結論から言います。商用EVが元を取れるかどうかは、車の種類・ナンバーの区分(自家用か事業用か)・走行距離・充電のしかたの4つでほぼ決まります。軽バンのEVは、事業用(黒ナンバー)なら補助を使い事業所で夜間に充電すれば約1〜2年、補助がなくても年2.5万km走れば約6年で価格差を取り戻せました(関東)。一方、2t級のEVトラックは、国の補助(価格差の3分の2)を使っても、年2万kmの使い方では8年で約145万円が残ります。4つの車種区分、年間走行距離3水準、充電方法4通り、3地域(関東・関西・九州)、補助のあり・なしを掛け合わせた288ケースを、2026年10月26日の燃料価格と2026年11月以降の電気料金で試算しました。
3つの答え
- 条件がそろえば割に合う:走る軽バンは、補助があれば短期間で元が取れる。事業用(黒ナンバー)の軽バン(ホンダ N-VAN e: とガソリンの N-VAN の比較)は、国の補助(LEVO補助金78.2万円)と充電器の補助を使い、事業所で夜間に充電すると、9ケースすべてで保有8年の正味がプラスになりました(中央値 約136万円の得)。自家用(黄ナンバー)の軽バンは、補助45.8万円(2027年1月以降の登録の額)なら年およそ1.2万km以上で8年で回収できます(関東・夜間充電)。ただしCEV補助金は2026年12月上旬〜下旬に予算到達で受付終了の見込みで、2027年に登録する車は補助を受けられない可能性が高く、その場合は年約2.0万km以上が必要です。
- 条件がそろわないと単体では元が取れない:2t級トラックは補助を使っても8年では回収できない。EVトラック(いすゞ エルフEV)は、国の補助の基準額が価格差の3分の2(事業用で579.6万円)ありますが、トラックの144ケース(事業用・自家用×補助あり・なし)のどれも、保有8年では回収できませんでした。補助ありで8年以内に回収するには年約5万km、12年なら年約2.8万km以上の走行が必要です(関東・夜間充電)。太陽光で昼間に直接充電できる運用なら、年3万kmで約8年まで縮みます。
- 経済性以外の理由で選ばれている。LEVOの補助(事業用の軽バンとトラック)を受けるには、2030年度までの電動車などの区分別導入計画の提出が必要で、車両総重量8t以下の車(軽バンを含む)は2030年度に保有割合5%以上が交付の必須条件です。軽バンでもトラックでも、EVは1台あたり年に約0.4〜3.3トンのCO2を減らせます。事業用の軽バンは減らすほど得になり(1トンあたり約8万〜10万円の得)、自家用の軽バンは走行距離によって約5万円の得から約4万円の費用まで、トラックは1トンあたり約5万〜58万円の費用がかかります(補助あり・夜間充電)。
この記事で分かること(数値の要点)
- EVの「燃料代」は、どこで充電するかで3倍以上変わります。関東では、軽バンは1kmあたり、ガソリン約9.6円に対し、事業所の電気で約3.2円、外部の急速充電(80円/kWhと仮定)なら約11.1円でした。トラックは軽油約15.5円に対し、事業所の電気で約9.9円、急速充電なら約34.2円です(税抜)。
- 帰庫直後の一斉充電は、基本料金を大きく押し上げます。物流倉庫(高圧・最大500kW)で軽バン50台を帰庫直後に一斉に充電すると、最大需要が約295kW増え、基本料金は年約721万円増えました(関東)。20時から翌7時に平準化すれば増えません。
- 自家用の軽バンは、年をまたぐと補助が12.2万円減ります。国のCEV補助金は、2026年12月31日までの登録なら58万円、2027年1月1日以降は45.8万円です(N-VAN e:)。予算に達すれば受付は早く終わり、終了の見込みは12月上旬〜下旬とされています。受付が12月に終了した場合、2027年の登録分は補助なし(年1.5万kmで8年約28万円の損)になります。
- トラックで結論を最も動かすのは車両の価格差です。価格差が20%小さければ、年2万km・8年でもほぼ損益ゼロ(約29万円の得)になります。
- 50台を替えるなら、走る軽バンから。仮想の50台(事業用軽20・自家用軽15・トラック15)では、1台あたりの得が大きい順に替えると、30台目までで8年の正味が最大約3,716万円の得になり、トラックまで全部替えると約1,542万円の得に縮みます。
- 太陽光でEVを走らせて得なのは、昼間に車が戻るときだけです。太陽光から直接入れる電気は1kWhあたり約9円ですが、定置用の蓄電池にためて夜に入れると約45円(概算)になり、事業所の電気(関東 約21円)より高くなります。
検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。288ケースは年単位の独立計算モデル(デマンドの検証は1時間単位)で試算しました。車両価格・補助額・燃料価格・税率は公式資料で確認し、確認できない値(トラックの電費・燃費、保守費の差など)は仮定値として明記し、感度分析で幅を示しています。金額は、事業者が消費税を仕入税額控除できる前提で税抜です。試算条件・計算方法・出典は本文末尾にすべて公開しています。
なぜ今、計算し直す必要があるのか
商用EVの損得は、この1年で前提が大きく動きました。ネット上の比較記事の多くは「EVは燃料代が安い」「補助金が出る」と一般論で終わっていますが、実際の損得は次の4つの変化で大きく変わります。
- 燃料の税が変わりました。軽油引取税の「当分の間税率」(32.1円/L)は2026年4月1日に廃止され、15円/Lになりました(香川県)。ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止され、店頭価格に反映済みです(資源エネルギー庁 燃料油価格の定額引下げ・緊急的激変緩和措置)。2026年10月26日調査の全国平均は、レギュラーガソリン170.1円/L(資源エネルギー庁「ガソリン全国平均価格の推移」)、軽油159.7円/Lです(軽油は資源エネルギー庁「石油製品価格調査」の値を集計サイトとLOGI-TODAYで確認)。この店頭価格は、国の緊急的激変緩和措置(2026年3月19日開始)の補助で抑えられた価格で、10月26日の週の支給額は42.8円/L(ガソリン・軽油とも。10月29日からは52.4円/Lに拡大)です。補助額は元売りへの1Lあたりの支給単価で、店頭価格への影響は消費税分などでやや大きくなり得ます。補助がない場合のガソリン価格は約212.9円/Lと示されています。補助が縮小・終了すると、EVの燃料代の差は本試算より大きくなります(下の「燃料価格の補助がなくなったら」)。
- 国の補助の仕組みが、ナンバーの区分で分かれています。CEV補助金は自家用(白・黄ナンバー)の車が対象で、事業用の車両は対象外です(次世代自動車振興センター)。事業用の軽貨物(黒ナンバー)やトラック(緑ナンバー)は、環境省・経済産業省・国土交通省の連携事業「商用車等の電動化促進事業」(執行団体:環境優良車普及機構=LEVO)の補助を使います(LEVO)。
- 補助額に期限があります。CEV補助金の軽EVの補助額は、2027年1月1日以降の登録分から下がります(N-VAN e:は58万円→45.8万円、銘柄ごとの補助金交付額(令和8年10月30日現在))。受付は予算に達し次第終了し、終了の見込みは2026年12月上旬〜下旬とされています(10月9日公表)。
- 急速充電の料金が上がる方向にあります。時間課金だけでなく、充電量(kWh)に応じた課金の実証も始まっています(ENEOS Charge Plusの例:会員99円/kWh、ビジター154円/kWh、ENEOS)。外部の急速充電に頼る運用では、EVの燃料代がガソリン車より高くなることがあります。
この記事では、これらをすべて反映した条件で、商用EVの損得を車種区分ごとに試算しました。EVトラックの電源設計の考え方はEVトラックは本当に高い?補助金込みTCO比較と営業所の電源設計、市場の動向は商用BEV(バン・小型トラック)市場動向・TCO分析でも整理しています。
検証の方法:288ケースの設計
比べるのは、同じ用途のEVとエンジン車を同じ年数・同じ距離使った場合の総費用の差です。車両の価格差(補助後)と充電器の自己負担を最初に払い、その後の燃料代・電気代・保守費・税の差で取り戻せるかを見ます。
| 軸 | 設定 |
|---|---|
| 車種区分(4) | ①軽バン・事業用(黒ナンバー)②軽バン・自家用(黄ナンバー):ホンダ N-VAN e: L4 とガソリンの N-VAN L(FF・CVT)③2t級トラック・事業用(緑ナンバー)④同・自家用(白ナンバー):いすゞ エルフEV(NMR・66kWh)と同等仕様のディーゼル車 |
| 年間走行距離(3) | 事業用の軽:1.5万・2.5万・4万km/自家用の軽:0.8万・1.5万・2.5万km/事業用トラック:1万・2万・3万km/自家用トラック:0.8万・1.5万・2.5万km |
| 充電方法(4) | A 事業所で夜間に普通充電(デマンドを上げない)/B 帰庫直後に普通充電(夕方のピークに重なり、充電器1台分6kWの基本料金が上がる)/C 外部の急速充電が中心(80円/kWhと仮定)/D 太陽光で昼間に直接充電(充電量の6割)+残りを夜間 |
| 地域(3) | 関東・関西・九州(燃料は東京都・大阪府・福岡県の価格、電気は各地域の高圧の料金) |
| 補助(2) | あり(自家用の軽:CEV補助金45.8万円=2027年1月以降の登録の額。受付は2026年12月に予算到達で終了する見込みのため、2027年の登録では「なし」が現実的/事業用の軽:LEVO 78.2万円/トラック:LEVOの基準額)・なし |
| 保有年数 | 8年(感度分析で5年・10年。回収年数は最大20年まで計算) |
4×3×4×3×2=288ケースです。軽バンの価格差はメーカー希望小売価格(税抜)の差(245.4万円−149.9万円=95.5万円)、トラックの価格差は、LEVO補助の基準額が「(電動車両価格−同等のディーゼル車両の価格)×2/3」で決まる仕組みから逆算しました(エルフEV・事業用の基準額579.6万円÷2/3=約869万円)。基準額は補助の上限で、実際の交付額はこれより小さくなる場合があります。
燃料代と電気代は、カタログ値(WLTCモードなど)に実走の効率係数0.85を掛けて計算しました。EVとエンジン車に同じ係数を使い、どちらかだけ有利にならないようにしています。年間の上昇率は燃料・電気とも2%、割引率は使っていません(名目)。
この記事で使う言葉
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| TCO(総保有コスト) | 車両の購入費から燃料・電気・保守・税まで、保有期間にかかる費用の合計。本記事ではEVとエンジン車の差だけを計算 |
| 自家用・事業用 | 自社の荷物や社員を運ぶ車は自家用(白・黄ナンバー)、運賃をもらって他人の荷物を運ぶ車は事業用(緑・黒ナンバー)。使える補助が異なる |
| 基準額(LEVO) | トラックなどの補助の上限額。BEVは「電動車両の価格−同等のディーゼル車の価格」の3分の2 |
| 最大需要(デマンド) | 30分ごとの平均使用電力の最大値。高圧(500kW未満)では、その月と過去11か月の最大値で契約電力(基本料金)が決まる |
| 8年の正味 | 8年間の節約の合計から、最初の負担(価格差−補助+充電器の自己負担)を差し引いた額。プラスならEVが得 |
何で稼ぐのか:「1kmあたりのエネルギー費」の差
EVの得は、ほぼ「1kmあたりのエネルギー費の差×走行距離」で決まります。図1は、関東で1km走るのにかかる燃料代・電気代です。

- 事業所で普通充電すれば、EVの燃料代はエンジン車の約3分の1(軽)〜3分の2(トラック)。高圧の事業所の電力量料金は、燃料費等調整と再エネ賦課金を含めて税抜で約20〜22円/kWhです(関東21.1円、関西21.5円、九州19.7円)。
- 急速充電に頼ると、EVのほうが高くなります。80円/kWh(税込)なら、軽バンで1kmあたり約11.1円とガソリン(約9.6円)を上回り、トラックでは約34.2円と軽油(約15.5円)の2倍以上です。
- 太陽光から直接入れられれば、最も安くなります。ただし、これは昼間に車が事業所にいる場合に限ります(後述の特集で詳しく扱います)。
図2は、事業用の軽バンを関東で年2.5万km走らせた場合の1年目の節約の内訳です。

燃料代約24.1万円に対し電気代は約8.1万円で、差は約16万円です。これに保守費の差(仮定2.5万円)と税の差(仮定0.3万円)を加えると、1年目の節約は約18.9万円になります。補助後の価格差(95.5万円−78.2万円=17.3万円)と充電器の自己負担(7.5万円、仮定)を合わせた約24.8万円は、約1.3年で取り戻せる計算です。
見落としやすいのが基本料金です。高圧の事業所では、30分ごとの最大需要電力で基本料金が決まります(契約電力500kW未満の場合)。図3は、物流倉庫(合成した需要)に軽バン50台の充電を加えた1日の例です。

帰庫直後の17時に一斉に充電を始めると、倉庫の夕方の需要に重なって最大需要が上がります。同じ量の電気でも、20時から翌朝7時に分けて入れれば最大需要は変わりません。電気の「量」ではなく「入れる時間」で、基本料金が変わります。30分デマンドの仕組みは契約電力の統計学 30分デマンド値の計算ルールで詳しく解説しています。
結果①:回収できるのは軽バン。2t級トラックは補助があっても20年を超えるケースが多い
図4は、EVとの価格差(補助後)と充電器の自己負担を取り戻すまでの年数を、車種区分ごとに並べたものです。20年以内に回収できないケースは上端に置き、中央値には「20年超」のケースも含めています。

| 車種区分 | 補助 | 8年の正味がプラス | 回収年数の中央値(20年超を含む) | 15年以内に回収 | 20年超 |
|---|---|---|---|---|---|
| 軽バン・事業用(黒) | あり(LEVO 78.2万円) | 24/36 | 1.9年 | 24/36 | 12/36 |
| 軽バン・事業用(黒) | なし | 14/36 | 8.9年 | 21/36 | 13/36 |
| 軽バン・自家用(黄) | あり(CEV 45.8万円) | 12/36 | 11.9年 | 20/36 | 16/36 |
| 軽バン・自家用(黄) | なし | 6/36 | 17.9年 | 15/36 | 17/36 |
| 2t級トラック・事業用(緑) | あり(LEVO 579.6万円) | 0/36 | 20年超 | 11/36 | 21/36 |
| 2t級トラック・事業用(緑) | なし | 0/36 | 20年超 | 0/36 | 36/36 |
| 2t級トラック・自家用(白) | あり(LEVO 568.4万円) | 0/36 | 20年超 | 9/36 | 21/36 |
| 2t級トラック・自家用(白) | なし | 0/36 | 20年超 | 0/36 | 36/36 |
各区分36ケース=走行距離3×充電方法4×地域3。保有8年の正味=8年間の燃料・電気・保守・税の差の合計−(価格差−補助)−充電器の自己負担。保険・残価・電池交換は含めていません(感度分析で扱います)。自家用の軽バンの「あり」はCEV補助金45.8万円(2027年1月以降の登録の額)です。CEV補助金は2026年12月に予算到達で受付終了の見込みのため、2027年に登録する車は「なし」の行が現実的です。
軽バンとトラックで結果が分かれる理由は単純で、価格差の大きさです。軽バンの価格差は約95万円ですが、2t級トラックは補助の仕組みから逆算すると約870万円あります。トラックは1kmあたりの燃料代の差が大きい(1km約5.6円)ものの、年2万kmでも1年目の節約は保守・税を含めて約18万円にとどまり、補助後でも残る約290万円(充電器の自己負担を含めると約297万円)を8年では取り戻せません。
地域による差は小さい
関東・関西・九州で比べると、地域による差は小さく、結論は変わりませんでした。燃料価格の地域差(1リットル数円)と電気料金の差(1kWhあたり2円弱)が、ほぼ打ち消し合うためです。
| 条件(補助あり) | 関東 | 関西 | 九州 |
|---|---|---|---|
| 事業用の軽バン・年2.5万km・夜間充電 | +136万円(1.3年) | +135万円(1.3年) | +139万円(1.3年) |
| 自家用の軽バン・年1.5万km・夜間充電 | +18万円(6.6年) | +17万円(6.6年) | +20万円(6.5年) |
| 事業用のトラック・年2万km・夜間充電 | −145万円(14.9年) | −148万円(15.2年) | −134万円(14.0年) |
| 事業用のトラック・年3万km・太陽光で昼間に6割 | −9万円(8.2年) | −10万円(8.3年) | −3万円(8.1年) |
金額は保有8年の正味、括弧内は回収年数。九州は高圧の電力量料金がやや安いため、トラックでわずかに有利になります。
結果②:同じ車でも、充電のしかたで8年の損得が逆転する
図5は、関東・補助ありの場合の8年の正味を、車種区分×走行距離(行)と充電方法(列)で並べたものです。

- 夜間の普通充電(A)と太陽光(D)がプラスになる組み合わせは、事業用の軽バンのすべての走行距離と、自家用の軽バンの年1.5万km以上です。
- 急速充電中心(C)は、どの車でもマイナスです。事業用の軽バンでも8年で約14万〜45万円の損、トラックでは約365万〜716万円の損になりました。急速充電は「足りないときの補助」と考えるのが現実的です。
- 帰庫直後の普通充電(B)は、充電器1台分(6kW)の最大需要が上がると、関東では基本料金が1台あたり年約14.7万円増えます。これだけで事業用の軽バン年2.5万kmの8年の得が約136万円から約10万円に縮みます。
結果③:8年で回収できる走行距離は、軽バン(自家用)で約1.2万km、トラックで約5万km
図6は、関東で夜間に普通充電する場合に、価格差と充電器の自己負担を8年(濃い色)または12年(薄い色)で取り戻せる年間走行距離です。

| 車種区分 | 補助あり・8年 | 補助あり・12年 | 補助なし・8年 | 補助なし・12年 |
|---|---|---|---|---|
| 軽バン・事業用(黒) | 0.1万km未満 | 0.1万km未満 | 約1.9万km | 約1.1万km |
| 軽バン・自家用(黄) | 約1.2万km | 約0.7万km | 約2.0万km | 約1.2万km |
| 2t級トラック・事業用(緑) | 約5.0万km | 約2.8万km | 約17.5万km | 約10.9万km |
| 2t級トラック・自家用(白) | 約5.1万km | 約2.9万km | 約17.4万km | 約10.8万km |
事業用の軽バンは、補助(車両78.2万円+充電器22.5万円)で価格差と充電器の費用のほとんどが埋まるため、走行距離にかかわらずすぐに回収できます。トラックは、補助ありでも年5万km(1日約200km、年250日稼働)を超えないと8年では回収できません。エルフEV(66kWh)の一充電走行距離は190km(国土交通省審査値、いすゞ)なので、この距離を走るには途中充電か大容量バッテリーの車型が必要になり、その分の費用は本試算に入っていません。
保有年数で見ると
EVの得は「1年あたりの節約×年数」で増えるため、保有年数が長いほど有利になります(関東・夜間充電・補助あり、電池交換は含めない)。
| 保有年数 | 5年 | 8年 | 10年 | 12年 | 15年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事業用の軽バン(年2.5万km) | +73万円 | +136万円 | +179万円 | +225万円 | +295万円 |
| 自家用の軽バン(年1.5万km) | −20万円 | +18万円 | +44万円 | +71万円 | +114万円 |
| 事業用のトラック(年2万km) | −204万円 | −145万円 | −105万円 | −63万円 | +1万円 |
トラックは15年使ってようやく損益ゼロに届く計算です。ただし、15年使う場合は電池の劣化と交換の可能性を考える必要があり、その費用は上の表に入っていません。
3つのケーススタディ
代表的な使い方を3つ取り上げ、補助ありの数字を並べました(年をまたぐ前提の補助額)。
ケース1:宅配の軽貨物(黒ナンバー)1台・関東・年3万km
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 最初の負担(価格差−補助+充電器の自己負担) | 約24.8万円 |
| 1年目の燃料代/電気代 | 約28.9万円/約9.7万円(夜間に普通充電) |
| 1年目の節約(保守・税の差を含む) | 約22.1万円 |
| 回収年数/8年の正味 | 約1.1年/約163万円の得(補助なしでも約63万円の得) |
| 帰庫直後に充電して基本料金が上がる場合 | 8年で約37万円の得に縮む |
| CO2削減 | 年約2.3トン |
ケース2:地場の工務店の軽バン(自家用・黄ナンバー)3台・関西・1台年1.2万km
| 項目 | 1台あたりの値 |
|---|---|
| 最初の負担(価格差−CEV補助45.8万円+充電器) | 約79.7万円 |
| 1年目の燃料代/電気代 | 約11.6万円/約3.9万円 |
| 回収年数/8年の正味 | 約7.9年/ほぼ損益ゼロ(約1万円の得) |
| 補助がない場合/帰庫直後の充電で基本料金が上がる場合 | 約45万円の損/約104万円の損 |
年1.2万kmは、自家用の軽バンが8年で回収できるかどうかの境目です。2026年中に登録して58万円の補助を受けられれば、約12万円改善します。
ケース3:地場の運送会社の2t級トラック(緑ナンバー)10台・九州・1台年2.5万km
| 項目 | 1台あたりの値 |
|---|---|
| 最初の負担(価格差約869万円−LEVO 579.6万円+充電器) | 約297万円 |
| 1年目の燃料代/電気代 | 約38.8万円/約23.2万円 |
| 1年目の節約(保守・税の差を含む) | 約22.6万円 |
| 回収年数/8年の正味 | 約12.2年/約107万円の損(10台で約1,074万円の損) |
| 補助がない場合 | 約710万円の損 |
| CO2削減 | 年約1.35トン(10台で約13.5トン) |
10台を一度に替えるより、まず1〜2台で実際の電費と運用を確かめ、価格差が縮んだ車型から段階的に増やすほうが、損を抑えながら判断材料を集められます。
トラックの価格差がいくらまで縮めば、8年で回収できるか
補助が価格差の3分の2(基準額の上限どおり)で続くとすると、自己負担は価格差の3分の1と充電器の自己負担(7.5万円)です。8年の運用での節約(燃料・電気・保守・税の差)がこれを上回る価格差を、走行距離ごとに逆算しました(事業用、関東・夜間に普通充電)。
| 年間走行距離 | 8年で回収できる価格差の上限 | 本試算の価格差(約869万円)との差 |
|---|---|---|
| 年1万km | 約290万円 | 約579万円縮む必要 |
| 年2万km | 約434万円 | 約435万円縮む必要(半分) |
| 年3万km | 約578万円 | 約291万円縮む必要 |
計算式:価格差の上限=3×(8年の節約−充電器の自己負担7.5万円)。補助の基準額は価格差の3分の2が上限で、車型ごとに一覧表で決まっています。見積もりの価格差がこの値を下回る車型なら、8年での回収が視野に入ります。
低圧の事業所(小規模な営業所・店舗)で充電する場合
本試算は高圧の事業所の料金を使っています。小規模な営業所や店舗のような低圧の契約では、1kWhあたりの電気代が高く、充電器の分だけ契約を大きくすると基本料金も増えます。東京電力EPの2026年11月1日以降の単価(東京電力EP 低圧電力:基本料金1,190.83円/kW・月、東京電力EP 従量電灯C:基本料金392.06円/kVA・月、いずれも税込)と九州電力の低圧電力で、夜間に普通充電する場合を再計算しました(補助あり、8年の正味、税抜)。電力量料金は燃料費等調整(関東−4.65円/kWh)と再エネ賦課金(4.18円/kWh)を含め、低圧電力は関東23.2円・九州20.2円/kWh、従量電灯Cは第3段階料金(使用量300kWh超)で36.4円/kWhです。
| 車種区分・走行距離 | 接続する契約 | 契約を大きくしない | 6kW(6kVA)大きくする |
|---|---|---|---|
| 事業用の軽バン・年2.5万km | 低圧電力(関東) | 約129万円の得 | 約65万円の得 |
| 事業用の軽バン・年2.5万km | 低圧電力(九州) | 約137万円の得 | 約75万円の得 |
| 事業用の軽バン・年2.5万km | 従量電灯C(関東) | 約85万円の得 | 約63万円の得 |
| 自家用の軽バン・年1.5万km | 低圧電力(関東) | 約13万円の得 | 約50万円の損 |
| 自家用の軽バン・年1.5万km | 低圧電力(九州) | 約18万円の得 | 約44万円の損 |
| 自家用の軽バン・年1.5万km | 従量電灯C(関東) | 約13万円の損 | 約35万円の損 |
6kW(6kVA)大きくした場合の基本料金の増加(8年、年2%上昇):低圧電力(関東)約64万円、従量電灯C(関東)約22万円。従量電灯Cの燃料費等調整は低圧電力と同じ単価と仮定。ケース別の値は01_cases/lowvoltage.csv。
事業用の軽バンは、どの低圧の契約でもプラスのままです。自家用の軽バンは、充電のために低圧電力(動力)の契約電力を6kW増やす場合、8年で約50万円の損に転じます。ただし6kWの普通充電器は単相200Vが一般的で、従量電灯Cなど電灯の契約で容量を増やす場合は基本料金の増え方が小さく(東京電力EPの従量電灯Cなら8年で約22万円の増加)、約35万円の損になります。電灯の契約は1kWhあたりの単価(第3段階)が高いため、容量を増やさなくても約13万円の損です。どの契約に接続するかで結果が大きく変わるため、自社の契約で確かめてください。既存の契約の範囲で夜間に充電できるか(出力を3kW程度に抑える、他の機器と時間をずらす)を先に確認することも有効です。
試算の確からしさ:公表値での照合と、このモデルの限界
エネがえるの試算サービスでは、EVの経済効果を個別条件で計算できますが、本記事の288ケースは、補助の仕組みや充電方法の違いを横並びで比べるため、独立した計算モデルで試算しました。モデルの値は、次の公表値と照合しています。
| 照合項目 | 公表値 | モデル | 判定 |
|---|---|---|---|
| N-VAN e: L4 の補助後価格(自家用・CEV 58万円) | 2,119,400円(税込、Honda) | 2,699,400円−580,000円=2,119,400円 | 一致 |
| N-VAN e: の事業用補助 | 78.2万円(Honda・LEVO基準額一覧) | 782,000円 | 一致 |
| 2027年1月以降のCEV補助額 | 458千円(銘柄ごとの交付額) | 458,000円 | 一致 |
| エルフEVの価格差 | 非公表(基準額=価格差×2/3) | 基準額579.6万円から約869万円と逆算 | 条件付き(基準額は上限) |
| トラックの電費・燃費 | 一充電190km・66kWh(公表)、燃費は車型による | 電費0.40kWh/km、燃費11km/L(いずれもカタログ相当の仮定) | 仮定(感度分析あり) |
車両の価格と補助額は公式資料と一致しています。一方、トラックの電費・燃費と保守費の差は公表された比較データがなく、仮定値です。図9の感度分析で、これらを±20%以上動かしても「トラックは補助ありでも8年では回収できない」という結論が変わるのは、車両の価格差が20%小さい場合だけでした。
補助を使うと:ナンバーの区分で、使える補助も金額も違う
商用EVの補助は、「自家用か事業用か」「車両総重量が2.5トンを超えるか」で使える制度が分かれます。ここを取り違えると、試算の前提が大きくずれます。
| 車の区分 | 使える国の補助 | 本記事の車両での額 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 自家用の軽バン(黄ナンバー)・乗用の営業車(白ナンバー) | CEV補助金(次世代自動車振興センター) | N-VAN e::2026年12月31日までの登録58万円、2027年1月1日以降45.8万円 | 中古車・事業用車両は対象外。登録は2027年2月1日まで、申請は2月12日必着。予算到達で早期終了あり |
| 事業用の軽貨物(黒ナンバー) | 商用車等の電動化促進事業(LEVO) | N-VAN e::78.2万円 | 貨物自動車運送事業者など。2030年度までの区分別導入計画の提出が必要で、車両総重量8トン以下(軽バンを含む)は2030年度に保有割合5%以上が交付の必須条件。申請は2027年1月15日まで |
| トラック(車両総重量2.5トン超、事業用・自家用) | 同上(LEVO) | エルフEV(NMR):事業用579.6万円、自家用568.4万円(基準額=価格差×2/3、上限) | 2030年度までの区分別導入計画の提出(8トン以下は2030年度に保有割合5%以上が必須)。多排出事業者はGXリーグへの参加表明など |
| 充電設備(トラック等と一体導入) | 同上(LEVO) | 本記事では1口30万円(仮定)のうち22.5万円 | 車両数≧充電口数。機器は出力に応じて10/10・1/2・1/3、工事は10/10(それぞれ上限あり) |
出典:次世代自動車振興センター(CEV補助金)、登録・受付期間の最終期限、LEVO NEWS No.97(2026年5月)、LEVO 基準額一覧表。いずれも2026年10月31日に確認。自治体の上乗せ(東京都のZEV補助など)は本試算に含めていません。
図7は、各区分の中央の走行距離で、補助前の価格差(+充電器)・補助・8年の運用での節約を並べたものです。

軽バンは、補助と8年の節約の合計が価格差を大きく上回ります。トラックは、補助で価格差の3分の2が埋まっても、残り(充電器を含めて約297万円)を8年の節約(約152万円)では取り戻せません。年2万km・8年で回収するには、車両と充電器を合わせて約747万円の補助が必要で、現行の基準額(車両579.6万円+充電器22.5万円=約602万円)では約145万円足りない計算です。
自家用の軽バンでは、登録が年をまたぐかどうかが効きます(図8)。

年1.5万km走る自家用の軽バンは、2026年中に登録できれば8年で約30万円の得、2027年1月以降なら約18万円の得、補助がなければ約28万円の損です。年0.8万kmしか走らない場合は、どの補助額でも8年では回収できません。CEV補助金は予算に達し次第終了し、終了の見込みは12月上旬〜下旬とされています。納期と登録日を販売店に確認しておく価値があります。
何が変わると結論がひっくり返るか
図9は、関東・夜間充電・補助ありの代表ケース2つ(事業用の軽バン年2.5万km、事業用のトラック年2万km)で、前提を1つずつ動かしたときの8年の正味の変化です。

- 軽バン:どの前提を動かしてもプラスのままです。保有を5年にすると約73万円、燃料価格が20%下がると約94万円の得に縮みますが、マイナスにはなりません。EVの残価がエンジン車より車両価格の10%分低い場合(約25万円)でも約111万円の得です。
- トラック:結論を変えるのは車両の価格差だけです。価格差が20%小さければ約29万円の得、20%大きければ約319万円の損です。燃料価格が20%上がっても約92万円の損、保守費の差が2倍でも約97万円の損で、プラスにはなりません。EVの残価がエンジン車より車両価格(約1,300万円と仮定)の10%分低いと、損は約276万円に広がります。
- 燃料と電気の上昇率は、両方が同じように上がる前提では結論をほとんど動かしません(トラックで±7万円程度)。
残価の考え方はEVの残価率は本当に低いのか?で詳しく整理しています。
燃料価格がいくらになれば結論が変わるか
燃料価格だけを動かして、8年の正味が損益ゼロになる価格を求めました(関東・夜間充電・補助あり、電気料金は据え置き)。
| 条件 | 損益ゼロになる燃料価格(税込相当) | 現在(2026年10月26日・東京) |
|---|---|---|
| 自家用の軽バン・年1.5万km | ガソリン約145円/L以上なら得 | 169.5円/L(すでに上回る) |
| 自家用の軽バン・年0.8万km | ガソリン約223円/L以上 | 169.5円/L |
| 事業用のトラック・年3万km | 軽油約197円/L以上 | 158.0円/L |
| 事業用のトラック・年2万km | 軽油約245円/L以上 | 158.0円/L |
トラックが8年で回収するには、関東の軽油(税込158.0円)が、年3万kmなら約25%(約197円)、年2万kmなら約55%(約245円)高くなる必要があります。
燃料価格の補助がなくなったら
本試算の燃料価格は、国の緊急的激変緩和措置で1Lあたり42.8円(10月26日の週。10月29日からは52.4円/Lに拡大)抑えられた店頭価格です(資源エネルギー庁 燃料油価格の定額引下げ・緊急的激変緩和措置)。この補助がなくなり、その分が店頭価格に上乗せされた場合(ガソリン約25%・軽油約27%高、仮定)を再計算しました(関東・夜間充電・補助あり、8年の正味)。
| 車種区分・走行距離 | 現在の店頭価格 | 燃料の補助がない場合 |
|---|---|---|
| 事業用の軽バン・年2.5万km | 約136万円の得 | 約188万円の得 |
| 自家用の軽バン・年1.5万km | 約18万円の得 | 約49万円の得(回収約5.1年) |
| 自家用の軽バン・年0.8万km | 約21万円の損 | 約4万円の損 |
| 事業用のトラック・年2万km | 約145万円の損 | 約74万円の損 |
| 事業用のトラック・年3万km | 約97万円の損 | 約10万円の得(回収約7.8年) |
燃料の補助がなくなると、よく走るトラック(年3万km)は8年でわずかにプラスに転じます。補助拡大後の水準で外すと、EVの得はさらに大きくなります(本試算は10月26日時点で計算)。補助の支給額は毎週見直されているため、導入の判断では「補助がある今の価格」と「補助がない価格」の両方で比べておくと、結論がどちらに振れるかを把握できます。
意外な発見:「どこで・いつ充電するか」は、補助金と同じくらい効く

事業用の軽バン年2.5万kmでは、補助の有無による差は8年で約101万円(約136万円の得と約35万円の得)です。一方、充電のしかたによる差は、太陽光(約159万円の得)と急速充電中心(約26万円の損)で約185万円あり、補助の差より大きくなりました。トラックでも、充電方法の差(太陽光と急速充電中心で約468万円)は、補助の有無の差(約602万円)に迫ります。
つまり、補助金の情報を集めることと同じくらい、「車がいつ事業所にいて、どこで何kWを入れるか」を設計することが大切です。運行データから充電計画を立てる考え方は商用フリートEVシフト戦略:走行・運行データの類型化で解説しています。
よくある誤解
- 「EVは燃料代が安いから、どの車でも得」:燃料代の差が大きくても、価格差がそれ以上に大きければ回収できません。軽バンは価格差約95万円に対して年十数万〜二十数万円の節約がありますが、2t級トラックは補助後でも約297万円の負担に対して年18万〜23万円程度の節約です(年2万〜2.5万km)。
- 「充電は急速充電で十分」:外部の急速充電を中心にすると、1kmあたりの電気代がガソリン・軽油を上回ることがあり、本試算ではどの車種区分でも8年の正味がマイナスでした。
- 「補助金は誰でも同じ」:同じN-VAN e:でも、自家用は45.8万〜58万円(CEV補助金)、事業用は78.2万円(LEVO)と、ナンバーの区分と登録時期で20万円以上違います。
- 「太陽光があればEVはタダで走る」:太陽光の電気をEVに直接入れられるのは、昼間に車が事業所にいる時間だけです。夜に充電する車のために蓄電池を足すと、1kWhあたりのコストは事業所の電気より高くなります。
自家用のトラック、営業車、送迎車はどうか
- 自家用の2t級トラック(白ナンバー):車両総重量2.5トン超ならLEVOの補助(エルフEV・NMRで基準額568.4万円)を使えます。結果は事業用とほぼ同じで、補助ありでも8年では回収できず(36ケース中0)、年約5.1万km走れば8年で回収できます。自家用トラックは走行距離が短い傾向があるため、経済性だけで見ると最も厳しい区分です。
- 乗用の営業車:CEV補助金の対象です。軽乗用のEV(例:ホンダ N-ONE e: は2,699,400円(税込)、補助58万円、Honda)とガソリン車の価格差は、軽バンと同じく100万円前後の水準です。年1.5万km以上走り、事業所や自宅で夜間に充電できれば、自家用の軽バンに近い結果になると考えられます。ただし、比較するガソリン車の価格と燃費を公式に確認できなかったため、本記事の288ケースには含めていません。
- 送迎車(ワンボックス・マイクロバス):国内で選べるEVの車種と価格の公表情報が限られるため、試算していません。送迎は運行時刻が決まっていて昼間に車庫にいる時間が長いことが多く、太陽光で昼間に充電する運用(方法D)と相性がよい可能性があります。
それでもEVを選ぶ理由:経済性以外の判断材料
今回の試算では、トラックのEVは補助があっても8年では回収できませんでした。それでもEVを検討する事業者が判断材料にしている点を、確認できる事実の範囲で整理します。
- 補助の条件そのものが、中長期の計画を求めています。LEVOの補助(事業用の軽バンとトラック)を受けるには、2030年度までの毎年度の区分別導入計画を出し、車両総重量8トン以下の車(軽バンを含む)では2030年度に電動車などの保有割合を5%以上にすることが交付の必須条件です(LEVO)。単年の損得ではなく、数年かけた入れ替え計画として判断する前提になっています。
- CO2の削減量がはっきり計算できます。本試算では、EV1台あたり年約0.4〜3.3トンのCO2を減らせます(ガソリン2.32kg/L・軽油2.58kg/L、電気は各社の残差メニューの排出係数で計算)。運送を委託する荷主にとっては自社のサプライチェーン排出(Scope3)の削減にあたるため、取引条件の一部として求められる場面があります。
- 停電時の電源になります。N-VAN e: など外部給電機能を持つ車は、災害時に照明や通信機器の電源として使えます(東京都のZEV補助には給電機能付車両への上乗せがあります、Honda)。
商用EVの導入理由についての統計的な調査データは、本記事では使っていません。上記は、公開されている制度と試算結果から確認できる範囲に限っています。
特集:商用EVの価値を6つの角度から測る(反実仮想・値札・フリート・デマンド・太陽光・CO2)
「何年で元が取れるか」だけでは、フリートの入れ替えは判断できません。ここでは同じモデルで、6つの角度から商用EVの価値を測り直します。
特集の結論
- エンジン車を使い続けた場合との差は、軽バンとトラックで正反対です。事業用の軽バン(年2.5万km)は、補助ありで約1.3年、補助なしでも約6.3年で逆転します。トラック(年2万km)は補助ありでも約14.9年かかります(関東・夜間充電)。
- トラックの「値札」約869万円は、補助で3分の2が埋まり、残る約145万円が8年の運用では埋まりません(年2万km)。
- 50台を替えるなら、1台あたりの得が大きい軽バンから。仮想の50台では、30台目までで8年の正味が最大(約3,716万円の得)になりました。
- 帰庫直後の一斉充電は、50台で基本料金を年約721万円押し上げます(物流倉庫・関東)。夜間に平準化すれば増えません。
- 太陽光でEVを走らせて得なのは、昼間に車が事業所にいるときだけです。蓄電池を経由すると1kWhあたり約45円(概算)になります。
- CO2を減らす費用は、軽バンではマイナス(得)、トラックでは1トンあたり約5万〜58万円です。
角度① 反実仮想:エンジン車を使い続けた場合との累積の差

0年目の落ち込みが「価格差(補助後)+充電器の自己負担」、その後の傾きが1年あたりの節約です。軽バンは傾きが大きく、0年目の落ち込みが小さいため早く逆転します。トラックは補助で落ち込みが3分の1になっても、傾き(年約18万〜21万円)に対して落ち込み(約297万円)が大きく、12年後でも約63万円の損が残ります(補助なしなら約665万円の損)。この比較は電池の交換を含めていません。メーカーの保証期間を超えて使う場合は、電池の状態の確認と交換費用の見積もりが別途必要です。
角度② 値札の分解:2t級EVトラック約869万円の価格差のうち、何が埋まり何が残るか

燃料代の削減(8年で約266万円)から電気代(約170万円)を差し引いた正味のエネルギー費の差は約96万円にとどまります。保守・税の差(仮定、約56万円)を足しても、補助後に残る価格差と充電器の自己負担(約297万円)には届きません。トラックの経済性を改善する手段は、価格差が小さい車型を選ぶこと、走行距離を確保すること、太陽光で昼間に充電できる運用にすること(年3万km・方法Dなら約8年で回収)の3つです。
角度③ フリートの入れ替え順序:50台なら、どの車から替えるか

仮想の50台(事業用の軽バン20台=年4万km10台・年2.5万km10台、自家用の軽バン15台=年1.5万km10台・年0.8万km5台、トラック15台=事業用年3万km5台・年2万km5台・自家用年1.5万km5台)で試しました。
- 1台あたりの得が大きいのは、よく走る事業用の軽バン(年4万kmで約218万円の得)です。
- 30台目(自家用の軽バン年1.5万kmまで)で8年の正味が最大の約3,716万円の得になり、そこから先は替えるほど損が増えます。
- 全50台を替えると約1,542万円の得に縮みますが、CO2の削減は8年で約487トン(30台)から約675トン(50台)に増えます。
経済性だけを見れば「走る軽バンから替え、トラックは価格差が縮むのを待つ」が合理的です。CO2の目標がある場合は、残り20台の約188トンを1トンあたりいくらで減らすか(この例では1トンあたり約11.5万円)と比べて判断できます。複数台の導入をまとめて評価する考え方は法人EV導入:脱炭素と経済合理性の両立で紹介しています。
角度④ デマンドの落とし穴:一斉充電で基本料金が上がる

帰庫直後(17時〜)に一斉に充電すると、倉庫の夕方の使用電力に重なり、軽バン10台で最大需要が約55kW、50台で約295kW上がります。関東の高圧の基本料金では、年約134万円・約721万円の増加です。22時から一斉に充電するか、20時〜翌7時に平準化すれば、この倉庫では最大需要は変わりませんでした。なお、50台の一斉充電では最大需要が約795kWとなり500kWを超えます。契約電力500kW以上の施設は契約電力を電力会社との協議で決めるため、契約や料金メニューの見直しが必要になり、年約721万円は500kW未満の決め方(実量制)を当てはめた参考値です。
注意点が2つあります。第一に、この計算は1時間単位です。実際の基本料金は30分ごとの最大需要で決まるため、短時間に充電が重なると増加はこれより大きくなりえます。第二に、夜間の需要が大きい施設(冷凍冷蔵倉庫や24時間稼働の工場など)では、夜間の充電でも最大需要が上がることがあります。充電器の出力制御(デマンドコントロール)や、施設の30分デマンドデータを使った充電計画が有効です。
充電器は何台・何kWあればよいか
夜間に充電するなら、必要な充電器は思ったより小さくて済みます。本試算の1台1日あたりの充電量は、事業用の軽バン(年2.5万km、年250日稼働)で約15kWh、トラック(年2万km)で約38kWh、トラック(年3万km)で約56kWhです。6kWの普通充電器なら、それぞれ約2.6時間・約6.3時間・約9.4時間で入ります。
- 軽バン:夜間に8時間以上止まっていれば、3kW(200V・15A)でも1日分を充電できます。充電器を安くでき、最大需要も上がりにくくなります。
- トラック(年3万km以上):6kWでも9時間以上かかるため、夜間の停車時間が短い運用では、出力の大きい充電器や大容量バッテリーの車型が必要になり、その分の費用は本試算に含まれていません。
- 台数が多い事業所:充電器の出力を合計で制御する仕組み(デマンドコントロール)を入れ、施設の夜間の使用電力と合わせて最大需要を超えない範囲で配分するのが基本です。
角度⑤ 太陽光との組み合わせ:昼間に車がいるかどうかで答えが変わる

- 昼間に車が事業所に戻る運用(営業車の昼休み、送迎の待機、午前・午後の2便の配送など)なら、太陽光の電気(約9円/kWh、概算)を直接入れられ、最も安くなります。方法D(充電量の6割を太陽光)は、すべての車種区分で8年の正味が最も良い結果でした。
- 夜にしか車が戻らない運用では、太陽光の電気を定置用の蓄電池にためて夜に入れることになり、1kWhあたり約45円(蓄電池14万円/kWh・年300回・15年・往復効率88%の概算)と、事業所の電気(関東 約21円)の2倍以上になります。この場合は、太陽光は施設の昼間の電気に使い、EVは夜間に系統から充電するほうが合理的です。
太陽光と蓄電池の経済性は、産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算で業種別に試算しています。
角度⑥ CO2:1トン減らすのにいくらかかるか

CO2 1トンあたりの費用=(8年の正味の損)÷(8年のCO2削減量)で計算しました。事業用の軽バンは1トンあたり約8万〜10万円の得、自家用の軽バンは走行距離により約5万円の得〜約4万円の費用、トラックは約5万〜58万円の費用です(補助あり)。トラックでも、よく走る車(年3万km)ほど1トンあたりの費用は下がります。全社の脱炭素の打ち手と比べる考え方は、大企業の脱炭素は自家消費?オフサイトPPA?再エネ電力?で、電力側の削減単価と並べて整理しています。
EVに替えるべき車・待つべき車:判断チェックリスト
| 確認項目 | 替えやすい | 待ったほうがよい |
|---|---|---|
| 車種とナンバー | 事業用の軽バン(黒)、よく走る自家用の軽バン | 走行距離の短い自家用トラック |
| 年間走行距離 | 軽:年1.2万km以上(自家用・補助あり)。2027年の登録で補助を受けられない場合は年2.0万km以上 | トラック:年5万km未満で8年以内の回収を求める場合 |
| 充電場所 | 事業所で夜間、または昼間に太陽光で充電できる | 外部の急速充電に頼る運行 |
| 充電の時間帯 | 夜間に分散できる、充電器の出力制御を入れられる | 帰庫直後に一斉に充電するしかない |
| 補助 | 2026年中に登録できる(自家用・CEV補助)、LEVOの計画要件を満たせる | 納車が2027年2月以降になる(CEV補助の期限) |
| 保有年数 | 8年以上使う | 5年以内に入れ替える(残価の不確実性が大きい) |
導入までの進め方
- 車両の台帳を作る:車ごとのナンバー区分、年間走行距離、出庫・帰庫の時刻、昼間に戻るかを一覧にする。
- 候補を絞る:本記事の目安(軽バンは自家用で年1.2万km以上、CEV補助金の受付終了後に登録する場合は年2.0万km以上。事業用はほぼすべて)で、1台あたりの得が大きい車から候補にする。
- 補助の要件と期限を確かめる:自家用はCEV補助金(登録2027年2月1日まで、予算到達で早期終了)、事業用・トラックはLEVO(申請2027年1月15日まで、トラックは2030年度の導入計画が必要)。
- 事業所の電源を確かめる:30分デマンドデータで夜間の余力を見て、充電器の台数・出力・制御方法を決める。
- 小さく始める:トラックはまず1〜2台で実際の電費・運用を確かめ、結果をもとに増やす。
- 毎年見直す:燃料価格・電気料金・補助・車両価格は毎年変わるため、入れ替え計画を年1回更新する。
導入前の確認手順:充電器の選び方と電気の契約
本試算で結果を大きく動かしたのは「どこで・いつ・どの契約で充電するか」でした。車両の見積もりを取る前に、次の順で確認しておくと、導入後に「思ったより電気代が高い」「基本料金が跳ね上がった」という失敗を避けられます。
- 車ごとに「1日の走行距離」と「事業所にいる時間帯」を書き出す。1日の走行距離が一充電走行距離(N-VAN e:は245km、エルフEVは190km、いずれもカタログ値)の7割程度を超える日がある車は、途中充電が必要になる可能性があります。昼間に戻る車は太陽光で充電する候補になります。
- 必要な充電の量から、充電器の出力を決める。年2.5万km走る軽バンでも1日あたりの充電量は約15kWhで、6kWの普通充電なら約2.5時間、3kWでも約5時間で足ります。夜間に10時間以上止まる車なら、3kWの充電器で十分な場合が多く、契約や基本料金への影響を小さくできます。
- 充電器をつなぐ契約を確認する。高圧の事業所なら、30分デマンドデータ(1年分)で夕方と夜間の余裕を見ます。低圧の事業所なら、充電器を低圧電力(動力・三相200V)と電灯(従量電灯Cなど・単相200V)のどちらにつなぐかで、基本料金の増え方と1kWhあたりの単価が変わります(上の「低圧の事業所で充電する場合」を参照)。
- 充電の時間帯を決めて、制御の方法を選ぶ。台数が多い場合は、帰庫直後に一斉に始めない運用(タイマー、充電器の出力制御、デマンドコントローラーとの連携)を、充電器の機種選びの条件に入れます。
- 使える補助と条件を、発注の前に確認する。車両(CEV補助金またはLEVO)と充電設備の補助は、対象の要件・申請の時期・発注や契約の順番が制度ごとに決まっています。申請先の公募要領で確認し、販売店にも登録日・納期を確認しておきます。
- 「補助がある燃料価格」と「補助がない燃料価格」の両方で比べる。燃料価格は国の補助で抑えられているため、両方の価格で回収年数を出しておくと、社内の稟議で「前提が変わったらどうなるか」に答えられます。
この手順で集めたデータ(走行距離、帰庫時刻、30分デマンド、契約メニュー、見積もり)があれば、1台ごとの回収年数と事業所全体の基本料金の変化を、同じ前提でまとめて比較できます。
相談するなら:自社の運行データとデマンドデータで試算する
この記事の数字は、代表的な車種と条件での試算です。実際の損得は、車ごとの走行距離、帰庫時刻、事業所の30分デマンド、使える補助で大きく変わります。導入を検討するときは、次の3つのデータをそろえると、精度の高い比較ができます。
- 車両ごとの年間走行距離と、1日の運行パターン(出庫・帰庫時刻、昼間に戻るか)
- 事業所の30分デマンドデータ(少なくとも1年分。充電による基本料金の変化を見るため)
- 車両と充電器の見積もり(補助の対象・額は申請先の公募要領で確認)
エネがえるでは、EVとガソリン車の総費用を比べるEVのTCO試算や、複数台の導入と充電・太陽光を組み合わせて評価するフリート向けの試算(エネがえるフリートEV)を提供しています。前提条件と計算の根拠を開示した比較表で、社内の稟議に使える形に整理できます。
稟議に載せる数字
社内で導入を決めるときは、次の数字をそろえておくと議論が早く進みます。数字はすべて「同じ車を同じ年数・同じ距離使った場合のエンジン車との差」で示すのがポイントです。
| 項目 | 示し方 | 本記事での例(事業用の軽バン・年2.5万km・関東) |
|---|---|---|
| 最初の負担 | 価格差−補助+充電器の自己負担 | 約24.8万円 |
| 1年あたりの節約 | 燃料代−電気代+保守・税の差 | 約18.9万円(1年目) |
| 回収年数 | 最初の負担を取り戻す年数(20年超も明記) | 約1.3年 |
| 保有期間の正味 | 保有年数での合計(名目、割引なし) | 8年で約136万円の得 |
| 下振れの条件 | 感度分析で最も悪い条件 | 保有5年で約73万円の得(マイナスにはならない) |
| 基本料金の影響 | 充電の時間帯ごとの最大需要の変化 | 夜間なら増えない。帰庫直後なら1台あたり年約14.7万円 |
| CO2 | 年間削減量と1トンあたりの費用 | 年約1.9トン、1トンあたり約9万円の得 |
よくある質問
商用EVは元が取れますか?
車の種類と使い方によります。事業用(黒ナンバー)の軽バンは、国の補助(N-VAN e:で78.2万円)を使い、事業所で夜間に充電すれば、年1.5万〜4万kmのどの距離でも約1〜2年で価格差を取り戻せました(関東・関西・九州)。2t級のEVトラックは、補助(価格差の3分の2)を使っても、年1万〜3万km・保有8年では144ケースのどれも回収できませんでした。燃料価格は2026年10月26日調査、電気は高圧の事業所の料金で試算しています。
軽バンのEVは、年に何km走れば元が取れますか?
自家用(黄ナンバー)の軽バンは、補助45.8万円(2027年1月以降の登録の額)なら年約1.2万km以上で8年で回収できます(関東・夜間充電)。ただしCEV補助金は2026年12月上旬〜下旬に予算到達で受付終了の見込みで、2027年に登録する車は補助を受けられない可能性が高く、その場合は年約2.0万km以上が必要です。年1.5万kmで補助なしなら、8年で約28万円の損です。事業用(黒ナンバー)は補助で価格差と充電器の費用のほとんどが埋まるため、走行距離にかかわらずすぐに回収できる計算です。
EVトラックは補助金があれば得になりますか?
2t級(いすゞ エルフEV)では、補助の基準額(事業用579.6万円、価格差の3分の2)を使っても、年2万km・8年で約145万円の損が残りました(関東・夜間充電)。8年で回収するには年約5万km、12年なら年約2.8万kmが必要です。車両の価格差が20%小さい車型なら、年2万kmでもほぼ損益ゼロになります。補助の基準額は上限で、実際の交付額は小さくなる場合があります。
自家用と事業用(黒・緑ナンバー)で、補助金は違いますか?
違います。自家用の車はCEV補助金(次世代自動車振興センター)、事業用の軽貨物とトラック(車両総重量2.5トン超は自家用も)は商用車等の電動化促進事業(LEVO)の補助を使います。CEV補助金は事業用車両を対象外としています。N-VAN e:の場合、自家用は2026年中の登録で58万円(2027年1月以降は45.8万円)、事業用は78.2万円です。
急速充電中心で運用すると損ですか?
本試算では、急速充電が中心の運用は、すべての車種区分で8年の正味がマイナスでした。急速充電を80円/kWh(税込)と仮定すると、軽バンの1kmあたりの電気代は約11.1円とガソリン(約9.6円)を上回ります。急速充電は、走行距離が足りない日の補助として使い、基本は事業所で夜間に充電する計画が現実的です。
充電器を入れると、電気の基本料金は上がりますか?
充電の時間によります。高圧の事業所では、30分ごとの最大需要で基本料金が決まります(契約電力500kW未満の場合)。物流倉庫の例では、軽バン50台を帰庫直後に一斉に充電すると最大需要が約295kW上がり、基本料金は年約721万円増えました(関東、1時間単位の計算)。20時から翌7時に平準化すれば増えませんでした。充電器の出力制御と、30分デマンドデータを使った計画が有効です。
太陽光でEVを充電すると得ですか?
昼間に車が事業所にいるなら得です。太陽光の電気は1kWhあたり約9円(概算)で、事業所の電気(関東 約21円)より安くなります。夜にしか車が戻らない場合は、定置用の蓄電池を経由すると約45円(概算)になり、かえって高くなります。この場合は、太陽光を施設の昼間の電気に使い、EVは夜間に充電するほうが合理的です。
何台あるうち、どの車からEVに替えるべきですか?
1台あたりの得が大きい、よく走る軽バンからです。仮想の50台(軽バン35台・トラック15台)では、得が大きい順に替えると30台目までで8年の正味が最大(約3,716万円の得)になり、トラックまで全部替えると約1,542万円の得に縮みました。CO2の目標がある場合は、残りの車の削減コスト(この例では1トンあたり約11.5万円)を他の打ち手と比べて判断できます。
試算の前提条件(すべて公開)
| 項目 | 設定値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 比較する車両(軽) | ホンダ N-VAN e: L4(税抜2,454,000円)とN-VAN L・FF・CVT(税抜1,499,000円、WLTC 18.8km/L) | Honda N-VAN e:、N-VAN、燃費 |
| 軽EVの電費 | 0.130kWh/km(カタログ相当) | 一充電走行距離245km(WLTC、Honda)と電池容量から推計した仮定 |
| 比較する車両(トラック) | いすゞ エルフEV(NMR・66kWh)と同等仕様のディーゼル車。価格差=LEVO基準額÷2/3(事業用約869万円、自家用約853万円) | LEVO 基準額一覧表、いすゞ |
| トラックの電費・燃費 | 0.40kWh/km、11km/L(カタログ相当) | 仮定(66kWh・一充電190kmからの推計を含む)。感度分析あり |
| 実走の効率 | カタログ値×0.85(EV・エンジン車とも) | 仮定。感度分析で0.75〜0.95 |
| 燃料価格 | 東京169.5/158.0円、大阪170.4/158.6円、福岡168.4/158.0円(レギュラー/軽油、税込、2026年10月26日調査)。税抜換算:ガソリンは÷1.1、軽油は軽油引取税15円を除いて÷1.1 | 資源エネルギー庁 石油製品価格調査(集計サイト経由)、軽油引取税(香川県) |
| 電気料金(事業所) | 高圧の電力量料金+燃料費等調整+再エネ賦課金(税抜):関東21.1円・関西21.5円・九州19.7円/kWh。基本料金(力率85%):関東約2.45万・関西約2.04万・九州約2.17万円/kW・年 | 産業用記事の料金(各社の公表単価、関東の基本料金は推計) |
| 急速充電 | 80円/kWh(税込) | 仮定。参考:ENEOS Charge Plus 会員99円/kWh・ビジター154円/kWh、TEEMO(e-Mobility Power)40〜100円/分 |
| 太陽光の電気 | 9.0円/kWh(設置17万円/kW・年1,150kWh/kW・20年・保守1%/年からの概算)。方法Dは充電量の6割 | 仮定 |
| 補助 | 自家用軽:CEV 45.8万円(2027年1月以降の登録)。事業用軽:LEVO 78.2万円。トラック:LEVO基準額。充電器:LEVO 22.5万円(自家用の軽は0円) | CEV 銘柄ごとの交付額、LEVO |
| 充電器 | 6kWの普通充電器 1口30万円(機器15万円+工事15万円) | 仮定 |
| 保守費の差 | 軽:自家用1.5万円・事業用2.5万円/年。トラック:事業用6万円・自家用5万円/年 | 仮定。感度分析で0〜2倍 |
| 税の差 | 軽3,300円/年、トラック1万円/年 | 仮定。自動車重量税のエコカー減税と、軽自動車税・自動車税の種別割のグリーン化特例(2026年度の制度)によるEVとエンジン車の差を、年あたりに簡略化した値。登録時期・車両区分で異なる |
| 上昇率・保有年数 | 燃料・電気とも年2%、保有8年、割引率なし(名目) | 仮定。感度分析あり |
| CO2 | ガソリン2.32kg/L、軽油2.58kg/L。電気は各社の残差メニューの排出係数(2024年度実績)。太陽光の分は0 | 環境省 算定・報告・公表制度の排出係数 |
| 含めていないもの | 保険、残価(感度分析のみ)、電池交換、自治体の上乗せ補助、途中充電や大容量バッテリー車型の追加費用、車検・登録の諸費用の差 | — |
この試算の限界
- トラックの価格差は、LEVOの基準額(補助の上限)から逆算した値です。実際の見積もりの差がこれより小さければ、EVトラックの結果は改善します(価格差が20%小さければ年2万kmで約29万円の得)。
- トラックの電費・燃費、保守費の差、税の差は、公表された比較データがないため仮定値です。
- 走行距離は年単位で扱い、1日の走行距離が一充電走行距離を超える日の途中充電は考えていません。年5万kmを超えるトラックの運用では、途中充電または大容量バッテリーの車型が必要です。
- デマンドの検証は、合成した物流倉庫の需要を使った1時間単位の計算です。実際の基本料金は30分ごとの最大需要で決まり、短時間に充電が重なると増加はこれより大きくなりえます。また、契約電力500kW以上の施設は、契約電力を電力会社との協議で決めます。
- 電気料金は高圧の事業所を想定しています。低圧の事業所は「低圧の事業所で充電する場合」で東京電力EP・九州電力の例を示しましたが、他の電力会社・時間帯別料金・市場連動型の契約では結果が変わります。
- 残価・電池交換・保険は基本の計算に含めていません。保有期間が長いほど、電池の状態と残価の不確実性が大きくなります。
- 電池の劣化による電費の悪化や一充電走行距離の低下はモデルに含めていません。年数がたつと1kmあたりの電気代が少し上がり、途中充電が必要になる日が増える可能性があります。
- 燃料価格は資源エネルギー庁の調査値を集計サイト経由で取得しました(経済産業省のサイトに接続できなかったため)。
ファクトチェック・エビデンス検証一覧
この記事の主要な数値と主張を、どの方法で検証し、どの根拠に基づいているかを一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・補助の執行団体・メーカーの公式資料)にリンクし、集計サイト・仮定値は区分で区別しています。
検証の方法
- 一次情報との照合:車両価格・補助額・補助の条件・軽油引取税は、メーカー・次世代自動車振興センター・LEVO・自治体の公式資料で確認しました(2026年10月31日)。
- 独立計算モデルによる再計算:288ケースを年単位のモデルで試算し、デマンドの影響は1時間単位で計算しました。コードとケース別データで管理しています。
- 公表値との照合:N-VAN e:の補助後価格(メーカー公表2,119,400円)などをモデルで再現し、一致を確認しました。エネがえるの製品画面での照合は行っていません。
- 独立レビュー:独立レビュー(84点)で指摘された点を修正し、再採点で93点、最終修正を反映しました。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。
根拠の確かさの区分
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| A 一次情報 | 官公庁・補助の執行団体・メーカーの公式資料で確認した値 |
| B 二次情報・参考値 | 集計サイト経由の公的統計、事業者の参考価格 |
| M 計算結果 | 本記事の独立計算モデルの結果 |
| H 仮定値 | 確かな公表データがないため置いた値。感度分析で幅を示している |
前提条件の検証
| 項目 | 記事での値 | 区分 | 検証結果 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| N-VAN e: L4・N-VAN Lの価格、N-VANの燃費 | 税抜2,454,000円・1,499,000円、WLTC 18.8km/L | A | 確認済み | Honda、Honda |
| CEV補助金の額と期限 | N-VAN e: 58万円→45.8万円(2027年1月以降)。登録2027年2月1日まで、申請2月12日必着。終了見込み12月上旬〜下旬 | A | 確認済み | 交付額一覧、期限、終了見込み |
| CEV補助金の対象外 | 中古車・事業用車両 | A | 確認済み | 次世代自動車振興センター |
| LEVO(トラック)の補助の仕組みと条件 | 基準額=価格差×2/3(BEV、上限)。2030年度計画・保有5%以上(8t以下)。申請2027年1月15日まで | A | 確認済み | LEVO NEWS No.97 |
| LEVOの基準額 | エルフEV(NMR)事業用579.6万円・自家用568.4万円、N-VAN e: 78.2万円 | A | 確認済み | 基準額一覧表 |
| トラックの価格差 | 約869万円(事業用) | A/H | 条件付き。基準額からの逆算で、基準額は上限のため実際の価格差はこれより小さい可能性がある | 同上 |
| エルフEVの電池と一充電走行距離 | 66kWh・190km(NMR) | A | 確認済み | いすゞ |
| 電費・燃費(軽EV 0.130kWh/km、トラック0.40kWh/km・11km/L)、実走係数0.85 | — | H | 仮定。感度分析あり | — |
| 燃料価格 | 2026年10月26日調査(全国レギュラー170.1円。都府県別は東京169.5/158.0円ほか) | A/B | 全国平均のガソリンは資源エネルギー庁の公表資料で確認。都府県別と軽油は資源エネルギー庁の調査値を集計サイトで確認(石油製品価格調査のページに接続できず) | 集計サイト、LOGI-TODAY |
| ガソリンの暫定税率の廃止、燃料油の補助 | 2025年12月31日に廃止。緊急的激変緩和措置の支給額42.8円/L(10月26日の週)、補助なしのガソリン価格約212.9円 | A | 確認済み | 資源エネルギー庁 燃料油価格の定額引下げ・緊急的激変緩和措置、資源エネルギー庁「ガソリン全国平均価格の推移」 |
| 低圧の電気料金(東京電力EP) | 低圧電力 基本料金1,190.83円/kW・月、従量電灯C 392.06円/kVA・月・第3段階40.54円/kWh(税込、2026年11月1日以降) | A | 確認済み(2026年10月31日) | 東京電力EP 低圧電力、東京電力EP 従量電灯C |
| 軽油引取税 | 15円/L(2026年4月1日以降) | A | 確認済み | 香川県 |
| 急速充電の料金 | 80円/kWh(税込)と仮定 | B/H | 参考値の範囲内の仮定 | ENEOS、TEEMO |
| 高圧の電気料金 | 関東21.1円・関西21.5円・九州19.7円/kWh(税抜) | A/H | 各社の公表単価。関東の基本料金は推計 | 産業用記事の前提条件 |
| 保守費・税の差、充電器費用、太陽光・蓄電池のコスト | 本文の前提条件の表のとおり | H | 仮定。保守費は感度分析あり | — |
結果と主張の検証
| 主張 | 区分 | 結果 |
|---|---|---|
| 事業用の軽バンは補助あり・夜間充電で約1〜2年で回収(9ケースすべて8年プラス) | M | 確認済み(関東・関西・九州、年1.5万〜4万km) |
| 自家用の軽バンは年約1.2万km以上で8年回収(補助45.8万円)。補助なしは年約2.0万km以上 | M | 確認済み(関東・夜間充電)。CEV補助金は2026年12月に受付終了の見込みで、2027年の登録は補助なしの可能性が高い |
| 2t級トラックは補助ありでも8年では144ケースのどれも回収できない | M/H | 条件付き。価格差・電費・燃費・保守費の仮定に依存。価格差が20%小さければ年2万kmでほぼ損益ゼロ |
| 帰庫直後の一斉充電で基本料金が年約721万円増える(50台) | M/H | 条件付き。合成した倉庫需要・1時間単位の計算 |
| 50台では30台目までで8年の正味が最大(約3,716万円) | M/H | 条件付き。仮想の構成と走行距離による |
| CO2 1トンあたりの費用(軽バン約8万〜10万円の得、トラック約5万〜58万円) | M | 確認済み(補助あり・夜間充電) |
検証の過程で直した主な点
- CEV補助金は事業用車両を対象外としているため、事業用の軽バンには商用車等の電動化促進事業(LEVO)の補助を当てはめ、自家用と事業用を別の区分に分けた。
- 軽油の税抜換算で、消費税の課税対象外である軽油引取税(2026年4月以降15円/L)を除いてから1.1で割るようにした。
- CEV補助金の額が2027年1月1日以降の登録で下がるため、基準の試算は下がった後の額(45.8万円)とし、2026年中の登録の場合を別に示した。
- トラックの電費・燃費は公表された比較値がないため、仮定値と明記し、感度分析で幅を示した。
- 独立レビュー(84点)の指摘を受け、自家用の軽バンのCEV補助金の受付終了の見込みと、その場合の結果(補助なし)を本文の要点・表・FAQに明記した。
- LEVOの補助の交付条件(2030年度の導入計画・保有割合5%以上)が事業用の軽バンにもかかることを明記した。
- 低圧の事業所の試算を、低圧電力と従量電灯Cの両方で東京電力EPの2026年11月以降の単価から計算し直した。
- 燃料価格が国の補助で抑えられていることと、補助がない場合の結果を追加した。出典の確認できない軽油の最高値の記述を削除した。
- 50台の一斉充電で最大需要が500kWを超える点、電池の劣化をモデルに含めていない点を明記した。
この一覧は、条件の更新に合わせて毎月見直します(燃料価格・補助の受付状況・電気料金の変更を確認し、変化があれば再計算)。誤りに気づいた場合は、エネがえるまでお知らせください。
試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年10月31日/試算条件の確認日:2026年10月31日。毎月、燃料価格・補助の受付状況・電気料金の最新情報を確認し、変化があれば再計算して更新します。関連する試算:蓄電池は元が取れない?全国9エリア243ケースを実試算/産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算/大企業の脱炭素は自家消費?オフサイトPPA?再エネ電力?/オフサイトPPAは得なのか?。EVの充電器導入の考え方はEV・充電器の導入費は何年で回収?も参照してください。/EVとガソリン車どっちが安い?車種別TCOを実試算






コメント