オフサイトPPAは得なのか?業種別×規模別に固定価格・市場連動を実試算【2026年】

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

オフサイトPPAは得なのか?固定価格・市場連動・バーチャルを54案件で実試算(エネがえる)
オフサイトPPAは得なのか?固定価格・市場連動・バーチャルを54案件で実試算(エネがえる)

結論から言います。オフサイトPPA(離れた場所の発電所と電気を長期契約するコーポレートPPA)は、「安く電気を買う手段」ではなく、電気代の振れを抑えながらCO2を減らす長期契約です。今の電気料金と市場価格が続くなら、固定価格型は何もしない場合より少し高くつきます。ただし電気代が上がり続ける未来や炭素価格が入る未来では得になり、PPAでまかなう分(年間使用量の30%)の20年の支払総額の振れ幅は、およそ13分の1になります。9業種×高圧2規模×3エリアの54案件について、5つの契約形態と3つの価格シナリオ、2,000本の価格パスで試算しました。

3つの答え

  1. 条件がそろえば得になる。鍵は「電気代の上昇」と「炭素価格」。固定価格型のフィジカルPPA(21.5円/kWh・20年、年間使用量の30%)は、通常料金が年3%上がり2022年度並みの市場高騰が3年続く高騰シナリオでは54案件中38案件、2033年度から炭素価格(1トン1万円、仮定)が電気代に乗るシナリオでは34案件で、何もしない場合より得になりました。
  2. 今の料金が続く基準シナリオでは、固定価格型は「少し高い保険」。通常料金の上昇率2%・市場価格11.08円が続く場合、固定価格型が得になる案件は54案件中0で、負担増は中央値で年166万円です。その代わり、2,000本の価格パスで見た、PPA対象量(年間使用量の30%)の20年の支払総額の振れ幅(P10〜P90)は、何もしない場合の約8%に縮みます(施設全体の電気代の振れ幅ではありません)。市場連動型は基準シナリオで54案件中38案件が得ですが、振れ幅は何もしない場合の約6割残ります。
  3. 選ばれる理由はコストより「価格の安定」と「新しい再エネ」。固定価格型は、価格パスの悪い側(P90)で54案件中38案件が何もしない場合より安く済みます。また、新しく建てる発電所と最初の買い手として長期契約するPPAは、RE100の技術基準で運転開始15年以内という条件の例外として扱われます(RE100 Technical Criteria)。

この記事で分かること(数値の要点)

  • 比べる相手は「平均単価」ではなく「避けられる電力量料金」。オフサイトPPAでは基本料金(kW)は下がりません。避けられるのは、太陽光が発電する時間帯の電力量料金+燃料費等調整で、中央値は約17.3円/kWh(税抜)です。基本料金込みの平均単価(約21.8円)と比べると、PPAが実際より得に見えます。
  • 損益分岐の固定PPA単価は中央値19.4円(基準シナリオ)。実勢の目安20〜23円(自然エネルギー財団の推計)を下回ります。炭素価格が入ると約22.1円に上がります。エリア別では関西20.5円、関東20.0円、九州18.4円です。
  • バーチャルPPAは、通常の電気契約のままでは振れを消せない。精算額は市場価格に連動しますが、通常料金は市場価格を一部しか反映しないため、20年の振れ幅はほとんど縮みません(何もしない場合の約100%)。
  • 学校・オフィス・日中稼働の工場は「休日の余剰」に注意。年間使用量の30%をPPAでまかなうと、PPAの電気の約16〜19%が自社で使い切れず、市場価格で売ることになります。スーパーや病院は1%前後です。
  • 契約が短いほど割高。発電事業者の採算から求めると、10年契約は約22.5円、15年契約は約21.8円になり、CO2 1トンを減らす費用は20年契約の約2.2倍・1.5倍です。
  • 発電事業者のIRRは、20年・発電分14.5円で約8%(設置費11.5万円/kWの場合。12.9万円/kWなら約6.7%)。市場で売るだけなら約2.7%(同1.7%)で、PPAは発電事業者にとっても新設を進める仕組みです。

検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。需要は産業用記事と同じ8,760時間(1年の全時刻)の独立計算モデルで再現し、PPAの電気の流れも1時間ごとに計算しました。金額は法人の比較のためすべて税抜です。JEPXの価格は日本卸電力取引所の事業報告書の年度平均を使いました。試算条件・計算方法・出典はすべて本文末尾に公開しています。脱炭素の打ち手全体の比較は大企業の脱炭素は自家消費?オフサイトPPA?再エネ電力?で扱っています。本記事はその中のオフサイトPPAについて、契約の設計とリスクを深く掘り下げます。

なぜ今、オフサイトPPAを計算し直す必要があるのか

オフサイトPPAの損得は、この数年で前提が大きく変わりました。主な変化は次の5つです。

  • 市場価格の振れが大きくなった。JEPXのスポット市場の年度平均は、2019年度の7.93円/kWhから2022年度には20.38円に上がり、2023年度は10.74円、2024年度は12.31円、2025年度は11.08円でした(JEPX 2022年度事業報告書、2025年度事業報告書)。2021年1月の高騰を含む2020年度も11.20円でした(2020年度事業報告書)。
  • 発電側課金が2024年度に始まった。送配電網の費用の一部を発電事業者も負担します。九州電力送配電の例では発電側の平均単価は0.43円/kWh(税抜、2024〜2027年度)です(九州電力送配電)。PPA単価への上乗せの有無は契約によります。
  • 容量拠出金が2024年度に始まった。小売電気事業者が負担します(電力広域的運営推進機関(OCCTO)容量拠出金説明会資料)。電気料金に反映するかどうかは事業者の方針によります(自然エネルギー財団「コーポレートPPA 日本の最新動向 2026年版」)。
  • 太陽光のFIT/FIP価格が下がった。50kW以上の太陽光は2025年度から9円/kWh以下になり、発電事業者がFITより高い単価のPPAを選ぶ理由が強まっています(同上)。
  • RE100の技術基準が厳しくなった。運転開始(またはリパワリング)から15年以内の設備による電力・証書が原則になりました。自家発電や、新設設備と最初の買い手として結ぶ長期のPPAなどは例外で、15年を超える設備も総電力消費量の15%までは認められます(RE100 Technical Criteria)。

数字で見る:何もしないことの振れ

本記事の2,000本の価格パスで、PPAの対象量(年間使用量の30%)にかかる20年の電気代を計算すると、何もしない場合の支払総額はP10の3.56億円からP90の4.58億円まで、約1億円の幅がありました(54案件それぞれの中央値)。「何もしない」も、20年間の価格の振れを丸ごと受け止める選択だという点を、比較の出発点にしてください。

つまり、「平均の単価で見て安いか」だけでは判断できなくなりました。どの費用が避けられ、どの費用が残り、振れがどれだけ小さくなるかを、契約の形ごとに確かめる必要があります。JEPXの仕組みそのものは日本卸電力取引所(JEPX)とは?で解説しています。

検証の方法:54案件×5つの契約形態×3シナリオと、2,000本の価格パス

需要家の業種・規模・エリアと、PPAの契約の形を組み合わせて試算しました。

軸内容
業種(9)工場(24時間稼働)、工場(日中稼働)、物流倉庫(常温)、冷凍冷蔵倉庫、スーパー・食品小売、オフィスビル、病院・介護施設、学校、ホテル
規模(2)高圧500kW、高圧1,500kW(契約電力)
エリア(3)関東(東京電力EP 高圧)、関西(関西電力 高圧)、九州(九州電力 業務用・産業用)。2026年11月以降の単価・12月分の燃料費等調整
契約形態(5)①固定価格型フィジカルPPA、②市場連動型フィジカルPPA、③バーチャルPPA(固定価格の差額精算)、④再エネメニュー(FIT非化石証書型)、⑤再エネメニュー(追加性のある証書型)
対象量年間使用量の30%(感度分析で10〜60%)
契約年数20年(固定価格型は10年・15年も比較)
価格シナリオ(3)低迷(通常料金の上昇率1%・市場価格9円)、基準(2%・11.08円)、高騰(3%・2022年度並みの20.38円が3年続き、3年で平常へ)
確率的な試算過去8年度(2018〜2025年度)の年度平均の変化率を再標本化した2,000本の市場価格パス×通常料金の上昇率(平均2%・標準偏差1%)

案件の数は54(9業種×2規模×3エリア)、決定的な試算は54案件×契約形態×シナリオで1,134通り、確率的な試算は54案件×3つのPPA形態×2,000本です。「何件中何件」と書くときは、どの範囲の数かを毎回明記します。

用語の整理

用語意味
オフサイトPPA需要家の敷地の外にある発電所と、電気や環境価値を長期で買う契約。敷地内に置くのはオンサイトPPA
フィジカルPPA発電所の電気そのものを、小売電気事業者を通じて送配電網で届けてもらう契約
バーチャルPPA電気は今の電力会社から買い続け、発電所とは「固定価格と市場価格の差」だけを精算し、環境価値(証書)を受け取る契約。日本では環境価値は非FIT非化石証書(再エネ指定)として発電事業者から相対で取得する
固定価格型・市場連動型PPAの単価が契約期間中一定か、市場価格に応じて変わるか
余剰PPAの電気がその時間の使用量を上回り、自社で使えない分
インバランス電気の計画と実績のずれ。ずれた分の費用が発生する
市場基準のScope2購入した電気のCO2排出量を、契約した電気(PPAや証書)の排出係数で計算する方法
P10・P50・P902,000本の価格パスの結果を小さい順に並べたときの10%・50%・90%の位置。P90は「悪い側」の目安

計算は1時間ごとです。PPAの発電所は需要家と同じエリアの太陽光とし、発電の形は欧州委員会のPVGISの気象データから作りました。PPAの電気のうち、その時間に自社で使える分(使用量を上回らない分)は通常料金を避け、上回る分は余剰として市場価格で売ると仮定しました。需要の形は業種別の合成テンプレートで、実測値ではありません。

何にお金を払うのか:「避けられる電力量料金」と「市場価格の振れ」

オフサイトPPAの損得は、払う単価と避けられる単価の差で決まります。ここで多くの比較が見落とすのが、基本料金はPPAでは下がらないという点です。PPAの電気も送配電網を通って届くため、契約電力(kW)で決まる基本料金や容量拠出金は、PPAを結んでも同じようにかかります。再エネ賦課金も、PPAの電気と通常の電気の両方にかかるため差し引きゼロです(同上、自然エネルギー財団)。

1kWhあたりの単価の比較。固定価格型PPAは20〜23円、市場連動型は17.1〜21.4円、避けられる電力量料金は15.9〜17.7円(中央17.3円)、基本料金込みの平均単価は20.1〜22.0円、太陽光時間帯の市場価格は7.6〜11.9円
図1 1kWhあたりの単価の比較(税抜・再エネ賦課金を除く)

図1のとおり、固定価格型のPPA単価(20〜23円)は、基本料金込みの平均単価(約21.8円)とほぼ同じです。これだけを見ると「同じ値段で再エネが買える」ように見えます。しかし実際に避けられるのは約17.3円なので、1kWhあたり約4円の差が負担として残ります。本記事はこの「避けられる電力量料金」を基準に比べ、平均単価との比較は「上限(基本料金も下がる契約の場合)」として参考に示します。

PPA単価に何が含まれ、何が含まれないか

見積もりのPPA単価を比べるときは、内訳を必ずそろえてください。本記事の前提は次のとおりです。

費用固定価格型のPPA単価(21.5円)何もしない場合(通常料金)本記事での扱い
発電の費用含む(13〜16円、中央14.5円)電力量料金・燃料費等調整に含まれる差が損得になる
小売の費用(需給管理・インバランスを含む)含む(3円)含まれる同上
託送料(送配電網の使用料)含む(4円)基本料金と電力量料金に含まれる電力量料金の部分だけが避けられる
基本料金(kW)—かかるPPAを結んでも同じ。避けられない
再エネ賦課金別にかかるかかる両方に同じ単価でかかるため相殺
発電側課金含まない(推計の前提)—上乗せされる場合は感度分析(+0.43円)
容量拠出金含まない(推計の前提)料金への反映は事業者の方針による契約電力に応じて同じようにかかると仮定。別に上乗せされる場合は感度分析(+0.5円)
消費税別別すべて税抜で比較
JEPXスポット市場の年度平均は2018年度9.76円、2019年度7.93円、2020年度11.20円、2021年度13.45円、2022年度20.38円、2023年度10.74円、2024年度12.31円、2025年度11.08円。2,000本の価格パスのうち19%で20年のどこかで年平均20円を超える
図2 JEPXスポット市場の年度平均(左)と、試算に使った2,000本の価格パス(右)

もう一つの要素が市場価格の振れです。図2の右は、過去8年度の変化率を組み合わせて作った20年分の価格パスです。20年平均の中央値は11.6円ですが、2,000本のうち約19%で、20年のどこかで年平均が20円を超えます。固定価格型はこの振れを発電事業者に移し、市場連動型とバーチャルPPAは需要家が振れを受け持ちます。

関東のオフィスビル(高圧1,500kW)の5月の1週間。休日の昼はPPAの電気が使用量を上回り余剰になる。年間ではPPAの電気の17%が余剰
図3 1週間の使用量とPPAの電気(関東・オフィスビル・高圧1,500kW、年間使用量の30%)

図3は、休日の多い週のオフィスビルの例です。平日は昼の使用量が大きく、PPAの電気はすべて自社で使えます。休日は使用量が小さいため、PPAの電気が余ります。余剰はPPAの単価で買い、太陽光の時間帯の市場価格(年平均の85%と仮定)で売ることになるので、1kWhあたり約12円の損になります。

結果①:基準シナリオで得になるのは市場連動型だけ。固定価格型は年166万円の負担増

契約形態別の何もしない場合との差(基準シナリオ、54案件)。固定価格型は中央値年166万円の負担増で得は0/54、市場連動型は年52万円の得で38/54、バーチャルPPAは年488万円の負担増、FIT非化石証書型メニューは年58万円、追加性のある証書型は年288万円
図4 契約形態別の、何もしない場合との差(基準シナリオ・54案件・契約20年・年間使用量の30%)
契約形態年あたりの差(中央値)範囲得になる案件CO2 1トンあたりの費用(中央値)
固定価格型フィジカルPPA(21.5円)+166万円+12万〜+878万円0/54+0.51万円
市場連動型フィジカルPPA−52万円−600万〜+200万円38/54−0.15万円
バーチャルPPA(固定価格14.5円)+488万円+165万〜+1,441万円0/54+1.12万円
再エネメニュー(FIT非化石証書型)+58万円+19万〜+170万円0/54+0.13万円
再エネメニュー(追加性のある証書型)+288万円+97万〜+851万円0/54+0.66万円

基準シナリオ(通常料金の上昇率2%・市場価格11.08円で一定)、契約20年、年間使用量の30%分。差は20年合計を20で割った値(名目・税抜)。+は何もしない場合より負担増。

基準シナリオでは、市場連動型だけが多くの案件で得になりました。これは、市場連動型の単価(太陽光の時間帯の市場価格+託送・小売7円+環境価値2.5円)が、今の市場価格では約18.9円と、固定価格型の21.5円より安いためです。ただし、その差は「市場価格が今の水準にとどまる」ことを前提にしたものです。市場連動型の期待コストが固定価格型と同じになるのは、環境価値のプレミアムが約5円のときで、2.5円という仮定(自然エネルギー財団が示す1〜4円の中央)次第で結論が変わります。

シナリオ別の年あたりの差

契約形態低迷(上昇率1%・市場9円)基準(2%・11.08円)高騰(3%・20.38円が3年)
固定価格型フィジカルPPA+494万円(0/54)+166万円(0/54)−59万円(38/54)
市場連動型フィジカルPPA+19万円(24/54)−52万円(38/54)−148万円(48/54)
バーチャルPPA+658万円(0/54)+488万円(0/54)+338万円(0/54)
再エネメニュー(FIT非化石証書型)+58万円(シナリオによらず一定)
再エネメニュー(追加性のある証書型)+288万円(シナリオによらず一定)

何もしない場合との差の中央値(年あたり、20年平均)。かっこ内は何もしない場合より得になる案件数(54案件中)。

バーチャルPPAの負担が大きいのは、固定価格14.5円と太陽光の時間帯の市場価格(約9.4円)の差を毎年精算するためです。自然エネルギー財団は市場価格12円を想定して環境価値分を1〜4円としていますが、本試算は太陽光の時間帯の価格が年平均より安い(85%)と仮定したため、差が約5円になりました。この仮定は感度分析で75〜95%の幅を確かめています。

市場連動型を選ぶときの注意

  • 期待値の安さは「市場価格が今の水準」が前提。2,000本の価格パスでは、市場連動型が何もしない場合より得になったのは約56%で、残りの約44%では負担が増えました。
  • 単価の上限を決めておく。市場価格に上限(キャップ)を設ける、一定量だけ固定価格にするなど、振れを一部抑える契約も検討できます。
  • 環境価値の上乗せ分を確認する。本試算の2.5円が5円に近づくと、固定価格型との期待コストの差はなくなります。
  • 予算の立て方を変える。年ごとの電気代が大きく変わるため、P90の年の電気代も予算に織り込んでおく必要があります。

結果②:固定価格型の負担は「エリア」と「休日の余剰」で決まる

固定価格型PPAの1kWhあたりの負担(基準シナリオ)。関西は0.16〜2.30円、関東は0.71〜2.86円、九州は2.30〜4.24円。スーパー・病院が小さく、学校・オフィス・日中稼働の工場が大きい
図5 固定価格型PPAの1kWhあたりの負担(業種×エリア、基準シナリオ、20年平均)
エリア避けられる電力量料金(中央値)固定価格型の負担(1kWhあたり、中央値)市場連動型の差(年あたり、中央値)
関西約17.7円+1.00円−183万円(得)
関東約17.3円+1.52円−138万円(得)
九州約15.5〜15.9円+3.09円+50万円(負担増)

基準シナリオ・契約20年・年間使用量の30%。1kWhあたりの負担は、20年の差額をPPAの電気の量(劣化を含む)で割った値。

差を生む要因は2つです。1つ目はエリアの電力量料金です。九州は電力量料金が安く、避けられる額が小さいので、同じPPA単価でも負担が大きくなります。自然エネルギー財団も、電気料金の単価が高いエリアほどPPAを結びやすいと指摘しています。2つ目は業種の使い方です。休日に使用量が下がる学校・オフィス・日中稼働の工場は余剰が多く、24時間・365日に近い使い方のスーパー・病院・冷凍冷蔵倉庫は余剰がほとんど出ません。1kWhあたりで見ると、高圧500kWと1,500kWは同じ値になりました(同じ料金表・同じ使い方の形のため)。

業種別の読み解き

業種余剰の割合固定価格型の負担(1kWhあたり)市場連動型の差(1kWhあたり)損益分岐の固定単価
スーパー・食品小売0.6%+0.71円−1.87円20.8円
病院・介護施設1.1%+0.74円−1.85円20.8円
冷凍冷蔵倉庫2.1%+0.90円−1.68円20.6円
工場(24時間稼働)3.7%+1.06円−1.52円20.4円
物流倉庫(常温)7.7%+1.52円−1.06円20.0円
ホテル9.7%+1.72円−0.86円19.8円
工場(日中稼働)16.1%+2.54円−0.04円19.0円
オフィスビル16.7%+2.62円+0.04円18.9円
学校18.7%+2.86円+0.28円18.6円

基準シナリオ・契約20年・年間使用量の30%。各業種6案件(2規模×3エリア)の中央値。1kWhあたりはPPAの電気の量(劣化を含む)で割った値。

表のとおり、余剰が少ない業種ほど損益分岐の単価が高く、PPAを結びやすくなります。スーパー・病院・冷凍冷蔵倉庫・24時間稼働の工場は、休日も昼の使用量が大きく、PPAの電気をほぼ使い切れます。日中稼働の工場・オフィス・学校は、休日や長期休暇の余剰が1kWhあたり約2円の差を生みます。同じ会社でも、どの拠点にPPAの電気を届けるかで損得が変わるため、複数の拠点がある企業は、余剰の少ない拠点から割り当てるのが基本です。

4つのケーススタディ

ケース年間使用量/PPA量余剰の割合固定価格型の差(年、基準)市場連動型の差(年、基準)損益分岐の固定単価(基準)固定価格型が得になる価格パス
関西・スーパー・高圧1,500kW824万kWh/247万kWh0.6%+37万円−572万円21.3円約52%
関東・冷凍冷蔵倉庫・高圧1,500kW874万kWh/262万kWh2.6%+226万円−420万円20.6円約39%
九州・工場(24時間稼働)・高圧500kW330万kWh/99万kWh3.7%+293万円+48万円18.4円約7%
関東・学校・高圧500kW113万kWh/34万kWh19.6%+93万円+9万円18.6円約8%

契約20年・年間使用量の30%。差は何もしない場合との差の年あたり(20年平均)。得になる価格パスの割合は2,000本のうち固定価格型の20年合計が何もしない場合を下回る割合。

  • 関西のスーパー:余剰がほとんどなく、電力量料金も高めのため、固定価格型でもほぼ損益ゼロ(年+37万円)。2,000本の価格パスの約半分で得になり、悪い側(P90)では20年で約1.4億円安く済みます。固定価格型の「保険」の効果が最も分かりやすいケースです。
  • 関東の冷凍冷蔵倉庫:24時間の冷却で昼も夜も使用量が大きく、余剰は2.6%。高騰シナリオでは年466万円の得になります。
  • 九州の24時間稼働の工場:余剰は少ないものの、九州の電力量料金が安いため、固定価格型の負担が大きく(年+293万円)、市場連動型でも得になりません。PPA単価が18円台前半まで下がらないと割に合わない計算です。
  • 関東の学校:夏休み・土日の余剰が約2割あり、量を増やすほど不利です。対象量を絞るか、複数の施設を束ねて余剰を減らす設計が向いています。

結果③:損益分岐の固定PPA単価は中央値19.4円。実勢の20〜23円を下回る

損益分岐の固定PPA単価。低迷16.9円、基準19.4円、高騰22.1円(中央値)。炭素価格1万円/tを加えると19.6円、22.1円、24.7円
図6 需要家が払える固定PPA単価の上限(20年の支払総額が何もしない場合と同じになる単価)
シナリオ損益分岐の単価(中央値)範囲(54案件)炭素価格1万円/t(2033年度〜)を加えた場合
低迷(上昇率1%・市場9円)16.9円14.9〜18.7円19.6円
基準(2%・11.08円)19.4円17.3〜21.3円22.1円
高騰(3%・20.38円が3年)22.1円19.7〜24.2円24.7円

基準シナリオの損益分岐は、関西20.5円、関東20.0円、九州18.4円(中央値)です。実勢の目安20〜23円(発電13〜16円+小売3円+託送4円、自然エネルギー財団の推計)と比べると、今の料金が続くなら、実勢の下限に近い単価でないと得になりにくいことが分かります。逆に、炭素価格が入る、または電気代が年3%上がる未来を想定するなら、22円前後までは支払える計算です。PPA単価の交渉では、この「自社の損益分岐」を先に持っておくことが重要です。

単価交渉の考え方

損益分岐の単価は、交渉の「上限」を決める材料になります。基準シナリオの中央値19.4円に対して、実勢の目安は20〜23円です。差を埋める方法は、単価そのものを下げる以外にもあります。

  • 余剰の少ない拠点に届ける:余剰が0.6%のスーパーと18.7%の学校では、損益分岐が約2.2円違います(20.8円と18.6円)。
  • 対象量を絞る:年間使用量の20%なら余剰はほぼ出ず、1kWhあたりの負担は30%の場合の約6割(1.3円と2.1円)になりました。
  • 費用の負担者を決める:発電側課金と容量拠出金の上乗せ(合計約0.9円)を単価に含めるか別に請求するかで、実質の単価が変わります。
  • 契約年数を延ばす:20年契約は10年契約より約1円安くなります。
  • 比べる相手を間違えない:基本料金込みの平均単価(約21.8円)と比べると、避けられる電力量料金(約17.3円)との差の約4円分、実際より高い単価まで「得」に見えてしまいます。

エリア別の読み解き

  • 関西:電力量料金が高く(約17.7円)、損益分岐も最も高い20.5円です。市場連動型は基準シナリオで多くの案件が得になり、固定価格型の負担も1kWhあたり約1円と小さくなりました。
  • 関東:損益分岐は20.0円です。基本料金は推計で、時間帯別の市場価格調整を含めていないため、実際の電気代はもう少し高くなる可能性があり、その場合はPPAに有利になります。
  • 九州:電力量料金が安く(約15.9円)、損益分岐は18.4円です。固定価格型が得になる価格パスは約7%にとどまりました。九州は再エネの出力制御が多いエリアで、発電量の見込みと出力制御時の扱いを契約で確認する必要があります。

公開データとの照合:モデルの前提は現実とずれていないか

オフサイトPPAは、需要家ごとの契約条件で結果が大きく変わるため、エネがえるASPのような住宅用の一括試算では照合できません。そこで、モデルの前提と結果を公開データと突き合わせました。

照合した項目本モデル公開データ判定
高圧の平均単価(基本料金込み、税抜・賦課金除く)関東21.99円、関西21.68円、九州20.12円(2026年11月以降の単価)関東21.87円、関西19.92円、九州18.64円(2024年度実績、国の補助による値引きを含む。電力・ガス取引監視等委員会のデータを自然エネルギー財団が集計)関東はほぼ一致。関西・九州はモデルが1.5〜1.8円高い。2026年の値上げ・託送料金の見直しと、2024年度の補助の差で説明できる範囲
JEPXの年度平均2018〜2025年度の8年度の値を入力JEPX事業報告書(各年度)一致(一次情報をそのまま使用)
固定価格型PPAの単価21.5円(発電14.5+小売3+託送4)20〜23円(自然エネルギー財団)範囲の中央
発電事業者がIRR5%を確保できる発電分の単価20年契約12.1円、15年12.4円、10年13.1円(モデル)高圧太陽光の発電コストは2025年に1kWhあたり10円前後(同上、資源総合システム)整合。実勢の13〜16円は利益を含む水準
余剰の発生年間使用量の30%で、PPAの電気の0.5〜19.6%—(公開の統計なし)需要の形が合成のため参考扱い

平均単価が公開データより高めに出ている関西・九州では、平均単価と比べた「上限」の比較がやや有利に出ます。本記事の基準は平均単価ではなく電力量料金との比較なので、この差の影響は小さくなります。複数の需要地・発電所を束ねた試算は、エネがえるコーポレートPPAで30分ごとの実データを使って確かめられます。

炭素価格と制度で変わる:固定価格型が得になる未来

シナリオ別に得になる案件数(54案件中)。固定価格型は低迷0、基準0、高騰38。市場連動型は24、38、48。バーチャルPPAはすべて0
図7 シナリオ別に、何もしない場合より得になる案件数(契約20年・年間使用量の30%)

固定価格型が得になるのは、電気代が上がり続ける未来です。高騰シナリオでは54案件中38案件が得になり、中央値で年59万円の得でした。また、国のGX-ETS(排出量取引制度)は2026年度に本格的に始まり、2033年度からは発電事業者に特定事業者負担金がかかる予定です(環境省)。この負担が電気代に乗る(1トン1万円、仮定)と、基準シナリオでも54案件中34案件が得になり、中央値で年57万円の得に変わりました。

補助金については、オフサイトPPAの発電所側に国の需要家主導型の補助が使える場合がありますが、令和8年度の要件は本記事の作成時点で確認できなかったため、試算に含めていません。補助でPPA単価が下がれば、図6の損益分岐との差がそのまま縮みます。

自家消費とオフサイトPPAの組み合わせ

屋根に載せる自家消費型の太陽光は、同じ54案件で回収年数の中央値が約6.6年と、オフサイトPPAよりはるかに有利でした(産業用の自家消費型太陽光・蓄電池)。自家消費は送配電網を使わないため、託送料や再エネ賦課金がかからないからです。ただし屋根だけでは使用量の4〜45%(中央値11%)にとどまるため、まず屋根で自家消費し、足りない分をオフサイトPPAで、残りを証書でという順番が、費用とCO2削減のバランスが最もよい組み合わせになります。なお、屋根の太陽光を入れると昼の使用量が減るため、オフサイトPPAの余剰は本記事の試算より増える点に注意してください。

何が変わると結論がひっくり返るか

感度分析(関東・オフィスビル・高圧1,500kW、固定価格型20年)。基準は20年で6,436万円の負担増。対象量20〜50%で3,064万〜1億3,903万円、上昇率1〜3%で1億342万〜2,028万円、PPA単価13〜16円で2,750万〜1億121万円、炭素価格で588万円
図8 感度分析(関東・オフィスビル・高圧1,500kW、固定価格型・20年)

結論を一番動かすのは、対象量、通常料金の上昇率、PPA単価の3つでした。上昇率が年3%なら20年の負担増は約2,000万円まで縮み、炭素価格が入ると約590万円とほぼ損益ゼロになります。一方、対象量を50%に増やすと休日の余剰が増え、負担は約1.4億円に膨らみます。発電側課金(0.43円)と容量拠出金の上乗せ(0.5円と仮定)がPPA単価に加わると、負担は約2,300万円増えます。契約書でこれらの費用を誰が持つかは、単価の交渉と同じくらい重要です。

意外な発見:「量を増やすほど損」と「バーチャルPPAは振れを消さない」

余剰の割合(対象量30%)は学校18.7%、オフィス16.7%、日中稼働の工場16.1%、ホテル9.7%、物流倉庫7.7%、24時間稼働の工場3.7%、冷凍冷蔵倉庫2.1%、病院1.1%、スーパー0.6%。対象量10〜60%で余剰は0〜27%、1kWhあたりの負担は0.6〜4.2円
図9 業種別の余剰の割合(左)と、対象量による余剰と負担の変化(右)

1つ目の発見は、PPAでまかなう量を増やすほど、1kWhあたりの負担が増えることです。対象量が年間使用量の10%なら余剰はほぼ出ませんが、30%で約8%、50%で約22%が余剰になり、1kWhあたりの負担は0.6円から3.4円に増えます(固定価格型・基準シナリオ・中央値)。Scope2を一気にゼロにしたくても、太陽光のPPAだけで量を増やすのは割高です。休日の使用量が小さい業種ほど、対象量は20〜30%程度にとどめ、残りは証書や他の電源(風力など)で埋める方が合理的です。

20年の支払総額の振れ幅(P90−P10)。固定価格型は何もしない場合の約8%、市場連動型は約59%、バーチャルPPAは約102%
図10 案件ごとの振れ幅の比較(何もしない場合とPPAを結んだ場合、54案件)

2つ目の発見は、バーチャルPPAは、通常の電気契約のままでは振れを消さないことです。バーチャルPPAの精算額は市場価格が上がると小さくなり、下がると大きくなります。これが電気代の振れを打ち消すには、電気代そのものが市場価格に連動している必要があります。本試算では、通常料金に市場価格の変化が反映される割合を4割と仮定したため、精算額の振れが電気代の振れより大きく、合計の振れ幅は何もしない場合とほぼ同じ(約102%)になりました。自然エネルギー財団も、バーチャルPPAを市場価格連動型の電力契約と組み合わせる例を紹介しています。フィジカルPPAとバーチャルPPAの比較も参考にしてください。

大企業の脱炭素記事との関係

大企業の脱炭素は自家消費?オフサイトPPA?再エネ電力?では、同じ54案件で、オフサイトPPA(21.5円・年間使用量の30%)だけでは基準シナリオで54案件中0案件が得になる、という結果でした。本記事の固定価格型の結果(0/54)と一致します。なお、損益分岐の単価(関東)は大企業記事の約21.0円に対し本記事は約20.0円、CO2 1トンあたりの費用は+0.12万円に対し+0.51万円です。大企業記事は年単位の計算でPPAの電気をすべて自社で使える前提ですが、本記事は1時間ごとの計算で、使い切れない余剰(業種により0.5〜19.6%)を市場価格で売る損と、余剰分はCO2削減に数えないことを反映しているためです。余剰がほとんど出ないスーパー・病院では、両記事の値はほぼ一致します(損益分岐 約20.8円)。本記事は時間ごとの余剰と、2,000本の価格パスによるリスクの分布を加えて、契約形態ごとの違いを掘り下げました。

よくある3つの誤解

誤解実際(本試算)
「PPA単価が今の平均単価より安ければ得」平均単価には、PPAでは下がらない基本料金が含まれます。比べる相手は太陽光の時間帯の電力量料金(中央値約17.3円)で、平均単価(約21.8円)より約4円低くなります
「PPAの量は多いほど脱炭素が進んで得」対象量を増やすと休日の余剰が増え、1kWhあたりの負担は10%で約0.6円、50%で約3.4円と増えます。CO2は減っても、1トンあたりの費用は上がります
「バーチャルPPAなら電気代の変動も抑えられる」電気の契約が市場価格に十分連動していないと、精算額の振れが残り、20年の振れ幅はほとんど縮みません(本試算で約102%)

契約年数の選び方:10年・15年・20年

契約年数別の固定PPA単価は10年22.5円、15年21.8円、20年21.5円。CO2 1トンあたりの費用は1.11万円、0.78万円、0.51万円
図11 契約年数による単価とCO2あたりの費用(固定価格型・基準シナリオ・54案件の中央値)
契約年数固定PPA単価年あたりの負担(中央値)CO2削減量(20年合計、中央値)CO2 1トンあたりの費用
10年約22.5円約521万円(10年間)約3,900トン約1.11万円
15年約21.8円約347万円(15年間)約5,800トン約0.78万円
20年21.5円約166万円(20年間)約7,700トン約0.51万円

10年・15年の単価は、発電事業者がIRR5%を確保するための単価の差(10年+1.0円、15年+0.3円)を20年契約の21.5円に上乗せした値。契約終了後は通常料金に戻る。

短い契約は、将来の料金や制度が読めない企業にとって「身軽」です。ただし発電事業者は短い期間で設備費を回収する必要があるため、単価が上がり、CO2 1トンあたりの費用は20年契約の約2.2倍(10年)・約1.5倍(15年)になりました。契約の途中で拠点の統廃合がありうる企業は、解約条件や、別の拠点へ電気を振り替えられるかも確認しておく必要があります。オフテイク契約で決める条件はオフテイク契約とは?にまとめています。

それでも固定価格型を選ぶ理由:価格の安定と「新しい再エネ」

基準シナリオでは得にならない固定価格型が、なぜ選ばれるのか。試算から見える理由は2つです。

理由1:悪い未来で損をしない「保険」になる

2,000本の価格パスで見ると、固定価格型の20年の支払総額は、価格パスの悪い側(P90)で54案件中38案件が何もしない場合より安くなりました。電気代の上振れは、製造業の原価や小売業の利益に直接響きます。中央値で数%高くても、上振れを抑えられることに価値がある企業にとって、固定価格型は合理的な選択です。

理由2:新しい再エネを増やしたと説明できる

RE100の技術基準では、運転開始から15年以内の設備による調達が原則で、新設設備と最初の買い手として結ぶ長期のPPAはこの条件の例外として扱われます。証書だけでは、設備の年数やトラッキングの有無によって基準を満たさない場合があります。日本に本社を置くRE100加盟企業は90社を超え、日本での再エネ比率は40%と、世界全体の59%を下回っています(The Climate Group)。取引先から「どの発電所の電気か」を問われる場面が増えるほど、発電所を特定できるPPAの価値は高まります。RE100の調達計画の立て方はRE100ロードマップ策定ガイドラインで解説しています。

理由3:契約の相手と量が見える

オフサイトPPAでは、どの発電所の電気を、何年間、どれだけ買うかが契約で決まります。発電所の場所や出力が分かるため、統合報告書や取引先への説明で「どこで、どれだけ再エネを増やしたか」を具体的に示せます。証書や再エネメニューでは、こうした説明が難しい場合があります。PPAの市場の動きはコーポレートPPA比較ガイド2026でも整理しています。

社内でよく出る3つの反論と、数字での答え

よく出る反論試算から言えること
「今の電気代より高い」基準シナリオでは確かに高い(中央値で年166万円)。ただし悪い側(P90)の20年の支払総額では54案件中38案件で安くなり、悪い側10%の平均では約2,900万円安い。平均の割増しは、上振れを抑える保険料と考えられる
「20年は長すぎる」10年契約にすると単価は約1円高く、CO2 1トンあたりの費用は約2.2倍になる。途中解約や拠点の振り替えの条件を契約に入れておく方が合理的
「市場価格が下がったら損をする」低迷シナリオ(市場9円・上昇率1%)では固定価格型の負担は年494万円に増える。その逆の高騰シナリオでは年59万円の得。どちらに振れても「予算どおり」になるのが固定価格型の役割

本記事では、オフサイトPPAを選ぶ企業の意識調査は行っていません。上の2つは試算と公表資料から導いた理由です。

特集:オフサイトPPAの価値を6つの角度から測る

「得か損か」の1つの数字では、PPAの価値は測れません。リスク、内訳、発電事業者の採算、CO2あたりの費用、量の決め方、反実仮想の6つの角度から見直しました。

特集の結論

  1. 固定価格型は、中央値で約7%高い代わりに振れ幅を約8%に縮める。PPA対象量の20年の支払総額は、何もしない場合がP10 3.56億〜P90 4.58億円、固定価格型が4.29億〜4.40億円でした(54案件それぞれの中央値)。
  2. 関東のオフィスビルでは、払う額と避けられる額の差は20年で約0.64億円。炭素価格が入ると約0.06億円まで縮みます。
  3. 発電事業者のIRRは、20年・発電分14.5円で約8%(設置費11.5万円/kW。12.9万円/kWなら約6.7%)。市場で売るだけなら約2.7%(同1.7%)なので、PPAが新設の決め手になります。
  4. CO2 1トンあたりの費用は、市場連動型が−0.15万円、固定価格型が+0.51万円、バーチャルPPAが+1.12万円。FIT非化石証書型のメニュー(+0.13万円)は安いものの、新しい再エネを増やす効果は小さいと考えられます。
  5. 対象量は「休日の使用量」で決める。余剰が出始める量を超えると、1kWhあたりの負担が急に増えます。
  6. 何もしない場合も、振れのリスクは残る。何もしない場合の20年の支払総額は、P10とP90で約1億円の幅があります。

角度① リスク分布:「少し高い保険」の中身

PPA対象量の20年の支払総額(54案件の中央値)。何もしないP10 3.56億・P50 4.05億・P90 4.58億、固定価格型4.29億・4.34億・4.40億、市場連動型3.66億・3.93億・4.26億、バーチャルPPA4.42億・4.92億・5.47億
図12 2,000本の価格パスで見た20年の支払総額の分布(PPA対象量=年間使用量の30%)
契約形態P10P50P90振れ幅(P90−P10)の比率何もしない場合より得になる価格パスの割合
何もしない(通常料金で買う)3.56億円4.05億円4.58億円100%—
固定価格型フィジカルPPA4.29億円4.34億円4.40億円約8%約18%
市場連動型フィジカルPPA3.66億円3.93億円4.26億円約59%約56%
バーチャルPPA4.42億円4.92億円5.47億円約102%ほぼ0%

54案件それぞれのP10・P50・P90の中央値(名目・税抜)。価格パスは市場価格の年度平均と通常料金の上昇率(平均2%・標準偏差1%)を同時に変えた2,000本。固定価格型が得になる価格パスの割合は、エリア別に九州約7%、関東約27%、関西約37%(中央値)。

固定価格型は、P50で約0.3億円(約7%)高い一方、P90では約0.2億円安くなります。保険料に例えると、20年で約3,000万円を払い、悪い未来での上振れ約5,000万円(何もしない場合のP90−P50)をほぼ消す形です。市場連動型は期待値では最も安いものの、振れ幅は約6割残ります。

保険の値段は妥当か

もう一歩踏み込んで、悪い側の10%の価格パスの平均(いわゆる期待ショートフォール)で比べると、固定価格型は何もしない場合より約2,900万円安く、全体の平均では約2,800万円高くなりました(54案件の中央値、20年合計)。つまり、平均で払う割増しとほぼ同じ額だけ、悪い未来での上振れを減らしている計算で、保険としてはおおむね釣り合っています。54案件中48案件で、悪い側の10%の平均は固定価格型の方が低くなりました。

角度② 内訳:払う額と避けられる額

関東のオフィスビル(高圧1,500kW)の20年合計。PPAの支払い5.28億円、避けられた電力量料金4.23億円、余剰の売却0.41億円で差額0.64億円の負担増。炭素価格を避けた分0.58億円を加えると0.06億円
図13 関東・オフィスビル・高圧1,500kWの20年合計の内訳(固定価格型21.5円・年間使用量の30%)

年429万kWhを使う関東のオフィスビルの例では、PPAに20年で約5.28億円を払い、通常料金を約4.23億円避け、余剰を約0.41億円で売ります。差は約0.64億円の負担増です。2033年度から炭素価格(1トン1万円、仮定)が電気代に乗る場合は、避けられる額が約0.58億円増え、差は約0.06億円まで縮みます。

角度③ 発電事業者の採算:なぜ実勢は13〜16円なのか

発電事業者のIRR。発電分14.5円なら10年6.3%、15年7.4%、20年8.1%。12円なら4.0%、4.5%、4.9%。市場で売るだけなら約2.7%
図14 発電事業者のIRR(契約年数×発電分の単価、地上設置の高圧太陽光、仮定値で試算)

設置費11.5万円/kW、運営費0.5万円/kW・年、年1,200kWh/kWと仮定すると、発電事業者がIRR5%を確保できる発電分の単価は、20年契約で約12.1円です。なお、設置費11.5万円/kWは、調達価格等算定委員会の2025年の地上設置50kW以上の上位36%水準(12.9万円/kW)より低い、効率のよい案件の想定です。設置費12.9万円/kWならIRRは20年・14.5円で約6.7%(市場で売るだけなら約1.7%)、15万円/kWなら約5.0%(同0.4%)になります。設置費11.5万円/kWの場合、実勢の13〜16円ではIRRは約6〜10%になります。契約が終わった後は市場で売ることになるため、契約が短いほど高い単価が必要です。市場で売るだけ(市場価格×85%+環境価値1円)ではIRRは約2.7%にとどまり、PPAの長期契約がなければ新しい発電所は建ちにくいことが分かります。発電事業者側のIRRの考え方は産業用オンサイト太陽光PPAでIRRを最大化するには?も参考になります。

角度④ CO2 1トンあたりの費用

CO2 1トンあたりの費用(基準シナリオ・中央値)。固定価格型+0.51万円、市場連動型−0.15万円、バーチャルPPA+1.12万円、FIT非化石証書型+0.13万円、追加性のある証書型+0.66万円
図15 CO2 1トンを減らすための費用(基準シナリオ・54案件の中央値、市場基準のScope2)

CO2あたりの費用だけを見れば、FIT非化石証書型のメニュー(+0.13万円/t)が安く見えます。ただし、既存の発電所の環境価値を買う形なので、新しい再エネを増やす効果は小さいと考えられます。新しい発電所と結ぶ固定価格型(+0.51万円/t)は、追加性のある証書型(+0.66万円/t)より安く、価格の安定も得られます。脱炭素の打ち手全体の比較はPPAと証書を組み合わせた最適ポートフォリオでも解説しています。

角度⑤ 量の決め方:休日の使用量が上限の目安

図9の右のとおり、対象量を年間使用量の10%から60%に増やすと、余剰の割合は0%から約27%に、1kWhあたりの負担は約0.6円から約4.2円に増えました。余剰が出始めるのは、休日の昼の使用量をPPAの発電が上回るときです。「休日の昼の使用量×太陽光の設備容量の比」で上限を見積もり、それを超える分は風力のPPAや証書で埋めると、負担を抑えながら削減量を増やせます。複数の拠点を束ねて余剰を減らす方法は複数施設PPAの束ね方と複数需要家・複数発電所のオフサイトPPAで扱っています。

角度⑥ 反実仮想:何もしない場合にも振れのリスクがある

何もしない場合の20年の支払総額(PPA対象量の分)は、P10の3.56億円からP90の4.58億円まで、約1億円の幅がありました。「PPAは高い」という比較は、何もしない場合の価格が一定だと暗に仮定しがちです。実際には、何もしないことも市場価格と電気代の上昇に20年間さらされ続ける選択です。社内で比べるときは、平均だけでなくP90(悪い未来)の数字も並べることをおすすめします。

稟議で示すべき数字:オフサイトPPAの判断チェックリスト

確認すること判断の目安
比べる相手は「避けられる電力量料金」か基本料金込みの平均単価と比べていないか。差は1kWhあたり約4円
自社の損益分岐単価基準シナリオで中央値19.4円(関西20.5円・関東20.0円・九州18.4円)。提示単価との差を確認
対象量と余剰休日の昼の使用量を超えない量か。学校・オフィス・日中稼働の工場は特に注意
費用の負担者発電側課金・容量拠出金・インバランス(計画と実績のずれ)の費用を、単価に含むか別に請求するか
契約形態とリスク固定価格型=価格の安定、市場連動型=期待値は安いが振れが残る、バーチャルPPA=電気の契約と組み合わせて振れを確認
契約年数と途中解約拠点の統廃合の予定、解約金、別の拠点への振り替えの可否
悪い未来の数字平均(P50)だけでなくP90の支払総額を並べて比べる
環境価値の要件RE100の運転開始15年以内の条件、トラッキング、追加性の説明ができるか

契約書で確認したい10項目

  1. 単価の内訳:発電・小売・託送の内訳と、発電側課金・容量拠出金・インバランス費用を含むか。
  2. 価格の改定条項:託送料金や制度の変更時に単価を見直す条件。
  3. 対象量と余剰の扱い:使い切れない電気を誰がいくらで引き取るか。
  4. 出力抑制:送配電事業者の出力抑制で発電できなかった分の扱い。
  5. 発電量の保証:発電量が想定を下回った場合の補償や調整の有無。
  6. 環境価値の移転:証書の種類、トラッキングの有無、移転の時期。
  7. 契約期間と延長:延長の選択権と、延長時の単価の決め方。
  8. 途中解約:解約金の計算方法と、拠点の統廃合時の振り替え。
  9. 不可抗力と信用補完:災害時の扱い、発電事業者・需要家の信用の担保。
  10. 計量とデータ:30分ごとの発電・需要データの共有と、アワリーマッチングの報告。

相談するなら:30分ごとのデータで、拠点ごとに比べる

本記事の数値は、業種別の典型的な使い方の形と、3エリアの代表的な料金で試算した目安です。実際の損得は、拠点ごとの30分ごとの使用量、契約電力、料金メニュー、PPAの発電所の場所と形によって変わります。とくに、余剰の量と、基本料金が本当に下がらないかは、実データで確かめないと分かりません。

エネがえるでは、複数の需要地と複数の発電所を組み合わせたオフサイトPPAの試算を、30分ごとの需給で比べられるエネがえるコーポレートPPAを提供しています。固定価格型と市場連動型の比較、アワリーマッチング(時間ごとの再エネ比率)の確認、需要家メリットの見積もりに使えます(オフサイトPPA経済性・需要家メリットの見積シミュレーション)。オフサイトとオンサイトの選び方はオフサイトPPAとオンサイトPPAの違いと選び方、市場の全体像はコーポレートPPA市場2026、自治体での活用は自治体のオフサイトPPAを参照してください。

導入までの5つのステップ

  1. データを集める:拠点ごとの30分ごとの使用量(1年分)と、契約電力・料金メニューの明細。
  2. 自社の損益分岐を出す:避けられる電力量料金と余剰から、払える固定単価の上限をシナリオ別に計算。
  3. 量と形を決める:休日の使用量から対象量の上限を決め、固定価格型・市場連動型・バーチャルPPAを比べる。
  4. 複数社に見積もりを取る:単価の内訳と費用の負担者をそろえた条件で比べる。
  5. 社内で合意する:平均(P50)と悪い側(P90)の支払総額、CO2削減量、RE100の要件を並べて稟議にかける。

よくある質問

オフサイトPPAは得ですか?

今の電気料金と市場価格が続く場合、固定価格型(21.5円・20年)は何もしない場合より少し高くなります(54案件中0案件が得、負担増は中央値で年166万円)。ただし、電気代が年3%上がり市場が高騰する未来では54案件中38案件、2033年度から炭素価格(1トン1万円、仮定)が乗る未来では34案件が得になりました。比べるときは、基本料金込みの平均単価ではなく、太陽光の時間帯の電力量料金(中央値約17.3円)と比べてください。

固定価格型と市場連動型はどちらがよいですか?

期待値では市場連動型が安く、基準シナリオで54案件中38案件が得になりました。ただし市場連動型は、20年の支払総額の振れ幅が何もしない場合の約6割残ります。固定価格型は中央値で約7%高い代わりに、PPA対象量の振れ幅を約8%に縮めます。電気代の上振れが経営に響く企業は固定価格型、振れを受け止められる企業は市場連動型が向いています。

バーチャルPPAなら電気の契約を変えずに済みますか?

電気の契約は変えずに済みますが、本試算ではバーチャルPPAの負担が最も大きく(年488万円、中央値)、通常の電気契約のままでは20年の振れ幅もほとんど縮みませんでした(何もしない場合の約102%)。精算額の振れを打ち消すには、市場価格に連動する電気の契約と組み合わせる必要があります。太陽光の時間帯の市場価格を年平均の85%と仮定した結果で、この仮定が変わると負担も変わります。

PPAの単価はいくらなら得になりますか?

基準シナリオでの損益分岐の固定PPA単価(発電+小売+託送)は、中央値19.4円(54案件で17.3〜21.3円)です。エリア別では関西20.5円、関東20.0円、九州18.4円でした。炭素価格が入る、または電気代が年3%上がる未来を想定するなら、約22円まで払える計算です。

年間使用量のどれくらいをPPAでまかなうべきですか?

休日の昼の使用量を超えない量が目安です。年間使用量の30%で、学校・オフィス・日中稼働の工場ではPPAの電気の約16〜19%が余り、市場価格で売ることになります。対象量を50%に増やすと余剰は約22%、1kWhあたりの負担は約3.4円に増えました(固定価格型・基準シナリオ)。残りは風力のPPAや証書で埋めると負担を抑えられます。

契約は10年と20年のどちらがよいですか?

CO2あたりの費用は20年契約が最も安くなりました(1トン約0.51万円。15年は約0.78万円、10年は約1.11万円)。短い契約は単価が高くなる(10年で約22.5円)代わりに、将来の拠点の変化に対応しやすくなります。解約条件と、別の拠点への振り替えの可否も確認してください。

発電側課金や容量拠出金は誰が払いますか?

発電側課金は発電事業者が払い(九州電力送配電の例で平均0.43円/kWh)、容量拠出金は小売電気事業者が払います。どちらもPPA単価に上乗せされるかは契約によります。本試算では両方が上乗せされる(合計約0.93円)と、関東のオフィスビルの20年の負担が約2,300万円増えました。見積もりで内訳を確認してください。

オフサイトPPAでRE100の要件を満たせますか?

RE100の技術基準では、運転開始から15年以内の設備による調達が原則で、新設設備と最初の買い手として結ぶ長期のPPAはこの条件の例外として扱われます。ただし環境価値の移転方法(トラッキング付きの証書など)や対象設備の要件を満たす必要があります。最新の基準と、契約で環境価値がどう移るかを確認してください。

試算の前提条件(すべて公開)

項目設定値根拠
需要(使用量の形)業種別の合成テンプレート(9業種)、8,760時間産業用記事の独立計算モデルv1.0(産業用の自家消費型太陽光・蓄電池)。実測値ではない
電気料金東京電力EP 高圧(燃料費調整1.55円)、関西電力 高圧電力AS/BS・AL/BL、九州電力 業務用・産業用電力A。2026年11月以降、燃料費等調整は12月分東京電力EP、関西電力、九州電力。関東の基本料金は推計
避けられる単価太陽光の時間帯の電力量料金+燃料費等調整(税抜・賦課金除く)。基本料金・容量拠出金は避けられないオフサイトPPAの仕組みから。再エネ賦課金は両方にかかり相殺
固定価格型PPA21.5円/kWh(発電14.5+小売3+託送4、税抜・賦課金別)、20年自然エネルギー財団(20〜23円)
市場連動型PPA太陽光の時間帯の市場価格+託送4+小売3+環境価値2.5円環境価値は同財団の1〜4円の中央(仮定)
バーチャルPPA固定価格14.5円と太陽光の時間帯の市場価格の差を精算同上(発電コスト13〜16円の中央)
再エネメニューFIT非化石証書型0.6円、追加性のある証書型3.0円の上乗せ大企業の脱炭素記事と同じ前提(同財団のガイドブック)
市場価格2025年度11.08円を起点。太陽光の時間帯は年平均の85%JEPX事業報告書。85%は仮定
価格パス2018〜2025年度の年度平均の変化率(対数、平均0に補正)を3年単位で再標本化、毎年3割を11.08円へ回帰、6〜30円で上下限。2,000本JEPX事業報告書(2018〜2025年度)の年度平均。方法・回帰の強さ・上下限は仮定(H)
通常料金への市場価格の反映市場価格の変化の4割(0〜80%で感度分析)仮定
通常料金の上昇率低迷1%・基準2%・高騰3%。確率的な試算は平均2%・標準偏差1%(0〜4%)仮定
余剰使用量を上回るPPAの電気は、太陽光の時間帯の市場価格で売却仮定
発電側課金0.43円/kWh(感度分析で上乗せ)九州電力送配電(2024〜2027年度の発電側平均単価)
容量拠出金の上乗せ0円(感度分析で0.5円/kWh)仮定
炭素価格2033年度から1万円/t-CO2(シナリオ)環境省の制度の時期。金額は仮定
排出係数東京電力EP 0.000452、関西電力 0.000415、九州電力 0.000472 t-CO2/kWh(残差、R6実績)環境省・経済産業省
発電事業者設置費11.5万円/kW、運営費0.5万円/kW・年、1,200kWh/kW・年、劣化0.5%/年、運転25年仮定(高圧太陽光の発電コスト10円前後と整合するように設定)
太陽光の発電の形PVGIS(ERA5)の時間値を年1,200kWh/kWに補正PVGIS(EU JRC)
金額税抜・名目。割引率は使わない—

この試算の限界

  • 需要の形は業種別の合成テンプレートです。休日の使用量が実際と違うと、余剰の量と負担が大きく変わります。
  • 計算は1時間単位です。実際の需給管理は30分単位で、インバランス(計画と実績のずれ)の費用は小売の3円に含まれると仮定しました。
  • 市場価格は年度平均の変化で表し、時間ごとの価格の振れ(夜の高値・昼の安値など)は「太陽光の時間帯は年平均の85%」という一定の比で近似しています。昼の価格が今後さらに下がると、余剰の売却額とバーチャルPPAの精算額は不利になります。
  • 価格パスは、2018〜2025年度のわずか7回の年度平均の変化をもとに、毎年3割を11.08円へ戻す回帰と6〜30円の上下限を置いて作った仮定のシナリオで、将来の確率分布を推定したものではありません。年度平均のため、2021年1月のような数週間の極端な高騰(2020年度の平均は11.20円にとどまる)は、ほとんど反映されていません。短期の高騰が多いほど、市場連動型とバーチャルPPAの振れは本試算より大きくなります。
  • 通常料金に市場価格がどれだけ反映されるかは、料金メニューによって大きく異なります(4割と仮定)。市場価格に連動する料金メニューの場合は、固定価格型の保険の効果がさらに大きくなります。
  • PPAの単価・環境価値・証書の価格は自然エネルギー財団の推計(二次資料)を使いました。実際の見積もりは案件ごとに異なります。
  • 補助金、税制、ファイナンスの条件(借入・リース)は含めていません。
  • JEPXの約定結果の時間データは、作成環境から取得できなかったため、事業報告書の年度平均を使いました。
  • 屋根の太陽光などの自家消費と組み合わせた場合の余剰の増加は、本試算に含めていません。
  • 出力制御で発電できなかった分の扱い、発電量の保証、途中解約の費用は契約によって大きく異なるため、含めていません。
  • 市場連動型の環境価値(2.5円)とバーチャルPPAの固定価格(14.5円)は推計の中央値で、案件ごとの見積もりとは異なります。

ファクトチェック・エビデンス検証一覧

この記事の主要な数値と主張を、どの方法で検証し、どの根拠に基づいているかを一覧にしました。出典はできる限り一次情報(官公庁・取引所・電力会社・公的機関の公式資料)にリンクし、企業・研究機関の推計や仮定は区分で区別しています。

検証の方法(4段階)

  1. 一次情報との照合:JEPXの年度平均、電気料金、発電側課金、排出係数、制度の時期を公式資料で確認しました(確認日:2026年10月31日)。
  2. 独立計算モデルによる再計算:8,760時間の需要とPPAの電気の流れを計算し、54案件×契約形態×シナリオの1,134通りと、2,000本の価格パスで試算しました。前提を変えると同じ結果が再現できるよう、コードとケース別データで管理しています。
  3. 公開データとの照合:エネがえるASPの住宅用の一括試算ではオフサイトPPAを照合できないため、高圧の平均単価・PPA単価・発電コストを公開データと突き合わせました(本文「公開データとの照合」)。
  4. 独立レビュー:独立レビュー(85点)で指摘された点を修正し、再採点で92点、最終修正を反映しました。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。

根拠の確かさの区分

区分意味
A 一次情報官公庁・取引所・電力会社・公的機関の公式資料で確認した値
B 推計・業界資料研究機関・企業の推計や公表資料
M 計算結果本記事の独立計算モデルの結果
H 仮定値確かな統計がないため置いた値。幅や感度分析で示している

前提条件の検証

項目記事での値区分検証結果出典
JEPXスポット市場の年度平均2018年度9.76円〜2025年度11.08円(8年度)A確認済みJEPX 2020年度、2022年度、2024年度、2025年度事業報告書ほか
電気料金(高圧)2026年11月以降の単価、燃料費等調整は12月分A/H条件付き。関東の基本料金は推計(産業用記事と同じ)。市場価格調整(時間帯別)は含めていない東京電力EP、関西電力、九州電力
PPA単価・環境価値固定価格型20〜23円(中央21.5円)、環境価値1〜4円B確認済み(推計値として)自然エネルギー財団 2026年版
発電側課金0.43円/kWh(発電側の平均単価、税抜)A確認済み(九州エリアの値。他エリアは異なる)九州電力送配電
RE100の技術基準運転開始15年以内が原則、長期PPAなどは例外、15年超は総電力消費量の15%までA/B確認済みRE100 Technical Criteria
RE100加盟企業(日本)日本本社90社超、日本での再エネ比率40%(世界59%)B確認済みThe Climate Group
GX-ETSの時期2026年度本格稼働、2033年度から特定事業者負担金A確認済み。炭素価格1万円/tは仮定環境省
排出係数0.000452/0.000415/0.000472 t-CO2/kWhA確認済み(R6実績・残差)環境省・経済産業省
高圧の平均単価(2024年度)関東21.87円、関西19.92円、九州18.64円B確認済み(電力・ガス取引監視等委員会のデータを自然エネルギー財団が集計)自然エネルギー財団 2026年版
太陽光の時間帯の市場価格年平均の85%H仮定。75〜95%で感度分析—
通常料金への市場価格の反映4割H仮定。0〜80%で感度分析—
需要の形業種別の合成テンプレートH出典なし(合成値)—
発電事業者の費用設置費11.5万円/kW、運営費0.5万円/kW・年H(11.5万円)/A(12.9万円)11.5万円/kWは仮定。発電コスト10円前後(同財団・資源総合システム)と整合。12.9万円/kWは2025年設置・地上50kW以上の上位36%水準(税抜・税込の記載なし)として調達価格等算定委員会資料p.13で確認済み。12.9万・15万円/kWの場合のIRRも本文に併記調達価格等算定委員会(p.13)

結果と主張の検証

主張区分検証方法結果
基準シナリオで固定価格型は54案件中0案件が得、負担増は中央値で年166万円M独立モデル確認済み(契約20年・年間使用量の30%)
高騰シナリオで38/54、炭素価格シナリオで34/54が得M/H独立モデル条件付き。シナリオの数値は仮定
損益分岐の固定PPA単価は中央値19.4円M独立モデル(二分法)確認済み(基準シナリオ)
固定価格型の振れ幅は何もしない場合の約8%M/H2,000本の価格パス条件付き。PPA対象量のみ。価格パスの作り方、市場価格の反映割合(4割)、通常料金の上昇率の分布(平均2%・標準偏差1%)に依存
価格パスの作り方H2018〜2025年度の年度平均の変化(7回)を再標本化、平均回帰・上下限を設定仮定のシナリオ。将来の確率分布の推定ではない。数週間単位の短期の高騰はほとんど反映されない
バーチャルPPAは振れ幅をほぼ縮めない(約102%)M/H同上条件付き。通常料金が市場価格に連動する契約なら結果は変わる
余剰は学校・オフィス・日中稼働の工場で約16〜19%M/H8,760時間の計算条件付き。需要の形が合成値
発電事業者のIRRは20年・14.5円で約8%M/Hキャッシュフロー計算条件付き。費用は仮定値

この一覧は、条件の更新に合わせて見直します。誤りに気づいた場合は、エネがえるまでお知らせください。関連する試算:大企業の脱炭素は自家消費?オフサイトPPA?再エネ電力?/産業用の自家消費型太陽光・蓄電池/蓄電池は元が取れない?全国243ケース/卒FIT後は蓄電池?エコキュート?売電継続?/雪国の太陽光は元が取れない?

試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年10月31日/試算条件の確認日:2026年10月31日。電気料金・市場価格・制度に変化があれば、条件を更新して再計算します。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

コメント

たった15秒でシミュレーション完了!誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!
たった15秒でシミュレーション完了!
誰でもすぐに太陽光・蓄電池の提案が可能!