ためた余剰電力量(エリアの制御量の範囲内)上限として別記上限で数えた1トンあたり
家計・企業の負担軽減年間の電気代・燃料費の削減額入れない補助1円あたりの節約額

停電の価値を「保険料」として評価する方法は、蓄電池243ケースの特集で、停電の発生頻度と1回あたりの損失から試算しています。レジリエンスを目的に含む補助では、CO2の物差しで高いことを理由に削るのではなく、目的に合った物差しで比べることが、予算要求の説明を通しやすくします。

特集:補助の効き方を6つの角度で測る

ここまでの「1トンあたり」と「追加性」に加え、補助の設計を変えたときに何が起きるかを6つの角度から見ます。

① 精密化:需要家ごとに「足りない分」だけを払えたら、公費はいくらで済むか

補助が決め手になるケースでも、補助額が「回収目安に届くのに必要な額」より多ければ、差額は上乗せになります。決め手になるケースに必要額だけを払った場合の公費を、いまの補助の合計と比べました。これは需要家ごとの必要額を事前に完全に知っている場合の理論上の下限です。

必要額だけを払った場合の公費の割合。東京都の蓄電池補助は現行の53%、V2Hの国+東京都は44%、V2H国は20%、産業用蓄電池は4%
図7 同じ件数を補助で動かすのに必要な公費の理論上の下限(いまの補助の合計を100%とした割合)

東京都の蓄電池補助を全国に当てはめた場合、決め手になる64%のケースを動かすのに必要な公費は現行の53%、V2Hの国+東京都では44%でした。実際には需要家ごとの必要額は事前に分からないため、この下限には届きません。近づける方法としては、入札(逆オークション)、容量や設置条件で段階的に下がる単価、成果に連動した後払い(DRの実績払いなど)が考えられます。いずれも事務の負担が増えるため、事務の費用と公費の節約を比べて選ぶのが現実的です。

② 家庭用蓄電池は「15年で元が取れる」のに1kWhあたり約8.5万円の補助が要る

家庭用蓄電池を15年で回収できるようにするために必要な補助額の分布。中央値は1kWhあたり約8.5万円。一律10万円/kWhでは76%のケースで必要額を上回る
図8 家庭用蓄電池を15年で回収できるようにするのに必要な補助額(1kWhあたり、243ケースの分布)

蓄電池の価格を15万円/kWh(税込)とした243ケースでは、15年で回収できるようにするための補助額は中央値で1kWhあたり約8.5万円(10kWhで約9.1万円、15kWhで約7.6万円)でした。一律10万円/kWhでは76%のケースで必要額を上回ります。一方、国のDR補助(3.45万円/kWh)で必要額に届くケースはありませんでした。補助単価を蓄電池の価格の下落に合わせて見直すことは、死荷重を増やさずに件数を保つための論点になります。

③ 補助は回収を何年早めるか

補助ありとなしの回収年数(中央値、回収できないケースは25年で打ち切り)。東京都の蓄電池補助は25年超→13.8年、V2H国+都は25年超→12.8年、公共施設の交付金1/2は8.8年→4.6年、住宅太陽光10万円/kWは10.0年→6.5年、5万円/kWは10.0年→8.3年、産業用太陽光は6.6年→5.1年、エコキュートは1.5年→0.8年
図11 補助なし・補助ありの回収年数(それぞれの中央値。回収できないケースは25年で打ち切って計算)。本文の「何年早まるか」はケースごとの短縮年数の中央値のため、図の2つの中央値の差とは少し異なる場合があります

公共施設の交付金1/2は、回収年数を中央値8.8年から4.6年へ約4.3年早めます。住宅太陽光は5万円/kWで約1.7年、10万円/kWで約3.5年早まります。死荷重のケースでも「早く回収できる」ことは導入の判断を後押しするため、追加性がゼロだから効果がゼロとは言い切れません。ただし、エコキュートのようにもともと1〜2年で回収できる設備では、0.7年早めることの意味は小さいと考えられます。

④ 公共施設:発電した電気を使い切れる施設ほど1トンあたりが安い

公共施設の施設類型別の1トンあたりの公費。浄水場・下水処理場約9,900円、公立病院約1万円、庁舎約1.1万円、消防署約1.3万円、公民館約1.3万円、体育館約1.5万円、小中学校約1.5万円
図13 公共施設の施設類型別の1トンあたりの公費(交付金1/2と仮定、20年の削減量で割った値)

浄水場・下水処理場・公立病院のように24時間電気を使う施設は、屋根の太陽光の電気をほぼ使い切れるため、1トンあたりが約1万円と安くなります。小中学校・体育館は休日に余りが出るため約1.5万円です。交付金をどの施設に優先して使うかを決める際、1トンあたりの差は最大1.5倍程度です。施設ごとの回収年数と停電時の役割を合わせて見る必要があります。

⑤ 産業用:低圧の小さな工場ほど補助が決め手になりやすい

産業用太陽光の規模別の死荷重と追加性。高圧500kW・1500kWは死荷重100%、低圧50kWは死荷重81%・追加性17%
図14 産業用太陽光の規模別の死荷重・追加性(回収目安10年)

高圧(契約500kW・1,500kW)の工場・施設では、回収目安10年なら補助がなくてもすべて回収できました。低圧(50kW)では17%のケースで補助が決め手になりました。設備単価の高い小規模案件ほど補助の意味が大きいことを示しています。産業用蓄電池は、どの規模でも補助が決め手になる割合は0〜6%でした。詳しくは産業用の業種別×規模別の試算をご覧ください。

⑥ 住宅太陽光:補助がなくても15年以内に回収できるケースがほとんど

住宅太陽光162ケースの補助なし・補助ありの回収年数。補助なしでも全ケースが15年以内に回収、中央値約10年。自治体5万円/kWで約8.3年、10万円/kWで約6.5年
図15 住宅太陽光の回収年数(補助なし・自治体5万円/kW・10万円/kW、162ケース)

住宅太陽光(4kW・6kW、31.9万円/kWと仮定)は、補助なしでも162ケースすべてが15年以内に回収でき、中央値は約10年でした。自治体の補助5万円/kWで約8.3年、10万円/kWで約6.5年に短くなります。家庭が「10年以内なら入れる」と考える場合は補助が決め手になる割合が46〜51%に上がるため(結果③)、住宅太陽光の補助の効き方は、住民の回収目安をどう見るかで評価が分かれます。

予算要求・事業評価にそのまま使える表と、制度設計の論点

環境省・自治体の担当者が、予算要求や行政事業レビュー、議会への説明で使えるよう、本記事の考え方を表にしました。数値は本試算の条件での値で、地域の実情に合わせて計算し直すことが前提です。

表A:補助事業の費用対効果を示す5つの指標(予算要求様式への転記用)

指標計算式必要なデータ本試算の例(住宅太陽光・自治体5万円/kW)本試算の例(家庭用蓄電池・東京都10万円/kWh)
1件あたりの補助額補助総額÷件数交付実績25万円(中央値)100万円(中央値)
CO2 1トンあたりの公費補助総額÷寿命の削減量設備の発電量・使用量、排出係数(シナリオ別)4,737円(2030年0.25kgなら7,736円)平均係数では削減なし(上限で80,459円)
死荷重の割合補助なしで回収目安以内の件数÷件数需要家の回収目安、補助なしの回収年数100%(目安15年)/49%(目安10年)0%
追加性の割合補助で初めて目安以内になる件数÷件数補助あり・なしの回収年数0%(目安15年)/46%(目安10年)64%(目安15年)
補助の精密さ決め手になる件の必要額の合計÷補助総額需要家ごとの必要額—(決め手になる件がない)53%(残りは必要額を上回る分)

表B:補助ごとの位置づけ(本試算の条件での整理)

位置づけ該当する補助(本試算)特徴設計の論点(断定ではなく検討の観点)
1トンは安いが、回収目安では決め手になりにくいエコキュート、住宅太陽光、公共施設、産業用太陽光(高圧)補助なしでも回収できる。導入を早める効果はある初期費用・情報・屋根診断などの「経済性以外の壁」を下げる支援との組み合わせ/単価の段階的な引き下げ/対象を回収の長い条件に絞るか
1トンは高いが、決め手になりやすい乗用EV、家庭用蓄電池(都)、V2H(国+都)補助が導入を左右する。必要額を上回る分がある走行距離・容量・価格に応じた段階的な単価/価格下落に合わせた見直しの頻度/DRなどCO2以外の目的の明示
1トンが高く、決め手にもなりにくい商用EV(2tトラック)、産業用蓄電池、家庭用蓄電池(国DR)補助があっても回収できない件が多いCO2以外の目的(物流の電動化の先行投資、需給調整)の評価指標を別に置くか/実証・量産効果を狙うなら件数目標と期間を明確にするか
CO2の数え方で評価が変わる家庭用蓄電池、V2H平均係数では削減にならない出力制御の多いエリア・時間に限った評価/レジリエンス・DRの指標で評価

表D:同じ1億円を使った場合に、何件・何トン動くか(本試算のケース構成での換算)

補助(設定)補助できる件数うち決め手になる件数(目安で判定)寿命のCO2削減量(いまの係数)同(2030年0.25kg)
エコキュート(9万円/台)約1,111件0件約36,500トン約22,600トン
住宅太陽光(自治体5万円/kW)400件0件約21,100トン約12,900トン
産業用太陽光(4万円/kW)約5件約0.2件約21,000トン約12,900トン
公共施設(交付金1/2)約5件0件約9,100トン約5,600トン
乗用EV(2026年中の登録の額)約100台約49台約860トン約1,090トン
乗用EV(2027年の登録の額)約159台約45台約1,370トン約1,740トン
商用EV(CEV/LEVO)約31台約3.5台約450トン約660トン
家庭用蓄電池(東京都10万円/kWh)約94件約60件削減なし(平均係数)削減なし
V2H(国+東京都)約96件約53件削減なし(平均係数)削減なし

本試算のケース構成(エリア・規模・車種を同じ重みで数えた分布)で1億円あたりに換算した値。実際の申請の構成で重みづけすると変わります。「決め手になる件数」は回収目安(家庭15年・企業10年・自治体15年・EVは保有総額)での判定です。

同じ1億円でも、エコキュートや住宅太陽光なら数万トン単位のCO2削減に「関わる」一方で、補助が決め手になる件数はゼロです。乗用EVや蓄電池は、減るCO2は小さいものの、補助で動く件数は約50〜60件あります。予算要求では「何トン減るか」と「何件を補助で動かすか」を分けて示すと、議論がかみ合いやすくなります。

表C:予算要求・評価の資料に入れておきたい前提の開示(チェックリスト)

  • 排出係数:どの年度の、どの係数(全国平均・事業者別・残差)を使ったか。将来の低炭素化のシナリオを置いたか。
  • 寿命:太陽光20年、蓄電池15年など、何年の削減量で割ったか。
  • 回収の目安:家庭・企業・自治体それぞれ何年で判定したか。根拠(アンケート・申請データ)はあるか。
  • 補助の範囲:国・都道府県・市町村の補助を合算したか、自治体の負担分だけか。FITなど賦課金による支援を含めたか。
  • レジリエンス・DR:CO2とは別の指標で示したか。
  • 地域の条件:地域の電気料金・日射・排出係数で計算したか(全国平均を使っていないか)。

制度設計の7つの論点(本試算から見える検討の観点)

  1. 目的を1つに決めるか、複数の指標で評価するか:CO2、家計の負担軽減、防災、産業育成のどれを主目的にするかで、同じ補助の評価は逆になります。目的ごとに評価指標を分けて事前に公表すると、事後評価がぶれにくくなります。
  2. 回収の目安の根拠:死荷重・追加性は目安で大きく動きます。住民・事業者の「何年なら導入するか」を調べたデータがあれば、補助単価の根拠になります。
  3. 単価の見直しの頻度:蓄電池のように価格が下がる設備では、同じ単価のままだと必要額を上回る部分が年々増えます。価格の公的統計と連動した見直しのルールが考えられます。
  4. 段階的な単価・上限:走行距離、容量、規模に応じて単価を変えると、決め手になる層に公費を集めやすくなります。事務の負担とのバランスが前提です。
  5. 経済性以外の壁への支援:補助なしでも回収できる設備が普及しない理由が「初期費用」「情報」「手間」なら、補助額より融資、初期費用ゼロのモデル、相談窓口、屋根診断のほうが効く可能性があります。
  6. 地域の条件の反映:排出係数と日射の違いで、1トンあたりはエリアで1.7倍程度変わります。自治体の上乗せは地域モデルで計算してから決めるのが説明しやすい方法です。
  7. 事後評価のデータの取り方:申請時に「補助がなかったら導入したか」「何年で回収できると説明を受けたか」を聞き、設備の容量・使い方と合わせて記録すると、次の制度の死荷重を実績で推計できます。

この表の考え方は、補助を「削るため」の物差しではありません。同じ予算で、どの対象に、どの単価で、どの順に支援すると、決め手になる件数と減るCO2が最大になるかを説明するための道具です。補助制度を逆算で設計する考え方はスマエネ補助金の逆算型設計支援、自治体GX施策の費用対効果の考え方は自治体GX施策の費用対効果をどう測るか、海外の制度設計は海外主要国の補助金制度設計の分析でも解説しています。

補助制度の設計を相談するなら:地域モデルで「決め手になる件数」まで示せる相手に

補助制度の費用対効果を説明するのに必要なのは、全国平均の1つの数字ではなく、地域の電気料金・日射・排出係数で計算した「モデル世帯」「モデル事業者」ごとの回収年数と、補助あり・なしの差です。これがあれば、1トンあたりの公費、死荷重、追加性を同じ表で示せます。

エネがえるは、自治体の地域脱炭素・GXの取り組みを、試算と事務の両面で支援しています。

  • 地域モデル世帯・業種別の試算:地域の電気料金プランと日射で、世帯タイプ別(共働き・在宅多め・オール電化など)、業種別の太陽光・蓄電池・V2H・エコキュート・EVの効果を試算し、補助単価ごとの回収年数の変化を一覧にします。
  • 試算代行(BPO):制度設計の段階の多数ケースの一括試算、予算要求・議会説明向けの資料作成、公共施設の財源別比較までを代行します。
  • 事務局代行・事業者ネットワーク:補助事業の事務局業務や、地域の販売施工店・EPCとの連携づくり、申請時の経済効果試算の標準化を支援します。
  • API・データ:電気料金プラン・補助金のデータベースと試算APIを、自治体や事業者の申請・相談の仕組みに組み込めます。

販売施工店・EPCにとっても、この考え方は提案に使えます。お客様に「補助があるから得」ではなく、「補助なしで何年、補助ありで何年。補助がなくても元が取れる条件か、補助が決め手になる条件か」を示すと、補助の締め切りに追われた提案より納得を得やすくなります。エネがえるASP・Bizでは、補助の有無を切り替えた試算を同じ帳票で並べられます。自治体の再エネ施策の試算の進め方は自治体の再エネ経済効果シミュレーション実務で、補助を待つべきかの判断は2027年度の補助金を待つべきかで解説しています。ご相談はエネがえるからお問い合わせください。

よくある質問

再エネ補助金の費用対効果は、CO2 1トンあたり何円ですか?

制度によって約80〜90倍違います(産業用蓄電池を参考値とした場合は約80倍)。本試算(排出係数はいまのまま、全ケース合計)では、エコキュート約2,700円、住宅太陽光(自治体5万円/kW)約4,700円、産業用太陽光約4,800円、公共施設(交付金1/2)約1.1万円、乗用EV約7.3万〜11.6万円、商用EV約22万円、産業用蓄電池約24万円でした。家庭用蓄電池・V2Hは平均の排出係数ではCO2が減らず、上限で数えても2.7万〜17.7万円です。

1トンあたりが安い補助ほど効果的なのですか?

そうとは限りません。本試算では、1トンあたりが安いエコキュート・住宅太陽光・公共施設は、回収の目安(家庭・自治体15年)で判定すると全ケースが補助なしでも回収できました。補助がなくても導入される人に払われる割合(死荷重)が大きいため、補助で初めて導入された分だけで割り直すと、1トンあたりは大きく上がります。

死荷重とは何ですか?

補助がなくても導入されたはずの人に払われる部分のことです。本記事では、補助なしでも回収目安以内に回収できるケースを死荷重、補助で初めて目安以内になるケースを追加性(決め手)と呼んでいます。死荷重のケースでも回収が早まる効果はありますが、回収年数を基準にした場合の「上乗せの効果」は小さいと考えます。

家庭用蓄電池の補助はCO2削減になりますか?

平均の排出係数で数えると、充放電の損失と待機電力の分だけ排出が増えるため、削減にはなりません(15年で中央値約3.5トン増)。出力制御で捨てられる電気をためた場合に限って削減になり、その上限で数えても1トンあたり約2.7万〜8.0万円です。蓄電池の補助は、停電への備えや需給調整(DR)の価値で評価する考え方もあります(論点)。

EVの補助は費用対効果が悪いのですか?

1トンあたりは高い一方、補助が決め手になる割合は大きい(2026年中の登録の額で49%)という特徴があります。年間走行距離が長い車ほど1トンあたりは安く、軽EVで年2万km走る場合は約4.3万円でした。電気の低炭素化が進むと1トンあたりはさらに下がります(2030年0.25kg/kWhで約2割減)。

電気の排出係数が下がると、補助の評価はどう変わりますか?

太陽光・エコキュートなど系統の電気を減らす設備は、電気がきれいになるほど1トンあたりが高くなります(2040年に0.10kg/kWhまで下がると約2.4倍)。EVなど電気に置き換える設備は安くなります。今の係数だけで比べると、電化の補助を過小評価しやすい点に注意が必要です。

自治体が補助制度を設計するとき、何を計算すればよいですか?

地域の電気料金・日射・排出係数で、モデル世帯・モデル事業者ごとに「補助なし」と「補助あり」の回収年数を計算し、1トンあたりの公費・死荷重・追加性の3つを並べることをおすすめします。回収の目安(何年なら導入するか)を住民・事業者アンケートで確かめると、補助単価の根拠になります。エネがえるは地域モデルの試算と試算代行(BPO)で支援しています。

この試算の数値は、そのまま予算要求に使えますか?

考え方と表の形はそのまま使えますが、数値は本試算の条件(2026年11月時点の料金・補助、排出係数は令和6年度実績、回収目安は仮定)での値です。補助単価・対象・地域の条件が違えば結果は変わるため、自治体の実情に合わせて計算し直してください。

前提条件(すべて公開)

項目値出典・根拠
排出係数(エリア)令和6年度実績の事業者全体の参考値(kg/kWh):北海道0.518、東北0.400、東京0.421、中部0.376、北陸0.431、関西0.396、中国0.472、四国0.448、九州0.449、沖縄0.677環境省・経済産業省
全国平均係数0.423kg/kWh同上
将来の係数S0:いまのまま/S1:2030年に0.25kg/kWhへ直線的に低下、以後一定/S2:S1の後、2040年に0.10kg/kWhへ(エリア係数は全国平均の比率で変化)0.25は電気事業低炭素社会協議会、0.10は仮定
設置年・寿命2027年設置。太陽光・公共施設20年、蓄電池・V2H・エコキュート15年、乗用EV10年、商用EV8年仮定
回収の目安家庭15年、企業10年(感度5・7年)、自治体15年(感度10年)、乗用EV10年・商用EV8年の総額仮定
家庭用蓄電池15万円/kWh(税込)、往復効率88%、待機電力25W蓄電池243ケース
V2H約139万円(工事込み・税込)V2H243ケース
住宅太陽光31.9万円/kW、4kW・6kW、劣化年0.5%蓄電池243ケースの構成A・B
FITの支援額(買取単価−太陽光の時間帯の市場価値9.4円/kWh)×売電量、10年間買取単価は資源エネルギー庁、市場価値は仮定
エコキュート電気温水器の電力量をエコキュートの3倍と仮定(感度:2.5倍で約3,650円/t、3.5倍で約2,190円/t)。節約は夜間の電力量単価で計算。電気温水器との価格差10万・20万・35万円仮定(料金は蓄電池243ケースの料金モデル)
乗用EV・商用EV元記事の車両価格・燃費・電費・充電方法。電気のCO2はエリア係数に置き換え各元記事
産業用・公共施設元記事の8,760時間モデルの結果。CO2は事業者全体の係数に換算各元記事
比較の目安J-クレジット再エネ(電力)4,699円/t(2026年10月5日終値)、炭素価格1万円/t(仮定)日本取引所グループ
金額名目、割引なし。補助は交付額(自治体の負担・国の負担を区別しない)—

この試算の限界

  • 導入の判断を「回収年数」だけで決まると仮定しています。実際には初期費用の手持ち、情報、屋根の状態、手間、停電への不安など経済性以外の要因があり、死荷重・追加性はこの仮定に大きく依存します。
  • ケースは同じ重みで数えています。実際の申請件数の分布(エリア・世帯タイプ・車種の構成)で重みづけしていないため、制度全体の実績値とは異なります。
  • 都の補助を全国に当てはめた値は仮想の比較です。東京都の蓄電池・V2H補助は都内だけの制度で、本記事の全国の値は「同じ設計を広げた場合」の参考です。
  • 補助の上限・予算の制約・併用ルールは単純化しています。国と自治体の補助の併用や、予算枠による受付終了は反映していません。
  • 導入の時期が早まる効果、学習効果(量産による価格低下)、地域経済への波及は数えていません。
  • CO2は平均の排出係数で数えています。限界電源(その時間に増減する電源)の係数で数えると、時間帯によって結果が変わります。蓄電池・V2Hは上限を別に示しました。
  • エコキュートの節約・価格差、太陽光の市場価値、回収の目安は仮定値です。結論が変わりうる値は感度を示しています。

ファクトチェック・エビデンス検証一覧

この記事の主な数値と主張を、どの方法で検証し、どの根拠に基づいているかを一覧にしました。制度・排出係数は官公庁・執行団体の公表資料を原文で確認しています。

検証の方法(4段階)

  1. 一次情報との照合:排出係数(環境省・経済産業省)、補助制度(東京都、SII、次世代自動車振興センター、LEVO、給湯省エネ事業、環境省・EIC)、FIT買取単価(資源エネルギー庁)、J-クレジットの価格(日本取引所グループ)を原文で確認しました(確認日:2026年11月1日)。
  2. 元の試算との照合:各シリーズ記事のケース別データ(CSV)から、補助なし・ありの回収年数が元の記事の結果と一致することを確認しました。
  3. 再集計の再現:補助額・CO2削減量・3区分の判定は1本のコードで計算し、ケース別データ(3,072行)と集計表を保存しています。
  4. 独立レビュー:独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。

根拠の確かさの区分

区分意味
A 一次情報官公庁・執行団体・取引所の公式資料で確認した値
B 民間・業界資料メーカー資料・業界団体の見通し
C 自社の既存試算エネがえるが公表済みの試算記事のケース別データ
M 計算結果本記事の再集計の結果
H 仮定値確かな統計がないため置いた値。感度を示している

前提と外部データの検証

項目記事での値区分検証結果出典
エリア別・全国平均の排出係数R6実績、全国平均0.423kg/kWhA確認済み環境省・経済産業省
2030年の排出係数見通し0.25kg/kWh程度(使用端)。2040年は公式の見通しなし(0.10は仮定)B/H確認済み(業界団体の見通し。地球温暖化対策計画の本文には数値の記載を確認できず)電気事業低炭素社会協議会
東京都の蓄電池補助10万円/kWh、上限120万円A確認済み東京都環境局
国のDR蓄電池補助3.45万円/kWh、3/10、上限60万円A確認済みSII
国のV2H補助の受付終了2026年8月27日到着分までA確認済み次世代自動車振興センター
CEV補助の額・受付終了見込み車種別の額、2027年1月以降は減額、12月上旬〜下旬に終了見込みA確認済み銘柄ごとの上限額、お知らせ
LEVOの基準額エルフEV 5,796,000円(事業用)ほかA確認済みLEVO
給湯省エネ2026の補助額基本7万円、電気温水器撤去+2万円、遅くとも2026年12月31日までA確認済み事業概要、事業チラシ
ストレージパリティ補助太陽光4万円/kW、蓄電池3.9万円/kWhA確認済み公募要領
重点対策加速化事業の交付率2/3〜1/3・定額(本試算は1/2)A/H確認済み(1/2は仮定)環境省
FITの買取単価24円(1〜4年)、8.3円(5〜10年)A確認済み資源エネルギー庁
J-クレジット(再エネ・電力)4,699円/t(2026年10月5日終値)A確認済み(1日の値。日々変動)日本取引所グループ
回収の目安・寿命・市場価値9.4円・エコキュートの3倍前提条件の表のとおりH仮定。感度を表示—

結果と主張の検証

主張区分検証方法結果
1トンあたりの公費は2,738円〜220,062円(約80倍)、産業用蓄電池243,431円は参考値M補助合計÷削減量合計(S0)確認済み(家庭用蓄電池・V2Hは除外)
エコキュート・住宅太陽光・公共施設は死荷重100%M/H補助なしの回収年数と目安15年の比較条件付き。目安10年なら住宅太陽光49%・公共施設70%
追加性は都の蓄電池64%、V2H国+都55%、乗用EV49%M/H補助あり・なしの回収年数(保有総額)条件付き。都の補助は全国に当てはめた仮想
家庭用蓄電池・V2Hは平均係数でCO2が増える、上限で2.7万〜17.7万円/tM/H損失・待機電力・余剰の扱いを2通りで計算条件付き(上限は出力制御の量に依存)
必要額だけ払えば都の蓄電池53%、V2H国+都44%M決め手になる件の必要額の合計÷補助合計確認済み(理論上の下限)
蓄電池の必要補助額 中央値約8.5万円/kWhM15年の節約と15万円/kWhの差確認済み
2030年0.25kgで太陽光は約1.6倍、EVは約2割減M/H係数のシナリオ別に再計算確認済み(シナリオは仮定を含む)
エリア差:太陽光は沖縄が最安、EVは沖縄が最高Mエリア別の合計確認済み

更新履歴(2026年11月1日)

  • ケース数の表記を「9種類の設備・10の補助制度、元の試算1,515ケース・評価単位1,893・3,072通り」としました。
  • 産業用蓄電池の1トンあたりの値を参考値として扱い、制度間の差を「約80〜90倍(参考値を除くと約80倍)」と表記しました。
  • 給湯省エネ2026の金額を事業概要ページで確認し、EVを13年使う場合とエコキュートの倍率の感度を追記しました。
  • 比較の目安として、東証のJ-クレジットの終値(2026年10月5日)を使用しています。
  • EVの電気のCO2(元記事は0.45kg/kWhの仮定)と、産業用・公共施設の残差係数を、エリア別の事業者全体の係数にそろえています。
  • 家庭用蓄電池・V2Hは、平均係数で削減にならないため1トンあたりの順位から外し、上限を別に示しています。

この一覧は、条件の更新に合わせて見直します。誤りに気づいた場合は、エネがえるまでお知らせください。関連する試算:蓄電池は元が取れない?全国243ケース/V2Hは元が取れない?243ケース/卒FIT後の選択肢243ケース/EVとガソリン車の車種別TCO/商用EVのTCO/産業用の自家消費型太陽光・蓄電池/大企業の脱炭素の組み合わせ別試算/自治体の公共施設の太陽光

シリーズの全テーマ:エネがえる試算ライブラリ(12テーマの結論を1ページで比較)

試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年11月1日/試算条件の確認日:2026年11月1日。制度・電気料金・排出係数に変化があれば、条件を更新して再計算します。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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