業種別のエネルギー費はどこで削れる?24業種×規模別に経営課題と打ち手を整理【2026年】

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

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業種別のエネルギー費はどこで削れる?24業種×規模別に課題と打ち手を整理(エネがえる)
業種別のエネルギー費はどこで削れる?24業種×規模別に課題と打ち手を整理(エネがえる)

結論から言います。エネルギー費の削り方は、業種で決まるのではなく、「電気か熱か」「負荷が平らか尖っているか」「規模(契約の種類)」の3つで決まります。製造業のエネルギー費(燃料+電力)は出荷額の3.1%にすぎませんが、稼ぐ力である付加価値額に対しては10.9%です(2023年、経済産業省の統計からエネがえるが計算)。この記事では、公的統計で確認できる業種の数字と、エネがえるの1時間単位(8,760時間)の試算モデルを組み合わせ、24業種×3つの規模について、経営課題・エネルギー費の構造・打ち手の順番を1枚の地図(データセット)にまとめました。答えは次の3つです。

3つの答え

  1. エネルギー費は「出荷額」ではなく「付加価値」で見る。付加価値に対するエネルギー費は、鉄鋼53.8%、パルプ・紙33.1%、窯業・土石28.2%、非鉄金属18.0%、繊維15.5%です。製造業全体では2021年の7.8%から2023年の10.9%に上がりました。売上の数%に見えるコストが、利益の源泉を大きく削っています。
  2. 打ち手の順番は「運用・契約→省エネ→電化・熱転換→創エネ→蓄エネ・蓄熱→調達→モビリティ」が基本。ただし入れ替わる条件がある。熱源の更新期が来ていれば電化が先、屋根に対して需要が大きい業種(データセンター・電子部品・鉄鋼)では調達が主役、停電対策が必須の病院・介護では蓄エネが前倒しになります。
  3. 電気の対策だけで済む業種と、熱を外せない業種がある。エネルギー費のうち燃料の比率は、パルプ・紙69%、化学56%、窯業・土石56%に対し、電子部品16%、機械17%、プラスチック20%です。産業の熱需要のうち200℃未満(ヒートポンプで置き換えられる可能性がある温度帯)は27%で、それより高い温度は燃料転換と調達の論点になります。

この記事で分かること(数値の要点)

  • エネルギー費の比率が高い業種(2023年、出荷額等に対する比率):窯業・土石11.1%、鉄鋼8.5%、パルプ・紙8.5%、繊維5.8%、化学5.0%、電子部品4.5%。低い業種は輸送用機械1.0%、電気機械1.1%、生産用機械1.1%。
  • 製造業以外(分母はそれぞれ異なる):施設園芸は動力光熱費が農業経営費の28〜36%、トラック運送は燃料油脂費が営業収益の13.7%、一般病院は水道光熱費が医業・介護収益の2.1%(損益差額は▲7.3%)。
  • 規模で変わるのは「基本料金」の重み:高圧500kWでは、電気代に占める基本料金が業種により14〜32%、低圧50kWでは8〜20%でした(エネがえる試算)。負荷率が低い(昼だけ使う)業種ほど、ピークを削る価値が大きくなります。
  • 太陽光でまかなえる割合は「屋根と需要の比」で決まる:高圧500kWの試算では、物流倉庫43%、学校34%、日中稼働の工場27%に対し、ホテル4%、病院・24時間工場は8%前後でした。負荷が平らな業種は自家消費率がほぼ100%で、回収年数は6〜7年台(上昇率1%、補助なし)でした。
  • 規模による制度の境目:原油換算1,500kL以上の事業者には省エネ法で原単位の年平均1%以上の低減が求められ、直接排出10万t以上の企業は2026年度から排出量取引制度(GX-ETS)への参加が義務になります。

検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。業種の数字は、経済産業省・厚生労働省(中央社会保険医療協議会)・農林水産省の公的統計と、業界団体の公表資料から計算・引用しました。負荷形・料金構造・太陽光の効き方は、産業用の自家消費型太陽光・蓄電池を業種別×規模別に試算した記事と同じ8,760時間の計算モデルの結果です。「打ち手の適合度」は、これらの根拠から編集部が評価したもので、試算値ではありません(区分H)。

目次

  1. なぜ今、業種別にエネルギー費を見直すのか
  2. エネルギー費は経営のどこに効くか:付加価値で見る
  3. 電気か熱か:エネルギー費の中身
  4. 課題を7つに分ける(課題ツリー)
  5. 打ち手の順番と、順番が入れ替わる条件
  6. 24業種×8つの打ち手マップ
  7. 規模別:料金構造と制度で打ち手が変わる
  8. 負荷の形と太陽光・蓄電池
  9. 熱の温度帯・蓄熱・ヒートポンプ
  10. モビリティ:社用車・トラックのエネルギー費
  11. 業種グループ別の論点
  12. 避けるべき3つの罠
  13. 最初の90日でやること
  14. 業種別に提案するときの型(4つの例)
  15. 追いかけるべきKPI
  16. データセットの使い方
  17. 現場でよく出る反論と、その答え
  18. このマップの作り方
  19. よくある質問
  20. 前提条件と限界
  21. ファクトチェック・エビデンス検証一覧

なぜ今、業種別にエネルギー費を見直すのか

エネルギー費は、多くの企業で「固定費のようなもの」として扱われてきました。しかし2021年以降、この前提が崩れています。経済産業省の経済構造実態調査(従業者30人以上の事業所)によると、製造業全体の燃料使用額と電力使用額の合計は、2021年の約7.2兆円から2023年の約10.5兆円へ、2年で約46%増えました。同じ期間の製造品出荷額等の伸び(約14%)を大きく上回っています。

製造業のエネルギー費(燃料+電力)の比率の推移。付加価値額に対して2021年7.8%、2022年11.3%、2023年10.9%。出荷額等に対して2.4%、3.3%、3.1%
図1 製造業のエネルギー費の比率の推移(従業者30人以上の事業所、製造業計)

これに加えて、次の4つの変化が同時に進んでいます。

  • 単価の上昇要因が積み上がっている:再エネ賦課金は2026年度に1kWhあたり4.18円で、制度開始以来の最高水準です。燃料費等調整、容量拠出金、託送料金の見直しも電気代に影響します。
  • 規制が「規模」で効いてくる:省エネ法は原油換算1,500kL以上の事業者にエネルギー消費原単位の年平均1%以上の低減を求めています。排出量取引制度(GX-ETS)は、CO2の直接排出が10万t以上の企業に2026年度から参加を義務づけ、2028年度には化石燃料賦課金、2033年度には発電事業者向けの特定事業者負担金が予定されています。
  • 取引先からの要請:サプライチェーン全体の排出量(Scope3)の算定と削減を求める顧客が増え、エネルギー費の比率が低い機械・輸送用機械の中小企業でも、使用量と排出量の説明が必要になっています。
  • 価格転嫁の難しさ:診療報酬・介護報酬で価格が決まる病院・介護施設、運賃交渉が難しい中小の運送会社、価格競争の激しい小売では、エネルギー費の上昇を売価に乗せにくい構造があります。

つまり、同じ「電気代が上がった」でも、業種と規模によって、困り方も打ち手も違います。この記事は、その違いを1枚の地図にすることを目指しました。

エネルギー費は経営のどこに効くか:付加価値で見る

エネルギー費の重さを測るとき、よく使われるのは売上高(出荷額)に対する比率です。しかし、経営判断で大切なのは、原材料を差し引いた後の「稼ぐ力」=付加価値に対して、エネルギー費がどれだけを占めるかです。原材料費の大きい業種ほど、売上比では小さく見え、付加価値比では大きく見えます。

製造業の中分類別エネルギー費の比率。出荷額等に対して窯業・土石11.1%、鉄鋼8.5%、パルプ・紙8.5%、繊維5.8%、化学5.0%。付加価値額に対して鉄鋼53.8%、パルプ・紙33.1%、窯業・土石28.2%、非鉄金属18.0%、繊維15.5%。製造業計は出荷額比3.1%、付加価値比10.9%
図2 製造業の中分類別エネルギー費の比率(2023年、従業者30人以上の事業所)。左:出荷額等に対する比率、右:付加価値額に対する比率

鉄鋼では、出荷額に対しては8.5%ですが、付加価値に対しては53.8%に達します。エネルギー単価が1割上がると、付加価値の約5%が消える計算です。一方、輸送用機械・電気機械・生産用機械は付加価値比でも3〜4%で、エネルギー費そのものより、取引先からのCO2削減要請が投資のきっかけになりやすい業種です。

製造業以外では、業界ごとに分母が異なる統計しかありません。横並びの比較はできませんが、エネルギー費が経営のどこに効くかは読み取れます。

製造業以外のエネルギー費の比率。施設園芸(施設みかん)は動力光熱費が農業経営費の36%、施設ピーマン・ばらは28%、トラック運送は燃料油脂費が営業収益の13.7%、一般病院は水道光熱費が医業・介護収益の2.1%。病院の損益差額は▲7.3%
図3 製造業以外の業種のエネルギー費の比率(分母は業種ごとに異なる)
  • 施設園芸:暖房に使う燃油・電気などの動力光熱費が、農業経営費の28〜36%を占めます。露地栽培(1〜4%)とは桁が違い、燃油価格がそのまま経営を左右します(農林水産省)。
  • トラック運送:全日本トラック協会の調査(令和3年度決算)では、燃料油脂費は営業収益の13.7%でした(運送費全体は営業収益の86.7%)。人件費に次ぐ規模で、燃料価格の上昇は運賃に転嫁しにくい構造です(東京都トラック協会の報告書による)。
  • 病院:一般病院の水道光熱費は医業・介護収益の2.1%(前年度、1施設平均約7,700万円、前年比5.3%増)ですが、損益差額は▲7.3%(1施設平均約2.7億円の赤字)です。水道光熱費は赤字額の約3割に相当し、診療報酬で転嫁できないため、比率以上に経営の重荷になっています(中央社会保険医療協議会)。

電気か熱か:エネルギー費の中身

次に見るべきは、エネルギー費のうち「電気」と「燃料(熱)」の比率です。ここで打ち手の種類が大きく分かれます。

製造業の中分類別に見たエネルギー費のうち電力と燃料の比率。電力の比率が高いのは情報通信機械、業務用機械、電気機械、電子部品、生産用機械、はん用機械(80%超)。燃料の比率が高いのは石油・石炭製品93%、パルプ・紙69%、化学56%、窯業・土石56%
図4 エネルギー費の内訳(電力使用額と燃料使用額、2023年)

電力の比率が80%を超える業種(電子部品・機械・電気機械など)では、太陽光・デマンド管理・電力の調達がそのままエネルギー費に効きます。一方、燃料の比率が半分を超える業種(パルプ・紙・化学・窯業・土石・繊維)では、電気の対策だけを積み上げても、エネルギー費の半分以上は手つかずのままです。ボイラ・乾燥・焼成などの熱をどうするか(電化・燃料転換・排熱回収・蓄熱)が中心の論点になります。

製造業全体では、電力が約56%、燃料が約44%です。非製造業の公的統計は燃料と電力を分けていないため、本記事では負荷の特徴から定性的に整理しました。オフィスビル・データセンター・冷凍冷蔵倉庫・スーパーは電力が中心、ホテル・病院・介護施設・施設園芸は給湯・暖房の燃料の比重が大きい業種です。

課題を7つに分ける(課題ツリー)

「エネルギー費を下げたい」という相談は、そのままでは打ち手が決まりません。電気・ガス・熱・ガソリン・軽油に共通して、次の7つに分けると、どこに手を付けるべきかが見えます。

エネルギー費の課題ツリー。量(kWh・L・m³)、単価(円/kWh・円/L)、契約(kW・基本料金)、タイミング(時間帯)、調達(どこから買うか)、熱・燃料転換、移動(モビリティ)の7つ
図5 エネルギー費の課題ツリー(7つの分解)
分解何が決めるか主な打ち手よくある誤解
量設備の効率、稼働時間、生産量省エネ、運用改善、稼働の平準化「時短営業で電気代も同じ割合で減る」(冷凍冷蔵ケースなどの常時負荷は減らない)
単価燃料費等調整、市場価格、再エネ賦課金、燃料の市況契約メニューの見直し、長期固定、自家消費「新電力に切り替えれば必ず安い」(市場連動型は高騰時に逆転する)
契約(kW)1年間の最大需要(30分値)デマンド管理、蓄電池・蓄熱のピークシフト「太陽光で基本料金も下がる」(曇りの日のピークは残る)
タイミング時間帯別単価、需給ひっ迫、DR運転時間の移動、蓄熱、DR参加「夜間電力が常に安い」(料金メニューによる)
調達小売契約、PPA、証書、自家発オンサイト・オフサイトPPA、非化石証書「PPAの単価を平均単価と比べる」(PPAは基本料金を下げない)
熱・燃料転換必要な温度、蒸気か温水か、排熱の有無ヒートポンプ、排熱回収、燃料転換、蓄熱「ボイラは全部ヒートポンプにできる」(200℃超は難しい)
移動走行距離、充電の時間帯、車格EV化、充電の時間帯設計、太陽光との連携「EVは燃料代が安いから必ず得」(車両価格差と基本料金で逆転する)

打ち手の順番と、順番が入れ替わる条件

7つの分解に対応する打ち手は、「安く、確実で、後の打ち手の前提になるもの」から順に進めるのが基本です。省エネの後に太陽光の容量を決めれば過大投資を避けられ、熱源を電化した後に太陽光を決めれば、増えた電気の需要を自家消費で吸収できます。

打ち手の順番。1運用・契約、2省エネ、3電化・熱転換、4創エネ、5蓄エネ・蓄熱、6調達、7モビリティ。熱源・冷凍機の更新期、屋根が小さく需要が大きい、BCPが必須、車両の更新期・補助金の締切で順番が入れ替わる
図6 打ち手の基本の順番と、入れ替わる条件
順番打ち手なぜこの位置かエネがえるの関連試算
1運用・契約投資がほぼ不要。契約電力・料金メニュー・運転設定の見直しは、他のすべての前提になる—
2省エネ需要そのものを減らす。後の設備の容量を小さくできる—
3電化・熱転換燃料を電気に置き換えると電気の需要が増えるため、太陽光より先に決める—(ヒートポンプは定性的に整理)
4創エネ(自家消費の太陽光)負荷が平らな業種ほど全量を使える。9業種×地域・規模8通り×電気代の上昇率3水準の216ケースすべてで15年以内に回収産業用 216ケース
5蓄エネ・蓄熱太陽光の余剰とピークを使い切る段階。蓄電池は「高圧」かつ「太陽光が余る施設」で補助があれば割に合う産業用 216ケース
6調達(PPA・証書)屋根でまかなえない分を埋める。オフサイトPPAは基本料金を下げないため、今の料金が続けば「少し高い保険」オフサイトPPA、大企業の脱炭素
7モビリティ車両の更新期に合わせる。充電の時間帯を誤ると基本料金が上がる商用EV、EV vs ガソリン車

順番が入れ替わる4つの条件

  • 熱源・冷凍機の更新期が来ている:3(電化・熱転換)を先にします。冷凍冷蔵倉庫で自然冷媒の冷凍機に更新すると電気の使い方が変わるため、太陽光の容量は更新後の需要で決めるべきです。
  • 屋根に対して需要が大きい:データセンター・電子部品・鉄鋼・非鉄金属では、屋根の太陽光でまかなえる割合が小さく、6(調達)が主役になります。
  • 停電対策(BCP)が必須:病院・介護施設・避難所となる学校では、5(蓄エネ)を前倒しで検討します。ただし蓄電池は電気代の節約だけでは元が取りにくく、停電対策の価値を金額で示す必要があります。
  • 車両の更新期・補助金の締切:7(モビリティ)を前倒しします。例えば国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)は、受付終了の見込み時期が公表されています。

24業種×8つの打ち手マップ

ここまでの整理を、24業種×8つの打ち手のマップにしました。評価は、公的統計で確認したエネルギー費の構成、負荷の形、熱の温度帯、試算モデルの結果をもとに、編集部が4段階で付けたものです(区分H)。高圧・中規模の事業所を想定しています。

24業種×8つの打ち手の適合度マップ。運用・契約はほぼ全業種で優先度が高い。創エネは物流倉庫・冷凍冷蔵倉庫・スーパー・金属製品・機械・プラスチック・輸送用機械・学校・公共施設で優先度が高い。調達はパルプ・紙・化学・窯業・鉄鋼・非鉄・電子部品・輸送用機械・データセンター・オフィスで優先度が高い。蓄熱・熱の電化は食料品・飲料・繊維・冷凍冷蔵倉庫・オフィス・ホテル・病院・介護・施設園芸で優先度が高い。モビリティは物流倉庫とトラック運送で優先度が高い
図7 24業種×8つの打ち手の適合度(◎優先度が高い ○有効 △条件次第 –効きにくい、高圧・中規模)

マップから読み取れる傾向は3つです。

  1. 「運用・契約」と「省エネ」は、ほぼすべての業種で最初にやるべきことです。投資が小さく、後の設備の容量を決める前提になります。
  2. 「創エネ」が◎になるのは、屋根が広く日中に電気を使う業種(物流倉庫、冷凍冷蔵倉庫、スーパー、金属製品・機械・プラスチック・輸送用機械の工場、学校・公共施設)です。
  3. 「蓄熱・熱の電化」が◎になるのは、200℃未満の熱が多い業種(食品・飲料、繊維、冷凍冷蔵、オフィスの空調、ホテル・病院・介護の給湯、施設園芸の暖房)です。

業種別の早見表(経営課題・エネルギー費の構造・最初の一手・落とし穴)

業種主な経営課題エネルギー費の比率エネルギー費の構造優先度が高い打ち手(◎)落とし穴
食料品
製造業
原材料高・人手不足・品質/衛生要求。価格転嫁が遅れやすい出荷額比2.9%
付加価値比9.0%(A)
燃料42%・電力58%(2023、A)。殺菌・洗浄の蒸気と冷凍冷蔵の電力が二本柱
熱:60〜120℃(殺菌・洗浄・乾燥)+冷却(0℃以下〜10℃)
運用・契約・省エネ・蓄熱・熱の電化冷却と加熱を別々に最適化して熱回収の機会を逃す。冷凍機更新と太陽光を別々に設計
飲料・飼料
製造業
原料・容器高、夏季需要の季節変動出荷額比2.0%
付加価値比7.4%(A)
燃料49%・電力51%(2023、A)
熱:60〜140℃(殺菌・洗浄・CIP)、冷却
運用・契約・蓄熱・熱の電化夏ピーク月の契約電力で年間の基本料金が決まる
繊維
製造業
海外品との価格競争、設備の老朽化出荷額比5.8%
付加価値比15.5%(A)
燃料51%・電力49%。出荷額比5.8%と高い(2023、A)
熱:80〜130℃(染色・乾燥・仕上げ)
運用・契約・省エネ・蓄熱・熱の電化熱の比率が高いのに電気の対策(太陽光)だけで終わる
パルプ・紙
製造業
需要減と燃料高。付加価値の33%がエネルギー費(2023、A)出荷額比8.5%
付加価値比33.1%(A)
燃料69%・電力31%。出荷額比8.5%(2023、A)
熱:120〜180℃(抄紙機の乾燥蒸気)
運用・契約・省エネ・調達自家発・コージェネの燃料転換を後回しにして電力側だけ調達
化学
製造業
原燃料高、GX-ETS対象、製品のCO2要求出荷額比5.0%
付加価値比13.8%(A)
燃料56%・電力44%。出荷額比5.0%(2023、A)
熱:100〜250℃の蒸気+高温反応(200℃超)
運用・契約・省エネ・調達200℃超の工程にヒートポンプを当てはめる。蒸気の需要温度でなく供給温度で判断する
プラスチック製品
製造業
原料樹脂高、取引先からのCO2算定要請出荷額比3.8%
付加価値比10.8%(A)
電力80%・燃料20%(2023、A)。出荷額比3.8%
熱:150〜300℃(成形の電熱ヒーター)、金型冷却
運用・契約・省エネ・創エネ電力比率が高く太陽光の効果が大きいのに、デマンド管理なしで導入し基本料金が下がらない
窯業・土石
製造業
需要減・燃料高。付加価値の28%がエネルギー費(2023、A)出荷額比11.1%
付加価値比28.2%(A)
燃料56%・電力44%。出荷額比11.1%で中分類で最も高い(2023、A)
熱:1,000℃超(焼成・溶融)
運用・契約・調達・資金1,000℃超の熱は電化・ヒートポンプでは置き換えにくい。燃料転換と調達の検討が中心
鉄鋼
製造業
GX-ETS対象、付加価値の54%がエネルギー費(2023、A)出荷額比8.5%
付加価値比53.8%(A)
燃料43%・電力57%。出荷額比8.5%(2023、A)
熱:1,000℃超(製鋼・圧延加熱)
運用・契約・調達・資金電炉は電力単価と調達条件の影響が極めて大きい。屋根太陽光だけでは比率が小さい
非鉄金属
製造業
地金価格の変動、電力多消費出荷額比3.4%
付加価値比18.0%(A)
電力70%・燃料30%(2023、A)。出荷額比3.4%
熱:600〜1,200℃(溶解・熱処理)
運用・契約・調達・資金電力多消費なのに市場連動の契約のまま価格変動を受ける
金属製品
製造業
中小比率が高く価格転嫁が難しい出荷額比2.6%
付加価値比7.5%(A)
電力72%・燃料28%(2023、A)。出荷額比2.6%
熱:80〜200℃(塗装乾燥)、400〜1,000℃(熱処理)
運用・契約・省エネ・創エネコンプレッサの漏れ・圧力過剰を放置したまま設備投資
機械(はん用・生産用・業務用)
製造業
受注変動、人手不足出荷額比1.2%
付加価値比3.6%(A)
電力82〜87%(2023、A)。出荷額比1.1〜1.5%
熱:80〜200℃(塗装乾燥)、空調
運用・契約・創エネエネルギー費比率が低く後回しにされるが、取引先のScope3要請で算定と削減計画を求められる
電子部品・デバイス
製造業
顧客(グローバル)のRE100要請、設備投資の大きさ出荷額比4.5%
付加価値比11.6%(A)
電力84%・燃料16%(2023、A)。出荷額比4.5%
熱:常温〜低温(空調・純水・排気)
運用・契約・省エネ・調達屋根面積に対して需要が大きく、自家消費だけでは再エネ比率が上がらない
輸送用機械
製造業
サプライチェーンでのCO2削減要請、EVシフト出荷額比1.0%
付加価値比3.9%(A)
電力77%・燃料23%(2023、A)。出荷額比1.0%
熱:80〜200℃(塗装乾燥)、鋳造
運用・契約・省エネ・創エネ塗装工程の熱を見ずに電気の再エネ化だけで計画する
物流倉庫(常温)
物流
荷主の物流コスト圧力、2024年問題、自動化投資—電力が中心(照明・空調・マテハン)。売上高比率の公的統計は未取得
熱:常温(空調)
創エネ・モビリティ広い屋根で太陽光が需要を上回り、余剰の扱い(売電・蓄電・自己託送)を決めずに設計
冷凍冷蔵倉庫
物流
電気代の比率が高い、冷媒規制(フロン)—電力が大半(冷凍機)。売上高比率の公的統計は未取得
熱:−25℃以下〜10℃(冷凍・冷蔵)
運用・契約・省エネ・創エネ冷凍機更新(自然冷媒)を後にして太陽光を先に入れ、容量が合わなくなる
トラック運送
運輸
人手不足・2024年問題、燃料高、運賃転嫁営業収益の13.7%(B)燃料油脂費が営業収益の13.7%(全ト協調査、令和3年度決算、B)
熱:—
モビリティEVの車両価格だけで判断し、充電と基本料金・稼働パターンを見ない
スーパー・食品小売
小売
人件費・電気代上昇、薄利(価格競争)—電力が中心(冷凍冷蔵ショーケース・空調・照明)。売上高比率の公的統計は未取得
熱:冷凍冷蔵(−20〜10℃)、空調
運用・契約・省エネ・創エネ営業時間短縮で電気代も減ると考える(ショーケースの常時負荷は減らない)
オフィスビル
業務
テナント満足、ZEB化、賃料と光熱費の按分—電力が中心(空調・照明・OA)。売上高比率の公的統計は未取得
熱:冷暖房(7〜45℃)
運用・契約・省エネ・蓄熱・熱の電化空調熱源の更新に蓄熱を検討せず、ピーク基準で大きな熱源を入れる
ホテル・旅館
宿泊
人手不足、インバウンド変動、給湯・空調の光熱費—電力+燃料(給湯・厨房・温浴)。売上高比率の公的統計は未取得
熱:給湯60〜80℃、温浴、冷暖房
運用・契約・省エネ・蓄熱・熱の電化給湯(燃料)の比率が高いのに電気側だけを対策
病院
医療福祉
損益差額が赤字(一般病院▲7.3%)、診療報酬で価格転嫁できない収益の2.1%(A)水道光熱費が医業・介護収益の2.1%(一般病院、前年度、A)
熱:給湯・蒸気(滅菌)・冷暖房
運用・契約・省エネ・蓄エネBCP(停電対策)の価値を金額化せず、電気代削減だけで投資判断
介護施設
医療福祉
介護報酬で価格転嫁できない、人手不足—光熱水費は居住費(基準費用額)の算定要素。特養 多床室の光熱水費の実績は利用者1人あたり月12,120円(令和7年度介護事業経営概況調査・令和6年度収支、A)。収入に対する比率の公的統計は未取得
熱:給湯60℃前後、入浴、冷暖房
運用・契約・省エネ・蓄熱・熱の電化給湯の燃料転換(ヒートポンプ)と太陽光を別々に検討
学校・公共施設
公共
予算の単年度主義、避難所機能、地域脱炭素—電力が中心(空調・照明)。自治体の光熱費は予算・決算で確認
熱:冷暖房
創エネ・蓄エネ・資金休日・長期休みの余剰を見ずに容量を決める
データセンター
情報通信
電力確保(系統接続)・電力単価、顧客の再エネ要求—電力がほぼすべて(IT機器+冷却)。売上高比率の公的統計は未取得
熱:冷却(空調・液冷)、排熱は30〜40℃程度
運用・契約・省エネ・調達屋根太陽光では需要のごく一部しか賄えない。調達(PPA)と冷却効率(PUE)が主戦場
施設園芸
農業
燃油高、施設の老朽化、気候変動農業経営費の28〜36%(A)動力光熱費が農業経営費の28〜36%(施設ピーマン28%・施設みかん36%・ばら28%、A)
熱:暖房(10〜20℃程度の室温維持)
省エネ・蓄熱・熱の電化・資金A重油価格だけ見てヒートポンプの電気代(基本料金・季節)を見ない

比率の出典:製造業は経済産業省「2024年経済構造実態調査」第2表(従業者30人以上、2023年)からエネがえるが計算。トラックは東京都トラック協会「経営分析報告書」が引用する全日本トラック協会の調査、病院は中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査」、施設園芸は農林水産省「施設園芸をめぐる情勢」(営農類型別経営統計 R5・R6)、介護は厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」参考資料。比率の欄が「—」の業種は、公的な比率を確認できなかったため、検針票・決算書の実績で確認してください。

規模別:料金構造と制度で打ち手が変わる

同じ業種でも、規模によって電気の契約の種類が変わり、効く打ち手が変わります。特に大きいのは、電気代のうち「基本料金(kW)」が占める比率です。基本料金は、1年間で最も大きかった30分間の需要(デマンド)で決まるため、比率が高い業種ほど、ピークを削る打ち手(デマンド管理・蓄電池・蓄熱)の価値が大きくなります。

年間電気料金に占める基本料金の比率。高圧500kWでは学校32%、日中稼働の工場28%、オフィスビル27%、物流倉庫22%、病院・介護17%、ホテル17%、スーパー16%、冷凍冷蔵倉庫16%、24時間稼働の工場14%。低圧50kWでは8〜20%
図8 電気代に占める基本料金の比率(エネがえる試算、高圧は関東・関西・九州、低圧は関東・九州の平均)

高圧500kWの試算では、学校(32%)、日中稼働の工場(28%)、オフィスビル(27%)のように、昼だけ使う業種ほど基本料金の比率が高く、24時間稼働の工場(14%)や冷凍冷蔵倉庫(16%)のように一日中使う業種ほど低くなりました。低圧50kWでは、どの業種も8〜20%にとどまります。

規模電気の契約と料金構造効きやすい打ち手制度・判断の軸
小規模
低圧(〜50kW)/従業者〜29人程度
従量中心(低圧電力・従量電灯)。基本料金は電気代の8〜20%(試算)契約メニュー・運用の見直し、設備更新時の高効率化、補助金を使った小型の太陽光省エネ法の対象外が多い。取引先からのCO2算定要請への対応
中規模
高圧(50〜2,000kW)
基本料金は電気代の14〜32%(試算)。1年間の最大30分需要が契約電力を決めるデマンド管理、自家消費の太陽光、熱源更新時の電化・蓄熱、条件が合えば蓄電池原油換算1,500kL以上なら省エネ法の特定事業者(原単位の年平均1%以上の低減)
大規模
特別高圧(2,000kW〜)・多拠点
単価交渉・市場連動・長期契約が中心(料金構造は本記事の試算対象外)調達(オフサイトPPA・証書)、燃料転換、拠点横断のエネルギー管理直接排出10万t以上はGX-ETSに参加義務(2026年度〜)。開示・Scope3対応

規模の境目は、制度の上でも意味を持ちます。原油換算1,500kL以上を使う事業者は省エネ法の特定事業者として、エネルギー消費原単位を中長期的に年平均1%以上低減するよう求められます。CO2の直接排出が10万t以上の企業は、2026年度からGX-ETSへの参加が義務になります。大規模になるほど「いくら安くなるか」に加えて「排出量をどう説明するか」が判断の軸に加わるため、調達(PPA・証書)と燃料転換の比重が上がります。特別高圧の料金構造は本記事の試算モデルの対象外で、表では高圧1,500kWの試算値を代わりに示しています。

負荷の形と太陽光・蓄電池

太陽光の効き方は、「負荷の形」と「屋根と需要の比」の2つで決まります。負荷率(年間の平均需要÷最大需要)が高い、つまり一日中平らに電気を使う業種ほど、太陽光の電気を余さず使えます。ただし、需要全体の何割をまかなえるかは、屋根の広さと需要の大きさの比で決まります。

負荷率と太陽光でまかなえる割合の関係(高圧500kW)。物流倉庫は負荷率42%で43%をまかない自家消費率86%、学校は負荷率26%で34%・自家消費率73%、日中稼働の工場は27%・82%。冷凍冷蔵倉庫16%、スーパー11%、オフィス10%、病院・介護8%、24時間工場8%、ホテル4%で自家消費率はほぼ100%
図9 負荷率と、太陽光でまかなえる割合(高圧500kW、エネがえる試算)
  • 負荷が平らな業種(24時間稼働の工場・冷凍冷蔵倉庫・病院・スーパー・ホテル)は、太陽光の自家消費率がほぼ100%で、回収年数は6〜7年台でした(上昇率1%、補助なし)。ただし屋根に対して需要が大きいため、まかなえるのは需要の4〜16%です。
  • 日中だけ使う業種(学校・日中稼働の工場・物流倉庫)は、まかなえる割合が27〜43%と大きい一方、休日に電気が余り、自家消費率が73〜86%に下がります。余剰を蓄電池・自己託送・売電でどう活かすかが次の論点です。
  • 蓄電池は、高圧かつ太陽光が余る施設で補助があれば割に合う一方、高圧の162ケースのうち、上乗せ分が15年以内に回収できたのは22ケース(補助なし)でした(産業用の試算記事)。

負荷の形は、業種名だけでは決まりません。同じ食品工場でも、24時間稼働と日中稼働では結論が変わります。エネがえるでは、業種・規模・稼働カレンダーから30分値の需要を作る業種別・規模別ロードカーブテンプレートを用意しています。

熱の温度帯・蓄熱・ヒートポンプ

熱の打ち手は、必要な温度で決まります。電力中央研究所の整理(資源エネルギー庁の調査を基に作成)によると、産業部門の熱需要のうち200℃未満は27%(100℃未満が8%、100〜200℃が19%)です。この温度帯は、ヒートポンプで置き換えられる可能性があります。ただし同じ資料は、蒸気で熱を送っている場合、実際の工程が100℃未満でも、統計上は100℃以上に数えられている可能性があると注意しています。ボイラの供給温度ではなく、工程が本当に必要とする温度を測ると、電化の余地は統計より大きくなる可能性があります。

熱の温度帯と技術の対応。冷凍・冷蔵は冷凍機の高効率化と蓄冷、空調・給湯(60℃まで)はヒートポンプと蓄熱槽、温水・洗浄・殺菌(60〜100℃)は高温ヒートポンプ、蒸気・乾燥(100〜200℃)は蒸気発生ヒートポンプと排熱回収、200℃超は燃料転換・電気炉・調達。冷却と加熱が両方ある工場は冷温同時取出ヒートポンプ
図10 熱の温度帯と打ち手(評価はエネがえる編集部)
  • 100℃未満:高温型ヒートポンプの開発により、100℃未満の温水需要は十分に置き換えられるようになったとされています(省エネルギーセンター JASE-W技術集、ヒートポンプ・蓄熱センター)。食品・飲料の洗浄・殺菌、繊維の染色、病院・ホテルの給湯が該当します。
  • 冷却と加熱が両方ある工場:冷温同時取出ヒートポンプは、冷熱と温熱を同時に作るため効率が高く、製麺工場ではエネルギー消費量35%削減、CO2排出量31%削減の事例が紹介されています(同技術集)。食品工場で特に検討する価値があります。
  • 100〜200℃:蒸気発生ヒートポンプや排熱回収が候補ですが、温度と排熱の条件しだいです。
  • 200℃超:焼成・溶解・製鋼などは、ヒートポンプでの置き換えが難しく、燃料転換、電気炉、再エネ電力の調達が論点になります。

蓄熱:熱を「ためて」電気のピークと単価をずらす

蓄熱は、熱を作るタイミングと使うタイミングをずらす仕組みです。ヒートポンプ・蓄熱センターは、夏の空調であれば熱の負荷が少ない夜間に冷熱を作って蓄熱槽にため、昼に取り出して使う例を挙げ、ヒートポンプの容量を小さくできること、最も効率の良い負荷率で運転できること、電力需要のピーク抑制や再生可能エネルギーの有効活用にも役立つことを説明しています。

エネルギー費の観点では、蓄熱は電気の蓄電池と同じ役割(ピークを削る・安い時間に作る・太陽光の余剰を使う)を、熱の形で担うものです。基本料金の比率が高く空調・給湯の負荷が大きいオフィスビル・病院・ホテル、冷凍冷蔵倉庫(蓄冷)、施設園芸で検討する価値があります。昼に太陽光が余る施設では、余剰電力でお湯や冷熱を作ってためる「昼にずらす」使い方も考えられます。本記事では蓄熱の経済性を試算していないため、定性的な整理にとどめています(区分H)。

モビリティ:社用車・トラックのエネルギー費

トラック運送・物流・配送を持つ業種では、ガソリン・軽油もエネルギー費の大きな部分です。エネがえるの商用EVの試算では、結論が車格と走行距離で大きく分かれました。

条件(関東・夜間充電・補助あり)8年保有の正味(エンジン車との差)読み方
事業用の軽バン・年2.5万km約136万円の得(回収約1.3年)よく走る軽バンは補助があれば短期間で元が取れる
自家用の軽バン・年1.5万km約18万円の得(回収約6.6年)走行距離が少ないと得は小さい
事業用の2t級トラック・年2万km約145万円の損(回収約14.9年)補助を使っても8年では回収できない
事業用の2t級トラック・年3万km・太陽光で昼に6割充電約9万円の損(回収約8.2年)走行距離と太陽光の組み合わせで損益ゼロに近づく

ここで見落とされやすいのが電気の基本料金です。帰庫直後に一斉に充電すると最大需要が上がり、同じ試算では1台あたり年約14.7万円の基本料金の増加が生じる例がありました。モビリティの打ち手は、車両の選択だけでなく、充電の時間帯と施設全体のデマンドを一緒に設計する必要があります。これは物流倉庫やスーパーのように、施設の電気と車両の充電が同じ契約にぶら下がる業種で特に重要です。

営業車・社用車(乗用車)については、EVとガソリン車の車種別TCOの試算で、夜間に普通充電でき国の補助が間に合えば、軽EVは年およそ0.7万km以上でガソリンの軽自動車より安くなる一方、公共の急速充電だけに頼る使い方では、軽・コンパクトのEVは10年保有ですべてのケースで割高になりました。事業所の敷地で充電できるかどうかが、損得を分ける最大の条件です。

業種グループ別の論点

24業種は、エネルギー費の構造が似ている6つのグループにまとめると、論点が整理しやすくなります。

素材型の製造業(パルプ・紙、化学、窯業・土石、鉄鋼、非鉄金属)

付加価値に対するエネルギー費が14〜54%と大きく、エネルギー価格がそのまま収益を動かす業種です。燃料の比率が30〜69%と高く、200℃を超える高温の工程が多いため、屋根の太陽光で減らせるのはエネルギー費のごく一部です。論点は、①蒸気・乾燥など200℃未満の工程の切り分けと電化、②自家発電・コージェネの燃料転換、③電力の長期調達(オフサイトPPA・長期固定契約)、④GX-ETSへの対応です。直接排出10万t以上の企業は2026年度から排出量取引への参加が義務になり、エネルギー費とCO2のコストを一体で管理する必要があります。

加工組立型の製造業(金属製品、機械、電子部品、輸送用機械、プラスチック製品)

電力の比率が72〜87%と高く、太陽光・デマンド管理・電力の調達がそのまま効く業種です。エネルギー費の比率は出荷額の1〜5%と小さいため後回しにされがちですが、取引先(完成品メーカー)からのCO2削減要請が強く、「エネルギー費の削減」より「排出量の説明」が投資のきっかけになることが多い業種です。コンプレッサの漏れ・圧力過剰、塗装乾燥炉の熱、クリーンルームの空調が、運用・省エネの代表的な対象です。電子部品は24時間稼働で需要が大きく、屋根の太陽光では再エネ比率が上がりにくいため、調達の比重が大きくなります。

食品・軽工業(食料品、飲料・飼料、繊維)

燃料と電力がほぼ半々で、殺菌・洗浄・染色・乾燥など100℃前後の熱と、冷凍冷蔵の電力が同じ工場に共存しています。冷却と加熱が両方ある工場では、冷温同時取出ヒートポンプで熱を回収する余地が大きく、熱の電化が最も効きやすいグループです。一方、原材料高と人手不足で投資余力が限られ、価格転嫁も遅れやすいため、補助金とリース・ESCOなどの資金面の工夫が重要です。

物流・運輸(物流倉庫、冷凍冷蔵倉庫、トラック運送)

物流倉庫は屋根が広く、日中の需要に対して太陽光の発電が大きくなりやすいため、余剰の扱い(蓄電池・自己託送・売電)とフォークリフト・配送車両の充電を一緒に設計するのが論点です。冷凍冷蔵倉庫は冷凍機の電力が大半で、負荷が一日中平らなため太陽光の自家消費率はほぼ100%です。冷媒規制(フロン)に合わせた自然冷媒の冷凍機への更新と、太陽光の容量設計の順番に注意が必要です。トラック運送は燃料油脂費が営業収益の1割を超え、EV化は車格と走行距離で損得が分かれます。

商業・業務・宿泊(スーパー、オフィスビル、ホテル・旅館)

スーパーは冷凍冷蔵ショーケースの常時負荷があり、営業時間を短くしても電気代は同じ割合では減りません。オフィスビルは昼だけ使う負荷のため基本料金の比率が高く(試算で27%)、空調熱源の更新に合わせた蓄熱・デマンド管理が効きます。テナントビルでは光熱費の按分と、オーナーとテナントのどちらが投資し誰が得をするかの整理が先に必要です。ホテル・旅館は給湯・温浴・厨房の燃料の比重が大きく、電気側だけの対策では効果が限られます。

医療福祉・公共(病院、介護施設、学校・公共施設)

診療報酬・介護報酬・予算で収入が決まり、エネルギー費の上昇を価格に転嫁できないグループです。病院は24時間の空調・給湯・滅菌の熱が大きく、停電が許されないため、BCPの価値をどう金額で評価するかが投資判断の分かれ目になります。学校・公共施設は昼だけ使う負荷で、休日・長期休みに太陽光が余るため、蓄電池・地域内での融通・避難所機能と一体で考えます。自治体の施設の財源(起債・交付金・PPA)の比較は自治体の公共施設の試算をご覧ください。

その他(データセンター、施設園芸)

データセンターは電力がほぼすべてで、負荷率が非常に高い一方、屋根の太陽光で賄える割合はごく小さいため、冷却の効率(PUE)と電力の調達が主戦場です。電力の確保(系統への接続)そのものが立地の制約になりやすく、エネルギー費の議論は「いくらで買うか」と同時に「どこで、どれだけ確保できるか」の議論になります。冷却で出る30〜40℃程度の排熱は、近隣の施設園芸や温水需要に使える可能性があります。施設園芸は冬の夜間の暖房が中心で、動力光熱費が経営費の3割前後を占めます。重油暖房からヒートポンプへの切り替えでは、燃油価格だけでなく、電気の基本料金と季節ごとの単価を合わせて比べる必要があります。暖房のピークは冬の夜間に集中するため、重油暖房機とヒートポンプを併用し、外気温が低い時間だけ重油を使う「ハイブリッド運転」で、電気の契約容量を抑える工夫も選択肢になります。

避けるべき3つの罠

  • 業種名だけで結論を出す:同じ「食品工場」でも、24時間稼働か日中稼働か、蒸気か温水かで打ち手は変わります。このマップは仮説を作る道具で、結論は事業所の30分値の需要と契約で確かめる必要があります。
  • 電気の対策だけで終わる:燃料の比率が半分を超える業種では、太陽光をいくら載せてもエネルギー費の半分以上は残ります。熱の温度帯の棚卸しを先にするべきです。
  • 順番を逆にする:太陽光を入れた後に熱源を電化すると容量が足りなくなり、省エネの前に設備を入れると過大投資になります。更新期が近い設備の計画を、エネルギーの計画と一緒に並べてください。

最初の90日でやること:集めるデータと判断の順番

マップで仮説を作ったら、次は事業所のデータで確かめます。最初の90日は、投資の検討より先に、次のデータをそろえることをおすすめします。データがそろえば、課題ツリーの7つのどこが大きいかを数字で示せます。

時期集めるデータ分かること課題ツリーとの対応
1〜30日電気の検針票・請求書12か月分(契約電力・使用量・基本料金・燃料費等調整)、ガス・重油・LPGの購入実績、ガソリン・軽油の給油実績エネルギー費の総額と内訳(電気・燃料・移動)、基本料金の比率、単価の推移量・単価・契約
1〜30日決算書(売上高・原材料費・付加価値の概算)付加価値に対するエネルギー費の比率。業種平均(図2)との比較経営への影響
31〜60日30分ごとの電力使用量(電力会社のWebサービス・スマートメーター)、稼働カレンダー負荷率、ピークの時刻と原因、休日の需要、太陽光の自家消費率の見込み契約・タイミング・創エネ
31〜60日設備台帳(ボイラ・冷凍機・空調・コンプレッサの容量と更新時期)、熱の工程の温度電化できる熱の量、更新期に合わせた順番熱・燃料転換
61〜90日屋根・駐車場の面積と構造、車両台帳(車格・走行距離・更新時期)、取引先からの要請内容太陽光の容量の上限、EV化の候補、調達で埋める量創エネ・移動・調達

30分値の需要データがない場合でも、月別の使用量と稼働カレンダーから、業種別のロードカーブを当てはめて試算を始められます。最初から精密さを求めるより、「どの打ち手から検討するか」の順番を決められる精度を最初の目標にすると、検討が止まりません。

決裁者に伝える一文(業種グループ別の例)

業種グループ決裁者が気にすること伝える一文の例
素材型の製造業収益の変動、GX-ETSのコスト「エネルギー費は付加価値の3割前後を占めます。単価の変動と炭素のコストを長期契約と燃料転換で固定し、収益のぶれを小さくします」
加工組立型の製造業取引先の要請、設備投資の回収「取引先から求められる排出量の削減を、回収年数6〜7年台の自家消費の太陽光とデマンド管理で、コスト削減と同時に進めます」
食品・軽工業原材料高、投資余力「捨てている熱と冷熱をヒートポンプで回収し、燃料費を減らします。補助金とリースで初期負担を抑えます」
物流・運輸運賃転嫁、荷主の要請「屋根の太陽光で倉庫と車両の電気をまかない、荷主に示せるCO2削減と燃料費の削減を同時に作ります」
医療福祉・公共赤字・予算、停電「水道光熱費は赤字額の約3割に相当します。空調・給湯の効率化と太陽光で固定的な支出を減らし、停電時の電源も確保します」

一文の中の数値は本記事の統計・試算による目安です。実際の提案では、その事業所のデータで計算した値に置き換えてください。

業種別に提案するときの型(4つの例)

業種別の提案や社内の検討は、次の4段で組み立てると、聞き手(経営・財務・現場)が同じ順番で理解できます。

  1. 業種の経営課題:価格転嫁のしにくさ、人手不足、取引先の要請など、エネルギー以外の経営課題から始める
  2. エネルギー費の構造:付加価値に対する比率、電気と燃料の比率、基本料金の比率、負荷の形
  3. 打ち手の順番:課題ツリーのどこが効くか、順番が入れ替わる条件はあるか
  4. 試算の位置づけ:どの打ち手を試算で確かめたか、どこから先が定性的な判断か

例1:食品工場(高圧・2交代〜24時間)

  • 経営課題:原材料高と人手不足、価格転嫁の遅れ。取引先(小売)からのCO2算定要請。
  • エネルギー費の構造:出荷額の2.9%、付加価値の9.0%。燃料42%・電力58%。殺菌・洗浄の蒸気(60〜120℃)と冷凍冷蔵の電力が二本柱。
  • 打ち手の順番:①冷凍機・コンプレッサの運用改善とデマンド管理 → ②冷温同時取出ヒートポンプによる熱回収(冷却と加熱を同時に) → ③電化後の需要で太陽光の容量を決める → ④余剰があれば蓄熱・蓄電池。
  • 試算の位置づけ:太陽光・蓄電池は24時間稼働・日中稼働の工場の試算で回収年数を確認できる。ヒートポンプの効果は工程の温度と排熱の実測が必要。

例2:病院(高圧・24時間)

  • 経営課題:一般病院の損益差額は▲7.3%で、診療報酬のため価格転嫁ができない。停電が許されない。
  • エネルギー費の構造:水道光熱費は医業・介護収益の2.1%で、赤字額の約3割に相当。空調・給湯・蒸気(滅菌)の比重が大きく、基本料金の比率は17%(試算)。
  • 打ち手の順番:①空調・給湯の運用改善 → ②熱源更新時にヒートポンプ+蓄熱 → ③太陽光(自家消費率はほぼ100%) → ④BCPの価値を金額化したうえで蓄電池。
  • 試算の位置づけ:太陽光は病院・介護施設の試算で回収年数6〜7年台(高圧、上昇率1%)。蓄電池は電気代の節約だけでは回収が難しく、停電対策の価値をどう評価するかが判断の分かれ目。

例3:地場の運送会社(低圧〜高圧の車庫・トラック10台)

  • 経営課題:ドライバー不足、燃料高、運賃交渉の難しさ。荷主からのCO2削減要請。
  • エネルギー費の構造:燃料油脂費は営業収益の13.7%(全日本トラック協会の調査)。車庫・事務所の電気は小さい。
  • 打ち手の順番:①エコドライブ・積載率・ルートの改善(量) → ②軽バン・小型車から順にEV化(モビリティ) → ③車庫の屋根に太陽光を載せ、昼に充電する運行を組む → ④充電の時間帯をずらして基本料金を抑える。
  • 試算の位置づけ:商用EVの試算では、2t級トラックは補助を使っても8年では回収できず、走行距離と太陽光の組み合わせが条件。軽バンは補助があれば短期間で回収できる。

例4:スーパー・食品小売(低圧〜高圧・営業時間+夜間ショーケース)

  • 経営課題:人件費と電気代の上昇、価格競争による薄利。営業時間の短縮も検討されている。
  • エネルギー費の構造:冷凍冷蔵ショーケース・空調・照明・厨房の電力が中心。負荷率は約63%で一日中平らに近く、基本料金の比率は高圧500kWで16%、低圧50kWで9%(試算)。
  • 打ち手の順番:①ショーケースの夜間カバー・温度設定・霜取りの運用改善 → ②冷凍機・空調・照明の高効率化(自然冷媒への更新を含む) → ③屋根の太陽光(自家消費率はほぼ100%) → ④店舗の駐車場でEV充電を提供する場合は、充電の時間帯と基本料金を一体で設計。
  • 試算の位置づけ:太陽光はスーパーの試算で回収年数6〜7年台。営業時間の短縮は、常時負荷が残るため使用量の減り方が小さい点に注意(時短営業で減る電気代・減らない電気代)。

追いかけるべきKPI

打ち手を進めるときは、次の4つのKPIを、同じ定義で毎年追いかけることをおすすめします。

KPI計算式何が分かるか注意点
エネルギー消費原単位エネルギー使用量(原油換算kL)÷生産量・延床面積など省エネの進み具合。省エネ法の年平均1%低減の判定に使う分母(生産量など)の定義を毎年そろえる
付加価値エネルギー費比率(電気代+燃料代)÷付加価値額エネルギー費が稼ぐ力をどれだけ削っているか売上高比率と併記する。業種平均は本記事の図2
Scope1・Scope2排出量燃料の使用量×排出係数(Scope1)、電気の使用量×排出係数(Scope2)取引先・GX-ETS・開示への説明電気は市場基準(契約メニューの係数)とロケーション基準を区別する
負荷率(デマンド率)年間使用量÷(最大需要×8,760時間)ピークの尖り具合。基本料金を削る余地負荷率が低いほど、デマンド管理・蓄電池・蓄熱の価値が大きい

データセットの使い方

本記事の地図は、24業種×3つの規模=72行のデータセットとして整備しています。各行には、経営課題、エネルギー費の構成と根拠、公的統計の比率(区分つき)、負荷の形、熱の温度帯、主要設備、8つの打ち手の適合度(0〜3)、落とし穴、関連する試算記事、試算モデルの値(負荷率・自家消費率・基本料金の比率・平均単価・太陽光の回収年数)を収めています。

  • 営業・提案:初回の打ち合わせ前に、顧客の業種の行を見て「最初の一手」と「落とし穴」を確認する。
  • 社内の検討:多拠点の企業で、拠点ごとに業種・規模を当てはめ、優先順位の仮説を作る。
  • 自治体:地域の産業構成に当てはめ、どの業種向けの支援(熱の電化・太陽光・EV)が効くかを検討する。

データセット(CSV、UTF-8)はこちらからダウンロードできます。数字は公的統計の更新や試算モデルの見直しに合わせて改訂します。

エネがえるでできること

このマップは「どこから手を付けるか」の仮説を作るためのものです。実際の投資判断には、その事業所の30分値の需要、契約、屋根、稼働カレンダーでの試算が必要です。産業用・業務用の自家消費型太陽光・蓄電池はエネがえるBizで、30分値がない場合も業種別のロードカーブテンプレートから試算できます。社用車・トラックのEV化はエネがえるEV・V2Hや商用EVの試算、オフサイトPPAはエネがえるコーポレートPPAで比べられます。システムに組み込みたい場合はエネがえるAPI、条件の整理から試算までを任せたい場合は試算代行(BPO)もご利用いただけます。シリーズ全体はエネがえる試算ライブラリにまとめています。

現場でよく出る反論と、その答え

よくある反論答え方根拠
「うちはエネルギー費が売上の2〜3%しかない。優先度は低い」付加価値に対しては製造業平均で10.9%です。営業利益率が数%の企業なら、エネルギー費の1割削減は利益を大きく押し上げます経済産業省の統計(図2)
「電気代は下がる見込みだから、待った方がいい」再エネ賦課金・容量拠出金・託送料金など、燃料価格と無関係に積み上がる要素があります。待つ場合も、運用・契約の見直しと省エネは投資がほぼ不要で、すぐに始められます課題ツリー(図5)
「太陽光を載せれば基本料金も下がる」曇りや雨の日のピークは残るため、太陽光だけでは基本料金はほとんど下がりません。ピークを削るにはデマンド管理・蓄電池・蓄熱が必要です基本料金の比率(図8)、産業用の試算
「うちの業種は熱が多いから、再エネは関係ない」200℃未満の熱は電化の射程です。工程の必要温度を測ると、ボイラの供給温度より低いことがあります。電化した後なら太陽光の電気の使い道も増えます熱の温度帯(図10)
「PPAなら初期費用ゼロで得をする」オフサイトPPAは基本料金を下げず、今の料金が続けば割高になることがあります。比べる相手は平均単価ではなく、PPAが届く時間帯の電力量料金ですオフサイトPPAの試算
「EVは燃料代が安いから、トラックも全部EVに」2t級トラックは補助を使っても8年では回収できませんでした。走行距離の長い軽バンから順に、充電の時間帯を設計して進めるのが現実的です商用EVの試算

このマップの作り方

マップは、次の手順で作りました。どの数字が統計で、どの数字が試算で、どこが編集部の評価かを、データセットの各列に区分(A・B・M・H)として残しています。

  1. 業種の選定:エネルギー費の構造が異なる代表として、製造業13(中分類ベース)と非製造業11の計24業種を選びました。製造業は、公的統計で燃料と電力の内訳を確認できる中分類から、エネルギー費の比率が高い素材型と、事業所数の多い加工組立型の両方を含めています。
  2. 公的統計からの計算:経済産業省の統計表から、中分類ごとに燃料使用額・電力使用額・製造品出荷額等・付加価値額を読み取り、比率を計算しました。非製造業は、業界ごとの公的統計・業界団体の調査で確認できた比率を、分母を明記して引用しました。
  3. 試算モデルの値の付与:9業種の需要テンプレートを持つ8,760時間モデルの結果から、負荷率・太陽光の自家消費率・基本料金の比率・平均単価・回収年数を、似た負荷形の業種に対応づけました。対応づけは「食料品→24時間稼働の工場」のように近似であり、データセットの列に対応先を記載しています。
  4. 打ち手の評価:電気と燃料の比率、負荷の形、熱の温度帯、屋根と需要の比、制度上の位置づけをもとに、8つの打ち手の適合度を4段階で評価し、規模による補正を加えました。

用語の整理

用語意味
付加価値額生産額から原材料・燃料・電力などの外部から購入した費用を差し引いた額。企業が自ら生み出した価値で、人件費・利益・減価償却の源泉
基本料金(kW)契約電力に応じて毎月かかる料金。高圧では、過去1年間で最も大きかった30分間の平均需要(デマンド)が契約電力を決めるのが一般的
負荷率年間の平均需要÷最大需要。高いほど一日中平らに使い、低いほど特定の時間に集中して使う
自家消費率・自給率自家消費率は太陽光の発電量のうち施設で使った割合、自給率は施設の需要のうち太陽光でまかなった割合
蓄熱・蓄冷温熱・冷熱を水や氷などにためておき、別の時間に使う仕組み。電気の需要のピークと熱の需要のピークをずらせる
オフサイトPPA離れた場所の発電所の電気を、送配電網を通じて長期の固定単価などで購入する契約。施設の基本料金は下がらない
GX-ETS日本の排出量取引制度。CO2の直接排出量が10万t以上の企業に、2026年度から参加が義務づけられる

よくある質問

エネルギー費の比率が高いのはどの業種ですか?

経済産業省の経済構造実態調査(2023年、従業者30人以上)から計算すると、出荷額等に対する比率は窯業・土石11.1%、鉄鋼8.5%、パルプ・紙8.5%、繊維5.8%、化学5.0%が上位です。付加価値額に対する比率では、鉄鋼53.8%、パルプ・紙33.1%、窯業・土石28.2%、非鉄金属18.0%となります。製造業以外では、施設園芸の動力光熱費が農業経営費の28〜36%、トラック運送の燃料油脂費が営業収益の13.7%と高い水準です。

売上高エネルギー費比率は何%なら高いと言えますか?

一律の基準はありません。原材料費の大きい業種は売上比が小さく見えるため、付加価値に対する比率で、同じ業種の平均と比べるのがおすすめです。製造業全体では付加価値の10.9%(2023年)で、この記事の図2で中分類ごとの水準を確認できます。自社の比率が業種平均より高ければ、運用・省エネの余地が大きい可能性があります。

中小企業(低圧)は何から始めればよいですか?

まず契約と運用の見直しです。低圧では基本料金の比率が8〜20%(試算)と小さく、使用量(kWh)と単価が中心になります。契約メニュー、空調・照明・コンプレッサの運用、冷凍冷蔵機器の設定を見直したうえで、補助金を使える場合に小型の自家消費型太陽光を検討します。省エネ法の特定事業者(原油換算1,500kL以上)に当たらない事業者が多いですが、取引先からCO2の算定を求められる場面は増えています。

自家消費型の太陽光は、どの業種でも元が取れますか?

エネがえるの試算(低圧・高圧の9業種×地域・規模8通り×電気代の上昇率3水準=216ケース)では、すべてのケースで15年以内に回収でき、中央値は6.6年でした。ただし「需要の何割をまかなえるか」は業種で大きく違い、高圧500kWでは物流倉庫43%に対しホテル4%でした。屋根に対して需要が大きい業種では、調達(PPA・証書)と組み合わせる必要があります。

蓄熱とは何ですか?どの業種に向いていますか?

熱を作るタイミングと使うタイミングをずらす仕組みです。夜間や太陽光が余る昼に冷熱・温熱を作って蓄熱槽にため、需要が多い時間に使います。ヒートポンプの容量を小さくでき、効率の良い運転とピーク抑制に役立ちます(ヒートポンプ・蓄熱センター)。空調・給湯の負荷が大きく基本料金の比率が高いオフィスビル・病院・ホテル、冷凍冷蔵倉庫(蓄冷)、施設園芸で検討する価値があります。

ボイラをヒートポンプに置き換えられますか?

必要な温度しだいです。産業部門の熱需要のうち200℃未満は27%で、100℃未満の温水需要は高温型ヒートポンプで十分に置き換えられるとされています。蒸気で送っている工程は、実際に必要な温度が100℃未満の場合もあるため、ボイラの供給温度ではなく工程の必要温度を確認してください。200℃を超える焼成・溶解などは、燃料転換や電気炉、再エネ電力の調達が中心の論点になります。

社用車やトラックのEV化は、いつ検討すべきですか?

車両の更新期と補助金の締切に合わせるのが基本です。エネがえるの試算では、年2.5万km走る事業用の軽バンは補助があれば8年で約136万円の得、2t級トラックは補助を使っても8年では回収できませんでした。帰庫直後に一斉に充電すると基本料金が上がるため、充電の時間帯と施設全体のデマンドを一緒に設計してください。

このマップの評価(◎○△)はどこまで信頼できますか?

打ち手の適合度は、公的統計で確認したエネルギー費の構成、負荷の形、熱の温度帯、試算モデルの結果をもとに編集部が付けた評価で、個別の事業所の試算結果ではありません(区分H)。同じ業種でも稼働パターン・設備・地域・契約で結論は変わります。投資判断の前には、その事業所の30分値の需要と契約で試算することをおすすめします。

前提条件と限界

項目設定・扱い根拠・区分
製造業のエネルギー費燃料使用額+電力使用額。比率の分母は製造品出荷額等、付加価値額。従業者30人以上の事業所、2023年実績(2024年調査)。中分類の「機械」ははん用・生産用・業務用の3分類を合算経済産業省「2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査」第2表(A)
非製造業の比率業界ごとの統計の比率をそのまま引用。分母が異なるため横並びの比較はしない中医協・農林水産省(A)、全日本トラック協会の調査(B)
負荷形・基本料金の比率・太陽光9業種の合成需要テンプレート(1時間値)、低圧50kW・高圧500kW・高圧1,500kW、関東・関西・九州(低圧は関東・九州)、2026年11月の料金・燃料費等調整、再エネ賦課金4.18円/kWh、税抜。図9の回収年数は電気代の上昇率1%・補助なしの中央値エネがえる 8,760時間モデル(M)。需要は実測ではない
規模の区分小規模=低圧(〜50kW)、中規模=高圧(50〜2,000kW)、大規模=特別高圧(2,000kW〜)・多拠点契約区分による整理(H)。特別高圧の料金は試算対象外
打ち手の適合度0〜3の4段階。規模による補正(小規模は蓄エネ・熱・調達を1段階下げ、大規模は創エネを1段階下げ調達を1段階上げる)編集部の評価(H)
熱の温度帯業種ごとの代表的な工程の温度の目安一般的な目安(H)。工程ごとに実測が必要
商用EVの数値関東・夜間充電・補助あり・8年保有の正味(名目)エネがえる 商用EV TCO試算(M)

この記事の限界

  • 非製造業(物流倉庫・冷凍冷蔵倉庫・スーパー・オフィス・ホテル・介護施設・学校・データセンター)は、売上高に対するエネルギー費の比率を公的統計で確認できませんでした。比率の欄は「—」とし、検針票・決算書での確認をおすすめしています。
  • 製造業の小規模事業所(従業者1〜29人)は、統計上、燃料と電力の内訳が公表されていないため、比率は従業者30人以上の事業所のみで計算しています。
  • 経済産業省の価格交渉促進月間のフォローアップ調査(エネルギー費の価格転嫁率)は、作成環境から公表資料に接続できなかったため使用していません。
  • 蓄熱・ヒートポンプ・燃料転換の経済性は試算していません。熱の打ち手は定性的な整理です。
  • 非製造業の燃料と電力の内訳、熱の温度帯は、業種の一般的な特徴による整理で、個別の事業所では異なります。

ファクトチェック・エビデンス検証一覧

この記事の主な数値と主張を、どの方法で検証し、どの根拠に基づいているかを一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・公的機関の公式資料)にリンクしています。業界団体などの資料は区分Bで区別しています。

検証の方法(4段階)

  1. 一次情報との照合:製造業の比率は、経済産業省が公表した統計表(Excel)から、燃料使用額・電力使用額・製造品出荷額等・付加価値額を直接読み取り、計算しました(確認日:2026年11月1日)。病院・施設園芸の比率は、公表資料(PDF)の表から読み取りました。
  2. 試算モデルによる計算:負荷率・基本料金の比率・自家消費率・回収年数は、公開済みの産業用試算と同じ8,760時間モデルのケース別データから集計しました。
  3. 評価の明示:打ち手の適合度と熱の温度帯の目安は、編集部の評価(H)として、試算値・統計値と区別しています。
  4. 独立レビュー:独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。

根拠の確かさの区分

区分意味
A 一次情報官公庁・公的機関の公式資料で確認した値、またはその統計表から計算した値
B 業界団体・企業の公表業界団体・研究機関・企業の公表資料による値
C 自社調査エネがえる運営事務局調べ(本記事では使用していません)
M モデルエネがえるの試算モデルによる計算値
H 仮定・評価編集部の仮定または評価

数値と出典

項目値区分検証結果出典
製造業のエネルギー費の比率(2023年)出荷額等の3.1%、付加価値額の10.9%。燃料約44%・電力約56%A確認済み(統計表から計算)経済産業省 2024年経済構造実態調査(e-Stat)
製造業の推移付加価値比 7.8%(2021)→11.3%(2022)→10.9%(2023)。燃料+電力 約7.2兆円→約10.5兆円A確認済み(同上)同上
中分類別の比率窯業・土石11.1%、鉄鋼8.5%(付加価値比53.8%)、パルプ・紙8.5%(33.1%)ほかA確認済み(同上)同上
一般病院の水道光熱費医業・介護収益の2.1%(前年度、1施設平均7,727万円、前年比5.3%増)、損益差額▲7.3%A確認済み中医協 第25回医療経済実態調査
施設園芸の動力光熱費農業経営費の28〜36%(施設ピーマン28%、施設みかん36%、ばら28%)、露地1〜4%A確認済み農林水産省
トラック運送の燃料油脂費営業収益の13.7%(全日本トラック協会の調査、令和3年度決算)B確認済み。最新年度の値ではない東京都トラック協会
介護施設の光熱水費居住費(基準費用額)の算定要素。特養 多床室の光熱水費の実績は月12,120円(利用者1人あたり、令和6年度収支)A確認済み。収入に対する比率は未確認厚生労働省
産業の熱需要の温度帯200℃未満が27%(100℃未満8%、100〜200℃19%)B確認済み(資源エネルギー庁の調査を基にした研究機関の整理)電力中央研究所(東京大学ESIシンポジウム資料)
高温型ヒートポンプ・冷温同時取出100℃未満の温水需要は代替可能。製麺工場でエネルギー35%・CO2 31%削減の事例B確認済み省エネルギーセンター JASE-W F-08
蓄熱の効果熱の生産と消費をずらし、容量縮小・効率運転・ピーク抑制・再エネ活用に寄与B確認済みヒートポンプ・蓄熱センター
省エネ法原油換算1,500kL以上の事業者に原単位の年平均1%以上の低減A確認済み中小企業基盤整備機構 J-Net21
GX-ETS直接排出10万t以上の企業に2026年度から参加義務、2028年度 化石燃料賦課金、2033年度 特定事業者負担金A確認済み環境省
再エネ賦課金(2026年度)4.18円/kWhA確認済み(経済産業省 2026年3月19日公表)経済産業省

結果と主張の検証

主張区分検証方法結果
基本料金の比率は高圧500kWで14〜32%、低圧50kWで8〜20%M8,760時間モデルのケース別データ(3エリア平均)確認済み(需要は合成テンプレート)
太陽光でまかなえる割合は物流倉庫43%〜ホテル4%(高圧500kW)M同上確認済み(太陽光の容量は屋根面積の想定による)
太陽光は216ケースすべてで15年以内に回収、中央値6.6年M公開済みの産業用試算確認済み(保守費・交換費を除く)
病院の水道光熱費は赤字額の約3割A(計算)7,727万円÷2億6,724万円確認済み(一般病院全体の平均)
商用EV:事業用軽バン 8年で約136万円の得、2t級トラック 約145万円の損M公開済みの商用EV試算確認済み(関東・夜間充電・補助あり)
打ち手の順番と24業種×8打ち手の適合度H統計・試算・技術資料をもとにした編集部の評価評価。個別事業所では変わる

この一覧は、統計の更新に合わせて見直します。誤りに気づいた場合は、エネがえるまでお知らせください。関連する記事:産業用の自家消費型太陽光・蓄電池/大企業の脱炭素/オフサイトPPA/商用EV/自治体の公共施設の太陽光/省エネの科学と数理モデル(業種業態・規模別)/冷凍冷蔵倉庫の電気代を下げる方法/省エネ法の屋根設置太陽光報告とデータセンター

24時間稼働の工場に絞った試算:24時間稼働の工場に太陽光・蓄電池・ヒートポンプは割に合う?6業種324ケースを実試算

スーパーに絞った試算:スーパーの太陽光は元が取れない?冷凍冷蔵×店舗規模×地域の288ケースを実試算

分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年11月1日/統計・料金の確認日:2026年11月1日。統計の更新や電気料金・制度の変化に合わせて改訂します。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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