産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算【2026年11月最新単価】

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
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産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算(エネがえる)
産業用の自家消費型太陽光・蓄電池は元が取れない?業種別×規模別に実試算(エネがえる)

結論から言います。工場や倉庫、オフィス、病院などの屋根に載せる自家消費型の太陽光は、2026年11月の電気料金で試算すると、ほとんどの業種・規模で10年以内に元が取れます。一方、産業用の蓄電池は、高圧で、しかも太陽光が余る施設でなければ、補助なしで15年以内に回収するのは難しいという結果でした。9業種、3つの規模(低圧50kW・高圧500kW・高圧1,500kW)、3地域(関東・関西・九州)、電気代上昇率3水準の216ケースを、1時間単位のモデルで試算しました。

3つの答え

  1. 太陽光は、業種や規模を問わず元が取りやすい(216ケースすべてが15年以内、中央値6.6年)。買う電気の単価が税抜で約19〜23円/kWhに上がっているため、屋根で作った電気を自分で使うだけで、設置費用を回収できます。保守費とパワーコンディショナの交換費(13年目に1回)を見込んでも、中央値は7.5年でした。
  2. 蓄電池は「高圧」かつ「太陽光が余る施設」で、補助があれば割に合う。補助なし・14万円/kWh(税抜)では、高圧162ケースのうち15年以内に回収できたのは22ケースだけでした(学校・日中稼働の工場・物流倉庫に限られる)。ただし東京都の補助(大企業等で蓄電池の2/3)を当てはめると、関東の高圧54ケースすべてが15年以内に回収できます。低圧の54ケースは、基本料金が下がらないため、20年たっても回収できませんでした。
  3. 導入しない理由は「お金」より「数字が信じられないこと」。エネがえるの調査では、提案を受けても導入しなかった企業の経営者・役員の67.0%が、経済効果シミュレーションの信憑性を疑った経験があると答えました(n=100)。前提条件を開示した試算と、自社の30分デマンドデータでの検証が、意思決定を前に進めます。

この記事で分かること(数値の要点)

  • 太陽光の回収年数は5.2〜12.4年。規模が大きいほど早く、中央値は低圧8.8年、高圧500kW 6.6年、高圧1,500kW 5.9年です(電気代上昇率1〜3%の全ケース)。
  • 太陽光は、設置費用が想定の2倍でも多くのケースで15年以内に回収できます。15年で元が取れる設置費用の上限は、中央値で約41万円/kW(税抜)でした。
  • 太陽光だけでは、契約電力(年間の最大需要)はほとんど下がりません。削減率の中央値は2.6%です。蓄電池(契約電力×0.4時間分)を足すと8.8%、翌日の需要を完全に予測できた場合の上限で12.6%になります(1時間単位の計算のため、30分単位で決まる実際のピークを低めに見積もり、蓄電池のピークカットの価値を高めに見ている可能性があります)。
  • 蓄電池が得になるのは「電気を多く使う施設」ではなく「太陽光が余る施設」です。逆潮流なし(余った電気を送電網に流さない)の前提では、余った太陽光は捨てるしかなく、蓄電池でためた電気の価値が高くなります。
  • 何もしないと、日中稼働の工場(関東・高圧500kW)では20年で約1.5億円多く払います。設備費0円のオンサイトPPAでも、何もしないより約1.1億円得という計算です(PPA単価15円/kWhの想定)。
  • 屋根の太陽光で減らせる電気由来のCO2(Scope2)は、業種により4〜43%です(高圧500kW・3地域の平均)。CO2を減らすほど費用が浮く計算になり、削減コストはすべてのケースでマイナスでした。

検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。216ケースは1時間単位(8,760時間)の独立計算モデルで試算しました。需要の形は業種別の合成テンプレートで、実際の施設の30分デマンドデータではありません。金額は、事業者の消費税の扱いに合わせてすべて税抜です。試算条件・計算方法・出典はすべて本文末尾に公開しています。住宅の蓄電池については蓄電池は元が取れない?全国9エリア243ケースを実試算で試算しています。

なぜ今、計算し直す必要があるのか

産業用の自家消費型太陽光の採算は、この1年で前提が大きく変わりました。理由は3つあります。

  • 電気料金の基本料金が上がった。2026年11月1日から送配電の託送料金が見直され、九州電力の業務用電力A(高圧)の基本料金は1kWあたり2,142円78銭から2,343円19銭に上がりました(九州電力)。関西電力の高圧電力ASは2,200円88銭です(関西電力)。基本料金が上がるほど、ピークを下げる蓄電池の価値は大きくなります。
  • 市場価格調整が電気料金に組み込まれた。大手電力の高圧メニューには、卸電力市場の価格に連動する「市場価格調整単価」が入るようになりました。九州電力の高圧では、2026年12月分の燃料費等調整単価が1.20円/kWh(燃料費調整0.08円、サービス調整0.13円、市場価格調整0.99円の合計)です(九州電力)。電気代が市場の動きで変わるほど、自家消費で買う電気を減らす意味は増します。
  • 補助は「逆潮流なし・自家消費」が前提になった。環境省のストレージパリティ補助(令和8年度)は、太陽光4万円/kW、業務・産業用蓄電池3.9万円/kWhを基準額とし、自家消費率50%以上と逆潮流の禁止を条件にしています(環境イノベーション情報機構 公募要領)。売電で稼ぐのではなく、施設の需要に合わせて設計できるかどうかが採算を決めます。

加えて、2026年度からはGX-ETS(排出量取引制度)の本格運用が始まり、電気由来のCO2を減らす価値も経営課題になっています(制度と採算の関係はGX-ETSとカーボンプライシングが自家消費型太陽光の採算をどう書き換えるかで整理しています)。

検証の方法:216ケースの設計

業種によって電気の使い方は大きく違います。同じ500kWの契約でも、24時間動く工場と、平日の昼だけ動く学校とでは、太陽光の電気を使い切れる割合も、ピークの出方も変わります。そこで、需要の形が異なる9業種を選び、規模と地域を組み合わせました。

軸水準数
業種工場(24時間稼働)/工場(日中稼働)/物流倉庫(常温)/冷凍冷蔵倉庫/スーパー・食品小売/オフィスビル/病院・介護施設/学校/ホテル9
地域・規模関東(低圧50kW・高圧500kW・高圧1,500kW)、関西(高圧500kW・1,500kW)、九州(低圧50kW・高圧500kW・1,500kW)8
電気代上昇率年1%/2%/3%(基本料金と電力量料金の両方に適用)3
合計9×8×3216ケース

関西の低圧は、関西電力の低圧電力の公式単価ページを当方の環境から取得できなかったため、推計値を使わずに試算対象から外しました。各ケースでは、次の3つを比べています。

  • 何もしない(電力会社から買い続ける)
  • 太陽光だけ(逆潮流なし。使い切れない電気は出力を抑えて捨てる)
  • 太陽光+蓄電池(余った太陽光をためて使い、高圧では年間の最大需要を下げるよう放電する)

太陽光の容量は「契約電力×業種別の比率」で決めました。屋根が広く昼の需要が小さい物流倉庫は1.6倍、屋根に対して需要が大きいホテルは0.2倍としています。業種別の需要の形と設置面積の目安は、業種別ロードカーブ・テンプレート完全ガイドと業種別・規模別 電力消費量・太陽光設置可能面積データベースを参考にしています。

業種負荷率(年間の平均需要÷最大需要)太陽光の容量(契約電力比)太陽光を使い切れる割合
工場(24時間稼働)75%0.45倍100%
工場(日中稼働)32%0.8倍82%
物流倉庫(常温)42%1.6倍85%
冷凍冷蔵倉庫67%0.8倍100%
スーパー・食品小売63%0.5倍100%
オフィスビル33%0.25倍99%
病院・介護施設59%0.35倍100%
学校26%0.9倍72%
ホテル60%0.2倍100%

太陽光を使い切れる割合は、関東・高圧500kW・太陽光だけの場合(1年目)。残りは逆潮流を避けるために出力を抑えて捨てる分です。

蓄電池の容量は、契約電力×0.4時間分(500kWなら200kWh、出力100kW)としました。高圧では、毎日のピーク時間に放電して年間の最大需要(=翌年度の契約電力)を下げる運転をします。翌日の需要と発電を完全に予測できた場合を上限とし、本編では現実的な制御として、その7割のピークカットを達成できると仮定しました(仮定であり、感度分析で40〜100%の幅を示します)。

何で稼ぐのか:「電力量単価」と「基本料金」

自家消費型の太陽光と蓄電池は、稼ぎ方が違います。太陽光は、自分で使った分だけ電力量料金(kWh)を減らします。蓄電池は、余った太陽光をためて電力量料金を減らすほか、高圧では基本料金(kW)を減らせます。

自家消費1kWhで減らせる買電単価は税抜で約19〜23円/kWh。高圧の基本料金は税抜で約1,700〜2,000円/kW・月、低圧電力は約1,000円
図1 自家消費1kWhで減らせる単価と、基本料金(税抜。燃料費等調整・再エネ賦課金込み、力率割引後)

契約電力500kW未満の高圧では、契約電力は、その月と過去11か月の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力の最大値)のうち大きい方で決まります(関西電力 高圧電力AS 料金表 7 契約電力)。つまり、契約電力を下げるには、12か月続けて30分の最大需要を新しい水準以下に抑える必要があり、1回でもピークが跳ねるとその値が以後12か月の基本料金を決めます。500kW以上の契約では、契約電力は負荷設備や最大需要をもとに電力会社との協議で決まるため、蓄電池でピークを下げた効果を基本料金に反映するには契約電力の見直し協議が必要です。低圧電力は、契約電力が設備の容量などで決まるため、ピークを下げても基本料金は変わりません。

高圧ではピーク10kWの削減が年約20万〜25万円、自家消費1,000kWhは年約2万円の価値
図2 自家消費1,000kWhの価値と、ピーク10kW削減の価値(年間・税抜)

高圧なら、ピークを10kW下げるだけで年約20万〜25万円(税抜)の効果があり、自家消費1,000kWh(年約2万円)の10倍以上になります。ただし、ピークを下げ続けるのは簡単ではありません。この試算でも、年間の最大需要は曇りの日や夕方など、太陽光があまり発電しない時間に出ていました。

関東・高圧500kW・日中稼働の工場で、年間で最も買電が多い日。太陽光だけでは最大450kW、蓄電池ありで392kWに下がる
図3 年間で最も買電が多い1日の電気の流れ(関東・高圧500kW・工場(日中稼働)、太陽光400kW・蓄電池200kWh)

図3は、日中稼働の工場で、太陽光だけの場合に買電が最も多くなった日です。この日は太陽光の発電が少なく、太陽光だけでは最大需要は450kWまでしか下がりません。蓄電池が深夜に充電した電気を昼に放電すると、最大需要は392kWになり、基本料金の対象が約59kW下がります。ピークの対策は、晴れた日ではなく太陽光が頼れない日をどう乗り切るかで決まります(ピークカットの考え方は産業用蓄電池によるピークカット最大化戦略も参照してください)。

請求書の読み方:「基本料金の割合」で蓄電池の効き方が決まる

自社の施設がどの業種に近いかは、電気料金の請求書と使用量の記録から見当がつきます。関東・高圧500kWの9業種について、試算に使った施設の姿を一覧にしました。

業種年間使用量負荷率年間電気代基本料金の割合太陽光自家消費率自給率初年度の削減額
工場(24時間稼働)330万kWh75%8,179万円15%225kW100%8%569万円
工場(日中稼働)141万kWh32%4,191万円29%400kW82%27%918万円
物流倉庫(常温)185万kWh42%5,120万円24%800kW85%43%1,700万円
冷凍冷蔵倉庫291万kWh67%7,360万円17%400kW100%16%1,002万円
スーパー・食品小売275万kWh63%7,007万円18%250kW100%11%608万円
オフィスビル143万kWh33%4,236万円29%125kW99%10%319万円
病院・介護施設258万kWh59%6,659万円18%175kW100%8%445万円
学校113万kWh26%3,613万円34%450kW72%33%826万円
ホテル264万kWh60%6,779万円18%100kW100%4%243万円

関東・高圧500kW、電気代上昇率2%の初年度。電気代は税抜で再エネ賦課金を含む。負荷率=年間使用量÷(契約電力×8,760時間)。自家消費率=太陽光の発電量のうち施設で使えた割合。自給率=施設の使用量のうち太陽光でまかなえた割合。太陽光の容量は業種ごとの屋根面積の目安(契約電力に対する比率)で置いた仮定です。

見るべきは2つの数字です。

  • 負荷率(年間使用量÷契約電力×8,760時間)。4〜5割を下回る施設(日中稼働の工場、学校、オフィス)は、需要に山と谷があり、休日には太陽光が余ります。蓄電池で余りをためる価値が生まれます。
  • 基本料金の割合。請求書の「基本料金」が電気代全体の3割前後ある施設は、契約電力を下げたときの効果が相対的に大きくなります。逆に1割台の施設では、蓄電池でピークを下げても電気代全体への効き目は限られます。

この2つが分かれば、図5・図11のどのあたりに自社が位置するかを大まかに推定できます。正確な判断には30分デマンドデータが必要です(相談するなら)。

結果①:太陽光は216ケースすべてが15年以内に回収、中央値6.6年

太陽光だけを入れた場合、回収年数は5.2〜12.4年、中央値は6.6年でした。216ケースのうち206ケースが10年以内、すべてが15年以内に回収しています。20年間の内部収益率(IRR)は中央値14.5%です(保守費・交換費を除く)。

太陽光の回収年数のヒートマップ。高圧は5.3〜8.6年、低圧は7.7〜11.8年。学校と低圧が長め
図4 太陽光だけの回収年数(業種×地域・規模、電気代上昇率2%)
業種低圧50kW高圧500kW高圧1,500kW
工場(24時間稼働)8.3年6.4年5.7年
工場(日中稼働)9.9年6.9年6.2年
物流倉庫(常温)9.0年7.5年6.7年
冷凍冷蔵倉庫8.3年6.5年5.7年
スーパー・食品小売8.3年6.6年5.9年
オフィスビル8.4年6.3年5.6年
病院・介護施設8.3年6.4年5.6年
学校11.1年8.4年7.5年
ホテル8.3年6.6年5.9年

回収年数の中央値(地域・電気代上昇率を通した値)。低圧は関東・九州のみ。保守費とパワーコンディショナの交換費は含みません(含めた場合は特集で試算)。

読み取れることは3つあります。

  • 規模が大きいほど早い。1kWあたりの設置費用が下がるためです(本試算では低圧22万円、高圧500kW 17万円、1,500kW 15万円/kWと想定)。
  • 地域差は小さい。中央値は関西6.0年、関東6.8年、九州7.2年です(関西の低圧は対象外のため、関東・九州は低圧を含む分だけ長く見えます)。九州は日射は多いものの、電力量単価が税抜で約19円/kWhと3地域で最も安いため、同じ1kWhの価値が小さくなります。
  • 学校は長め。夏休みや週末に需要が落ち、太陽光の約3割を捨てることになるためです。太陽光の容量を需要に合わせて小さくするか、蓄電池で余りをためると改善します(結果②)。

地域×規模で見ると:太陽光は規模、蓄電池は地域で差が出る

地域・規模太陽光の回収年数太陽光の20年IRR蓄電池が15年で回収できる価格
関東・低圧50kW7.7年12.1%回収できない
関東・高圧500kW6.6年14.7%8.3万円/kWh
関東・高圧1,500kW5.9年16.9%8.3万円/kWh
関西・高圧500kW6.2年15.9%6.9万円/kWh
関西・高圧1,500kW5.5年18.2%6.9万円/kWh
九州・低圧50kW9.0年9.8%回収できない
九州・高圧500kW7.1年13.5%7.3万円/kWh
九州・高圧1,500kW6.3年15.6%7.3万円/kWh

9業種の中央値、電気代上昇率2%、税抜。蓄電池は現実的な制御(上限の7割)の値。保守費・交換費を除く。

太陽光は、同じ地域でも規模が大きいほど回収が早くなります。差を生んでいるのは1kWあたりの設置費用です。一方、蓄電池が15年で回収できる価格は、500kWと1,500kWで変わりませんでした。本試算では蓄電池の容量を契約電力に比例させ、価格も1kWhあたり一定としたため、規模を大きくしても1kWhあたりの稼ぎは変わらないからです。蓄電池の採算を左右するのは規模ではなく、基本料金の単価(関東が高い)と、業種ごとの需要の形です。実際の見積もりでは大容量ほど1kWhあたりの価格が下がる傾向があるため、大規模施設ほど有利になる余地があります。

九州と関東の違い:日射の多さより電気の単価が効く

九州は3地域のなかで日射が多く、1kWあたりの年間発電量も多い地域です。それでも太陽光の回収年数は関東より長くなりました。九州電力の高圧の電力量単価(税抜で約14〜15円/kWh、燃料費等調整と再エネ賦課金を除く)は、関東・関西より安く、自家消費で置き換える1kWhの価値が小さいためです。太陽光の回収を早めるのは「よく発電する場所」より「高い電気を置き換えられる場所」だと言えます。

九州では再エネの出力制御が多いことが知られていますが、本試算は逆潮流しない自家消費(余った電気は捨てる)を前提にしています。系統へ電気を流さない設備は、系統側の出力制御の影響を受けにくいのが一般的です。ただし接続の条件は施設ごとに異なるため、送配電事業者との協議内容を確認してください。

電気代の上昇率を変えても、結論は同じ

電気代の上昇率(年)太陽光の回収年数(中央値)太陽光の20年IRR(中央値)高圧で蓄電池が15年以内に回収(54ケース中)同・20年以内
1%6.8年13.7%216
2%6.6年14.7%818
3%6.5年15.6%1220

太陽光は上昇率を1%まで下げても回収年数が0.2年延びる程度で、結論は変わりません。蓄電池は上昇率の影響を受けやすく、15年以内に回収できるケースは1%で2ケース、3%で12ケースと大きく変わります。蓄電池の試算を見るときは、上昇率をいくつに置いたかを必ず確認してください。

結果②:蓄電池は、補助なしでは高圧162ケース中22ケースしか15年で回収できない

太陽光に蓄電池(契約電力×0.4時間分、14万円/kWh・税抜)を足した場合の、蓄電池の上乗せ分だけの損得を見ます。

蓄電池が15年で元を取れる価格のヒートマップ。学校・日中工場・物流倉庫は11〜19万円/kWh、ほかは4〜9万円/kWh、低圧は約5万円以下か元が取れない
図5 蓄電池の上乗せ分だけで15年回収できる価格(万円/kWh・税抜、現実的な制御、電気代上昇率2%)
業種(高圧)15年回収できる価格(中央値)上限(完全予見の制御)15年以内に回収(18ケース中)
物流倉庫(常温)14.7万円/kWh19.2万円10
学校13.9万円/kWh17.8万円8
工場(日中稼働)12.0万円/kWh15.8万円4
冷凍冷蔵倉庫7.8万円/kWh11.4万円0
病院・介護施設7.7万円/kWh11.3万円0
オフィスビル6.8万円/kWh9.8万円0
スーパー・食品小売5.6万円/kWh8.2万円0
ホテル4.6万円/kWh6.8万円0
工場(24時間稼働)4.5万円/kWh6.7万円0

高圧500kW・1,500kWの各18ケース(3地域×2規模×上昇率3水準)。想定価格は14万円/kWh(税抜)、国の2026年度目標価格は11.8万円/kWh(業務・産業用、税抜・工事費込み)。

  • 補助なし・14万円/kWhで15年以内に回収できたのは、高圧162ケース中22ケース(物流倉庫10、学校8、日中稼働の工場4)でした。20年以内なら54ケースです。翌日を完全に予測できる上限の制御なら、15年以内が54ケース、20年以内が90ケースになります。
  • 低圧の54ケースは、20年たっても回収できませんでした。低圧電力は基本料金が下がらず、蓄電池の稼ぎは「余った太陽光をためて使う」分だけです。補機の電力(0.2kW/100kWhと仮定)を差し引くと、余りの少ない業種ではむしろマイナスになります。
年間最大需要の削減率。太陽光のみは0〜13%、蓄電池ありの現実的な制御で6〜24%、上限で8〜28%
図6 年間最大需要(契約電力)の削減率(高圧500kW・1,500kW、上昇率2%の平均)

図6のとおり、太陽光だけでは契約電力はほとんど下がりません(24時間稼働の工場で3%、ホテルやスーパーでは0%)。年間の最大需要が、太陽光が発電しない時間に出るためです。日中稼働の工場は、太陽光だけでも13%下がります。需要の山が昼に集中しているからです。蓄電池を足すと、多くの業種で6〜24%まで下がります。

結果③:太陽光は約41万円/kW、蓄電池は約7.4万円/kWhまでなら15年で元が取れる

「いくらまでなら元が取れるか」を逆算すると、太陽光と蓄電池の差がはっきりします。

15年で回収できる太陽光の設置費用の上限。業種別に27万〜50万円/kW。想定費用15〜22万円/kWを大きく上回る
図7 15年で回収できる太陽光の設置費用の上限(万円/kW・税抜)

太陽光は、15年で元が取れる設置費用の上限が中央値で約41万円/kW(27万〜50万円)でした。本試算の想定(15万〜22万円/kW)の約2倍あり、見積もりが多少高くても結論は変わりにくいと言えます。ただし、屋根の補強や受変電設備の改修が必要な場合は、その費用を加えて判断してください(工場・倉庫・公共施設の屋根耐荷重|太陽光の候補選定と構造調査の進め方)。

高圧の蓄電池が15年で回収できる価格の分布。中央値約7.4万円/kWh、想定価格14万円を超えるケースは一部
図8 高圧162ケースで、蓄電池の上乗せ分だけで15年回収できる価格の分布(万円/kWh・税抜)

蓄電池は、15年で元が取れる価格が中央値で約7.4万円/kWh(3.9万〜20.0万円)でした。上限の制御なら約10.9万円/kWhです。国の目標価格(11.8万円/kWh)まで下がっても、補助がなければ多くの業種では届きません。

試算の確からしさ:このモデルの検証方法と限界

住宅向けの記事では、エネがえるASPで31ケースを実際に試算して照合しました。今回の産業用の216ケースは、エネがえるBizでの照合は行っていません。産業用の採算は、施設ごとの30分デマンドデータと契約条件で大きく変わるため、合成テンプレートでの一括照合より、個別案件での確認が重要だからです。代わりに、次の方法で確からしさを確認しました。

  • 太陽光の発電量:住宅の243ケース記事と同じPVGIS(欧州委員会の日射データ)の1時間値を使い、地域ごとの発電量(年約1,130〜1,210kWh/kW)を共通化しました。陸屋根・低傾斜で1割少ない場合は感度分析で示しています。
  • 料金計算:各社の料金表(基本料金×契約電力×力率割引+季節別の電力量料金+燃料費等調整+再エネ賦課金)を1か月ずつ再現し、契約電力は年間の最大需要で決めています。
  • 蓄電池のピークカット:翌日を完全に予測した場合の上限を二分探索で求め、その7割を本編の値にしました。実際の制御の精度は機器や運用で変わります。

自社の施設で確かめる場合は、30分デマンドデータ(1年分)と電気料金の請求書があれば、エネがえるBizで太陽光・蓄電池の容量を変えながら同じ比較ができます。デマンドデータがない場合の試算方法はデマンドデータとは?自家消費型太陽光の経済効果を試算するために必要な理由で解説しています。

補助を使うと:国のストレージパリティ補助と東京都の助成

蓄電池の結論を大きく動かすのは補助です。国と東京都の制度を、それぞれの条件で当てはめました。

制度(令和8年度)太陽光蓄電池(業務・産業用)主な条件
環境省 ストレージパリティ補助(自己所有)4万円/kW3.9万円/kWh自家消費率50%以上、逆潮流禁止。上限は太陽光2,000万円・蓄電池等4,000万円。二次公募は2026年10月2日に終了
東京都 地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業(大企業等)経費の1/2同時設置の蓄電池は経費の2/3都内設置ほか。上限2億円
同(中小企業等)経費の2/3同時設置の蓄電池は経費の3/4同上

出典:環境イノベーション情報機構 ストレージパリティ補助 公募要領(2026年8月27日改訂)、東京都(2026年3月30日)。いずれも2026年10月31日に確認。補助の対象・上限・併用の可否は公募ごとに変わるため、申請前に最新の要領を確認してください。

高圧162ケースで蓄電池が15年以内に回収できる割合。補助なし14%、ストレージパリティ補助で33%、目標価格で28%、目標価格と補助で42%
図9 補助と価格の条件を変えた場合の、蓄電池の上乗せ分の15年回収(高圧162ケース)
  • 国の補助(3.9万円/kWh)があると、高圧162ケース中54ケース(33%)が15年以内に回収できます。学校・日中稼働の工場・物流倉庫の54ケースすべてです。それ以外の業種は、補助があっても15年以内には届きませんでした。
  • 価格が国の目標(11.8万円/kWh)まで下がり、補助もそろうと68ケース(42%)になります。
  • 東京都の助成を関東のケースに当てはめると、結論が逆転します(都内に設置する施設のみが対象。学校法人・医療法人・社会福祉法人等は中小企業等の助成率)。大企業等の助成率(太陽光1/2・蓄電池2/3)では、関東の高圧54ケースすべてで蓄電池の上乗せ分が15年以内に回収でき、回収年数の中央値は8.8年です。太陽光の回収年数は中央値3.5年(2.9〜5.6年)、太陽光+蓄電池でも4.4年になります。中小企業等の助成率なら、さらに短くなります。

補助の詳しい比較は業務・産業用蓄電池 補助金2026|工場・病院・商業施設・データセンターの採算判断でも整理しています。国のストレージパリティ補助の令和8年度分は公募が終わっているため、図9の「補助あり」は、来年度も同じ基準額の補助が出た場合の仮定です。

何が変わると結論がひっくり返るか

感度分析。電力量単価±3円で15年収支が約6,900万〜1億900万円、設置費用で約7,300万〜1億500万円の幅。蓄電池の条件の影響は小さい
図10 太陽光+蓄電池の15年収支の感度分析(関東・高圧500kW・工場(日中稼働)、上昇率2%)

関東・高圧500kWの日中稼働の工場(太陽光400kW+蓄電池200kWh)で、太陽光+蓄電池の15年収支は約8,870万円の黒字です。条件を1つずつ動かすと、次のことが分かります。

  • 最も効くのは電力量単価と太陽光の設置費用。電力量単価が税抜で3円/kWh上下すると、15年収支は約6,900万〜1億900万円に動きます。燃料価格や卸電力市場の動きで電気代が下がる局面でも、黒字は保たれます。
  • 蓄電池の条件の影響は、それより小さい。蓄電池の価格(11.8万〜20万円/kWh)や、ピークカットの達成度(40〜100%)で動くのは、15年収支の1〜2割程度です。蓄電池は「入れるかどうか」より「どの施設に入れるか」が重要です。
  • 発電量が1割少ないと約1,400万円減る。陸屋根に低い角度で設置する場合は、発電量を控えめに見積もってください。

意外な発見:蓄電池が得になるのは「太陽光が余る施設」

「電気をたくさん使う施設ほど蓄電池が得」と考えがちですが、試算の結果は逆でした。

太陽光を捨てる割合と、蓄電池が15年で回収できる価格の関係。余りが13〜28%の学校・日中工場・倉庫は10〜20万円/kWh、余りがない業種は約4〜10万円/kWh
図11 太陽光の余り(出力抑制の割合)と、蓄電池が15年で回収できる価格(高圧162ケース)

24時間稼働の工場や病院は、電気の使用量が多く負荷率も高い施設です。屋根の太陽光は昼の需要に吸収され、余りが出ません。そのため蓄電池は、昼にためる電気がなく、基本料金を下げる役目しか果たせません。一方、学校や日中稼働の工場、物流倉庫は、週末や長期休暇に需要が落ち、太陽光の13〜28%を捨てています。この「捨てる電気」をためて平日の朝夕や翌日に使えるため、蓄電池の価値が高くなります。

言い換えると、蓄電池を検討する順番は「まず屋根いっぱいに太陽光を載せ、余りが出る施設で蓄電池を足す」です。余りが出ない施設では、蓄電池より太陽光の増設(駐車場のソーラーカーポートなど)を先に検討する方が合理的です。倉庫の具体例は倉庫の屋根はどれだけ稼げる?PPA・購入・蓄電池を比較、冷凍冷蔵倉庫は冷凍冷蔵倉庫の電気代を下げる方法で詳しく扱っています。

よくある思い込みと、試算の結果

思い込み216ケースの試算の結果
電気を多く使う施設ほど蓄電池が得逆。24時間稼働の工場やホテルは太陽光が余らず、蓄電池の回収見込みは最も低い部類でした
日射の多い地域ほど太陽光が得九州は日射が多いものの電気の単価が安く、回収年数は関西・関東より長めでした
太陽光で契約電力(基本料金)も下がる多くの業種で0〜3%。年間の最大需要は太陽光が発電しない時間に出やすいためです(日中稼働の工場は例外で約13%)
大きな施設ほど蓄電池が得1kWhあたりの価格が同じなら、規模で採算は変わりませんでした
脱炭素はコストがかかる屋根の太陽光のCO2削減コストは全ケースでマイナス(減らすほど得)でした

業種別の読み解き① 工場:日中稼働か24時間稼働かで正反対

日中稼働の工場は、平日の昼に需要の山があり、太陽光だけで年間最大需要が約13%下がります(図6)。週末には太陽光の約18%が余るため、蓄電池も高圧では条件次第で15年以内に回収できます。一方、24時間稼働の工場は需要が一日中平らで、太陽光はすべて自家消費できますが、自給率は1割に届きません。蓄電池の稼ぎは基本料金の削減だけで、15年で回収できる価格は約4.5万円/kWhでした。24時間稼働の工場では、蓄電池より太陽光の容量を増やす方法(駐車場や遊休地への設置)を先に検討するのが合理的です。

業種別の読み解き② 物流倉庫・冷凍冷蔵倉庫:屋根の広さが最大の資産

常温の物流倉庫は、屋根が広く需要が比較的小さいため、契約電力の1.6倍の太陽光を載せる想定にしました。自給率は約43%と9業種で最も高く、何もしない場合との20年の差も最大です。休日の余りが多く、蓄電池の回収見込みも9業種で最も良い結果でした。冷凍冷蔵倉庫は冷却で一日中電気を使うため余りが出にくく、蓄電池は補助なしでは15年以内に回収できませんでした。ただし停電時に冷凍品を守る価値(BCP)は大きく、経済性だけで判断しない業種です。

業種別の読み解き③ スーパー・ホテル:太陽光は確実、蓄電池は後回し

スーパーとホテルは、需要が朝から夜まで続き、屋根の面積に対して需要が大きい施設です。太陽光は100%自家消費でき回収年数も短い一方、自給率はスーパーで約11%、ホテルで約4%にとどまります。蓄電池の15年回収価格は約4.6〜5.6万円/kWhで、補助なしで回収できるケースはありませんでした。この業種では、屋根だけでなく駐車場のソーラーカーポートや、オフサイトPPAや証書と組み合わせて脱炭素を進めるのが現実的です。

業種別の読み解き④ 病院・介護施設・学校:公共性と停電対策をどう測るか

病院・介護施設は24時間の需要があり、太陽光は全量を自家消費できます。蓄電池は補助なしでは回収できませんが、停電時の安全確保という電気代以外の価値があります。学校は正反対で、夏休みや週末に需要が大きく落ちるため、太陽光の約28%が余ります。蓄電池でこの余りを生かせるため、高圧では蓄電池の回収見込みが物流倉庫に次いで良い業種でした。学校や公共施設は避難所に指定されていることも多く、停電時の電源として蓄電池を位置づけやすい施設です。自治体の施設での検討手順は屋根耐荷重と候補選定の進め方も参考にしてください。

業種別の読み解き⑤ オフィスビル:屋根が小さく、太陽光の効果は限定的

オフィスビルは平日昼の需要が中心で、負荷率は約33%と低めですが、階数に比べて屋根が小さいため、太陽光は契約電力の4分の1(125kW)しか載らない想定です。太陽光の余りがほとんど出ないため、蓄電池を足すと20年の得は減りました(5,350万円→4,533万円)。オフィスでは、屋根の太陽光は確実に回収できる「小さな一歩」と位置づけ、脱炭素の大部分はPPAや再エネメニューで賄う設計が現実的です。

低圧(契約50kW前後)の事業所はどうか

小規模な工場や店舗、事務所など、低圧電力で契約している事業所(関東・九州の54ケース)の結果です。

  • 太陽光は元が取れる。回収年数の中央値は関東8.0年、九州9.3年でした。関東は低圧電力の電力量単価が税抜約23円/kWhと高く、九州より早く回収できます。
  • 蓄電池は、補助なしでは20年たっても回収できない。低圧電力は基本料金が契約電力(設備の容量)で決まるため、ピークを下げても安くなりません。蓄電池の稼ぎは余った太陽光を使う分だけで、余りの多い学校でも15年で元が取れる価格は約4.6万円/kWhでした。
  • 東京都の中小企業等の助成(蓄電池3/4)を当てはめても、低圧で蓄電池が15年以内に回収できたのは27ケース中3ケースでした。低圧で蓄電池を検討するなら、経済性より停電時の事業継続(BCP)が主な理由になります。
業種(低圧50kW)関東の回収年数九州の回収年数関東の初年度削減額自給率
工場(24時間稼働)・冷凍冷蔵倉庫・スーパー・病院・ホテル7.7年9.0年27万〜107万円4〜16%
オフィスビル7.8年9.0年32万円10%
物流倉庫(常温)8.4年9.6年121万円28%
工場(日中稼働)9.3年10.6年88万円27%
学校10.4年11.8年87万円33%

電気代上昇率2%、税抜。太陽光は低圧の上限に合わせて最大49kW。余りが出ない業種は、容量によらず回収年数が同じになります。

低圧では、太陽光の余りが出ない業種はどれも同じ回収年数(関東7.7年)になりました。低圧電力は基本料金が下がらないため、太陽光の価値は「置き換えた電力量×電力量単価」だけで決まるからです。余りが出る学校や日中稼働の工場は、容量を少し控えめにすると回収が早まります。

デマンドデータがない低圧の事業所での試算方法はデマンドデータなしで低圧自家消費太陽光を試算する方法、中小工場の容量の考え方は中小工場の太陽光・蓄電池容量|需要・PPA・自己所有の比較を参考にしてください。

それでも導入が進まない理由:導入しなかった経営者・役員100人の声(エネがえる独自調査)

試算の上では、太陽光はほとんどのケースで元が取れます。それでも導入が進まないのはなぜか。エネがえるは、自家消費型太陽光・蓄電池の提案で経済効果シミュレーションを示されたうえで、発注しなかった企業の経営者・役員100人に聞きました。

設問回答
導入にあたっての不安・懸念(複数回答、n=68)投資回収ができるかどうか 69.1%/販売店や施工会社への信頼性 42.6%/屋根の強度 33.8%/屋根や敷地の面積 29.4%
提示された経済効果シミュレーションの信憑性を疑ったことがあるか(n=100)非常にある28.0%+ややある39.0%=67.0%
シミュレーション結果が保証されるなら、その販売施工店に発注したいか(n=100)非常にそう感じる11.0%+ややそう感じる46.0%=57.0%
シミュレーション結果が保証されるなら、社内稟議や投資の決裁が通りやすくなるか(n=100)非常にそう思う18.0%+ややそう思う42.0%=60.0%

出典:エネがえる運営事務局調べ「産業用自家消費型太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーション結果に関する意識調査」。2024年5月14〜15日、インターネット調査、提案を受けて発注しなかった企業の経営者・役員 n=100。調査結果。回答者の意識を示すもので、全国の企業を代表する値ではありません。

自由回答では「これまで何社かに見積もってもらって、そのシミュレーションの違いが結構あるので、何処の会社に頼むのが良いのか?」という声もありました。採算が合うかどうかより、示された数字を信じてよいかが分からないことが、決裁を止めています。前提条件と計算方法を開示し、同じ条件で比べられる試算が求められているということです。

特集:自家消費型太陽光・蓄電池の価値を6つの角度から測る

「何年で元が取れるか」だけでは、経営判断の材料として足りません。何もしない場合との比較、PPAとの比較、脱炭素の効果、保守費、停電時の備えまで含めて、6つの角度から測り直しました。

特集の結論

  1. いちばん高くつくのは「何もしないこと」。高圧500kWでは、太陽光を入れずに20年間電気を買い続けると、業種により約3,500万〜2.9億円多く払う計算です(上昇率2%)。
  2. 資金を出せるなら自己所有、出せないならPPAでも「何もしない」より得。関東・高圧500kWの4業種で、オンサイトPPA(15円/kWhの想定)は自己所有より得する額が小さいものの、何もしない場合より20年で約3,400万〜1.8億円得です。
  3. 脱炭素は「お金を払って減らす」ものではない。屋根の太陽光によるCO2削減コストはすべてのケースでマイナスで、中央値は1トンあたり約3.9万円の得でした。
  4. 保守費と交換費を入れても結論は変わらない。回収年数の中央値は6.6年から7.5年に延びますが、216ケース中215ケースが15年以内に回収します。

角度① 反実仮想:「何もしない」と比べる

関東・高圧500kW・日中稼働の工場の20年累積支払い。何もしない10.18億円、PPA 9.11億円、太陽光8.71億円、太陽光+蓄電池8.58億円
図12 20年間の累積支払い(関東・高圧500kW・工場(日中稼働)、上昇率2%、税抜・名目)
選択20年間の累積支払い何もしない場合との差
何もしない約10.18億円—
オンサイトPPA(自家消費分を15円/kWhで購入)約9.11億円約1.08億円の得
太陽光(自己所有、400kW・6,800万円)約8.71億円約1.48億円の得
太陽光+蓄電池(自己所有、+200kWh・2,800万円)約8.58億円約1.60億円の得

保守費・パワーコンディショナの交換費を除く。PPA単価は想定で、実際は契約期間・設置条件・事業者で異なります。

この工場では、蓄電池を足すと太陽光だけより20年で約1,200万円得になります。太陽光が約18%余り、平日のピークも昼に集中しているためです。高圧500kW・上昇率2%の27ケースで見ると、太陽光を入れないことによる20年の損失は、ホテルの約3,500万円から物流倉庫の約2.9億円まで幅がありました。屋根が広く昼に電気を使う施設ほど、先延ばしの損失は大きくなります。

角度② 自己所有か、オンサイトPPAか

何もしない場合より20年で得する額。物流倉庫は自己所有で約2.6億〜2.8億円、PPAで約1.8億円。オフィスは自己所有約5,350万円、PPA約3,400万円
図13 何もしない場合より20年で得する額:自己所有とオンサイトPPA(関東・高圧500kW、上昇率2%)

どの業種でも、得する額は「太陽光+蓄電池(自己所有)」か「太陽光(自己所有)」が大きく、オンサイトPPAはその約6〜7割でした。それでもPPAは初期費用がかからず、保守もPPA事業者が担うのが一般的です。手元資金や借入枠を本業の投資に回したい企業にとっては、PPAでも何もしないより確実に得という位置づけになります。オフィスでは、蓄電池を足すと太陽光だけより得する額が減りました(5,350万円→4,533万円)。太陽光の余りがほとんどないためです。オンサイトPPAの事業性(屋根の賃料や事業者の利回り)まで含めた比較は産業用オンサイトPPAの経済効果シミュレーション、自己所有・PPA・リースの使い分けはEPCが自己所有・PPA・リースを使い分けるにはで解説しています。

PPAを選ぶなら確認したい契約条件

確認項目確認する理由
電気の単価と、期間中の改定の有無本試算では15円/kWhで固定と想定。単価が上がる条件があると、何もしない場合との差が縮みます
契約期間と中途解約の条件工場の移転や建て替えの予定がある場合、解約金や設備の撤去費用が負担になります
余った電気の扱い自家消費できなかった分を誰が負担するか、出力抑制を前提にするかで実質の単価が変わります
屋根の補修・防水工事のときの扱い一時撤去の費用負担と、その間の発電の補償を決めておきます
契約終了後の設備の扱い無償譲渡か撤去か。譲渡後は保守費と交換費が自社負担になります
環境価値の帰属Scope2の削減として計上できるかを、契約書と算定ルールの両方で確認します

角度③ 脱炭素:Scope2をどれだけ減らせるか

屋根の太陽光によるScope2の削減割合。物流倉庫43%、学校34%、日中工場27%、ホテル4%
図14 屋根の太陽光で減らせる電気由来のCO2(Scope2)の割合(高圧500kW・3地域の平均)

電気の使用に伴うCO2(Scope2)を、各社の残差メニューの排出係数(令和6年度実績:東京電力EP 0.000452、関西電力 0.000415、九州電力 0.000472 t-CO2/kWh)で換算しました(環境省・経済産業省 電気事業者別排出係数)。屋根の太陽光で減らせる割合は、物流倉庫の約43%からホテルの約4%まで、業種によって10倍の差があります。需要が大きく屋根が小さい施設では、屋根だけで脱炭素目標を達成するのは難しく、PPAと証書を組み合わせた最適ポートフォリオの検討が必要になります。

業種高圧500kWの削減量高圧1,500kWの削減量Scope2の削減割合
物流倉庫(常温)約356t/年約1,069t/年約43%
冷凍冷蔵倉庫約208t/年約624t/年約16%
工場(日中稼働)約171t/年約514t/年約27%
学校約171t/年約514t/年約34%
スーパー・食品小売約130t/年約390t/年約11%
工場(24時間稼働)約117t/年約351t/年約8%
病院・介護施設約91t/年約273t/年約8%
オフィスビル約64t/年約193t/年約10%
ホテル約52t/年約156t/年約4%

屋根の太陽光(自家消費分)による初年度のCO2削減量。3地域の平均、残差メニューの排出係数で換算。

蓄電池を足しても、CO2の削減量はほとんど変わりません。太陽光が余る物流倉庫・学校・日中稼働の工場では年約8〜12t増えますが、余りのない業種では、充放電のロスと補機の電力のため年1〜2t程度わずかに減ります。蓄電池は脱炭素の手段というより、電気代と停電対策の手段と整理しておくと、社内の説明がぶれません。

角度④ CO2を1トン減らすコスト

屋根の太陽光のCO2削減コストは全業種でマイナス。中央値は1トンあたり約3.7万〜4.3万円の得
図15 CO2を1トン減らすコスト(20年の収支÷20年のCO2削減量、全216ケース)

20年の収支を20年のCO2削減量で割ると、屋根の太陽光の削減コストはすべてのケースでマイナス(減らすほど得)で、中央値は1トンあたり約3.9万円の得でした(初年度のCO2削減量を20倍した値で割っており、発電量の劣化は考慮していません。影響は小さい範囲です)。排出量取引や炭素価格の議論では「1トン減らすのにいくらかかるか」が問われますが、屋根の太陽光は費用ではなく利益を生む削減策です。脱炭素の投資を順番に並べるなら、まず屋根の自家消費型太陽光から手を付けるのが合理的です。

角度⑤ 保守費とパワーコンディショナの交換費を入れる

保守費と交換費を含めると回収年数の中央値は6.6年から7.5年に。216ケース中215ケースが15年以内
図16 保守費・パワーコンディショナの交換費を含めた太陽光の回収年数(全216ケース)

本編の回収年数には、保守費と交換費を含めていません。保守費を年3,000円/kW、13年目にパワーコンディショナを2万円/kWで交換すると仮定すると(いずれも税抜の仮定値)、回収年数の中央値は6.6年から7.5年(5.7〜16.1年)に延びます。15年以内に回収できるのは216ケース中215ケースで、結論は変わりません。減価償却や税務上の扱いは産業用自家消費型太陽光・蓄電池のROIと減価償却を参考にしてください。中小企業向けの税制優遇(即時償却・税額控除など)が使える場合もありますが、要件があるため税理士にご確認ください。

角度⑥ 停電時の備え(BCP)を「保険」として測る

蓄電池の価値は電気代だけではありません。停電時に、照明・通信・冷蔵設備・非常用の機器などの重要な負荷を動かせることは、事業継続(BCP)の価値になります。

  • 蓄電池(契約電力×0.4時間分)で、重要負荷を契約電力の1割と仮定すると、約3.6時間動かせます。日中は、自立運転に対応した設備なら太陽光で充電し直せるため、より長く使えます。
  • 補助なしで元が取れない業種では、蓄電池の実質負担は「停電保険料」です。例えば関東・高圧500kWのオフィスでは、蓄電池200kWh(2,800万円)の20年収支は約820万円の赤字で、1年あたり約41万円になります(15年で見ると約1,350万円の赤字、1年あたり約90万円)。この金額で、停電時に数時間の業務継続と、病院・介護施設なら患者・入居者の安全を買う、と考えられるかどうかが判断の軸です。
  • 病院や介護施設、冷凍冷蔵倉庫など、停電の損失が大きい業種ほど、補助の有無にかかわらず蓄電池を選ぶ合理性があります。
重要負荷(契約電力に対する割合)高圧500kW・蓄電池200kWhで動かせる時間の目安
5%(照明・通信・サーバーなど最小限)約7.2時間
10%(上記+一部の冷蔵設備・非常用機器)約3.6時間
20%(生産設備の一部まで)約1.8時間

使用可能容量90%(180kWh)を重要負荷で割った値。満充電・太陽光の充電なし・変換ロスを考慮しない単純計算です。実際の時間は機器の仕様、自立運転への対応、停電時の充電残量で変わります。

導入すべき施設・待つべき施設:判断チェックリスト

判断当てはまる条件
太陽光は今すぐ検討してよい屋根(または駐車場)に設置スペースがある/昼に電気を使う/契約が高圧、または低圧でも電力量単価が高い(関東など)/屋根の耐荷重と残りの耐用年数に問題がない
蓄電池も一緒に検討してよい高圧契約である/週末や長期休暇に需要が落ち、太陽光が余る(学校・日中稼働の工場・物流倉庫など)/東京都など手厚い助成が使える/停電時に止められない設備がある
蓄電池は待ってよい低圧契約で、停電対策の必要性が低い/太陽光の余りがほとんどない(24時間稼働の工場・ホテルなど)/補助が使えない
PPAを検討する初期投資の資金を本業に回したい/保守・管理を外部に任せたい/長期契約(15〜20年)を結べる施設である

業種別の推奨構成(高圧・補助なしの場合)

業種太陽光蓄電池次に検討したいこと
物流倉庫(常温)屋根いっぱいに設置検討の価値あり(条件次第で15年以内)余りの量に合わせた蓄電池の容量
学校設置(容量は需要に合わせて調整)検討の価値あり(避難所の電源としても)夏休みの余りの活用、自治体の補助
工場(日中稼働)設置検討の価値あり(上昇率・地域次第)30分デマンドでのピークの確認
冷凍冷蔵倉庫設置補助またはBCP目的なら停電時の損失額の見積もり
病院・介護施設設置補助またはBCP目的なら非常用発電機との役割分担
工場(24時間稼働)設置(屋根外の増設も)待ってよい駐車場・遊休地への増設、オフサイトPPA
スーパー・食品小売設置待ってよいソーラーカーポート、冷設の省エネ
ホテル設置待ってよいオフサイトPPAや再エネメニュー
オフィスビル設置(効果は限定的)待ってよいテナントと合わせた再エネ調達

本試算(関東・関西・九州の高圧、14万円/kWh、補助なし)の傾向に基づく目安です。個別の施設では、需要の形と屋根の条件で結論が変わります。

稟議に載せる数字:日中稼働の工場(関東・高圧500kW)の例

経営会議や稟議で問われるのは「何年で戻るか」だけではありません。保守費を入れても成り立つか、電気代が下がったらどうなるか、脱炭素と停電対策にどう効くかまで、1枚で示せると判断が早くなります。日中稼働の工場(太陽光400kW・蓄電池200kWh、上昇率2%)を例に、載せるべき数字を並べました。

項目太陽光のみ太陽光+蓄電池
投資額(税抜)6,800万円9,600万円
回収年数7.0年(保守・交換込み7.9年)8.2年(蓄電池の上乗せ分は14.3年)
20年のIRR13.8%11.2%
20年の収支(何もしない場合との差)約1億4,800万円約1億6,000万円
電力量単価が3円/kWh下がった場合の15年収支—約6,900万円の黒字
Scope2の削減約171t/年(約27%)約179t/年(約28%)
停電時(重要負荷を契約電力の1割と仮定)夜間は使えない約3.6時間

保守・交換込みは保守費年3,000円/kW、13年目にパワーコンディショナ交換2万円/kW(税抜の仮定値)。補助・税制優遇は含みません。

この施設では、蓄電池を足すと回収年数とIRRは悪化しますが、20年で得する額は約1,200万円増えます。「早く回収したい」か「20年で多く得したい」かで選ぶ構成が変わるため、稟議ではどちらを重視するかを先に決めておくと議論が整理されます。

自社で5分で概算する3ステップ

  1. 太陽光の容量を置く。屋根の有効面積(m²)をおおよそ8〜10で割ると、載せられる容量(kW)の目安になります(パネルの効率・架台・配置で変わるため、施工店に確認してください)。
  2. 年間の削減額を出す。容量(kW)×1,100〜1,200kWh×自家消費率×電力量の単価(燃料費等調整と再エネ賦課金を含む、税抜)。自家消費率は、平日も休日も昼に電気を使う施設なら9割以上、休日に止まる施設なら7〜8割が目安です(上の業種別の表を参考に)。
  3. 回収年数を出す。設置費用÷年間の削減額。保守費を見込むなら、削減額から年3,000円/kW程度を差し引きます。

例えば関東・高圧の日中稼働の工場で400kWなら、400×1,150×0.82×約21円で年間約790万円となり、設置費用6,800万円なら約8.6年です。本試算(7.0年)より長く出るのは、契約電力の削減と電気代の上昇を入れていないためです。概算で10年を大きく下回るなら、詳細な試算を依頼する価値があります。

多拠点の企業は「拠点の順番」を決める

工場・倉庫・店舗を全国に持つ企業では、全拠点に同じ構成を入れるより、拠点ごとに優先順位をつける方が投資効率は上がります。本試算からは、①屋根が広く昼に電気を使う拠点(物流倉庫・日中稼働の工場)、②電気の単価が高い地域の拠点、③自治体の助成が厚い地域(東京都など)の拠点、の順に太陽光を進め、蓄電池は太陽光が余る拠点と停電対策が必要な拠点に絞るのが合理的です。拠点ごとの試算を同じ前提でそろえることが、全社の脱炭素計画(Scope2の削減目標)と投資計画を結びつける第一歩になります。

相談するなら:自社の30分デマンドデータで試算してもらう

この記事の試算は、業種別の合成テンプレートを使った「傾向」です。実際の施設では、需要の形、契約電力、屋根の形状と面積、受変電設備の状態によって結果が変わります。導入を判断する前に、次の3点を販売施工店やEPCに依頼してください。

  1. 30分デマンドデータ(1年分)で試算してもらう。年間の最大需要がいつ出ているかで、蓄電池の価値が大きく変わります。
  2. 前提条件を開示してもらう。電気料金の単価、電気代上昇率、発電量、劣化、保守費、交換費を一覧で確認し、複数社の試算を同じ条件で比べます。
  3. 太陽光だけ・太陽光+蓄電池・PPAを並べて比べてもらう。蓄電池の上乗せ分が、どの条件なら元が取れるかを確認します。

エネがえるは、産業用の自家消費型太陽光・蓄電池の経済効果を試算するクラウドサービス「エネがえるBiz」を、販売施工店・EPC・電力会社などに提供しています。デマンドデータの取り込み、業種別ロードカーブ、蓄電池のピークカット、PPAとの比較まで、同じ条件で並べて示せます。試算の作業そのものを依頼したい場合は、エネがえるBPO(試算代行)も利用できます。

見積もりと試算を受け取ったら確認する8項目

確認項目よくある落とし穴
電気料金の単価は最新か、税込か税抜か古い単価や税込・税抜の混在で、削減額が1割程度ずれることがあります
燃料費等調整と再エネ賦課金を含めたか含めるかどうかで1kWhあたりの価値が数円変わります
電気代の上昇率はいくつと置いたか上昇率を高く置くほど回収は早く見えます。0%(据え置き)でも確認します
発電量の根拠と劣化率陸屋根・低傾斜・影の影響を入れているかを確認します
余った電気をどう扱ったか逆潮流なしの施設で、余りを売れる前提にしていないかを見ます
契約電力(基本料金)の削減をどう見込んだか太陽光だけで基本料金が大きく下がる試算は、需要の山が昼にある施設以外では過大になりがちです
保守費・パワーコンディショナの交換費含めない試算が多いため、同じ条件にそろえて比べます
蓄電池の制御の前提翌日を完全に予測した上限の制御で計算していないかを確認します

よくある質問

産業用の自家消費型太陽光は元が取れますか?

この試算では、9業種・3規模・3地域・電気代上昇率3水準の216ケースすべてで、太陽光は15年以内に回収できました(中央値6.6年、税抜、保守費・交換費を除く)。保守費と13年目のパワーコンディショナ交換を含めても、中央値は7.5年で、215ケースが15年以内です。ただし需要の形は業種別の合成テンプレートで、実際の施設では30分デマンドデータで確認する必要があります。

何年で回収できますか?

規模が大きいほど早く、回収年数の中央値は低圧50kWで8.8年、高圧500kWで6.6年、高圧1,500kWで5.9年でした。地域別では関西6.0年、関東6.8年、九州7.2年です。学校のように週末や長期休暇に需要が落ちる施設は、太陽光が余るため長めになります(低圧で11.1年)。

産業用蓄電池は元が取れますか?

条件次第です。補助なし・14万円/kWh(税抜)では、高圧162ケースのうち蓄電池の上乗せ分を15年以内に回収できたのは22ケースで、学校・日中稼働の工場・物流倉庫に限られました。国のストレージパリティ補助(3.9万円/kWh)があれば54ケース、東京都の助成(大企業等で蓄電池の2/3)を当てはめると関東の高圧54ケースすべてが15年以内に回収できます。蓄電池が得になるのは、高圧契約で、太陽光が余る施設です。

低圧の事業所に蓄電池は必要ですか?

経済性だけなら、補助なしでは勧めにくい結果でした。低圧電力は基本料金がピークで下がらないため、関東・九州の低圧54ケースはすべて20年以内に回収できませんでした。低圧で蓄電池を選ぶ主な理由は、停電時の事業継続(BCP)です。

PPAと自己所有はどちらが得ですか?

資金を出せるなら自己所有の方が得する額は大きく、関東・高圧500kWの4業種で、オンサイトPPA(15円/kWhの想定)の得する額は自己所有(太陽光のみ)の約6〜7割でした。ただしPPAは初期費用0円で、何もしない場合より20年で約3,400万〜1.8億円得です。手元資金を本業に回したい場合はPPAも合理的な選択です。

補助金を使うとどれくらい変わりますか?

太陽光は補助なしでも元が取れますが、国のストレージパリティ補助(4万円/kW)を当てはめると回収年数の中央値は6.6年から5.4年になります。東京都の助成(大企業等で太陽光1/2)では関東の中央値が3.5年です。蓄電池は補助の有無で結論が変わります。令和8年度の国の補助は公募が終わっているため、来年度の公募要領を確認してください。

CO2はどれくらい減りますか?

屋根の太陽光で減らせる電気由来のCO2(Scope2)は、高圧500kWの平均で業種により約4〜43%、年間約50〜360トンでした(各社の残差メニューの排出係数、令和6年度実績で換算)。削減コストはすべてのケースでマイナスで、中央値は1トンあたり約3.9万円の得です。

自社の施設で正確に試算するには何が必要ですか?

30分デマンドデータ(1年分)、直近12か月の電気料金の請求書(契約電力・料金メニュー)、屋根の図面(面積・構造・耐荷重)の3つです。デマンドデータがあれば、年間の最大需要がいつ出ているかが分かり、蓄電池の価値を正確に見積もれます。前提条件を開示した試算で、太陽光だけ・太陽光+蓄電池・PPAを同じ条件で比べてください。

試算の前提条件(すべて公開)

項目設定値出典・根拠
関東 高圧東京電力EP 高圧ベーシックプラン:基本料金2,530円/kW+2026年11月の託送見直し分108.57円/kW(推計)、電力量料金17.43円/kWh、燃料費調整1.55円/kWh(2026年11月分)。時間帯別の市場価格調整単価は含めていない東京電力EP 電気料金単価表(2026年4月1日実施)、同 2026年11月分 燃料費調整単価等
関東 低圧東京電力EP 低圧電力:基本料金1,190円83銭/kW、電力量料金 夏季27円19銭・その他季25円62銭、燃料費調整 −4.65円/kWh(12月分)東京電力EP 料金単価表‐電力
関西 高圧関西電力 高圧電力AS等:基本料金2,200円88銭/kW、電力量料金 夏季19円22銭・その他季18円15銭、燃料費調整+0.15円、市場価格調整+0.90円(500kW以上、11月分)関西電力 料金表、燃料費調整単価、市場価格調整単価
九州 高圧業務用電力A:基本料金2,343円19銭/kW、電力量料金 夏季16円98銭・その他季16円05銭(工場は産業用電力A:16円50銭・15円61銭)、燃料費等調整1.20円/kWh(12月分)九州電力 業務用電力A、産業用電力A、2026年12月分 燃料費等調整単価
九州 低圧低圧電力:基本料金1,164円92銭/kW、電力量料金 夏季17円38銭・その他季15円69銭、燃料費等調整1.94円/kWh九州電力 低圧電力
再エネ賦課金4.18円/kWh経済産業省
力率100%と仮定(高圧は基本料金15%割引、低圧電力は5%割引)各社料金表の力率割引の規定。東京電力EPの低圧電力は九州電力と同じ5%と仮定
消費税料金・設備費とも税抜(料金表の税込単価を1.1で割る)事業者の仕入税額控除を前提
太陽光の発電量PVGIS(ERA5)の東京・大阪・福岡の1時間値。年約1,130〜1,210kWh/kW。劣化 年0.5%PVGIS(EU JRC)
太陽光の設置費用低圧22万円・高圧500kW 17万円・1,500kW 15万円/kW(税抜、想定)仮定。参考:経済産業省 調達価格等算定委員会の資料では、事業用太陽光の設置費用は2025年実績で平均20.8万円/kW・中央値18.5万円/kW、2026〜27年度の想定値は15.0万円/kW。1,500kWの15万円はこの想定値と同じ水準で、レンジの下限側の想定。損益分岐の費用(図7)と感度分析(13万〜21万円)で幅を示す
蓄電池契約電力×0.4時間分、出力は容量の1/2、価格14万円/kWh(税抜)、使える容量90%、往復効率88%、劣化 年1.5%、補機0.2kW/100kWh業務・産業用の2026年度目標価格11.8万円/kWh(公募要領)を上回る市場価格を想定
蓄電池の制御高圧:年間の最大需要を下げる運転。完全予見の上限の7割を達成すると仮定(40〜100%で感度分析)。低圧:余った太陽光の充放電のみ仮定
需要の形業種別の合成テンプレート(平日・休日・季節・日々のばらつき)。最大需要=契約電力出典なし(合成値)。参考:業種別ロードカーブ・テンプレート完全ガイド
電気代上昇率年1%・2%・3%(基本料金・電力量料金とも)シナリオ
排出係数東京電力EP 0.000452、関西電力 0.000415、九州電力 0.000472 t-CO2/kWh(残差メニュー、令和6年度実績)環境省・経済産業省
オンサイトPPA自家消費分を15円/kWh(税抜)で20年購入仮定
含めていないもの本編では保守費・パワーコンディショナの交換費(特集で別途試算)、屋根補強・受変電設備改修、割引率(現在価値への換算)、借入金利、税制優遇、環境価値の売却—

この試算の限界

  • 需要の形は業種別の合成テンプレートで、実際の施設の30分デマンドデータではありません。特に蓄電池の価値は、年間の最大需要がいつ出るかで大きく変わります。
  • 関東の高圧の基本料金は推計値です(2026年4月の単価表に託送見直し分を加算)。燃料費等調整は東京電力EPの2026年11月分の燃料費調整単価(ベーシックプラン高圧 1.55円/kWh)とし、ベーシックプランに含まれる時間帯別の市場価格調整単価(月ごとに確定)は含めていません。関西・九州の市場価格調整(約+0.9〜1.0円)と同程度が加わると、関東の太陽光の効果は本試算より大きくなります。関西の低圧は対象外です。
  • 500kW以上の契約(1,500kWのケース)は契約電力が協議で決まるため、年間最大需要の低下がそのまま契約電力に反映されると仮定しています。また、実量制では最大需要を下げてから契約電力に反映されるまで最長12か月かかりますが、本試算は1年目から反映される前提です。
  • 太陽光の設置費用、蓄電池の価格、PPA単価、保守費・交換費は仮定値です。損益分岐の価格と感度分析で幅を示しています。
  • 1時間単位の計算のため、30分単位で決まる実際の最大需要より、ピークを低めに見積もっている可能性があります。
  • エネがえるBizでの照合は今回行っていません。

ファクトチェック・エビデンス検証一覧

主要な数値と主張の根拠と検証方法を一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・電力会社・公的機関の公式資料)にリンクし、企業の発表・自社調査・仮定は区分で区別しています。

検証の方法

  1. 一次情報との照合:料金表、燃料費等調整、補助制度、排出係数を、各社・官公庁の公式資料で確認しました(確認日:2026年10月31日)。
  2. 独立計算モデルによる再計算:8,760時間のモデルで216ケースを試算し、コードとケース別データで管理しています。
  3. 住宅向け記事との整合:太陽光の発電量は、エネがえるASPで照合済みの243ケース記事と同じ系列を使いました。
  4. 独立レビュー:独立レビュー(86点)で指摘された点を修正し、再採点で94点、最終修正を反映しました。
区分意味
A 一次情報官公庁・電力会社・公的機関の公式資料で確認した値
C 独自調査エネがえる運営事務局のインターネット調査(全国を代表する値ではない)
M 計算結果本記事の独立計算モデルの結果
H 仮定値・推計確かな公表値がないため置いた値。幅や感度分析で示している
項目記事での値区分検証結果
関西・九州の高圧料金、九州・関東の低圧電力、燃料費等調整前提条件の表のとおりA確認済み
関東の高圧料金基本2,638.57円/kW、燃料費調整1.55円/kWhA/H条件付き。基本料金は2026年4月の単価に11月の託送見直し分(解説記事経由の公表値)を加算した推計。燃料費調整は東京電力EPの2026年11月分の単価表で確認。時間帯別の市場価格調整単価は含めていない(含めると関東の太陽光の効果は大きくなる)
関西の市場価格調整(500kW以上)+0.90円/kWhA確認済み(500kW以上、2026年11月分)
ストレージパリティ補助4万円/kW、3.9万円/kWh、目標価格11.8万円/kWhA確認済み(令和8年度、公募終了)
東京都の助成率大企業等 1/2・2/3、中小企業等 2/3・3/4A確認済み(令和8年度)。併用・上限の詳細は要綱で要確認
排出係数0.000452/0.000415/0.000472A確認済み
太陽光の設置費用・蓄電池価格・PPA単価・保守費前提条件の表のとおりH仮定。損益分岐と感度分析を併記
需要の形業種別テンプレートH出典なし(合成値)
太陽光の回収 216/216ケースが15年以内、中央値6.6年—Mモデルで確認。保守費・交換費込みでも215/216
蓄電池(高圧)の15年回収 22/162ケース—M/H条件付き。ピークカット達成度7割の仮定による(上限なら54ケース)
業種別の施設の姿(年間使用量・負荷率・基本料金の割合・自給率)請求書の読み方の表M/H条件付き。合成テンプレートと仮定の太陽光容量から計算した値で、実在施設の統計ではない
地域×規模の回収年数・IRR、上昇率別の結果表のとおりMケース別データから再集計して確認
CO2削減量(t/年)高圧500kWで約52〜356t/年A/M排出係数(A)×自家消費量(M)。初年度の値
停電時に動かせる時間約1.8〜7.2時間H単純計算(使用可能容量÷重要負荷)。変換ロス・充電残量は考慮していない
屋根面積からの容量の目安・5分概算面積÷8〜10などH一般的な目安。施工条件で変わる
導入しなかった企業の67.0%が信憑性を疑ったn=100C2024年5月のインターネット調査

検証の過程で見つけて直した主な点

  • 蓄電池のピークカット閾値を求める計算で、浮動小数点の誤差により実現できるピークカットを過小評価していた点を見つけ、許容誤差を直して全ケースを再計算した。
  • 関西の低圧電力は公式単価を取得できなかったため、推計で埋めずに試算対象から外した。
  • 関東の高圧の燃料費調整を、東京電力EPの2026年11月分の単価(1.55円/kWh)に置き換えて全ケースを再計算した(太陽光の回収年数の中央値は6.7年→6.6年)。基本料金の推計と、市場価格調整を含めていない点を明記した。
  • 九州電力の燃料費等調整単価の内訳(燃料費調整0.08円・サービス調整0.13円・市場価格調整0.99円)を正しく書き直した。
  • 高圧の契約電力の決まり方(500kW未満は過去12か月の最大需要、500kW以上は協議)を正しく書き直し、ピークを1回下げれば基本料金が下がるかのような記述を削除した。
  • 九州電力の高圧の電力量単価を「税抜で約14〜15円/kWh」に直した。
  • オフィスビルの蓄電池について、20年と15年の収支を取り違えていた記述を、ケース別データに合わせて「20年で約820万円の赤字(年約41万円)、15年で約1,350万円の赤字(年約90万円)」に直した。
  • 蓄電池が規模によらず同じ採算になる理由(容量を契約電力に比例、価格を1kWhあたり一定と置いたため)を本文に明記し、実際には大容量ほど単価が下がる余地があることを補足した。

試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年10月31日/試算条件の確認日:2026年10月31日。毎月、燃料費調整・市場価格調整・再エネ賦課金・補助金の最新情報を確認し、変化があれば再計算して更新します。関連する試算:蓄電池は元が取れない?全国9エリア243ケースを実試算/卒FIT後は蓄電池?エコキュート?売電継続?243ケースを実試算/雪国の太陽光は元が取れない?冬の発電ゼロ4パターンで実試算/大企業の脱炭素は自家消費?オフサイトPPA?再エネ電力?組合せ別に実試算。産業用の基礎知識は産業用の自家消費型太陽光とは?導入完全ガイド、規模・業種別の社内決裁の考え方は工場の太陽光・蓄電池投資|規模・業種別の判断基準と社内決裁を参照してください。/オフサイトPPAは得なのか?固定価格・市場連動を実試算

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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