自治体の公共施設の太陽光は起債・交付金・PPAのどれが得?施設類型別に20年の負担を実試算【2026年】

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国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら )

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

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自治体の公共施設の太陽光は起債・交付金・PPAのどれが得?138ケース×5つの調達方法で試算(エネがえる)
自治体の公共施設の太陽光は起債・交付金・PPAのどれが得?138ケース×5つの調達方法で試算(エネがえる)

結論から言います。自治体の庁舎・学校・体育館・公民館・消防署・浄水場・下水処理場・公立病院の屋根に太陽光を載せる場合、本試算の前提(設置費 税抜18〜25万円/kW、電気代が年1〜3%上昇、20年・名目)では、一般財源で全額を払って自己所有しても、138ケースすべてが15年以内に元を取り、回収年数の中央値は8.8年でした。差が出るのは「元が取れるか」より「どのお金で入れるか」です。同じ施設でも、交付金・起債(脱炭素化推進事業債)・一般財源・リース・オンサイトPPAのどれを選ぶかで、20年の得は大きく変わります。8施設類型×規模×3エリア(関東・関西・九州)×電気代上昇率3水準の138ケースを、5つの調達方法で計算した690通り(2026年11月時点の電気料金と公表資料にもとづく)から、答えは次の3つに整理できます。

3つの答え

  1. 屋根の太陽光は、一般財源で自己所有しても元が取れる計算。財源の工夫で20年の得はさらに増える。20年の得(何もしない場合との差、中央値)は、交付金1/2を使う場合4,959万円、脱炭素化推進事業債(充当率90%・交付税措置50%)4,650万円、一般財源3,441万円、リース2,930万円、オンサイトPPA 1,403万円でした。上位3つ(交付金>起債>一般財源)の順は138ケース(46の施設条件×電気代上昇率3水準)すべてで同じで、リースとPPAは単価しだいで入れ替わります(132ケースでリースが上)。ただし交付金は重点対策加速化事業などに選ばれた自治体に限られ、交付税措置は普通交付税の交付団体でなければ効きません。
  2. オンサイトPPAは「初期費用ゼロ」の代わりに、得が自己所有の約半分になる。得をするかは単価しだい。損益分岐のPPA単価は中央値26.4円/kWh(税抜)。税抜21円以下ならすべてのケースで得、25円で138件中95件、環境省の事例集の比較例と同じ27.5円を税抜とみなすと49件(事例集は税込・税抜を明示しておらず、税込27.5円=税抜25円なら95件)、30円では13件に減ります。人手や予算の制約で自己所有が難しい自治体にとっての選択肢で、「いちばん得な方法」ではありません。
  3. 避難所の停電対策は、太陽光だけでは成り立たず、蓄電池は電気代の節約では元が取れない。系統につながった太陽光は停電時に建物へ電気を送れないため、72時間の停電で重要負荷をまかなえる割合は0%です(パワコンの自立運転用コンセントで、晴れた昼に限られた容量の電気を使える場合は除く)。蓄電池を足すと平均41〜90%をまかなえますが、避難所になりうる施設84ケースすべてで、蓄電池は20年の節約より費用が上回りました。防災のための「保険料」として、交付金などの財源と合わせて判断するものです。

この記事で分かること(数値の要点)

  • 回収年数(一般財源で自己所有、138ケース):中央値8.8年(6.7〜14.1年)。10年以内は96件、15年以内は138件すべて。施設類型別の中央値は、公立病院7.9年、庁舎8.0年、下水処理場8.4年、公民館・浄水場8.6年、消防署9.2年、小中学校10.7年、体育館10.8年。
  • 起債と一般財源の差:脱炭素化推進事業債を使うと、20年の得は一般財源より中央値で1kWあたり約8.3万円多くなります(設置費の約39%)。交付税措置50%(普通交付税の交付団体のみ)と、初年度の支出が設置費の10%で済むことが効いています。金利1.5%・15年償還は仮定です。
  • 20年で元が取れる設置費の上限(一般財源で自己所有):中央値48.6万円/kW(税抜、31.3〜65.1万円)。本試算で置いた設置費(18〜25万円/kW)のおよそ2倍まで余裕があります。ただし、自治体の事業計画には蓄電池や改修を含むとみられる1kWあたり250万円超の事業費の例もあり、見積の内訳を分けて評価することが欠かせません。
  • 太陽光で減るのは電力量料金だけ:太陽光を入れても、契約電力(最大需要)は中央値で1.7%しか下がりませんでした。PPAの単価は、基本料金込みの総合単価(関東で約24〜35円)ではなく、太陽光の電気1kWhで実際に減る電気代(関東で約21〜26円)と比べる必要があります。
  • CO2の削減:屋根の太陽光でまかなえる電気は、体育館で44%、小中学校で33%ですが、浄水場・下水処理場・公立病院のような24時間動く施設では4〜6%にとどまります。一般財源で自己所有した場合、CO2を1トン減らすごとに中央値で約3.1万円の得(20年・名目)でした。
  • 国の目標に対する進捗:地方公共団体の施設の太陽光は、施設種別の導入目標に対して6.2%(令和4年度以降の導入実績と令和7年度の見込みの合計、令和7年10月1日時点)。小中学校は6.2%、体育館などの社会体育施設は3.1%です(環境省)。

検証の主体:エネがえる(国際航業株式会社)。電気料金・発電量・蓄電池の運転は、産業用の自家消費型太陽光・蓄電池を業種別×規模別に試算した記事と同じ1時間単位(8,760時間)の計算モデルで計算し、施設類型ごとの使い方と自治体の財源の条件を加えました。制度は総務省・環境省の公表資料を原文で確認しています(確認日:2026年11月1日)。どの施設から載せるべきかをエネがえるBizで比べた公共施設の6施設類型36ケースの試算、本庁舎モデルを47都道府県で比べた47都道府県の試算もあわせてご覧ください。この記事は「どの財源・調達方法で入れるか」に焦点を当てています。

なぜ今、公共施設の太陽光を「財源ごとに」計算し直す必要があるのか

理由は3つあります。1つ目は、国の目標に対して、公共施設の太陽光がほとんど進んでいないことです。政府は、政府実行計画(令和7年2月18日閣議決定)で、設置可能な建築物(敷地を含む)の約50%以上に2030年度までに太陽光発電設備を設置し、2040年度には100%を目指すとしています。地方公共団体にも、これに準じた目標を設定して自ら取り組むことが想定されています(環境省 参考資料「政府実行計画の見直しについて」)。しかし、関係府省庁が設定した地方公共団体の施設種別の導入目標482.4万kWに対し、令和4年度以降の導入実績と令和7年度の導入見込みの合計は30.0万kW、進捗は6.2%です(令和7年10月1日時点、環境省「地方公共団体における施設種別の太陽光発電の導入目標及び進捗状況について」)。

2つ目は、財源の選択肢が増え、期限が見えてきたことです。総務省の脱炭素化推進事業債は、令和8年度から令和12年度までの5年間に延長されました。公共施設等への再生可能エネルギー設備等の整備は、地方債充当率90%、交付税措置50%です(売電が主目的の場合は対象事業費が1/2。公営企業についても同様に措置。「脱炭素化推進事業債等の延長・拡充」)。環境省の地域脱炭素推進交付金には、重点対策加速化事業(交付率2/3〜1/3、定額)と脱炭素先行地域(原則2/3)があります(令和9年度概算要求資料)。一方、初期費用が不要なオンサイトPPAやリースも一般的になりました。同じ施設でも、どれを選ぶかで20年の財政負担が数千万円単位で変わります。

交付金の予算規模も確認しておきます。地域脱炭素推進交付金(地域脱炭素移行・再エネ推進交付金、特定地域脱炭素移行加速化交付金等)の令和9年度要求額は、GX以外73,021百万円、GX 8,000百万円です(括弧内の前年度額はそれぞれ20,018百万円、7,000百万円、環境省)。要求額であり、予算として確定した額ではない点に注意が必要です。

3つ目は、電気代の比べ方に落とし穴があることです。環境省の事例集(2026年3月)は、PPAの単価を従量料金の単価と直接比べず、基本料金を含めた総合単価で導入前後を比べるよう勧めています(「公共施設の太陽光発電設備導入加速に向けて」)。考え方はその通りですが、事例集の比較例は契約電力が120kWから100kWに下がる前提です。本試算の1時間単位の計算では、太陽光で契約電力(年間の最大需要)が下がる幅は中央値1.7%でした。最大需要は夏の曇りの日や夕方に出ることが多く、太陽光が出ていない時間に決まるからです。基本料金が下がらないなら、PPAの単価は総合単価より低くなければ得になりません。

検証の方法:8施設類型 × 規模 × 3エリア × 3水準 = 138ケース、5つの調達方法で690通り

施設は、自治体が太陽光を検討することの多い8類型にしました。一般会計の施設(庁舎・小中学校・体育館・公民館・消防署)は、自治体が消費税を控除できないため税込で比べ、公営企業会計の施設(浄水場・下水処理場・公立病院)は税抜で比べています(消費税法60条、国税庁 No.6495)。

軸設定根拠・注記
施設類型(8)庁舎、小中学校、体育館(指定避難所)、公民館、消防署、浄水場、下水処理場、公立病院使い方(平日昼型・夜間型・24時間型)を1時間単位の負荷形状で表現
規模(各2)契約電力 30〜2,000kW。公民館30kW・消防署40kWは低圧、その他は高圧太陽光の容量は契約電力×施設ごとの係数(例:体育館1.2倍、学校0.9倍、庁舎・浄水場・病院0.25倍)
エリア高圧:関東・関西・九州、低圧:関東・九州東京電力EP・関西電力・九州電力の2026年11月時点の単価、燃料費等調整、再エネ賦課金4.18円
電気代の上昇率年1%・2%・3%20年間一定
ケース数46施設ケース×3水準=138ケース高圧14規模×3エリア+低圧2規模×2エリア=46
調達方法(5)A 一般財源で自己所有、B 脱炭素化推進事業債、C 交付金1/2+一般財源、D オンサイトPPA、E リース138ケース×5=690通り。20年の名目合計で比較
蓄電池避難所になりうる5類型(84ケース)に、重要負荷の6時間分経済性と、72時間停電でまかなえる割合を別に評価

5つの調達方法の計算の仕方は次の通りです。どれも「何もしない(今の電気を買い続ける)」場合と比べた、20年間の自治体の実質負担の差を「20年の得」としています。

方法初年度の支出その後の支出前提(仮定を含む)
A 一般財源設置費の全額保守費、13年目のパワコン交換保守3,000円/kW/年、交換2万円/kW(税抜)
B 脱炭素化推進事業債設置費の10%元利償還の50%(残り50%は交付税措置)+保守費・交換充当率90%・交付税措置50%は制度の値。金利1.5%・15年元利均等は仮定
C 交付金1/2設置費の50%保守費・交換重点対策加速化事業の交付率は2/3〜1/3・定額。1/2は高知県の事業計画の「地方公共団体オンサイト型」の例
D オンサイトPPA0円自家消費した電気×PPA単価税抜25円(50kW未満)、21円(250kW未満)、17円(250kW以上)。保守はPPA事業者
E リース0円リース料(年2.5%・20年の年賦)+保守費リース料率は仮定

余った電気は売らずに捨てる(出力抑制)前提です。公共施設の自家消費型では逆潮流を認めない契約が多く、売電収入を当てにしない方が安全側だからです。発電量はPVGIS(欧州委員会共同研究センター)の東京・大阪・福岡の1時間値、CO2の排出係数は環境省・経済産業省が公表した各社の値を使いました。前提の一覧は記事の後半の前提条件にあります。

太陽光は何で稼ぐのか:減るのは「電力量の単価」、基本料金はほとんど下がらない

公共施設の電気代は、契約電力(kW)で決まる基本料金と、使った量(kWh)で決まる電力量料金・燃料費等調整・再エネ賦課金でできています。屋根の太陽光で自家消費すると、買う電気の量が減るので電力量料金は確実に減ります。一方、高圧の契約電力は過去1年の最大需要で決まり、その最大需要は太陽光が弱い夏の曇りの日や夕方に出ることが多いため、基本料金はほとんど下がりません。

施設類型ごとの1kWhあたりの単価(関東)。基本料金込みの総合単価は約24〜35円だが、太陽光の電気1kWhで実際に減る電気代は約21〜26円。PPAの単価は後者と比べる
図1 電気代の総合単価と、太陽光の電気1kWhで実際に減る電気代(関東・電気代上昇率2%・1年目、施設類型ごとの中央値。一般会計は税込、公営企業は税抜)

関東で見ると、総合単価(年間の電気代÷使用量)は小中学校で約35円、庁舎で約33円ですが、太陽光の電気1kWhで実際に減る電気代は約24円です。浄水場・下水処理場は総合単価も約24円と低く、減る電気代は約21〜22円です。「電気代が1kWh 35円だから、PPAが27円なら8円得」という計算は成り立ちません。比べるべきは図1のティールの棒です。もう1つの落とし穴は消費税です。一般会計の施設は消費税を控除できないため、PPA事業者が提示する税抜21円の単価は、自治体の実際の支払いでは23.1円になります。電気代も税込で払っているので、比べるときは両方を税込にそろえます。公営企業では両方を税抜にそろえます。この考え方は、自家消費型太陽光の削減額が伸びない理由でも、発電と使用の時間帯の重なりから説明しています。

施設類型ごとの自家消費率と自給率。小中学校は自家消費率73%・自給率33%、体育館は82%・44%。庁舎・浄水場・下水処理場・病院・消防署は自家消費率ほぼ100%だが自給率は4〜11%
図2 自家消費率(発電のうち施設で使えた割合)と自給率(使用量のうち太陽光でまかなえた割合)。電気代上昇率2%・1年目の中央値

施設の性格は2つに分かれます。学校・体育館は屋根が広く、使用量に対して大きな太陽光を載せられるので自給率は33〜44%と高い反面、休日や夏休みに発電が余り、自家消費率は73〜82%に下がります。庁舎・浄水場・下水処理場・病院・消防署は、発電をほぼ100%使い切れますが、使用量に比べて屋根が小さいので、自給率は4〜11%にとどまります。

関東の小中学校(契約300kW・太陽光270kW)の晴れた平日と休日の1日。平日は発電をほぼ使い切るが、休日は発電の大半が余る
図3 同じ学校の晴れた平日と休日の1日の電気の流れ(関東・契約300kW・太陽光270kW)

結果①:一般財源で自己所有しても、138ケースすべてが15年以内に回収(中央値8.8年)

まず、最も単純な「一般財源で全額を払って自己所有する」場合の回収年数です。保守費(年3,000円/kW)と13年目のパワコン交換(2万円/kW)を含めても、138ケースすべてが15年以内に回収し、中央値は8.8年(6.7〜14.1年)でした。10年以内に回収したのは96件です。

施設類型×エリア×規模別の回収年数のヒートマップ(電気代上昇率2%)。どの施設も約7〜13年で回収し、病院・庁舎・下水処理場が早く、小中学校・体育館が遅い
図4 一般財源で自己所有した場合の回収年数(電気代上昇率2%)。低圧(公民館30kW・消防署40kW)は関東・九州のみ試算
施設類型会計太陽光(中央値)自家消費率回収年数(中央値)20年の得(一般財源、中央値)
公立病院公営企業(税抜)250kW100%7.9年7,523万円
庁舎一般会計(税込)150kW99%8.0年4,700万円
下水処理場公営企業(税抜)375kW100%8.4年9,516万円
公民館・コミュニティ施設一般会計(税込)60kW95%8.6年1,839万円
浄水場公営企業(税抜)313kW100%8.6年7,445万円
消防署一般会計(税込)50kW100%9.2年1,337万円
小中学校一般会計(税込)180kW73%10.7年3,235万円
体育館(指定避難所)一般会計(税込)120kW82%10.8年2,169万円

各施設類型の全ケース(15〜18ケース、電気代上昇率1〜3%)の中央値。20年の得は、何もしない場合と比べた20年間の名目の差(保守費・パワコン交換を含む)。

回収が早いのは、発電をほぼ使い切れる施設(病院・庁舎・下水処理場)です。学校と体育館は、余って捨てる電気がある分だけ遅くなります。エリアでは関西が中央値8.1年、関東8.9年、九州9.5年で、電気の単価が高い地域ほど早く回収します。低圧(公民館30kW・消防署40kW)は中央値10.8年、高圧は8.7年でした。電気代の上昇率が年1%なら中央値9.2年、3%なら8.5年です。

エリアと電気代の上がり方で、どれだけ変わるか

エリア回収年数(一般財源、中央値)損益分岐のPPA単価(税抜、中央値)太陽光1kWあたりの20年の得(一般財源)
関西8.1年27.3円32.9万円
関東8.9年26.8円29.4万円
九州9.5年25.8円25.0万円

各エリアの全ケース(電気代上昇率1〜3%)の中央値。九州は電気の単価が低く、日射が多くても回収はやや遅い。

電気代の上昇率回収年数(一般財源、中央値)20年の得(一般財源、中央値)読み方
年1%9.2年2,829万円電気代がほぼ横ばいでも、20年では得
年2%8.8年3,546万円本記事の基準(図4・図7など)
年3%8.5年4,351万円燃料価格や託送料金の上昇が続く場合

各46ケースの中央値。20年の得は何もしない場合との差(名目)。

上昇率が1%でも3%でも、回収年数の差は1年未満です。公共施設の太陽光は「電気代が上がると読むから入れる」投資ではなく、上がらなくても元が取れ、上がるほど得が増える投資だと言えます。

結果②:20年の得は「交付金>起債>一般財源」の順が全138ケースで同じ。リースとPPAは単価しだいで入れ替わる

次に、同じ太陽光を5つの方法で入れた場合の、20年の得を比べました。中央値の順は交付金>起債>一般財源>リース>PPAで、上位3つ(交付金>起債>一般財源)は138ケースすべてで同じでした。リースとPPAは132ケースでリースが上回り、PPA単価を税抜17円と置いた契約300kWの小中学校(関東・九州の6ケース)ではPPAが上回りました。交付金が使えなければ起債、起債も使えなければ一般財源が最も得になります。

調達方法別の太陽光1kWあたりの20年の得(中央値)。交付金1/2で39.8万円、起債37.7万円、一般財源29.1万円、リース25.3万円、オンサイトPPA14.8万円。帯は10〜90%
図5 調達方法別の太陽光1kWあたりの20年の得(全138ケース、中央値と10〜90%の幅、名目。交付税措置は普通交付税の交付団体のみ)
調達方法20年の得(中央値)得になったケース読み方
C 交付金1/2+一般財源4,959万円138/138交付金を受けられれば最も得。要件と採択が前提
B 脱炭素化推進事業債4,650万円138/138初年度の負担は設置費の10%。交付税措置で実質負担が約4割減る
A 一般財源3,441万円138/138中央値8.8年で回収。予算の単年度負担が最も重い
E リース2,930万円138/138初期費用ゼロ。リース料率(仮定2.5%)で得が変わる
D オンサイトPPA1,403万円134/138初期費用・保守ともゼロ。得は自己所有の約半分(中央値0.50倍)

起債(B)が一般財源(A)より得になるのは、元利償還の50%が普通交付税の基準財政需要額に算入されるためです。差は中央値で1kWあたり約8.3万円、設置費の約39%に当たります。ただし、普通交付税の不交付団体では交付税措置の効果がなく、Bの得は利息の分だけAより小さくなります。また、交付金(C)の地方負担分に脱炭素化推進事業債を充てられるかは、延長・拡充の資料では国庫補助事業分の対象がペロブスカイト太陽電池の導入として示されており、通常の太陽光の地方負担分は本試算では一般財源で計算しました。充当できる地方債と措置率は、事業ごとに財政担当課・所管省庁に確認してください。

施設類型別に見ると:太陽光1kWあたりの20年の得

施設の大きさが違うので、太陽光1kWあたりの20年の得(中央値)に直して比べました。予算を配分するときは、この「1kWあたりの得」が大きい施設から優先すると、同じ予算で得を最大にできます。

施設類型交付金1/2起債一般財源リースPPA
庁舎46.3万円44.0万円36.2万円32.5万円19.9万円
公民館45.7万円43.2万円34.1万円29.8万円14.1万円
公立病院42.4万円40.4万円33.3万円29.9万円18.1万円
消防署42.9万円40.4万円31.3万円26.9万円9.3万円
下水処理場39.9万円37.8万円30.1万円26.6万円15.4万円
浄水場38.2万円36.1万円28.5万円24.9万円13.8万円
体育館32.2万円29.8万円20.7万円16.4万円9.8万円
小中学校30.3万円28.2万円20.4万円16.6万円15.6万円
全138ケース39.8万円37.7万円29.1万円25.3万円14.8万円

太陽光1kWあたりの20年の得(名目、中央値)。一般会計の施設は税込、公営企業は税抜。小規模施設(50kW未満)はPPA単価を税抜25円と置いたため、消防署・体育館のPPAの得が小さい。

一般財源で比べると、庁舎・公民館・病院が1kWあたり33〜36万円と大きく、学校・体育館は約20万円です。学校・体育館は屋根が広く「たくさん載せられる」一方、1kWあたりの得は小さくなります。エリア別では、一般財源の1kWあたりの得(中央値)は関西32.9万円、関東29.4万円、九州25.0万円でした。

関東の小中学校(契約300kW・太陽光270kW)の20年の得。交付金7,814万円、起債7,248万円、一般財源5,141万円、PPA 4,661万円、リース4,222万円。差は3,592万円
図7 同じ学校でも財源の選び方で20年の得が変わる(関東・小中学校・契約300kW・太陽光270kW・電気代上昇率2%。設置費 税込5,346万円、PPA単価 税込18.7円/kWh)

関東の小中学校(契約300kW、太陽光270kW、電気代上昇率2%)では、20年の得は交付金7,814万円、起債7,248万円、一般財源5,141万円、PPA 4,661万円、リース4,222万円でした。同じ屋根・同じ太陽光でも、財源の選び方だけで3,592万円の差が出ます。この規模(250kW以上)はPPA単価を税抜17円と置いたため、PPAがリースを上回っています。PPAの単価は規模と地域で大きく変わるので、次の節で損益分岐を示します。

結果③:20年で元が取れる設置費の上限は、中央値48.6万円/kW

施設類型別の20年で元が取れる設置費の上限(税抜)。全138ケースの中央値48.6万円/kW、範囲31.3〜65.1万円/kW。本試算の設置費18〜25万円/kWの約2倍
図15 一般財源で自己所有した場合に、20年で元が取れる設置費の上限(税抜。点は中央値、帯は最小〜最大)

一般財源で自己所有した場合に20年で元が取れる設置費の上限は、中央値48.6万円/kW(税抜、31.3〜65.1万円/kW)でした。本試算で置いた設置費(税抜18〜25万円/kW)は、調達価格等算定委員会が示した2025年の屋根設置10kW以上の実績(平均20.8万円/kW、中央値18.5万円/kW、経済産業省)に、公共工事の設計・監理などを上乗せした水準です。上限まで約2倍の余裕があるため、多少の工事費の上振れでは結論は変わりません。

ただし、注意が必要な実例があります。高知県の重点対策加速化事業の事業計画では、「地方公共団体オンサイト型」の本庁舎(1件・33kW)の事業費が85,027,800円、県有施設(18件・450kW)が1,153,932,000円で、いずれも交付率1/2と記載されています(高知県 地域脱炭素移行・再エネ推進事業計画)。事業費を太陽光の出力で割ると約256〜258万円/kWになり、蓄電池や屋根の改修など太陽光以外の費用を含むとみられますが、表からは内訳が分かりません。太陽光の部分だけで上限(中央値48.6万円/kW)を超えていないか、見積を太陽光・蓄電池・改修に分けて評価することが、議会や監査への説明でも重要になります。屋根の補強費は公共施設の太陽光PPAで公募前に確認する屋根耐荷重・改修費で整理しています。

試算の照合:エネがえるBizの36ケース・47都道府県の試算、環境省の事例集と比べる

今回の138ケースは独自の計算モデルによるもので、エネがえるASP・Bizでの照合はしていません。その代わりに、エネがえるが公表済みの2つの試算と、環境省の事例集の比較例と突き合わせました。

比べた相手相手の結果本試算差の理由
公共施設6施設類型36ケース(エネがえるBiz)回収8.6〜12.5年6.7〜14.1年(中央値8.8年)本試算は電気代上昇率1〜3%と低圧を含み、幅が広い。設置費・負荷形状の置き方も異なる
本庁舎モデル47都道府県(エネがえるBiz)回収10.1〜15.3年(10月分料金)、11月以降の単価の推計で8.7〜12.5年庁舎 中央値8.0年(関東・関西・九州)設置費の前提と、庁舎の太陽光の大きさ(本試算は契約電力の25%)が異なる。同記事ではオンサイトPPAが得になるのは11月単価で18道県。PPA単価の置き方(本試算は規模別に税抜17〜25円)の違いによる。本試算の庁舎は発電をほぼ使い切る設定
環境省 事例集の比較例(90kW・オンサイトPPA)PPA 27.5円で総合単価33.73→33.20円(契約電力120→100kWの前提)PPA 27.5円を税抜とみなすと138件中49件(税込とみなすと95件)本試算では契約電力の低下が中央値1.7%。基本料金が下がらないと、PPAの得は小さくなる

回収年数は3つの試算でおおむね同じ範囲に入りました。最も大きな違いは、PPAの評価が「契約電力が下がるかどうか」で逆転しうる点です。実際の施設では、過去1年の30分ごとの使用量(デマンドデータ)で最大需要の出る日時を確認してから、基本料金の削減を見込むかどうかを決める必要があります。

自施設で試算するときに最低限そろえたいデータは、①電力会社の30分値(デマンドデータ)1年分、②電気料金の契約メニューと直近12か月の請求書、③屋根の面積・向き・構造図と築年数、④今後の改修・建替えの予定、⑤指定避難所かどうかと停電時に動かしたい機器の一覧、の5つです。①がない場合は、施設の使い方のテンプレートで概算し、データが届いたら差し替える、という順番で進めると止まりません(データが足りないときの概算と追加確認の手順)。

財源のルールを原文で確認する:起債・交付金・PPA・リースの使い分け

どの財源が使えるかは、自治体の規模・財政状況・計画の位置づけで変わります。本試算で使った値を、公表資料の記載どおりに整理しました。受付・採択の状況は年度ごとに変わるため、申請前に必ず最新の要綱・通知で確認してください。

財源・方法公表資料の記載(要旨)対象・要件本試算での扱い
脱炭素化推進事業債(総務省)公共施設等における再生可能エネルギー設備等の整備:地方債充当率90%、交付税措置50%。売電が主目的の場合は対象事業費1/2。公営企業についても同様に措置。事業期間 令和8年度〜令和12年度(5年間)、事業費1,000億円地方公共団体実行計画に基づく地方単独事業。交付税措置は普通交付税の交付団体で効果充当率90%・措置50%。金利1.5%・15年元利均等は仮定
過疎対策事業債「脱炭素化推進特別分」(総務省)過疎対策事業債(充当率100%、交付税措置率70%)の対象施設で実施する再生可能エネルギー設備の整備と公共施設等のZEB化を「脱炭素化推進特別分」と位置付け、他の事業に優先して同意等を行う(総務省)過疎地域の自治体。過疎対策事業債の対象施設試算には含めていない(対象なら起債より有利)
重点対策加速化事業(環境省 地域脱炭素推進交付金)交付率 2/3〜1/3、定額。事業期間 概ね5年程度再エネ発電設備を一定以上導入すること等(都道府県・指定都市・中核市・施行時特例市 1MW以上、その他の市町村 0.5MW以上)交付率1/2(高知県の事業計画の「地方公共団体オンサイト型」の例)。残りは一般財源
脱炭素先行地域(同)交付率 原則2/3。事業期間 概ね5年程度脱炭素先行地域に選定されていること等試算には含めていない(2/3なら交付金の得はさらに増える)
オンサイトPPA初期費用・保守は事業者負担。自治体は使った電気の単価を払う(環境省 事例集)公募・契約期間(多くは20年前後)、屋根の使用許可(行政財産の目的外使用など)税抜25円/21円/17円(規模別、仮定)
リース設備はリース会社の所有。自治体はリース料を払う債務負担行為の設定が必要になる場合がある年2.5%・20年の年賦+保守費(仮定)

出典:脱炭素化推進事業債等の延長・拡充、総務省「地域の脱炭素化の推進」、総務省「地域脱炭素の一層の推進」、環境省 地域脱炭素推進交付金(令和9年度要求)。確認日2026年11月1日。

なお、本試算の「交付金1/2」は自治体が設備を所有する場合の計算です。PPAやリースに交付金を組み合わせる場合(事業者側の設備が交付対象になるか、交付金分を単価に反映させるか)は、事業区分と要綱しだいで、本試算では計算していません。PPA・リースの公募で交付金を前提にするときは、交付金分がPPA単価・リース料に確実に反映される契約にしてください。

実務での選び方は、次の順番で考えると迷いません。①交付金の要件(1MW・0.5MW以上など)を満たす計画を組めるか → ②満たせない施設は脱炭素化推進事業債(普通交付税の交付団体なら有力)→ ③起債の枠や議会日程が合わない施設は一般財源 → ④人員・予算の都合で自己所有が難しい施設はリース・PPA。PPAは「得の大きさ」ではなく、職員の手間・維持管理の責任・単年度予算の制約を外せることが価値です。複数施設をまとめて公募し、単価を下げる工夫が欠かせません。

オンサイトPPAは何円なら得か:損益分岐は中央値26.4円/kWh(税抜)

オンサイトPPAでは、自治体は初期費用を払わず、屋根の太陽光から使った電気の分だけPPA事業者に単価を払います。得になるのは、PPA単価が「太陽光の電気1kWhで実際に減る電気代」より安い場合だけです。

PPA単価(税抜)別に、20年で得になるケース数。21円以下なら138件すべて、23円で130件、25円で95件、27.5円で49件、30円で13件。環境省の事例集の27.5円は税抜とみなした場合の位置。損益分岐は中央値26.4円
図6 PPA単価(税抜)を変えたときに、何もしない場合より20年で得になるケース数(全138ケース)

損益分岐のPPA単価は、中央値26.4円/kWh(税抜、21.2〜32.8円)でした。税抜21円以下なら138ケースすべてで得、25円で95件、27.5円で49件、30円で13件です。環境省の事例集の比較例(27.5円)は税込・税抜が明示されていないため、税抜とみなせば49件、税込(税抜25円)とみなせば95件です。施設類型別の損益分岐(中央値)は、浄水場25.5円、体育館25.8円、下水処理場26.3円、消防署26.4円、病院27.0円、庁舎27.1円、小中学校27.2円、公民館28.1円でした。一般会計の施設は消費税を控除できないため、契約書の単価が税抜でも、比べる相手は税込の電気代になる点に注意してください。

本試算の基準(250kW以上で税抜17円、50〜250kWで21円、50kW未満で25円)では、PPAは138件中134件で得でした。得にならなかった4件は、九州の小規模な低圧施設(公民館30kW・消防署40kW、電気代上昇率1〜2%)で、PPA単価25円が損益分岐を上回りました。小規模施設を単独でPPAにすると単価が高くなりやすいため、複数施設の一括公募や、自己所有との組み合わせを検討する価値があります。オフサイトPPAとの違いはオフサイトPPAを業種別×規模別に試算した記事、FIT・FIPやリースとの比較はEPC・PPA・リースの設置条件と採算比較もご覧ください。

何が変わると結論がひっくり返るか:どの条件が悪い方に振れても20年では得

関東の小中学校(契約300kW)を一般財源で自己所有した場合の20年の得の感度分析。基準5,047万円。評価期間15年で1,902万円、電力量単価−3円で3,306万円、保守費2倍で3,265万円、設置費+30%で3,443万円。どの条件でも得のまま
図8 感度分析(関東・小中学校・契約300kW・太陽光270kW・電気代上昇率2%・一般財源)。毎年の発電量の低下を連続で計算しているため、基準値は図7の5,141万円と約2%異なる

関東の小中学校(一般財源で自己所有)を例に、前提を1つずつ動かしました。基準の20年の得は5,047万円です。最も効くのは評価期間で、15年で打ち切ると1,902万円、25年使えば8,495万円になります。次が電力量の単価(±3円/kWhで3,306万〜6,788万円)、設置費(−20%〜+30%で6,116万〜3,443万円)、電気代の上昇率(年1〜3%で3,863万〜6,383万円)です。保守費が2倍になっても3,265万円の得が残りました。

いずれの条件でも得のままでしたが、複数の条件が同時に悪い方へ振れるケース(例:設置費+30%、電力量単価−3円、評価期間15年)は別です。また、この感度分析は「太陽光だけ」の結果で、屋根の補強・防水改修・蓄電池の費用は含みません。電気料金・設備費・補助金を変えて投資回収を判断する方法のように、境界条件を先に決めておくと、見積が出たときにすぐ判断できます。

もう1つ、本記事の金額は割り引かない名目の合計です。将来のお金の価値を割り引くと結論が変わるかも確かめました。割引率を年2%として20年の正味現在価値を計算すると、一般財源で自己所有した場合の中央値は約2,222万円(名目では3,441万円)、オンサイトPPAは約1,074万円(同1,403万円)に小さくなりますが、得になるケースの数は一般財源138件、PPA134件と変わりませんでした。後年に得が積み上がる自己所有ほど、割引の影響を大きく受けます。

なお、感度分析の幅の外にある大きなリスクは、施設そのものを20年使い続けられるかです。学校の統廃合や庁舎の建替えで10年目に撤去すれば、一般財源の場合は元が取れない施設が出ます。公共施設等総合管理計画・個別施設計画と突き合わせ、今後20年以上使う施設から載せることが、どの財源を選ぶよりも先に確認すべき条件です。

よくある認識と、試算で見えたこと

よくある認識試算で見えたこと
公共施設の太陽光は、補助金がないと元が取れない本試算の設置費(税抜18〜25万円/kW)なら、一般財源でも138ケースすべてが15年以内に回収(中央値8.8年)。補助や起債は「元を取るため」より「得を増やし、初年度の負担を減らすため」に効く
PPAなら初期費用ゼロで、いちばん得初期費用はゼロだが、20年の得は自己所有の約半分。PPA単価が27.5円なら、税抜とみなすと得になるのは138件中49件(税込とみなすと95件)
電気代の単価が35円の施設なら、PPA 27円で8円得太陽光で減るのは電力量料金だけで、契約電力の低下は中央値1.7%。比べる相手は総合単価ではなく、1kWhで実際に減る電気代(関東で約21〜26円)
避難所に太陽光を載せれば、停電でも電気が使える系統につながった太陽光だけでは、72時間の重要負荷をまかなえる割合は0%(自立運転用コンセントは晴れた昼の限られた容量のみ)。自立運転できる蓄電池が必要
学校の太陽光は夏休みに余るのが問題余りの約85%は土日・祝日。夏休み(8月)の分は約13%
屋根が広い学校・体育館から載せるべき1kWあたりの得は庁舎・公民館・病院の方が大きい。量(目標への寄与)を取るなら学校、得の効率を取るなら庁舎・病院から

意外な発見:学校の太陽光の「余り」の85%は、土日・祝日に出る

関東の小中学校(契約300kW・太陽光270kW)の月別の自家消費と余り。発電量の約28%が余り、その約85%は土日・祝日。8月(夏休み)は平日も余りやすい
図9 学校の発電の行き先(関東・小中学校・契約300kW・太陽光270kW)

学校の太陽光の弱点は「夏休み」だと思われがちです。実際に1時間単位で計算すると、関東の小中学校(契約300kW・太陽光270kW)では発電量の約28%が余り、その約85%は土日・祝日に出ていました。8月の夏休みに出る余りは全体の約13%です。年間の休日は約120日あり、晴れた休日の昼はほぼ全量が余るためです。

ここから言えるのは、学校の太陽光の得を増やす鍵は「夏休みの対策」より「休日の電気の行き先」だということです。考えられる手は、①載せる容量を平日の昼の使用量に合わせて抑える、②休日の余りを近くの公共施設で使う(自営線や、地域新電力を通じた供給)、③蓄電池で夕方に回す、の3つです。②は脱炭素化推進事業債の拡充で、発電した電気を地域内で消費するための売電を主目的とする整備も対象に加わりましたが、その場合は対象事業費が1/2になります。体育館(自家消費率82%)にも同じことが言えます。

公営企業(水道・下水道・病院)は何が違うか:早く回収できるが、CO2は数%しか減らない

浄水場・下水処理場・公立病院は、24時間ほぼ一定の電気を使うため、屋根の太陽光の電気を100%使い切れます。回収年数の中央値は浄水場8.6年、下水処理場8.4年、病院7.9年と、一般会計の施設より早めです。公営企業は消費税の課税事業者として税抜で比べるため、太陽光の設置費も電気代も税抜で効いてきます。

  • CO2の削減は小さい:自給率は浄水場4%、下水処理場5%、病院6%です。使用量に比べて屋根が小さいためで、事務事業編の削減目標に大きく効かせるには、敷地・調整池・処理施設上部への設置、オフサイトPPA、再エネ電力メニューの組み合わせが必要です。考え方は大企業の脱炭素を自家消費・オフサイトPPA・再エネ電力の組み合わせで試算した記事と共通します。
  • 財源:脱炭素化推進事業債の資料には「公営企業についても同様に措置」とあります。一般会計からの繰出しなど、具体的な扱いは各事業の所管・財政担当課で確認してください。
  • 料金への影響:電気代の削減は、水道料金・下水道使用料の改定圧力を和らげる材料になります。経営戦略や料金算定の資料で、20年の削減額を示すと説明しやすくなります。
比べる点一般会計の施設(庁舎・学校など)公営企業(水道・下水道・病院)
消費税控除できない → 税込で比較課税事業者 → 税抜で比較
電気の使い方平日昼中心。休日に余りやすい施設がある24時間ほぼ一定。余りはほぼ出ない
回収年数(中央値)8.0〜10.8年7.9〜8.6年
CO2の削減率10〜44%4〜6%
財源一般財源・起債・交付金企業会計の資金・企業債。脱炭素化推進事業債は「公営企業についても同様に措置」
説明する相手議会・住民(予算・防災)議会・利用者(料金・経営戦略)

それでも公共施設に載せる理由:経済性以外の価値と、国の目標

地方公共団体施設の太陽光の導入目標に対する進捗。施設種別合計6.2%、行政施設21.6%、水道施設19.5%、下水道施設14.9%、小中学校施設6.2%、社会体育施設3.1%、公営住宅2.7%
図14 施設種別の太陽光の導入目標に対する進捗(令和4年度以降の導入実績+令和7年度の導入見込み、令和7年10月1日時点)。出典:環境省(令和8年3月30日の資料)

施設種別の進捗は、行政施設21.6%、水道施設19.5%、下水道施設14.9%が先行し、小中学校施設は6.2%、社会体育施設(体育館など)は3.1%、公営住宅は2.7%にとどまります(環境省)。導入目標の量が最も大きいのは小中学校(133.1万kW)で、学校をどう進めるかが自治体全体の目標達成を左右します。なお、設置件数ベースの参考値(これまでのすべての実績)では39.1%で、件数は進んでいても容量が小さい施設が多いことが分かります。

経済性以外に、公共施設ならではの価値もあります。

  • 防災:指定避難所の照明・通信・スマートフォンの充電・冷蔵庫を、停電時にも動かせる(ただし蓄電池が必要。次の特集で計算)。
  • 率先実行:地域の事業者・住民の模範として、自治体が先に導入することが政府実行計画に準じた目標として求められている。
  • 教育:学校では、発電量の表示や環境学習に使える。
  • 地域経済:地元の施工店・電気工事会社への発注で、電気代として地域外へ出ていくお金の一部を地域内に残せる。

特集:公共施設の太陽光の価値を6つの角度で測る

① 何もしない場合と比べる(反実仮想):何もしない学校は20年で4,222万〜7,814万円多く払う

関東の小中学校(契約300kW)の20年間の累計支出。何もしない場合は5億7,936万円。起債は2年目、交付金は6年目、一般財源は11年目に何もしない場合を下回る。PPAとリースは1年目から下回る
図12 何もしない場合と比べた20年の累計支出(関東・小中学校・契約300kW・太陽光270kW・電気代上昇率2%、税込・名目。起債は交付税措置で戻る分を差し引いた実質負担)

関東の小中学校(契約300kW)が何もしなければ、20年間の電気代は累計5億7,936万円(税込・名目、上昇率2%)です。太陽光を入れると、どの方法でもこれより4,222万〜7,814万円少なくなります。見落としやすいのは「いつから得になるか」です。累計の支出が何もしない場合を下回るのは、PPAとリースが1年目、起債が2年目、交付金が6年目、一般財源が11年目でした。単年度の予算で見ると、一般財源は初年度に約4,900万円の持ち出しになり、起債なら約260万円で済みます。「元が取れるか」より「初年度の予算が組めるか」で止まっているなら、起債やPPAで解決できる可能性があります。

② 値札を分解する:PPAの得が自己所有の約半分になる理由

PPAの得は、自己所有(一般財源)の得の中央値0.50倍でした。差の正体は、PPA事業者が回収する設置費・保守費・資金コスト・利益です。自治体から見れば、その対価で「初期費用」「維持管理の手間」「故障や性能低下のリスク」を事業者に移しています。PPAを選ぶなら、単価だけでなく、契約期間中の保守の範囲、契約満了後の設備の扱い(無償譲渡か撤去か)、屋根改修時の移設費の負担を、得の差(自己所有との差)と見比べて判断するのが合理的です。

PPA契約で確認することなぜ重要か
単価(税抜・税込)と、契約期間中の改定条件一般会計の施設は税込で比べる。損益分岐(中央値26.4円、税抜)との差が得の源泉
契約期間と、満了後の設備の扱い(無償譲渡・撤去・再契約)無償譲渡なら満了後は電気代の削減がまるごと自治体の得になる
屋根改修・建替え時の移設・撤去の費用負担20年の間に防水改修が入る施設は多い。費用負担が曖昧だと後で大きな支出になる
発電量・設備の保証と、故障時の対応期限停止中に買う電気代を誰が負担するか
停電時の自立運転と、蓄電池の有無避難所なら、PPA事業者が蓄電池を含めて提案できるか
環境価値(CO2削減量)の帰属事務事業編の削減量として自治体が計上できるか

③ 停電に備える:避難所の72時間は、太陽光だけでは0%

72時間の停電で重要負荷をまかなえる割合(関東)。太陽光だけは0%。体育館(契約150kW)は蓄電池45kWhで平均49%、90kWhで57%、180kWhで83%。常に90%を残す運転では51%・61%・90%
図10 72時間の停電で、重要負荷(照明・通信・冷蔵庫・充電など)をまかなえる割合(関東。1年間の7時間おき1,247通りの開始時刻の平均)

系統につながった太陽光は、停電時に建物へ電気を送れません(パワコンの自立運転機能で、晴れた昼に専用コンセントから限られた容量の電気を使える機種はありますが、夜間や建物の配線全体には供給できないため、本試算では0%として扱いました)。停電時に避難所の電気を動かすには、自立運転に切り替えられる蓄電池(と切替盤)が必要です。

施設(関東)重要負荷の目安蓄電池72時間でまかなえる割合(平均)常に90%を残す運転
体育館(契約150kW)15kW(契約電力の10%)45/90/180kWh49%/57%/83%51%/61%/90%
小中学校(契約300kW)24kW(同8%)72/144/288kWh49%/57%/84%51%/61%/89%
公民館(契約100kW)10kW(同10%)30/60/120kWh41%/48%/57%43%/53%/70%

重要負荷は昼に1.2倍、夜に0.6倍で変動。停電中は太陽光で蓄電池を充電し、重要負荷にだけ供給する前提。冬や雨が続く時期は下がる(下位10%の開始時刻で、体育館90kWhは51%)。

蓄電池の容量を2倍(重要負荷の約12時間分)にすると、72時間の8割以上をまかなえるようになりますが、晴れの日の発電で毎日充電できることが前提です。どの負荷を何時間動かすか(重要負荷の定義)を先に決めない限り、蓄電池の容量は決められません。

④ 保険として見る:防災用の蓄電池は、電気代の節約では元が取れない

避難所となりうる施設84ケースで、蓄電池1kWhあたりの年間の実質負担(20年平均)。84ケースすべてで節約より費用が大きい。消防署8.8千円、庁舎8.7千円、公民館7.7千円、小中学校5.2千円、体育館3.2千円(いずれも1kWhあたり・年)
図11 防災用の蓄電池の20年の実質負担(蓄電池は重要負荷6時間分、税込17.6万円/kWh。交付金・補助は含まない)

蓄電池を太陽光に足すと、余った電気を夕方に回せる分だけ電気代は減りますが、避難所になりうる84ケースすべてで20年の節約より費用が大きくなりました。20年の実質負担の中央値は約906万円、年あたりにすると約45万円です。施設類型別の年あたりの実質負担(中央値)は、体育館16.7万円、公民館44.6万円、小中学校47.1万円、消防署105.5万円、庁舎313.3万円で、蓄電池1kWhあたりにすると年3.2千円(体育館)〜8.8千円(消防署)です(図11)。

したがって蓄電池は、「72時間の停電で避難所の照明と通信を保つための年間の保険料」として、他の防災投資(非常用発電機と燃料の備蓄など)と比べて判断するのが筋です。交付金で蓄電池が対象になる場合は負担が下がります。蓄電池の効果の測り方は太陽光のみとの比較で蓄電池の追加効果を計算する方法、家庭用での結果は蓄電池は元が取れない?全国243ケースにまとめています。

⑤ CO2で測る:1トン減らすごとに約3.1万円の得。ただし24時間施設は数%

施設類型別のCO2削減率と1トンあたりの得。体育館44%、小中学校33%、公民館20%、消防署11%、庁舎10%、病院6%、下水処理場5%、浄水場4%。一般財源で自己所有した場合、1トンあたり中央値約3.1万円の得
図13 屋根の太陽光でのCO2削減率と、1トンあたりの得(電気代上昇率2%・中央値)

CO2の削減量は、太陽光の自家消費分に各社の排出係数(東京電力EP 0.000452、関西電力 0.000415、九州電力 0.000472 t-CO2/kWh)を掛けて計算しました。一般財源で自己所有した場合、CO2を1トン減らすごとに中央値で約3.1万円の得(20年・名目、マイナスの削減コスト)、オンサイトPPAでも約1.6万円の得です。1施設あたりの削減量は年8.9〜320.6トンでした。削減率は体育館44%、小中学校33%と大きい一方、浄水場・下水処理場・病院は4〜6%です。事務事業編の目標に対しては、「どの施設で何トン減らすか」を積み上げる必要があります。

⑥ 予算と人手で測る:止まっている理由ごとに打ち手が違う

止まっている理由効く打ち手本試算の根拠
初年度の予算が組めない脱炭素化推進事業債、オンサイトPPA、リース起債は2年目、PPA・リースは1年目から累計で得
担当者が足りない・維持管理が不安オンサイトPPA(複数施設の一括公募)得は自己所有の約半分。単価21円以下(税抜)ならすべて得
交付金の要件に届かない複数施設を束ねて1MW・0.5MW以上の計画にする。届かなければ起債起債でも20年の得は一般財源の約1.35倍(中央値4,650万÷3,441万)
避難所の停電対策が必要蓄電池(重要負荷の定義から容量を決める)太陽光だけでは72時間0%。蓄電池は保険料として評価
屋根の耐荷重・改修時期が不明構造確認と改修計画をセットで設置費の上限は中央値48.6万円/kW。改修費を含めて上限内か確認

自治体の担当者のためのチェックリスト:載せる施設・使う財源の決め方

先に載せるべき施設(次の3つ以上に当てはまる)

  • 平日の昼に電気を使い、休日も一定の使用がある(庁舎・病院・浄水場・下水処理場・消防署)
  • 高圧で、電気の単価が高いエリア(本試算では関西・関東)
  • 今後20年以上使う予定で、10年以内に大規模改修・建替えの予定がない
  • 屋根の耐荷重・防水に問題がない(構造図がある)
  • 指定避難所で、蓄電池の費用を防災の予算で説明できる

容量を抑えるべき施設

  • 小中学校・体育館で、休日の使用がほとんどない(余りの約85%は休日。平日の昼の使用量に合わせる)
  • 低圧の小規模施設で、PPAの単価が税抜25円を超える(九州の低圧では得にならないケースがあった)

財源の決め方

  1. 重点対策加速化事業・脱炭素先行地域の要件(再エネ1MW・0.5MW以上など)を満たす計画を組めるか確認する
  2. 満たせない施設は、脱炭素化推進事業債(令和12年度まで)を第一候補にする。不交付団体なら一般財源との差は利息分だけ
  3. 人手・維持管理が課題なら、複数施設の一括PPA公募で単価を下げる。損益分岐(中央値26.4円、税抜)より十分低い単価を目標にする
  4. どの方法でも、デマンドデータで基本料金の削減を見込むかを確認し、見積を太陽光・蓄電池・改修に分ける

予算1億円をどの施設に使うか:同じお金で得とCO2削減はどれだけ違うか

一般財源の1億円(設置費)を1つの施設類型だけに使った場合の、設置できる太陽光、20年の得、年間のCO2削減量を比べました(電気代上昇率2%、中央値)。実際には1施設に載せられる量に上限があるので、複数施設に分けて使うことになります。

施設類型設置できる太陽光20年の得CO2削減量(年)
公立病院約516kW約1.71億円約267トン
庁舎約469kW約1.70億円約241トン
下水処理場約516kW約1.53億円約267トン
公民館約433kW約1.52億円約207トン
浄水場約516kW約1.45億円約267トン
消防署約433kW約1.33億円約218トン
小中学校約469kW約0.96億円約179トン
体育館約433kW約0.90億円約185トン

1億円÷1kWあたりの設置費(一般会計は税込、公営企業は税抜。規模により単価が異なる)。20年の得は、保守費・パワコン交換を差し引いた名目の額。公営企業の設置費は企業会計の負担になる点に注意。

同じ1億円でも、病院・庁舎に使うと20年の得は約1.7億円、学校・体育館では約0.9〜1.0億円と、ほぼ2倍の差がつきます。CO2の削減量でも、発電を使い切れる施設の方が多くなります。得の効率を優先するなら庁舎・病院・上下水道から、国の目標(設置可能な建築物の約50%)への寄与や避難所の機能を優先するなら学校・体育館から、という二つの軸で優先順位を決め、どちらを重視したかを議会に説明できるようにしておくことが大切です。

進め方の例:半年で「載せる施設と財源」を決める

時期やること集める資料・成果物
1か月目候補施設の洗い出し(設置可能性、今後の改修・建替え予定)施設台帳、屋根の構造図・築年数、指定避難所の一覧
2か月目電気の使い方の把握電力会社の30分値(デマンドデータ)1年分、契約電力・料金メニュー
3か月目施設ごとの試算(太陽光の容量、蓄電池の要否)施設別の回収年数・20年の得・CO2削減量・停電時にまかなえる割合
4か月目財源の比較(交付金の要件、起債、一般財源、PPA・リース)財源別の20年の負担と単年度の予算表
5か月目庁内合意と予算要求、PPAなら公募条件の設計予算要求資料、議会説明資料、公募要項の案
6か月目設計・公募・申請交付金の事業計画、起債の協議資料

議会・予算要求で使える説明文の例

次の文例は、本試算の結果を自分の施設の試算結果に置き換えて使う想定です。数値は必ず自施設の試算値に差し替えてください。

  • 経済性:「○○小学校の屋根に太陽光○kWを設置した場合、電気代上昇率を年2%とした試算で、20年間の電気代の削減額から保守費・機器交換費を差し引いた額は約○万円で、設置費は約○年で回収できる見込みです。」
  • 財源:「脱炭素化推進事業債(充当率90%、元利償還金の50%を交付税措置)を活用することで、初年度の一般財源の負担は設置費の約1割となり、20年間の実質負担は一般財源のみの場合より約○万円少なくなる見込みです。」
  • PPAとの比較:「オンサイトPPAでは初期費用は不要ですが、提示単価○円/kWh(税抜)では20年の削減額が自己所有の約○割となるため、本施設は起債による自己所有とします。」
  • 防災:「指定避難所である○○体育館には蓄電池○kWhを併設し、停電時に照明・通信・携帯電話の充電などの重要負荷を、72時間のうち平均○%の時間まかなえる計画です。蓄電池は電気代の削減では回収できないため、防災対策の費用として計上します。」
  • CO2:「本事業により年間約○トンのCO2を削減し、事務事業編の削減目標の○%に寄与します。」

試算を依頼するなら:施設ごと・財源ごとに根拠を示せる相手に

公共施設の太陽光は、議会・監査・住民への説明が必要です。必要なのは「元が取れます」という一言ではなく、どの施設で、どの財源で、何年で、何トン減るかを、前提とともに示した資料です。

エネがえるは、自治体の地域脱炭素・GXの取り組みを、試算と事務の両面で支援しています。

  • 施設ごとの試算:エネがえるBizで、30分値のデマンドデータや施設の使い方のテンプレートから、太陽光・蓄電池の効果と電気代の内訳(基本料金・電力量料金)を帳票にできます。
  • 試算代行(BPO):複数施設の一括試算、財源別の比較表、議会・予算要求向けの説明資料の作成までを代行します。
  • 地域モデル世帯・業種別の試算:住民向け・事業者向けの補助制度を設計する際に、地域の料金と日射で「モデル世帯」「業種別モデル」の効果を試算します。
  • 事務局代行・事業者ネットワーク:補助事業の事務局業務や、地域の販売施工店・EPCとの連携の仕組みづくりを支援します。

PPA事業者・EPC・地域新電力・販売施工店にとっての示唆

  • 単価の提示の仕方:自治体が比べるのは総合単価ではなく、1kWhで実際に減る電気代です。施設の30分値から「減る単価」を示し、PPA単価との差と20年の得を同じ表で示すと、比較の議論が早く終わります。
  • 束ねる提案:交付金の要件(1MW・0.5MW以上)や、小規模施設のPPA単価の高さは、複数施設をまとめると解決しやすくなります。施設ごとの試算を同じ前提でそろえることが前提です。
  • 防災の価値の切り分け:蓄電池は電気代の削減では回収できないため、経済性の試算と、停電時にまかなえる割合の試算を分けて示すと、防災予算での説明がしやすくなります。
  • 公営企業への提案:浄水場・下水処理場・病院は回収が早い一方、CO2の削減は数%です。敷地・調整池への設置や、オフサイトPPAとの組み合わせまで含めた提案が求められます。

エネがえるBizで同じ比較をする場合は、①施設ごとに30分値(なければ施設類型のテンプレート)を読み込み、②契約電力と料金メニューを実際の請求書に合わせ、③太陽光の容量を「平日の昼の使用量に合わせた案」と「屋根いっぱいの案」の2つで試算し、④帳票の電気代の内訳で基本料金が下がっているかを確認します。そのうえで、自己所有の設置費・PPAの提示単価・起債の条件を同じ表に並べると、本記事の5つの方法と同じ比較になります。

自治体の再エネ施策を費用対効果で設計する考え方は自治体の再エネ経済効果シミュレーション実務、稟議・予算要求の資料の作り方は太陽光・蓄電池の稟議資料の作り方で解説しています。ご相談はエネがえるからお問い合わせください。

よくある質問

自治体の公共施設の太陽光は、何年で元が取れますか?

本試算(設置費 税抜18〜25万円/kW、電気代が年1〜3%上昇、余った電気は売らない前提)では、一般財源で全額を払って自己所有した場合でも、8施設類型の138ケースすべてが15年以内に回収し、中央値は8.8年(6.7〜14.1年)でした。発電をほぼ使い切れる病院・庁舎・下水処理場は約8年、休日に発電が余る小中学校・体育館は約11年です。屋根の補強・防水改修や蓄電池の費用は含まないため、それらが加わる場合は別に評価が必要です。

脱炭素化推進事業債と交付金は、どちらが有利ですか?

交付金(交付率1/2の場合)を受けられれば、20年の得は中央値4,959万円で最も大きく、脱炭素化推進事業債(充当率90%・交付税措置50%)は4,650万円、一般財源は3,441万円でした。順位は138ケースすべてで同じです。ただし、重点対策加速化事業には再エネ発電設備を一定以上導入する要件(都道府県・指定都市・中核市・施行時特例市は1MW以上、その他の市町村は0.5MW以上)があり、採択が前提です。要件を満たせない施設は、令和12年度までの脱炭素化推進事業債が有力な選択肢です。

交付税措置は、どの自治体でも効きますか?

効きません。交付税措置は、元利償還金の一部を普通交付税の基準財政需要額に算入する仕組みなので、普通交付税の不交付団体では実質的な効果がありません。その場合、起債の得は一般財源より利息の分だけ小さくなります。交付団体でも、措置された額が実際の交付額にどう反映されるかは財政状況によるため、財政担当課と確認してください。

オンサイトPPAは得ですか?何円なら導入してよいですか?

損益分岐のPPA単価は、138ケースの中央値で26.4円/kWh(税抜、21.2〜32.8円)でした。税抜21円以下なら全ケースで得、25円で138件中95件、27.5円で49件(環境省の事例集の27.5円を税込とみなすと税抜25円にあたり95件)、30円で13件です。比べる相手は基本料金込みの総合単価ではなく、太陽光の電気1kWhで実際に減る電気代(関東で約21〜26円)です。PPAの得は自己所有の約半分ですが、初期費用と維持管理の負担がない点に価値があります。

避難所の屋根に太陽光を載せれば、停電のときに電気が使えますか?

太陽光だけでは使えません。系統につながった太陽光は、停電時に安全のため停止し、建物へ電気を送れないためです(パワコンの自立運転機能で、晴れた昼に専用コンセントから限られた容量の電気を使える機種はありますが、夜間や建物の配線全体には供給できません)。停電時に照明・通信・充電などを動かすには、自立運転に切り替えられる蓄電池と切替盤が必要です。関東の体育館(契約150kW、重要負荷15kW)では、蓄電池90kWhで72時間の重要負荷の平均57%、180kWhで83%をまかなえる計算でした。

防災用の蓄電池は、元が取れますか?

電気代の節約だけでは元が取れません。避難所になりうる5類型84ケースすべてで、20年の節約より費用が大きく、実質負担の中央値は20年で約906万円(年あたり約45万円)でした(蓄電池は税込17.6万円/kWh、交付金・補助なし)。停電時に避難所の機能を保つための保険料として、非常用発電機などの他の防災投資と比べ、交付金などの財源と合わせて判断するのが現実的です。

水道・下水道・病院などの公営企業は、何が違いますか?

公営企業は消費税の課税事業者なので税抜で比べます。24時間ほぼ一定の電気を使うため、屋根の太陽光の電気を100%使い切れ、回収年数の中央値は病院7.9年、下水処理場8.4年、浄水場8.6年と早めです。一方、使用量に比べて屋根が小さいため、CO2の削減は4〜6%にとどまります。脱炭素化推進事業債の資料には「公営企業についても同様に措置」とあります。

学校は夏休みや休日に電気を使わないのに、太陽光を載せて大丈夫ですか?

載せても元は取れますが、容量の決め方が大事です。関東の小中学校(契約300kW・太陽光270kW)では発電量の約28%が余り、その約85%は土日・祝日でした(8月の夏休みの分は約13%)。それでも一般財源で約11年、起債なら20年で7,248万円の得になる計算です。余りを減らすには、平日の昼の使用量に合わせて容量を抑えるか、休日の電気を近くの公共施設で使う仕組みを検討します。

前提条件(すべて公開)

項目値出典・根拠
電気料金(高圧)東京電力EP 高圧ベーシックプラン(11月の託送見直し分を加算した推計)、関西電力 高圧電力AS、九州電力 業務用電力A/産業用電力A(浄水場・下水処理場)。燃料費等調整・市場価格調整は12月分各社の公表単価(産業用の試算記事の前提表と同じ)
電気料金(低圧)東京電力EP・九州電力の低圧電力同上
再エネ賦課金4.18円/kWh(2026年度)経済産業省
消費税一般会計の施設は税込(×1.1)、公営企業は税抜で比較消費税法60条
発電量PVGIS(ERA5)東京・大阪・福岡の1時間値。劣化 年0.5%欧州委員会 共同研究センター
太陽光の設置費税抜25万円/kW(50kW未満)、21万円(250kW未満)、18万円(250kW以上)仮定。2025年実績 平均20.8万・中央値18.5万円/kW(調達価格等算定委員会)に設計・監理を上乗せ
保守費・パワコン交換3,000円/kW/年、13年目に2万円/kW(税抜)仮定
蓄電池税抜16万円/kWh(工事込み)、重要負荷の6時間分。使用可能90%仮定
脱炭素化推進事業債充当率90%、交付税措置50%、金利1.5%・15年元利均等制度値:延長・拡充の資料。金利・償還は仮定
交付金交付率1/2、残りは一般財源高知県の事業計画の例(制度上は2/3〜1/3・定額)
オンサイトPPA単価税抜25円(50kW未満)、21円(250kW未満)、17円(250kW以上)仮定。環境省 事例集の比較例は27.5円
リース年2.5%・20年の年賦+保守費仮定
CO2排出係数東京電力EP 0.000452、関西電力 0.000415、九州電力 0.000472 t-CO2/kWh環境省・経済産業省
評価20年・名目の合計(割り引かない)。余剰は出力抑制(売電なし)—

この試算の限界

  • 負荷形状は合成です。施設ごとの使い方を1時間単位で表しましたが、実際の施設のデマンドデータ(30分値)とは異なります。特に基本料金の削減(本試算では中央値1.7%)は、施設ごとに大きく変わりえます。
  • 設置費・PPA単価・リース料率・起債の金利は仮定です。感度分析と損益分岐で幅を示しましたが、実際の見積で置き換えてください。
  • エリアは高圧3(関東・関西・九州)、低圧2(関東・九州)に限られます。北海道・東北・北陸・中国・四国・沖縄は含みません。
  • 交付税措置は普通交付税の交付団体を前提にしています。交付金の地方負担分に充てる地方債は計算に入れていません。
  • 20年・名目の合計を基本にしています。割引率2%の正味現在価値でも、得になるケースの数は変わらないことを確認しました(一般財源138件、PPA134件)が、金額は小さくなります。
  • 屋根の補強・防水改修、系統連系の工事負担金、撤去費は含みません。
  • 停電の計算は1時間単位で、重要負荷の大きさ(契約電力の8〜10%)は仮定です。機器の起動電流や、蓄電池の自立運転の制約は考慮していません。
  • 発電の余りは捨てる前提です。休日の余りを近くの施設で使う、売電する、といった場合は、学校・体育館の得はさらに増えます。
  • 交付金の採択・起債の協議の結果は考慮していません。交付率は1/2の例で計算しており、2/3(脱炭素先行地域の原則)や1/3の場合は結果が変わります。
  • エネがえるASP・Bizでの照合はしていません。既存の公共施設の試算記事・環境省の事例集との比較で、範囲の妥当性を確認しました。

ファクトチェック・エビデンス検証一覧

この記事の主な数値と主張を、どの方法で検証し、どの根拠に基づいているかを一覧にしました。制度は官公庁の公表資料を原文で確認しています。

検証の方法(4段階)

  1. 一次情報との照合:制度(脱炭素化推進事業債、地域脱炭素推進交付金、導入目標と進捗、政府実行計画、消費税の扱い)を総務省・環境省・国税庁・e-Govの資料で確認しました(確認日:2026年11月1日)。
  2. 独立計算モデルによる再計算:8,760時間の計算モデルで138ケース×5つの調達方法を計算し、ケース別データ・年別データ・コードで管理しています。
  3. 公表データとの照合:エネがえるBizで試算した公共施設の2つの記事、環境省の事例集の比較例と、回収年数・PPAの評価を突き合わせました。
  4. 独立レビュー:独立レビューで指摘された点を修正し、再確認しました。最終的な内容の責任は、エネがえる(国際航業株式会社)にあります。

根拠の確かさの区分

区分意味
A 一次情報官公庁・電力会社・公的機関の公式資料で確認した値
B 自治体の計画・審議会資料個別の自治体が公表した計画・資料(一例として使用)
C 自社の既存試算エネがえるが公表済みの試算記事
M 計算結果本記事の独立計算モデルの結果
H 仮定値確かな統計がないため置いた値。幅や感度分析で示している

前提と外部データの検証

項目記事での値区分検証結果出典
導入目標に対する進捗6.2%(30.0万kW÷482.4万kW、令和7年10月1日時点)、小中学校6.2%、社会体育施設3.1%A確認済み環境省
政府実行計画の目標設置可能な建築物の約50%以上(2030年度)、100%(2040年度)A確認済み環境省
脱炭素化推進事業債充当率90%、交付税措置50%、令和8〜12年度、売電主目的は対象事業費1/2、公営企業も同様に措置A確認済み延長・拡充の資料
重点対策加速化事業交付率2/3〜1/3・定額、1MW/0.5MW以上の要件A確認済み(令和9年度要求資料の記載)環境省
交付率1/2・事業費の例地方公共団体オンサイト型 1/2、33kWで85,027,800円B確認済み(一例。内訳は不明)高知県
PPAの比較例PPA 27.5円、総合単価で比較、契約電力120→100kWA確認済み環境省 事例集
消費税の扱い一般会計は税込、公営企業は税抜で比較A確認済み(比較の置き方は本試算の判断)国税庁
設置費・PPA単価・リース料率・金利本文の前提表のとおりH仮定。損益分岐・感度分析で幅を表示—

結果と主張の検証

主張区分検証方法結果
一般財源でも138ケースすべてが15年以内に回収、中央値8.8年M8,760時間モデル確認済み(屋根改修・蓄電池を含まない)
20年の得は全138ケースで交付金>起債>一般財源(リースとPPAは132対6でリースが上)M/H5方式の20年名目合計条件付き。交付率1/2、交付税措置あり、PPA・リースの前提に依存
損益分岐のPPA単価 中央値26.4円(税抜)M20年の節約÷20年の自家消費量確認済み
契約電力の低下は中央値1.7%M1時間値の最大需要の比較条件付き(合成の負荷形状。30分値では異なりうる)
72時間の停電で太陽光だけは0%、蓄電池で41〜90%M/H1,247通りの開始時刻で計算条件付き。重要負荷の大きさは仮定
防災用の蓄電池は84ケースすべてで節約より費用が大きいM/H20年の節約と蓄電池費用の比較確認済み(交付金・補助なし)
学校の余りの約85%は土日・祝日M関東・契約300kWの1時間値確認済み(1事例)
エネがえるBizの36ケース(8.6〜12.5年)と範囲が整合C公表済み記事との比較確認済み(前提の違いは本文に記載)

この一覧は、条件の更新に合わせて見直します。誤りに気づいた場合は、エネがえるまでお知らせください。関連する試算:公共施設の太陽光・蓄電池6施設類型36ケース/公共施設の太陽光47都道府県/産業用の自家消費型太陽光・蓄電池/大企業の脱炭素の組み合わせ別試算/蓄電池は元が取れない?全国243ケース/再エネ補助金の費用対効果は?CO2削減1トンあたりの補助額を実試算

シリーズの全テーマ:エネがえる試算ライブラリ(12テーマの結論を1ページで比較)

業種別の全体像:業種別のエネルギー費はどこで削れる?24業種×規模別に経営課題と打ち手を整理

試算・分析:エネがえる(国際航業株式会社)/公開日:2026年11月1日/試算条件の確認日:2026年11月1日。制度・電気料金に変化があれば、条件を更新して再計算します。

著者情報

国際航業株式会社カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーG

樋口 悟(著者情報はこちら)

樋口 悟(Satoru Higuchi)。国際航業株式会社 カーボンニュートラル推進部 デジタルエネルギーグループで「エネがえる」の事業開発を担当。住宅・産業用太陽光、蓄電池、EV・V2H、PPA、電力料金・補助金の経済効果を扱い、SaaS・API・BPOによる比較提案・導入判断を支援しています。「太陽光・蓄電池導入意思決定白書2026」の監修、独自調査、官公庁・自治体の試算支援、APIを活用したサービス開発・協業にも取り組みます。執筆・更新では一次情報と試算条件の明示を重視し、公表値と独自の推計・仮定を区別します。 詳しいプロフィール・活動実績・参照資料 / 監修した白書

顧客の声・公開登壇記録
・共伸興建・市川様の公開インタビュー(2023年1月11日):「樋口さんが電話に結構すぐ出てくれる」「業界の知見がある」。操作に加え、提案方法や試算ロジックへの相談対応をご評価いただきました。同インタビューでは、利用者増加時にも同じ品質のサポートを求める声をいただいています。
・東京都・東京都環境公社のWEBシンポジウム(2024年3月15日):「太陽光発電と都市の可能性」の講演者として、樋口悟の氏名・所属・略歴が主催者の公式ページに掲載されています。
協業や資料のご案内では「迅速なご対応とご送付、ありがとうございます!」、AIサポートによる操作案内では「ありがとうございます。助かりました。」などのお客様の声をいただいています。
公開インタビュー以外のお客様の声は、企業名・氏名を省略して紹介しています。AIサポートへの声はサービスへのご感想です。

エネがえるの導入・活用実績
エネがえるは、官公庁・自治体、大手メーカー、商社、電力・ガス会社、住宅メーカー、有力販売施工店など、全国700社以上に導入されています。主な導入・活用先には、環境省、地方自治体、シャープ、パナソニック、ニチコン、スズキ、村田製作所、ダイヘン、三菱電機、ネクストエナジー・アンド・リソース、エリーパワー、NTT-ME、東京ガス、東邦ガス、大和ハウス工業、東京センチュリー、ELJソーラーコーポレーションなどがあります。
導入事例を見る / 主な導入・活用先の掲載情報
エネがえる全体の実績です。掲載先には導入・連携・実証・事例掲載等を含みます。

ご相談・お問い合わせ
エネがえるのご相談はもちろん、新規事業開発、アライアンス、執筆・セミナー講演、リサーチやデータセット開発などのご相談も承ります。まだ具体的に決まっていないお話でも、お気軽にご連絡ください。
TEL:070-3669-8761 / Mail:satoru_higuchi@kk-grp.jp

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