結論から言います。DR(デマンドレスポンス)は、持っている設備で「下げられるkW」がある需要家には、損をしない追加収入になります。ただし家庭と法人で、お金の大きさがまったく違います。エネがえるの試算では、関東の家庭の蓄電池(10kWh)で下げDRに参加すると、DRの日の事前充電と放電の待機で電気代が1回あたり約87〜108円増え、東京電力EPの定額報酬(年1,200円相当)でまかなえるのは年約12回分でした。家庭のDRで大きいのは毎年の報酬ではなく、DR参加を条件とする設置時の補助(国の補助で最大60万円、東京都の上乗せ10万円)です。法人では、容量市場の発動指令電源として100kW・3時間を下げると、2029年度の東京エリアの約定価格(15,111円/kW)と需要家への配分50%の仮定で年約75.6万円の対価になり、空調・冷凍冷蔵・自家発なら発動の費用を引いても年65万〜81万円が残りました。一方で、蓄電池をDRの収入だけで回収するのは難しく、15年間のDR収入は設備費の約15〜34%にとどまります。
3つの答え
- 家庭の蓄電池のDRは「報酬で得をする」ものではなく「補助の条件」と考える。関東・スマートライフS・太陽光5kW・蓄電池10kWhの家で、下げDR(17〜20時)を年3回・8回・12回・20回受けると、電気代は年約261円・772円・1,231円・2,157円増えました(DRの日は夜間に満充電し、17時まで放電を控える運転を仮定)。定額報酬の年1,200円相当と差し引くと、年12回でほぼ0円、20回で約957円の持ち出しです。一方、国の家庭用蓄電池のDR補助(令和7年度補正)は初期実効容量9kWhの製品で約31万円、東京都(都内)の上乗せ補助は10万円で、どちらも2028年3月31日までDR契約を続けることが条件です。
- 太陽光のある家のエコキュートは、上げDR(昼の沸き上げ)で報酬がなくても電気代が下がる。晴れた日に1〜6時の沸き上げを10〜14時に移すと、太陽光の余り(売れば8.5円/kWh)を使い、夜間27.91円/kWhの買電が減るため、1回あたり約105〜115円の節約になりました(年30回で約3,446円)。東京電力EPの報酬(25pt/回)はこれに上乗せされます。
- 法人のDRは「kWの対価」が主役で、市場連動プランのスパイク回避は平年なら小さい。100kW・3時間を年12回下げる場合、容量の価格15,111円/kW×配分50%で対価は年約75.6万円です。同じ100kWを市場連動プランの高い時間から移す価値は、2025年度のJEPX価格では年12回で約5.2万円、60回でも約14.8万円でした。価格が高騰した2022年度でも12回で約20.1万円です。容量の価格が5,000円/kWまで下がると、対価は年25.0万円(配分50%)に縮みます。
この記事で分かること(数値の要点)
- 容量市場の2029年度向けメインオークション(2025年度実施)の約定価格は、東北・東京15,111円/kW、九州15,112円/kW、北海道14,972円/kW、中部・北陸・関西・中国・四国12,388円/kWでした(電力広域的運営推進機関 2026年1月20日公表)。DRで参加する発動指令電源は、このkWあたりの対価を、アグリゲーターと需要家が契約で分けます。配分率の公表例はほとんどないため、本試算は30%・50%・70%で幅を見ました。
- 発動指令電源の条件は「年12回まで・1日1回・3時間前の指令・3時間継続(平日9〜20時)」です(容量市場メインオークション(対象実需給年度2029年度)説明会資料 2025年7月)。発動指令に応じられなかった量には、約定単価の110%を基に1回ごとに経済的ペナルティが科されます(発動指令が12回未満なら、指令がなかった分のペナルティはなし)。3時間続けて下げる必要があるため、蓄電池で出せるkWは「使える容量÷3」になり、100kWh(実効90kWh)の蓄電池なら30kWまでです。
- 2026年度から、需給調整市場に家庭などの低圧の小規模リソースと、機器ごとの計測(機器点)で参加できる制度が始まりました。東京電力パワーグリッドは、これを反映した託送供給等約款を2026年4月1日実施として届け出ました(2026年2月13日、需給調整市場検討小委員会 2025年9月26日)。実際に家庭の機器がどの程度参入しているかは未確認で、家庭が受け取れる金額はアグリゲーターとの契約しだいです。
- JEPXスポット価格は、2022年度と2025年度で別の市場のように違います。東京エリアの平均は2022年度23.5円/kWh・最高200円(30分値)に対し、2025年度は12.45円・最高45.01円でした。50円以上の30分は2022年度に623コマ、2025年度は0コマです(JEPX スポット市場 取引結果)。市場連動プランでの「高い時間を避けるDR」の価値は、この年ごとの違いでほぼ決まります。
- 九州エリアのJEPX価格が0.01円/kWhになった30分は、2025年度に983コマ(約492時間)ありました(2023年度2,178コマ、2024年度1,167コマ)。太陽光の電気が余る時間で、上げDR(昼に使う量を増やす)の出番です。
- ヒートポンプ給湯機などの「DRready」は、2026年3月時点で要件の案の段階です。案では、ヒートポンプ給湯機は1日の沸き上げに必要な電力量の50%以上をDRに使えること、セキュリティの適合評価(JC-STAR)★1以上などが挙がっています(日本電機工業会の整理(2026年3月)、出典は経済産業省 DRready勉強会)。
なぜ今、DRの損得を計算するのか
DRは、電力会社やアグリゲーター(機器を束ねて遠隔制御する事業者)の求めに応じて、電気を使う量を減らしたり(下げDR)、増やしたり(上げDR)する仕組みです。これまで家庭では節電ポイントのキャンペーン、法人では一部の大口需要家の取り組みにとどまっていましたが、2026年は制度とお金の流れが同時に変わりました。
- 補助金の条件になった。国の家庭用蓄電池の補助(令和7年度補正、公募は2026年3月24日〜12月10日)は、DR契約を少なくとも2028年3月31日まで続けることが条件です(環境共創イニシアチブ(SII)公募要領)。東京都の蓄電池・エコキュートの補助でも、都に登録したアグリゲーターのDRに参加すると上乗せがあります(東京電力EP 2026年7月24日)。
- 家庭の機器が市場に参加できるようになった。2026年度から、需給調整市場に低圧の小規模リソースが参加できる制度が始まりました。
- kWの値段が上がった。容量市場の2029年度向けの約定価格は、東京エリアで15,111円/kWです。法人が「3時間だけ100kW下げられる」ことに、年100万円を超える価値が付いています(その一部が需要家に届きます)。
一方で、需要家にとっての損得はほとんど公表されていません。報酬の単価は「ポイント」や「キャンペーン」で示され、電気代への影響(DRの日に蓄電池を満充電にしておく費用、上げDRで昼に買う電気の費用)は差し引かれていないからです。この記事では、家庭と法人の両方で「報酬」と「電気代の増減」と「発動の費用」を同じ物差しで並べました。蓄電池そのものの元が取れるかは蓄電池243ケースの試算、法人の太陽光・蓄電池は業種別×規模別の試算で扱っています。
本記事で示す数値は、確認できる事実(A)、二次資料・推計(B)、試算モデルの値(M)、仮定・編集部評価(H)を区別し、最後のファクトチェック表にまとめています。
経営課題からエネルギー費の打ち手までを4段で整理する
DRは単独の設備投資ではなく、運用・契約の見直しの延長にある打ち手です。業種別のエネルギー費の整理(24業種)と同じ4段で、DRがどこに入るかを先に確認します。
| 需要家 | 1. 経営課題(エネルギー以外) | 2. エネルギー費の構造 | 3. DRに使える資源と打ち手の順番 | 4. 本試算の位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| 家庭(太陽光・蓄電池・エコキュートあり) | 光熱費の家計負担、卒FIT後の売電単価の低下、停電への備え | 時間帯別料金では夜間27.91円・昼間35.81円(東京電力EP スマートライフS)、余りの売電8.5円。差が大きいほど「いつ使うか」の価値が大きい | ①運用(エコキュートの沸き上げ時刻)→⑤蓄エネ(蓄電池)→⑥調達(市場連動プラン)。補助の条件として⑤を先に検討する家も多い | M:下げDR・上げDRの回数別の電気代、報酬・補助との比較(43ケース)。市場連動プランは16ケース |
| オフィスビル | テナントの快適性、ビルの省エネ法の報告、賃料への転嫁の難しさ | 空調が夏・冬の最大需要を決め、基本料金の比率が高い | ①運用・契約(空調の設定温度の一時変更)→②省エネ(空調・照明の制御の仕組み)→⑤蓄熱 | M:空調の下げDRの収支(配分・価格・回数別)。快適性の低下は金額化しない(H) |
| スーパー・冷凍冷蔵倉庫 | 食品の品質管理、人手不足、価格転嫁の難しさ(スーパーの経常利益率は1%前後。スーパーの試算) | 冷凍冷蔵が24時間動き、電気代の比率が高い | ①運用(事前冷却で3時間止める)→⑤蓄エネ。品質の許容温度の確認が先 | M:事前冷却の下げDRの収支。品温の上昇・品質リスクは扱わない(H) |
| 工場(日中稼働) | 取引先からの脱炭素の要請、生産計画の柔軟性 | 生産設備の電力が大半。自家発があれば燃料費と電気代の比較になる | ①運用(生産の時間シフト)→自家発の活用→⑤蓄電池。生産シフトは残業・段取りの費用で決まる | M:生産シフト・自家発・蓄電池の収支。自家発の排出量・騒音・法規制は扱わない(H) |
入れ替わる条件もあります。補助金の締め切りがある家庭では蓄電池の購入が先に来ます。ただしその場合も、DRは「補助の条件」であって、毎年の報酬で蓄電池の元を取る理由にはなりません(結果③)。
検証の方法:家庭59ケース+法人291ケース=350ケース
電気代は1時間単位(年8,760時間)で計算し、DRの日は機器の運転を変えたうえで、DRがない場合との差を電気代の増減としました。報酬・対価は公表されている単価の例と、kWあたりの約定価格を使いました。
| 区分 | 条件 | ケース数 |
|---|---|---|
| A 家庭(関東) | 蓄電池(下げDR 年0・3・8・12・20回×上げDR 年0・10・30・60回、エコキュートの昼の沸き上げあり・なし)、エコキュートのみ(上げDR 年10・30・60回) | 43 |
| B 家庭・市場連動プラン | JEPX東京 2022〜2025年度×高い日だけ年3・12・30回/毎日 | 16 |
| C 法人(100kWあたり) | DRの資源5種×容量の価格3水準(5,000・10,000・15,111円/kW)×需要家への配分3水準(30・50・70%)×発動回数3水準(0・4・12回) | 135 |
| D 法人(業種別) | 5業種(契約電力500kW)×価格3×配分3×回数3 | 135 |
| E 法人・市場連動プラン | JEPX東京 2022〜2025年度×高い日だけ年12・30・60回(100kW×3時間) | 12 |
| F 法人の蓄電池 | 100・300・500kWh×配分3水準 | 9 |
家庭のDRの日は、JEPX東京エリアの2025年度の価格で代表させました。下げDRは平日(1・2・7・8・9・12月)のうち17〜20時の価格が高い日から、上げDRは10〜14時の価格が安い日から選んでいます。需給ひっ迫や出力制御が実際に起きる日と完全には一致しないため、DRの日の天気(太陽光の発電量)による違いは結果の幅として読んでください。
お金の流れ:誰が誰に払うのか
DRのお金の出どころは3つです。①容量市場(将来の供給力=kWに対する対価。電気を使わない「発動指令電源」としてDRが参加できる)、②需給調整市場(実際に調整したkW・kWhの対価)、③国・自治体の補助(設置時に1回)。家庭向けのDRサービスは、これらを小売電気事業者やアグリゲーターがまとめ、需要家には定額や1回あたりのポイントで返す形が多く、市場の対価のうち何割が需要家に届くかは公表されていません。
結果①:家庭の蓄電池の下げDRは、1回あたり約87〜108円の電気代増
| 下げDR(17〜20時) | 電気代の増加(年・税込) | 1回あたり | 定額報酬(年1,200円相当)との差し引き |
|---|---|---|---|
| 年3回 | 約261円 | 約87円 | +939円 |
| 年8回 | 約772円 | 約96円 | +428円 |
| 年12回 | 約1,231円 | 約103円 | −31円 |
| 年20回 | 約2,157円 | 約108円 | −957円 |
関東・スマートライフS・太陽光5kW・蓄電池10kWh(使える容量9kWh、出力3kW)の家で、DRがない場合の電気代(売電収入を差し引き)は年約84,577円です。下げDRの日に電気代が増える理由は2つです。1つは、17時に満充電にしておくため夜間に系統から充電し、昼の太陽光の余りをためる余地が減ること。もう1つは、17時まで放電を控えるため、朝から夕方の電気を昼間の単価(35.81円/kWh)で買うことです。もともとこの家の蓄電池は、DRがなくても夕方から夜に放電しているため、17〜20時の買電はDRの日もほとんど変わりませんでした。つまり時間帯別料金で太陽光と蓄電池を使っている家では、下げDRで家の買電はあまり減らず、事前の準備の分だけ電気代が増えるという結果です。
上げDR(10〜14時に満充電まで充電)は、年10回・30回・60回で電気代が約140円・513円・994円増えました(1回あたり約14〜17円)。晴れた日を選んでいるため太陽光で満充電になることが多く、系統から買う量は年60回でも約37kWhでした。
報酬が定額の場合、DRの回数が増えるほど需要家の損得は悪くなります。年に何回まで発動されるか、上げDRと下げDRのどちらが多いかを契約前に確認してください。
結果②:エコキュートの上げDRは、報酬がなくても電気代が下がる
| 上げDR(沸き上げを10〜14時へ) | 昼へ移した電力量 | 電気代の節約(年・税込) | 報酬:25pt/回(東京電力EPの例) | 参考:15pt/kWhの場合 |
|---|---|---|---|---|
| 年10回 | 約67kWh | 約1,052円 | 250円 | 約1,005円 |
| 年30回 | 約211kWh | 約3,446円 | 750円 | 約3,165円 |
| 年60回 | 約412kWh | 約6,726円 | 1,500円 | 約6,180円 |
太陽光5kWがあり蓄電池がない家で、晴れた日にエコキュートの沸き上げを1〜6時から10〜14時に移すと、1回あたり約105〜115円の節約になりました。昼の太陽光の余りは売れば8.5円/kWhですが、沸き上げに使えば夜間の買電(27.91円/kWh)を減らせるためです。15pt/kWhは関西電力の「春のDRプロジェクト2026」の単価の例(はぴeタイム系、2026年4月1日〜6月21日)で、関東の家に当てはめた参考値です(関西電力 2026年3月2日)。
この結果は、昼の気温が高いほどヒートポンプの効率が上がる効果を入れていない分、控えめな値です。一方で、雨の日に昼へ移すと買電が昼間の単価になるため、上げDRは「晴れて余りが出る日」に限るのが前提です。太陽光がない家では、昼の沸き上げは夜間より高い電気を使うことになり、報酬がその差を上回るかどうかで判断が変わります。
結果③:家庭のお金は「毎年の報酬」より「設置時の補助」が2桁大きい
| 種類 | 金額 | 条件(主なもの) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 東京電力EP「エコ・省エネチャレンジ 機器制御オプション」 | 蓄電池:毎月100pt(年1,200円相当)/エコキュート:制御1回25pt | 機器の充放電・沸き上げの時刻を遠隔制御。上げDR・下げDRの両方 | 東京電力EP 2026年7月24日 |
| 東京都の上乗せ(都内・新規設置) | 蓄電池10万円、エコキュート8万円(設置済みの機器は東京電力EPから4,000pt) | 2028年3月31日まで同オプションを継続、他の都登録アグリゲーターとは契約できない。設置済みの4,000ptは、蓄電池10万円・エコキュート8万円の上乗せと併用不可。都の事業間の補助も併用不可 | 同上 |
| 国(SII)DR対応 家庭用蓄電システム(令和7年度補正) | 3.45万円/kWh(初期実効容量)、設備費・工事費の3/10以内、上限60万円。初期実効容量9kWhの製品なら3.45万円×9kWh=約31万円 | 設備費+工事費(税抜)が目標価格(蓄電容量1kWhあたり12.5万円)以下。蓄電容量10kWhなら約125万円以下(ハイブリッド型のパワコンなどは一部控除可)。他の国の補助と併用不可、自治体の補助との併用は各自治体に確認。下げDR・上げDRに対応し、2028年3月31日までDR契約を継続。公募は2026年12月10日まで(予算に達し次第終了) | SII 公募要領 |
家庭のDRで動くお金は、設置時の補助が数十万円、毎年の報酬が数千円以下です。補助の条件になっているDR契約は2028年3月31日までなので、2026年末に設置した場合の義務期間は約1年3か月です。この期間に下げDRが年20回あっても、電気代の増加は年2,000円台で、補助の大きさから見れば小さな負担です。
参考までに、家庭の蓄電池(実効9kWh)を3時間続けて放電できるkWは3kWで、法人と同じ容量の価格(15,111円/kW)で評価すると年約45,333円になります。定額報酬の年1,200円はその約2.6%です。ただし、家庭の機器がまとまって容量市場でどう評価されるか、アグリゲーターの費用(機器の通信・制御・違約金のリスク)がいくらかかるかは公表されていないため、この比較は「kWの価値の桁」を示す参考値にとどめます。
結果④:市場連動プランのDR価値は「スパイクの年」にだけ大きい
市場連動プラン(電力量料金がJEPXのスポット価格で毎時変わるプラン)では、価格そのものがDRの合図になります。高い時間に使う量を減らせば、報酬がなくても電気代が下がります。ただし、その価値は年によって大きく違います。
| 年度(JEPX東京) | 平均価格 | 高い日だけ 年12回 | 高い日だけ 年30回 | 毎日(365日) |
|---|---|---|---|---|
| 2022年度 | 23.5円/kWh | 約8,035円 | 約14,267円 | 約62,147円 |
| 2023年度 | 12.2円/kWh | 約1,309円 | 約2,477円 | 約21,778円 |
| 2024年度 | 13.7円/kWh | 約1,616円 | 約3,002円 | 約21,754円 |
| 2025年度 | 12.5円/kWh | 約1,794円 | 約3,231円 | 約19,133円 |
表は、蓄電池(使える容量9kWh)で17〜20時の買電をその日の最も安い4時間(往復効率88%)に移した場合の価値(税込・年)です。完全予見の上限で、太陽光の余りとの重なりや、市場連動プランの手数料・基本料金は含めていません。「高い日だけ年12回のDR」の価値は2025年度で約1,794円にとどまり、価格が荒れた2022年度でも約8,035円でした。市場連動プランで大きいのは、年数回のDRではなく毎日のずらし(2025年度で年約1.9万円)で、これは蓄電池の通常の運転そのものです。DRの報酬を比べるときは、この毎日の価値と二重に数えないよう注意してください。
結果⑤:法人のDRは、kWの対価が大きく、発動1回の費用は小さい
| DRの資源(100kW・3時間・年12回) | 発動の費用(年) | 手取り:5,000円/kW | 10,000円/kW | 15,111円/kW | 費用の前提(H) |
|---|---|---|---|---|---|
| 空調の設定温度変更 | 約−5.3万円(下げた電力量の7割が減る仮定での電気代の減少) | 約30.3万円 | 約55.3万円 | 約80.8万円 | 反動で削減量の30%を前後の時間に使う。快適性の低下は金額化しない |
| 冷凍冷蔵の事前冷却 | 約0.8万円 | 約24.2万円 | 約49.2万円 | 約74.8万円 | 事前冷却で削減量の110%を前倒しで使う |
| 生産の時間シフト | 約21.6万円 | 約3.4万円 | 約28.4万円 | 約54.0万円 | 残業・段取り替えの費用を1kWhあたり60円 |
| 自家発電機(ディーゼル) | 約4.1万円 | 約20.9万円 | 約45.9万円 | 約71.5万円 | 燃料0.25L/kWh×軽油120円/L(税込)+保守5円/kWh |
| 蓄電池(3時間分) | 約10.4万円 | 約14.6万円 | 約39.6万円 | 約65.2万円 | 劣化費用(14万円/kWh÷6,000サイクル)と充電の損失 |
表は需要家への配分50%の場合です(税抜)。発動指令電源の対価は「年12回まで発動されうる状態を用意しておくこと」へのkWの対価で、発動が少ない年でも基本的に支払われます(実効性テストに合格し、発動時に応じることが条件。応じられなかった量には、約定単価の110%を基に1回ごとに経済的ペナルティが科される)。そのため、1回の発動の費用が小さい空調・冷凍冷蔵・自家発は、価格が5,000円/kWまで下がっても年約21万〜30万円の手取りが残りました。
生産の時間シフトは、発動1回の費用(残業・段取り)が大きいため、価格と配分の組み合わせで結果が大きく変わります。容量の価格15,111円/kW・配分50%・年12回の場合、残業・段取りの費用が1kWhあたり約210円を超えると赤字です。価格5,000円/kW・配分30%・年12回では、60円/kWhの仮定でも年約6.6万円の赤字でした。
この試算に入れていないものがあります。発動に応じられなかった場合の経済的ペナルティ(リクワイアメントを満たさないと対価が減額される)、アグリゲーターの手数料の内訳、DRで最大需要が下がって契約電力が下がる効果(逆に上げDRで最大需要が上がるリスク)です。とくに上げDRは、30分の最大需要を更新すると基本料金が1年間上がるおそれがあり(契約電力500kW未満の実量制の場合)、高圧の需要家は契約電力を超えない範囲で受けるよう、契約に上限を書いておく必要があります。
結果⑥:業種別では、DRの手取りは電気代の約0.3〜1.3%、自家発があれば約2〜5%
| 業種(関東・高圧・契約電力500kW) | 年間の電気代(税抜・試算) | DRに出すkW(仮定) | 手取り(年12回・15,111円/kW)配分30〜70% | 電気代に対する割合 |
|---|---|---|---|---|
| オフィスビル(空調) | 約4,229万円 | 50kW(10%) | 約25.3万〜55.5万円 | 約0.6〜1.3% |
| スーパー・食品小売(冷凍冷蔵) | 約6,994万円 | 40kW(8%) | 約17.8万〜42.0万円 | 約0.3〜0.6% |
| 冷凍冷蔵倉庫(冷凍冷蔵) | 約7,347万円 | 75kW(15%) | 約33.4万〜78.8万円 | 約0.5〜1.1% |
| 工場・日中稼働(生産シフト) | 約4,185万円 | 50kW(10%) | 約11.9万〜42.1万円 | 約0.3〜1.0% |
| 工場・日中稼働(自家発200kW) | 約4,185万円 | 200kW(40%) | 約82.6万〜203.4万円 | 約2.0〜4.9% |
年間の電気代は、業種別×規模別の試算と同じ需要の形(合成)と、東京電力EP 高圧ベーシックプラン(燃料費調整1.50円/kWh、2026年11月分・関東エリア)で計算しました。DRに出せるkWの割合は仮定で、実際は30分値のデータと設備の制御の可否で決まります。DRだけで電気代が大きく下がる業種はなく、自家発や大きな冷凍冷蔵の負荷など「すでにある下げしろ」を持つ需要家ほど有利です。太陽光・蓄電池の導入による電気代の削減(数%〜十数%)と比べると、DRは一桁小さい「追加の収入」と位置づけるのが妥当です(業種ごとの削減額はスーパーの試算、24時間稼働の工場の試算、病院・介護施設の試算を参照)。
結果⑦:市場連動プランのスパイク回避は、平年なら容量の対価の約7〜20%
市場連動プランの法人が、平日9〜20時の最も高い3時間ブロックの電気100kW分を同じ日の平均価格の時間に移した場合、その価値(税抜・完全予見の上限)は、2025年度で年12回約5.2万円・30回約9.4万円・60回約14.8万円でした。2022年度は12回約20.1万円・60回約47.7万円です。容量の対価(15,111円/kW×配分50%で年約75.6万円)と比べると、平年(2025年度)は約7〜20%、価格が荒れた2022年度でも約27〜63%でした。市場連動プランの需要家は両方を受け取れる可能性がありますが、どちらに参加するかで発動のタイミングが重なることもあるため、契約の優先順位を決めておく必要があります。
結果⑧:蓄電池をDRの収入だけで回収するのは難しい
| 蓄電池(14万円/kWh・税抜) | 3時間継続で出せるkW | DR収入(年)配分30〜70% | 15年間のDR収入 ÷ 設備費 |
|---|---|---|---|
| 100kWh(実効90kWh)・1,400万円 | 30kW | 約13.6万〜31.7万円 | 約15〜34% |
| 300kWh(実効270kWh)・4,200万円 | 90kW | 約40.8万〜95.2万円 | 約15〜34% |
| 500kWh(実効450kWh)・7,000万円 | 150kW | 約68.0万〜158.7万円 | 約15〜34% |
発動指令電源は3時間の継続が条件のため、蓄電池で出せるkWは使える容量の1/3です。容量の価格15,111円/kWが15年続くと仮定しても、DRの収入で回収できるのは設備費の約15〜34%(発動の費用を引く前)でした。蓄電池の判断は、ピークカットによる基本料金の削減、太陽光の余りの自家消費、停電対策の価値を足したうえで行い、DRは「上乗せ」として扱います。業種別の蓄電池の損益分岐価格は、業種別×規模別の試算で扱っています。なお、DRで放電に使う分だけ、停電に備えた残量とピークカットに使える容量は減ります。
上げDRと出力制御:九州では年数百時間、電気の価格が0.01円になる
上げDRは、太陽光の電気が余る時間に使う量を増やす取り組みです。九州エリアのJEPX価格が0.01円/kWhになった30分は、2023年度2,178コマ、2024年度1,167コマ、2025年度983コマ(約492時間)でした(東京エリアは2025年度105コマ)。余りがさらに増えると、送配電事業者は太陽光・風力の出力を止める「出力制御」を行います。上げDRで昼の需要を増やせば、出力制御で捨てられる電気を減らせます。
需要家から見ると、上げDRの価値は料金メニューで決まります。時間帯別料金の家では昼の単価が高いため、太陽光の余りがない日に系統から昼に買うと損になります(結果①の上げDRは1回あたり約14〜17円の負担)。市場連動プランなら、0.01円の時間に使う電気は電力量料金の部分がほぼ0円になり、託送料金や賦課金だけを払うことになります。エコキュート・EV・蓄電池の充電を昼に寄せる設定は、「太陽光がある」「市場連動プランである」のどちらかを満たすときに得になりやすいと言えます。
モビリティ:EVの充電時刻をずらすDRは「家にいる時間」で決まる
EVは蓄電池より大きな容量(40〜80kWh程度)を持つため、DRの資源として期待されています。ただし平日の昼に家にない車は、上げDR(昼の充電)にも下げDR(夕方の給電)にも参加できません。在宅時間が長い家や、休日に充電する家では、EVの充電を太陽光の余りの時間に寄せるだけで、エコキュートと同じく報酬がなくても電気代が下がります。V2Hで家に給電する場合の損得はV2H 243ケースの試算、社用車・営業車のEVは商用EVの試算で扱っています。本試算ではEVのDRは金額化していません(報酬の公表例を確認できなかったため)。
誰が得をするのか:需要家・アグリゲーター・小売・送配電
| 主体 | DRで得るもの | 負うもの |
|---|---|---|
| 需要家 | 報酬・補助、上げDRでの電気代の節約(太陽光がある場合)、市場連動プランでの高値の回避 | 事前充電・待機による電気代の増加、快適性・生産への影響、契約の継続義務・他社と契約できない制約 |
| アグリゲーター・小売 | 容量市場・需給調整市場の対価、調達価格の高い時間の買電の削減、顧客の囲い込み | 機器の通信・制御の費用、発動に応じられなかった場合のペナルティ、需要家への報酬 |
| 送配電・電力系統 | 需給ひっ迫時の供給力、出力制御の削減、発電所を建てずに済む分の費用 | 計量・精算の仕組みの整備 |
家庭のDRでは、市場の対価のうち需要家に届く割合が見えにくいのが課題です。本試算の参考値(家庭の蓄電池3kW×15,111円=年約45,333円)と定額報酬(年1,200円)の差は、アグリゲーターの費用・リスク・利益と、まだ家庭の機器が市場で十分に評価されていないことの両方を含んでいます。法人は配分率を交渉できる余地があり、本試算の30%と70%では手取りが2倍以上違いました。
制度の状況:確定しているもの、予定・案の段階のもの(2026年11月7日時点)
| 制度 | 状況 | 需要家への影響 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 容量市場 2029年度向けメインオークション | 確定(2025年度実施、2026年1月20日公表)。東京15,111円/kW など | 法人のDRのkWの対価の目安。実際に支払われるのは2029年度 | OCCTO |
| 発動指令電源の条件 | 確定(対象実需給年度2029年度の説明会資料で確認)。年12回・1日1回・3時間前の指令・3時間継続・平日9〜20時、応じられない量に経済的ペナルティ。実需給の2年前に実効性テスト | 3時間続けて下げられることが条件。蓄電池は容量÷3がkW | OCCTO 2029年度向け説明会資料、実効性テストの説明資料 |
| 需給調整市場の低圧リソース・機器個別計測 | 2026年度から開始(制度上)。東京電力PGは託送供給等約款を2026年4月1日実施として届出(2026年2月13日)。実際に家庭の機器がどの程度参入しているかは未確認。機器点での参加は次世代スマートメーター等の計量の条件あり | 家庭の蓄電池・エコキュートを束ねて調整力として売れる。需要家への配分は契約しだい | OCCTO 需給調整市場検討小委、東京電力PG |
| 国のDR対応 家庭用蓄電池の補助(令和7年度補正) | 公募中(2026年12月10日まで、予算に達し次第終了)。DR契約は2028年3月31日まで | 初期実効容量9kWhの製品で約31万円(価格条件あり) | SII |
| 東京都のDR参加の上乗せ(令和8年度) | 受付中(機器の新規設置は2027年3月31日まで、設置済みのポイントは2027年2月5日まで) | 蓄電池+10万円、エコキュート+8万円。2028年3月31日まで継続・他の都登録アグリゲーターと契約不可 | 東京電力EP |
| DRready(機器の標準機能) | 要件の案(2026年3月時点)。ヒートポンプ給湯機・蓄電池などで通信・外部制御・セキュリティの要件を検討中 | 将来、DRに参加できる機器が標準になる見込み。いま買う機器の対応状況は個別に確認 | 日本電機工業会の整理 |
| 国の節電ポイント(家庭向けの節電プログラムへの国の支援) | 2026年11月時点で、家庭向けの国の支援が続いていることは確認できなかった | 小売の独自のキャンペーンが中心 | 確認できず(要確認) |
何が変わると結論がひっくり返るか
| 前提 | 本試算の値 | 変わると |
|---|---|---|
| 容量の価格(発動指令電源) | 5,000・10,000・15,111円/kW | 価格はオークションごとに変わる。5,000円/kWなら法人100kWの手取り(配分50%・12回)は約3.4万(生産シフト)〜30.3万円に縮みます |
| 需要家への配分率 | 30・50・70% | 配分30%と70%で手取りは2倍以上違う。家庭の定額報酬は、kWの価値の参考値の約2.6% |
| 発動回数 | 家庭:下げ0〜20回・上げ0〜60回、法人:0・4・12回 | 家庭の蓄電池は下げDRが年12回前後で定額報酬と電気代の増加が並ぶ。法人の発動指令電源は年12回が上限 |
| 家庭の料金メニュー | 時間帯別(スマートライフS) | 昼夜の単価差が小さいメニューや市場連動プランでは、事前充電・上げDRの費用が変わる |
| 太陽光の有無 | 5kWあり | 太陽光がない家では、エコキュートの上げDRは昼の高い電気を使うことになり、報酬が差額を上回るかで判断が変わる |
| JEPX価格 | 2022〜2025年度の実績 | 2022年度並みの高騰が再来すれば、市場連動プランのDRの価値は2025年度の3〜5倍になる |
| ペナルティ・違約金 | 含めない | 発動に応じられない回数が多いと対価は減額される。家庭の補助は継続義務を守らないと返還を求められる可能性がある(要綱を確認) |
契約前に確認する10項目
- 報酬は定額か、1回・1kWhあたりか。上げDRと下げDRで単価が違うか。
- 年に何回まで、何時から何時まで、何日前(何時間前)に連絡が来るか。
- DRの日に蓄電池を事前に充電する場合、その電気代は誰が負担するか。
- 停電に備えた残量(例:30%)を残す設定ができるか。
- 発動に応じられなかったときのペナルティ・違約金の有無。
- 最低契約期間と、途中で解約した場合の補助金の返還の条件。
- 他のアグリゲーター・小売と同時に契約できない条件(東京都の上乗せは2028年3月31日まで不可)。
- 法人:容量市場・需給調整市場の対価の何%が需要家に配分されるか、その根拠。
- 法人:上げDRで契約電力(30分最大需要)を超えないよう上限を設定できるか。
- 機器がDRready(通信・外部制御・セキュリティ)の要件に対応しているか、メーカーの対応表。
よくある思い込みと、試算の結果
| 思い込み | 試算の結果 |
|---|---|
| DRに参加すれば蓄電池の元が取れる | 法人の蓄電池でも、15年のDR収入は設備費の約15〜34%。家庭の定額報酬は年1,200円相当 |
| 下げDRで家の電気代が下がる | 時間帯別料金で太陽光・蓄電池を使っている家では、17〜20時の買電はもともと少なく、事前充電の分だけ電気代が1回約87〜108円増えた |
| 上げDRは電気を余計に使うから損 | 太陽光のある家のエコキュートの昼の沸き上げは、報酬なしでも1回約105〜115円の節約 |
| 市場連動プランならDRで大きく稼げる | 2025年度の価格では、蓄電池9kWhで高い日だけ年12回のDRは約1,794円。大きいのは毎日のずらし(年約1.9万円) |
| 法人のDRは手間の割に小さい | 100kWを3時間下げられれば、容量の価格15,111円/kW・配分50%で年約75.6万円。空調・冷凍冷蔵・自家発は発動の費用が小さい |
参加するかの判断マップ
判断の軸は2つです。「持っている設備に、3時間(家庭は数時間)下げられる余地があるか」と、「発動のたびに失うもの(電気代・快適性・生産・燃料)が対価より小さいか」です。DRのために設備を買うのではなく、すでにある設備・これから買う設備の追加収入として判断すると、期待外れになりにくくなります。
反実仮想:参加しない場合に失うもの
- 家庭:DR参加を条件とする補助(国の補助で初期実効容量9kWhの製品なら約31万円、東京都の上乗せ10万円)。毎年の報酬の差は年数千円以下です。
- 法人(契約電力500kWのオフィス・スーパー・冷凍冷蔵倉庫・工場):容量の価格15,111円/kW・配分50%・年12回で年約27万〜56万円、自家発200kWがある工場なら年約143万円。10年で数百万〜1,000万円を超えます(価格が続く場合)。
- 市場連動プランの需要家:高騰の年の高値の回避。2022年度並みなら法人100kWで年12回でも約20万円です。
需要家タイプ別の読み解き:どこから手を付けるか
太陽光・蓄電池・エコキュートがある家庭
まず、エコキュートの沸き上げを晴れた日の昼に寄せる設定(上げDR、または機器の「おひさま」系の運転モード)を確認します。報酬がなくても年数千円の節約になりうるためです。蓄電池のDRサービスは、定額報酬の大きさより、事前充電の扱い(誰の負担か)と停電用の残量の設定で選びます。下げDRの回数が年10回前後までなら、定額報酬と電気代の増加はほぼ相殺されます。
これから蓄電池・エコキュートを買う家庭
DRの補助(国の補助、東京都の上乗せ)は設置時に数十万円規模で、2028年3月31日までのDR契約の継続が条件です。価格条件(国の補助は設備費+工事費が税抜で蓄電容量1kWhあたり12.5万円以下。10kWhなら約125万円以下)と、他社と契約できない期間を確認したうえで、補助を受ける前提で見積もりを比べます。補助がなくても元が取れるかは蓄電池243ケースの試算で確認してください。
オフィスビル・商業施設
空調の設定温度の一時変更は、発動の費用がほぼかからず、反動を含めても電気の量はむしろ減りました(本試算の仮定)。課題は快適性とテナントの合意です。3時間・平日9〜20時の発動に、どの区画をどこまで下げられるかを事前に決め、30分値で下げ幅を確認できるようにしておくことが条件になります。
スーパー・冷凍冷蔵倉庫
事前冷却で3時間冷凍機を止めるDRは、食品の許容温度の範囲内なら費用が小さく済みます。品温の記録(温度ログ)で品質への影響がないことを示せるかが先決です。冷凍冷蔵の電気代の構造はスーパーの試算で扱っています。
工場
自家発がある工場は、燃料費(本試算で1kWhあたり約32円)が対価を下回る限り、DRは大きな追加収入になります(自家発200kWで電気代の約2〜5%)。生産の時間シフトは、残業・段取りの費用が対価を上回ると赤字になるため、繁忙期を除外できる契約にしておくことが大切です。排出量の増加(ディーゼルの運転)は、脱炭素の目標との関係で社内の合意が必要です。
病院・介護施設・避難所になる施設
非常用発電機や蓄電池はDRの資源にもなりますが、DRで放電した直後に停電が起きると、停電への備えが減ります。停電対策を優先する施設では、DRに使う容量の上限を決めておく必要があります(病院・介護施設の試算)。
追いかけるべきKPI
- DRの手取り(報酬・対価−電気代の増加−発動の費用):年1回、契約の明細と電気代の明細から計算する。
- 発動の回数と応動率:求められた回数のうち、目標の下げ幅を達成できた割合(法人は対価の減額に直結)。
- DRの日の30分最大需要:上げDRや反動で契約電力を超えていないか。
- 停電用の残量の確保率:DRの直後でも設定した残量を下回っていないか。
- 補助の継続条件の遵守:2028年3月31日までの契約継続(家庭)。
稟議・顧客説明にそのまま使える一文
| 相手 | 説明の一文 | 根拠(本記事) |
|---|---|---|
| 家庭(蓄電池の購入検討) | 「DRの報酬は年1,200円程度で、電気代への影響と相殺されます。DRに参加する本当の価値は、設置時の補助(国で約31万円、東京都で10万円の上乗せ)を受けられることです」 | 結果①・③ |
| 家庭(太陽光・エコキュートあり) | 「晴れた日の昼にお湯を沸かす設定に変えるだけで、報酬がなくても1回約100円、年30回で約3,400円の節約になる試算です」 | 結果② |
| 法人の経営層 | 「3時間・100kWを下げられる設備があれば、容量市場の価格(5,000〜15,111円/kW)と配分(30〜70%)しだいで、発動の費用を引いて年約−7万円(赤字)〜111万円になります。生産の時間シフトは、価格5,000円/kW・配分30%では赤字でした。電気代の削減の主役は太陽光・蓄電池・省エネで、DRはその上乗せです」 | 結果⑤・⑥ |
| 法人の設備担当 | 「発動は年12回まで、3時間前に指令、平日9〜20時の3時間です。上げDRで契約電力を超えない上限と、停電用の残量を契約に書きます」 | 制度の状況・チェックリスト |
エネがえるでできること
DRの損得は、需要家ごとの30分値・料金メニュー・設備で大きく変わります。エネがえるは、太陽光・蓄電池・エコキュート・EV/V2Hの導入効果を料金プランごとに試算し、提案書として出力できます。
- 家庭向け(エネがえるASP・EV・V2H):料金プランのデータベースと時間帯別の運転で、蓄電池・エコキュートの運転の違いによる電気代の差を試算できます。
- 法人向け(エネがえるBiz):30分値(デマンドデータ)や業種別・規模別ロードカーブテンプレートから、太陽光・蓄電池のピークカットと基本料金の削減を試算できます。DRの対価は、本記事の方法で別に上乗せして比較してください。
- 試算の代行(BPO):販売施工店・アグリゲーター向けに、DRの条件を含めた試算を代行します。
DRの仕組みや事業者の役割の全体像はDERとは?DR・VPPの仕組みと運用・事業者ガイド、試算記事の一覧はエネがえる試算ライブラリにまとめています。
よくある質問
DR(デマンドレスポンス)に参加すると、家庭の電気代は下がりますか?
機器と料金メニューしだいです。関東・時間帯別料金・太陽光5kW・蓄電池10kWhの家では、下げDRの日に事前充電と放電の待機が必要になり、1回あたり約87〜108円の電気代増でした。一方、太陽光のある家のエコキュートを晴れた日の昼に沸き上げる上げDRは、1回あたり約105〜115円の節約でした。
東京電力EPの機器制御オプションの報酬はいくらですか?
蓄電池は毎月100くらしTEPCOポイント(年1,200円相当)、エコキュートは制御1回あたり25ポイントです(2026年7月24日公表)。東京都の補助で新規設置する場合はDR参加で蓄電池10万円・エコキュート8万円の上乗せがあり、2028年3月31日まで契約の継続が条件です。
国の蓄電池のDR補助はいくらで、条件は何ですか?
令和7年度補正の事業は、初期実効容量1kWhあたり3.45万円、設備費・工事費の3/10以内、上限60万円です(初期実効容量9kWhの製品なら約31万円)。設備費+工事費(税抜)が目標価格(蓄電容量1kWhあたり12.5万円、10kWhなら約125万円)以下であること、下げDR・上げDRに対応し2028年3月31日までDR契約を続けることが条件です。公募は2026年12月10日まで(予算に達し次第終了)です。
法人がDRに参加すると、いくらもらえますか?
容量市場の発動指令電源として100kW・3時間を下げられる場合、2029年度の東京エリアの約定価格15,111円/kWで年約151万円の対価があり、需要家への配分を50%とすると年約75.6万円です。配分率は契約で決まり、公表例はほとんどありません。価格が5,000円/kWなら年25万円(配分50%)です。
蓄電池はDRの収入だけで元が取れますか?
取れません。発動指令電源は3時間の継続が条件のため、100kWh(実効90kWh)の蓄電池で出せるのは30kWです。15年間のDR収入は設備費(14万円/kWh)の約15〜34%でした。ピークカット・自家消費・停電対策の価値を合わせて判断してください。
市場連動プランなら、DRで電気代を大きく減らせますか?
価格が荒れた年だけ大きくなります。蓄電池9kWhで高い日だけ年12回、夕方の買電を移した価値は、2022年度の価格で約8,035円、2025年度で約1,794円でした。大きいのは毎日のずらし(2025年度で年約1.9万円)です。
上げDRとは何ですか?出力制御と関係はありますか?
太陽光の電気が余る時間に、使う量を増やすDRです。九州エリアではJEPX価格が0.01円/kWhになる30分が2025年度に983コマありました。余りを使えば出力制御で捨てられる電気を減らせます。需要家の損得は料金メニューしだいで、昼の単価が高いメニューでは太陽光の余りがない日に損になります。
DRの契約で注意すべき点は何ですか?
報酬の形(定額か回数・kWhか)、年間の発動回数の上限、事前充電の電気代の負担、停電用の残量の設定、ペナルティ・違約金、最低契約期間と補助金の返還条件、他社と契約できない期間、法人は市場の対価の配分率と上げDRでの契約電力の上限を確認してください。
試算の前提条件(すべて公開)
| 項目 | 設定値 | 出典・根拠 |
|---|---|---|
| 家庭の料金 | 東京電力EP スマートライフS(60A):基本料金392.06円/10A、1〜6時27.91円、その他35.81円/kWh(2026年11月以降)、燃料費調整−4.65円(12月分)、再エネ賦課金4.18円。売電8.5円/kWh(卒FIT)。税込 | 東京電力EP 料金の見直し、燃料費調整、再エネ買取標準プラン(蓄電池243ケースの試算と同じ) |
| 家庭の機器・需要 | 太陽光5kW(PVGIS東京、全国平均を1kWあたり年1,200kWhに補正した系列で東京は年約1,155kWh)、蓄電池10kWh(使える容量9kWh、出力3kW、往復効率88%)、エコキュート(1〜6時に年約2,370kWh)、その他の電気 年3,600kWh | 仮定(H)。運転は蓄電池243ケースの試算の時間帯別モード(夜間に翌日の不足分を充電) |
| 家庭のDRの運転 | 下げDR:17〜20時の3時間、宅内の負荷を蓄電池でまかなう(逆潮流なし)。DRの日は2〜4時に満充電まで充電し、17時まで放電しない。上げDR:10〜14時に満充電まで充電(太陽光+系統)。エコキュートの上げDR:その日の沸き上げをすべて10〜14時に移す | 仮定(H)。実際の制御はアグリゲーター・機器により異なる |
| 家庭のDRの日 | 下げDR:平日(1・2・7・8・9・12月)のうちJEPX東京2025年度の17〜20時の価格が高い日から。上げDR:10〜14時の価格が安い日から | JEPX。実際の発動日とは異なる(H) |
| 家庭の報酬・補助 | 東京電力EP:蓄電池100pt/月、エコキュート25pt/回、東京都の上乗せ 蓄電池10万円・エコキュート8万円。参考:15pt/kWh(関西電力の例)。国:3.45万円/kWh(初期実効容量)・3/10・上限60万円、目標価格は設備費+工事費(税抜)で蓄電容量1kWhあたり12.5万円以下 | 東京電力EP、関西電力、SII |
| 市場連動プランの価値 | JEPX東京エリアプライス(30分値を1時間平均)。家庭:蓄電池9kWhで17〜20時の買電をその日の最安4時間へ(往復効率88%、税込)。法人:平日9〜20時の最も高い3時間ブロック×100kWを同じ日の平均価格へ(税抜)。完全予見の上限 | JEPX 2022〜2025年度。カレンダーは2027年の月日に合わせた |
| 法人の対価 | 容量の価格 5,000・10,000・15,111円/kW(15,111円は2029年度向けの東京エリアプライス)。需要家への配分30・50・70%(税抜) | OCCTO。配分は仮定(H) |
| 法人の発動 | 1回3時間×100kW、年0・4・12回。費用は表(結果⑤)の仮定。反動・充電で増える電気は電力量料金(関東高圧 17.43円+燃料費調整1.50円+賦課金4.18円、いずれも税込の公表値を1.1で割って税抜換算)で評価 | OCCTO 発動指令電源の条件(2029年度向け説明会資料)、東京電力EP 燃料費調整(2026年11月分、関東エリア) |
| 法人の業種別 | 契約電力500kW、需要の形は業種別の合成、東京電力EP 高圧ベーシックプラン(基本料金2,530円/kW+託送見直し分108.57円/kW、力率割引15%)。DRに出すkW:オフィス10%・スーパー8%・冷凍冷蔵倉庫15%・工場10%・自家発200kW | 業種別×規模別の試算と同じ料金・需要の形。DRのkWは仮定(H) |
| 法人の蓄電池 | 14万円/kWh(税抜)、使える容量90%、出せるkW=使える容量÷3、15年 | 仮定。業務・産業用の2026年度目標価格11.8万円/kWh(公募要領)を上回る市場価格を想定 |
| 消費税 | 家庭は税込(消費税は控除できない)。法人は税抜(電気代・対価とも、消費税は仕入税額控除で相殺) | 一般的な扱い |
この試算の限界
- 家庭は関東の1つの家(スマートライフS・太陽光5kW・蓄電池10kWh)だけで計算しました。他のエリア・料金メニュー・機器の容量では、DRの日の電気代の増減が変わります。
- DRの日はJEPXの価格で代表させており、実際の需給ひっ迫・出力制御の日や天気とは一致しません。
- アグリゲーターの実際の制御(事前充電の時刻・量、上げDRで系統から充電するか)は機器・事業者で異なります。本試算は「満充電にして待つ」運転を仮定した、需要家にとって不利寄りの設定です。
- 法人の発動の費用(反動の割合、残業の単価、燃料の消費率)は仮定です。快適性・品質・生産への影響は金額化していません。
- 容量市場の対価は2029年度向けの価格で、実際に支払われるのは2029年度です。それ以前の年度の価格や、ペナルティ・アセスメント、アグリゲーターの手数料の内訳は含めていません。
- 需給調整市場の対価は、価格の変動が大きく需要家への配分の公表例もないため、金額化していません。
- 家庭の機器のkWを容量市場の価格で評価した値は参考値で、家庭の機器がその価格で評価される保証はありません。
- EVのDR、蓄熱槽、業務用ヒートポンプ給湯のDRは金額化していません。
ファクトチェック・エビデンス検証一覧
区分:A=一次情報で確認、B=二次資料・業界団体の整理、M=本試算のモデル値、H=仮定・編集部評価。
- 一次情報との照合:容量市場の約定結果、発動指令電源の条件、需給調整市場の低圧リソースの制度、東京電力PGの託送供給等約款の届出、東京電力EPの機器制御オプションと東京都の上乗せ、JEPXスポット価格(2022〜2025年度の全30分値)を原典で確認しました(確認日:2026年11月7日)。SIIの公募要領も11月7日に原典で再確認しました。関西電力の春のDRの単価は、シリーズの蓄電池の試算で2026年10月30日に原典を確認した値です(11月7日は再取得できず)。
- 独立レビュー:独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。
- 計算の再現:家庭は1時間単位(8,760時間)の運転を、DRあり・なしで同じモデルで計算し、差を電気代の増減としました。法人の対価・費用は表の式(kW×価格×配分、kWh×費用単価)で計算しています。ケース別のデータは編集部で保存しています。
| 項目 | 記事中の値 | 区分 | 確認方法・注記 |
|---|---|---|---|
| 容量市場 2029年度向け約定価格 | 北海道14,972円/kW、東北・東京15,111円、中部・北陸・関西・中国・四国12,388円、九州15,112円 | A | OCCTO 2026年1月20日。発動指令電源の調整係数は北海道90.88%、その他100% |
| 発動指令電源の条件 | 年12回(1日1回)、応動の3時間以上前に指令、継続3時間(土日祝を除く9〜20時)。未達成量に約定単価×110%を基に1回ごとに経済的ペナルティ(12回未満なら指令がなかった分はなし) | A | OCCTO 容量市場メインオークション(対象実需給年度2029年度)説明会資料 2025年7月(p.84〜85)。2028年度向けの補足説明資料も同じ条件 |
| 実効性テスト | 実需給の2年前に夏季・冬季に実施 | A | OCCTO 説明資料 |
| 需給調整市場の低圧リソース・機器個別計測 | 2026年度からの制度開始の整理。東京電力PGは託送供給等約款を2026年4月1日実施として届出(2026年2月13日) | A | OCCTO 2025年9月26日、東京電力PG 2026年2月13日。実際に家庭の機器がどの程度参入しているかは未確認 |
| 東京電力EPの報酬・東京都の上乗せ | 蓄電池100pt/月、エコキュート25pt/回、蓄電池+10万円・エコキュート+8万円、設置済み4,000pt、2028年3月31日まで継続 | A | 東京電力EP 2026年7月24日 |
| 国のDR対応 家庭用蓄電池の補助 | 3.45万円/kWh(初期実効容量)、3/10以内、上限60万円、目標価格は設備費+工事費(税抜)で蓄電容量1kWhあたり12.5万円以下、2028年3月31日までDR継続、公募2026年12月10日まで、他の国庫補助と併用不可 | A | SII 公募要領(2026年11月7日に原典を再確認、p.10〜11)。約31万円は初期実効容量9kWhの製品の例(初期実効容量は製品ごとにSIIが公表、H) |
| 関西電力 春のDRプロジェクト2026 | はぴeタイム系15pt/kWh、はぴeセット系5pt/kWh(2026年4月1日〜6月21日) | A | 関西電力 2026年3月2日(確認日2026年10月30日。11月7日は同社サイトが作成環境・PCとも403で再取得できず)。関東の家への当てはめは参考値(H) |
| DRreadyの要件 | 2026年3月時点で案。ヒートポンプ給湯機はDR可能量が1日の沸き上げの50%以上、JC-STAR★1以上など | B | 日本電機工業会の整理(出典は経済産業省 DRready勉強会。同勉強会の資料は作成環境から開けず) |
| JEPX東京エリアプライス | 平均 2022年度23.5円・2025年度12.45円、最高200円・45.01円(30分値)、50円以上 623コマ・0コマ | A | JEPX スポット 年度別データで集計 |
| 九州エリアの0.01円/kWhの30分 | 2023年度2,178、2024年度1,167、2025年度983コマ | A | 同上で集計(0.011円以下を計数) |
| 家庭の蓄電池の下げDR・上げDRの電気代 | 下げ 1回約87〜108円、年3・8・12・20回で約261・772・1,231・2,157円増。上げ 年10・30・60回で約140・513・994円増 | M | DRなしの年間電気代 約84,577円(売電差し引き)との差。運転の仮定に依存 |
| エコキュートの上げDR | 年10・30・60回で約1,052・3,446・6,726円の節約(約67・211・412kWhを昼へ) | M | 太陽光5kW・蓄電池なしの家。ヒートポンプの効率の改善は含めない |
| 家庭の市場連動プランの価値 | 高い日だけ年12回:2022年度約8,035円〜2025年度約1,794円、毎日:約62,147円〜19,133円 | M | 完全予見の上限。手数料・基本料金・太陽光との重なりは含めない |
| 法人100kWの手取り(年12回・配分50%) | 15,111円/kWで約54.0万〜80.8万円、5,000円/kWで約3.4万〜30.3万円 | M/H | 発動の費用の仮定に依存。生産シフトの損益分岐 約210円/kWh |
| 業種別の手取り/電気代 | 約0.3〜1.3%、自家発200kWで約2.0〜4.9% | M/H | DRに出すkWは仮定。年間電気代は合成の需要の形による試算値 |
| 法人の市場連動プランの価値 | 2025年度 年12・30・60回で約5.2万・9.4万・14.8万円、2022年度 約20.1万・32.8万・47.7万円(100kW) | M | 完全予見の上限 |
| 蓄電池のDR収入/設備費 | 15年で約15〜34%(配分30〜70%、15,111円/kW) | M/H | 発動の費用を引く前。価格が15年続く仮定 |
| 家庭の蓄電池のkWの参考値 | 3kW×15,111円=年約45,333円(定額報酬はその約2.6%) | H | 家庭の機器が容量市場でこの価格で評価される保証はない |
| スーパーの経常利益率 | 1%前後 | B | スーパーの試算で出典(スーパーマーケット年次統計調査)を確認済み |
| 業種の経営課題・打ち手の位置づけ | 表と図1のとおり | H | 専門家判断。試算値ではない |
試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年11月7日/試算条件の確認日:2026年11月7日。更新履歴(2026年11月7日):公開。同日、独立レビューの指摘(補助の価格条件の単位、発動指令電源の条件の出典、表現の精度)を反映。毎月、燃料費調整・再エネ賦課金・補助の受付状況・容量市場の結果を確認し、変化があれば再計算して更新します。関連する試算:蓄電池は元が取れない?243ケース/V2Hは元が取れない?243ケース/卒FIT後は蓄電池?エコキュート?/産業用の太陽光・蓄電池 業種別×規模別/オフサイトPPAは得なのか?/病院・介護施設の太陽光・蓄電池/スーパーの太陽光/業種別のエネルギー費はどこで削れる?/エネがえる試算ライブラリ。






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