結論から言います。24時間稼働の工場では、屋根の自家消費型太陽光は発電した電気をほぼ全部その場で使い切れるため、約6〜8年で元が取れます。一方で、太陽光が賄えるのは工場の電気の4〜16%にすぎず、蓄電池はデマンド(契約電力)を1〜10%しか下げられないため、経済性だけでは割に合いません。食料品・化学のように燃料(熱)の比率が高い工場では、100℃未満の熱をヒートポンプに置き換えるほうが、金額でもCO2でも大きな打ち手になり得ます。食料品・化学・金属製品・電子部品・プラスチック製品の5業種に比較用の機械組立(2交代)を加えた6業種×3エリア×2規模=36案件を、電気代上昇率3水準×蓄電池3通りで組み合わせた324ケースを、1時間単位(8,760時間)のモデルで試算しました。
3つの答え
- 太陽光は、24時間工場なら全エリア・全規模で10年以内に回収できる(太陽光のみの108ケース=36案件×上昇率3、中央値6.4年)。夜も週末も動いている工場では、昼の発電を余らせません(自家消費率は機械組立を除き100%)。保守費とパワーコンディショナの交換費を入れても中央値は7.2年で、108ケースすべてが15年以内に回収できました。
- 蓄電池は「元を取る設備」ではなく「止めないための設備」。蓄電池を足した216ケース(36案件×上昇率3×容量2通り)のうち、蓄電池の上乗せ分が15年以内に回収できたのは8ケースだけでした(関東の食料品・金属製品のみ)。負荷が平らな化学・電子部品・プラスチックでは、ピークカットは1〜2%にとどまります。判断の軸は停電時に重要負荷を何時間守るか(200kWhで重要負荷50kWを約3.6時間)です。
- 燃料比率の高い工場は、太陽光より先に「熱」を見る。関東・高圧500kW級の簡易試算(都市ガス120円/m3・COP3.0、機器費は含まない)では、100℃未満の熱をヒートポンプに置き換えた年間ランニングコストの差は、食料品で約795万円、化学で約516万円でした。同じ工場の太陽光の初年度削減額(約566万円)と同じか、それを上回る規模です。ただしガス単価とCOPで結果は大きく振れ、ガス90円/m3・COP2.5では逆転します。
この記事で分かること(数値の要点)
- 太陽光の回収年数は5.2〜8.6年(保守費・交換費込みで5.8〜10.1年)。関西が最も早く(中央値6.0年)、関東6.5年、九州6.9年。電気の単価が高いエリアほど早く回収できます。
- 屋根の太陽光で減らせる電気由来のCO2は3.9〜15.6%(中央値8.8%)。再エネ比率を大きく上げるには、オフサイトPPAや証書などの「調達」が別に必要です。
- 負荷率(年間平均÷最大)が0.84〜0.87の化学・電子部品は、基本料金が電気代の約12〜13%(3エリア平均)しかありません。蓄電池で削れる余地がもともと小さい構造です。
- 蓄電池で元が取れる価格は、ピークの尖った業種で約12万円/kWh、平らな業種で約2万円/kWh(15年・現実的な運転)。想定価格14万円/kWh(税抜)にはどの業種も届きません。
- 熱の電化は「蓄熱」とセットにすると差額が最大約3割増えます(上限)。ヒートポンプを夜間・ピーク外に回し、契約電力の増加を避けるためです。ただし負荷の谷が小さい化学では、太陽光を当てにしないと年125日は避けきれません。
- CO2では、食料品・化学の熱の電化は太陽光とほぼ同じ規模です(関東500kW級・COP3.0:食料品 112t対117t、化学 73t対78t。COP4.0なら204t・133tで太陽光を上回る、簡易試算)。
検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。324ケースは1時間単位(8,760時間)の独立計算モデルで試算しました。工場の需要の形は業種別の合成プロファイルで、実際の工場の30分デマンドデータではありません。熱(ヒートポンプ・蓄熱)は年間の燃料費と温度帯の仮定から求めた簡易試算です。金額はすべて税抜です。業種・規模を広く比べた試算は産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算、24業種のエネルギー費の構造は業種別のエネルギー費はどこで削れる?24業種×規模別に経営課題と打ち手を整理にまとめています。この記事は、その中から24時間稼働の工場に絞り、熱と停電対策まで踏み込んだものです。
なぜ24時間稼働の工場を別に計算するのか
工場の太陽光・蓄電池の提案は、日中に稼働する工場を前提に語られることが多くあります。しかし24時間・連続で稼働する工場は、エネルギーの使い方がまったく違います。
- 昼の発電を余らせない。夜も週末も機械が動いているため、屋根で作った電気は全部その場で消費されます。逆潮流(送電網への流し込み)を気にせず、屋根いっぱいに載せられます。
- デマンドが平らで、蓄電池が効きにくい。1日中ピーク近くで動く工場では、数時間の放電で年間最大需要を下げることが難しくなります。
- 熱を大量に使う。殺菌・洗浄・乾燥・反応などの蒸気や温水は、ガスや重油のボイラで作られていることが多く、エネルギー費の半分近くが燃料という業種もあります(後述)。
- 止まると損失が大きい。連続プロセスは一度止まると、仕掛品の廃棄や再立ち上げに時間とコストがかかります。停電対策(BCP)の価値が、日中稼働の工場より大きくなります。
加えて、制度面の圧力も強まっています。省エネ法は、エネルギー使用量が原油換算1,500kL以上の事業者に、エネルギー消費原単位を年平均1%以上下げる努力を求めています(中小企業基盤整備機構 J-Net21)。排出量取引制度(GX-ETS)は、直接排出が年10万t以上の企業に2026年度から参加を義務づけ、2028年度には化石燃料賦課金の導入が予定されています(環境省資料)。燃料(Scope1)を多く使う工場ほど、電気だけでなく熱をどうするかが経営の論点になります。
エネがえるの業種別×規模別の試算(216ケース)では、日中稼働の工場と24時間稼働の工場で蓄電池の結果が正反対になることが分かりました。この記事は、その「24時間側」を業種別に掘り下げ、太陽光・蓄電池・熱の電化・蓄熱・モビリティをひとつの順番で比べます。
業種の経営課題からエネルギー費の打ち手までを4段で整理する
工場のエネルギー対策は、設備から考えると失敗しやすくなります。エネがえるでは、業種を扱うときに次の4段で整理しています。①業種の経営課題 → ②エネルギー費の構造 → ③打ち手の順番 → ④この試算で確かめたことです。数値には出どころの区分を付けています(A:公的統計・一次情報、B:業界団体・二次資料、M:エネがえるのモデル計算、H:仮定・専門家判断)。
①業種の経営課題:エネルギーは「単独の課題」ではない
工場の経営者にとって、エネルギー費は原材料高・人手不足・取引先からの要請と同時に襲ってくる課題のひとつです。打ち手は、経営課題を一緒に解くものほど通りやすくなります。
| 業種 | 主な経営課題(H) | 熱の温度帯(B/H) | 主なエネルギー設備 | 陥りやすい落とし穴(H) |
|---|---|---|---|---|
| 食料品 | 原材料高・人手不足・品質/衛生要求。価格転嫁が遅れやすい | 60〜120℃(殺菌・洗浄・乾燥)+冷却(0℃以下〜10℃) | 蒸気ボイラ、冷凍機、コンプレッサ、空調 | 冷却と加熱を別々に最適化し、熱回収の機会を逃す |
| 化学 | 原燃料高、GX-ETS対象、製品のCO2要求 | 100〜250℃の蒸気+200℃超の反応 | ボイラ・コージェネ、反応器、蒸留塔、冷凍機 | 200℃超の工程にヒートポンプを当てはめる。蒸気の需要温度でなく供給温度で判断してしまう |
| 金属製品 | 中小比率が高く価格転嫁が難しい | 80〜200℃(塗装乾燥)、400〜1,000℃(熱処理) | コンプレッサ、塗装乾燥炉、溶接機、熱処理炉 | コンプレッサの漏れ・圧力過剰を放置したまま設備投資 |
| 電子部品・デバイス | 顧客(グローバル)のRE100要請、設備投資の大きさ | 常温〜低温(空調・純水・排気) | クリーンルーム空調、純水装置、真空ポンプ | 屋根に対して需要が大きく、自家消費だけでは再エネ比率が上がらない |
| プラスチック製品 | 原料樹脂高、取引先からのCO2算定要請 | 150〜300℃(成形の電熱ヒーター)、金型冷却 | 射出成形機、チラー、コンプレッサ、乾燥機 | 電力比率が高いのに、デマンド管理なしで導入し基本料金が下がらない |
| 機械組立(比較用) | 受注変動、人手不足、取引先のScope3要請 | 80〜200℃(塗装乾燥)、空調 | 工作機械、コンプレッサ、空調、塗装 | エネルギー費比率が低く後回しにされる |
出典:エネがえる 業種別エネルギー課題マップ(データセット industry_energy_map.csv の management_issue・heat_temperature・main_equipment・pitfall 列)。熱の温度帯は省エネルギーセンター JASE-W技術集 F-08「産業用ヒートポンプ」等を参考にした目安(B/H)。
②エネルギー費の構造:「付加価値の1割」と「電気か熱か」
エネルギー費は売上(出荷額)に対しては数%でも、稼ぐ力である付加価値額に対しては1割を超える業種があります。経済産業省の統計(従業者30人以上の事業所、2023年実績)から計算すると、化学は付加価値額の13.8%、電子部品・デバイスは11.6%、プラスチック製品は10.8%、食料品は9.0%がエネルギー費(燃料+電力)でした(A)。

もうひとつ大事なのは中身です。化学(燃料56%)と食料品(燃料42%)は、エネルギー費の半分近くが燃料=熱です。これに対して電子部品(電力84%)・プラスチック(電力80%)・機械(電力83%)は、ほとんどが電気です。太陽光と蓄電池は電気の打ち手なので、燃料比率が高い業種ほど、太陽光だけではエネルギー費の一部にしか届きません。
電気代の中でも、どこにお金がかかっているかは負荷の形で変わります。高圧の電気代は「基本料金(契約電力kW×単価)」と「電力量料金(使ったkWh×単価)」からなり、24時間ほぼ一定で動く工場ほど基本料金の割合が小さくなります(後述の図5)。
エネルギー費は、次の7つに分解すると打ち手を選びやすくなります。
| 分解 | 何を減らすか | 24時間工場での主な打ち手 |
|---|---|---|
| 量(kWh・m3) | 使う量そのもの | コンプレッサの漏れ・圧力見直し、インバータ化、保温、冷凍機の更新 |
| 単価(円/kWh) | 買う電気の単価 | 自家消費太陽光(買電の代わりに屋根の電気を使う) |
| 契約(kW) | 基本料金 | デマンド監視、設備の起動順の見直し、蓄電池(スパイクがある場合) |
| タイミング | 時間帯・季節で高い電気 | 蓄熱槽、生産計画の時間シフト |
| 調達 | 電気の調達方法・CO2 | オフサイトPPA、非化石証書、料金メニュー見直し |
| 熱・燃料転換 | ガス・重油・LPG | 100℃未満のヒートポンプ化、排熱回収、蒸気から温水への切り替え |
| 移動 | ガソリン・軽油 | フォークリフト・社用車・配送車のEV化と充電時間の管理 |
③打ち手の順番:減らす→熱を替える→つくる→ためる→買う→動かす

順番には理由があります。先に需要を小さくすると、あとで入れる太陽光・蓄電池・ヒートポンプの容量が小さくて済み、投資が無駄になりません。特に熱の電化(③)を太陽光(④)より前に置くのは、ヒートポンプを入れると契約電力と電気の使い方が変わり、デマンド管理や蓄電池・受変電設備の前提が変わるからです(24時間工場では太陽光はもともと全量自家消費のため、電化で太陽光の価値が増えるわけではありません)。ボイラの更新時期が近い工場では、電化を先に決めてから太陽光の容量を決めるのが合理的です。
業種ごとに、どの打ち手がどれだけ効くかの目安は次のとおりです(中規模工場、専門家判断)。

規模で変わること:500kW未満・500kW以上・特別高圧
- 高圧500kW未満:契約電力は過去12か月の最大需要(30分値)で決まります(実量制)。一度ピークを出すと1年間基本料金が下がらないため、デマンド監視の価値が大きい規模です。
- 高圧500kW以上:契約電力は電力会社との協議で決まります。この記事の1,500kW級は、年間最大需要の低下が契約電力にそのまま反映されると仮定しています(上限側の想定)。
- 特別高圧(おおむね2,000kW以上):料金は個別契約が多く、公開の標準単価で比べることができないため、今回の試算の対象外です。傾向としては、24時間工場の大規模化に伴い屋根で賄える割合はさらに小さくなり、調達(PPA・証書)と熱の転換の比重が高まります。
④この試算で確かめたこと・確かめていないこと
| 打ち手 | この記事での扱い | 区分 |
|---|---|---|
| 創エネ(自家消費太陽光) | 324ケースの8,760時間モデルで試算 | M |
| 蓄エネ(蓄電池) | 同上。ピークカットは現実的な運転(完全予見の7割)と上限(完全予見)を併記 | M |
| 熱の電化・蓄熱 | 年間の燃料費(統計の燃料比率から推計)と温度帯の仮定から求めた簡易試算。機器費は含まない | M/H |
| 停電対策(BCP) | 蓄電池容量÷重要負荷の単純計算 | H |
| モビリティ | 商用EVのTCO試算の結果を引用。フォークリフトは定性的 | M/H |
| 運用・省エネ・調達 | 定性的(効果は工場ごとの診断が必要) | H |
検証の方法:36案件×上昇率3×蓄電池3=324ケース
| 軸 | 設定 | 数 |
|---|---|---|
| 業種 | 食料品/化学/金属製品(熱処理炉を持つ24時間工場を仮定、H)/電子部品・デバイス/プラスチック製品/機械組立(2交代・比較用) | 6 |
| エリア | 関東(東京電力EP 高圧)/関西(関西電力 高圧電力AS・BS)/九州(九州電力 産業用電力A) | 3 |
| 規模 | 高圧500kW級(実量制)/高圧1,500kW級(協議制) | 2 |
| 電気代上昇率 | 年1%・2%・3% | 3 |
| 蓄電池 | なし/契約電力×0.2時間分(500kWなら100kWh)/×0.4時間分(同200kWh) | 3 |
| 合計 | 6×3×2=36案件、×3×3 | 324ケース |
工場の需要は業種ごとの合成プロファイルです。食料品は24時間稼働に日中の山と夏の冷凍冷蔵負荷、化学はほぼ一定、金属製品は24時間稼働に熱処理炉の短いスパイク、電子部品はほぼ一定に夏のクリーンルーム空調、プラスチックは平日24時間・週末半分、機械組立は平日6〜22時の2交代としました。太陽光の容量は屋根の広さの仮定として契約電力の25〜60%(電子部品25%、化学30%、食料品・金属45%、プラスチック50%、機械組立60%)です。
姉妹記事の業種別×規模別の試算(216ケース)では、太陽光の回収年数の中央値は6.6年でした。この記事の6.4年と違うのは、対象を高圧の24時間工場に絞り、低圧の事業所や太陽光が余る施設を含めていないためです。料金・発電量・設置費用の前提は同じです。

何で稼ぐのか:電力量単価と基本料金
工場の太陽光と蓄電池は、稼ぎ方が違います。太陽光は、屋根の電気を使った分だけ買う電気(電力量料金+燃料費調整+再エネ賦課金)を減らします。蓄電池は、24時間工場では余った電気をためる場面がないため、基本料金(契約電力)を下げることでしか稼げません。
| エリア(今回の料金メニュー) | 自家消費1kWhで減らせる単価(税抜、年平均) | 基本料金(税抜、力率割引後、1kW・月) |
|---|---|---|
| 関東(東京電力EP 高圧ベーシックプラン) | 約21.1円/kWh | 約2,039円(推計) |
| 関西(関西電力 高圧電力AS等) | 約21.5円/kWh | 約1,701円 |
| 九州(九州電力 産業用電力A) | 約19.3円/kWh | 約1,811円 |
電力量料金の夏季・その他季の年平均に、燃料費等調整(関東1.55円、関西は燃料費調整+市場価格調整、九州1.20円)と再エネ賦課金4.18円を加え、1.1で割った値(M)。料金表の単価は前提条件の表を参照。
関西が太陽光の回収で最も早いのは、1kWhあたりの単価が最も高いためです。一方、蓄電池の上乗せ分が回収できたケースが関東に集中したのは、基本料金が最も高いためです。同じ設備でも、エリアの料金構造によって効き方が入れ替わります。
結果①:太陽光は108ケースすべてが10年以内に回収、中央値6.4年
太陽光のみ(蓄電池なし)の108ケース(36案件×上昇率3)では、すべてのケースが10年以内に設置費用を回収しました。回収年数は5.2〜8.6年、中央値は6.4年です。保守費(年3,000円/kW)と13年目のパワーコンディショナ交換費(2万円/kW)を入れると5.8〜10.1年、中央値7.2年で、108ケースすべてが15年以内、107ケースが10年以内に回収できました。

| 回収年数の中央値(上昇率1〜3%) | 関東 | 関西 | 九州 |
|---|---|---|---|
| 高圧500kW級(保守費・交換費なし) | 6.6年 | 6.2年 | 7.3年 |
| 高圧500kW級(保守費・交換費込み) | 7.5年 | 7.0年 | 8.3年 |
| 高圧1,500kW級(保守費・交換費なし) | 5.9年 | 5.5年 | 6.5年 |
| 高圧1,500kW級(保守費・交換費込み) | 6.6年 | 6.2年 | 7.4年 |
24時間業種どうしの差は小さく、食料品(中央値6.0年)・金属製品(6.2年)がやや早く、化学・電子部品・プラスチック(6.4年)が続きます。いずれも自家消費率は100%で、違いは主に太陽光の容量と夏の需要の大きさから生じています。比較用の機械組立(2交代)は、週末と夜に需要が落ちるため発電の13%を使い切れず、中央値7.3年と約1年遅くなりました。
電気代の上昇率による差も小さく、年1%で6.6年、2%で6.4年、3%で6.2年でした。24時間工場の太陽光は、電気代の先行きに賭けなくても成り立つ投資だと言えます。
設置費用が想定より高くても成り立つか
15年で元が取れる太陽光の設置費用の上限(損益分岐の設置費用)は、保守費・交換費込みで中央値約34万円/kW、最も厳しいケースでも約24万円/kW(税抜)でした。想定の17万円/kW(500kW級)の約2倍です。設置費用が約4割高くなっても、108ケース中107ケースが15年以内に回収できます(最も厳しい九州・機械組立・上昇率1%でも約1.39倍まで)。屋根の補強や受変電設備の改修で費用が上がる工場でも、太陽光の採算が崩れにくいことを示しています。
ただし、屋根の太陽光で賄えるのは電気の4〜16%

自家消費率が100%でも、自給率(工場の電気のうち太陽光で賄えた割合)は3.9〜15.6%にとどまります。化学・電子部品のように屋根に対して需要が大きい工場では4〜5%です。電気由来のCO2(Scope2)の削減率も同じ値で、中央値は8.8%でした。取引先からRE100やCO2削減目標を求められている電子部品工場で、屋根の太陽光だけで目標に届かせるのは現実的ではありません。屋根は「確実に元が取れる最初の一歩」、残りは調達(オフサイトPPA・非化石証書)で埋めるという二段構えになります。
関東・高圧500kW級の工場の姿(電気代上昇率2%)
| 業種 | 年間使用量 | 負荷率 | 年間電気代 | 基本料金の割合 | 太陽光 | 自給率 | 太陽光の回収(保守費込み) | 蓄電池100kWhの初年度削減/ピーク削減率 | 蓄電池200kWhの初年度削減/ピーク削減率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 食料品 | 299万kWh | 0.68 | 7,522万円 | 16% | 225kW | 8.7% | 7.2年 | 82万円/7.0% | 100万円/8.8% |
| 化学 | 381万kWh | 0.87 | 9,252万円 | 13% | 150kW | 4.5% | 7.5年 | 17万円/1.7% | 13万円/1.7% |
| 金属製品(熱処理あり) | 288万kWh | 0.66 | 7,286万円 | 17% | 225kW | 9.0% | 7.4年 | 82万円/7.0% | 116万円/10.1% |
| 電子部品・デバイス | 367万kWh | 0.84 | 8,942万円 | 14% | 125kW | 3.9% | 7.5年 | 12万円/1.3% | 8万円/1.2% |
| プラスチック製品 | 323万kWh | 0.74 | 8,024万円 | 15% | 250kW | 8.9% | 7.5年 | 12万円/1.3% | 8万円/1.2% |
| 機械組立(2交代・比較用) | 202万kWh | 0.46 | 5,481万円 | 22% | 300kW | 14.8% | 8.7年 | 73万円/4.4% | 121万円/7.1% |
合成プロファイルと仮定の太陽光容量から計算した値(M/H)で、実在の工場の統計ではありません。蓄電池の初年度削減は太陽光への上乗せ分。容量を200kWhに増やすと削減額が下がる業種があるのは、蓄電池の待機電力(補機)が増える一方でピークがほとんど下がらないためです。
結果②:蓄電池の上乗せ分が15年で回収できたのは216ケース中8ケース
蓄電池を足した216ケース(36案件×上昇率3×容量2通り)のうち、蓄電池の上乗せ分(設備費14万円/kWh・税抜)を15年以内に回収できたのは8ケースだけでした。いずれも関東の食料品・金属製品で、容量0.2kWh/kW、電気代上昇率2%以上の場合です。蓄電池単体の回収年数の中央値は、回収できないケースを含めると20年超です。なお8ケースの回収年数は14.0〜14.9年で、15年の基準ぎりぎりです。実量制(500kW級)で契約電力の低下が最長12か月遅れると、上昇率2%の2ケースは約15.6年となり、8ケースは6ケースに減ります。
理由はシンプルで、24時間工場では蓄電池の稼ぎ口がほとんどないからです。太陽光の電気は余らないので、ためて使う価値はありません。残る稼ぎ口は基本料金(デマンド)の削減ですが、ここが業種によって大きく違います。


化学・電子部品・プラスチックのように夜もピーク近くで動く工場では、数時間の放電では年間の最大需要がほとんど下がりません(1〜2%)。一方、食料品(日中の山と夏の冷凍冷蔵)や金属製品(熱処理炉の立ち上げが重なる短いスパイク)は、山の部分だけを削れるため7〜10%下がります。


15年で元が取れる蓄電池の価格(損益分岐価格)は、現実的な運転で食料品・金属製品が約12.5万円/kWh、平らな化学・電子部品・プラスチックは約1.8〜2.6万円/kWhです。翌日の需要を完全に予測できた場合の上限なら食料品・金属製品は約18万円/kWhまで上がり、想定価格14万円/kWhを上回ります。ピークの尖った工場では、制御の精度(需要予測)が採算を左右します。平らな工場では、制御をどれだけ良くしても届きません。
もうひとつ、尖った負荷では蓄電池の出力(今回は容量の1/2)がピークカットの上限を決めています。同じ100kWh(関東・高圧500kW級、上昇率2%、初年度)で出力を容量と同じ(1C)にすると、結果は次のように変わります。
| 業種 | 出力0.5C(50kW):ピーク削減/初年度削減 | 出力1C(100kW):ピーク削減/初年度削減 |
|---|---|---|
| 食料品 | 7.0%/約82万円 | 8.8%/約104万円 |
| 金属製品(熱処理あり) | 7.0%/約82万円 | 10.1%/約120万円 |
| 機械組立(比較用) | 4.4%/約73万円 | 4.4%/約73万円 |
| 化学 | 1.7%/約17万円 | 1.7%/約17万円 |
| 電子部品・プラスチック | 1.3%/約12万円 | 1.3%/約12万円 |
現実的な運転(完全予見の7割)の値(M)。出力を上げるとパワーコンディショナの費用が増えるため、kWhあたりの価格は14万円より高くなるのが一般的です。
食料品・金属製品は出力を倍にすると初年度削減が約1.3〜1.5倍になり、価格が同じなら損益分岐はおおむね16万〜18万円/kWhまで上がる計算です(概算)。平らな業種は出力を上げても変わりません。スパイクが短く高い工場ほど「容量より出力」で選ぶのがポイントです。
また、この試算は1時間単位です。実際の契約電力は30分ごとの最大需要で決まるため、1時間の中のばらつきを加えると最大需要はさらに高くなります。1時間の中で±3%程度ばらつくと仮定した簡易計算では、30分単位の最大需要は1時間単位より約4〜7%高くなりました(金属製品3.8%、食料品4.4%、化学6.7%、H)。蓄電池や運用で削るべき山は、1時間値で見るより鋭いということです。必ず30分値で確かめてください。
8ケースが関東に集中したのは、関東の高圧の基本料金(料金表の単価で、推計約2,639円/kW・月)が関西(約2,201円)・九州(約2,343円)より高く、1kW下げたときの効果が大きいためです。

20年の手残りで見ると、太陽光のみが最も大きいか、ほぼ同じです。食料品・金属製品では0.2kWh/kWの蓄電池を足してもほぼ横ばい(+12万円程度)で、0.4kWh/kWでは約800万〜1,070万円減ります。化学・電子部品・プラスチックでは0.2kWh/kWでも1,100万〜1,200万円減ります。蓄電池を入れるかどうかは、経済性ではなく停電時の価値で判断する設備です(後述のBCP)。
結果③:熱の電化は、燃料比率の高い工場で太陽光と同じかそれ以上の打ち手になる
24時間工場のエネルギー費のうち、太陽光と蓄電池が届くのは電気の部分だけです。食料品や化学では、エネルギー費の4〜6割がボイラなどの燃料です。そこで、100℃未満の熱をガスボイラからヒートポンプに置き換えた場合の年間ランニングコストの差を簡易試算しました。
計算の手順は次のとおりです(すべて仮定を含む簡易試算、M/H)。
- 年間の燃料費=試算した年間電気代×燃料比率÷(1−燃料比率)。燃料比率は経済構造実態調査の業種別の値(食料品42.3%、化学56.3%など、A)。
- そのうち100℃未満で使う熱の割合を仮定(食料品50%、電子部品60%、機械組立40%、プラスチック30%、金属製品20%、化学15%、H)。
- 都市ガス120円/m3(感度90〜150円)、45MJ/m3、ボイラ効率0.85で熱量に換算し、COP3.0(感度2.5〜4.0)のヒートポンプの電力量と電気代を計算。運転は年8,000時間。
- ヒートポンプの容量分だけ契約電力が増える場合(ヒートポンプのみ)と、蓄熱槽を使ってピーク外に運転し契約電力を増やさない場合(+蓄熱)を比較。

都市ガス120円/m3・COP3.0では、関東・高圧500kW級で食料品が年約795万円、化学が年約516万円、電子部品が年約303万円の差になりました。食料品の約795万円は、同じ工場の太陽光(225kW)の初年度削減額(約566万円)を上回ります。1,500kW級ではおおむね3倍(食料品で年約2,400万円)です。
ただし、この差額はガス単価とヒートポンプの効率に非常に敏感です。都市ガス90円/m3・COP2.5の組み合わせでは、すべての業種で電化のほうが高くつきました(簡易試算の324通り=36案件×ガス単価3×COP3のうち36通りがマイナス)。逆に150円/m3・COP4.0では食料品で年約2,000万円の差になります。自社のガスの契約単価と、熱を使う温度(供給温度ではなく工程が必要とする温度)を確かめることが出発点です。

ヒートポンプは電気を使うので、何もしなければ契約電力が増え、基本料金が上がります。蓄熱槽に夜間などピーク外の時間帯でお湯や冷水をため、昼の需要に回すと、この増加を避けられます。簡易試算では、契約電力がまったく増えないと仮定した上限で、蓄熱の併用により差額が約3割増えました(食料品で年約795万円→約1,044万円)。ただし、蓄熱でずらせるのは既存のピークを下回る時間の余力までです。負荷率0.87の化学では、太陽光の発電を当てにしない場合、年の約3分の1(125日)でヒートポンプの熱をその余力だけで賄えず、契約電力の増加を完全には避けられません。蓄熱の効果は、夜間や週末に負荷の谷がある工場ほど大きくなります。蓄熱は、24時間工場で蓄電池より先に検討する価値のある「ためる」打ち手です(ヒートポンプ・蓄熱センター「蓄熱について」)。
| 業種(関東・高圧500kW級) | ヒートポンプの電力 | 1日に必要な電力量 | 余力で賄えない日数(太陽光を当てにしない) | 同(太陽光の発電を見込む) |
|---|---|---|---|---|
| 食料品 | 約102kW | 約2,230kWh | 27日 | 2日 |
| 化学 | 約66kW | 約1,450kWh | 125日 | 24日 |
| 金属製品 | 約21kW | 約450kWh | 0日 | 0日 |
| 電子部品・デバイス | 約39kW | 約850kWh | 7日 | 0日 |
| プラスチック製品 | 約23kW | 約500kWh | 1日 | 0日 |
| 機械組立(比較用) | 約16kW | 約360kWh | 0日 | 0日 |
「余力」は、太陽光導入後の年間最大需要(契約電力)から各時間の買電を引いた量を1日分合計したもの(M)。ヒートポンプは年8,000時間相当の熱を1日単位で供給すると仮定し、蓄熱槽の容量は十分にあるとした。雨の日を考えると「太陽光を当てにしない」側で設計するのが安全です。

CO2では、COP3.0の場合、食料品(112t対117t)と化学(73t対78t)で熱の電化が太陽光とほぼ同じ規模になりました。COP4.0なら食料品204t・化学133tで太陽光を上回り、COP2.5では39t・25tにとどまります。電力の排出係数が下がるほど、熱の電化の効果は大きくなります。逆に、金属製品・プラスチック・機械組立は100℃未満の熱が少なく、太陽光のほうが大きな削減になります。燃料比率と熱の温度帯で、太陽光と熱のどちらを先にするかが決まるということです。
注意点として、この試算には次のものを含めていません。ヒートポンプ・蓄熱槽の機器費と配管の改修費、ボイラを残す場合の待機費、補助金、ガス契約の基本料金の変化、熱回収(冷凍機の排熱を加熱に使う)による上乗せ効果です。特に機器費は工場ごとの差が大きいため、年間差額を「投資の上限の目安」として使い、実際の投資判断には個別の設計と見積もりが必要です。200℃を超える熱(化学の反応、金属の熱処理、プラスチックの成形ヒーター)は、今回の産業用ヒートポンプの試算対象外として扱いました。省エネルギーセンターの技術集は「100℃未満の温水需要は十分代替できるようになった」としています(JASE-W技術集 F-08)。温度帯ごとの熱需要とヒートポンプの適用の考え方は電力中央研究所 甲斐田(2025)も参考にしました(B)。
機器費はいくらまでなら見合うか:投資の上限と補助金
ヒートポンプ・蓄熱槽の機器費は、温度・容量・既設配管によって大きく変わり、公的な標準単価はありません。そこで逆算で、年間差額から見て、いくらまでの投資なら何年で回収できるかを示します(関東・高圧500kW級、都市ガス120円/m3・COP3.0、蓄熱併用の上限値)。
| 業種 | 年間差額(蓄熱併用・上限) | 7年で回収できる投資額 | 10年で回収できる投資額 |
|---|---|---|---|
| 食料品 | 約1,044万円 | 約7,300万円 | 約1.04億円 |
| 化学 | 約677万円 | 約4,700万円 | 約6,800万円 |
| 化学(蓄熱なし・契約電力増を含む516万円ベース) | 約516万円 | 約3,600万円 | 約5,200万円 |
| 電子部品・デバイス | 約398万円 | 約2,800万円 | 約4,000万円 |
| プラスチック製品 | 約234万円 | 約1,600万円 | 約2,300万円 |
| 金属製品 | 約211万円 | 約1,500万円 | 約2,100万円 |
加熱能力1kWあたりに直すと、どの業種でも約24万円/kW以下なら7年、約34万円/kW以下なら10年で回収できる計算です(M/H)。見積もりがこの水準に収まるかが、最初の判断材料になります。
補助金も確認します。経済産業省の令和7年度補正予算「省エネ・非化石転換補助金」(執行団体:環境共創イニシアチブ)では、(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型で産業ヒートポンプなどへの更新による電化・燃料転換を対象に補助率1/2以内(上限は事業全体で3億円、電化する事業は5億円)、(Ⅲ)設備単位型(従来枠)は補助率1/3以内(上限1億円)とされています。(Ⅱ)は更新・改造の場合の補助率で、新設は1/5以内です(公募要領<4次公募用>、A)。4次公募からは(Ⅲ)GX設備単位型「トップ性能枠」(更新は補助率1/2以内・上限3億円、新設は1/5以内)の対象に「産業ヒートポンプ(低温帯)」が加わりました。ただし4次公募は2026年10月30日17時で終了しています(環境共創イニシアチブ)。次の公募があった場合、既存ボイラの更新・改造として補助率1/2が適用されれば、上の投資額のおおむね2倍まで同じ年数で回収できる目安になります(新設の1/5以内では約1.25倍まで。補助対象経費の範囲は公募要領で確認)。
熱の温度帯と、使える技術の目安
| 温度帯 | 工場での主な用途 | 主な技術の候補 | 24時間工場での考え方 |
|---|---|---|---|
| 10℃以下(冷熱) | 冷凍冷蔵、製品冷却、空調 | 高効率冷凍機、インバータ化、蓄冷 | 冷凍機の排熱を加熱側に回せるか(熱回収)を最初に確認 |
| 30〜60℃ | 洗浄、空調の温水、ボイラ給水の予熱 | 空気熱源・排熱回収ヒートポンプ | COPを高く取りやすく、電化の効果が最も出やすい温度帯 |
| 60〜100℃ | 殺菌、加温、乾燥の予熱 | 高温ヒートポンプ(温水)、蓄熱槽 | 必要温度が上がるほどCOPが下がるため、実機の値で試算する |
| 100〜200℃ | 蒸気、乾燥、塗装乾燥 | 蒸気発生ヒートポンプ、ボイラの高効率化、排熱回収 | 今回の試算の対象外。蒸気から温水への工程転換の可能性を先に検討 |
| 200℃超 | 反応、熱処理、成形ヒーター | 電気炉・誘導加熱、燃料転換(水素等は長期) | ヒートポンプの対象外。炉の断熱・運用と燃料転換の長期計画で扱う |
温度帯と技術の対応は、JASE-W技術集 F-08「産業用ヒートポンプ」と電力中央研究所 甲斐田武延「熱風乾燥工程の給気予熱へのヒートポンプの適用検討」(2025年8月21日)を参考にした目安(B/H)。
停電対策(BCP):蓄電池の価値を「何を何時間守るか」で測る
経済性では割に合わない蓄電池も、停電時の価値を入れると判断が変わります。24時間工場では、停電で冷凍冷蔵品の廃棄、連続プロセスの停止、再立ち上げの手間が発生します。蓄電池(自立運転機能と切替盤付き)があれば、重要負荷を一定時間守れます。

高圧500kW級の工場で200kWh(0.4kWh/kW)の蓄電池を入れると、重要負荷を契約電力の10%(50kW:照明・通信・制御盤・冷蔵の一部)に絞れば約3.6時間、5%に絞れば約7.2時間持ちます。昼の停電なら太陽光の発電が加わり、もっと長くなります。逆に、生産ラインまで動かそうとすると1〜2時間しか持ちません。何を守るかを先に決め、その負荷だけを別系統にすることが、蓄電池の容量を決める前の作業です。
BCPの価値を金額にするなら、「1回の停電で失うもの(廃棄・逸失利益・再立ち上げ費用)×起こる確率」と、蓄電池の上乗せ費用(100kWhで約1,400万円)のうち、15年間のデマンド削減で回収できない分を比べます。食料品で冷凍庫の在庫が数千万円規模なら、上乗せ費用の一部を保険料と考える判断は成り立ちます。
モビリティ:構内フォークリフトと社用車のガソリン・軽油
工場のエネルギー費には、構内物流のフォークリフトや、営業・配送の社用車の燃料も含まれます。統計上は「燃料」の一部として計上され、電気・熱に比べて見落とされがちです。
- 構内フォークリフト:エンジン式(LPG・軽油)からバッテリー式への切り替えは、屋内の排ガス対策と燃料費の両面で効果があります。24時間工場では、充電時間を夜間ではなく太陽光が余りがちな休憩時間や、デマンドが下がる時間帯に置くことが、契約電力を増やさないための設計ポイントです(定性的、H)。
- 社用車・配送車:エネがえるの商用EVのTCO試算では、事業用(黒ナンバー)の軽バンは、国の補助と充電器の補助を使い事業所で夜間に充電すると、関東・関西・九州×年1.5万〜4万kmの9ケースすべてで保有8年の正味がプラス(中央値 約136万円の得)でした。一方、2t級のEVトラックは、補助の有無・用途を含む144ケースのどれも保有8年では回収できませんでした(M)。走行距離の長い事業用の軽バンから切り替えるのが順当です。
- 充電と太陽光:工場の屋根の太陽光は24時間の生産で使い切ってしまうため、EVの充電に回す余りはほとんどありません。EV化は「太陽光の余りを使う」のではなく、「燃料費を電気代に置き換える」打ち手として評価します。
何が変わると結論がひっくり返るか
| 前提 | 今回の値 | 変わると |
|---|---|---|
| 太陽光の設置費用 | 15〜17万円/kW | 約34万円/kW(中央値)までは15年で回収。約4割高くても108ケース中107ケースが15年以内 |
| 電気代の上昇率 | 年1〜3% | 太陽光の回収は6.2〜6.6年でほぼ変わらない。蓄電池は上昇率2%以上で関東の8ケースが回収に入る |
| 蓄電池の制御精度 | 完全予見の7割 | 完全予見なら食料品・金属製品の損益分岐は約18万円/kWhで、想定価格を上回る。平らな業種は変わらない |
| 蓄電池の価格 | 14万円/kWh | 尖った業種は約12.5万円/kWh以下で回収圏。平らな業種は約2万円/kWhまで下がらないと回収できない |
| 都市ガス単価 | 120円/m3 | 90円/m3ではCOP2.5で全業種が逆転、150円/m3ではCOP3.0のままでも差額が約1.9倍(関東・関西の全業種。九州は約1.7倍) |
| ヒートポンプのCOP | 3.0 | 必要温度が高いほどCOPは下がる。2.5では差額が大きく縮み、4.0では大きく広がる |
| 停電時の重要負荷 | 契約電力の10% | 5%に絞れば持続時間は2倍、20%に広げれば半分 |
追いかけるべきKPI
- エネルギー消費原単位:生産量あたりのエネルギー使用量。省エネ法の年平均1%低減の目安と同じ物差しで、省エネと電化の効果を測ります。
- 付加価値エネルギー費比率:エネルギー費÷付加価値額。統計の業種平均(図1)と比べ、自社の位置を確かめます。
- Scope1とScope2:燃料(Scope1)と電気(Scope2)を分けて追います。太陽光はScope2、熱の電化はScope1を減らしScope2を増やします。Scope2は市場基準とロケーション基準を区別します。
- 負荷率(デマンド率):年間平均÷最大需要。負荷率が上がるほど基本料金の割合が下がり、蓄電池より運用改善が効く状態になります。
複数の工場を持つ企業は「拠点の順番」を決める
同じ会社の工場でも、エリアと業種で効く打ち手が違います。今回の試算からは、太陽光は電力量単価の高いエリア(関西)と規模の大きい工場から、蓄電池は基本料金が高く負荷が尖った工場(関東の食料品・金属製品)から、熱の電化は燃料比率が高くボイラ更新が近い工場から、という順番になります。全拠点のデマンドデータと燃料使用量を同じ形式で集め、同じ前提で並べることが、投資の順番を説明できる最短の方法です。
よくある思い込みと、試算の結果
| よくある思い込み | 試算の結果 |
|---|---|
| 電気をたくさん使う工場ほど、蓄電池が得になる | 逆。24時間ほぼ一定で使う工場ほど、ピークが下がらず蓄電池は割に合わない(化学・電子部品・プラスチックでピーク削減1〜2%) |
| 太陽光を載せれば、工場の脱炭素はかなり進む | 屋根の太陽光で減らせる電気由来のCO2は中央値8.8%。燃料(Scope1)には効かない |
| 太陽光と蓄電池はセットで入れるもの | 24時間工場では太陽光は余らないので、ためる意味がない。蓄電池はBCPかスパイク対策として別に判断する |
| ヒートポンプは家庭用の技術で、工場には向かない | 100℃未満の温水・洗浄・乾燥の予熱なら適用でき、食料品では太陽光と同じかそれ以上の年間差額になり得る(簡易試算) |
| ヒートポンプは必ず安くなる | ガス単価とCOPしだい。都市ガス90円/m3・COP2.5ではすべての業種で逆転した |
| 電化すると基本料金が上がるので損 | 蓄熱槽でピーク外に運転すれば基本料金の増加を抑えられ、差額は最大約3割増える(上限。負荷の谷が小さい工場では避けきれない日がある) |
業種別の読み解き
食料品:熱と冷熱の両方を持つ「電化の本命」
殺菌・洗浄の温水と、冷凍冷蔵の冷熱を同時に使うのが食料品工場の特徴です。冷凍機の排熱を温水に回す熱回収型ヒートポンプは、加熱と冷却の両方を一度に減らせます。日中の山と夏の冷凍負荷でピークが尖るため、蓄電池のピークカットも7〜9%効き、関東では蓄電池0.2kWh/kWの上乗せがほぼ収支ゼロになりました。冷凍冷蔵品の保護という停電時の価値も大きく、熱・太陽光・蓄電池のすべてが候補に入る業種です。
化学:熱の温度帯の棚卸しから
エネルギー費の56%が燃料で、付加価値に対するエネルギー費も13.8%と6業種で最大です。ただし熱の多くは100℃を超える蒸気や200℃超の反応熱で、ヒートポンプで置き換えられる部分は限られます(今回は15%と仮定)。屋根に対して需要が大きく、太陽光の自給率は4.5%にとどまります。GX-ETSの対象になる規模の企業では、調達(PPA・証書)と燃料転換の長期計画が中心テーマになります。
金属製品:コンプレッサとスパイクを先に片付ける
電力が72%を占め、コンプレッサ・溶接・熱処理炉が主な負荷です。炉の立ち上げが重なると短いスパイクが出るため、蓄電池や起動順の管理で契約電力を7〜10%下げられる余地があります。中小企業が多く価格転嫁が難しい業種なので、投資の少ないデマンド監視と漏れ対策を先に行い、太陽光(回収7.4年)をその次に置くのが現実的です。
電子部品・デバイス:顧客の要請に応える「調達」が主役
クリーンルーム空調と純水・真空装置で24時間ほぼ一定の需要があり、負荷率は0.84です。太陽光は確実に元が取れますが自給率は3.9%で、顧客から求められる再エネ比率には届きません。蓄電池のピーク削減は1.3%です。省エネ(空調・排気の風量最適化)と、オフサイトPPA・証書による調達を組み合わせる必要があります。
プラスチック製品:屋根いっぱいの太陽光とデマンド管理
電力が80%を占め、成形機のヒーターとチラー・コンプレッサが主な負荷です。平日24時間・週末半分の稼働で、屋根の太陽光は全量自家消費でき、回収は7.5年でした。ピークは平日の連続運転で決まるため蓄電池は効きにくく、成形機の待機電力と立ち上げの順番を管理するほうが基本料金に効きます。
業種別の推奨:どこから手を付けるか
| 業種 | 最初にやること | 次にやること | 蓄電池 | この記事の根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 食料品 | 冷凍機・ボイラの運用改善、冷却と加熱の熱回収 | 100℃未満の熱の電化+蓄熱と太陽光を同時に設計 | BCP(冷凍冷蔵の保護)として検討。関東ならデマンドでもほぼ横ばい | 熱の差額 年約795万円(500kW級、簡易)、太陽光 7.2年 |
| 化学 | 蒸気の需要温度の棚卸し、蒸気漏れ・保温 | 100℃未満の熱の電化、調達(PPA・証書) | 経済性では不要。プロセス停止リスクで判断 | 熱の差額 年約516万円、自給率4.5%、ピーク削減1.7% |
| 金属製品 | コンプレッサの漏れ・圧力見直し、炉の起動順の管理 | 太陽光、炉のスパイク対策 | 熱処理炉のスパイクがある工場は有力候補(ピーク削減7〜10%) | 太陽光 7.4年、損益分岐 約12.5万円/kWh |
| 電子部品・デバイス | クリーンルーム空調・純水・真空ポンプの省エネ | 調達(PPA・証書)+太陽光 | 経済性では不要。品質事故の回避価値で判断 | 自給率3.9%、ピーク削減1.3% |
| プラスチック製品 | 成形機の待機電力、チラー・コンプレッサの省エネ | 太陽光(屋根いっぱい) | 経済性では不要 | 太陽光 7.5年、ピーク削減1.3% |
経営課題から見た打ち手の価値
エネルギーの打ち手は、エネルギー費以外の経営課題も同時に解くときに社内で通りやすくなります。
| 経営課題 | 効く打ち手 | 稟議での書き方の例 |
|---|---|---|
| 原材料高・価格転嫁の遅れ | 太陽光(確実な単価削減)、熱の電化(燃料価格の変動から距離を置く) | 「年間○万円の固定費を、燃料・電気の市況に左右されずに削減」 |
| 取引先からのCO2削減要請 | 太陽光(Scope2)、熱の電化(Scope1)、調達(PPA・証書) | 「主要顧客の要請に対し、Scope1・2を○%削減する計画を提示」 |
| 人手不足 | ボイラの電化(ボイラ管理の負担軽減)、エネルギー監視の自動化 | 「設備管理の業務を○時間/月削減」 |
| 品質・停電リスク | 蓄電池(重要負荷の保護)、蓄熱(熱の供給の平準化) | 「停電時に冷凍冷蔵・制御系を○時間維持し、廃棄損失○万円を回避」 |
| 規制(省エネ法・GX-ETS) | 省エネ、熱の電化、燃料転換の長期計画 | 「原単位の年1%低減と、将来の炭素価格への備え」 |
稟議に載せる数字の例:食料品工場(関東・高圧500kW級、電気代上昇率2%)
| 項目 | 太陽光225kW | +蓄電池100kWh | 熱の電化+蓄熱(簡易) |
|---|---|---|---|
| 投資額(税抜) | 3,825万円 | +1,400万円 | 個別見積もり(本試算に含まない) |
| 初年度の削減額 | 約566万円 | +約82万円 | 年約1,044万円(ランニング差額) |
| 回収年数(保守費込み) | 7.2年 | 合計8.4年 | 機器費÷年約1,044万円 |
| 20年の手残り(保守費込み) | 約7,590万円 | 約7,602万円 | — |
| CO2削減 | 約117t/年(電気の8.7%) | — | 約112t/年(正味、COP3.0) |
| 停電時 | 昼のみ(自立運転機能が必要) | 重要負荷50kWを約1.8時間 | — |
太陽光と蓄電池はモデル計算(M)、熱の電化は簡易試算(M/H)、停電時は単純計算(H)。熱の電化の欄は都市ガス120円/m3・COP3.0。
最初の90日でやること
- 30分デマンドデータを1年分集める(電力会社のWebサービスや受電設備の記録)。ピークがいつ・何で出ているかが、蓄電池とデマンド管理の判断材料です。
- 熱の棚卸しをする。ボイラの燃料使用量、蒸気・温水の用途ごとの必要温度、ボイラの更新時期を一覧にします。
- 屋根の条件を確かめる。面積・荷重・防水の改修時期。改修が近ければ太陽光を前倒しします。
- 守るべき負荷を決める。停電時に動かす設備をkWで書き出し、BCPの要否と容量を決めます。
- 同じ前提で比べる。太陽光・蓄電池・ヒートポンプの見積もりを、同じ電気料金・同じ上昇率・保守費込みで比較します。
見積もりと試算を受け取ったら確認する8項目
- 需要データは自社の30分デマンドか、テンプレートか
- 電気料金は最新の料金表・燃料費調整・賦課金を使っているか(税抜/税込はそろっているか)
- 電気代の上昇率は何%で、上昇率0〜1%でも成り立つか
- 保守費・パワーコンディショナの交換費・蓄電池の寿命と劣化を入れているか
- 蓄電池のピークカットは「完全に予測できた場合」か、現実的な制御か
- 契約電力が下がるのは何か月後か(実量制の12か月ルール)
- ヒートポンプの効率(COP)は、自社の必要温度・外気条件での値か
- 停電時に動かす負荷と時間が、蓄電池の容量と合っているか
エネがえるでできること
エネがえるBizは、産業用の自家消費型太陽光・蓄電池の経済効果を、施設の30分デマンドデータや業種別のロードカーブ・テンプレートで試算するクラウドサービスです。全国の電力会社の高圧料金メニューと燃料費調整単価を反映し、デマンド削減を含めた回収年数・20年収支・CO2削減量を、提案書の形で出力できます。データの準備や試算の作業そのものを任せたい場合は、試算代行(BPO)も利用できます。熱の電化やEV化を含めた全体設計は、工場ごとの条件で個別にご相談ください。
よくある質問
24時間稼働の工場に自家消費型太陽光は元が取れますか?
今回の試算では取れる結果でした。6業種×3エリア×2規模の36案件に電気代上昇率3水準を掛けた108ケースすべてが10年以内に回収でき、中央値は6.4年でした(保守費・交換費込みで7.2年、税抜)。夜も週末も稼働しているため、発電した電気を余らせずに使い切れることが理由です。
24時間工場に蓄電池は必要ですか?
経済性だけなら、多くの工場で不要という結果でした。蓄電池を足した216ケースのうち、上乗せ分が15年以内に回収できたのは8ケース(関東の食料品・金属製品)だけです。負荷が平らな工場では契約電力が1〜2%しか下がりません。停電時に冷凍冷蔵や制御系を守る必要がある工場では、BCPの設備として検討します。
太陽光で工場の電気はどれくらい賄えますか?
屋根の太陽光で賄えるのは、工場の電気の3.9〜15.6%(中央値8.8%)でした。化学・電子部品のように屋根に対して需要が大きい工場では4〜5%です。再エネ比率を大きく上げるには、オフサイトPPAや非化石証書などの調達を組み合わせる必要があります。
ボイラをヒートポンプに替えると得になりますか?
100℃未満の熱なら、ガス単価と効率しだいで大きな差が出ます。関東・高圧500kW級の簡易試算(都市ガス120円/m3・COP3.0、機器費を含まない)では、年間ランニングコストの差は食料品で約795万円、化学で約516万円でした。ただしガス90円/m3・COP2.5ではすべての業種で逆転します。自社のガス単価と工程の必要温度を確かめてください。
蓄熱槽は何のために入れるのですか?
ヒートポンプをピーク外の時間に運転して熱をため、契約電力(基本料金)が増えるのを避けるためです。簡易試算では、契約電力がまったく増えないと仮定した上限で、蓄熱の併用によりヒートポンプ化の年間差額が約3割増えました(食料品で約795万円→約1,044万円)。夜間や週末に負荷の谷がある工場ほど効果が大きく、負荷が平らな化学では避けきれない日が出ます。
停電時、蓄電池で工場はどれくらい動きますか?
守る負荷しだいです。高圧500kW級で200kWhの蓄電池なら、重要負荷を50kW(契約電力の10%)に絞ると夜間で約3.6時間、25kWなら約7.2時間です。生産ラインまで動かすと1〜2時間程度になります。自立運転機能と切替盤が必要です。
特別高圧(2,000kW以上)の工場でも同じ結果になりますか?
今回は特別高圧を試算していません。料金が個別契約になることが多く、公開の単価で比べられないためです。傾向としては、需要に対して屋根の太陽光で賄える割合がさらに小さくなり、調達と熱の転換の比重が高まると考えられます。個別の契約単価とデマンドデータでの試算をおすすめします。
自社の工場で正確に試算するには何が必要ですか?
1年分の30分デマンドデータ、電気料金の契約メニューと請求書、屋根の面積・荷重、ボイラの燃料使用量と熱の用途別の必要温度、停電時に守りたい設備の一覧です。エネがえるBizでは、デマンドデータか業種別テンプレートで太陽光・蓄電池の経済効果を試算できます。
試算の前提条件(すべて公開)
| 項目 | 設定値 | 出典・根拠 |
|---|---|---|
| 関東 高圧 | 東京電力EP 高圧ベーシックプラン:基本料金2,530円/kW+2026年11月の託送見直し分108.57円/kW(推計)、電力量料金17.43円/kWh、燃料費調整1.55円/kWh(2026年11月分)。時間帯別の市場価格調整単価は含めていない | 東京電力EP 電気料金単価表(2026年4月1日実施)、同 2026年11月分 燃料費調整単価等 |
| 関西 高圧 | 関西電力 高圧電力AS等:基本料金2,200円88銭/kW、電力量料金 夏季19円22銭・その他季18円15銭、燃料費調整+0.15円、市場価格調整+0.90円(500kW以上、11月分) | 関西電力 料金表、燃料費調整単価、市場価格調整単価 |
| 九州 高圧 | 産業用電力A:基本料金2,343円19銭/kW、電力量料金 夏季16円50銭・その他季15円61銭、燃料費等調整1.20円/kWh(12月分) | 九州電力 産業用電力A、2026年12月分 燃料費等調整単価 |
| 再エネ賦課金 | 4.18円/kWh(2026年度) | 経済産業省(2026年3月19日公表) |
| 力率・消費税 | 力率100%(基本料金15%割引)。料金・設備費とも税抜(料金表の税込単価を1.1で割る) | 各社料金表の力率割引の規定。事業者の仕入税額控除を前提 |
| 太陽光の発電量 | PVGIS(ERA5)の東京・大阪・福岡の1時間値。劣化 年0.5% | PVGIS(EU JRC) |
| 太陽光の容量・設置費用 | 契約電力の25〜60%(業種別、屋根の広さの仮定)。500kW級17万円/kW、1,500kW級15万円/kW(税抜) | 仮定。参考:調達価格等算定委員会資料(2026年2月5日)では屋根設置10kW以上の2025年の設置費用は平均20.8万円/kW・中央値18.5万円/kW、2026〜27年度の想定値は15.0万円/kW |
| 保守費・交換費 | 年3,000円/kW+13年目にパワーコンディショナ交換2万円/kW(税抜) | 仮定(業種別×規模別試算と同じ) |
| 蓄電池 | 契約電力×0.2時間分・0.4時間分、出力は容量の1/2、14万円/kWh(税抜)、使える容量90%、劣化 年1.5%、補機0.2kW/100kWh、寿命15年 | 仮定。業務・産業用の2026年度目標価格11.8万円/kWh(公募要領)を上回る市場価格を想定 |
| 蓄電池の制御 | 年間の最大需要を下げる運転。現実的な値は完全予見の7割を達成と仮定、完全予見を上限として併記 | 仮定 |
| 需要の形 | 業種別の合成プロファイル(平日・休日・季節・日々のばらつき)。最大需要=契約電力 | 出典なし(合成値、H)。形は業種別エネルギー課題マップの負荷の形の記述に基づく |
| 燃料比率・エネルギー費比率 | 食料品42.3%、化学56.3%、金属製品27.7%、電子部品16.4%、プラスチック20.4%、機械16.8%(燃料÷燃料+電力) | 経済産業省「2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査」第2表(2023年実績、2025年8月29日公表)から算出(A) |
| 熱の電化 | 100℃未満の熱の割合(食料品50%、化学15%、金属20%、電子60%、プラスチック30%、機械40%)、都市ガス120円/m3(90〜150円)、45MJ/m3、ボイラ効率0.85、COP3.0(2.5〜4.0)、年8,000時間運転。機器費・配管改修費・補助金は含まない | 仮定(H)。ヒートポンプの適用温度はJASE-W技術集 F-08を参考 |
| 排出係数 | 電気:東京電力EP 0.000452、関西電力 0.000415、九州電力 0.000472 t-CO2/kWh。都市ガス:2.09t-CO2/千m3(東京ガスネットワーク等の供給区域、令和7年度供給実績) | 電気は環境省・経済産業省(A)。都市ガスは環境省・経済産業省「ガス事業者別排出係数」(令和8年6月30日公表)(A)。代替値(省令の排出係数)は2.05t-CO2/千m3 |
| 電気代上昇率 | 年1%・2%・3%(基本料金・電力量料金とも) | シナリオ |
この試算の限界
- 需要の形は業種別の合成プロファイルで、実際の工場の30分デマンドデータではありません。蓄電池の価値は、年間の最大需要がいつ・どれだけの長さで出るかで大きく変わります。1時間単位の計算のため、30分単位で決まる実際のピークを低めに見積もっている可能性があります。
- 特別高圧(おおむね2,000kW以上)は試算していません。1,500kW級は、年間最大需要の低下が協議で決まる契約電力にそのまま反映されると仮定しており、上限側の想定です。実量制では、最大需要を下げてから契約電力に反映されるまで最長12か月かかりますが、本試算は1年目から反映される前提です。
- 関東の高圧の基本料金は推計値で、時間帯別の市場価格調整単価は含めていません。含めると関東の太陽光の効果は本試算より大きくなります。燃料費等調整は、確認日時点で各社が公表していた月の単価(関東・関西は2026年11月分、九州は12月分)を使っており、月がそろっていません。燃料費等調整は月ごとに変わるため、毎月の更新で見直します。
- 熱の電化は、統計の燃料比率と温度帯の仮定から求めた簡易試算です。工場ごとの燃料費・温度・運転時間とは一致しません。機器費・配管改修費を含まないため、回収年数は計算していません。
- 停電時の持続時間は、満充電・夜間・太陽光なしの単純計算で、変換ロスや充電残量の管理は考慮していません。
- 1時間単位の計算のため、30分単位の最大需要は簡易計算で約4〜7%高くなり得ます(H)。蓄電池の出力は容量の1/2を基本とし、1C(出力=容量)は感度として示しました。
- 熱の電化の投資上限は年間差額からの逆算で、機器費の実勢ではありません。補助金は公募ごとに条件が変わり、令和7年度補正の4次公募は終了しています。
- モビリティの数値は別記事の試算の引用で、工場の需要との組み合わせ(充電による契約電力の増加)は試算していません。
- エネがえるBizでの照合は今回行っていません。
ファクトチェック・エビデンス検証一覧
主要な数値と主張の根拠と検証方法を一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・電力会社・公的機関の公式資料)にリンクし、仮定とモデル計算は区分で区別しています。
検証の方法
- 一次情報との照合:料金表、燃料費等調整、再エネ賦課金、排出係数、統計の燃料比率を公式資料で確認しました(確認日:2026年11月1日)。料金の前提は業種別×規模別の試算(216ケース)と同じです。
- 独立計算モデルによる再計算:8,760時間のモデルで324ケースを試算し、コードとケース別データで管理しています。中央値は回収できないケースを「回収不能」として含めて計算しています。
- 独立レビュー:独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| A 一次情報 | 官公庁・電力会社・公的機関の公式資料で確認した値 |
| B 二次資料 | 業界団体・研究機関の資料、技術集など |
| M 計算結果 | 本記事の独立計算モデル、またはエネがえるの別記事の試算結果 |
| H 仮定値・推計・専門家判断 | 確かな公表値がないため置いた値。幅や感度で示している |
| 項目 | 記事での値 | 区分 | 検証結果 |
|---|---|---|---|
| 業種別のエネルギー費の付加価値比・出荷額比・燃料比率 | 図1のとおり | A | 経済構造実態調査 第2表(従業者30人以上、2023年実績)から算出。機械組立は「はん用・生産用・業務用機械」で代表 |
| 省エネ法の原単位年1% | 本文のとおり | B | 中小企業基盤整備機構 J-Net21の解説で確認(資源エネルギー庁の原文は作成環境から取得できず) |
| GX-ETSの参加義務(直接排出10万t以上、2026年度) | 本文のとおり | A | 環境省資料で確認 |
| 電気料金・燃料費等調整・賦課金・電気の排出係数 | 前提条件の表のとおり | A/H | 確認済み。関東の高圧基本料金は推計 |
| 太陽光の回収 108/108ケースが10年以内、中央値6.4年(保守費込み7.2年) | — | M | ケース別データで確認 |
| 自給率3.9〜15.6%(中央値8.8%) | — | M/H | 太陽光容量の仮定に依存 |
| 蓄電池の上乗せ分の15年回収 8/216ケース | — | M/H | 条件付き。ピークカット達成度7割の仮定による。上限の損益分岐価格を併記 |
| 損益分岐の蓄電池価格(約12.5万円・約1.8〜2.6万円/kWh) | — | M | 15年間の削減額の合計÷容量(0.2kWh/kW、上昇率2%、中央値) |
| 熱の電化の年間差額(食料品約795万円など) | — | M/H | 簡易試算。燃料比率(A)以外は仮定。機器費を含まない |
| 都市ガスの排出係数 | 2.09t-CO2/千m3 | A | 環境省・経済産業省「ガス事業者別排出係数」(令和8年6月30日公表、令和7年度供給実績)で確認。東京・大阪・西部ガス(福岡)等の供給区域で2.09、代替値2.05 |
| 停電時の持続時間 | 0.9〜7.2時間 | H | 単純計算 |
| 商用EVの試算(軽バン9/9ケースがプラス・中央値約136万円、2t級トラック0/144) | — | M | 商用EVのTCO試算の記載と照合 |
| 8ケースの回収年数と12か月遅れの感度 | 14.0〜14.9年。遅れると上昇率2%の500kW級2ケースが約15.6年 | M | ケース別データ(battery8_lag.csv)で確認 |
| 蓄熱でずらしきれない日数 | 化学125日・食料品27日・電子部品7日(太陽光を当てにしない場合) | M/H | 8,760時間の需要と契約電力から計算(storage_feasibility.csv) |
| 設置費用4割増でも15年以内 | 108ケース中107ケース | M | ケース別の上限倍率(capex_mult.csv、最小1.39倍)で確認 |
| 省エネ・非化石転換補助金の補助率・上限・公募終了 | (Ⅱ)更新・改造1/2以内・新設1/5以内・3億円(電化5億円)、(Ⅲ)従来枠1/3以内・1億円、GXトップ性能枠 更新1/2以内・3億円、4次公募は2026年10月30日終了 | A | 公募要領<4次公募用>と環境共創イニシアチブの公表で確認 |
| 業種の経営課題・打ち手の適合度 | 表と図3のとおり | H | 専門家判断。試算値ではない |
検証の過程で見つけて直した主な点
- 20年の手残りの計算で、寿命15年の蓄電池の削減を16〜20年目にも計上していた点を見つけ、16年目以降を除いて集計し直した(食料品の蓄電池0.2kWh/kWは「手残りが増える」から「ほぼ横ばい」に変わった)。
- 蓄電池の損益分岐価格が業種により約12万円/kWhに達することを確認し、「どの業種も今の数分の一の価格が必要」という表現を、尖った負荷と平らな負荷に分けた表現に直した。
- 化学・電子部品の基本料金の割合を、関東の値(13〜14%)ではなく3エリア平均(約12〜13%)で書くように統一した。
- 商用EVの数値を、引用元記事の条件(事業用ナンバー・補助あり・事業所で夜間充電、3地域×年1.5万〜4万km)どおりに書き直した。
- 都市ガスの排出係数を、仮置きの0.0499kg-CO2/MJ(1m3あたり約2.25kg)から、環境省・経済産業省公表のガス事業者別排出係数2.09t-CO2/千m3に置き換えた。これにより熱の電化のCO2削減(COP3.0)は食料品148t→112t、化学96t→73tとなり、「太陽光を上回る」を「ほぼ同じ規模(COP4.0なら上回る)」に直した。
- 蓄熱併用の効果を「契約電力がまったく増えない上限」と明記し、負荷の谷の大きさで避けきれない日数を計算して示した。
- 設置費用の感度を「108ケースすべて」から「108ケース中107ケース」に直した。
- 熱の電化を太陽光より先に置く理由を、太陽光の価値が増えるという誤った説明から、契約電力と設備の前提が変わるためという説明に直した。
試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年11月1日/試算条件の確認日:2026年11月1日。更新履歴(2026年11月1日):公開。毎月、燃料費調整・市場価格調整・再エネ賦課金の最新情報を確認し、変化があれば再計算して更新します。関連する試算:産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算/業種別のエネルギー費はどこで削れる?24業種×規模別に経営課題と打ち手を整理/商用EVは元が取れない?用途別・車種別にTCOを実試算/蓄電池は元が取れない?全国9エリア243ケースを実試算。






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